男「新入社員が入ってきたから先輩風を吹かせてやる!」ビュゴォォォォォォォ 後輩女「すごい風だわっ!」

2019年02月12日
男「新入社員が入ってきたから先輩風を吹かせてやる!」ビュゴォォォォォォォ 後輩女「すごい風だわっ!」

1: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:27:21.989 ID:6LwgLd3o0
上司「今年は、うちの課に新人が入ることになった」

男「え、ホントですか!?」

上司「ついに君も先輩になるということだな」

上司「教育は任せるから、よろしく頼む」

男「はいっ!」

男(入社三年目にして、やっと俺にも直属の後輩が……よーし、頑張るぞ!)

2: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:30:08.225 ID:6LwgLd3o0
上司「今日からうちの課に配属された子だ。みんなで指導してあげてくれ」

後輩女「よろしくお願いしますっ!」

男(おお、まさかの女の子とは)

男(だが、下心を出すつもりはない……俺はこの子を一人前の社会人に教育してやるんだ!)

男(――先輩として!)ビュオッ

3: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:31:53.014 ID:6LwgLd3o0
後輩女「先輩、社会人にとって大切なことを教えて下さい!」

男「それはもちろん、報告・連絡・相談だな」

後輩女「ホウレンソウですね!」

男「その通り!」

男「個人が好き勝手に動いたら、組織というものは成り立たなくなってしまうからな」

男「どんなに小さなことでも、必ず報・連・相を忘れるな。それが社会人ってもんだ」

後輩女「はいっ!」

男(やっべえ、先輩風吹かすの気持ちいい……)ビュオッ

7: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:34:20.655 ID:6LwgLd3o0
後輩女「だけど、人に聞いたり相談するのって結構勇気がいるんですよね」

後輩女「“そんなこといちいち報告するな!”って怒られちゃいそうで」

男「まあ、中にはそういう人もいるな。実際、俺もそんな風に怒られたことがある」

後輩女「やっぱり……」

男「だけど、社会人ってのはそういうのを乗り越えていかなきゃならない部分もあるし……」

男「それに、俺はどんな時でも必ず相談に乗ってやるから心配するな!」

後輩女「ありがとうございます!」

男(超気持ちいい~!)ビュオオッ

9: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:35:28.202 ID:6LwgLd3o0
後輩女「えーっと……」モタモタ…

男「お、やってるな。大丈夫か?」

後輩女「は、はい! もうすぐ終わります!」

男「そうか……ほらっ、コーヒー」

後輩女「あ、いただきます!」

後輩女「……」ゴクゴク

後輩女「……おいしい」

男「仕事を頑張った後のコーヒーの味は格別だろ」

男(俺もよく、こうやって先輩からコーヒーをおごってもらったもんだ……)ビュオオオッ

11: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:37:37.542 ID:6LwgLd3o0
男「メシおごってやるよ。ついてきな!」

後輩女「はいっ!」

男「駅前の路地に、安くてうまいいい店があるんだ」ビュオオオッ



上司「あいつ、先輩風吹かせまくってるな」

先輩「今までずっと下っ端でしたからね、嬉しいんでしょうよ」

先輩「あいつのいう“いい店”って、俺が教えた場所ですしね」

上司「ふふっ、そのことは後輩ちゃんには内緒だぞ」

12: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:39:25.312 ID:6LwgLd3o0
後輩女(なかなか終わらない……)カタカタ…

男「どれ、手伝ってやるよ!」

後輩女「せ、先輩!?」

後輩女「でも、先輩も自分の仕事があるのに……」

男「なぁに、俺のは明日でも大丈夫なやつだしさ」

後輩女「ありがとうございます……」

男「気にするなって! キツイ時にはどんどん先輩に頼れ!」ビュオオオッ

17: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:42:23.493 ID:6LwgLd3o0
五月になり――

後輩女「……ふう」

男「どうした?」

後輩女「あ、いえ……ちょっと疲れてしまって……」

男「そういう時はな、パーッと飲みに行こう! パーッと!」

男「今の若い人は酒離れしてるらしいけど、やっぱり酒があった方が腹を割って話せるしさ」

後輩女「は、はい!」

18: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:43:46.610 ID:6LwgLd3o0
男「……会社はどうだ?」

後輩女「仕事は面白いですし、先輩がたもいい人ですし、やりがいはあります」

後輩女「でも……」

男「でも?」

後輩女「このままずっと、この仕事を続けられるかって不安もあって……」

後輩女「先輩たちのやってる仕事が、私にも出来るようになるのかなって……」

男「……俺も、そうだったよ」

後輩女「先輩も?」

男「みんなそうだ。社会という荒波に船をこぎ出して、不安になるのは当たり前だ」

21: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 04:52:50.557 ID:6LwgLd3o0
男「だけど、不安がってるだけじゃ、人は成長できない!」

