【ドラえもんSS】のび太「ちょっと腹を割って話そうよ、出木杉くん」

2018年11月20日
【ドラえもんSS】のび太「ちょっと腹を割って話そうよ、出木杉くん」

のび太「ちょっと腹を割って話そうよ、出木杉くん」

元ネタ:ドラえもん
1: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:04:09.811 ID:57AtSVi0a
出木杉「突然どうしたんだい、のび太くん。 ドラえもんの姿が見えないようだけど……」

のび太「ドラえもんは抜きで、2人だけで話したいんだ」

出木杉「ふむ……つまり、なにか深刻な話かい?」

のび太「そういうわけじゃないけど、たぶん俄かには信じられない話だと思う。だけど、聞いて欲しいんだ」

出木杉「わかった。心して聞かせて貰うよ」

のび太「まず大前提として、ぼくはしずかちゃんのことが好きだ」

出木杉「ええっ!? そうだったのかい!?」

2: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:08:48.578 ID:57AtSVi0a
のび太「うん。だけど、しずかちゃんは君の将来の結婚相手なんだよ、出木杉くん」

出木杉「ええっ!? 源さんが僕の結婚相手!?」

のび太「そうだよ。ドラえもんが教えてくれたんだ」

出木杉「未来から来たドラえもんの予言か……しかし、いきなり言われてもピンとこないな」

のび太「ちなみにぼくの結婚相手はジャイアンの妹のジャイ子なんだ」

出木杉「なんだって!? つまり、のび太くんは将来、剛田くんの義理の弟になるってことかい!?」

5: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:13:08.157 ID:57AtSVi0a
のび太「そう、だからぼくはその未来を変える為に、ドラえもんの力を借りてこれまで足掻いてきたんだよ」

出木杉「そうだったのか……って、未来を、変える? そんなことが可能なのかい?」

のび太「ドラえもん曰く、未来は刻一刻とその姿を変えるらしいから、未来を変えることは可能なんだ」

出木杉「なるほど……つまり、のび太くんは未来に不満があって、その結末を変えようとしているんだね」

のび太「そうだよ。ジャイ子と結婚なんて、まっぴら御免だからね」

8: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:19:24.352 ID:57AtSVi0a
出木杉「たしかに、源さんのことを好きな君にとっては、別の相手との結婚は耐え難いだろうね」

のび太「それだけが理由じゃないよ。正直言って、ジャイ子が将来の結婚相手と知った時、ぼくは泣いた」

出木杉「え? なぜだい?」

のび太「だって、ジャイ子だよ!? ジャイアンの妹の、ジャイ子! そりゃあ泣くよ! 喚くよ!!」

出木杉「で、でも、そのジャイ子さんがとっても良い子の可能性だってあるんだし……」

のび太「性格なんて関係ない! ブスと結婚なんてしたくない! そんなの当たり前だろう!?」

出木杉「の、のび太くん……」

11: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:26:49.277 ID:57AtSVi0a
のび太「はあ……はあ……取り乱して、ごめん」

出木杉「だ、大丈夫かい?」

のび太「うん。腹を割って話すと決めた時から覚悟はしていたけど、やっぱりこうなった。ぼくは最低だ。出木杉くんもそう思うだろう?」

出木杉「そこまで自分を卑下しなくても……」

のび太「だって、ぼくはジャイ子と親しいわけでもかいのに顔とジャイアンの妹ってだけで嫌なんだ! 本当は出木杉くんの言う通り、良い子なのかも知れないのに……どうしても、ぼくは……!」

出木杉「それは源さんのことが好きだからだろう?」

のび太「そんな綺麗事で誤魔化すのはもう嫌だ! ぼくは人を見かけで判断する最低野郎なんだ! そんなぼくに、しずかちゃんが振り向いてくれる筈ない!!」

13: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:33:03.859 ID:57AtSVi0a
出木杉「もうやめるんだ、のび太くん」

のび太「出木杉くん……」

出木杉「君の気持ちはよくわかった。そうした汚い部分も、たしかにあるだろう。けれど、だからと言って、純粋に源さんを想う気持ちを否定しては駄目だ」

のび太「ッ……出木杉! 本音を言えよ!!」


出木杉「本音だよ。だから、もう自分を悪く言うのはやめてくれ」

のび太「お前は……! 結局、ぼくなんか眼中にないってことか!?」

出木杉「どういう意味だい?」

のび太「よし、わかった。よく聞け。しずかちゃんを手に入れる為には、お前が邪魔なんだよ、出木杉!」

14: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:38:42.072 ID:57AtSVi0a
出木杉「なるほど、そういうことか」

のび太「ようやくわかったかよ!? 何でも出来る出来過ぎな優等生! ルックスも頭も良いお前がしずかちゃんの結婚相手だから、ぼくはジャイ子と結婚する羽目になるんだ!!」

出木杉「のび太くん、ちょっと落ち着け」

のび太「はっ! 落ち着けだと!? 優等生様はどんな時でも冷静沈着でいいご身分だな! どうせぼくのことなんか、道端の石ころ程度としか思ってないんだろ!?」

出木杉「いいから落ち着け!」

のび太「ご、ごめん……ぼくは、ぼくは……」

16: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:43:33.174 ID:57AtSVi0a
出木杉「のび太くん、一番大切なのは源さんの気持ちだろう?」

