会社の同僚達「みんなでボーリングやろう!」俺「ターキー狙うよ!」同僚達「ぷっ!」

2018年12月29日
会社の同僚達「みんなでボーリングやろう!」俺「ターキー狙うよ!」同僚達「ぷっ!」

1: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:35:31.23 ID:o9TXSm7do

終業時刻となった。

俺の会社は今比較的ヒマな時期である。

会社の同僚達が一斉に席を立ち、帰り支度を始める。


「みんなでボーリングやろう!」


みんなやろうやろうと口にする。



2: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:37:45.42 ID:o9TXSm7do

いつもだったら、俺は参加しなかった。

奴らの行く場所は大抵居酒屋やカラオケで、俺は酒も歌も大の苦手だからだ。


だが、ボウリングとなると話は別だ。

ボウリングは、俺の特技ランキングの中で二位、三位には間違いなく入る。
アベレージは180を越え、200以上のスコアを出したこともある。

俺の腕前を、一度みんなの前で披露してみたかった。


「俺も参加していいですか?」

3: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:40:21.14 ID:o9TXSm7do

普段めったに誘いに乗らない俺からの申し出に、同僚達も驚く。

どういう風の吹き回しだ、と思ってるに違いない。


「いいけど、お前ボーリングできるの?」

「もちろん! ターキー狙うよ!」


この瞬間、誰かが吹き出す声が聞こえた。


「ぷっ!」

4: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:43:38.96 ID:o9TXSm7do

他の同僚達も冷笑まじりに、


「連れてくの?」

「ま、いいんじゃない?」

「参加するのは自由だけど」


と歯切れの悪い返事をする。


とにかく参加は認められた。

しかし、どこか不安を感じながら、俺は奴らについていくことにした。

5: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:46:21.62 ID:o9TXSm7do

会社の近くにボウリング場は一つしかない。
巨大なピンが目印になっている建物だ。

なのに、同僚達はまるで見当違いの方向に歩いていく。


「みんな、ボウリング場はあっちだよ?」


俺が指摘しても、誰も方向を変えない。

ニヤニヤしてる奴もいる。


俺の知らない穴場があるのだろうか……?

とてもそうは思えないが、俺は奴らを追いかけた。

6: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:48:34.26 ID:o9TXSm7do

俺たちは辺り一面土しかない場所にたどり着いた。

入り口には『ご自由にお掘り下さい』の立て看板。


呆然と立ち尽くす俺を尻目に、同僚達はバッグから部品を取り出し、一人一人機械を組み立て始めた。

次々にドリルの化け物のような機械を完成させていく。


俺以外の全員がそれをできたことを確認すると、同僚のリーダー的な男がこういった。


「じゃあ、誰が一番深く穴を掘れるか競争だ!」

7: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:52:31.96 ID:o9TXSm7do

轟音を立て、穴を掘っていく同僚達。

俺はその中の一人に、おそるおそる尋ねた。


「あの……ボウリングは?」

「だからみんなで今やってるだろ。ボーリングを」

「ストライクやスペアを狙うアレは……?」

「それは球を転がすボ、ウ、リ、ン、グだろ? 俺たちがやってるのは穴を掘るボ、ー、リ、ン、グ。
 ここは自由に穴を掘っていい場所で、俺たちは自作の機械でボーリングするのが趣味なんだよ。
 だからみんなでたまーにここに来るんだ」


説明を終えた同僚は、作業に集中すべく俺を追い払うような仕草をした。


ボウリングとボーリング。

どちらも英語のカタカナ化なので、表記が厳密に分かれているわけではないだろうが、
(たとえば球を転がす方を『ボーリング』と書いても必ずしも間違いとはいえないだろう)
一般的には球転がしは『ボウリング』、穴掘りは『ボーリング』と表記されていると思う。

俺は勘違いをしていたのだ。

同僚達がやろうとしてたのは“穴掘り”で、“球転がし”ではなかったのだ。

この場所は、俺が知らないという意味と、穴掘り自由という意味で、二重の意味で≪穴場≫だった。

8: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:55:34.76 ID:o9TXSm7do

これで、奴らの「ぷっ!」や歯切れの悪い返事の理由も分かった。

俺がターキーを狙うといった時点で、奴らは気づいてたのだ。俺の勘違いに。


そう思うと、無性に腹が立ってきた。

だったら説明してくれればいいじゃないか。俺たちは穴掘りに行くんだよ、と。


きっと奴らは今、俺を置いてきぼりにしてることを内心楽しんでるに違いない。

球転がしするつもりの奴が、あそこで所在なく立ち尽くしてるよー、と。

俺に説明しなかったのは、日頃付き合いの悪い俺への制裁かなにかのつもりなのだ。


見返してやる、と俺の心に火が灯った。

9: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 15:58:00.30 ID:o9TXSm7do

「俺もボーリングに参加する!!!」


同僚全員に聞こえるような大声で宣言すると、俺は地面の土に目をやった。

ここに来るのは初めてだが、なるほど掘りやすそうないい土だ。


しゃがみ込むと、俺は奴らの目では視認できないであろうスピードで土を掘り始めた。

道具も使わず無我夢中で一メートル、二メートル、三メートル……と下へ下へ突き進む。


同僚達の驚く顔が目に浮かぶが、もはや奴らのことはどうでもよかった。

俺はそれほどに穴掘りが大好きなのだ。


そう、俺の特技ランキング、ブッチギリの第一位はボーリング(穴掘り)なのだ。

10: SS速報VIPがお送りします 2017/12/30(土) 16:00:32.10 ID:o9TXSm7do

俺は地面を凄まじい勢いで掘り進める。より速く、より深く、より美しく。

温度や圧力がきつくなるが、俺の鍛えた体ならばコアにだって耐えられる。


このままいけば、おそらく日本の裏側――ブラジル(実際は違うらしいが)あたりに
たどり着くことになるだろう。


だが、それじゃ少しつまらない。

俺は軌道を変え、北アメリカに向かうことにした。

11: ◆F1G3qx/na6 2017/12/30(土) 16:03:21.30 ID:o9TXSm7do

地球を掘って掘って掘りまくり、俺はやっとこさ北アメリカにたどり着いた。

なぜ目的地を北アメリカにしたのかというと、あの鳥が生息してるからだ。


いきなり地面から顔を出した俺に、野生の七面鳥は仰天していた。

その様子を見て、俺はにっこりと微笑んだ。


「やった、ターキーだ!」









― 終 ―

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