試食のおばさん「この味……試してみる?」
1: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:45:31.531 ID:YYT1BgfV0
―スーパーマーケット―
おばさん「いらっしゃい、いらっしゃ~い!」
主婦「こんにちは~」
おばさん「あら、こんにちは~! お体の調子はどぉう?」
主婦「それが、最近お通じが来なくってねえ……」
主婦「若い日本人がすごいコンピュータを開発して、ノーベル賞取ったなんてニュースやってるけど」
主婦「どうせなら、すごい便秘薬でも開発して欲しいもんだわ」
おばさん「ふうん、便秘ねえ……」
おばさん「だったら、この味……試してみる?」
おばさん「いらっしゃい、いらっしゃ~い!」
主婦「こんにちは~」
おばさん「あら、こんにちは~! お体の調子はどぉう?」
主婦「それが、最近お通じが来なくってねえ……」
主婦「若い日本人がすごいコンピュータを開発して、ノーベル賞取ったなんてニュースやってるけど」
主婦「どうせなら、すごい便秘薬でも開発して欲しいもんだわ」
おばさん「ふうん、便秘ねえ……」
おばさん「だったら、この味……試してみる?」
4: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:48:18.476 ID:YYT1BgfV0
おばさん「ほら、新しく出たヨーグルト」
主婦「ヨーグルト? いっとくけど、ヨーグルトならすでに食べてて……」
おばさん「まぁいいから、いいから」
主婦「それじゃ、一口」パクッ
主婦「!」ギュルルル…
主婦「き、きたわぁっ! 一週間ぶりのお通じがきたわぁぁぁぁぁっ!」
主婦「店内のおトイレ借りるわね!」タタタタタッ
おばさん「トイレから出たら、このヨーグルト買っていってね~」
主婦「ヨーグルト? いっとくけど、ヨーグルトならすでに食べてて……」
おばさん「まぁいいから、いいから」
主婦「それじゃ、一口」パクッ
主婦「!」ギュルルル…
主婦「き、きたわぁっ! 一週間ぶりのお通じがきたわぁぁぁぁぁっ!」
主婦「店内のおトイレ借りるわね!」タタタタタッ
おばさん「トイレから出たら、このヨーグルト買っていってね~」
7: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:51:27.538 ID:YYT1BgfV0
バイト娘「す、すごい……!」
バイト娘「何者ですか、あの人!?」
店長「君は入ってまもないから、彼女のことをまだ知らなかったか」
店長「彼女は人呼んで≪試食のおばさん≫……」
店長「お客に最適な試食をさせて、さまざまな悩みを解決する、パートのエキスパートさ」
バイト娘「パートのエキスパート……! 早口言葉みたい!」
店長「『私を試しに使ってみて』と彼女がこの店で働き始めてから、売上もだいぶ伸びたんだ」
バイト娘「へぇ~……」
バイト娘「何者ですか、あの人!?」
店長「君は入ってまもないから、彼女のことをまだ知らなかったか」
店長「彼女は人呼んで≪試食のおばさん≫……」
店長「お客に最適な試食をさせて、さまざまな悩みを解決する、パートのエキスパートさ」
バイト娘「パートのエキスパート……! 早口言葉みたい!」
店長「『私を試しに使ってみて』と彼女がこの店で働き始めてから、売上もだいぶ伸びたんだ」
バイト娘「へぇ~……」
9: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:54:24.237 ID:YYT1BgfV0
―会社―
課長「なんだ、この書類はぁっ!?」バサッ
部下「ひっ!」
課長「まぁったく、たるんどる!」
ヒソヒソ… ボソボソ…
「まぁ~た、怒ってるよ」 「ホント怖いよなぁ~」 「血圧上がるっての……」
課長(どいつもこいつも……!)
課長「なんだ、この書類はぁっ!?」バサッ
部下「ひっ!」
課長「まぁったく、たるんどる!」
ヒソヒソ… ボソボソ…
「まぁ~た、怒ってるよ」 「ホント怖いよなぁ~」 「血圧上がるっての……」
課長(どいつもこいつも……!)
