裁判長「処刑方法は、斬首、感電、絞首、薬殺、どれがいい?」死刑囚「全部嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

2018年12月25日
裁判長「処刑方法は、斬首、感電、絞首、薬殺、どれがいい?」死刑囚「全部嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

1: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:21:10.871 ID:F5roymMf0EVE
第一話『斬首』



― 裁判所 ―

裁判長「判決を申し渡す」

裁判長「我が国の法にのっとり、馬車強盗の主犯であるおぬしは死刑」

裁判長「仲間達は終身刑とする。後日地方の牢獄に身柄を送るものとする」

死刑囚「いやだ、死刑なんて嫌だぁぁぁぁぁ!」

裁判長「我が国では、死刑囚は四つの処刑方法から好きな処刑法を選ぶ権利がある」

裁判長「斬首、感電、絞首、薬殺、どれがいい?」

死刑囚「全部嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

裁判長「ならば、こちらで決めさせてもらう。おぬしは斬首刑に処す」

裁判長「執行は本日中に行う」カンッ

死刑囚「嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

5: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:25:25.175 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑人の部屋 ―

兵士A「判決が下りました。本日の処刑法は斬首だそうです。準備して下さい」

剣士「俺か!」

帯電娘「いいなー、行ってらっしゃーい!」バチバチッ

ロープ使い「使命を果たしてくるがいい」

白衣女「…………」

剣士「じゃ、行ってくる」

7: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:28:36.585 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

死刑囚「やだ、やだ、やだぁぁぁぁぁ!」ジタバタ

兵士A「コラ、暴れるな!」

兵士B「大人しくしろ!」

剣士「いいって。自由にさせてやれ。その方が悔いが残らないだろ」

兵士A「しかし……」

剣士「どれだけ暴れようが、どうせ結果は同じだ」

8: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:31:31.456 ID:F5roymMf0EVE
兵士A「では……」パッ

死刑囚「!」

死刑囚(逃げてやる――)ダッ

剣士「…………」シャッ


ザンッ!


ボトッ… ゴロン…

剣士「終わった」

兵士A「おお……!」

兵士B「逃げ出した罪人の首を正確に……!」

9: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:36:34.560 ID:F5roymMf0EVE
裁判長「見事だ」

剣士「裁判長! たしか、この事件では娘さんが……」

裁判長「うむ、買い物に行くためあの馬車に乗っていたので、巻き込まれてしまった」

裁判長「だがこれで、我が娘をはじめとした強盗事件の犠牲者も浮かばれるであろう」

剣士「そうおっしゃって頂けると光栄です」

剣士「こうして役目を頂き、今も生きていられるのはあなたのおかげなのですから」

裁判長「あれからもう、どれぐらい経つか……」

11: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:40:21.282 ID:F5roymMf0EVE
剣士(かつて、俺は闘技場の剣闘士だった――)



~回想~

― 闘技場 ―

ワァァァ…… ワァァァ……

剣士「でやぁっ!」

ザシュッ!

対戦相手「ぐああっ……!」ドサッ

剣士「よっしゃあ!」

オオォォォォォ……!

「つええ~!」 「また勝ちやがった!」 「ちくしょー!」

13: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:42:24.374 ID:F5roymMf0EVE
友人「すげえな、これで30連勝だ! お前に勝てる奴はいねえよ!」

剣士「その通り! 誰にも負ける気がしねえ!」

剣士「俺はこのまま、闘技場のスター選手になってみせるぜ!」

友人「俺も一剣闘士、一ファンとして応援してるよ! 頑張れよ!」

剣士「おう!」

14: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:45:41.414 ID:F5roymMf0EVE
ところが――

剣士「……オーナー! これはどういうことです!? なぜ俺を拘束するんです!?」

オーナー「すまんな……お前は強すぎるのだ」

オーナー「闘技場興行はしょせん賭博の場……お前のような者がいては成り立たんのだよ」

オーナー「それに、私が懇意にしている資産家の中にも、お前に大損させられた方がおってな」

オーナー「彼らの留飲を下げるためにも、悪いが死んでもらうことにした」

剣士「そんな……! 俺はただ勝ち続けてきただけなのに! 悪いことなんてしてないのに!」

オーナー「処刑は後日行う」

剣士「オ、オーナー……!」

15: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:48:45.740 ID:F5roymMf0EVE
処刑の日――

オーナー「では、この者に矢を――」

裁判長「待てい」ズイッ

オーナー「こ、これは裁判長閣下! なぜここに!?」

裁判長「私刑は法律で禁じられている。それに――」

裁判長「この者の剣の腕……葬るにはあまりに惜しい」

裁判長「捨てるというのならば、私に任せてもらえぬだろうか」

オーナー「し、しかし……。大勢の人間が彼の死を望んでおり……」

裁判長「これでどうだ?」ジャラッ…

オーナー「こ、これは……どうぞご自由に!」

16: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:51:52.095 ID:F5roymMf0EVE
剣士「……助けて下さってありがとうございます」

裁判長「礼などいらん。私が勝手にやったことだ」

剣士「俺に何をせよと?」

裁判長「処刑人だ」

裁判長「我が国では極刑となった罪人には、四つの処刑法から一つを選ばせるしきたりとなっておる」

裁判長「ゆえに処刑人は四人必要なのだが、汚れ仕事ゆえ成り手がおらぬ」

裁判長「やってくれるな?」

剣士「……やります! それしか生きる道がないのなら喜んで!」

…………

……

21: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:55:32.052 ID:F5roymMf0EVE
また別の日――

