甘くてとろける百合バス

2019年03月31日
甘くてとろける百合バス

1: SS速報VIPがお送りします 2017/05/02(火) 23:32:50.09 ID:N42FZe1lO
学生専用バスなるものがある。
今、そのバスには、私を含め、7人のクラスメイトが乗っていた。

みんな女子だけど、間違いなく何か起こると思った。

私は彼らの事情について、詳しいから。

まず、後ろの席の二人。

どこに行くにもいつも一緒。



2: SS速報VIPがお送りします 2017/05/02(火) 23:42:10.48 ID:N42FZe1lO
家が隣同士らしい。いわゆる、幼なじみ。
昼ごはんやトイレはもちろん、将来の就職先まで同じ所にするみたい。
たまに二人で屋上に姿を消してる。
私は何をしてるかは知らない。
戻ってきたら、やたら血色が良くなってる。
プロレスでもしてるんだと思いたい。

今は、なんだか荒い息づかいが聞こえてくる。
後ろが気になるけど、振り返る勇気が出ない。

3: SS速報VIPがお送りします 2017/05/02(火) 23:55:45.98 ID:N42FZe1lO
後ろから、ダメだよ、とか、待って、とか聞こえるんで、たぶん、どっちかがっついてるんだと思う。
でもさ、ここ、バスだから。
前に私乗ってるんですけど。
もっと、音量下げれませんかね。

がたんと席が揺れた。
私はびっくりして、振り返ってしまった。
背の低いショートヘアの子のシャツが乱れて、ヘソが見えていた。
へそだよ。
白い肌にへそがぽつんとあって、吸引力があって、ずっと見ていたら、背の高いロングヘアが私のおでこにデコピンした。

痛いし、わざと見たんじゃないのにさ。
そもそも、車内でなにしとんじゃ、あんたらは。

10: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 08:20:55.35 ID:FcROvjTa0
女しかいないからって、何やってもいいってわけじゃない。
美人なロングヘアは、視線で射殺せそうな感じで睨んでいたので、泣く泣く席を移動した。
斜め前に座ったら、前の席にいた二人が驚くように振り返った。
私の後方を見て、すぐに事情を察して笑いかけてくれる。
この二人もこの二人でバカップルなんだけど、
あの二人よりは場をわきまえてる。

剣道部コンビ。
ポッキーを差し出してきたので、それをとろうとしたら、持ち上げられた。
口をパクパクと動かしている。え、口で受け取れ?
はあ。ポニーテールの方が意地悪く口元をにやつかせた。
茶髪天然パーマの方は、なにやってんだと言う顔。
おい、こら、ちょっと隣の天パー拗ねてますけど。
そのポッキー近づけないでよ。
ポニテ、気づけって。
私はポニテの腕を掴んで、照準を天パの口に変えて突っ込ませた。

ふぐうっ、と天パ。
睨まれた。
ポニテは私の行動が意味不明だったのが可笑しかったらしく、爆笑。
いやいや、この鈍感。
私でもわかったし。
天パは無言でもぐもぐとポッキーを咀嚼していた。
ちょっとほっぺた膨れてて可愛かった。

11: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 08:29:16.08 ID:FcROvjTa0
天パの口元にチョコがついてて、ポニテがそれを横目で確認したのがわかった。
二人はまた席に着く。
天パの悲鳴が小さく上がった。
あー、察し。
ごちそうさまです。
まあ、この二人はいつも汗だくになった後、部室についてるシャワールームで
もっとすごいことしてるって、私、聞いたことありますわ。
すごいことって、そりゃ、きっとすごいことなんでしょうね。
あー、お互いに洗いあったり?
シャワーをかけあったり? 
拭きあったり?
ほんと、なにしてるんでしょうね。


12: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 09:01:51.32 ID:FcROvjTa0
総じて、エロい。
女子高生はエロい。
エロくない女子高生はいない。
普通は男が寄ってきて普通は男女が付き合うのかもしれないけど。
出会いなんてどこにもないし。
むしろ、自分のことを分かってくれるなら、許してくれるなら、優しいなら、イケメンなら、美人なら、女でもいいってこと。
それでさ、エロかったら最高じゃんてこと。

ただ、それが必要のない人間もいる。
最善席のちびっ子コンビ。
身長が低すぎて、だいたい小学生に間違われている。
お互いに低身長で貧乳。
コンプレックスはないみたい。
でも、自分と同じような人間を発見して落ちついたって。
この二人は平和だ。
会話の内容は、老年の夫婦。
この二人は別に付き合ってるとかではない。
ただ、そばにいると落ち着く、安心すると言う理由からいつも一緒。
べったりではない。
たまに個人プレーもしている。
ただ、お互いに何か困ったことがあれば全力で助け合ってる。
クラスの誰よりも大人だと思う。
なんていうか、自立してるというか。
甘えるところはしっかり甘えるところとか。
世渡り上手。

13: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 09:18:08.16 ID:FcROvjTa0
チビちゃん二人は、見ているとかなり癒される。
クラスの美化委員コンビでもあるので、教室内をちょこちょこ歩き回ってる。
それが、また可愛い。
はべらせたい。
うへへ。

と、以上3組6名が、我がクラスが誇るバディ。
帰りのバスにいつも居合わせて、気まずい思いをしているのは、
私とバスの運転手だというのは言わずもがな。
バスの運転手も気を利かせてか、最近は女性アーティストのJPOPをかけ始めている。
場をこれ以上盛り上げる必要はないと思うけど。
このバスは、通称『百合バス』。
この3組が最後まで残るからそう呼ばれている。

そんな光景を目の前に、一人座る私の気持ち、お分かり頂けただろうか。

15: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 09:37:58.83 ID:FcROvjTa0
しばらくして、ロング・ショートヘアコンビが、バスを降りていった。
シャツのボタンの上が一つ取れていた。
激しすぎるでしょ。
最後にどうでもいい情報だけど、ショートヘアの子は、声がめちゃくちゃ可愛い。
特に一番可愛いのは、息を漏らしたとき。
体育のときに、体の上にのっかかる状況があって、
すっごい高い声で息漏らすからびっくりした。
何もやましいことしていないのに、昂ぶった。
にやついてたら、ロングに睨まれたけど。
悪いのは、可愛い声で鳴いたショートだと思う。
この後、きっとどっちかの家に行くんだろうね。
仲がよろしい事で。

16: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 09:52:08.35 ID:FcROvjTa0
次に、剣道部コンビの気だるそうな天パが降りていった。
あくびをしながら、口にはポッキーをくわえて。
天パがバスステップを降りる直前に、飛び跳ねるようにポニテが駆け寄った。
顔を寄せてキスしちゃうのかよおおと思ったら、くわえたポッキーを半分横取りする。
ポキンっと子気味よい音。
なんかのCMみたいだ、おい、イケメンかよ。
天パが顔を真っ赤にさせてバスを降りたのを、同乗者全員で眺めていた。
ポニテが満足そうに窓際で手を振っていた。
後ろの席にいた私は、バスの移動により、自然と窓越しに天パと目が合う。
目を丸くしていた。
私も投げキッスしておいた。
右手で払い落とされた。
受付拒否ですか、そうですか。
余韻をぶち壊してごめんなさいね。

