男「ご飯を食べる時は米粒を残さない主義なんだ」同僚「うわぁ~……」同僚女「信じらんない!」

2019年02月28日
男「ご飯を食べる時は米粒を残さない主義なんだ」同僚「うわぁ~……」同僚女「信じらんない!」

1: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:26:13.444 ID:wYk1D2v+0
―定食屋―

男「……」モグモグ

同僚「お前ってご飯をキレイに食べるよなぁ」

男「俺はご飯を食べる時は米粒を残さない主義なんだ」

同僚「うわぁ~……なんて立派なんだ……!」

同僚女「信じらんない! こんな素晴らしい人が同じ課にいたなんて……!」

同僚「俺なんてほら、意識しないとどうしても茶碗に米粒が残っちまう。コツがあるのか?」

男「箸を正しく使うことかな」

同僚女「あなた箸の使い方、パーフェクトだもんね~。YouTubeにアップしたら1000万再生いくよ!」

男「ありがとう」

同僚「米農家の方々も今は高齢化が進んでるらしいが、きっとお喜びになるだろうぜ!」

男「どうも」

同僚女「ホント、痺れちゃう! 抱いて!」

男「抱かないよ」

8: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:30:19.788 ID:wYk1D2v+0
同僚「あれ? だけど一粒だけ残ってるぜ」

同僚女「ホントだ! 珍しい!」

男「!」

男「しまった……俺としたことが……」スッ


米粒「食われてたまるか!!!」ピョーンッ


男「!?」

13: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:33:32.446 ID:wYk1D2v+0
米粒「あばよーっ!」

ピョンッ ピョンッ ピョンッ…



同僚「逃げたな……」

同僚女「逃げたね……」

同僚「まあ、あれは米粒が逃げちゃったんだからノーカウントってことで!」

同僚女「そうそう!」

男「逃がすか……」

同僚&同僚女「え?」

17: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:36:30.584 ID:wYk1D2v+0
男「俺は生まれてから一度たりとも、米粒を残したことはないんだ……!」

男「それは俺の誇りであり、思想であり、存在意義だったんだ……!」

男「逃がしてたまるかァァァッ!!!」グワッ

タタタタタッ

男「店員さん、お勘定!」サッ

店員「あれま、万札!」

20: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:39:07.707 ID:wYk1D2v+0
外に出て――

男「待てぇ~っ!!!」タタタタタッ

米粒「!?」

米粒「マジかよ……追いかけてきやがった!」

男「残してたまるか……!」

米粒「へ……?」

男「一粒たりとも残してたまるかぁぁぁぁぁっ!!!」

米粒「ひ、ひいいいっ!」

22: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:42:49.282 ID:wYk1D2v+0
ブロロロ… ブロロロロロ…


米粒「お、交差点だ!」

男「!」

米粒「赤信号だから人間は渡れねえが、小さい俺はなんの問題もなく渡れる!」

米粒「あーばよっ!」ピョンピョンピョン



男「……!」

24: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:45:22.429 ID:wYk1D2v+0
男「……」タッタッタ…

通行人「あいつ何する気だ?」

男「……」タッタッタッタッタ…

通行人「ま、まさか!? 助走をつけて――」

男「……」グッ

通行人「箸を棒高跳びの棒代わりにして、道路を飛び越えようというのかぁっ!?」

29: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:47:21.186 ID:wYk1D2v+0
男「はぁっ!」ガッ

ピョーンッ!

シュザッ



通行人「飛び越えやがった……!」

通行人(そうか……人間、その気になれば、飛び越えられない壁なんてないんだ……!)


後にこの通行人は世界屈指の偉人となるが、それはまた別の話。

32: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:51:22.894 ID:wYk1D2v+0
米粒「ぬっ!?」

男「追いついたぞ」タッタッタ…

米粒「な、なんて奴だ! 赤信号を突っ切ってきたのか!」

男「飛び越えたんだ」

米粒「似たようなもんだろ!」

男「さあ食われろ! 食わせろ!!!」

米粒「食われてたまるかよぉ!!!」

タッタッタッタッタ…

33: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:55:05.925 ID:wYk1D2v+0
―銀行―

強盗「金を出せ! 金を出さないと撃っちまうぞ!」

銀行員「ひいぃぃぃ……出します出します!」




米粒「……」ピョンピョンピョン

男「……」タタタタタッ

米粒「おい、ちょっと寄っていくか」

男「そうしよう」

36: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 01:59:43.371 ID:wYk1D2v+0
強盗「なんだてめぇらは!?」バキュンッ

男「おっと」パシッ

強盗「えええ!? 箸で弾丸を!?」

男「箸を正しく使えばこの程度は造作もないこと」ポイッ

強盗「無理だと思う!」

米粒「とりゃぁぁぁっ!」ピョーンッ

強盗「ギャッ!? なんか細かいのが目に入ったっ!」

銀行員「今だ、取り押さえろーっ!」



ワァァァ……! ワァァァ……!