― 裁判所 ―

裁判長「おぬしを死刑に処す」

裁判長「我が国では、死刑囚は四つの処刑方法から好きな処刑法を選ぶ権利がある」

裁判長「斬首、感電、絞首、薬殺、どれがいい?」

「……斬首でお願いします。最後はやはり、刃で死にたい」

裁判長「心得た」

裁判長「剣士に準備するよう、伝えておけ」

兵士A「はっ!」

22: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 21:58:25.655 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

兵士A「あれが今日の罪人です」

剣士「お前は……」

友人「…………!」

友人「お前、どこ行ったのかと思ったら、処刑人になってたのか……」

剣士「ああ……スカウトされてな」

23: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:01:35.282 ID:F5roymMf0EVE
友人「あの後、お前がいなくなったからか知らんが、あの闘技場もすっかり廃れちまって」

友人「俺は剣闘士を辞めさせられたんだ……」

友人「その後は落ちに落ちて、盗賊どもの用心棒に成り下がっちまった……」

剣士「…………」

友人「なぁ……頼みがある」

友人「俺に剣を持たせてくれ……最後に勝負してくれないか?」

剣士「いいぞ」

兵士A「な……! いくらなんでもそれは……!」

剣士「奴に剣を渡してやれ」

兵士A「もしものことがあったら……!」

剣士「渡せ」ギロッ

兵士A「は、はいっ!」

24: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:04:36.620 ID:F5roymMf0EVE
友人「へへへ……お前の雰囲気、まるで変わらないな。あの時のまんまだ……」

友人「いや、むしろ剣闘士時代より研ぎ澄まされてる……」

剣士「…………」

友人「いくぞ」チャキッ

剣士「来い」ザッ

友人「だああああああああっ!」ダダダダダッ


ザンッ……!


ボトッ… ゴロン…

剣士「終わった」

兵士A「一瞬で……!」

兵士B「相手も決して弱くはなかったのに……」

25: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:06:30.845 ID:F5roymMf0EVE
裁判長「見事だ」

剣士「申し訳ありません、裁判長……。俺は勝手なことを……」

裁判長「いや、かまわん」

裁判長「あの罪人も万に一つにも自分に勝ち目がないことは分かっていたのだろう」

裁判長「見事な“処刑”だった」





―終―

28: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:12:10.172 ID:F5roymMf0EVE
第二話『感電』



― 村 ―

子供A「なんでお前バチバチしてるんだよ~!」

子供B「や~いや~い、化け物~!」

子供C「頼むからこっち来るなよ~! あっち行けっ!」ポイッ


少女「あうっ!」ガンッ

少女「うっ、うっ、うっ……」バチバチ

29: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:15:30.644 ID:F5roymMf0EVE
父「ったく、なんでこんな化け物が生まれちまったのか……」

父「いいか! お前の母親だって、お前のせいで死んじまったんだ! お前が殺したんだ!」

父「そのバチバチするわけ分かんねえ体質のせいでなぁ!」

父「このっ!」バシッ

少女「きゃっ!」バチバチッ

父「いだあぁぁぁぁぁっ!」

父「くそっ、殴ることもできやしねえ……この化け物め!」

父「お前なんか出てけ! 出ていっちまえぇ! 二度と家に戻ってくんな!」

少女「あうう……」

30: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:18:10.727 ID:F5roymMf0EVE
少女「うっ、うっ、うっ……」バチバチッ

少女(あたしだって、好きでこんな体になったわけじゃないのに……)

少女(みんながあたしをいじめる……あたしを嫌う……)

少女「もう、いいかな」

少女「このまま死んじゃっても……」

裁判長「待ちたまえ、少女よ」

少女「……あんた、誰?」

裁判長「私はこの国の裁判長だ」

32: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:20:30.427 ID:F5roymMf0EVE
裁判長「君の噂を聞いてやってきた」

裁判長「君のその雷神のような体質、私のもとで生かしてみんか」

少女「…………」バチバチッ

裁判長「さぁ」サッ

少女(生まれて初めて出会った……)

少女(私と握手してくれる人……)

ギュッ… バチバチッ

裁判長「ついてくるがいい」

少女「うん!」

…………

……

35: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:24:42.297 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑人の部屋 ―

兵士A「判決が下りました。本日は感電死だそうです」

帯電娘「やったぁ!」バチバチ

剣士「……喜んでやがる」

ロープ使い「この仕事を楽しんでやっているのはお前くらいのものだ」

白衣女「…………」

帯電娘「だってぇ、楽しまなきゃ損じゃん! どうせ殺すのは、極悪人なんだしい!」

帯電娘「じゃ、行ってきまーす!」タタタッ

37: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:27:31.213 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

帯電娘「兵隊さんは、はなれててねー」

帯電娘「そいつにくっついてると、あんたも死んじゃうからさ」バチバチッ

兵士A「わ、分かりました」バッ

帯電娘「さあさあ、抱き締めてあげる~」バチバチッ

罪人「ひいいいっ!」

罪人「ま、待ってくれ! やっぱり怖い! 助けてくれぇ!」

帯電娘「やだぁ~、震えてる、だらしなーい!」バチバチッ

40: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:30:20.666 ID:F5roymMf0EVE
帯電娘「何したかしんないけど、きっちり地獄で罪償ってね~」

ギュッ…

罪人「がっ!」

バチバチバチバチバチバチバチッ

罪人「あぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!」

プスプスプスプスプス…

ドシャッ…

帯電娘「はい、終了~! 片付けといてね、このゴミ!」

兵士A「うげぇ、黒焦げだ……」

兵士B「いつもながらむごい……」

41: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:34:03.872 ID:F5roymMf0EVE
そんなある日――

― 裁判所 ―

裁判長「中央牢獄から、脱獄囚が出た」

裁判長「国王陛下から『処刑許可状』も出ている」

裁判長「つまり、おぬしたちが時間場所方法を問わず処刑することが認められたわけだ」

裁判長「直ちに捜索し、見つけ次第処刑してくれ」

剣士「はいっ!」

帯電娘「はーい」

ロープ使い「はい」

白衣女「分かりました」

42: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:37:30.547 ID:F5roymMf0EVE
― 郊外 ―

タタタッ… タタタッ…

剣士「このあたりに逃げ込んだらしいが……」

ロープ使い「こっちにはいないな」

白衣女「……こちらにもいません」

帯電娘「ったくぅ~、ゴミの分際であたしたちを手こずらせてくれちゃって!」バチバチッ

剣士「ゴミとかいうなよ。囚人とはいえ人間だぞ」

帯電娘「ゴミじゃん! 死刑になるような奴はみんなゴミよ! 地獄に落ちりゃいいのよ!」

剣士(こいつ……!)