17: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 09:58:32.41 ID:FcROvjTa0
ポニテも次のバス停で降りていった。
ポニテにも投げキッスをしてやった。
ポニテはちゃんと両手で返してくれた。
マジ、イケメン。
やけどするわー。

で、最後に残ったのはチビちゃんコンビと私。
チビちゃんコンビとは、同じバス停で降りる。
すぐに降りれるように、私も席の前に移動した。
見ると、二人は仲良く手を繋いでいた。
恥ずかしい。
自分の醜い心が浄化されていく感じの恥ずかしさ。
なんだろ、すごく神聖なものをみた時に、生まれてきてごめんなさいと思う時に似ている。
とりあえず、携帯を取り出して写メっておいた。







18: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 10:23:01.94 ID:FcROvjTa0
チビちゃん達は気づく気配もない。
運転手がカメラのシャッター音に気づいて、こちらを見ていた。
一緒に、二人で笑い合った。
ちなみに、運転手さんは妻子持ちの禿げた40歳。
顔の堀が濃い。
ヒライケンみたいな顔。

どいつもこいつも。
私にはないものを持っている。
チビちゃん二人の寝息とJPOPをBGMに、バスが行く。
我が家が見えてきた。
終点に着いた。
二人の肩をぽんぽんと叩いた。
ゆっくりと目を開けて、まぶたをこする。
おはよー。
と言うと、こんばんわー。
と返された。
可愛い。
もはや、何をしても可愛い。

二人を先に降ろす。
忘れ物がないか確認。よし。
並んで、運転手に3人で会釈をした。
運転手もおじぎをする。
バスを見送ることなく、私たちはそれぞれに別れ、家路に着いた。



おわる








甘くてとろける百合バス  私と――。

1: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:16:58.55 ID:bGKhngeS0
ほのぼの百合百合しいバスの最後尾に私は座っていた。
いつも通りいちゃいちゃする3組+私+運転手――あれ。
何か、毛色の違う人が。
誰や、あんたと思ったら――。
何と、小学生からの付き合いのヤンキーちゃんだ。
バスに乗って帰るなんて珍しい。
私は、肩までの金髪ヘッドをぽんぽんと叩く。
どうしたのかと聞くと、バイクが壊れてしまったとのこと。
あらあら。


2: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:29:00.31 ID:bGKhngeS0
ヤンキーちゃんはカワサキのよく知らないけど、大きなバイクに乗っている。
確か、先生には軽く注意されたらしい。
ただ、ヤンキーちゃんは、学校の中でも悪評高い上に、
素直に言うことを聞かないから先生達も手を焼いている。
そんなヤンキーちゃんがこんな、砂糖みたいな空間に座ってるのだから、驚き。
ヤンキーちゃん、久しぶり。
最近、どう?
ヤンキーちゃんは、まあまあ、と答えた。
まあまあって、良いほう? 悪いほう? と聞くと、
悪いほう、と低い声で言った。
それから、頭さわんな、と腕を払われた。
どいひー。
口を尖らせてそう言うと、へっと笑われた。
私、ヤンキーちゃんを笑わせるのは得意なの。

3: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:33:38.10 ID:bGKhngeS0
昔からね。
ヤンキーちゃんは、私のちょっかいをしだいに無視し始める。
どうも、他の何かに気をとられているみたい。
彼女の視線の先、ポニテと天パが座っている席。
え、あそこに座りたかったの?
と、耳元で聞くと、うっせえ! と怒られた。
怒らなくてもいいじゃんかね。
でも、これ以上ヤンキーちゃんを困らせるのもなあと思い、
私は席に大人しく腰掛けた。

4: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:42:45.97 ID:bGKhngeS0
私、昔からヤンキーちゃんを怒らせるのも得意なんだよね。
しかし、ヤンキーちゃんのこの様子。
この不機嫌オーラ。
恐らく、ポニテか天パのどちらかに因縁があるんじゃないかしら。
おいおい、どっちが私の親友のお尻に火をつけたんだ。
この女は、なかなかにしつこいよ。
小さい頃、ヤンキーちゃんの煮卵を、
残しているものだと思って勝手に食べた時は、一週間は引きずられたもの。
だって、この子が『大好きなものは後から食べる派』なんて可愛い派閥に所属しているなんて思いもよらなかったから。

5: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:46:13.74 ID:bGKhngeS0
それに、ヤンキーちゃんはこう見えて良家のお嬢様だし。
煮卵ごときで、文句言うなんて、当時は考えられなかった。
煮卵だよ、給食の。
笑っちゃうぜ。うん?
ヤンキーちゃんが、こっちを睨んでいる。
え、もしかして声に出てた?
煮卵の下り?
うひゃああ。
怒ったヤンキーちゃんに、頬をめっちゃつねられた。
とほほ。

6: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 13:50:59.70 ID:bGKhngeS0
私は、ヤンキーちゃんの家とはけっこう離れてる。ヤンキーちゃんは、ポニテと同じバス停で降りるはず。
ほら、ポニテちゃんが降りるよ。
ヤンキーちゃんが立ち上がった。
そして、私の腕を掴んだ。
来い。
って、命令されました。
待って、私、ここ、家ちゃうねん。
と、首を振ったら、知ってるわ、ボケと言われました。
どーゆーことー。
どーゆーことー。
私は目を白黒させて、チビちゃんズに、バイバイと送られて――止めてほしかった――、その停留所で降りた。

7: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:00:59.17 ID:bGKhngeS0
ポニテは、私たちを見てにっこり笑って、歩いていく。
ヤンキーちゃんは少し経ってから、相変わらず私の腕をがっちり掴み、なんとポニテの後をつけだした。
あのね、ヤンキーちゃん。
ヤンキーちゃん?
おーい。
ヤンキーちゃんは、何か意を決したような顔でしたね。
さすがの私も、ようやくそこで気づいた。
ヤンキーちゃんは、ポニテに――。
ただ、問題がひとつある。
ポニテはすでにお相手がいるのだ。

私は、このままヤンキーちゃんが玉砕するところ見るしかないのである。
見たくないのである。
誰だってそうだろう。
この腕を離して欲しい。
うわああ、いやだ、心が痛過ぎる。
やめて、ヤンキーちゃん、察して。
ヤンキーちゃんの腕を私は掴みなおした。
彼女が、強張った表情で、私を睨んだ。
私ってば、いつも誰かに睨まれてる気がする。
言え、言ってしまえ。
今回に限っては、心の声は漏れ出てくれない。
私は彼女の手のひらを強く掴み、だいじょうぶ、だいじょうぶ、なんて、
心にもないことを言ってしまったのだった。


8: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:05:09.66 ID:bGKhngeS0
ポニテが家に入る直前、ヤンキーちゃんが呼び止めた。
私はさすがに、家の塀の影に隠れた。
どうなるのか、どうもならないのか。
我が子を見るような心持ちになってきて、動悸と息切れが。
ポニテちゃんが、天真爛漫なものだから、ヤンキーちゃんは言いにくそう。
こうなったら、言ってしまえ! 
おら、やれ!
そこだ!
右ストレート!