13: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:56:31.819 ID:YYT1BgfV0
―スーパーマーケット―
課長「……」イライラ
おばさん「ちょいと、そこのお客さん」
課長「私かね?」
おばさん「あなた、なかなか厳しそうな顔してるわね」
課長「……余計なお世話だ!」
課長「といいたいところだが、そうかもしれん」
課長「このところ、部下と全然うまくいってなくて……」
おばさん「でしたら、この味……試してみる?」
課長「……」イライラ
おばさん「ちょいと、そこのお客さん」
課長「私かね?」
おばさん「あなた、なかなか厳しそうな顔してるわね」
課長「……余計なお世話だ!」
課長「といいたいところだが、そうかもしれん」
課長「このところ、部下と全然うまくいってなくて……」
おばさん「でしたら、この味……試してみる?」
14: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 21:58:50.672 ID:YYT1BgfV0
課長「これは……玉子焼き?」
おばさん「おいしいですよ」
課長「こんなレトルトの玉子焼きがおいしいわけ……」パクッ
課長「……」
課長「あ、甘い……」ホワァ~
課長(玉子と砂糖の甘みが、私の荒んだ心を癒やしてくれる……)
おばさん「おいしいですよ」
課長「こんなレトルトの玉子焼きがおいしいわけ……」パクッ
課長「……」
課長「あ、甘い……」ホワァ~
課長(玉子と砂糖の甘みが、私の荒んだ心を癒やしてくれる……)
15: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:00:26.874 ID:YYT1BgfV0
課長「そ、そうか、これだ!」
課長「私に足りなかったのは、これだったんだ! この“甘さ”だったんだ!」
おばさん「厳しいだけで、ついてきてくれる人はそういませんからねえ」
おばさん「部下の方々との接し方、色んな方法を試してみるべきですよ」
課長「うむ、あなたのおっしゃる通り!」
課長「明日からは……この玉子焼きを見習って、少し甘くなりたいと思う!」
課長「玉子焼き、買っていくよ!」
おばさん「ありがとうございます」
課長「私に足りなかったのは、これだったんだ! この“甘さ”だったんだ!」
おばさん「厳しいだけで、ついてきてくれる人はそういませんからねえ」
おばさん「部下の方々との接し方、色んな方法を試してみるべきですよ」
課長「うむ、あなたのおっしゃる通り!」
課長「明日からは……この玉子焼きを見習って、少し甘くなりたいと思う!」
課長「玉子焼き、買っていくよ!」
おばさん「ありがとうございます」
17: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:03:23.206 ID:YYT1BgfV0
男「今日なに食べる?」
女「んー、パンがいい」
男「えー、俺はご飯がいいんだけどなぁ」
女「やだー、ご飯って重たいし、絶対パンがいいー!」
男「いいや、ご飯だ! パンってスカスカしてて、食った気がしないし!」
女「スカスカってなによ!」
男「重たいってなんだよ!」
おばさん「まあまあ、お二人さん。こんなところでケンカしたらみっともないわよ」
女「んー、パンがいい」
男「えー、俺はご飯がいいんだけどなぁ」
女「やだー、ご飯って重たいし、絶対パンがいいー!」
男「いいや、ご飯だ! パンってスカスカしてて、食った気がしないし!」
女「スカスカってなによ!」
男「重たいってなんだよ!」
おばさん「まあまあ、お二人さん。こんなところでケンカしたらみっともないわよ」
18: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:04:19.411 ID:YYT1BgfV0
おばさん「ご飯もパンも、どっちもおいしいじゃないの」
男「だけど、今日だけはご飯な気分なんですよ!」
女「あたしはパンの気分!」
おばさん「じゃあ、この味……試してみる?」
男「食パンと……」
女「おにぎり……」
男「だけど、今日だけはご飯な気分なんですよ!」
女「あたしはパンの気分!」
おばさん「じゃあ、この味……試してみる?」
男「食パンと……」
女「おにぎり……」
20: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:06:24.140 ID:YYT1BgfV0
モグッ…
男「う、うまい! 全然スカスカじゃない! なんて濃厚な食パンなんだ!」
女「このご飯……ふんわりしてて、とってもおいしい! 全然重くない!」
男「……」
女「……」
男「おにぎりと食パン……両方買おうか」
女「そうしよ」
おばさん「ありがとうねぇ~」
バイト娘(パンとご飯、両方買わせた……うまい!)
