少女「このハゲーッ!!!」ハゲワシ「誰がハゲだ!」カメラマン「シャッターチャーンス!」パシャッパシャッ

2018年12月30日
少女「このハゲーッ!!!」ハゲワシ「誰がハゲだ!」カメラマン「シャッターチャーンス!」パシャッパシャッ

1: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:21:03.162 ID:U54rJ1830
<砂漠>

ザッザッザッ…

少女(熱い……喉渇いた……死ぬ……)

少女(あ~あ、こんなことなら≪女の子一人で砂漠横断!≫なんてバカなことするんじゃなかった……)

少女(もうダメ……)

少女「……ん?」

ハゲワシ「……」バッサバッサ

少女(なにあのハゲワシ……なんであたしについてくるの)

ハゲワシ「……」ニヤニヤ

少女(あいつ……もしかしてあたしを狙ってる!?)

3: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:24:38.912 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「……」ニヤニヤ

少女(気色悪い笑み浮かべて……あたしが死んだら食おうってのね)

少女(死ぬのは仕方ないとしても……死後あんなヤツに食われるのは我慢ならない!)

少女(せめて……意地を見せてやらなきゃ!)

少女「……」ギロッ

ハゲワシ「?」

少女「このハゲーッ!!!」

ハゲワシ「!?」ビクッ

4: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:27:52.205 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「誰がハゲだ!」

少女「お? ハゲのくせに喋れるの?」

ハゲワシ「毛の有無と言語能力の有無になんの因果関係もねえだろ! 全世界のハゲに謝れ!」

ハゲワシ「そこは『ワシのくせに喋れるの?』にすべきだろ!」

少女「ふうん、まあどうでもいいや」

少女「あんた、あたしが死んだら死肉を喰らおうって魂胆なんだろうけど」

少女「あたしを食ったら体の中から呪ってやるんだから! 分かってんの!?」

ハゲワシ「お、おい……何いってんだよ。誤解だよ、誤解」

少女「は?」

5: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:30:31.794 ID:U54rJ1830
少女「じゃあなに? あたしになんの用?」

ハゲワシ「オレはお前と友達になりたかったんだよ!」

少女「なんで?」

ハゲワシ「砂漠ってただでさえ生き物少ないし、オレ一人ぼっちだからさ……」

少女「じゃあ、どうしてあんな薄気味悪い笑み浮かべてたのよ!」

ハゲワシ「あれはオレなりのフレンドリースマイルってやつだ!」

少女「あんな不気味なフレンドリースマイルがあるかい!」

ハゲワシ「す、すみません!」

7: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:33:42.069 ID:U54rJ1830
少女「……」

ハゲワシ「まだ信用できねえか?」

少女「できるわけないでしょ!」

少女「ハゲワシなんて『悪役に相応しい動物ランキング』なんてのやったら絶対上位だもん!」

ハゲワシ「じゃあ、お近づきの印にこれを……」サッ

少女「なにこれ?」

ハゲワシ「腐った肉だ」

少女「いるかこんなもん!」ポイッ

ハゲワシ「ああっ、ひどい!」

10: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:36:16.705 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「だったら……ちょっと待ってろ!」バッサバッサ…

少女「?」


……


ハゲワシ「これをやろう」

少女「なにこれ?」

ハゲワシ「新鮮な腐った肉だ」

少女「いるかぁっ!!!」ポイッ

ハゲワシ「ああっ、もったいない!」

11: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:38:13.330 ID:U54rJ1830
少女「あんたのプレゼントなんかいらないよ!」

ハゲワシ「じゃあどんな腐った肉ならいいんだ?」

少女「腐った肉って前提がおかしいんだよ!」


カメラマン「シャッターチャーンス!」パシャッパシャッ


少女&ハゲワシ「!?」

12: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:42:10.385 ID:U54rJ1830
カメラマン「ククク……いい絵が撮れた」

少女「またわけ分かんないのが……あんた、何者よ!」

カメラマン「よくぞ聞いてくれた。私はさすらいのカメラマン」

カメラマン「衝撃的な写真を撮るため、世界中を放浪しているのだ」

カメラマン「少女を狙うハゲワシ……これでピューリッツァー賞はいただきだ!」

少女「いただけるわけないでしょ! そんな二番煎じで!」

少女「だいたいあの写真撮った人は結局すぐ亡くなっちゃったって話だし……気の毒にね」

カメラマン「あんな素晴らしい写真を撮っておいて自殺するなんて、私には考えられんよ」

カメラマン「なぜなら写真とは、カメラマンにとって己の名声を高めるための道具なのだから!」

少女「このクズーッ!!!」

カメラマン「!?」ビクッ

14: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:45:20.914 ID:U54rJ1830
少女「あんたみたいな腐った心根の奴に、いい写真なんか撮れっこないよ! 絶対に!」