9: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:14:04.89 ID:bGKhngeS0
ポニテ!
と、ヤンキーちゃんが叫ぶ。
なに!
と、ポニテが叫ぶ。

私は、自分の手が震えてきたので、目をつむって両手を握り締めた。
ヤンキーちゃんの声が続く。
ポニテは、『私』とはどういう関係なんだ!

――はい?

どうって!
と、ポニテが笑いながら、問い返す。
そして、ヤンキーちゃんの返事を待たずに、こう切り替えした。
『私』とは、友だちだよ! ヤンキーと同じね!

――ふむ?

10: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:21:23.42 ID:bGKhngeS0
それだけ聞きたかったんだ。
と、ヤンキーちゃん。
そっか。
と、ポニテ。
金髪をくしゃくしゃとひっかいて、ありがと、と照れくさそうにヤンキーちゃんは笑っていた。
ポニテは、どういたしまして、とはにかんで、親指を突きたてた。
私はというと、今の会話の意図するところを理解して、立ち上がった。
走り出せー、走り出せー。
というどっかのドラマの主題歌の歌詞が脳内に流れてきた。
その指示に従って、私は走り出していた。

後ろから、『私!』と呼ばれた。
聞こえぬ。
聞こえぬぞ。
百合は愛でるもんだ。
交わるもんじゃないもん!
ばかやろおおおお!

11: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:30:22.38 ID:bGKhngeS0
ロマンチックなことに、都合のいいことに、海辺が近いもんで。
私は全速前進で、海岸まで走った。
ヤンキーは、よっし、影も形もないわ!
はっはっは!
と、息を切らせて、砂浜に腰を下ろした。
まいてやったわ。
猛ダッシュして汗が噴出してきた。
全身がめちゃくちゃ暑い。
耳の中まで熱い。
これは、うん、走ったのとは関係ないさ。

『私』。
呼ばれて、私はとっさに逃げようとしたけれど、悲しいお約束か、前につんのめった。
砂に顔からいった。
なにやってんだ、バカ。
と、ヤンキーちゃんが、後ろから私を抱き起こしてくれる。

12: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:39:52.36 ID:bGKhngeS0
まだ、逃げようとする私の右手を、今度はヤンキーちゃんが掴んだ。
私の煮卵、食べただろ。
と、時効になった罪を持ち出し、私を押しとどめる。
あれは、ごめんて、ほんとに悪かったと思ってるから。
謝罪する口の中に砂が入っていて、じゃりっと音を立てた。
うえ、ぺっぺっ。
きったないなー。と、ヤンキーちゃんが呆れながら、私の顔の砂をはらう。
『私』って、どんくさいよな。
と、言われた。
まあ、はい。
私は、落ち着かない右手のことで頭がいっぱいだった。
生返事。

ヤンキーちゃん、家、帰ろうよ。
と、提案。いや、とヤンキーちゃん。
帰る気はないみたい。
んあああ、帰ろう、オウチ、カエロウ。


13: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:48:32.82 ID:bGKhngeS0
返事、聞かせてよ。
ヤンキーちゃんが、私を自分の正面に立たせる。
な、なんのことかな。
はっきり告げられたわけじゃないので、私は言ってやった。
だから、その、とヤンキーちゃんが口ごもる。
さっきの事だって、と半ギレ。
なんで、キレてるのっ。
ここに来て、へたれるんかい!
とは言えない。
私は、だって、言って欲しくない。

あのさ、とヤンキーちゃん。ぽつぽつと弱音? 愚痴? を吐く。
クラス分かれて、あんま話さなくなったの、きつかった。
ポニテとけっこう仲良いから、それも、見ててしんどかった。
私は、素行悪いから、一緒にいたくないと思われてもしょうがないんだけどさ、
『私』にだけは、嫌だった。他の奴らが離れていくのは平気なのに、お前だけは無理だった。


14: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 14:57:48.58 ID:bGKhngeS0
ヤンキーちゃんは、初めて見る、照れくさくて泥くさくて青くさい顔で、どうにもまいる――そんな顔で、
『私』から離れていくな、と抱きしめてきた。
私は、酸欠になりそうだったので、とにかく息をすることに集中した。
別に離れたつもりなんかないし、と私も返す。
これからも、一番の友達だよ、と弱弱しく抱きしめ返した。

それじゃ、嫌だ、とヤンキーちゃん。
お前の中の一番にして欲しい、と耳元で力強く放ってきた。
私はもう一度、酸素を取り込むことに集中した。
今、吐いてるのは主に二酸化炭素です。はい。
ヤンキーちゃんの言葉のほとんどは、二酸化炭素で構成されているのです。はい。

15: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 15:07:24.55 ID:bGKhngeS0
だめだ、頭が混乱してきた。
落ち着いて、ヤンバルクイナの真似をしよう。
ウジュジュジュ。
え、違う、なんか、違う。
アホな事に没頭している間に、ヤンキーちゃんはさらに体を――食い込ませてきた。
その表現が正しいかわからないけど。

とにかく、思っていることをちゃんと伝えないと。
ねえ、ヤンキーちゃん、私、すぐには分からない。
私は、ヤンキーちゃんの体を引き離す。
そういうのは、かやの外だったから。
だから、その、しばらくは一緒に帰ろう、そしたら分かるかもしれないから。
いい?

ヤンキーちゃんは小さく頷いてくれた。
あのバスの百合度がまた上がるみたいです。


おわる

20: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 15:48:56.99 ID:bGKhngeS0
甘くてとろける百合 バトロワ的な――。


その日、バスの運転手が別の人になっていた。
聞くと、風邪でお休みですよ、と言われた。
そっか、あの人も人間だもんね。
私は、納得した。
運転手が、笑いながら注射器を取り出した。
疑問が浮かぶ前に、その細長い針は私の首筋にぶっさされた。

21: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 15:55:52.23 ID:bGKhngeS0
死んだのかと思った。
脳みそが沸騰して、弾けとんだくらいの衝撃はあった。
電子レンジでチンされたかと。
ヤンキーちゃんの告白もまともに返事してないのに、と後悔しつつ私は目を覚ました。

私は、誰もいないバスの中にいた。
窓の外から見える景色は、見たこともない。
白い砂浜、南国の木々。
ここは、どこ?
なんだ、夢か。
私は、もう一度席に寝転がった。
コンコン、と窓ガラスに何か当たる音。
だれ?
起き上がると、外に、ヤンキーちゃんが立っていた。

22: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:00:44.56 ID:bGKhngeS0
出ろ、と言っている。
なんか、外は暑そうだったので、私は首振った。
ヤンキーちゃんは、いらついた顔で、バスに乗り込んで、
右ポケットからナイフを取り出した。
刃先を、こちらに向ける。
いやああ! 犯される!
と、絶叫すると、するかバカ! と柄の方を向けて私の手に握らせた。
え、なんで? と、私。
お前、説明、聞いてなかったのか?
と、ヤンキーちゃん。

なんの?