男「う、うまい! 全然スカスカじゃない! なんて濃厚な食パンなんだ!」
女「このご飯……ふんわりしてて、とってもおいしい! 全然重くない!」
男「……」
女「……」
男「おにぎりと食パン……両方買おうか」
女「そうしよ」
おばさん「ありがとうねぇ~」
バイト娘(パンとご飯、両方買わせた……うまい!)
21: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:09:44.424 ID:YYT1BgfV0
おばさん「いらっしゃいませ~!」
黒髪女「……」ギロッ
おばさん「あら、どうしたの?」
黒髪女「あなたは元気でいいわねえ……」
黒髪女「私なんか、毎日毎日死にたくてたまらないってのに……」
おばさん「あなた、死にたいの?」
黒髪女「ええ、死にたいわ!」
黒髪女「毎日のように自殺未遂して、ほら手首も傷だらけ!」サッ
おばさん「ふうん、そうなの」
黒髪女「……」ギロッ
おばさん「あら、どうしたの?」
黒髪女「あなたは元気でいいわねえ……」
黒髪女「私なんか、毎日毎日死にたくてたまらないってのに……」
おばさん「あなた、死にたいの?」
黒髪女「ええ、死にたいわ!」
黒髪女「毎日のように自殺未遂して、ほら手首も傷だらけ!」サッ
おばさん「ふうん、そうなの」
22: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:11:09.866 ID:YYT1BgfV0
おばさん「なら、この味……試してみる?」
黒髪女「なにこれ?」
おばさん「死にたいんだったら、なんでも飲めるはずでしょ?」
黒髪女「そ、そうね。飲んでやるわよ!」ゴクッ
黒髪女「……!」
黒髪女「ぐえええええええ……っ!!?」
黒髪女「なにこれ?」
おばさん「死にたいんだったら、なんでも飲めるはずでしょ?」
黒髪女「そ、そうね。飲んでやるわよ!」ゴクッ
黒髪女「……!」
黒髪女「ぐえええええええ……っ!!?」
26: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:14:02.932 ID:YYT1BgfV0
黒髪女(なにこれ、猛毒……!?)
黒髪女(く、苦しい……! 死ぬ……!)
黒髪女「じにだくない! じにだくない! た、助けて……っ!」
黒髪女「だぁずげでぇぇぇぇぇ……!!!」
おばさん「安心なさい」
黒髪女「え」
おばさん「今飲ませたのは、ただの青汁だから」
黒髪女「!」
おばさん「これでもう、死にたいなんて気分、吹っ飛んじゃったでしょ?」
黒髪女「……はい」
黒髪女(く、苦しい……! 死ぬ……!)
