男「猫カフェがあるぞ!」女「入ろう!」 猫「……いらっしゃい」

2019年01月03日
男「猫カフェがあるぞ!」女「入ろう!」 猫「……いらっしゃい」

1: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 04:56:43.895 ID:zuEPMbIi0
男「お、あんなとこに猫カフェがあるぞ! 最近増えたよな、猫カフェ」

女「ちょうど猫ちゃんをさわりたかったんだ~。入ろうよ!」

男「そうだな、一時間ぐらい猫とたわむれるってのもいいかも」

男「お邪魔しまーす!」

キィィ…

カランカラン…



猫「……いらっしゃい」

2: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 04:58:28.440 ID:zuEPMbIi0
男「え……」

女「あれ……」

男女(このカフェのマスター……猫じゃん!!!)

猫「……どうした? 入り口にぼーっと突っ立って」

男(しかも、やたら声渋いな!)

女(洋画の吹き替えとかできちゃいそうな声だわ!)

猫「好きな席にかけるといい」

男「じゃあ、カウンターで……」

女「私は隣……」

6: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:00:26.984 ID:zuEPMbIi0
男(静かなジャズが流れてて、雰囲気いいな……)

女(室内の装飾も、いかにもレトロな喫茶店って感じ……)

猫「二人ともコーヒーでいいか? 今日はいい豆を仕入れたんでな」

男「はい……」

女「はい……」

猫「元気がないな。借りてきた猫のように大人しくなっちまって」

猫「コーヒーができるまで時間がかかる。リラックスして、トークでも楽しんでくれ」

8: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:02:04.941 ID:zuEPMbIi0
男「あの……立派なお店ですね」

猫「そんなことない。猫の額みたいな狭さだろ」

女「えーと……どうして猫なのに言葉を話せるんですか?」

男「お、おいっ!」

猫「…………」ギロッ

女「ひっ!」

猫「冗談だ。当然の疑問だよな」

猫「長く生きてると、言葉のひとつやふたつ話せるようになるのさ」

猫「尻尾はまだ一本だがな」フリフリ

10: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:03:29.555 ID:zuEPMbIi0
猫「コーヒーだ。さ、飲んでくれ」

男「いただきます……」ゴクッ

女「私も……」ゴクッ

男「あ、うまい!」

女「おいしい!」

猫「ありがとう」

猫「お客の“うまい”“おいしい”は、どんなキャットフードよりも、俺にとってご馳走だよ」

11: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:06:26.146 ID:zuEPMbIi0
猫「ところでお前さんたち、さてはここを一般的な猫カフェだと思って入ったクチだろう?」

男女「!」ギクッ

猫「図星か。まあ、こちらも紛らわしい看板を出してすまなかった」

猫「他にいい名前も思いつかなかったんでな」

男「いえ、そんな……」

猫「コーヒーを褒めてくれた礼だ。一般的な猫カフェにいる猫のように、鳴いてやろう」

猫「にゃんっ♪」

男女(か、可愛い……!)

12: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:07:25.044 ID:zuEPMbIi0
男「あ、あのもう一回!」

女「今の、もう一回お願いします! スマホで撮りたい!」

猫「バカいえ……あんなの一回だけだ」

男女(照れてる姿も可愛い……!)

15: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:09:40.469 ID:zuEPMbIi0
バタンッ! カランカラン…

男女「!?」

チンピラ「おうおうおう! このドラ猫! 誰に断って、この土地に店を出してんだァ!」

猫「もちろん、役所に正式な手続きをして店を出してるよ」

チンピラ「あぁん!? この辺りじゃ、新しく店を出す時はオレに金を払うって決まりがあんだよ!」

猫「そんな決まりは知らんな」



男「みかじめ料ってやつか……!」

女「ど、どうしよう……!? 猫さんが危ないよ!」

17: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:12:03.441 ID:zuEPMbIi0
チンピラ「これ見ろ」サッ

チンピラ「でけえドスだろ? こいつで刺されたくねえだろ?」

猫「刃物をちらつかせれば、誰でも言うことを聞くとは思わないことだ」

チンピラ「ンだとコラァ!」

チンピラ「だったら望み通り、三味線にしてやるよ!」ビュオッ



女「キャーッ!!!」

18: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:14:14.235 ID:zuEPMbIi0
ジャキッ

チンピラ「うっ……!?」

チンピラ(オレの首筋に……爪が!)