23: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:08:44.30 ID:bGKhngeS0
ヤンキーちゃんから、短いような長いような説明を受けた。
簡単に言うと、二人組みの内一人に危険なウイルスを注入したので、
2時間以内に、どこかの組が優勝がしないと全員死ぬと言う、たまげた内容だった。
どうやって、優勝を決めるのかと言うと、相手のパートナーを絶命させなければならないらしい。

ヤンキーちゃん、言っていいことと悪いことがあるよ。
と、眉根をひそめた。
冗談でも、そういうことはだめだと思う。
私は、ヤンキーちゃんにナイフを返却した。
その、瞬間――、バスの前方が爆発した。
振動と爆風で、後方にいた私たちは床に体を打ちつけて倒れこんだ。

24: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:14:38.08 ID:bGKhngeS0
もうもうと立ち込める煙。
視界が全く見えない。
音も耳にふたをされたようににぶい。
ヤンキーちゃんが、私を庇うように覆いかぶさっていた。
ぐったりとしている。
ヤ、ヤンキーちゃん?!
嘘でしょ。
痛みを感じた。見ると擦りむいた腕から血が出ていた。
それよりも、ヤンキーちゃんだ。
意識がない。
必死に呼ぶ。
小さく返事をしてくれた。
私は、とにかくここを離れないといけないと感じ、ヤンキーちゃんを肩に担いだ。
ヤンキーちゃんも、少しだけ自分の力で動いてくれた。

25: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:21:47.29 ID:bGKhngeS0
痛くて、熱くて、これが夢じゃないなら、なんだ。
ここは、地獄か。
燃え上がるバスから離れる。
しばらくすると、バスはガソリンに引火して轟音を放ってバラバラになった。
私は、バカみたいに絶叫した。腰から砕けて座り込む。
恐怖が今さらに涙腺を刺激する。
ヤンキーちゃん、起きて。
一人にしないで。
また、気を失ったヤンキーちゃんを揺り動かす。
砂浜から動けずにいると、後頭部に冷たくて硬いものをあてがわれた。
だ、誰。

私ちゃん。
これは――ロングの声。

26: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:29:01.16 ID:bGKhngeS0
バイバイ。
別れの挨拶。
え、え、死ぬ?
瞬きもしない内に、伏せていたヤンキーちゃんが飛び起きた。
同時に起こったそれらの出来事に、私はついていけず、体が固まる。
後方で、悲鳴。
振り返る。
ロングの腕にナイフが刺さっている。
丹精な顔が、鬼のように歪んでいた。
恨みのこもった目。

あの子のために、消えてよ。
あんたが一番とろくさいんだから。
消えたって、誰も困らないわよ。
と、ロングが腕を押さえながら、銃口をこちらに向けた。
ヤンキーちゃんが、砂を引きずりながら、私の前に立った。
やめて、二人とも。やめて。
声に出ない。
心の声は言葉にならない。

27: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:35:05.72 ID:bGKhngeS0
私は、砂を握り締めて、とっさにロングの顔面めがけて投げつけた。
顔を抑えて、ロングが声を上げる。
苦しそうに、ひざをついた。
拳銃を取り落とす。
私の足元に落ちたそれを、恐る恐る拾いあげた。

殺しなさいよ!
頭を獣のようにふりしだく、ロング。
ヤンキーちゃんが、私を制す。
腕のナイフを引き抜いた。
血が噴水のように噴出した。
ヤンキーちゃんと、私の顔に飛び散った。
鉄の匂い。
誰が、こんなことを。
どうして、こんなことに。
ロングちゃんは、それから、ショートの名前を呼んだ。
何度も何度も呼んだ。

28: SS速報VIPがお送りします 2017/05/03(水) 16:45:50.14 ID:bGKhngeS0
ショート、もしかして近くに、周りを見回す。
いない。
私がロングから目を離した一瞬。
その一瞬の内に、ヤンキーちゃんのナイフは、ナイフは――。


残り、1時間。
私がもう一度目を覚ましたとき、ヤンキーちゃんがそう告げた。
私は、また気を失ったんだ。
目を強くつむる。
ロングの首に真横から突き刺さったナイフが、瞼の裏に焼きついていた。
ヤンキーちゃん。
私は、ヤンキーちゃんに言った。
なんで、刺したの。
ねえ、なんで、刺した?!

ヤンキーちゃんは、もう一度、1時間しかない! と叫んで、私を抱きしめた。
お前だけは絶対死なせない。絶対に、だ。
お前の未来だけは、私が守る。

この悪夢の中、ヤンキーちゃんの言っていることは狂言にしか聞こえなかった。
ヤンキーちゃんのカサカサの唇が私のと重なった。
血に染まったお互いの服。
あまりにも気持ち悪くて、私は涙を流して、ヤンキーちゃんのキスを受け入れた。


34: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 09:58:12.06 ID:exGsfEsoO
その時の私は、どうしてキスを受け入れたのか分からなかった。経験もなく、求められるまま。もしかしたら、一人では生きていけないから、なんて、身勝手な考え方からだったのかも。

そのキスは、嬉しくもなかった。
気持ち良くもなかった。
そんな些細なことを気にしちゃってる自分は、まだ、この状況で、彼女と歩む未来に思う所があったのかもしれなかった。
でも、ヤンキーちゃんは私に一度しかキスをしなかった。

35: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 19:34:41.24 ID:exGsfEsoO
すぐ近くで物音がした。
葉っぱが重なる音。
私たちはバスから離れて、岩壁に囲まれた場所にいた。
ヤンキーちゃんは、私から離れて立ち上がる。
ナイフについていた血を自分の服の裾でぬぐいとった。刃先を翻して、待ってろ、と言い残し駆け出していく。
いや、やめて!
私は言ったけど、ヤンキーちゃんの耳には届かなかった。

36: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 20:03:27.68 ID:exGsfEsoO
しばらく動けなかった。
でも、小さい悲鳴が聞こえたのだ。
高くて可愛らしい声。誰なのかすぐにわかった。
恐怖に彩られた断末魔。
足がすくんだけれど、私は立ち上がった。
ヤンキーちゃんは、