帯電娘「ん?」

帯電娘「新しい足跡……」ニタァ…

43: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:40:38.435 ID:F5roymMf0EVE
帯電娘「見ィ~つけたぁ~」ニコッ

脱獄囚「あ、あああ……」

帯電娘「ラッキーだったね、あたしに見つけてもらえて」バチバチッ

帯電娘「こんな可愛い子に抱き締めてもらえた上、死ねるんだからさ」

帯電娘「つーかまえた」ギュッ

脱獄囚「やめっ――」

バチバチバチバチバチッ

脱獄囚「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

プスプスプスプスプス…

ドシャッ…

44: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:42:45.479 ID:F5roymMf0EVE
剣士(今の音は……仕留めたのか!)タタタッ

剣士「!」



帯電娘「いっぱいいっぱい恨んでね。あたしのこと……」バチバチッ

帯電娘「そうすりゃ、お母さんを殺したあたしも、きっと地獄行けるからさ……」

帯電娘「うーんとうーんと重い地獄に……」

45: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:46:33.395 ID:F5roymMf0EVE
剣士「……おい」

帯電娘「わっ、ビックリした! ほら、この通り終わったよ!」バチバチッ

剣士「今日は……手をつないで帰ろうか。ほれ」サッ

帯電娘「なにそれ? いいのー?」ギュッ

バチバチッ

剣士(ぐっ!? 普通にしててもこんなに……!)

帯電娘「無理しなくていいよー、手ぇはなしなよ」

剣士「無理なんか……してねえって……」





―終―

46: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:50:23.250 ID:F5roymMf0EVE
第三話『絞首』



― 処刑人の部屋 ―

兵士A「本日は絞首刑を執行して下さい」

ロープ使い「では、使命を果たしてくる」

剣士「あんたの腕なら大丈夫だろうが、きっちりな」

帯電娘「いいなぁー!」

白衣女「…………」

48: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:53:30.951 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

凶悪犯「死にたくねえっ! 死にたくねえっ!」

兵士A「コ、コラッ!」

兵士B「暴れるな!」

凶悪犯「このっ!」バキッ

兵士A「ぐあっ!」

兵士B「な、なんて奴だ!」

凶悪犯「こちとら素手でクマを殺したことあるんだ! 逃げきってやる!」タタタタタッ

50: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:56:16.169 ID:F5roymMf0EVE
ロープ使い「逃がさん」ヒュンヒュンッ

ヒュルンッ

凶悪犯「ぐえっ!?」

凶悪犯「あが……がっ……!」

ロープ使い「刑を執行する」グイイッ

凶悪犯「あがっ……」ガクッ…

ロープ使い「執行完了」

兵士A「すげえ……!」

兵士B「あの暴れ牛みたいな奴をあっさりと……」

52: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 22:58:25.756 ID:F5roymMf0EVE
裁判長「かなりの凶悪犯だったから少し心配だったが、杞憂だったようだな」

ロープ使い「裁判長殿」

裁判長「相変わらず、見事な手並みだ」

ロープ使い「これが我が使命ですから」

裁判長「うむ、四人の中でこの仕事に最も使命感を持っているのは、おぬしであろうな……」

54: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:01:34.838 ID:F5roymMf0EVE
~回想~

― 街 ―

主婦「きゃーっ! 私のバッグが!」

ひったくり「へへへっ!」タタタタタッ

ロープ使い「逃がさん」ヒュルンッ

ひったくり「うわっ!?」ギュッ

ひったくり「く、くそっ……!」

ロープ使い「さ、憲兵に連絡を」

主婦「ありがとうございます!」

55: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:03:50.100 ID:F5roymMf0EVE
ワイワイ… ワイワイ…

町民A「素晴らしい縄さばきだ!」

町民B「あのひったくりを傷つけず捕えた!」

町民C「あんたがいればこの町は平和だ!」

ロープ使い「標的を傷つけず捕縛する……これが縄使いとしての、私の矜持ですから」

ロープ使い「では失礼」スタスタ…

56: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:06:23.912 ID:F5roymMf0EVE
― ロープ使いの家 ―

ロープ使い(……ん? 庭に誰かいるな……)


ガサゴソ…


女盗賊「あっ!」

ロープ使い「コソ泥め」

女盗賊「ちくしょう、捕まってたまるかい!」ダッ

ロープ使い「逃がさん」ヒュルンッ

女盗賊「ぐっ!」ギュッ

ロープ使い「捕えたぞ。さあ、大人しくするんだ」

57: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:09:15.516 ID:F5roymMf0EVE
女盗賊「はなせ! はなせぇ!」

ロープ使い「!」

ロープ使い「コラ、暴れるな! 首が絞まってしまう!」

女盗賊「はなせぇ!」

ロープ使い「よせ――」

ギュウッ…

ロープ使い「あっ」

ロープ使い「……死んでる」

59: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:13:32.963 ID:F5roymMf0EVE
― 裁判所 ―

裁判長「この私に直談判とは、何事かと思ったが――」

裁判長「賊を誤って殺してしまったので、今すぐにでも死刑にして欲しいということか?」

ロープ使い「はい」

ロープ使い「自首したのですが、罪にはならないと追い返されてしまったので」

裁判長「妥当な判断だろう」

裁判長「おぬしは盗人を捕まえようとして、死なせてしまっただけ」

裁判長「我が国の法では、それは罪にはならんからな」

ロープ使い「そうですか」

60: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:15:27.132 ID:F5roymMf0EVE
ロープ使い「ならば自分で自分を処するのみ!」ヒュルルンッ

ギュッ…

裁判長(なんと! 自分で自分の首を絞め、空中に吊り上げるとは!)