後輩女「!」

男「失敗したって、俺や先輩や、上司もいる!」

男「まだお前は新入社員なんだ。新人って免罪符があるんだ。いくらでもミスしたっていいんだ!」

男「いや、今のうちにどんどんミスするつもりで仕事しろ!」

男「いずれ、ミスを許されないポジションになった時のためにも、な……」

後輩女「先輩……!」

男(ああ……今の俺、最高にかっこいい!)ビュオオオオオッ

26: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:05:53.982 ID:6LwgLd3o0
男「じゃ、今日から徐々に担当先を引き継いでいくから」

後輩女「は、はいっ!」

男「大丈夫だって! 最初はおつかいしか用がないような、小さなところだけ任せるから!」

男「それに何かトラブルがあったら、俺もちゃんとフォローするから!」ビュオッ

男「大船に乗ったつもりで、ついてこい!」ビュオオオオッ

後輩女「すごい風だわっ!」

バサバサッ バサバサッ

先輩「わわっ! あいつの先輩風がすごすぎて……!」

上司「書類が……! ああっ、窓の外に!」

27: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:06:22.510 ID:6LwgLd3o0
男「一年目から完璧な仕事をする必要はない。まずはじっくり……」ビュゴォォォォォォォッ


バサバサッ バサバサッ バサササッ


後輩女「キャーッ!!!」

先輩「お、おい! どうなってんだ、まるで台風だ!」

上司「やめろ! 先輩風吹かすのを止めろォォォ!」

28: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:06:52.977 ID:6LwgLd3o0
男「アーッハッハッハッハッハ!!!」


ビュゴォォォォォッ!!!



………………

…………

……

31: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:08:03.849 ID:6LwgLd3o0
社長「う~む……おかげで社内がメチャクチャになってしまった」

上司「申し訳ありません……!」

男「先輩風を吹かせすぎました……!」

後輩女「先輩は悪くありません! 私のせいです!」

後輩女「私の成長が遅いから、先輩は……」

男「いや、いいんだ」

社長「……君」

男「はい」

男(先輩風を吹かせすぎて、ついに俺もクビか……)

33: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:09:20.793 ID:6LwgLd3o0
社長「実は我が社は、風力発電事業に参入することになってね」

男「は……?」

社長「君には、風力発電を担当してもらおう」ニコッ

男「俺が……発電を!?」

社長「もちろん、給料はぐんと増額する! 会社のためにその風を吹かせてくれ!」

男「分かりました……頑張ります!」

34: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:11:02.126 ID:6LwgLd3o0
それから――

後輩女「せんぱーいっ!」

男「おう!」ビュゴォォォォォォ

後輩女「今日も発電しまくってますねー!」

男「まぁなー!」ビュゴォォォォォ

男「今晩、電力おごってやるよ! スマホをあっという間に充電させてやる!」ビュゴォォォォォォッ

後輩女「ありがとうございまーす!」

40: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:13:13.816 ID:6LwgLd3o0
そんなある日――

勇者「失礼」ザッ…

後輩女「はい?」

後輩女(なんだろ、この人……剣を持って、鎧なんか身につけて……)

勇者「ここで、風力発電をしてる人にお会いしたいのだが」

後輩女「はい……分かりました。こちらへどうぞ」

勇者「行くぞ」ザッ

巫女「ええ」ザッ

豪傑「おう!」ザッ

43: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:16:15.218 ID:6LwgLd3o0
男「私になんのご用でしょうか……?」

勇者「時間がない。単刀直入にいおう」

勇者「我々は魔王を倒すために旅をしている。私は“炎の勇者”だ」

巫女「わたくしは“水の巫女”でございます……」

豪傑「オレ様は“土の豪傑”だ!」

男「は、はぁ……」

勇者「そして、君は魔王を倒すために必要な四戦士の一人――“風の戦士”なのだ!」

男「なんですって!?」

男(俺が……風の戦士!?)

46: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:17:52.680 ID:6LwgLd3o0
勇者「火、水、土、風。この四人が揃わなければ、魔王を倒すことはできない……」

勇者「君が会社員であることは重々承知だが、魔王討伐の旅に参加してもらえないだろうか」

男「……」

男「……分かりました!」

男「この世界の平和に俺の力が必要なら……行きます!」

勇者「……ありがとう」



後輩女(そんなっ、先輩っ……!)

49: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:19:09.389 ID:6LwgLd3o0
社長「君の力は惜しいが、世界平和のためならば仕方あるまい……」

上司「君の席は……残しておく。これは少しだが餞別だ」

先輩「くたばるんじゃないぞ!」

男「ありがとうございます、皆さん!」



後輩女「先輩……」

男「なぁに、泣きそうな顔してんだ! 大丈夫だ、俺は必ず戻ってくる!」

後輩女「待ってますからね……!」

51: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:20:17.253 ID:6LwgLd3o0
……

…………

後輩女「あ、この新聞を見て下さい!」

後輩女「先輩たち、大活躍してるみたいですよ!」


『勇者パーティー快進撃! ついに魔王軍最高幹部を撃破!』


上司「ほぉ~、上司として誇らしいよ」

先輩「あと残る敵といえば魔王ぐらいだし、世界が平和になる日も近いな!」

後輩女(魔王なんか風でふっ飛ばしちゃって下さいね……先輩!)