ハゲワシ「そうだそうだ! 腐った肉より腐ってやがる!」

カメラマン「ぐ……!」

少女「行くよ、ハゲワシ!」

ハゲワシ「おう!」バッサバッサ…

カメラマン「私も同行させてもらおう」

カメラマン「君たちについていけば、きっと素晴らしい写真が撮れるはずだ」

カメラマン「たとえば≪砂漠で仲良くくたばる少女とハゲワシ≫とかね」ニタァ…

少女「勝手にしな!」

15: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:48:38.387 ID:U54rJ1830
ザッザッザッ…

少女「暑い……」

ハゲワシ「暑いなぁ~……」

少女「喉も渇いたし……」

ハゲワシ「コーラ飲みてえなぁ……」

少女「あたしはドクペ派……」

ハゲワシ「マジで……?」

カメラマン「はい、チーズ!」サッ

少女&ハゲワシ「イェイ!」

パシャッ

少女「し、しまった……!」

ハゲワシ「つい……!」

カメラマン(こいつら元気じゃん……)

16: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:50:20.880 ID:U54rJ1830
少女「……お」

ハゲワシ「あ、あれは……」

カメラマン「やったぞ、オアシスだ!」





オアシス「……」

17: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:53:45.246 ID:U54rJ1830
少女「やったーっ!」タタタッ

ハゲワシ「やっと水飲めるぜ!」バサバサ


オアシス「……」ススッ


少女「あれ!?」

ハゲワシ「どんどん遠ざかっていく!」

カメラマン「分かった……あれは蜃気楼だ!」

少女「蜃気楼!? ……ってなに?」

カメラマン「砂漠とかで見える幻みたいなものだ」

ハゲワシ「雑な説明だなぁ」

カメラマン「すまん」

少女「どうすればオアシスにたどり着けるの?」

カメラマン「蜃気楼は近づけば近づくほど遠ざかる……だから」

18: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:55:48.772 ID:U54rJ1830
カメラマン「背を向けて」クルッ

少女「うん」クルッ

ハゲワシ「おう」クルッ

カメラマン「こっちから遠ざかれば……」ザッザッザッ…

少女「オアシスなんか興味ないや」ザッザッザッ…

ハゲワシ「無視無視」バサバサ





オアシス「待ってくれぇぇぇぇぇっ!!!」ドドドドドッ

20: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 01:59:22.064 ID:U54rJ1830
<オアシス>

少女「やったーっ、オアシスにたどり着いた!」

ハゲワシ「というか、向こうからやって来たんだけどな」

カメラマン「これがオアシスか……写真撮っておこう」パシャッパシャッ

少女&ハゲワシ「いただきまーす!」ゴクゴク

少女「おいしー!」

ハゲワシ「うめえ!」

カメラマン「水を飲むハゲワシと少女……絵になるな」パシャパシャ

少女「あたしらがくたばってる写真が欲しかったんじゃないの?」

カメラマン「ふん……」プイッ

21: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:02:25.462 ID:U54rJ1830
少女「ちょっと水浴びしちゃおっかな~」バシャバシャ

ハゲワシ「オレも!」バシャバシャ

カメラマン「……」

少女「あれ? どうしたの? 撮らないの?」

少女「あたしみたいな女の子が下着姿で水浴びしてる姿って、絶対需要あるでしょ!」

カメラマン「やめとく」

少女「なんで?」

カメラマン「児童ポルノ云々で捕まりたくないからな……」

少女「あんた、意外と常識あんのね……」

ハゲワシ「じゃあ水浴びしてるオレを撮ってくれよ」

カメラマン「需要ないからいい」

ハゲワシ「ひどい!」

22: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:05:25.909 ID:U54rJ1830
少女「水もたらふく補給したし、すっかり元気になったわ!」

少女「しゅっぱーつ!」

ハゲワシ「水分補給さえしっかりしちまえば、こっちのもんだ!」

カメラマン「いや、そうとも限らんぞ」

ハゲワシ「え……?」

カメラマン「砂漠のこの辺りには、旅人にクイズを出す生き物がいるという言い伝えがあるんだ」



フハハハハハ……!