ロープ使い「…………」ブラーン…

裁判長(なんという男だ……)

裁判長(絶命するまで、あとわずかといったところか……)

61: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:18:34.284 ID:F5roymMf0EVE
ブチッ

ドザァッ…

ロープ使い「!」

裁判長「!」

ロープ使い「ロープがひとりでに……!?」

裁判長「…………」

裁判長「おそらく、神がおっしゃっているのだ。“生きよ”と……」

ロープ使い「しかし、生きてどうせよというのです。縄使いとして汚れてしまった私が……」

裁判長「ならば、私が神に代わり使命を授けよう」

裁判長「処刑人になってはくれぬか?」

…………

……

62: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:22:17.835 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑人の部屋 ―

兵士A「絞首刑が決まりました。準備をお願い致します!」

ロープ使い「使命を果たしてくる」

剣士「またあんたか」

帯電娘「ちぇっ、ずるーい! あたしも処刑したーい!」

白衣女「…………」

64: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:25:20.330 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

兵士A「執行をお願いします」

殺人犯「ひいい……!」

ロープ使い「うむ」ヒュルンヒュルンッ

ロープ使い(これが神から下された我が使命なのだ)ヒュルルッ

ギュッ…





―終―

65: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:31:12.340 ID:F5roymMf0EVE
第四話『薬殺』



― 診療所 ―

白衣女「本日の分のお薬です」

患者「噂には聞いてましたが、あなたの薬はすごい効き目ですね」

患者「おかげさまで、だいぶ足の痛みが取れました」

患者「ありがと――」

老人「これっ」ガシッ

患者「もごっ!?」

66: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:33:56.703 ID:F5roymMf0EVE
老人「貼り紙までしてある、この診療所でのルールを忘れたか」

患者「あっ……」


≪礼は言わないこと≫


患者「し、失礼しました!」

白衣女「いえ……」

白衣女(そう、私は礼をいわれるような人間ではない……)

68: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:36:56.054 ID:F5roymMf0EVE
~回想~

― 白衣女の家 ―

白衣女「あなた、今日も大勢の人から感謝されたわ」

白衣女「薬代の他に、果物をくださる患者さんもいて……」

夫「君の薬作りの腕は、天下一だからな」

白衣女「今に世界中の人を救えるような薬師になってみせるわ」

夫「君ならきっとなれるさ!」

69: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:39:51.775 ID:F5roymMf0EVE
ところが――

夫「ううう……」

白衣女「しっかりして、あなた!」

白衣女(なんなの、この症状……まったく見たことがないわ!)

夫「あがああぁぁ……」

夫「た、たす、けて……」

白衣女「大丈夫、大丈夫よ、あなた!」

白衣女「私があなたを救ってみせるわ!」

71: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:42:30.925 ID:F5roymMf0EVE
白衣女(私が調合したどの薬もダメ……あらゆるお医者さんが匙を投げてしまった……)

白衣女(どうして……どうしてよくならないの……)

夫「う、うぐぅぅぅ……」

白衣女「あなた!」

夫「痛い……苦しいぃぃぃぃ……! 眠ることすら、できない……!」

夫「殺してくれっ! 殺してくれーっ!」

白衣女「だ、だけど……」

夫「頼むぅぅぅぅぅぅぅぅ! もう耐えられないんだぁぁぁぁぁ!!!」

73: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:45:09.999 ID:F5roymMf0EVE
白衣女「……分かったわ」

白衣女「腕を出して」

夫「あ、ああ……」

チクッ

夫「うあぁぁぁ……痛みが、消えてく……」

夫「あ、ありがと……」

白衣女「あなた!」

夫「君は生きて……大勢の人を、救って、くれ……」

白衣女「あなたっ……!」

77: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:48:16.247 ID:F5roymMf0EVE
― 診療所 ―

裁判長「おぬしが有名な薬師殿か」

裁判長「さっそく、私のイボを診てもらいたいのだが……」

白衣女「…………」

裁判長「どうなされた」

白衣女「あなたは……裁判長様ですよね。聞いて頂きたいことがあります」

裁判長「申すがよい」

80: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:53:19.446 ID:F5roymMf0EVE
裁判長「……ふむ、おぬしはなにひとつ間違ったことはしていない」

裁判長「おぬしは夫を救うため手を尽くしたし、苦しみから解き放ったのだ」

裁判長「辛いであろうが、夫の願いを叶えるため、これからも生きねばならぬ」

白衣女「ですが……」

裁判長「おぬしがどうしても己を許せぬというのなら、処刑人になってみんか?」

白衣女「処刑人……」

裁判長「罪人を処刑する業の深い仕事だ」

裁判長「恐れられこそすれ、決して感謝されることなどない仕事だ」

白衣女「…………!」

白衣女「やります……やらせて下さい」

白衣女「私が礼を言われるのは……夫の最期の言葉が最後でいいのです……!」

…………

……

81: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:55:37.415 ID:F5roymMf0EVE
― 診療所 ―