37: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 20:28:59.33 ID:exGsfEsoO
ショートを殺したんだと思っていた。
でも、今の声は間違いなくショート。
私は極力音がでないように、声がした方に向かった。
人影が見えた。
一人。
ポニテだ。
鎌を右手にかまえている。
泣いている。
顔には血が飛び散っていた。
しゃがみこんで、繁みの隙間から確認した。
誰か二人、倒れている。
ヤンキーちゃんと、折り重なるようにショートがぐったりしていた。


38: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 20:59:56.55 ID:exGsfEsoO
私は、ヤンキーちゃんとショートの名前を呼んだ。
茂みから飛び出す。ポニテがびくりとして、後ずさった。
鎌はその手に握られたままだったけど、私は構わずに二人の体を揺さぶった。
手に生暖かい液体の感触。
ショートの腹部当たりから、真っ赤な血が出ていた。
呼んでも呼んでも、反応がない。

ポニテを振り返る。
彼女が口を開く。
ヤンキーちゃんが、ナイフを掲げてきたので殺されると思った。天パも、ロングに殺された。私は、死にたくなかった。ロングに恨みを晴らすまでは。

39: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 21:10:06.55 ID:exGsfEsoO
私は、ロングはもう死んだことを告げた。
ポニテちゃんは、笑った。
笑って、冗談? と聞いた。
笑って、自分の首に鎌の刃を当てた。
やめて、何やってるの?!
ヤンキーちゃんはさ、とポニテが言った。
ショートのことを殺せなかったんだよ。
ショートが、言ってたよ。
ヤンキーちゃんが、見逃してくれたって。
でもね、私はできなかった。
ショートは、ヤンキーちゃんに助けを求めてさ迷ってた。私は、ロングが許せなかったし、なにもしてくれなかったショートも許せなかった。
あまちょろいよね、ヤンキーちゃんは。

40: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 21:39:24.77 ID:exGsfEsoO
ヤンキーちゃんは、『私』を守らないといけなかったんだよ。それを、正義の味方にでもなったつもりか知らないけど、ショートを生かして、結局は私に殺されるんだから、ほんと、へたれだよね。
最後は、ショートに庇われてさ。

ポニテの笑い声、とまらない。
首に鎌の刃をつけたまま。
笑いながら喋る。
ポニテ、ねえ、もう、死ぬ必要なんてないじゃない。
チビちゃんたちを探して、みんなで生き残る方法を考えよう?



41: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 22:20:16.13 ID:exGsfEsoO
チビちゃんたちは、そう言えば、どうしたの?
自分も狂えるなら狂いたかったし、冷静じゃなかったけど、少しでもポニテの気を逸らしたくて、話しかける。
ポニテは、笑うのをやめて、言った。
あの二人は、最初に死んだよ。
賢いからさ、こうなることを分かってたのかもね。
二人で崖から飛び降りたよ。
仲良く手を繋いでいたね。
私と天パが崖下に行った時には、頭が潰れていた。
その時、私は判断しなくちゃいけなかった。
敵は誰か、を。
ポニテが唇を噛み締めた。

私は、みんなが死んだことをまだ信じられずにいた。分かってはいるけど、本当は夢なんじゃないかと。そういうこと、前にもあったから。
けど、夢でも、もう、ポニテが死ぬ理由はない。
パートナーがいなくなることが、この悪夢を終わらせる唯一の方法だからだ。

42: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 22:29:14.68 ID:exGsfEsoO
ポニテが話しに集中しているのを見計らい、私は彼女に飛びかかった。力一杯、鎌を持っている方の手を叩いた。ポニテは叫んで、無防備な状態を一瞬つくる。
私は押し倒した。
砂ぼこりが舞う。
ポニテ、もう、死ななくていいんだよ。
遠くから、ヘリの音が聞こえた。
ほら、聞いて。
終わったんだよ。
タイムリミットの2時間が経過したんだ。
私たちは、死んじゃダメだよ。
正しいことかどうか分からない。
私は何もできなかったから、少しでも償いたかったにちがいない。




43: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 22:41:29.53 ID:exGsfEsoO
ポニテ?
ねえ、ポニテってば。
彼女は返事をしなかった。
口から泡をどんどん出して、胸を押さえつけて、苦しみを口にも出すことなく、すぐに生き絶えた。
え。
何で。
タイムリミット。
タイムリミットでしょ。
何の?
ゲームの?
いや、私たちに注入されたウイルスの、だ。
力の抜けたポニテから、ゆっくりと離れた。
ヘリが近づいていた。バリバリといううるさい羽音。風が体を揺さぶった。
後ろから、誰かに抱き抱えられた。
私は何の抵抗もできず、いや、その時には、もう、何も考えることができなかったのだ。

足が地面から離れていく。
三人の亡骸から遠ざかっていく。
どんどん、小さくなっていく。
何もかも曖昧な色に染まり、私の世界はホワイトアウトした。




おわる


44: SS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 22:44:18.36 ID:exGsfEsoO
辛い……んですが

55: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 10:32:30.02 ID:oVaZ8HimO
甘くてとろける百合バス チビちゃんズとーー。


目を開けると、爆発で吹き飛んだはずのバスの天井があった。ひゃあああああ!
うわあああ!
ああああーー!? むぐぉ?!
叫んでいたら、口を塞がれた。
うるさいですよ。
チビちゃんズの、主にツッコミ担当がもみじみたいな手で私の顔面を覆っていた。
いき、いき、いぎでる!
ぶわあ、と涙が出てきた。
頬を擦り寄せる。
何、勝手に殺してるんです?
と、私の液体まみれの顔を遠ざける。

ツッコミちゃんの向こう側から、
どうしたの? 大丈夫、『私』ちゃん? 花粉症?
ティッシュを懐から取りだして、1枚をそっと差しのべる。天然ボケ気味のチビちゃん。

56: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 10:44:15.89 ID:oVaZ8HimO
鼻をかんで、ちょっと落ち着いてから、私は運転手さんも確認した。良かった。いつもの人だ。
ほっと一息つく。チビちゃんズが不思議そうに見ていたので、かくかくしかじかとさっきまでの夢の内容を伝えた。

ツッコミちゃんに、マンガの読みすぎですね、と流し目で一蹴された。天然ちゃんは、怖かったねえ、よしよし、と私の頭を撫でてくれた。ありがとう、ありがとう、天然ちゃん。
ツッコミちゃんは、そんな天然ちゃんの頭を撫でる。
『私』に触りすぎると、アホな妄想癖が移ってしまいますよ。私が浄化しておきますね。
と、述べて、天然ちゃんの体を掴んで元の席へ。
どいひ。

57: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 10:58:04.72 ID:oVaZ8HimO
でも、本当に怖かった。
あれは、やばい。辛すぎる。
ねえ、仮にさ、もしそんな状況になったら二人ならどうするの? あ、た、例えばね、例えば!

