【続編.ss】勇者「お前を倒して世界を征服してやる!」魔王「ちょっとまて」

2018年12月19日
【続編.ss】勇者「お前を倒して世界を征服してやる!」魔王「ちょっとまて」

1: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:54:51.282 ID:tprT3NzG0
始めに、これは続き物です。よろしければ前回から読んで頂きたいです。宜しくお願いします

勇者「お前を倒して世界を征服してやる!」魔王「ちょっとまて」

3: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:55:50.192 ID:tprT3NzG0
~~次の日 魔王城 廊下

勇者「さて、どうしようかな」

執事「どうされましたかな?」

勇者「いやさ、俺が魔族と婚約したとして、果たして人間が手を貸すかって話さ」

勇者「勇者が魔族に懐柔させられたと思われておしまいじゃないかと思ってさ」

執事「まぁ、十分に考えられることですな」

勇者「だったら当初の予定通り力で統治するのがいいんじゃないかと思う」

執事「人と…大戦を…すると…」

勇者「いや、考えたらさ魔王と勇者が力を合わせればそれこそ世界を変えるほどの力があると思うんだよ」

執事「それはそうでしょうな、魔王様もそう考えられておりますじゃ」

勇者「圧倒的力を見せれば人類をひれ伏させる事が出来ると思わないか?」

執事「ふぉっふぉっ、勇者様らしかぬ発言ですな」

執事「しかし、圧政を強いた王は長く栄えた試しがありませぬ」

執事「魔王様のカリスマがあってこそ、我々魔王軍も人間界までついて行っておるのですじゃ」

執事「人間はいずれきっと…何らかの形で…」

5: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:56:27.248 ID:tprT3NzG0
勇者「はは、そんな難しい話じゃないさ」

勇者「魔界王をやっちまえば、あとは人間に王権を返してやればいい」

勇者「これなら俺と魔王が揃えばとりあえずいつでも実行できるしな」

勇者「それに難しいかもしれないが、魔界王を倒したあとの魔界を、今度はちゃんと魔王にまた治めてほしいと思うしな」

勇者「それに関しては俺が尽力して手を貸すさ」

執事「勇者様…」

勇者「そして魔王が支配した世界で魔王の婿養子として可愛い女の子達をはべらかす!!」

執事「勇者…さま…」

勇者「魔族っ子ってなんかよくないか!?」

勇者「ケモみみ少女を筆頭に!人間の百倍くらい多種多様な魔族のおんにゃのこ達と過ごすんだ!」

執事「勇者さま…魔王様の息女とご結婚なさるのでしょう…?」

6: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:57:30.283 ID:tprT3NzG0
勇者「あ、忘れてた…ぐぬぬ」

勇者「でもケモミミは外したくない…!」

執事「ふぉっふぉっ、まぁ三人の誰とご結婚なされても、魔界は楽しくなりそうですじゃ」

勇者「そうだ!魔界の王子になったら女の子はみんなケモミミを着用するという国民の義務を作ろう!」

次女「そんな下らない決まりは作らせないわ!」

勇者「お、次女」

次女「なんか馴れ馴れしいわね…別にいいけど……」

次女「それよりさ、お父様はまだ帰られないの?」

執事「はて、確かにおかしいですな…ちょっと見てみます」

勇者「お、ついにじいやの能力発動!?」

執事「」シーン

勇者「じいや?」

執事「」

勇者「おい、じいや?」

ユサユサ

執事「」

勇者「し、しんでる…!!」

勇者「じぃやああああああああ」ガバァ

8: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:58:25.992 ID:tprT3NzG0
執事「死んでませんぞ」

次女「大袈裟ね…」

次女「どうだった?」

執事「まだ帰られて…なッッ!!?」

勇者「どうした!?」

次女「なんなの!?」

執事「事態は急を要しますぞ!早くこちらに!!」

~~魔王城 地下

タタタタ

勇者「はぁ、はぁ、じいや足早すぎるぜ」

執事「魔王様!!」

バァンッッ

魔王「」

次女「お父様!?」

勇者「ど、どうしたんだよ!?」

魔王「し、執事……」

魔王「ゲートを…閉じ…ろ…」

魔王「グフッ」

執事「はっ!すぐに!」

執事「」ギューン

勇者「魔王が大怪我してるし…いったいなにが…!」

次女「勇者、お父様を運ぶの手伝って!!」

勇者「あ、あぁ!わかった!」

9: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:58:58.734 ID:tprT3NzG0
~~魔王 寝室

魔王「」

三女「お父さまぁ…うぅ…」

長女「いったいなにがあったの…?」

次女「わからない…」

執事「私めが気づいたときには、手傷をおわれた魔王様がゲートから戻られる所でしたが……」

勇者「いったい誰が……」

次女「それは……おそらく…」

魔王「魔界王だ…」

勇者「魔王!!」

長女「気がつきましたの!?」

三女「お父様ぁぁ!」

魔王「ふふ、大丈夫だ……」

次女「お父様…」

魔王「すまんな…勇者…」

魔王「迷惑をかけたようだ……」

勇者「きにすんなよ、孫見せるまでは死なせねぇぞ」

魔王「ふはは…ずいぶんと…気が早いじゃないか」

魔王「ならばもう娘の中から相手を決めたのだろうな?」

勇者「そ、それは…決まってない…が!」

勇者「覚悟は決まってるさ」

魔王「ほう、ならば話さねばなるまいな、向こうでなにが…あったのか…」

勇者「……」

魔王「皆も、聞いてくれ」

コクン

10: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:59:24.673 ID:tprT3NzG0
魔王「私はいつものように魔界とのゲートを開こうとする魔物を倒しに行ったのだ」

~~回想 魔界 ゲート前

魔王「うおおおお」

ズドオオオオオオオン

魔物「ひ、ひいいいなんて剣技だ!?」

魔物「俺達じゃ前に立つことすら敵わん!?」

魔王「はぁぁぁ!」

ズドオオオオオオオン

ズドオオオオオオオン

ズドオオオオオオオン

魔物「逃げろー!もうゲートなんか見たくもねぇ!!」

「「「オオオオ!」」」

魔王「ふぅ、今日はこのくらいにしておくか、しばらくはゲートに近づかないだろう」

魔王「帰るとするか」クルッ

ゴオオオオオオ

魔王「!?」

ズドオオオオオオオン

バキィィィィィン

魔王「この巨大な氷塊…魔力……」

魔王「もしや!?」

???「ふふふ、気づいたか…魔王よ…」

11: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 20:59:44.860 ID:tprT3NzG0
魔王「あ、兄上…なのか!」