中年男「さようなら!」

白衣女「お大事にどうぞ」

白衣女(診療所での今日の仕事はこれで終わり)

白衣女(午後からは裁判所に行かなくちゃ……)

82: VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:58:12.356 ID:F5roymMf0EVE
― 処刑場 ―

犯罪者「助けてくれぇぇぇぇぇ! まだ死にたくねえよぉぉぉぉぉ!」

白衣女「…………」チクッ

犯罪者「あぁ……ち、ちくしょ、う……」ガクッ

白衣女「執行完了しました。遺体の処理をお願いします」

兵士A「……お疲れ様です」

白衣女(あなた……私はこれからも大勢の人を救い、そして殺すでしょう)

白衣女(どうか見守っていてね……)





―終―

86: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:03:27.405 ID:TezMulSq0XMAS
第五話『第五の処刑法』



傭兵「ただいま!」

娘「お父さん、おかえりなさーい!」

傭兵「今日も父さんは活躍したぞ。このハンマーで、山賊どもをばったばったとなぎ倒したんだ」

娘「すっごーい! さすがお父さん!」

傭兵「ああ、そうだ。お父さんは無敵なんだ!」

娘「しかも、頭もいいもんね!」

傭兵「その通り! お父さんはなんだってできるんだ!」

アッハッハッハッハ…

…………

……

87: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:06:28.651 ID:TezMulSq0XMAS
― 処刑人の部屋 ―

剣士「……お前ら、裁判長がかつて何やってたかって知ってるか?」

帯電娘「知らなーい」バチバチッ

ロープ使い「そういえば、私も知らないな」

白衣女「…………」

剣士「それが聞いた話じゃ、元々は傭兵だったんだって」

帯電娘「えー、ウッソー!」

ロープ使い「まあ、たしかに只者ではなさそうではあったが……」

白衣女「……驚きましたね」

剣士「おおっ、あんたがしゃべるなんて珍しい」

白衣女「私にも口はありますから」

89: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:09:25.178 ID:TezMulSq0XMAS
ロープ使い「それにしても、傭兵から司法のトップになるとは……凄まじい経歴だな」

帯電娘「まあ、そんくらいでないと、この国の裁判長は務まらないって!」バチバチッ

帯電娘「治安悪すぎるもん! 今月だけでもいったい何人処刑したか!」

剣士「ああ……このところ、血生臭い事件が多すぎるな」

剣士「誰か、裏で糸を引いてる奴がいるんじゃないかって勘ぐっちゃうよ」

白衣女「…………」



裁判長「全員、揃っているようだな」ザッ

90: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:12:35.226 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「はい、揃ってます!」

帯電娘「今日のお仕事はー?」バチバチッ

裁判長「ある砦に武装集団がたてこもっている」

裁判長「国王陛下の治世に不満を持つ鼻つまみ者集団なのだが」

裁判長「身の丈に合わぬ高級な武具を装備しており、兵士たちを大いに手こずらせているというのだ」

裁判長「そこでおぬしたちに白羽の矢が立った」

ロープ使い「なるほど、普段の仕事とは違い、“処刑チーム”としての仕事ですか」

裁判長「そういうことだ」

91: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:15:41.745 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「この通り、陛下から『処刑許可状』も出ている」

剣士「おおっ!」

帯電娘「やったぁ! “好きに殺していいよ状”だ!」バチバチッ

剣士「変な言い方やめろ」

ロープ使い「これで我らは自由に処刑できるというわけですな」

白衣女「…………」

裁判長「直ちに砦に急行し、無法者たちを処刑せよ」

剣士「はいっ!」

裁判長「後に、私も応援に向かう。できればリーダーは生かしておいてもらいたい」

剣士「! ……分かりました!」

92: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:18:39.838 ID:TezMulSq0XMAS
― 砦 ―

コソッ…

ロープ使い「様子はどうだ?」

剣士「兵士たちを撃退したからか、警戒が緩んでる。今がチャンスだな」

帯電娘「よーし、みんな殺しちゃおー!」バチバチッ

剣士「白衣女さん、頼む」

白衣女「分かったわ。みんなマスクしてちょうだい」

白衣女「眠り薬を混ぜた水を、霧状にして噴射するわ」

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

93: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:21:32.319 ID:TezMulSq0XMAS
……

白衣女「これで入り口付近を固めてる武装兵たちは眠ったはずよ」

白衣女「ただし、砦の奥深くにいる連中には通用しないから、注意して」

剣士「ああ、あとは俺らに任せてくれ」

ロープ使い「全員、縛り首にしてくれる」

帯電娘「おかげで楽になったよ! ありがとねー!」バチバチッ

白衣女「私に礼はいわないでといったはずよ」

帯電娘「つれないなぁ……」

剣士「よし、行くぞ!」ダッ

96: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:24:20.009 ID:TezMulSq0XMAS
ザンッ!

「ぐああっ!」

バチバチバチバチバチッ

「ぎゃあああっ!」

ヒュルンッ ギュッ…

「がっ……!」



剣士「王国軍はこんな奴らに手こずったのか……だらしなすぎやしないか」

帯電娘「ホント! 処刑人が駆り出されるなんて世も末って感じ!」

ロープ使い「きちんと訓練された精鋭は、各拠点からうかつに動かせないのだから仕方あるまい」

97: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:28:05.795 ID:TezMulSq0XMAS
……

リーダー「なんだ!? 敵襲か!?」

部下「分かんねえ! 入り口付近の奴らは眠らされて、仲間が次々……!」

ザンッ!