ツッコミちゃんと、天然ちゃんがキョトンと顔を見合せる。二人、口を揃えて、まずは、トロそうな『私』ちゃんから狩る、と笑顔で言われた。
ひゃっほおお?! あわわわ、ごめんなさいごめんなさい。私、何かしでかしたかな!?

私の反応を見て、声をあげて可愛らしく笑う二人。
からかわれていると分かっていても、怖いよう。
天然ちゃんが、ごめんごめん、思った通りの反応ありがとう、とツボに入ったのか、ツッコミちゃんの胴回りにしがみついて笑っていた。


58: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 11:15:21.23 ID:oVaZ8HimO
天然ちゃんが、『私』ちゃんの顔が可笑しすぎる……、と失礼極まりないことをぷるぷるしながら呟く。ツッコミちゃんは、そんな彼女の背中を撫でて、いざという時には、天然ちゃんと相談します、とマトモな回答を寄越してくれた。

相談して、まず『私』ちゃんを仲間にします。『私』ちゃんは裏切らないでしょうから。なにせ、私たちのことが大好きなロリコンですし。

ギクッ。なんで知ってるのかな。
や、君たち同い年だけどね。

それから、と今度は天然ちゃん。
『私』ちゃんが加わると、必然的にヤンキーちゃんもついてくるよね? え、なんで? 私は聞いた。天然ちゃんが、フフっと笑う。分かってる癖にって言われてしまった。天然ちゃん、なんで、知ってるのかな?!

後ろの方の席から、呼んだ? と声がした。
よ、呼んでない! と返しておいた。しゅんと声のトーンが低くなって、そ、そうかよ、と聞こえた。


59: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 11:38:53.25 ID:oVaZ8HimO
チビちゃんズがにまにましている。
なんでもないから、まだ、なんにもないから!

天然ちゃんは、にやつきながら、ヤンキーちゃんはけっこう情に熱そうだから、きっと私たちのことも守ってくれる。それから、次に、ショートちゃんとコンタクトをとるの。ショートちゃんは、強いものに流されちゃうだろうから、押し気味なヤンキーちゃんとは、相性が良さそうだね、ヤンキーちゃんには、説得役に回ってもらって、上手くいけば、ロングちゃんとも和解できるかな。

にっこり笑う天然ちゃん。
ツッコミちゃんの表情がぎこちない。
そんな、天然ちゃんも、嫌いではありません、と小さく付け加えていた。



60: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 11:49:16.08 ID:oVaZ8HimO
天然ちゃん、恐るべし。

じゃあ、その同盟計画の途中で、ツッコミちゃんが死んじゃったとしたらどうする? と私は聞いた。ツッコミちゃんが、物騒な話ですね、とツッコミが入る。

天然ちゃんは、しばし考える素振りを見せた。
笑っていた顔が、急に涙目に。
それはね、あのね、考えたら泣いちゃうから、考えなくていい? と、両手で口元を押さえた。
わあ! ごめんね! 例えばでも言っちゃダメなことあるよねえええ?! 私はわたわたしつつフォローする。

ツッコミちゃんも、大丈夫です大丈夫です! あなたをおいていったりしません! とすかさず抱き締めてなでなでしていた。 天然ちゃんに悪い気がしてきて、私たちはその夢の話をそこで打ち切った。

ごめんね、天然ちゃん。
ツッコミちゃんと末永くお幸せに。



おわる

61: SS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 11:59:29.75 ID:oVaZ8HimO
なんか、また辛い……

68: SS速報VIPがお送りします 2017/05/06(土) 00:45:48.28 ID:J9CX1/KT0
甘くてとろける百合バス ポニテと天パとーー。

昨日の悪夢のせいか、今日はポニテに罪悪感しか沸かない。ポニテと天パの席の後ろで、私はもやもやしていた。ポニテがいつも通り、天パとお菓子の食べさせあいをしているのを見て、ほっと一息。

時に、天パはなかなかの人見知りで、ポニテ以外とはあまり話したりはしない。クラスでも天パが自分から話しかけるのはまれだ。
私は天パと仲が良い方なのだけど、いつの間にか、ポニテと天パが一緒に過ごすようになっていてびっくりした。ポニテはいったい、天パをどうやって落としたのだろうか。






70: SS速報VIPがお送りします 2017/05/06(土) 01:05:14.29 ID:J9CX1/KT0
ねえ、ポニテってどうやって天パを落としたの?
席の隙間から聞いた。
ポニテがニヤニヤしながら振り返る。

もしかして、自分の参考にしたい感じ?
と、ポニテが言った。
なんのことかと、一瞬聞き返しそうになったけど、ヤンキーちゃんのことを言ってるんだと分かって、ポニテの口をふさいだ。

天パが睨む。
睨むな、睨むな。
ポニテが、天パの表情を見てけたけた笑う。
あのね、とポニテ。落としたんじゃなくて、落とされたの。私が。自慢げに話す。

え、天パが? 私は聞き返した。
当の天パは何の話しをしているのか分かっていないようで、特に会話に入ろうともせず、私達とは若干距離を取り始める。こういうところが、人見知りっぽいというか、引っ込み思案というか、めんどくさいだけかも知れないけど。


71: SS速報VIPがお送りします 2017/05/06(土) 01:17:58.78 ID:J9CX1/KT0
天パは鞄からイヤホンを取りだし、耳につけた。
嫉妬はしても、会話の邪魔はしないらしい。
そんな天パをポニテが横目で見つめて、苦笑。

私が天パと最初に話しをしたのは、クラスじゃなくて、商店街地下の駐輪場。
ポニテが、人差し指を窓の外に向ける。
ちょうど、あの辺かな。
学校帰り、キーボードの音が聞こえてきて、すぐに可愛らしい歌が始まったの。
なになに? って思って行ってみたら、天パがね、隅っこの方で小さくなって歌ってたんだよ。
何人にも囲まれてて、最初、誰か、分からなかった。

天パって路上ライブしてたんだ。
私は、今日一驚いた。

76: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 16:12:51.53 ID:gk+dbIKO0
天パの歌ってどんなん?
ポニテに聞いてみると、首をひねられる。

一言で言うと、こう、養ってあげなきゃ! って思った。と、ポニテは言った。
か細くて、陰キャラで、あ、リズム感は良い!
声はもっと腹から出せよ! って思った。
キーボードの音に負けてんじゃん! みたいな。
歌は、自作の一曲だけ。
でもね、それの、歌詞がいいんだよ~。
最後の一節に、

『ボクが歌い終える頃、キミは大人になってしまう。子どものボクを置いていく。男になって女になって。それでもいいから、また、明日』

ってあってね、きゅーんと来たんだよー。
語りつつ、ポニテが天パの天パをモジャモジャした。
天パは嫌がって、手を払い除けている。
それから、人になついていないネコみたいに、着ていたパーカーのフードを被った。



77: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 17:06:32.47 ID:gk+dbIKO0
天パが歌い終えても、誰も拍手しないんだよ。
不思議に思って、拍手してみたら、天パに睨まれてさ。
拍手されるような歌じゃないって。
えー、ってなった。
良かったよ、私、好き。
とりあえず、簡単に感想を言ったら、ありがとうって小さい声で返してくれたね。
表情がよく分からないから、嬉しかったのかは、今でも謎。今も、顔だけじゃ分からないんだけどね!
はっはっは!