魔界王「そうだ、久しいな」

魔界王「なぜここに…!」

魔界王「分かっておるだろう?魔界の王になったのだ」

魔界王「次は人間界を手に入れる」

魔王「業が深いぞッッ!兄上!」

魔王「まだ飽きぬか!」

魔界王「業が深いとは笑わせる、ゆえに魔族なのだ」

魔王「この広い世界を手にいれてもまだ欲に眩むか!」

魔界王「まだだ、まだ渇きが癒えぬのだ」

魔界王「人間界の次は、神界も我が物にしようぞ!!」

魔王「ならばよい!ここで四百年に渡る因縁もろとも打ち砕いてくれるぞ!」

魔界王「ほう、四百年前に負けた事を忘れたか?」

12: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:00:09.806 ID:tprT3NzG0
魔王「四百年ただ王座に居座った貴様とは違うのだ!」

魔王「四百年の結晶を見せてくれるぞ!!」

魔王「うおおお!!」

ズドオオオオオオオン

魔王「………」

魔王「やったか?」

「ふはははははは」

魔王「な!」

魔界王「ただ四百年もの間、座していたと思うか!?」

魔界王「余はそんなにつまらない魔王ではないのだ」

魔王「なに!」

魔界王「ついに父上の亡骸を見つけた」

魔王「な、まさか」

魔界王「そう、我々の…魔王の父上…」

魔界王「魔神の亡骸だ」

魔界王「魔神の亡骸はそれはそれは深い所に何重もの結界のうえ封印してあった」

魔界王「四百年はそれを見つけ解くには十分な期間だったと言えよう」

魔王「まさか、貴様父上を!?、」

13: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:00:28.438 ID:tprT3NzG0
魔界王「喰らった」

魔界王「そして、全盛期の魔神と同等以上の力を手にいれたのだ!!!」

魔界王「魔王は二人で魔神と同等の力を持つ…だったか…」

魔界王「それも今日までの事!!」

魔界王「魔神の力を手にいれた余は魔界王…」

魔界王「否ッッ!!」

「 魔 神 王 と 名 乗 ろ う ぞ !!!」

魔王「ま、魔神王…!!」

魔王「きさま!森羅万象すら手にするつもりか!!」

魔神王「終わりだ、弟よ」

魔神王「実に楽しい五百年だったぞ」

魔神王「貴様を討ち、この世の全てを手にいれるのだ!!!」

バチバチバチバチバチッッッッ

魔王「く、このままでは…」

魔王「せめて少しの間だけでもゲートを守らねば…」

魔王「この身が砕けようとも!!!」

魔王「うおおおおおお!!」

魔神王「消えろおおおおおお」

ドゴオアアアアアアアオオオオオオオオッッッッ!!

14: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:00:51.877 ID:tprT3NzG0
~~現在 魔王 寝室

長女「そんな…事が…」

次女「…」

勇者「魔界…王…」

執事「…」

三女「?」

魔王「こうなっては誰も止められはしない…だろう…」

魔王「皆、席を外してくれないか…」

魔王「勇者と二人きりにしてくれ」

執事「ご所望とあらば…」

ギィ

バタン

勇者「魔王…」

魔王「すまぬな…勇者よ…」

勇者「何言ってるんだよ、ほんとに」

勇者「あんたが自分で言ったんだぜ?」

勇者「魔王クラスが二人で力を合わせれば魔神にすら対抗できる力になるってな」

勇者「俺は勇者、特に俺は魔王にすら勝てる実力の持ち主なんだからよ」

魔王「ふはは、頼もしいな…」

魔王「これで全てを任せられる…」

勇者「は?何言ってるんだよ?」

魔王「もう、私には時間がないのだ」

勇者「な!?」

16: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:01:16.995 ID:tprT3NzG0
勇者「そ、そんな怪我くらいあんたならすぐに治るだろう!?」

魔王「そう…だな…」

魔王「しかし魔界側のゲートを封印してきたのだ」

魔王「全ての魔力と引き換えに」

勇者「そんな…」

魔王「今の私に大怪我を治す余力はないのだ」

魔王「それに生半可な魔力では、魔神王の足止めにすらかなわんだろう…」

勇者「じゃあ、魔法で…治せば…」

魔王「それも無駄だったのだ」

魔王「すでにここに来るまでの間、次女に最大回復魔法をかけ続けてもらったが…」

勇者「……」

魔王「ふぅ…」

魔王「孫の顔くらい見たかったぞ…」

魔王「魔族と…勇者の…」

魔王「まさに、人間界と魔界の架け橋」

魔王「希望の光となるべき者をな…」

勇者「…魔王…やめろよ…そんな話…」

勇者「聞きたくねえよ…」

魔王「このような事お前にしか頼めんのだ…お前だからこそ…」

勇者「やめろって!!」

18: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:02:36.276 ID:tprT3NzG0
勇者「あんたは…いつも勝手だよな…」

勇者「人の事全部勝手に決めて、全部一人で背負いこんで…」

勇者「なんで魔族はそんな頭が固いやつしかいないんだよ!!」

魔王「ふは…は…」

魔王「それもお前が変えて…くれるさ…きっと…」

勇者「…」

魔王「願いを聞いてくれるか?」

勇者「なんだよ…」

魔王「逃げてくれ…」

勇者「…」

魔王「せめて…娘達を…魔王軍を…」

魔王「頼む…」

勇者「あぁ…」

魔王「よかった…」

魔王「」すっ

勇者「おい!」

20: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:02:55.325 ID:tprT3NzG0
執事「大丈夫ですじゃ」

勇者「は!?」

執事「お疲れになったようで、眠られているだけですじゃ」

勇者「そう…なのか…」ほっ

勇者「全部…」

執事「えぇ、聞いていました…」

勇者「そうか…」

執事「さぁ、出ますぞ」

執事「この部屋の時間を遅らせますゆえ…」

勇者「じ、時間を!?」

執事「えぇ、私はこの城の全てを司っていますじゃ」

勇者「…なるほどな…」

執事「私たちに時間はもう、残されていませぬ」

勇者「あぁ…」

~~魔王城 居間

「「「「…………」」」」

バタンッ

次女「あ、勇者!」

勇者「…」

21: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:03:47.971 ID:tprT3NzG0
長女「勇者さま…」

次女「すぐに準備しなさい!」

長女「え?」

次女「仇討ちにいくわよ!!魔神王だかなんだか知らないけど私たちでそいつを!!」

長女「次女……」

次女「な、なによ?私たちと勇者で一斉にかかれば…」

次女「ねぇ?勇者!そうでしょ!!」

勇者「………」

次女「そん…な…」

次女「くっ」ダダダッ

長女「次女!!」

バタンッ!