部下「ぐはぁっ!」ドサッ…

リーダー「ど、どうした!?」

剣士「あとはお前だけだな」

帯電娘「ジャジャーン!」バチバチッ

ロープ使い「使命を果たさせてもらう」

98: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:31:48.618 ID:TezMulSq0XMAS
リーダー「なんだお前たちは!? 王国軍の特殊部隊か!?」

剣士「いや、俺たちはただの処刑人だよ」

帯電娘「国家に歯向かうバカを処刑しにきたのー!」バチバチッ

ロープ使い「だが、今回貴様を処刑するのは我々ではない」

ロープ使い「この方だ」

裁判長「よくやった、おぬしたち」ザッ

リーダー「な……!?」

リーダー(こいつはたしか……裁判長! なんで出向いてきてるんだ!?)

99: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:34:31.908 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「我が国の法では、国家反逆のような重罪人には裁判長自ら刑を執行することになっている」

裁判長「もっともこれは古い法で、形骸化していた掟だが……」

裁判長「今回は私も処刑に参加させてもらうことにした」

リーダー「ど、どうやって執行するってんだ?」

裁判長「裁判長の武器といえば、決まっていよう」

裁判長「これだ」ズンッ

リーダー「巨大木槌……!」

裁判長「では、刑を執行する」ブオオンッ

リーダー「うわ――」



グチャアッ!!!

102: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:37:55.820 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「……すごい一撃でした。鳥肌が立ちましたよ」

裁判長「うむ、久々に我が腕を振るうことができた」

帯電娘「さすが、あたしの電撃でもへっちゃらだっただけのことはあるね!」

ロープ使い「今でも傭兵として通用するんじゃありませんか?」

白衣女「裁判長様は未だに鍛錬なさっているのですね……」

裁判長「フッ、そう持ち上げるな」

裁判長「それでは今夜はこの五人で……パーッとやろうではないか」

帯電娘「さんせーっ!」バチバチッ





―終―

104: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:43:15.918 ID:TezMulSq0XMAS
最終話『処刑人たち』



― 中央牢獄前 ―

護衛兵A「全員、馬車に乗せたか?」

護衛兵B「ああ、これより護送を開始する」

護衛兵A「ったく、ついてねえな。囚人どもの護送任務だなんてよ」

護衛兵B「まあ、お偉いさんと違って、こいつら狙う奴なんていねえだろうし気楽なもんよ」

護衛兵A「そりゃそうだ!」アッハッハ

護衛兵B「んじゃあ、地方牢獄まで出発だ!」

105: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:45:45.477 ID:TezMulSq0XMAS
ガタゴトガタゴト…

ゴッ!

護衛兵A「うぐっ……」ドサッ…

護衛兵B「!? おい、どうした!? いきなり倒れちまって――」

ガツッ!

護衛兵B「ぐはっ……!」ドサッ…



…………

……

109: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:49:37.847 ID:TezMulSq0XMAS
― 処刑人の部屋 ―

剣士「聞いたか?」

帯電娘「聞いてなーい」バチバチッ

剣士「そりゃそうだろ。今から話すんだからよ」

帯電娘「キャハハー」

剣士「…………」イラッ

ロープ使い「何があったのだ?」

剣士「前に、終身刑になった馬車強盗の連中がいたろ? 主犯は俺が処刑したが……」

ロープ使い「ああ、覚えている」

剣士「奴らが地方牢獄に護送中、皆殺しにされたそうだ」

ロープ使い「なんだと……?」

白衣女「まあ……」

帯電娘「ふーん、罪人がどうなろうとどうでもいいや」

剣士「お前なぁ……これは司法に対する重大な挑戦だぞ」

110: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:52:13.977 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「その件について話がある」

剣士「裁判長!」

ロープ使い「話とは?」

裁判長「馬車強盗たちはすみやかに埋葬されたが、護衛兵たちを気絶させ、彼らを殺した犯人が判明した」

帯電娘「誰なの?」

裁判長「ある貴族の手によるもの、だ」

剣士「貴族……!?」

111: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:55:40.941 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「調べによると、この貴族は裏で武器の密売をやっていてな」

裁判長「馬車強盗や、先日の武装集団に武器を供与したのもこやつらしい」

裁判長「他にも、さまざまな事件について裏で糸を引いていたものと思われる」

裁判長「国内が不安定になればなるほど、武器の需要は増えるからな」

帯電娘「うわぁ、悪の元凶じゃん!」

裁判長「馬車強盗を殺したのは、おそらく口封じのためだろう」

裁判長「とはいえ、国としてもこの貴族を大っぴらに裁くことは難しい」

裁判長「ゆえにおぬしたちの出番となった。すでに『処刑許可状』も出ている」

裁判長「おぬしらの手で、この貴族を処刑してくれ」

剣士「はいっ!」

112: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:59:10.582 ID:TezMulSq0XMAS
― 貴族の屋敷 ―

貴族「どうやら……国がワシのやっていることに気づいたらしい」

貴族「ワシを逮捕したところで、金と権力ですぐ釈放されることは分かっているだろうし……」

貴族「おそらく、ワシを暗殺するため刺客を差し向けてくるはずだ」

貴族「こうなっては亡命するしかないが、亡命の手配が済むまでには時間がかかる」

貴族「頼むぞ、それまでワシを守り抜くのだ!」

私兵隊長「お任せ下さい」

私兵隊長「屋敷内はすでに私の部下を守備につかせており、万全の態勢となっております」

私兵隊長「万が一、刺客がここまでたどり着いたとしても、私が始末してみせましょう」

貴族「うむ、こういう時のために高い金を払ってきたのだからな!」

113: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:01:19.071 ID:TezMulSq0XMAS
ワァァァ…… ワァァァ……



貴族「なんだ?」

私兵隊長「どうやら、刺客が侵入したようですな」

貴族「もう送り込んできたのか! くっ、予想以上の早さだ!」

私兵隊長「ご安心を。刺客風情、私と部下がたちまち討ち取ってみせましょう」

114: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:04:17.265 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「せやっ!」

ザシュッ!