フードを被っていた天パは、その笑い声がうるさかったらしく、ポニテの唇を人差し指と親指で挟んだ。
なにすんだこら!
とポニテがやり返す。

78: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 17:38:18.07 ID:gk+dbIKO0
何だかんだ、仲が良いんだよね。
私はちょっとだけ羨ましくなった。
イヤホンに二人で絡まり合う。
天パの耳からイヤホンが抜けた。

そう言えば、『また、明日』の歌詞通り、ポニテは天パに会いに行ったの? あー、えっとね、と息の荒いポニテ。じゃれ合うポニテは、嫌がる天パに力づくで抱きついて動きを封じていた。
ポニテは天パの頭の上にあごをのせて、勝ち誇るように鼻で笑う。
もちろん。で、その日に『好き、付き合って』って言ったんじゃよ。

すごっ。

そしたら、天パなんて言ったと思う?

うーん?

私は聞かれたけど、思い付かなかったので答えを要求した。天パは、漸く、自分達の思出話をしていることに気がついたらしく、威嚇している。怖いよう。怖いよう。


なんとね、

『冗談は顔だけにして』

って言うんだよ!? どう思う?!
傷付いたね! 深く刺さったね!
思い出す度に、私は人生をやり直したくなるね。

ポニテが大きなため息を吐いた。
天パは、ポニテのあごの下で、『もう、忘れた』と呟いていた。



おわる

85: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 23:13:21.41 ID:uwSc9Rze0
馴れ初め続きでいきます

86: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 23:33:26.39 ID:uwSc9Rze0
甘くてとろける百合バス ポニテと天パと――。


天パ、酷い!
ポニテが暴れる。
と、ポニテがはたと動きを止めた。
あ、天パ、バス停過ぎた。
ポニテが言った。
天パはがたがたっ、と立ち上がった。
無言で慌てるも、時すでに遅し。
バス停が点になっていく。

87: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 23:41:08.10 ID:uwSc9Rze0
天パは、最悪、とポニテをにらむ。
ポニテは、まあまあ、今日はうちに泊まりなさいな、となだめていた。

じゃあ、ポニテが降りる所まで、続きの話し聞かせてよ。
私は、天パも何かないかと話を振った。
天パは猫背気味に、席に着く。
で、あからさまに嫌そうに、うえーっと言った。
ポニテも興味津々で、天パの話しも聞きたいなあ、と気持ち悪い猫なで声を出した。
天パは私と、ポニテから注がれる視線に負けて、がくりと項垂れた。

88: SS速報VIPがお送りします 2017/05/07(日) 23:55:14.63 ID:uwSc9Rze0
続きねぇ、と天パ。
あご肘で、ポツリポツリと話し始めた。


あー、歌を聞いてくれてた時、ふざけた顔で聞いてたから、告白も素で冗談だと思った。
ふざけた顔っていうのは、感動した顔だったらしいけど。
知るわけないし。
だから、単純に変な奴だと思った。
女子高生より、リーマンの方が聞く人多かったし。
リーマンはたぶん、女子高生目当てだった。
まれに、音楽してそうな人間が来るけど、一曲聞いたら去ってくし。
真面目に聞いてる奴なんていないと思ってた。
だから、初対面のポニテがからかってるとしか思えなかった。


確かに、初対面でいきなり同性から告白されたら、引いてしまうだろうなあ、と私も思った。

89: SS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 00:05:53.68 ID:MiLir1ge0
とりあえず、警察呼ぼうかとも思った。

え、酷い!
ポニテが叫ぶ。
うっさい。
と、天パ。

時間も時間だったし、付きまとわれてもめんどいし、いったん切り上げた。
で、1週間位やらずに、ついでに場所も変えた。
そしたら、そこにいた。

ストーカーじゃん。
と、私はツッコんだ。
違うよ! クラスの子に聞いたの!
けっこう、知ってる人いたからね?
言い訳気味のポニテ。天パは、それでもこっちは人見知りの陰気人間だったから、と言った。
恐かったし、何より、元気で明るい奴が怖かった。

そっか。大変だったね。私は頷く。
そうだよ。クラスメイトの『私』とかなら、まだ面識と免疫があったけど。ポニテって誰? ってなった。
その上、剣道部だって知って、ますます、無理になった。
住んでる世界が違う。近寄るなって思った。

天パ、お前さん、だいぶ拗らせていたんだね。私は言った。
うるさいよ、と天パは鼻息を漏らした。
 

90: SS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 00:28:33.41 ID:MiLir1ge0
ポニテは、私が本気で嫌がっているのが分かって、ちょっとだけ距離を置くようになった。
多少は、話が分かる奴なんだって、そこでほんの少し見直した。

へへん。
ポニテが鼻をこする。
全然褒めてない。
天パは冷静に述べ、言葉を続けた。

歌う場所を商店街の裏路地に変えた。
けっこう暗くて、でも、危機感みたいなのがその時はからきしで、
歌えればどこでもいいやって。
で、場所が悪かったのか、ある日初めて、警官に声かけられた。
なんか、乱暴そうな奴でさ、周囲で聞いてた人もヤジとか飛ばしてて。
今思うと、私も危ない事してたんだけど。
やめてって、叫んだ時に、でも、誰も助けてはくれなかった。
助けてくれてもいいじゃん。
そんなに警官が怖いのか、って思った。

そいつに引きずられながら、未成年の保護条例がなんたらかんたらって言われて、親のこととか聞かれたけど、
単身赴任でいなかったから、いないって答えたら、ますます怒って、嘘つけって言われた。
別に悪気があってこのおっさんも怒ってるわけじゃくて、仕事でしょうがないし、
私は子どもだから、さらにしょうがないしって諦めてパトカーに乗ろうとしたら、

と、天パは急に笑い出す。
ポニテがね、どっからやってきたのか、竹刀で警官の頭を思いっきり叩いたんだ。


91: SS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 00:45:34.06 ID:MiLir1ge0
うわ、青春臭い。ポニテが呟く。
やったのは、あんただけどね。天パが言った。
私は単純だったので、若干ときめいてしまった。

もちろん、警官には怒られた。
ポニテと一緒にパトカーで連行。
ああ、もちろん、ポニテの家にね。
私の家には両親いないって言っておいたし。
車の中でさ、ポニテが私に渡してきたものがあって、何だと思う?