勇者「……」

長女「勇者さま…」

勇者「すまねぇ…魔王との…約束だから…」

22: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:04:09.445 ID:tprT3NzG0
ギィ

執事「準備が整いましたので…」

長女「執事さん…」

勇者「どういうことだ?」

執事「逃げましょう」

勇者「あぁ、そういうことか…じゃあ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ

勇者「な、なんだ!?いったい!?」

長女「……」

勇者「おい!じいや!?」

執事「」

勇者「じいや…?」

執事「」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ドスンッ…ドスンッ…ドスンッ

勇者「城が…動いてる…」

長女「執事さんは、魔王城なのです」

勇者「つまりどういう?」

23: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:04:29.690 ID:tprT3NzG0
長女「四百年前こちらがわに来たときに、一番の側近だった執事さんをお父様が魔王城にしたのです」

長女「ゲートの結界として…」

勇者「…」

長女「そして執事さん自身も望んで城になることを選びました」

長女「二度と城の敷地内から出られないと知りながらも」

勇者「そうだったのか」

勇者「だから全て見えていたんだな」

勇者「この、イスや食器…一つ一つすら…」

長女「それは、買ったものですわ」

勇者「………そうなの?」

24: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:05:17.453 ID:tprT3NzG0
~~

ドスンッ…ドスンッ…

長女「どこに行かれますか?ここは大陸の北の果てですよ」

勇者「じいや…聞こえるか…」

勇者「このまま南極を目指そうとおもう…」

勇者「少し住みにくいとは思うけどよ、あの絶氷の大陸の中なら」

勇者「魔神王の手も届かないと思うんだ」

ギギギギギギギギ

ドスンッ…ドスンッ…

勇者「進路が変わった」

長女「庭の花も…枯れちゃいますね…」

勇者「まぁー、しかたないさ」

勇者「もう終わりだ」

勇者「何もかもさ」

長女「……」

25: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:12:18.006 ID:tprT3NzG0
~~魔界 ゲート

魔神王「はぁぁぁ!!」

バキバキバキィィィィィン

魔神王「はぁ、はぁ、最後に手間をとらせおって…」

魔神王「できの悪い弟を持つと…ふふ…」

魔神王「さぁ、ゲートは開いた!!」

魔神王「とるぞ!!人間界を!!」

魔神王「この世を!!」

魔物「「「「ウォォォォォォォ」」」」

~~魔王城

ガグンッッ

勇者「おっとっと」ふらふら

勇者「城が止まった」

執事「すいませぬ、あまり長距離の移動は…」

勇者「いいさ、これだけ進めればあと二週間もたてば」

執事「はい…そうですな」

執事「姫様たちは?」

勇者「はは、何でも見通すんじゃないのか」

執事「すいませぬ」

勇者「いいよ、休んでくれ」

執事「ご昼食は……」

勇者「飯より、先にやることもあるさ…」

執事「ゆ、勇者さま…?」

26: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:20:34.795 ID:tprT3NzG0
~~次女 寝室 前

勇者「ふぅ…」

勇者「入るぞ」

ガチャ

次女「…」

勇者「次女……」

次女「勝手に入って来ないでよ…」

勇者「キープアウトのテープはなかったぞ」

次女「…」

勇者「入れって言ったり入るなって言ったり、騒がしいなお前は」

次女「なんでよ…」

勇者「ん?」

次女「なんで戦わないのよ」

勇者「…それは」

次女「私の助けになるって言ったじゃない…」

次女「支えになってくれるんじゃなかったの…」

勇者「…助けたいからさ」

次女「そんな助け私はいらない!!」

勇者「お前の親父に言われたんだよ!!お前らを頼むって!!」

次女「…!?」

勇者「お前らを死なせるわけにはいかないんだよ!!」

次女「…」

勇者「分かってくれよ…頼むから…」

次女「わかんないよ」

勇者「な」

次女「だって知ってるんだもん」

次女「お父様がもう長くないって」

勇者「なぜそれを…!」

27: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:25:45.263 ID:tprT3NzG0
次女「私が回復魔法をかけてたのよ…気づかないわけないでしょ…」

次女「全然治癒していかないんだもん」

勇者「……だったら」

次女「わからないよ!!」

勇者「な!?」

次女「わかんないよ!お父様が死ぬっていうのに逃げろって!?」

次女「どこまで逃げても結局魔神王の手の内なんだよ!?」

次女「それに勇者のあんたが数百年生きる私たちをいつまで守っていれるって言うのよ!!」

勇者「…それは」

次女「誰も来ないところでこそこそ隠れて生きたとして…」

次女「それって…」

次女「本当に生きてるって言えるの…?」

28: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:30:59.692 ID:tprT3NzG0
~~魔王城 庭

勇者「…」

「お待たせ…」

勇者「………」

長女「もう!待ち合わせなんてしてないよっていうところですよ」

勇者「…わるい」

長女「考え事…ですよね…」

勇者「あぁ」

勇者「次女にしかられちゃってよ」

勇者「頭にきちゃってさ…」

長女「おきになさらずに…」

長女「あの子は口が悪くて…」

勇者「いや、頭にきたのは自分自身にさ」

勇者「あいつの言ってることは正しいと思ったよ」

勇者「なにも言い返せやしなかったんだ」

長女「勇者さま…」

勇者「でもな、俺も守りたいんだよ」

勇者「お前らを死なせたくないんだよ」

勇者「戦えばきっと全力を尽くしても死ぬ」

勇者「人類が今さら立ち上がってももう遅いんだ…」

勇者「魔王はもう戦えない」

29: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:34:25.957 ID:tprT3NzG0
勇者「じゃあどうすればいい?」