私兵A「ぐああっ……!」


帯電娘「抱き締めてあげるぅ~」ギュッ

私兵B「ぎゃあああああああああああ!!!」バチバチバチッ


ロープ使い「むんっ」グイッ

私兵C「ぐえっ……!」ガクッ


白衣女「この先の兵たちは眠らせておきました。お三方は奥へどうぞ」

117: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:07:41.585 ID:TezMulSq0XMAS
ギィィィ…

剣士「お前が貴族だな」

貴族「な……!?」

剣士「陛下の名のもとに、お前を処刑させてもらう」

貴族「もうここまで来たのか!? いくらなんでも早すぎる!」

私兵隊長「どうやら、それなりの手練れが送り込まれたようですな」

私兵隊長「しかし、私の相手ではありません」

私兵隊長「奴の返り血がかからぬよう、もっと後ろでご観戦下さい」

貴族「頼むぞ! 必ず討ち取るのだ!」

118: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:10:25.183 ID:TezMulSq0XMAS
私兵隊長「ゆくぞ!」ダッ

剣士(速い!)

ギィンッ!

私兵隊長「フハハハハハハ!」

ギィンッ! キィンッ!

剣士「かなりの使い手だな……。諦めた方がいいかもしれない」

私兵隊長「その通り! とっとと諦めて死ぬがいい!」

ガキィンッ!

剣士「ぐ……」ビリビリ…

私兵隊長「よし、もらったァ!」ビュオッ

119: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:13:10.012 ID:TezMulSq0XMAS
ザンッ!

ボトッ… ゴロン…



剣士「“斬首で仕留める”のは諦めようかと思ったが、なんとかなったな」

貴族「ひっ……」

貴族「ひいいいいいいいいいいっ!!!」

120: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:17:49.796 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「武器を無法者どもに売り渡し、国を不安定にし、私腹を肥やそうとした罪は重い」

剣士「『処刑許可状』のもとに、処刑する」

貴族「ま、待ってくれ……」

貴族「命だけは助けてくれぇぇぇ……」

剣士「お前が口封じに殺した馬車強盗どもも、きっと命乞いしたが、聞き入れられなかったんだろうな」

貴族「馬車強盗の殺害? ワシはそんなの知ら――」

ズバッ!

ボトッ… ゴロン…

121: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:21:12.906 ID:TezMulSq0XMAS
帯電娘「あっ、もう終わってる!」バチバチッ

ロープ使い「きっちり首を落としている……さすがだな」

剣士「……ああ。この任務はあくまで“処刑”だからな」

帯電娘「よーし、帰ろう!」

ロープ使い「裁判長殿もお喜びになることだろう」

剣士「…………」

白衣女「どうしました?」

剣士「いや、なんでもない……引き上げよう」

122: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:24:33.065 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「貴族の私兵は腕利き揃いと聞いていたが、よくやってくれた」

剣士「……はい」

帯電娘「あたしらにかかればこんなの楽勝!」バチバチッ

ロープ使い「装備品は豪華でしたが、使い手が伴ってなければ意味がありませんから」

裁判長「では、今日のところは解散してくれ」

帯電娘「はーいっ!」

ロープ使い「はい」

白衣女「はい」

剣士「…………」

123: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:26:46.974 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「なぁ、お前ら」

帯電娘「ん、なにー?」バチバチッ

ロープ使い「どうした?」

白衣女「ずいぶん顔色が悪いですけど……」

剣士「これから……ちょっと俺に付き合ってくれないか」

帯電娘「付き合うって、お酒? あたしは大歓迎!」

剣士「いや、そうじゃない……墓地だ」

125: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:29:24.215 ID:TezMulSq0XMAS
― 墓地 ―

帯電娘「ちょっとー、こんな辛気臭い場所になんの用があんのさ?」バチバチッ

剣士「あなたが墓地の管理人だな」

管理人「ええ、そうですが」

剣士「頼みがあるんだが……」

管理人「はい、もしあなた方が墓地にいらっしゃったら、何でも協力するよう言われております」

剣士「え……」

…………

……

126: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:32:26.657 ID:TezMulSq0XMAS
……

ロープ使い「これは……! この死体は……!」

白衣女「なんてこと……」

帯電娘「ウソだよ! こんなのウソだよ! あの人がこんなことするはずない!」バチバチッ

剣士「…………!」

剣士(やはり……俺の嫌な予感が当たっちまった!)

ロープ使い「……どうするのだ?」

剣士「俺は……俺は――」

……

128: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:36:33.043 ID:TezMulSq0XMAS
― 裁判所 ―

裁判長「すまぬ、少し遅れてしまった」

裁判長「剣士よ、こんなところに呼び出してなんの用だね?」

剣士「……話がありまして」

帯電娘「…………」バチバチッ

ロープ使い「…………」

白衣女「…………」

裁判長「おおっ、四人とも揃っているのか」

裁判長「さっそく話というのを聞こうじゃないか」

剣士「裁判長、地方牢獄に護送中の馬車強盗たちを殺したのは……あなたですね」

裁判長「…………!」

130: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:41:27.272 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「犯人であるはずの貴族は処刑間際こう言いました。“馬車強盗の殺害など知らない”と」