黒髪女「じにだくない! じにだくない! た、助けて……っ!」
黒髪女「だぁずげでぇぇぇぇぇ……!!!」
おばさん「安心なさい」
黒髪女「え」
おばさん「今飲ませたのは、ただの青汁だから」
黒髪女「!」
おばさん「これでもう、死にたいなんて気分、吹っ飛んじゃったでしょ?」
黒髪女「……はい」
31: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:17:16.894 ID:YYT1BgfV0
バイト娘「うーむ、いくら青汁とはいえ、あんなに苦しむものなんですかね?」
店長「あれは“死食”だ」
バイト娘「死食……!?」
店長「試食のおばさんほどになると、試食で“死の恐怖”を味わわせることもできる」
店長「いってみれば、死を試させることができる」
店長「彼女はああやって、何人もの自殺志願者を救ってきたんだよ」
バイト娘「今回の女性も、まるで憑き物が落ちたような表情になってますね」
店長「あれは“死食”だ」
バイト娘「死食……!?」
店長「試食のおばさんほどになると、試食で“死の恐怖”を味わわせることもできる」
店長「いってみれば、死を試させることができる」
店長「彼女はああやって、何人もの自殺志願者を救ってきたんだよ」
バイト娘「今回の女性も、まるで憑き物が落ちたような表情になってますね」
34: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:21:13.755 ID:YYT1BgfV0
ズイッ
美食家「君が噂の試食のおばさんかね」
おばさん「いらっしゃいませー!」
美食家「私は美食というものを極めに極めた者なのだが……」
おばさん「まぁ、すごい!」
美食家「君の考える“最高の美食”というものをぜひとも食させて頂きたい」
おばさん「かしこまりました~!」
店長「あの美食家、よくグルメ番組に出てる本物の食通だ……」
バイト娘(一体どうするんだろ……!?)ゴクッ
美食家「君が噂の試食のおばさんかね」
おばさん「いらっしゃいませー!」
美食家「私は美食というものを極めに極めた者なのだが……」
おばさん「まぁ、すごい!」
美食家「君の考える“最高の美食”というものをぜひとも食させて頂きたい」
おばさん「かしこまりました~!」
店長「あの美食家、よくグルメ番組に出てる本物の食通だ……」
バイト娘(一体どうするんだろ……!?)ゴクッ
35: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:23:00.216 ID:QAB++oY/0
海原っぽい奴来てんじゃねーよ
38: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:24:16.283 ID:YYT1BgfV0
おばさん「どうぞ。この味……試してみて」サッ
美食家「一本の爪楊枝に、冷凍食品の天ぷらソーセージエビチリが刺さっている……」
美食家「いただこう」モグッ
美食家「こ、これは……!?」
美食家「一本の爪楊枝に……和洋中のエッセンスが全て込められている!」
美食家「まさしく、これぞ……最高の美食の一種といっても過言ではあるまい!」
店長「なるほど、天ぷらソーセージエビチリは和洋中の代表料理……」
店長「それをまとめて味わえば、和洋中の真髄を同時に感じることができるというわけか!」
バイト娘(天ぷらソーセージエビチリって、和洋中の代表だったんだ……)
美食家「一本の爪楊枝に、冷凍食品の天ぷらソーセージエビチリが刺さっている……」
美食家「いただこう」モグッ
美食家「こ、これは……!?」
美食家「一本の爪楊枝に……和洋中のエッセンスが全て込められている!」
美食家「まさしく、これぞ……最高の美食の一種といっても過言ではあるまい!」
店長「なるほど、天ぷらソーセージエビチリは和洋中の代表料理……」
店長「それをまとめて味わえば、和洋中の真髄を同時に感じることができるというわけか!」
バイト娘(天ぷらソーセージエビチリって、和洋中の代表だったんだ……)
41: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:27:16.158 ID:YYT1BgfV0
バイト娘「すごいですねえ……」
バイト娘「試食のおばさんの手にかかれば、どんなお客さんも満足させちゃいますね!」
店長「いや、そうでもないんだ」
店長「一人だけ……このスーパーには、彼女でも敵わない常連客がいるんだ」
バイト娘「え!?」
ケチ「クックック……」ザッ
バイト娘「試食のおばさんの手にかかれば、どんなお客さんも満足させちゃいますね!」
店長「いや、そうでもないんだ」
店長「一人だけ……このスーパーには、彼女でも敵わない常連客がいるんだ」
バイト娘「え!?」
ケチ「クックック……」ザッ
43: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:29:21.786 ID:YYT1BgfV0
ケチ「よう、おばさん」
おばさん「あら、いらっしゃい」
ケチ「試食させてもらおうか……ただし!」
ケチ「試食しても、絶対買わないがな!」
ドンッ!