猫「音楽は好きだが、あいにく楽器になる趣味はないんでな」

猫「窮鼠猫を噛むように……追い詰められた猫が人を噛むことだってあるんだ」

チンピラ「…………」ゴクッ

20: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:15:38.679 ID:zuEPMbIi0
チンピラ「ちっ、ちくしょう! なめやがって!」

チンピラ「いいか、オレの親分は“傷だらけの仁王”と恐れられてる――」

猫「ああ、よく知ってる」

チンピラ「え」

猫「なにせ、あいつのあの傷は俺がつけたもんだからな」

猫「もっとも今では、あいつとは大の親友だが……」

チンピラ「あ、あ、あ……親分のお知り合い……?」

チンピラ「すみませんでしたぁ~!」タタタタタッ

猫「やれやれ、手下の教育がなっていないな」



男「すっげえ……」

女「刃物を持ったチンピラをあっさり追い返しちゃった……」

24: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:18:04.127 ID:zuEPMbIi0
ブロロロロロ… キキッ



女「あれ、店の前におっきいリムジンが止まったよ」

男「なんだろう?」

猫「……またか」

26: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:19:20.092 ID:zuEPMbIi0
カランカラン…

社長「猫くん!」

猫「……なんだ、社長」



男「ん? あの人、どこかで見たことあるような……たしかテレビで……」

女「あれよ! ≪ドトーバックス≫の社長よ!」

男「ホントだ! なんで世界的カフェの社長が、この猫カフェに……!?」

29: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:21:39.178 ID:zuEPMbIi0
社長「用というのは他でもない」

社長「ぜひ、我が社のイメージキャラクターになってくれ!」

社長「君のような喋る猫がイメージキャラクターになれば、我が社の売上は倍増する!」

猫「その話は断る……といったはずだ」

猫「俺は目立つのが嫌いなんだ。大企業の客寄せパンダになるのはゴメンだ」

33: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:23:26.765 ID:zuEPMbIi0
社長「…………」

社長「これでもかね?」カパッ

猫「……金、か」



男「うわっ!? トランクぎっしりの札束だ!」

女「いったいいくら入ってるの!? 何千万とか?」

男「そんなもんじゃない……億はいってるだろ」

女「億ゥ!?」

38: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:25:10.368 ID:zuEPMbIi0
猫「社長……俺が金になびく猫だと思ってるのか? だとしたら見くびられたもんだな」

猫「そういうのを“猫に小判”というんだ」

社長「うっ……!」

猫「帰ってくれ……これ以上粘られると出入り禁止にせざるえない」

社長「す、すまなかった! ここのコーヒーを飲めなくなるのはイヤだ! 許してくれ……!」



男「うおおお……!」

女「大企業の社長が猫に平謝りしてる……!」

42: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:28:07.633 ID:zuEPMbIi0
カランカラン…

美女「ごきげんよう」

猫「……久しぶりだな」



男「うはっ! 今度の客はすっげえ美人!」デレー…

女「うぐぐ……たしかに嫉妬する気にならないほどの美人だわ……」

女「その気になれば、今すぐモデルにでも女優にでもなれそう……」

43: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:30:09.556 ID:zuEPMbIi0
美女「来月……結婚することになったの」