のび太「し、しずかちゃんの、気持ち……?」

出木杉「そうだよ。源さんは、彼女が好きな相手と結ばれるべきだ。違うかい?」

のび太「それは、そう、だけど……」

出木杉「彼女がのび太くんのことを好きになるなら、君と結婚すればいいし、その逆もまた然りだ」

のび太「そんなことはわかってる! だけど、ぼくは最低な糞野郎なんだ!! 出木杉くんには敵わない!!」

17: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:47:55.913 ID:57AtSVi0a
出木杉「いや、一概にそうとも言えないさ」

のび太「えっ?」

出木杉「君はジャイ子さんと結婚する予定なんだよね?」

のび太「う、うん。不本意ながら、ね」

出木杉「結婚するからには交際かお見合いか、それなりの手順を踏む必要があるだろう?」

のび太「う、うん……そうなる、だろうね」

出木杉「その際に、いざこざが発生する可能性は大いにある」

のび太「いざこざ……?」

18: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 21:52:26.654 ID:57AtSVi0a
出木杉「もし仮に、源さんが実はのび太くんのことが好きだったとして」

のび太「そうなの!?」

出木杉「仮に、だよ。その場合、彼女は涙を呑んでジャイ子さんと交際する君を見送るわけだ」

のび太「それならそうと言ってくれればいいのに!?」

出木杉「けれど、彼女は言えなかった。そして僕に泣きついて、僕らは付き合い始めた」

のび太「そんなのあんまりだ!」

出木杉「あくまでも可能性の一つさ。だから多分、重要なのは機を逃さず、勇気を持つことなんじゃないのかな?」

のび太「勇気……?」

20: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:00:04.191 ID:57AtSVi0a
出木杉「そう、勇気だ。たぶん、未来から来たドラえもんが一番伝えたいことは、それだと思う」

のび太「でも、ぼくに勇気なんて……」

出木杉「自信を持つんだ、のび太くん。その為に、勉強や運動に取り組むのもいいだろう。けれど、大切なのは自分の気持ちを大切にすることだと、僕は思う」

のび太「自分の、気持ち……」

出木杉「これはあくまで僕の推論だけど、源さんは顔や頭の良さや運動神経などは重要視してないと思う」

のび太「そう、なのかな……?」

出木杉「僕が見る限り、彼女は非の打ち所がない完璧な女の子だし、君もそう思うだろう?」

のび太「うん! しずかちゃんは完璧だよ!!」

出木杉「だからこそ、結婚相手に完璧さを求めるとは思えないんだ。きっと、退屈するだろうからね」

21: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:04:54.774 ID:57AtSVi0a
のび太「完璧な相手だと、退屈するのかい?」

出木杉「たぶんね。僕だって、結婚するならのび太くんのようなタイプの女の子がいい」

のび太「えっ!?」

出木杉「ただのたとえ話だよ。いい意味で、のび太くんは面白いから」

のび太「それは褒めてるのかい?」

出木杉「もちろん! これまで数々の冒険に繰り出し、ドラマを重ねてきた君を、僕は尊敬している。留守番している自分が歯痒くなる程にね」

のび太「出木杉くんって、本当に良い奴だなぁ」

24: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:10:27.935 ID:57AtSVi0a
出木杉「のび太くんだって、良い人じゃないか」

のび太「そんなわけないよ。さっき話しただろう? 僕は最低の糞野郎だって」

出木杉「でも、葛藤していた。自分の汚い部分と向き合って、こうして話してくれた。そんな君が良い人じゃなくて、いったい誰が良い人なんだい?」

のび太「出木杉くん……」

出木杉「ああ、ごめん。つい偉そうな言ってしまって。これじゃあ、上から目線だと思われても仕方ないよね」

のび太「そんなことないよ。ありがとう。勇気が出た」

出木杉「それなら良かった」

25: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:14:40.886 ID:57AtSVi0a
のび太「あのさ、出木杉くん」

出木杉「ん? なんだい?」

のび太「ぼくはもう少し前向きに物事を考えるようにするよ」

出木杉「そうだね。それがいいよ」

のび太「出木杉くんの言う通り、実はジャイ子は良い子で、幸せな結婚生活が送れるかも知れない」

出木杉「そうかも知れないね」

のび太「ただ、必ず一度はしずかちゃんに告白する。そう決めたよ」

出木杉「うん。そうするべきだ」

26: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:20:43.437 ID:57AtSVi0a
のび太「そう決めたら、胸のモヤモヤが晴れたよ」

出木杉「それは良かった」

のび太「これも全部出木杉くんのおかげだよ。改めて、ありがとう」

出木杉「いえいえ、友達の悩みが晴れたなら、僕も嬉しいよ」

のび太「本当に、本当に、君は良い奴だなぁ」

出木杉「照れ臭いからやめてくれよ」

のび太「そうだ! 今思いついたんだけど、ぼくがドラえもんの道具で女の子になって、出木杉くんと結婚するのもありかも知れない!」

出木杉「ええっ!? ぼ、僕とのび太くんが!?」

29: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:30:59.171 ID:57AtSVi0a
のび太「出木杉くんもさっき、結婚するならぼくみたいな女の子がいいって言ってただろう?」

出木杉「そ、それはあくまでたとえ話で……」

のび太「こうしちゃいられない! ちょっとドラえもんに女の子に変身出来る道具を出して貰ってくる!!」

出木杉「あ、ちょっ……行っちゃった」

30: VIPがお送りします 2018/05/11(金) 22:31:29.033 ID:57AtSVi0a
出木杉「まったく、のび太くんは本当に面白いなぁ」

出木杉「きっと、源さんは彼のああいう突飛な部分を好ましく思っているんだろうな」

出木杉「それはそうとして、僕とのび太くんが結婚、か……」

出木杉「ふふっ。それが案外、一番のハッピーエンドなのかもしれないね」


FIN

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