私は聞かれた。
ポニテの問いにも答えられなかったけど、これも全く分からない。
なに? と聞いた。

おにぎり。
おにぎり作ってきたって、歌ったらお腹空くかなって、言ってさ私に渡してきたの。
天パは思い出し過ぎたのか、また笑い始めた。

え、いいじゃん、おにぎり。
剣道した後は美味よ?
ポニテ、そういう事じゃなくてね。
私は、つられて笑ってしまう。

で、警官もそれ聞いて呆れてて。
ポニテの家に行ったら、ポニテの両親も呆れてて。
私も呆れて。なんだ、こいつって。

92: SS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 01:20:01.49 ID:MiLir1ge0
その日は、いったんそのパトカーで家に帰ったよ。
ポニテが泊まればってうるさかったけど。
泊まるとか無理だし。
人のそばで寝るとか、その時は耐えられなかったから。

今は、一緒に寝れる?
私は聞いた。
まあ、一応。
歯切れ悪く、天パ。
ポニテがニコニコしてる。
あんた、頑張ったね。

それからも、ポニテは私の視界に入らない様にしてた。
でも、いつの間にか、私が探してた。
どこで聞いてるんだろうとか、学校の廊下とか、校庭とか。
自分でも変だなって。誰かを探すことなんて、今までしたことなかったから、自分でもなんでだろうって思った。

そっかー、とポニテ。
天パは、ポニテの気持ち悪い視線が気になったんだろう。フードを被り直す。
で、よく分からない内に、剣道部の練習を見に行ってた。
行ったら、すぐにバレた。
で、近寄って来て、今度は『剣道しようぜ』って言われた。
もう、訳分からないし、でも、その時には――。
こほん。
うん、まあそんな感じ。
そんな感じで、私も剣道部に入ったんだよ。
夜も自分で身を守れるしね。

私は、人の恋バナを生まれて初めて生で聞いた。
砂糖、吐きそう。

『私』も、がんばれ。
や、だから、はい、あの。
ポニテは住む世界が全然違うから、未だに先が読めなくて不安になる。
たぶん、不安が消えることってないと思う。進んだら戻れないしね。
天パは微笑んだ。ああ、もしかしたら、歌ってる時にもこんな表情を見せたんじゃないかな。
私は、『養いたい』と言ったポニテの気持ちを何となく理解した。

でもね、同じ気持ちになれて良かったなって思った。天パはとても素直にそう言った。
ポニテも何か言いたそうにしていたけど、なんとか遠慮して、余韻を潰さないように口を挟まなかったみたい。

そのうちに、バスは停留所に着いた。
揺れながら、二人が立ち上がる。
あ、じゃあね! とポニテ。
天パは、しゃべり過ぎたって顔で、じゃ、と短く切った。
今日は珍しく、二人は手を繋いでバスを降りていった。




おわる

98: SS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 02:11:43.38 ID:MiLir1ge0
甘くてとろける百合バス ロングとショートと――。


不思議なことが起こった。その日、帰りのバスにいたのはショートと私だけ。
恐る恐る、ロングは? と聞くと、風邪を引いたみたいなの、と細い線が震えたような可愛らしい声でショート。
逆に、ショートには、他のみんなはどうしたのかな、と尋ねられる。
さあ、と私は首を捻った。
ショートと言えば、確か、夢の中でヤンキーちゃんと庇い庇われして――。
ごめんね、ショート。私は本当はショートに一番に謝らなければと思っていた。
変な夢見てごめん。
ショートはキョトンとしていた。
うろ覚えになってきた夢の内容を説明すると、ショートは、ロングちゃん夢の中でもかっこいいね、と漏らした。
え、ええ? というか、怒ってないの? ロングとかショートとか、大変な目に合わせたんだよ?
夢だもん、怒ってないよ。ショートは小さく笑った。
そうなったら、ロングちゃんはやっぱり私の事守ってくれるんだなあー、ってちょっと嬉しいかも。みんなでそういう事はしたくないけど。
私は、ショートって良い子だとは思っていたんだけど、本当に良い子だったので、ちょっと肩透かしを食らった。

103: SS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 22:41:43.41 ID:NVOHfPJx0
ねえ、ショート、もしかしてこれからお見舞い?
そうだよ、とショート。
私も一緒に行っていいかな。
ショートは一つ返事で了承してくれた。
ロングには夢の話をしないでおこう。
現実でも何されるか分かったものじゃないし。
でも、一応ロングにも罪悪感があるから、お見舞いにくらい行ってやろう。

バスに揺られること十数分で、ロングの住む地域に停車した。

104: SS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 22:48:07.73 ID:NVOHfPJx0
何か、買って行く?
うーん、連絡送ったんだけど、何もいらないって言われたの。
へえ。
変わりに、ショートがいればいいって言われちゃった。
のろけかい。
私は、ショートの肩に裏拳を入れてしまった。
ち、ちがうよ、と彼女は焦って否定するけどまんざらではない。
妬けるねえ。もちが妬けるよねえ。
と、茶々を入れる私。
あの、ロングちゃん、ちょっと甘えん坊な所があって。
ショートが言い訳のように語る。

甘えん坊?
聞かん坊の間違いじゃないかしら。

105: SS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 22:52:41.54 ID:NVOHfPJx0
歩くこと数分で、ロングの家に到着。
インターホンを押すショート。
私は、初めて訪れるクラスメイトの家に、少しそわそわ。
何か、言われるかなあ。
と、不安を漏らす。

どうして? ショートが不思議そうに聞く。
だって、私のショートに近づかないで、とか言いそう。
言わないよ、そんなこと。
ショートがそう言ったのも束の間、玄関が開いた。
パジャマ姿で髪をサイドに垂らしたロングが出て来た。

で、開口一番、私のショートに近づかないでくれる? とめっちゃ冷たい目で言われた。
ほら、ほら、ほら! と私はショートの背に隠れて、震えながら叫ぶ。

106: SS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 23:15:13.79 ID:NVOHfPJx0
ショートの腕を引っ張り、自分の懐に納めるロング。
誤解ですだよ! 違う、無実を主張する!
ショートも、私がロングのお見舞いに来ただけだと弁解してくれた。
ロングも最初こそ訝し気だったけど、ショートになだめられて警戒を解いてくれた。

ショートを引きずりながら、ロングは部屋に案内してくれた。
寒くてしんどいのか、いつものトゲのある顔が、へにょっとなっていてちょっと可愛い。
案の定、部屋にたどり着くと、ベッドイン。
しかも、ショートも道連れだ。二人で、ベッドイン。わお。

107: SS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 23:20:47.60 ID:NVOHfPJx0
お布団にくるまり、二人仲良く私を見つめてくる。
なんだいこれは。なんの拷問だい。
私は、そんな二人を見ないようにしながら、二人ってさ、凄く仲いいよね、と軽く触れておいた。




おわる

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