勇者「俺は人類も救いたいよ」

勇者「でもな…」

勇者「もう人類よりもお前らのほうが大切なんだ」

勇者「勇者のくせにさ…人類を見捨てて」

勇者「人類を囮にして誰もいない南極まで逃げようって言うんだよ」

勇者「笑ってくれ」

長女「…笑いませんよ」

勇者「いや…」

長女「笑えませんよ!!」

勇者「…」

長女「私は…」

長女「勇者様の事を憎んでました…」

勇者「…」

長女「今までも勇者の一族は何度も父を殺しに来てたんですよ…」

長女「許せるわけないです」

30: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:39:08.997 ID:tprT3NzG0
勇者「悪かった…」

長女「そんな言葉を聞きたいんじゃありませんッッ!」

勇者「…」

長女「でもですね…あのとき…」

長女「誰でもない《あなた》に話を聞いてもらったとき……」

長女「私は思ったんですよ…」

長女「救世主だって…」

長女「これが本当の勇者なんだって…」

長女「種すら越えた希望の光だって!!」

長女「だから悪かったなんて言わないでください!!」

長女「また、笑って助けてやるって!」

長女「微笑んでくださいよ!抱き締めてくださいよ!」

長女「私は…あなたの事を…」

勇者「約束なんだ…魔王との…」

長女「…くッ」

タタタッ

31: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:46:47.230 ID:tprT3NzG0
勇者「はぁ…」

執事「いけませんなぁ…」

勇者「じいや…」

執事「可愛い可愛い姫を二人も泣かせましたか…」

勇者「みたいだな」

執事「私もね、3人が生まれた時から何百年もお仕えしておりますじゃ」

勇者「…」

執事「迷惑かも知れませんが…自分の娘と孫のような気持ちすらいだいておりますじゃ」

勇者「幸せ者だよ、あいつらは」

執事「ふぉっふぉっ、もったいなきお言葉ですじゃ」

執事「私は…」

執事「《あなた自身の決断》に添い遂げましょう」

執事「たとえ、それが修羅の道だろうと、この命は捧げます」

勇者「ありがとう」

執事「当然ですじゃ」

執事「この城の次期城主となられるお方ですからな」

執事「それとももうそういう気はありませんか?」

勇者「いや、それもいいさ…」

勇者「あんたの城の時間を伸ばす能力なら長くあいつらを守れそうだしな」

執事「ふぉっふぉっ…」

執事「それも可能ですが…」

執事「老いぼれの言葉は聞かぬほうがよいでしょう…」

執事「全ては運命のままに…」

勇者「そうだな、じゃあ飯だ!!」

執事「はい、ただいま」

32: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 21:55:30.530 ID:tprT3NzG0
~~数日後 魔王城 居間

勇者「ここも寂しくなったな…」

執事「そうですな…」

勇者「みんなでワイワイ食べてたのが懐かしいよ」

勇者「にしても三女は来そうなもんだけどな?」

執事「大人のピリピリした空気を感じ取っているのでしょう…」

勇者「悪いことしちゃったな…」

執事「しかたありませんよ…」

勇者「まぁ、これから氷の壁に閉じ込めようってんだから」

勇者「もっと酷いことをするんだけどな…はは」

執事「…」

勇者「笑えないか、俺も面白いボケ思い付かないや」

執事「それはいつものことですじゃ…」ボソッ
勇者「え?なんて?」

執事「魔王城は遠くまで見えましてな…」

勇者「あ、あぁ」

執事「魔神王の進行が始まり、北方の国はもうありません」

勇者「そうか…」

執事「進行は遅くなったものの大陸全土にてが回るまで時間は無いでしょうな…」

勇者「間に合うのか?」

執事「五分と五分ですじゃ…」

勇者「そっか…」

勇者「一つ約束してくれるか?」

執事「はい」

勇者「もしもの時は俺が囮になる」

執事「…」

勇者「1日…いや3日くらいはもたせる…
勇者「まぁ、無理かも知れんが」

勇者「すぐに逃げてくれ」

執事「…」

勇者「たのんだぞ」

33: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:04:40.905 ID:tprT3NzG0
~~どこかの国

魔物「「「「ガアアアッッッ」」」」

「「「うわぁ!にげろぉ!!!」」」

「「「助けてくれぇぇぇ」」」

ドガアアアアアアアン

ズドオオオオオオオン

「勇者は…どこだよ…」

「そうだ…勇者様は…」

「もう…終わりじゃ…」

「まもなく…世界は終わる…」

ドガアアアアアアアン

~~魔王 寝室

勇者「来ちゃった!」

シーン…

勇者「返事しろよお義父さん!」

勇者「ってむりか、さすがに」

勇者「…」

勇者「悪いな…毎日押し掛けて…」

勇者「俺が気づくのが遅すぎたんだ」

勇者「もっと早く協力してたら…」

勇者「あるいはハッピーエンドもあったかもな」

魔王「スー…スー…」

勇者「…まだ…死ぬんじゃないぞ…」

34: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:04:50.168 ID:tprT3NzG0
勇者「じゃあ、また来るから!」

勇者「ここに花置いとくぞ」

勇者「って、庭の長女が育ててる花むしってきたんだけどね」

勇者「怒られるかな?」

勇者「怒ってくれねぇかなぁ」

勇者「じゃあ、ほんとうに帰る…また来る」

ガチャ

勇者「あっ」

次女「」

勇者「あ、悪い」

次女「……」

スッ

バタン…

勇者「嫌われちゃったな…」

勇者「ってじいや!!?」

勇者「なんてね、いないか」

35: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:08:51.129 ID:tprT3NzG0
三女「」コソコソ

勇者「あっ」

勇者「三ちゃん!」

タタタッ

勇者「おいかけっこか!」

勇者「よーし!いいだろう!」

タタタッ

ガチャ

勇者「ここに入ったな?」

勇者「って三女の自室か」

三女「……」

勇者「どうした?」

三女「んー、つまんない」

勇者「そうか?」

三女「みーんな難しい顔してるし、お姉ちゃん達も遊んでくれないの」

勇者「そっか」

勇者「なにして遊ぶ?」

三女「遊んでくれるの?!」

勇者「もちろんさ!」

三女「じゃあご本読んで!」

勇者「いいぞ」

勇者「むかしむかしあるところに…」

36: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:15:29.155 ID:tprT3NzG0
勇者「おしまい!」

