勇者「とうとう辿り着いたぞ!」魔王「なんだこの幼女は」

2019年08月19日
勇者「とうとう辿り着いたぞ!」魔王「なんだこの幼女は」

1: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:11:33 ID:mcWhYPL.
魔王城、王の間

勇者「とうとう辿り着いたぞ!」

魔王「・・・・・・なんだこの幼女は」

勇者「いざ!」タッタッタ

魔王「待て、そこは」

ツルン

勇者「あう!」ズテン

魔王「・・・・・・モップをかけたばかりだ」

2: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:12:06 ID:mcWhYPL.
勇者「・・・・・・う、ぐす、ひっく」

魔王(な、泣いている)

勇者「・・・・・・」キッ

魔王「お、俺が悪いのか?」

勇者「痛いよう」スリスリ

魔王「・・・・・・あー・・・・・・いや、だってお前が勝手に」

勇者「・・・・・・」キッ

魔王「その、すまぬ」

3: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:12:55 ID:mcWhYPL.
勇者「だまれ! 敵になさけをかけられるなど!」

魔王「だってお前が」

勇者「・・・・・・」キッ

魔王「・・・・・・」

勇者「わたしは勇者だ!」

魔王「そ、そうか・・・・・・そうかぁ?」

勇者「魔王、かくご!」スタッ

4: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:13:32 ID:mcWhYPL.
魔王「おい、だからそこは」

ツルン

勇者「あう!」ズテン

魔王「・・・・・・滑るんだってば」

勇者「きさま! はかったな!」キッ

魔王「ああ、もういい。そうだ、この魔王が計ったのだ」

5: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:14:03 ID:mcWhYPL.
勇者「なんとひれつな!!」

魔王「ああ、卑劣だ。魔王だからな」

勇者「ゆるさん!」ソローリ

魔王(学習しているな)

勇者「・・・・・・」ソローリ

魔王(あと二歩で安全地帯だぞ)

勇者「よし! いざ!!」ダッ

ツルン

勇者「あう!」ズテン

魔王(何故あと一歩我慢出来なかったのだ)

6: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:14:48 ID:mcWhYPL.
勇者「痛いよう」スリスリ

魔王「だ、大丈夫か?」

勇者「だまれ! きさまと話をするためにきたのではない!」ダッ

ツルン

勇者「あう!」ズテン

魔王(・・・・・・転びに来たのか?)

勇者「うう、ぐすっ。なんでころんじゃうのよ」ポロ、ポロ

魔王「・・・・・・魔族長よ」

7: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:15:24 ID:mcWhYPL.
魔族長「ハッ、どうされましたか?」

魔王「・・・・・・それを、転ばないところまで運んでくれ」

魔族長「・・・・・・は?」

魔王「いいから」

魔族長「は、はあ」

魔王(見ていられない)

8: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:16:11 ID:mcWhYPL.
勇者「は、はなせ!」ジタバタ

魔族長「ちょ、暴れないで下さい」

魔王「よし、そこまで行けば大丈夫だろう」

魔族長「はい。では失礼致します」ドサ

勇者「いてっ! むう、陵辱したな!」

魔王「いや、陵辱はしてないから」

勇者「へんたい! くずにんげん!」

魔王(・・・・・・なんだこの新しい呪文は。心を抉られる)

9: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:16:48 ID:mcWhYPL.
勇者「わ、わたしは勇者だ!!」

魔王「さっき聞いたが」

勇者「つよいんだぞ!」

魔王「ああ、そんなことを言う勇者は今までいなかったよ。よほど強いんだろうな」

勇者「ほめるな!! 篭絡されないぞ!!」

魔王「褒めてない、皮肉だぞ」

10: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:17:19 ID:mcWhYPL.
勇者「ば、ばーか!」

魔王「とうとうただの悪口だな。・・・・・・お前、どうやってここまで辿り着いたんだ?」

勇者「なみいる魔族を、たおしてきた!!」

魔王(そんな報告入ってないけどなぁ)

魔王「魔族長よ」

魔族長「ハッ。どうされましたか?」

魔王「この娘はどうやってここまで来たのだ」

勇者「娘ではない! 勇者だ!!」

魔王「・・・・・・この勇者は、どうやってここまで来たのだ」

魔族長「・・・・・・言いづらいのですが」

11: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:18:01 ID:mcWhYPL.
魔王「ああ」