剣士「それに、貴族のそばにいた私兵のリーダー、あいつの腕では護衛兵たちを瞬時に気絶させ」

剣士「馬車強盗だけをスマートに殺害する、なんて真似は到底不可能です」

剣士「そして俺たちは、管理人の許可を得て、馬車強盗たちの死体を掘り起こしました」

剣士「他の人間なら分からないでしょうが、俺たち四人には、“犯人”がすぐ分かりました」

剣士「あれは巨大木槌の跡だと……あなたがやったのだと……」

裁判長「そうだ、彼らは私が殺した」

裁判長「私がやったことは、この国の法にのっとると間違いなく極刑であろう」

剣士「なぜです! 彼らはもう終身刑が確定していたのに! なぜ司法を司るあなたが……」

裁判長「私もしょせん人を裁く資格などなかったということだ」

裁判長「我が娘の死に関与していながら、我が国の法では奴らは終身刑にするしかなかった」

裁判長「牢獄の中とはいえ奴らが天寿をまっとうするのが、私にはどうしても許せなかった」

裁判長「主犯だけでなく、奴ら全員、皆殺しにせねば気が済まなかったのだ」

131: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:44:39.717 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「迷った末、このことは上に報告しました。すでに……『処刑許可状』も出ています」

裁判長「……いい手際だ。教えた通りだな」

剣士「しかし、俺たちはあなたを殺したくない!」

剣士「だから……逃げて下さい! あなたなら力ずくで国境だって突破できるはずだ!」

裁判長「……甘いな」

ブオンッ!

剣士「……くっ!?」

裁判長「処刑人は相手が身内や恩人だからといって見逃すような輩に務まるものではない!」

裁判長「私を見逃すというのなら、この場で四人とも殺してくれるわッ!」

134: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:48:13.119 ID:TezMulSq0XMAS
裁判長「いくぞっ!」ブオンッ

ドゴォンッ!

裁判長「ぬうんっ!」ブオッ

剣士「ぐっ!」ギィンッ

剣士「裁判長!」

帯電娘「やめてよぉ! あたし、あなたとだけは戦いたくない!」

ロープ使い「いくら使命といえど……」

白衣女「裁判長様……どうかおやめ下さい!」

裁判長「なんという甘い奴らよ。失望させてくれる」

裁判長「先に宣言しておこう。私はお前たちを全滅させたら、市民たちに無差別に襲いかかる!」

裁判長「この木槌で、何人でも何十人でも殺しまくってやる!」

裁判長「司法のトップが歴史に残る大量殺戮犯となるのもまた一興だろう!?」

135: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:51:37.605 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「やるしか……ないんですね!」

剣士「たああああっ!」

ザシッ!

裁判長「ぬう……」ヨロッ…

白衣女「……裁判長様!」プシュゥゥゥゥゥゥ…

裁判長「うっ、ゲホッ、ゲホッ!」

ロープ使い「はっ!」ヒュルンッ

裁判長「ぐっ!」ギュウッ…

ロープ使い「捕えたぞ! 感電させてさらに動きを止めるのだ!」

帯電娘「やだ……やだよぉ!」

裁判長「これしきの縄で……!」グググッ…

ロープ使い「縄をちぎられてしまう! 早くやれっ!」

136: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:54:42.116 ID:TezMulSq0XMAS
帯電娘「うあああああああああああっ!」バチバチバチッ

バチバチバチバチバチッ

裁判長「ぐおおおっ……!」プスプスプス…

裁判長「ぐ、ぬうう……」ドザッ…

剣士「裁判長……」チャキッ

裁判長「見事な、コンビネーションだ……」

裁判長「見事に、私にさえ容赦しなかった……」

裁判長「やはり……お前たちを選んだ、私の目に、狂いはなかった……」

137: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 01:58:09.560 ID:TezMulSq0XMAS
剣士「お世話になりました……裁判長」

裁判長「達者でな」


ザンッ!


ボトッ… ゴロン…



剣士「……終わった」

ロープ使い「裁判長殿……」

帯電娘「うっ、うっ、うっ……」バチバチッ

白衣女「……ハンカチを」

帯電娘「……ありがと。あ、ごめんなさい」

白衣女「いいのよ」

138: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 02:02:28.214 ID:TezMulSq0XMAS
ロープ使い「――剣士よ、気にするな」

剣士「!」

ロープ使い「裁判長殿はおそらく、馬車強盗に判決を下した時点で――いや」

ロープ使い「ご息女を亡くした時点で復讐を決意し、“自分に人を裁く資格はない”と悟られたのだろう」

ロープ使い「裁判長殿がもし本気で犯行を隠蔽しようとしたら……いくらでも方法はあったはず」

ロープ使い「しかし、あの方はあえて凶器に木槌を使い、さらには墓地の管理人にも」

ロープ使い「我々に協力するよう言い含めていた」

ロープ使い「あの方は……我々に裁いて欲しかったのだ……」

剣士「……ああ」

帯電娘「ひぐっ……ひぐっ……」バチバチッ

白衣女「…………」

…………

……

139: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 02:06:50.547 ID:TezMulSq0XMAS
司法の最大権力者である裁判長が、私怨から刑の確定した囚人を殺害――

この王国司法を揺るがす大事件は、世間を大いに賑わせた。


有識者からはさまざまな改革案が出され、中には処刑制度を見直すべきではという声もあった。


しかし、司法の分野に裁判長以上の人材が育っていなかったこともあり、

結局のところ、大半の改革案は現状維持のまま据え置かれることとなった。



むろん、四つの処刑法から一つを選ばせる、処刑人制度も――

142: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 02:09:44.796 ID:TezMulSq0XMAS
― 処刑人の部屋 ―

兵士A「本日は斬首です。剣士殿、準備をお願いします」

剣士「分かった。じゃあ行ってくる」

帯電娘「行ってらっしゃーい!」

ロープ使い「使命を果たしてくるがいい」

白衣女「…………」


後任の裁判長のもと、今日も四人は処刑を続けている――







―終―

143: VIPがお送りします 2018/12/25(火) 02:10:14.735 ID:TezMulSq0XMAS
以上で完結です
ありがとうございました

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