三女「もっとー!」

勇者「もっとってもう夜中だよ、ふぁぁ」

勇者「なん十冊も読んで喉がからから…」

三女「えー、私はやりたいことをやりたいこと時にするの!」

勇者「あー、わがまま!」

三女「わがままでいいもーん」

三女「だって自分に嘘ついて生きるくらいなら」

三女「死んだ方がずっとましじゃん!」

勇者「…死んだほうが」

三女「そうだよ!」

三女「魔族はルールとか約束とかより自分の気持ちを優先していいんだよ!」

勇者「…」

三女「勇者のお兄さんちゃんも、好きに生きたら?」

三女「私たちを守らなくても私も強いし」

シュシュッ

勇者「強いな…三ちゃんは…」ガシッ

三女「なに!苦しいよ!」

勇者「強いよ、三ちゃんは…」

勇者「勇者なんかより…ずっと…ずっと…」

三女「泣いてるの…?勇者のくせに!」

勇者「勇者だって…泣くさ…」ズズ

三女「ふーん、じゃあ泣かないように強くならなきゃね」

勇者「あぁ、ありがとう三ちゃん」スッ

三女「?」

三女「いいよ」

勇者「俺は…決めたよ…」

37: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:18:52.451 ID:tprT3NzG0
~~魔王城 居間

勇者「じいや」

執事「これはこれは勇者様」

執事「こんな遅くに…」

勇者「」ズズッ

執事「…よい顔つきになられたようで」

勇者「そうだろう?勇者には笑顔が似合うのさ」

執事「笑顔にしては少々醜いですな」

勇者「あー!毒舌じいや!レアだ!」

執事「ふぉっふぉっ」

勇者「みんなを…呼んでくれ…」

執事「かしこまりました…」

38: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:24:58.507 ID:tprT3NzG0
~~

執事「遅いので三女は寝かせております」

勇者「あぁ、いいよ」

長女「…」

次女「なによ、こんな遅くに…」

次女「くだらない事言ったら…」

勇者「悪いけどッッ!」

次女「ひっ!」ビクンッ

勇者「今から言うのは全部くだらない事だ」

次女「はぁ?」

勇者「俺はこの世界を俺のハーレム天国にするために旅を続けてきたんだ」

次女「そんな酷い理由だったの…」

長女「…」

勇者「そして我らが親愛なる魔王様に出会ったってわけだ、最終決戦!」

次女「このっ!」

勇者「それがよ…どういう運命のいたずらか」

勇者「お前らのうちの一人と結婚するために」

勇者「短い間だったけど一緒に過ごした」

勇者「俺は楽しかったぜ」

次女「…」

長女「…」

39: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:28:55.678 ID:tprT3NzG0
勇者「正直最初はエロい事しか考えてなかった」

シーン…

勇者「だけどそれからいろんな事実を聞いて」

勇者「それが真実で、んで正直三人の事がすごおおおおおく好きだ」

勇者「愛してる!」

勇者「一人を選べって言われてもなかなか選べない!優柔不断でごめんな!」

次女「はぁ?そんなの…どうでも」

長女「ふふふ…ふふふふ」

長女「あははははははっ」

次女「お、お姉ちゃん!?」

勇者「ははっ…」

勇者「んで、今回の事があって氷の世界にお前らを閉じ込めようって算段だったわけだ」

次女「はぁ!?そんな事しようと!?」

勇者「それでよ…三ちゃんに気づかされた…」

40: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:33:01.183 ID:tprT3NzG0
勇者「いや、決めたんだ」

勇者「愛してやまない三人を」

勇者「あと、じいやも」

執事「ふぉっふぉっ」

勇者「そんな所に閉じ込めるのは可哀想だって」

勇者「そんな所で生涯を終えてほしくない」

勇者「幸せな人生をおくってほしい!」

次女「…」

勇者「だからよ…俺は」

勇者「魔王との約束は破る!!」

次女「え!?」

長女「ふふ」

勇者「みんな死んじゃうかもしんない!すまん!」

勇者「だけど俺は魔神王と戦うって決めたんだ!」

勇者「だけど俺一人じゃ絶対無理だしな」

勇者「すこーしだけ力を貸してくれないか?」

次女「あ…あの…」

長女「ふふふ…やっぱり勇者様は面白い人ですね」

長女「もちろん私は賛成ですよ」

勇者「よっしゃ!!」

41: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:36:46.424 ID:tprT3NzG0
執事「私がいないと魔神王の所まで遠いですからな」

執事「勇者様の意見の添います」

勇者「やったぜ!じいや獲得!」

勇者「そしてー?」

ジー

次女「…!」

次女「私が一番初めに戦うっていったんだからね!!」

勇者「…」ジー

次女「わかったわよ!もちろん賛成!!!」

勇者「よっしゃー!」

勇者「じゃあ、魔王軍もとい勇者一行は!」

勇者「世界を救うため…いや!」

勇者「幸せな結婚をするために魔神王をぶっ倒しに最後の冒険をするぞ!!」

長女「おー!」

執事「おー!」

次女「なんだそれ…!」

44: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 22:57:37.585 ID:tprT3NzG0
~~中央都市 王都

ズドオオオオオオオン

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

王「まさかここまで魔王の手が来るとはな」

大臣「勇者は死んだのでしょうか?」

王「これだけ姿を見せんのだ…」

王「今回の勇者もダメだった」

王「そういうことだろう」

大臣「くっ…」

~~城下町

兵士「こっちにもいるぞー!」

「何言ってるんだよ!そこらじゅうにいるだろ!」

魔物「「「ガルルルルル」」」

女の子「うぇぇぇぇん!!」

兵士「くそぉ!!」

魔物「ガァ!!」

兵士「危ない!」

ズシャアア

兵士「にげ…ろ…」

ドサッ

女の子「ふぇ、ふぇぇぇぇん!おにいちゃああん!!」

兵士「あぁ………」

地 獄 だ …

46: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:02:46.539 ID:tprT3NzG0
~~

魔神王「聞こえるかー!人間!!」

魔神王「我は魔王を越えし者」

魔神王「魔神王!!」

魔神王「もうすぐ終演を迎えることになる」

魔神王「泣け!叫べば!狂え!」

魔神王「全ては私の物となるのだ!」

「「「「ふはははははは」」」」

~~

王「もう…終わりだ…」

王「世界最強の軍が…ほれ見ろ…」

王「まるで虫けらじゃろ?」

大臣「せめて…王だけでも…」

王「どこに行ってもかわらんさ」

王「死ぬのが早くなるか遅くなるか…」

大臣「…くっ」

王「外を見てみろ、城壁の外には見たことのないほどの軍勢がまだ構えておる」

王「場内すら埋め尽くされておるのに…」

47: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:06:15.452 ID:tprT3NzG0
大臣「じきにここにも…」