23: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:08:35.522 ID:U54rJ1830
スフィンクス「フハハハハ……ようこそ、旅人達よ!」

少女「なにあいつ!?」

ハゲワシ「でけえ……!」

カメラマン「おいでなすったか!」

スフィンクス「旅人達よ……ここを通りたければ、我の出すクイズに正解せねばならぬ」

少女「クイズだって。どうする?」

ハゲワシ「オレ、頭を使うことはどうも苦手で……」

少女「ハゲてるもんね」

ハゲワシ「関係ねえだろ!」

カメラマン「私もあまり自信ないな」

少女「じゃあ、無理をせず引き返そうか」

スフィンクス「わーっ! 待て待て待て!」

24: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:11:40.963 ID:U54rJ1830
スフィンクス「そんなに難しくないから! 簡単だから!」

少女「分かったよ。じゃあ付き合ってあげる」

スフィンクス「ありがとうございます!」

スフィンクス「では問題です」デデデン

スフィンクス「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の生き物ってなーんだ?」

少女「ゴジラ!」

ハゲワシ「ピカチュウ!」

カメラマン「コモドオオトカゲ!」

スフィンクス「全然違う!!!」

25: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:14:27.756 ID:U54rJ1830
スフィンクス「なんで分かんねえんだよぉ……有名ななぞなぞじゃん……」

少女「ヒントちょうだいよ!」

スフィンクス「ヒント……夜の三本足のうち、一本は“杖”のことだ」

少女「もっと!」

スフィンクス「朝の四本足は、“ハイハイ”のことだ」

少女「もっともっと!」

スフィンクス「お前たちの中だと、≪少女≫と≪カメラマン≫がこの生き物だな」

ハゲワシ「オレだけ仲間外れ!?」

少女「もっとぉ!」

スフィンクス「えぇっと……英語だと“human”だな(もう答えじゃねえかこれ)」

少女「なんだっけ?」

ハゲワシ「英語は苦手なんだよな~」

カメラマン「まったく分からん」

スフィンクス(泣きたくなってきた)

27: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:18:37.040 ID:U54rJ1830
スフィンクス「もういいや……。正解は……“人間”でしたーっ!」

少女「は?」

スフィンクス「『は?』ってなんだよ」

少女「だって、人間はずっと二本足じゃない。おかしいでしょ」

スフィンクス「いや、赤ん坊の時はハイハイ、成長すると二足歩行、老人になると杖つくでしょ?」

少女「……?」

少女「ハイハイしてても二本足は二本足じゃない」

少女「それに、杖をつかないお年寄りもいくらでもいるよ?」

スフィンクス「いや、だからさ……」

少女「だいたい、朝昼夜の意味が分からない」

少女「『赤ちゃんの時は四本足、成長すると二本足、年取ると三本足の生き物は?』ってすべきじゃない?」

スフィンクス「それは時間の経過を比喩的に表現したもので……」

少女「なんでわざわざ比喩しちゃうの? こんなの悪問もいいとこじゃない」

ハゲワシ「そうだそうだーっ!」

スフィンクス「……」ビキビキッ

29: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:22:10.833 ID:U54rJ1830
スフィンクス「うるせぇぇぇぇぇっ!!!」

スフィンクス「なぞなぞってのはそういうもんなんだよ! ツッコミ入れてくるんじゃねえよ!」

スフィンクス「もういい! てめえら全員食ってやる!」

少女「きゃああああああっ!」

ハゲワシ「に、逃げろぉぉぉぉぉっ!」

カメラマン「激怒したスフィンクス……こ、これはいい絵だ!」パシャッパシャッ

スフィンクス「ウガァァァァァッ!!!」



キャァァァァァ… ヒィィィィィ… パシャッパシャッ…

30: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:25:21.154 ID:U54rJ1830
<ピラミッド>

少女「ハァ、ハァ、ハァ……怖かった~」

ハゲワシ「ったくぅ~、危うく全員食われるとこだった」

カメラマン「なぞなぞにあんまり深く突っ込むのはマナー違反だよ」

少女「だって納得いかなかったんだもん!」

ハゲワシ「まぁいいや……とっさに逃げ込んだけど、ここはどこだ?」

カメラマン「どうやらピラミッドの内部のようだな」



ミイラ「いらっしゃいませ~」

32: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:28:20.750 ID:U54rJ1830
少女「誰よ、あんた!?」