53: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:24:18.907 ID:6LwgLd3o0
~ 魔王城 ~

魔王「フハハハハ……!」ゴゴゴゴゴ…

勇者「くっ……!」

巫女「これが……魔王!」

豪傑「今までの奴らとはケタ違いだぜ……!」

魔王「なかなか手こずらせてくれたが……これで終わりだ、勇者ども!」

男(三人はもう重傷だ……まともに戦えない! 俺がやらなきゃ!)

男(こうなったら全身全霊をかけて、最高の技を叩き込んでやる!)ビュゴォッ

勇者「よ、よせ! その技は危険すぎる!」

男「危険を恐れてたら、魔王を倒すことはできない!」ビュゴォォォォォ…

54: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:25:06.453 ID:6LwgLd3o0
男(後輩……絶対に魔王を倒してやるからな!)

男「うおおおおおおおおおおおおっ! 俺の風パワーを凝縮させるッ!」ビュゴワッ

男「魔暴導風(アルティメット・ストーム)!!!」


ビュゴォォォォォォォッ!!!


魔王「ぐおあぁぁぁぁぁっ!?」メキメキメキッ…

魔王「ま、まさか、このワシがやられるとはぁ……ッ!」

男(や、やった……!)

57: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:26:12.735 ID:6LwgLd3o0
魔王「だが、一人で逝くことはせん、ぞ……」ニヤ…

魔王「風の戦士! 貴様も道連れにしてくれるわぁぁぁっ!」グワッ

男「うわっ!」

魔王「共に落ちようぞ! ……奈落へなァ!」

男「うわぁぁぁぁぁっ……!」

ヒュゥゥゥゥゥゥ…



勇者「二人とも、奈落の底に……!」

巫女「ああっ……なんてこと!」

豪傑「ちくしょう! これまでに奈落に落ちて戻ってこれた奴はいねえ!」

58: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:27:25.369 ID:6LwgLd3o0
勇者「――申し訳ありません!」

勇者「魔王は倒しましたが、彼は魔王もろとも奈落の底に……!」

上司「いえ、あなたに責任はありません……。しかし、残念です」

先輩「あいつ……くたばるんじゃねえっていったのに!」

後輩女「……」

上司「大丈夫かね? 君は特に彼と親しかったから……」

後輩女「大丈夫です!」

上司「!」

後輩女「先輩はきっと生きてます! ……いえ、絶対に!」ポロッ…

上司「そうだな……信じよう」





後輩女(私は働きながら先輩を待った……。だけど、先輩は戻ってこなかった……)

62: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:29:10.105 ID:6LwgLd3o0
~ 会社 ~

ビュゥゥゥゥゥ… ガタガタガタ…

上司「……風が強くなってきたな」

上司「今夜は台風が来るから、君は早めに帰宅しなさい」

後輩女「いえ……もう少しだけ残ります」

上司「仕事熱心なのはいいが、電車が止まらないうちに帰るんだぞ」

後輩女「はいっ!」

後輩女(この強風……先輩を思い出すわ)

63: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:30:43.625 ID:6LwgLd3o0
後輩女「……」ガラッ

上司「!? お、おい、こんな天気の時に、窓なんか開けたら……!」

後輩女「すみませんっ! 少しだけっ!」

ビュゥゥゥゥゥゥ… ビュゥゥゥゥゥゥ…


ビュゴォォォォォ…


後輩女(……あっ)

後輩女「台風の中に混じってる、この風は……!」

67: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:31:45.915 ID:6LwgLd3o0
後輩女「――先輩ッ!」




ビュゴォォォォォォッ!!!


男「……ただいま!」スタッ

68: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:33:17.737 ID:6LwgLd3o0
後輩女「やっぱり……生きてたんですね! 私、信じてました!」

男「ああ、奈落に落ちたくらいで死ぬもんかよ!」

後輩女「ですよね! 先輩は風で飛ぶことができますもんね!」

男「とはいえ、うまく上昇気流に乗れなきゃ、お陀仏だったけどな」

男「今晩はたっぷり土産話を聞かせてやる! 俺はお前の先輩だからな!」ビュゴォォォォォッ

後輩女「もう、相変わらずの先輩風なんだから!」







おわり

72: VIPがお送りします 2018/04/19(木) 05:37:24.800 ID:xWA8LXsJK
感動した
俺も頑張って先輩風吹かせよう

81: カッタ ◆E.57zN0DfI 2018/04/19(木) 06:04:02.222 ID:ZDRTePRR0
なんだろうこの疾走感

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