王「あれは…」

王「ふっふっふ、ワシは狂ったか?大臣」

大臣「あ、あぁ…」

王「ワシには巨大な城が魔神王のもとへ突っ込んでいるように見える…」

大臣「おおおおお王!!」

王「城の上に…ワシは目には自信があったのだが」

王「物々しい城の上に勇者っぽいのが…」

大臣「王!!勇者は遠すぎて見えませんが城が動いてます!!」

王「なに!?」

48: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:13:25.270 ID:tprT3NzG0
~~魔王城 テラス

勇者「じいや、拡声魔法ってちゃんと声聞こえんの?」

『いま、しますじゃ』

勇者『うわっ!!声でか!!』

『って俺の声もでかいな!!』

『うわ…これも聞こえてる…』

魔物「「「ウワオオオ!?!」」」

人々「「「あぁ、この声はまさか!」」」

『みんな!!しっかり俺の声を聞いてくれよ!!』

『勇者様が助けに来たぞ!!』

『わりとヤバイことになってるみたいだな』

魔物「ま、魔神王様」

魔神王「ふん…」

『だが、俺が来たからにはもう安心しろ』

『俺と魔王一家で助けてやるからな』

『ちょ、ちょっと!それ言ったら!』

『いいんだよ!こんな時じゃないと聞かないだろ』

『わりとチープなお話になるけどよ』

『実は魔王は悪くありませんでしたー!』

『そして実は魔神王が黒幕でしたー!』

『ってなわけ』

ザワザワ

『まぁ、ようやくすると…』

『みんな…助けてやるから諦めんな』

『希望を持て…』

シーン……………

………………

………


49: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:15:06.907 ID:tprT3NzG0
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔神王「なんだこの地鳴りは?」

魔物「に、人間の声…ですかね」

魔神王「ぬん!!」

魔物「ピャッ」ブチュンッッ

魔神王「ふざけた奴だな、勇者とは」

50: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:17:13.547 ID:tprT3NzG0
「「「勇者様だ!」」」

兵士「希望が見えてきた!」

兵士「最後まで戦おう」

兵士「もちろんだ!!」



王「なんと…うっ…」

大臣「お、おう…助かりそうです… 」

王「すぐにまだ生きている国民と兵を城にかきいれろ!!」

大臣「は!?」

王「籠城じゃ!!猫一匹逃すな!」

大臣「はい!!!ただいま!!!」

51: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:25:58.747 ID:tprT3NzG0
~~魔王城 テラス

勇者「ふう、魔神王も面食らってるだろうな!あははっ」

次女「はぁー…そうね」

長女「次の算段は?」

勇者「んー、戦う」

次女「おい!!」

勇者「じいや!城の戦闘区から魔王軍を放って城壁内の国民を助けさせろ!」

次女「はぁ!?あいつらそんなのに従わないわよたぶん!!」

勇者「魔神王を倒した後のために、今のうちにとことん人間に恩を売るって名目でどうだ?」

長女「ふふふ、もしかしたら行けるかもしれませんね」

『わかりましたぞ』

勇者「じいや!声がでかい!!」

~~魔王城 正門

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王軍「クソ人間どもに恩をうってやろうぜー!?」

「もちろんだ!!一生使役してやるからな!!」

「同盟結ばせるぜ!?ひゃっはー!」

ドドドド

勇者「おー、居住区にはいなかったけど、あんなにいるんだな」

次女「あたりまえでしょ、魔王城なんだから」

三女「たのしそー!!お祭り!?」

勇者「そうだぞー!」

勇者「三ちゃん、力を貸してくれるか?」

三女「もちろん!!」

勇者「よーし!城内の敵をボッコボコにするんだ!」

勇者「あ、人間はだめだよ?」

三女「わかったー!!いってくるー!!!」

ピョン

勇者「オイイイイイ!!下まで百メートルはっっ!」

長女「大丈夫ですよ、小さいこは体が柔らかいんです」
勇者「猫じゃないんだから」

52: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:30:50.900 ID:tprT3NzG0
長女「それでは」

次女「私たちは、城壁外の魔神王とその仲間ね」

勇者「そうだが…」

長女「?」

次女「どうしたの……こんな時に…」

勇者「魔王に…会ってくるよ」

長女「ふふ、わかりました」

次女「先に行ってるからな!!」

勇者「あぁ、死ぬなよ」

次女「だれが!!」

ピョン

長女「それではお先に…」

ピョン

勇者「…」

勇者「俺はテラスから飛び降りないからな」

勇者「正面玄関からでるぞ」

53: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:35:53.241 ID:tprT3NzG0
~~魔王 自室

ガチャ

勇者「よう、魔王」

魔王「…」

勇者「毎度の如く、今日も来たぜ」

勇者「わるいなー、ゆっくり寝かせてやれなくてさ」

勇者「それに…」

勇者「あんたとの約束も破っちゃったよ」

勇者「逃げなかった…」

勇者「俺は俺の意思を貫く」

勇者「たとえあんたが世界の半分をくれるって言ったってな」

勇者「なんたって…」

勇者「俺は勇者…だからさ…」

勇者「それじゃ、この勇者の剣でどこまで生けるか…」

勇者「命に変えても守るから…」

ガチャ

「まて……」

勇者「!?」

勇者「ま、まおう!?」

魔王「ゴホッ…あぁ、魔王だぞ」

勇者「もう意識は戻らないかと…」

魔王「ふふふ、こんなときだからな」

54: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:42:57.335 ID:tprT3NzG0
魔王「お前の声は……全部…聞こえていたぞ…」

