男「夏のボーナス、棒とナスしか出なかったよ……」嫁「諦めないであなた!」

2019年02月04日
男「夏のボーナス、棒とナスしか出なかったよ……」嫁「諦めないであなた!」

1: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:21:39.788 ID:4LY9dpjX0
<会社>

社長「今年の夏のボーナスは……棒とナスだ」

男「あの……冗談ですよね?」

社長「冗談ではない、マジなんだ」

男「いやいやいや! 夏のバケーションとか! 家のローンとか! どうすればいいんですか!?」

社長「……何とかやりくりして欲しい」

男「社長のオタンコナス!!!」

社長「すまん……!」

5: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:23:31.577 ID:4LY9dpjX0
<家>

男「……というわけなんだ。散々粘ったけど、大量の棒とナスしかもらえなかった」

嫁「…………」

少年「…………」

男「小さい会社だし、業績も今は厳しいし」

男「今年はあまりボーナス出ないだろうなとは思ってたけど、まさかこんなことになるなんて……」

男「本当に……ごめんっ!」

嫁「諦めないで、あなた!」

6: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:24:24.161 ID:4LY9dpjX0
嫁「このナスを……料理するのよ!」

男「料理!?」

男「おいおい、ナスなんてあまり味がないし、見た目も地味だし、どことなく卑猥だし」

男「割り箸刺して馬にするぐらいしかないダメ野菜じゃないか!」

嫁「そんなことないわ……」

嫁「あなたがあまり好きじゃないっていうから、ナス料理を披露する機会はなかったけど」

嫁「今こそ私の本気、見せてあげる!」

10: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:26:04.223 ID:4LY9dpjX0
嫁「できたわ!」

嫁「ナスの天ぷら、焼きナス、ナスの味噌炒め、和え物、麻婆ナス……」

男「ふん、せっかく作ってくれたところ悪いが、ナス料理なんて……」

少年「お父さん、食わず嫌いしないで食べようよー」

フワッ…

男(いい匂いがする……)

男「いいだろう……食ってやる! ただし、一口だけだからな!」モグッ

男「!!!」ビビビッ

13: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:28:04.068 ID:4LY9dpjX0
男「こりゃうまい!」

男「このナスの天ぷら、サクサクしててなおかつとてもジューシィだ!」サクサクッ

男「焼きナスも、噛むごとにナスの汁が口の中に広がっていく!」モグモグ

男「ナスの味噌炒め! ご飯が進む進むぅぅぅぅぅ!」バクバクバク

男「た、たまらん! ナスってのはこんなにおいしかったのか!」

嫁「まだまだあるわよ~」

嫁「なんたって、あなたが山ほどナスをもらってきてくれたからね!」

男「も、もっとだ……! もっと食わせてくれぇぇぇ!!!」

16: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:29:46.928 ID:4LY9dpjX0
男「ごちそうさま……いやぁ~、おいしかった」

少年「ご近所にもおすそわけしたけど、大好評だったよ!」

嫁「うふっ、喜んでもらえて嬉しいわ」

嫁「あ、そうだ!」

男「どうした?」

嫁「私、ナス食堂を開いてみる! きっと家計の足しになるわよ!」

男「そりゃいい!」

少年「お母さんの腕なら絶対繁盛するよ!」

18: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:31:17.635 ID:4LY9dpjX0
<ナス食堂>

ワイワイ… ガヤガヤ…

「すんませーん、ナス定食ください!」 「ナスのソテーおかわり!」 「ナスの活け造りください!」



嫁「おかげさまで大繁盛だわ~」

男「ナスってすごいんだな……」

少年「今度、テレビ取材も来るみたいだよ!」

嫁「あらやだ、だったらお化粧しないと」ヌリヌリ

男「俺も勝負パンツにしないと!」ヌギヌギ

20: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:33:11.844 ID:4LY9dpjX0
嫁「おかげさまで大儲けできたわ! 見て、この諭吉の数!」ペラララララ…