ミイラ「わたくしはこのピラミッドに埋葬されていたミイラでございます」

ミイラ「わざわざお越し下さり、誠にありがとうございます」

少女「ずいぶん腰が低いミイラだね」

カメラマン「写真撮っていいですか?」

ミイラ「どうぞどうぞ! いくらでも!」

カメラマン「う~ん、いいぞ~」パシャッパシャッ

ミイラ「せっかくいらしてくれたのですから、紅茶でもいかがです?」

少女「あ、いただきまーす!」

ハゲワシ「オレもいただくぜ!」

カメラマン「私も」

33: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:31:28.170 ID:U54rJ1830
少女「うまい!」

ハゲワシ「いい葉っぱ使ってるじゃん」

カメラマン「ほう、これはいける!」

ミイラ「ありがとうございます」

ハゲワシ「だけど、このピラミッド……えらく寂れてるな。観光客が一人もいねえ」

ミイラ「うちのような小さなピラミッドに来るお客さんなんかいません。さびれる一方です」

カメラマン「おかしいな。今の大臣は、ピラミッド保全に積極的に取り組んでるはずだが」

ミイラ「あんなのは、もっと偉大な人が眠る大ピラミッドだけですよ」

ミイラ「ここのような小ピラミッドは助成金ももらえず、静かに朽ちていくのみです……」

ハゲワシ「世知辛いなぁ……」

少女「ピラミッド界も大変なんだねえ」



ワァァァァ… ドドドドド…

34: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:34:27.630 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「なんだなんだ?」

少女「悪そうな奴らがやってきたよ!」

カメラマン「あの服装……あれは盗賊団だ!」

ワイワイ… ザワザワ…

盗賊「へっへっへ……」

ミイラ「……な、なんの用ですか?」

盗賊「盗賊のやることといや決まってんだろ? 盗みに来たんだよ」

盗賊「ここにある埋葬品……全てをな!」

ミイラ「なんですって!?」

盗賊「お前は≪喋るミイラ≫として、見世物にしてやるよぉ! 首輪つけてな!」

ミイラ「……この人でなし! あなたたちに人の心はないんですか!」

盗賊「ミイラに人でなし呼ばわりされたくねえよ」

盗賊「ま、これも上からの依頼なんでな……悪く思うなよ」

カメラマン(上からの依頼……?)ピクッ

35: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:37:15.339 ID:U54rJ1830
少女「このゴミーッ!!!」

盗賊「!?」ビクッ

盗賊「なんだこのガキ……!」

少女「ピラミッドで眠ってたご先祖様を見世物にするなんて、恥ずかしいと思わないの!?」

ミイラ「……」ジーン…

盗賊「なんだとォ!?」ガシッ

少女「きゃっ!」

盗賊「俺は生意気なガキが嫌いなんだ。ミイラの代わりにピラミッドで眠らせてやるよぉ!」ググッ…

少女「う……うえ……っ!」

カメラマン「や、やめろっ!」

ミイラ「離せっ!」

盗賊「邪魔だ!」

バキッ! ドカッ!

ミイラ&カメラマン「ぎゃん!」

36: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:40:11.405 ID:U54rJ1830
グググ…

少女「ぐ、ぐえ……っ!」

盗賊「覚えておきな、お嬢ちゃん。口が達者なガキは早死にすんだよ!」

ハゲワシ「おい……その辺にしとけよ!」バサッ

バシッ!

盗賊「ぐわっ!?」

ハゲワシ「ダチを傷つける奴は……このオレが許さねえ!」

少女「ハゲワシ……!」ゲホッゲホッ

盗賊「んだと!? このハゲ!」

ハゲワシ「誰がハゲだ!」

少女「ハゲワシ、ムチャしないで! 相手は十人以上いるんだよ!?」

ハゲワシ「心配すんな!」ビュオオッ

盗賊「は、速っ!?」

38: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:43:41.972 ID:U54rJ1830
ズバッ! ザシュッ! ザクッ! ザンッ! ズシャッ!