勇者「な、は、はずかしいな…」

魔王「まったく…最後の…願いすら…」

魔王「守って…くれんのだな…」

魔王「ゴホッ」

勇者「おい!もうしゃべるな!」

魔王「だがな…それでこそ…」

魔王「勇者だ…」

勇者「魔王…」

魔王「ふふふ、勇者たるもの…涙を流してはならん」

勇者「あぁ」

魔王「勇者たるもの…私の娘を…幸せにせねば…ならん…」

勇者「あ…あぁ…」

魔王「勇者たるもの…魔王を越えねば…ならん」

魔王「勇者たるもの…魔王との約束は破らねばならん」

勇者「あ…ああ…わかった…」

魔王「これが本当に最後の願いだ」

魔王「約束ではない」

勇者「な、なんだ!あいつらなら幸せにする!!」

魔王「残念だが…私にはもう魔法力…が残っとらん…」

勇者「……」

魔王「だが、莫大な魔力がまだある」

勇者「ッッ!?」

魔王「私の魂だ」

勇者「いやだ…」

魔王「私が…剣となり…貴様に手助けをしよう」

勇者「いやだ!!!」

魔王「そう悲しい顔をするでない…」

56: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:46:47.780 ID:tprT3NzG0
魔王「ただの…願いだ…」

ポワァンファァァ

勇者「いやだ、消えないでくれ!」

勇者「待ってくれよ!!俺はまだ!」

魔王「言っただろう…二人で…魔神を越える力を…手に入れれる…とな…」

勇者「そんな…」

魔王「本当にもう時間はないのだ…」

魔王「剣となり…自我は失うが…お前が果てるまで寄り添うとしよう…」

勇者「…うう」

魔王「孫の顔を見たかったなぁ…」

魔王「たのんだぞ…全てを…」

魔王「息子よ…」

勇者「お父さん!!!」

57: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:51:41.205 ID:tprT3NzG0
~~戦場

「「「「ガルルルルル」」」」

長女「はぁ、はぁ」

次女「倒しても倒しても減らない……」

長女「もう…」ガクッ

次女「お姉ちゃん!!」

魔物「ウガアアッッッッ」

ズドオオオオオオオン

次女「……!」

長女「うぅ…」

勇者「待ったか?」

次女「待たせ過ぎよ……」

次女「に、二刀流なの?」

長女「その…剣は…まさか…」

勇者「これは…俺たちの希望だ…」

勇者「くらいな魔物どもおおおッッッ」

ズドオオオオオオオオオオッッッッ

次女「くっ!!」

長女「すごい…一降りで半分以上を…!」

勇者「俺はもう、勇者も魔王も越えた…」

魔神王「ほう…」

勇者「ただお前を倒す者だ…」

58: VIPがお送りします 2017/11/02(木) 23:56:58.629 ID:tprT3NzG0
魔神王「やれるならやってみろ!!」

魔神王「私こそ全てを越えし者なのだ!!」

魔神王「研ぎ澄まされた一撃!膨大な魔力!」

魔神王「もはや貴様の一撃など」

ズドオオオオオオオン

魔神王「な!?」

勇者「おしゃべりが長いんだよ」

勇者「いくぞおおおお」

ズドドドドドドガアアアアアアアン

魔神王「なるほど…!貴様!!」

魔神王「糧にしたな!?魔王を!!」

魔神王「しょせん貴様も余と同じようだな!!」

勇者「あぁ!糧にしたさ!!この剣は俺達の希望なんだ!」

勇者「お前とは違う!!」

ズドオオオオオオオン

魔神王「くッッ強いな!しかし!」

魔神王「余はお前とは違うからこそ勝てるのだ!!」

勇者「なにを!!」

魔神王「王都を最大火力で吹き飛ばす!!」

魔神王「もういらぬわ!!」

59: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:01:13.580 ID:5l47NYOr0
勇者「なッッッッ!?」

魔神王「さぁて?どうする」

ギュオオオオオオオンッッッッ

魔神王「はぁ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ

勇者「ふ、防ぐしかないだろう!」ビシュンッッッ

魔神王「ほう!やはり貴様が盾になるか!」

勇者「うぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ」

ドドドドドドドドドド

勇者「もってくれ!!俺の体ぁぁぁぁ!!!」

長女「勇者様!!!」

次女「無理よ!!離して逃げて!!!」

次女「あなたが死ねばもともこも無いでしょ!?」

勇者「だめだ!!譲れねぇ!!」

勇者「こんな球止めてやる!!」

勇者「任されたんだ!!全てを!!」

勇者「うぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ」

カッッッッ!!

ズドオオオオオオオオオオオオオ…

60: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:03:21.970 ID:5l47NYOr0
ゴゴゴゴ……

長女「なんて爆発なの…」

次女「勇者…!!」

勇者「」

次女「勇者!!起きてよ!!」

勇者「」

次女「勇者ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

長女「そ…んな………」

魔神王「ふはは…ふははは…」

魔神王「最後の希望とやらもずいぶん脆いなぁ?」

魔神王「あれだけの魔力を込めたのだ…死んだだろう…」

61: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:07:20.734 ID:5l47NYOr0
次女「絶対に殺させない…」

ポワァァアン

魔神王「回復魔法か?死んだやつに使えるわけがないだろう」

次女「いやだ…もう失いたくないの…」

次女「私の手のなかで散っていかないでよ…」

長女「……次女…」

次女「貴方まで死んだら私たちはどうなるのよおおおおお!!」

勇者「」

魔神王「ふふふ、念のために勇者の亡骸ごと王都消し飛ばすか」

魔神王「もちろんお前らもだ」

長女「さ、されるものですか!!」

魔神王「余もこれだけの力をやすやすと撃てるわけではない」

魔神王「だが、最後の一発をくれてやるにはちょうどよき時だろう?」

長女「くっ」

次女「勇者…勇者…きて…」

ポワァァアン

62: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:12:53.729 ID:5l47NYOr0
魔神王「さぁて、これでフィナーレだ」

ギュオオオオオオオン

魔神王「跡形もなく消し飛ぶがいい」

長女「」ばっ

魔神王「お前が盾になると?」

長女「そ…そうよ…」ガクガク

魔神王「その震えた細い体でか!?」

魔神王「ふはははは!」

魔神王「貴様ごとき消し飛ぶだけだ」

魔神王「なにもかわりはせん」

魔神王「どけ、貴様なら余の側室として生かしてやろう」

長女「……だれが」

魔神王「ん?」

長女「誰があんたみたいな魔族の面汚しの物なんかになるものですか!!」

長女「私は勇者様のモノになるって…ッッ」

長女「もう決めているんですからッッッッ」

魔神王「ならば消えろ」

ズドオオオオオオオン

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ

次女「お姉ちゃん!!」

長女(あぁ…ここで…私は…)

長女(いえ…後悔はありません…)

63: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:13:56.603 ID:5l47NYOr0
ドスンドスンドスンドスンッッッッ