男「た、たまりませんな!」

嫁「もっと儲けるにはどうしたらいいかしら?」

男「そうだな……メイドカフェみたいにコスプレしてみるとか?」

嫁「メイドカフェじゃ平凡ね……。いっそナース服なんてどう?」

男「うひょーっ!!!」

少年「…………」

男「あれ、どうした? お父さんとお母さんが金儲けに走ってるのが嬉しくないのか?」

少年「ううん、大儲けできたのは嬉しいよ。儲けるのは資本主義の醍醐味だから」

男「じゃあ、なんで落ち込む?」

22: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:34:32.813 ID:4LY9dpjX0
少年「だってこのままじゃ……」

男「?」

少年「棒が可哀想で……」グスッ…

男「!」ハッ

嫁「!」ハッ

26: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:36:33.537 ID:4LY9dpjX0
男「たしかに……俺たちはナスばかりかまって、“棒ナス”の棒の存在を忘れていた!」

嫁「そうね……このままじゃ可哀想だわ! 仲間外れにされてるみたい!」

男「俺も子供の頃は、よくみんなから仲間外れにされたものさ」

男(しかし、ナスと違って、棒に使い道なんて……)

男「……そうだ!」

男「近所に棒術の道場があるし、家族みんなで棒術を習おう!」

嫁「ナイスアイディア!」

28: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:40:38.290 ID:4LY9dpjX0
……

男「今日の稽古も厳しかったな……」スタスタ

男(……殺気!?)

強盗「金を出せ!」サッ

男「金? そんなものないな」

強盗「ンだと!? このピストルが見えねェのか!? 出さねぇと……」

男「……撃ってみろよ」

強盗「なめんなーっ!」パンッ

30: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:43:11.796 ID:4LY9dpjX0
ギュルルルルッ

ギィンッ!

強盗「え!?」

男「棒を高速回転させれば、銃弾を叩き落とすこともたやすい……」ギュルルルルッ

強盗「バ、バカな!?」

男「一つ教えてやろう」

男「棒には刃もないし弾丸も発射できない……一見、貧相で頼りない武器に見えるだろう」

男「だが、そうではない」

男「棒とは、余計な不純物が一切ない“究極の武器”なのだ!」

32: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:44:47.960 ID:4LY9dpjX0
男(師範の教えを思い出せ……)ドクン…


師範『実戦において、そうやすやすとチャンスは訪れぬ……』

師範『コンマ数秒のチャンスを逃すな! 素早く正確に、急所を打つのだ!』


男(ノド、胸部、ミゾオチを素早く正確に打つ!)

ズドドドッ!

強盗「ぐえぇぇっ……」ドサッ…

男「雑魚が……」

36: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:46:35.589 ID:4LY9dpjX0
<家>

男「ただいまー」

嫁「お帰りなさい、遅かったわね」

男「ちょっと強盗退治しちゃってね」

嫁「ステキ!」

男「さて、金は儲かったし、腕っぷしも強くなったけど……気になることが一つ残ってる」

嫁「なに?」

男「社長だよ……あれから会社でも元気がなくてね。まるで、うつ病みたいになってるんだ」

嫁「なにか嫌な予感がするわね……」

男「社長のところに行ってみよう!」

38: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:48:54.503 ID:4LY9dpjX0
<会社>

社長「ハァ……」

社長「従業員に夏のボーナスすら出してあげられないとは……」

社長「ワシはなんという情けない社長なのだ!」

社長「首をくくって死のう……」

社長「そうすれば、生命保険が出て、ボーナスを払えるかもしれんしな……」

スッ…

39: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:50:40.735 ID:4LY9dpjX0
男「お待ち下さい!」