「ぐはっ!」 「ぐぎゃっ!」 「うげっ!」 「ひいっ!」 「がはっ!」

ドサササササッ…



盗賊「な、なんだとぉ~!?」

ハゲワシ「こちとら、これでも猛禽類……空の王者だぜ。お前らなんかに負けるかよ」

ハゲワシ「首領格のお前はこんなもんじゃ済まさねえ……鳥葬してやるよ」ギロッ

盗賊「ひっ……!」

盗賊「ひえええええええっ!」タタタタタッ

40: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:47:09.956 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「ふん、みんな逃げちまったな」

少女「……ありがと、ハゲワシ」

ハゲワシ「ダチを助けるのは当然だろ」

ミイラ「わたくしからもお礼を申し上げます。助かりました」

ミイラ「それと、お嬢さんもわたくしのために怒って下さり、ありがとうございました」

少女「へ?」

ミイラ「おかげでわたくしも古代人としてプライドを取り戻すことができました」

ミイラ「これからは卑屈にならず、精一杯ピラミッドを守ってみせます!」

少女「いやー、どうもどうも」

ハゲワシ「だけどあれ? あいつは? ……カメラマンは?」

ミイラ「どこ行ったんでしょう?」

少女「あいつのことだし、きっとピラミッド内を撮影してるんじゃない?」

ミイラ「当ピラミッド内は撮影自由なのでかまいませんが……」

41: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:50:29.348 ID:U54rJ1830
……

大臣「バカモノ!」

盗賊「ひっ!」

大臣「なんたる失態だ! 高い金で貴様を雇ったというのに!」

盗賊「す、すみません……」

大臣「メジャーな大ピラミッドの保全計画を進めることで、皆の目をそこに向かわせ」

大臣「誰も寄りつかなくなった小ピラミッドから盗掘する作戦が台無しではないか!」

大臣「ああいうマイナーピラミッドには貴重な財宝がまだまだ眠っているはずなのだ!」

盗賊「しかし、ハゲワシが強いのなんのって……」

大臣「ぬうう……ならばもっと大勢集めて――」



パシャッ パシャパシャ パシャッ

42: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:54:08.324 ID:U54rJ1830
大臣「だ、誰だ!?」

カメラマン「どうも、私はさすらいのカメラマンです」

カメラマン「“上からの依頼”というのでピンときたんですが、やはりこういうことでしたか」

カメラマン「大臣と盗賊のツーショット……いい絵を撮らせてもらいましたよ、大臣」ニコッ

大臣「き、貴様……!」

盗賊「て、てめえっ!」

カメラマン「おっともう遅い。私になにかあれば、この写真が流出するよう手配しましたから」

カメラマン「いいか大臣、ピラミッド保全を真面目に進めるんだ」

カメラマン「さっきの小ピラミッドのような場所もな」

カメラマン「でなくば、この写真をバラまく! 分かったな!」

大臣「ぐうう……っ!」ガクッ

カメラマン(ハゲワシと少女につられて、ガラにもないことをしてしまった)

カメラマン(だが、案外悪くない気分だな……)

44: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 02:57:41.977 ID:U54rJ1830
……

カメラマン「いやぁ、すまんすまん」

ハゲワシ「どこ行ってたんだよ!? 置いてくとこだったぞ!」

少女「ピラミッド中捜したんだから!」

ミイラ「わたくし、このピラミッドを守るために最後まで戦う決意をしました」

ミイラ「応援よろしくお願いします!」

カメラマン「ああ……そのことなんですが、きっとなんとかなると思いますよ」ニヤッ

ミイラ「へ?」

少女「へ?」

ハゲワシ「へ?」

45: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:00:52.960 ID:U54rJ1830
ミイラ「さようなら~!」



少女「さよなら~!」

ハゲワシ「……なるほど、大臣が黒幕だったとはな。あくどい野郎だ」

ハゲワシ「だがよ、そんな写真なら大スクープになったんじゃないか?」

カメラマン「単に失脚させるより、こうして利用してやる方が面白いと思ったのさ」

カメラマン「盗賊も大臣の庇護なしじゃ、もうどうしようもないだろうしね」

少女「ふうん、見直しちゃった」

カメラマン「よしてくれ。どうすれば私の写真がより価値を持つかってのを考えただけのことさ」

ハゲワシ「さてと、あとはお前が町にたどり着くだけだな!」

少女「うん! レッツゴー!」

46: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:02:18.759 ID:U54rJ1830
ザッザッザッ…