魔神王「な!?魔王城が!?!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ズドオオオオオオオオオオオオオオオ…………

………


64: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:16:14.915 ID:5l47NYOr0
長女「そん…な…」

次女「じいや……」

ゴゴゴゴ……

パラパラ…

魔神王「いやはや、城が動くとは実に面白い…」

魔神王「主君関係を叩き込むのが実にうまいな」

魔神王「やはり、魔族は残酷……」

魔神王「これに限る…」

「そんなんじゃねぇ…」

魔神王「!?」

65: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:20:38.438 ID:5l47NYOr0
次女「勇者!!」

勇者「てめえが魔族を語るなよ」ガクガク

魔神王「ほう、死に損ないか」

勇者「最後の最後に格好つけすぎなんだよなぁ…」

勇者「じいや…」

勇者「あんたの無償の愛は伝わってるはずだ」

勇者「ぜったいに…」ツー

魔神王「なんだ、泣いておるのか?」

勇者「あぁ、泣くさ…勇者だって」

次女「うわぁぁぁん…」

長女「うぅ…」

勇者「てめぇには無いだろうな…」

魔神王「あぁ、ないさ」

勇者「だからおまえは魔族ですらねぇ」

勇者「ただの落ちこぼれなんだよ」

魔神王「ほう?これだけの強さをもち落ちこぼれとは…」

魔神王「相当頭がわるいようだな?」

66: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:27:50.188 ID:5l47NYOr0
勇者「あぁ、俺は頭が悪いさ」

勇者「だが失敗作じゃねぇ、お前とはちげぇ…」

勇者「それを教えてやるよ!」

ズドオオオオオオオン

魔神王「くっ!」

魔神王(くそう!魔法力がさっきので!!)

ズドオオオオオオオン

魔神王「泣きながら戦ってくるとは…」

勇者「こわいか?」

魔神王「!?」
ズドオオオオオオオン

魔神王「ぐぅッ」

勇者「そうだろう?」

勇者「お前には無い感情だろうからな?」

魔神王「ほざくなぁッッ!!」

ズドオオン

魔神王「な!?」

勇者「効かねぇよ…そんな薄っぺらい攻撃は」

勇者「おらぁ!」

ズドオオオオオオオンズドオオオオオオオン

魔神王(お、重ィィィィィィ!!)

魔神王(一撃一撃が真に迫るような重みだ!!)

勇者「到底到達できねぇよ、お前じゃ」

魔神王「なんなのだ!?貴様は!?」

魔神王「なにがそこまでお前を強くするのだ!!!」

勇者「俺もわかんねぇよ…」

魔神王「な!?」

勇者「ただ、俺には…帰りを待ってくれてる三姉妹がいるから…」

魔神王「シネエエエエ!!」

勇者「俺は負けられねえええんだよおおお!!」

ズドオオオオオオオオオオオオオオオ…

67: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:30:46.791 ID:5l47NYOr0
………………………………………………

…………………………………

…………………

………



次女「勇者!!」

長女「勇者様!!」

タタタッ

勇者「…」

次女「大丈夫!?」

長女「生きてますか!?」

勇者「」

次女「そんな…」

長女「こんなのって……」

勇者「美女二人に…囲まれてるな…」

勇者「ここは……天国ですか…」

次女「勇者!!」

長女「よかっ…た…!」

「ただいま…」

68: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:40:27.447 ID:5l47NYOr0
まもなくして、魔王軍率いる三女に王都内の敵も殲滅され…また平穏が戻った

~~???

勇者「イテテ、まだ治らねぇなぁ」

三女「私の活躍褒めてー!!!」

勇者「三ちゃんサイコー!!よく頑張ったね!!」よしよし

三女「~♪///」

次女「はぁ、デレデレしちゃって…」

長女「あら、焼きもちかしら?」

次女「んなわけないでしょ!」

次女「ってことも…ない…けど…///」

次女「それよりあんたどうすんの!?」

勇者「え?」

次女「北の都市は壊滅、王都の再建もまだおぼつかないし」

次女「魔界だって魔王二人を失って混乱状態よ!」

勇者「ふーん…」

次女「ちょっと、聞いてるの?」

勇者「え?なにが?」

次女「もう!」

長女「ふふふ、少し休ませてあげれば?」

魔王軍魔物「勇者様!!」

勇者「う、またか」

魔物「えー、人間の使いが来て勇者を出せと言っております!」

魔物「救世主に休む暇はないぞとのことで…」

勇者「はぁ…」

勇者「使いを出してくれ…」

魔物「は、はぁ?よろしいので?」

勇者「たぶんねー…」

魔物「はっ!!」

バタンッッ

勇者「はー、執事としての作法がなってないね。じいやの足元にも及ばない」

69: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:44:29.141 ID:5l47NYOr0
次女「そりゃあ、そうでしょ」

長女「ふふふ」

勇者「まぁ、仕方ないけどな」

勇者「とりあえず人間がこない魔界にいって、しばらくバカンスでもしよーぜ」

次女「いいわね!」

三女「やったー!!」

長女「あらあら…ふふふ」

勇者「よーし!そうと決まれば移動だ!!じいや!!」

執事「かしこまりました…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

~~外

王の使い「うわぁ!!城が動いた!?」

「また逃げ出す気だな勇者様は…」

「まぁ、しばらくはよいでしょう」

「魔王城も半分くらいの大きさになったが、壮観だなぁ」

71: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:48:42.629 ID:5l47NYOr0
~~

勇者「魔界にも海あるの?」

執事「ありますじゃ」

勇者「よーし、じゃあ目指すは海だな!」

執事「勇者様…」

勇者「なに?」

執事「戦いはまだ終わってないようですぞ?」

勇者「え?どういうことだ?」

三女「私が勇者と遊ぶのー!!」

次女「いつもあんたばっかりじゃない!!」

長女「あらあら、二人とも子供ね」

長女「勇者様にはやはり私がふさわしいと思うわ…」

次女「なんですってぇ!!?」

勇者「あぁ…なるほど」

執事「ふぉっふぉっ、楽しくなりそうですなぁ」

勇者「そうかな…」

執事「そうですじゃ」

勇者「そうだな!!」

~~fin ×

73: VIPがお送りします 2017/11/03(金) 00:49:53.733 ID:5l47NYOr0
ありがとうございました!!まだ見てる人いるかな…

長くなりましだがこれで終わります!!乙でした!!

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