バイト娘「あんな堂々と宣言するなんて……!」
バイト娘(なるほど、この人が……試食のおばさんの天敵なのね!)
おばさん「あら、いらっしゃい」
ケチ「試食させてもらおうか……ただし!」
ケチ「試食しても、絶対買わないがな!」
ドンッ!
バイト娘「あんな堂々と宣言するなんて……!」
バイト娘(なるほど、この人が……試食のおばさんの天敵なのね!)
45: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:33:26.609 ID:YYT1BgfV0
おばさん「熱々の焼き肉の味……試してみる?」
ケチ「肉なんか買わないが食ってやる!」モグッ
ケチ「あつっ! あつっ!」ハフハフッ
ケチ「うおっ、汗出てきた!」ダラダラ
ケチ「アイス買ってこ! ――3000円分ぐらい買わなきゃ!」
おばさん「ありがとうございました~!」
バイト娘「えええええ!?」
バイト娘(試食させて他の物を買わせるなんて、なんて高等テクニック!)
ケチ「肉なんか買わないが食ってやる!」モグッ
ケチ「あつっ! あつっ!」ハフハフッ
ケチ「うおっ、汗出てきた!」ダラダラ
ケチ「アイス買ってこ! ――3000円分ぐらい買わなきゃ!」
おばさん「ありがとうございました~!」
バイト娘「えええええ!?」
バイト娘(試食させて他の物を買わせるなんて、なんて高等テクニック!)
46: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:34:50.228 ID:wRisJ8Iir
買いすぎw
47: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:35:56.112 ID:YYT1BgfV0
バイト娘「さすが、試食のおばさん!」
バイト娘「天敵もあっさりとやり過ごしましたね!」
店長「天敵?」
バイト娘「はい、たった今ケチなお客にアイス買わせたじゃないですか。あんな大量に」
店長「彼はおばさんの天敵なんかじゃないよ。どっちかというとお得意様」
バイト娘「え?」
店長「噂をすれば、来たぞ……!」
バイト娘「天敵もあっさりとやり過ごしましたね!」
店長「天敵?」
バイト娘「はい、たった今ケチなお客にアイス買わせたじゃないですか。あんな大量に」
店長「彼はおばさんの天敵なんかじゃないよ。どっちかというとお得意様」
バイト娘「え?」
店長「噂をすれば、来たぞ……!」
48: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:39:19.140 ID:YYT1BgfV0
おじさん「やぁ」
おばさん「この味……試してみる?」
おじさん「試さない」
おじさん「買うよ」
おばさん「あ……そう」
バイト娘「おばさんの試食を断るだなんて……! 試さないなんて……!」
店長「あのおじさんこそ、おばさんと張り合える天敵。人呼んで――」
おばさん「この味……試してみる?」
おじさん「試さない」
おじさん「買うよ」
おばさん「あ……そう」
バイト娘「おばさんの試食を断るだなんて……! 試さないなんて……!」
店長「あのおじさんこそ、おばさんと張り合える天敵。人呼んで――」
49: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:41:19.262 ID:YYT1BgfV0
店長「≪ぶっつけ本番おじさん≫だ」
バイト娘「ぶっつけ本番おじさん……!」