38: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:03:22.646 ID:wYk1D2v+0
銀行員「アルゼンチン・バックブリーカー!」

強盗「ぎええええ!」バキボキベキ



銀行員「ありがとうございました! おかげで強盗を捕まえることができました!」

男「ふう……」チラッ

米粒「ふう……」チラッ

男「……」ニヤッ

米粒「……」ニヤッ

男「やったな!」グッ

米粒「おうよ!」グッ

40: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:05:15.713 ID:wYk1D2v+0
米粒「だが、俺たちは追う追われるの宿命……馴れ合うことはできない。追いかけっこ再開だ!」

男「ああ!」

タタタタタッ





銀行員「なんだったんだあの人達は……」

42: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:10:34.846 ID:wYk1D2v+0
―米倉庫―

男「ここは……」


米粒≪ふっふっふ、ここは米倉庫≫


男「!」


米粒≪この通り、米だらけだ!≫

米粒≪木を隠すなら森というように、米を隠すなら米倉庫というわけだよ≫

米粒≪さぁ、俺を見つけられるかな?≫


男「……」

43: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:13:16.913 ID:wYk1D2v+0
男「……」クンクン…


米粒(匂いをかいでる!?)


男「……」クンクンクン…


米粒(まさか……あんなので見つかるわけがない。警察犬じゃあるまいし)


男「……」


米粒(諦めたみたいだな。そりゃそうだ)

46: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:15:07.137 ID:wYk1D2v+0
男「……」ズンズンズン


米粒(ま、まさか……!? まっすぐこっちに向かってくる!?)




男「見ィ~つけた」ニッコリ

米粒「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

49: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:20:11.111 ID:wYk1D2v+0
―公衆トイレ―

米粒「ハァ、ハァ、ハァ……」

男「追い詰めたぞ……」

米粒「こうなったら最終手段だ!」

男「!」

米粒「便器に入る!」ザブンッ

米粒「これでもう食えまい!」

男「関係ないね」ヌウッ

米粒(こいつ、便器に落ちた俺を食おうというのか!? なんて揺るがない精神力だッ!)

51: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:23:25.153 ID:wYk1D2v+0
米粒(こうなったら……本当の最終手段だ!)

米粒「清掃員のおっちゃん!」

清掃員「ん?」

米粒「俺を流せ!」

清掃員「えええ!?」

米粒「早くしろーっ!!!」

清掃員「わ、分かった!」グイッ

53: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:26:22.554 ID:wYk1D2v+0
ジャァァァァァ……!


米粒「あばよ~っ! 二度と会うことはないだろう!」

米粒「アーッハッハッハッハッハッハ!!!」


ジャアァァァァァ…



男「……!」

清掃員「なんか……悪いことしちゃったか?」

男「いえ……なんの問題もありません」

55: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:29:40.174 ID:wYk1D2v+0
―下水処理場―

ザブ…

米粒「ふぅ~、すっかり浄化されたぜ」

米粒「ここまで来れば、さすがの奴も追ってこれまい。我ながらナイスアイディアだった」

職員「あ、米粒様ですね」

米粒「ええ、そうですが」

職員「お客様がお見えになってますよ。応接室でお待ちです」

米粒「客? 誰だろ」

57: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:32:50.903 ID:wYk1D2v+0
米粒「失礼いたします」ガチャ

男「よう」

米粒「!?」

米粒「な、なんで……!? なんでここに……!?」

男「トイレに流れるのは下策だったな。先回りして下さいといってるようなもんだ」

米粒「ああああ……」

米粒(俺は舐めていたッ! こいつの米粒を残さないことへの執念ッ!)