猫「そうか」

美女「相手は……大財閥の御曹司よ。パーティーで一目惚れされちゃったの」

猫「……おめでとう」



男「やっぱり、あんな美女と結婚できるのは、大金持ちなんだなぁ……」

女「私は、貧乏人と結婚することになりそう……」

男「誰のこと?」

44: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:32:11.036 ID:zuEPMbIi0
美女「今でも昨日のことのように思い出すわ。あなたに振られたあの日のこと……」

猫「……すまない」

猫「お前の気持ちに応えてやれなくて……」

美女「ううん、いいの」



男女「ええええええええええ!?」

男「し、しかし、あの猫さんならあの美女と並んでも絵になる……」

女「たしかに……」

50: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:35:23.019 ID:zuEPMbIi0
美女「最後に、この首輪を贈るわ」

美女「もし……私より下の女とくっついたら、許さないんだから」

猫「猫に鈴をつける、というわけか」

猫「俺が結婚する時は……お前以上の女を選ぶ。約束する」

美女「私の気持ち、受け取ってくれてありがと」

猫「お幸せにな」チリン…



男女(とてもなにか口を挟める雰囲気じゃない……)

53: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:38:19.286 ID:zuEPMbIi0
男(また客が俺たちだけになった……)

男「……うん、うまい」ゴクッ

女「ここのコーヒー、どうしてこんなにおいしいんだろうね?」

男「そりゃ、あの猫さんの腕もあるだろうけど……やっぱり豆が違うんだろ、豆が」

女「どう違うの?」

男「いや、俺あまりコーヒー詳しくないし……ってあれ?」

55: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:39:54.201 ID:zuEPMbIi0
コロコロ…

男「あんなところにフンが落ちてる」

女「ホ、ホントだ! 誰のだろ!?」


猫「それは……俺のだ」


男女「え!?」

57: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:41:47.440 ID:zuEPMbIi0
猫「さっき、どうしても砂のトイレまで我慢できず、つい出してしまったんだ」

猫「俺のフンは汚くはないが、できれば保健所には黙っておいてくれ」

猫「叱られてしまうんでな」

男「ええ、いうつもりはないんで、安心して下さい」

女「……あ、そういえば!」

男「どうした?」

58: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:45:05.263 ID:zuEPMbIi0
女「私聞いたことあるんだけど、ある種の猫のフンってコーヒーの材料になるんだって!」

男「あ、それ知ってる!」

男「たしか、ジャコウネコって猫のフンが、コーヒーの材料としては最高級らしい!」

女「ここのコーヒーがこんなにおいしい理由も分かってきたね!」

男女「つまり、マスターの正体は……」

63: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:50:45.121 ID:zuEPMbIi0
男女「ジャコウネコだ!!!」

猫「いや、ただの雑種だ」

男「なんだよ!」

女「雑種かーい!」

猫「雑種で何が悪い!」

男女「!!!」ビクッ

猫「雑種だろうがなんだろうが猫は猫! そこに貴賎などない!」

猫「だいたい雑種だからといって、低く見る傾向は以前から感心しなかった……」クドクドクドクドクド



男「完全無欠に見えて、妙なコンプレックス持ってるんだな……」ヒソヒソ

女「でも、こういうところがある方が親しみ持てるかも……」ヒソヒソ

70: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:53:50.048 ID:zuEPMbIi0
男「ごちそうさまでした!」

女「コーヒー、とてもおいしかったです!」

猫「こちらこそ楽しかったよ」

猫「気が向いたら……また遊びに来てくれ」チリン…

男「はい! ここのコーヒーの味は忘れられませんよ!」

女「またこの二人で来ます!」

71: VIPがお送りします 2018/05/01(火) 05:56:12.376 ID:zuEPMbIi0
男「最初は面食らったけど、とてもいい猫カフェだったな」

女「私、あのマスターにすっかり癒やされちゃった~」

男「また来ような!」

女「うん!」


あなたも休みの日には、こんな猫カフェはいかがですか?







~おわり~

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