店長「絶対“事前に試してみる”という行為をせず、いつもぶっつけ本番なんだ」
店長「しかし、それで人生うまくいってるようだから、大したものだよ」
バイト娘「へぇ~……」
バイト娘(≪試食のおばさん≫と≪ぶっつけ本番おじさん≫……たしかに相性最悪かも)
強盗「――おい」
バイト娘「いらっしゃいま……きゃーっ!」
バイト娘「ぶっつけ本番おじさん……!」
店長「絶対“事前に試してみる”という行為をせず、いつもぶっつけ本番なんだ」
店長「しかし、それで人生うまくいってるようだから、大したものだよ」
バイト娘「へぇ~……」
バイト娘(≪試食のおばさん≫と≪ぶっつけ本番おじさん≫……たしかに相性最悪かも)
強盗「――おい」
バイト娘「いらっしゃいま……きゃーっ!」
51: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:43:05.946 ID:YYT1BgfV0
強盗「コイツで刺されたくなきゃ、金出しな……」
バイト娘「ひいいっ……!」
店長「わわ、ま、待ちなさい! その包丁を下ろしなさい!」
強盗「待てねえ! もう甘く刺しちゃう!」
バイト娘「きゃーっ!」
おばさん「やあねえ。もうすぐ閉店って時に、強盗が現れるなんて……!」
おじさん「あの無計画っぷりには親近感を覚えるが、強盗は感心せんな」
おばさん「行くわよ!」ダッ
おじさん「ああ」ダッ
バイト娘「ひいいっ……!」
店長「わわ、ま、待ちなさい! その包丁を下ろしなさい!」
強盗「待てねえ! もう甘く刺しちゃう!」
バイト娘「きゃーっ!」
おばさん「やあねえ。もうすぐ閉店って時に、強盗が現れるなんて……!」
おじさん「あの無計画っぷりには親近感を覚えるが、強盗は感心せんな」
おばさん「行くわよ!」ダッ
おじさん「ああ」ダッ
52: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:45:36.497 ID:YYT1BgfV0
おばさん「この鋭さ……試してみる?」
おばさん「爪楊枝投げ!」ヒュババババッ
グササササッ
強盗「ぐああっ……!」
おばさん「今よ、逃げて!」
バイト娘「ありがとうございます!」ササッ
強盗「くっ、ふざけやがって……!」
おじさん「おっと、君の相手はこの僕がしよう」
強盗「あぁん!? おっさん、ケンカできるのかよ!?」
おじさん「昨日、たまたま柔道の本を読んだんだ。覚えた技をぶっつけ本番で使ってみたい」
強盗「ナメてんじゃねえぞ、てめえ!」
おばさん「爪楊枝投げ!」ヒュババババッ
グササササッ
強盗「ぐああっ……!」
おばさん「今よ、逃げて!」
バイト娘「ありがとうございます!」ササッ
強盗「くっ、ふざけやがって……!」
おじさん「おっと、君の相手はこの僕がしよう」
強盗「あぁん!? おっさん、ケンカできるのかよ!?」
おじさん「昨日、たまたま柔道の本を読んだんだ。覚えた技をぶっつけ本番で使ってみたい」
強盗「ナメてんじゃねえぞ、てめえ!」
55: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:47:39.121 ID:YYT1BgfV0
おじさん「ぶっつけ本番背負い投げ!」ガシッ
おじさん「ふんっ!」ブオンッ
強盗「あら?」グルンッ
ドズゥンッ!
強盗「ぐええ……っ!」
強盗「ぶっつけ本番で、この威力か……」ガクッ
おじさん「ふんっ!」ブオンッ
強盗「あら?」グルンッ
ドズゥンッ!