60: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:36:09.593 ID:wYk1D2v+0
男「さ、諦めろ」

米粒「ううう……」ジリ…

男「俺に食われるんだ……」

米粒「い、いやだっ!」

男「……」

男「なぜだ? 米粒であるお前が、どうして食われることを拒む?」

米粒「実は……」

61: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:40:06.460 ID:wYk1D2v+0
米粒「メシの時にお前たちが話してただろう」


同僚『農家の方々も今は高齢化が進んでるらしいが、きっとお喜びになるだろうぜ!』


米粒「あれで思い出したんだ……」

男「なにを?」

米粒「俺を収穫してくれたばあちゃん、元気かなって……だから顔を見たくなって……」

男「……」

男「行こう」

米粒「えっ!?」

男「君を収穫したおばあさんのところに!」

64: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:43:23.805 ID:wYk1D2v+0
―駅―

男「新幹線の切符ください。大人一枚、お米一枚」

受付「はいはい」

受付「どうぞ~」

米粒「すまねえな、領収書だって下りないだろうに。恩に着るぜ」

男「いいってことよ」

66: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:46:18.315 ID:wYk1D2v+0
―新幹線―

ゴォォォォォッ!


米粒「ばあちゃん、元気にしてるかな~」

男「きっと元気にしてるさ……」

男(しかし……しかし、なにか嫌な予感がする……。不吉な予感がする……)

男(ただの杞憂ならいいのだが……)

67: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:50:21.784 ID:wYk1D2v+0
―田舎―

米粒「ばあちゃーん!」ピョンピョン

老婆「おめえは! あたしが収穫した米でねえか!」

米粒「よかった……元気そうだな」

老婆「おかげさまでねえ」

老婆「風邪はひかないし、100mは10秒台で走り、FXで大儲けしたし、ソシャゲ開発にも携わってるし」

老婆「昨日はフルマラソンを完走したよ」



男「杞憂にも程があった」

69: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:55:06.239 ID:wYk1D2v+0
老婆「米粒をここまで連れてきてくれたのは、あんただってねえ?」

男「はい」

老婆「せめてものお礼だ。さ、新米をたーんと食べてくれ」

男「いただきまーす!」

男「ん~、新米はやっぱり美味いなぁ!」モグモグ

老婆「そうじゃろう、そうじゃろう」

男「お前は食わないのか?」

米粒「バカ、共食いになっちまうだろ」

男「あ、そっか」

70: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 02:58:12.485 ID:wYk1D2v+0
米粒「ばあちゃん、これからも元気でな!」

老婆「ああ、22世紀まで生きて、ドラえもんに会うよ」

男「あなたなら本当にできそうだから困る」

老婆「さよならー!」

男「さようなら」

米粒「じゃあなー!」



男「お元気そうでよかったな」

米粒「うん」

米粒「……さ、もう未練はない。食ってくれ」

男「!」

72: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 03:02:21.182 ID:wYk1D2v+0
男「本当にいいのか?」

男「このまましゃべる米粒として生きる道だって……」

米粒「いや、さっきお前に食べられてる新米を見て思ったんだ」

米粒「やっぱり俺も食われたいって……!」

米粒「お前みたいな好敵手に残されたくないって……」

男「分かった……食うぞ」

米粒「おう!」

男「いただきます」パクッ

モグモグ… ゴクン

男「……ごちそうさま」



男「……うまい」

男(体じゅうに活力が漲ってくる! お前は今までで最高のお米だったよ……ありがとう)

74: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 03:05:24.109 ID:wYk1D2v+0
ブー… ブー…

男「はい」

同僚『お前、今までどこ行ってたんだ!?』

男「あ……」

同僚『米粒を追ったっきり、会社に戻ってこないで……連絡もしないで……』

男「すまない……今は田舎にいる」

同僚『田舎!? なんで!?』

男「色々事情があって……」

同僚『とにかく……課長に替わるぞ』

男(そうか……俺の感じた“嫌な予感”はこういうことだったのか)

男(俺は米粒は残さなかったかわりに、会社に俺の席も残らない、と……)

男(だが、後悔はない……)

75: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 03:09:56.118 ID:wYk1D2v+0
課長『もしもし』

男「課長、申し訳ありませんでした」

課長『事情は同僚から聞いた……米粒を残さないのは立派だが、少しやりすぎたな』

男「はい、しかし後悔はしていません」

課長『そうか、流石だ。さて、会社にお前の席は……』

男「……」

課長『残してある!』

男「!」

76: VIPがお送りします 2017/11/30(木) 03:12:30.341 ID:wYk1D2v+0
課長『ただしお前の仕事はだいぶ溜まってしまったからな』

課長『今日はもういいが明日は残業してもらうことになるだろう』

課長『みんなも協力するといっているし、仕事も一粒も残さないように頼むぞ!』

男「はいっ! 最高の米粒を食べた今の俺なら大丈夫です!」







おわり

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