少女「あっ、町だ!」

カメラマン「やっと着いた!」

ハゲワシ「よかったな、これで砂漠横断成功だ!」

少女「二人とも、ありがとう!」

47: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:05:23.758 ID:U54rJ1830
<砂漠の町>

ワァァァァァ… ワァァァァァ…

パチパチパチパチパチ…

町長「待っておったぞ! 素晴らしい、史上最年少の偉業じゃ!」

町民A「よくやった!」

町民B「まさか女の子がこの砂漠を横断するなんて……」


少女「みんな、ありがとう!」

ハゲワシ「へへへ、歓迎されまくりじゃねえか」バサバサ

少女「うん!」


ザワッ…

町民A「な、なんだあのハゲワシは!?」

48: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:09:00.323 ID:U54rJ1830
町民A「少女を狙ってるぞ!」

町民B「逃げろ! 食われちまうぞ!」

ザワザワ… ドヨドヨ…


ハゲワシ「え!?」

少女「違うよ! このハゲワシは悪いハゲワシじゃないよ!」

カメラマン「皆さん、落ち着いて下さい!」


町長「少女を食う気だろうがそうはさせん! ワシの猟銃で仕留めてやる!」チャキッ


ズドンッ!


ハゲワシ「ぐはぁっ……!」

50: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:12:44.843 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「うぅぅ……」

少女「ひどい! なんてことすんのよ!」

町長「そのハゲワシは君を狙っていたんじゃぞ? 撃つしかなかったんじゃ!」

町民A「そうだよ!」

町民B「あのままだったら君は食べられていたぞ!」

少女「なにいってんのよ……」

カメラマン「……」ワナワナ…

カメラマン「お前たち……これを見ろッ!!!」パサッ

町長「こ、これは……!?」

「写真だ!」 「ハゲワシと少女が楽しそうに写ってる!」 「そ、そんな……」

町長「ワシは……なんということを……」

51: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:16:44.436 ID:U54rJ1830
ハゲワシ「おい……」

少女「大丈夫!? しっかりして!」

ハゲワシ「泣いて、くれてるのか……?」

少女「そりゃそうよ! 友達がケガしたんだから!」

ハゲワシ「友達……友達か、へへへ……。そうだな、オレたちは友達だもん、な……」

ハゲワシ「お前との砂漠の旅……楽しかったぜ……」

少女「あたしもよ!」

ハゲワシ「もし、このケガが治ったら……また一緒に旅しような……」

少女「治るよ! だからしっかりして!」

ハゲワシ「……」

少女「ハゲワシッ! ――ハゲワシッ! うわぁぁぁぁぁんっ!!!」



…………

……

52: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:19:45.827 ID:U54rJ1830
数年後――





女「……」

女「……そろそろいいかな」

女「戻っておいで!」ピューイッ

53: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:22:37.247 ID:U54rJ1830
バッサバッサ…

ハゲワシ「ゴミ捨て場にたかってたカラスどもを追い払ってきたぜ!」

女「お疲れ様」

女「ケガはない?」

ハゲワシ「オレがカラスどもなんかに負けるかよ」

女「ケガあるわけないよね。あんたハゲてるもん」クスッ

ハゲワシ「誰がハゲだ!」

女「昔、あの撃たれた時も大したケガじゃなかったしさ」

ハゲワシ「あれは町長の腕前がイマイチなおかげで助かったぜ……」

パシャッ パシャパシャッ パシャッ

カメラマン「ん~……いいぞぉ。一仕事終えて並ぶ≪美女とハゲワシ≫……いい絵だ!」

55: VIPがお送りします 2018/01/08(月) 03:25:33.275 ID:U54rJ1830
女「あたしらは今、こうして仕事しながら世界中を旅してるわけだけど……」

ハゲワシ「なんでお前までついてくるんだよ?」

カメラマン「そりゃもちろん、君たちについていけば、すごい写真をいっぱい撮れそうだからさ!」

カメラマン「いつか必ず取ってやる! ピューリッツァー賞!」

ハゲワシ「まだ諦めてなかったのかよ……」

女「ま、好きにしてよ」

ハゲワシ「次はどこ行く?」

女「またあの砂漠行かない? あのミイラさんのピラミッドカフェが繁盛してるみたいだし」

ハゲワシ「いいねえ!」

カメラマン「じゃあ、ここらで一枚撮っておこうか。はい、チーズ!」

女&ハゲワシ「イェイ!」

パシャッ







<終わり>

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