強盗「ぐええ……っ!」
強盗「ぶっつけ本番で、この威力か……」ガクッ
57: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:50:06.668 ID:YYT1BgfV0
おばさん「イェーイ!」
おじさん「イェイ」
パシーンッ
バイト娘「すごい……息ピッタリ!」
店長「そりゃそうさ。なにしろ、あの二人は――」
おじさん「イェイ」
パシーンッ
バイト娘「すごい……息ピッタリ!」
店長「そりゃそうさ。なにしろ、あの二人は――」
58: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:52:23.525 ID:YYT1BgfV0
店長「れっきとした夫婦だからね」
バイト娘「ご夫婦だったんですか! どうりで……」
バイト娘「お子さんはいらっしゃるんですか?」
店長「たしか息子さんが一人いたはずだよ」
店長「もう結構大きくて、すでに家は出てるはずだけど」
バイト娘「へぇ~」
バイト娘「ご夫婦だったんですか! どうりで……」
バイト娘「お子さんはいらっしゃるんですか?」
店長「たしか息子さんが一人いたはずだよ」
店長「もう結構大きくて、すでに家は出てるはずだけど」
バイト娘「へぇ~」
59: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:52:48.751 ID:ZreAJ+aRr
夫婦か
60: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:54:53.465 ID:YYT1BgfV0
おばさん「店長、今日はこれで失礼します」
店長「お疲れ様、旦那さんと一緒に帰って下さい」
おばさん「今度あの子、帰省するらしいから、いっぱい料理作ってあげなくちゃ!」
おばさん「もちろん、いっぱい味見しないとね!」
おじさん「味見なんかしなくていいよ。ぶっつけ本番の料理こそ一番おいしいんだ」
おばさん「そんなことないわよぉ~」
ペチャクチャペチャクチャ…
店長「お疲れ様、旦那さんと一緒に帰って下さい」
おばさん「今度あの子、帰省するらしいから、いっぱい料理作ってあげなくちゃ!」
おばさん「もちろん、いっぱい味見しないとね!」
おじさん「味見なんかしなくていいよ。ぶっつけ本番の料理こそ一番おいしいんだ」
おばさん「そんなことないわよぉ~」
ペチャクチャペチャクチャ…
63: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 22:57:52.659 ID:YYT1BgfV0
バイト娘「……バラバラの二人でしたね」
店長「だけどあれで仲がいいし、夫婦円満の秘訣ってのは案外磁石のN極とS極のように」
店長「二人が正反対であることかもしれないな」
バイト娘「そんな二人に挟まれる息子さんは大変だったでしょうけどねぇ」
店長「まったくだ」
バイト娘(息子さんがどんな人か気になるなぁ……)
店長「さあて、我々も事務所でテレビでも見て一息ついてから、帰るとしようか」
バイト娘「はい!」
店長「だけどあれで仲がいいし、夫婦円満の秘訣ってのは案外磁石のN極とS極のように」
店長「二人が正反対であることかもしれないな」
バイト娘「そんな二人に挟まれる息子さんは大変だったでしょうけどねぇ」
店長「まったくだ」
バイト娘(息子さんがどんな人か気になるなぁ……)
店長「さあて、我々も事務所でテレビでも見て一息ついてから、帰るとしようか」
バイト娘「はい!」
64: VIPがお送りします 2018/07/23(月) 23:00:17.017 ID:YYT1BgfV0
店長「おや、若い青年がテレビに出てるね」
バイト娘「あ、この人、たしかノーベル賞を取った人ですよ!」
記者『このたびは、これまでにない精度でシミュレーションを行えるコンピュータを開発し』
記者『ノーベル賞を受賞されましたが……作ろう、と思ったきっかけは何でしょう?』
青年『僕の両親は非常に両極端でしてね』
青年『父は何でもぶっつけ本番で挑ませる人、母は何でも試させる人、だったんです』
青年『なので、完璧なシミュレーションをこなせるコンピュータを作れば』
青年『ぶっつけ本番や、闇雲に何でも試す、というのを避けられると思いまして……』
おわり
バイト娘「あ、この人、たしかノーベル賞を取った人ですよ!」
記者『このたびは、これまでにない精度でシミュレーションを行えるコンピュータを開発し』
記者『ノーベル賞を受賞されましたが……作ろう、と思ったきっかけは何でしょう?』
青年『僕の両親は非常に両極端でしてね』
青年『父は何でもぶっつけ本番で挑ませる人、母は何でも試させる人、だったんです』
青年『なので、完璧なシミュレーションをこなせるコンピュータを作れば』
青年『ぶっつけ本番や、闇雲に何でも試す、というのを避けられると思いまして……』
おわり