社長「き、君は……!」

嫁「死んではいけませんわ」

少年「そうだよ! ボクたちなら大丈夫だから!」

社長「おおっ、奥さんと息子さんまで!」

男「私たちだけではありません。従業員みんな、社長を恨んではいませんよ」

男「むしろ、“ナスがうまかった”“棒の凄さが分かった”と感謝しています!」

社長「しかし……会社の業績は落ちる一方……! これ以上生きてたって……」

男「たしかに業績は悪化してます……しかし、まだ会社が潰れたわけじゃないでしょう」

男「希望を持って下さい!」

男「なぜなら、ナスの花言葉は≪希望≫なのですから……!」

社長「…………」ジーン…

41: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:52:31.200 ID:4LY9dpjX0
嫁「社長さん、私のナス料理をどうぞ」

社長「…………」モグッ

社長「これはうまい!」

社長(ワシは実家のナス農家を継ぐのが嫌で、会社を立ち上げ社長になったが……)

社長(ナスってこんなにうまかったんだ……)

社長「分かった……死ぬのはやめよう」

社長「もう一度頑張るよ!」

男「その意気です、社長!」

44: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:55:54.547 ID:4LY9dpjX0
社長「これからはこれまでの事業に加えて、ナス事業に力を入れることにした!」

社長「加えて、棒術道場とも提携し、棒事業にも参画したいと考えている!」

社長「ついでにナスダックにも上場しちゃおっかな~……なんて」

社長「みんなで会社を立て直そうではないか!」



オーッ!!!

45: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:56:55.530 ID:4LY9dpjX0
<ナス食堂>

ワイワイ… ガヤガヤ…



嫁「今日も大忙しだわ~」

少年「行列が地平線の彼方まで続いてるよ!」

男「嫁の収入も俺の収入を地平線の彼方に置き去りにしてしまった……」

46: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 01:58:53.280 ID:4LY9dpjX0
季節は秋になった――

男「相変わらず君のナス料理はうまいな!」モグモグ…

少年「おいしー!」パクパク

嫁「…………」

男「あれ?」

男「こんなにおいしいナス料理なのに、どうして食べないの?」

嫁「だって……」

47: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:01:35.141 ID:4LY9dpjX0
嫁「『秋ナスは嫁に食わすな』っていうでしょ?」

男「あっ……」

嫁「どうやら分かったようね」

男「あああっ……!」

嫁「秋が終わるまで、私はナスを口にしちゃいけないの……」

男(なんてことだ……! だからナスを一口も食べなかったのか! こんなにうまいのに!)

男(いや、だけど……彼女がナスを食べられる方法が一つだけある!)

男「秋が終わるまで待つ必要はないよ!」

嫁「え?」

49: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:03:06.655 ID:4LY9dpjX0
男「離婚しよう」





嫁「あっ……なるほど!」

52: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:06:57.591 ID:4LY9dpjX0
男「それで、冬になったらまた結婚すればいい!」

嫁「すごい! その手があったわね!」

男「しかも、毎年これをやれば、毎年みんなから御祝儀もらえるぞ!」

嫁「エクセレント! あなたったら真っ黒!」

少年「ナスの紫色より真っ黒だよ!」

男「小学校の通知表では、≪一見いい子に見えますが、腹黒さがにじみ出てます≫と書かれたものさ」

54: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:08:44.065 ID:4LY9dpjX0
季節は冬になった――

<会社>

社長「今年ももうまもなく終わりを告げる。みんな、本当にご苦労だった」

社長「夏のボーナスでは、みんなには大変迷惑をかけた!」

社長「しかし、棒事業とナス事業が大成功し、我が社の業績は右肩上がりになっておる!」

社長「よって、冬のボーナスは大盤振る舞い!」

社長「数ヶ月分どころか、給料数年分の額を支払うつもりである!」

55: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:10:31.972 ID:4LY9dpjX0
えぇ~……!

男「冬のボーナスも棒とナスで出して下さいよー!」

「そうだそうだー!」

「現物支給がいいー!」 「ナスもっと食べたいんです!」 「新しい棒が欲しい!」

男「社長のオタンコナス!!!」

社長「すまん……!」







おわり

58: VIPがお送りします 2018/06/22(金) 02:15:32.585 ID:AbfUYRLbr

こんな棒とナスなら嬉しい…いややっぱお金でお願いします

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