魔族長「あまりに哀れな様子に、見逃す者が多かったようで」

勇者「あ! ぶつけたところにあざができてる!」

魔族長「あまりの転びっぷりに、つい傷薬を渡す者まで居たようで」

勇者「やっぱり火龍の傷薬はよく効くなぁ」ヌリヌリ

魔王「・・・・・・うん、分かった」

魔族長「申し訳ございません」

魔王「いや、うん。もう下がっていいよ」

魔族長「はい」

12: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:18:33 ID:mcWhYPL.
魔王「・・・・・・それで、何をしに来たのだ」

勇者「魔王をたおしにきた!」

魔王「そ、そうか」

勇者「おまえ、魔王だろう!」

魔王「そうだ」

勇者「じゃあ言うことがあるだろう!」

魔王「え、なにを?」

勇者「大地の半分を、みたいなやつ!」

魔王「なんと前時代的な」

勇者「いいから言え!!」

13: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:19:12 ID:mcWhYPL.
魔王「・・・・・・よく来たな勇者よ。私の部下になれ、さすれば大地の半分をお前にくれてやろう」

勇者「ことわる!」

魔王「・・・・・・そうか」

勇者「ふふんっ」ドヤ

魔王「いや、断るなら何で言わせたのだ?」

勇者「勇者学校でならった!」

魔王「学校があるのか!」

14: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:19:53 ID:mcWhYPL.
勇者「うん、私はとても成績がいい!」

魔王「それは偉いな」

勇者「えへへ」

魔王「・・・・・・」

勇者「・・・・・・ハッ! きさま篭絡する気か!!」

魔王「それは大地のくだりで言うことだろうに」

15: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:20:27 ID:mcWhYPL.
魔王「・・・・・・ところで、お前はいくつなのだ」

勇者「6つだ!」

魔王「・・・・・・ここに来るのは、ちょっと早かったんじゃないのか?」

勇者「魔族の侵攻は待ってくれない!」

魔王「せ、正論だな」

勇者「フフン! ・・・・・・あ」グウウ

16: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:21:04 ID:mcWhYPL.
魔王「お腹が空いたのか」

勇者「す、空いていない!」

魔王「・・・・・・」

勇者「・・・・・・」グウウウウ

魔王「・・・・・・なにか、食べるか?」

勇者「敵の情けはうけぬ!」

17: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:21:51 ID:mcWhYPL.
魔王「いや、俺も昼食にするところだから」

勇者「・・・・・・毒をしこむつもりだろう!」

魔王「仕込まないから」

勇者「・・・・・・虫は、たべないぞ!」

魔王「ああ、俺も虫は食べないから大丈夫だ」

勇者「・・・・・・じゃあ、たべてやる」

18: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:22:36 ID:mcWhYPL.
魔王「はあ、魔族長よ」

魔族長「ハッ。どうされましたか?」

魔王「今日の昼食は勇者と食べることにした」

魔族長「・・・・・・えー、それはつまり?」

魔王「いや、毒とかは無しで」

魔族長「え? ですが」

魔王「・・・・・・仕方ないだろう、ほら」コソコソ

勇者「お腹へったなぁ」グウウ

魔族長「・・・・・・まあ、確かに」コソコソ

19: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:23:09 ID:mcWhYPL.
魔王城、テラス

勇者「おいしい!」もぐもぐ

魔王「・・・・・・ああ、そうだな」

勇者「ハッ! まさか、食べてる隙に襲う気か!」ガタ

魔王「いやいや、それなら毒を入れた方が早いだろうに」

勇者「ならいい!」もぐもぐ

魔王「・・・・・・」

勇者「・・・・・・」もぐもぐ

魔王「・・・・・・」

20: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:23:42 ID:mcWhYPL.
勇者「美味しかった!」

魔王「ああ」

勇者「お前に言ったのではない、魔王め! この城の料理長に言ったのだ!」

魔王「料理長も魔族だぞ」

勇者「なっ!?」

魔王「いや、ここ魔王城だから」

勇者「・・・・・・うーん」

魔王「どうした」

勇者「・・・・・・魔族め! 美味しかったぞ!」

魔王「ああ、そこで落ち着いたんだな」

21: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:24:17 ID:mcWhYPL.
魔王城、王の間

魔王「・・・・・・昼食も済んだが、戦うのか?」

勇者「・・・・・・」

魔王「あれ、どうした」

勇者「・・・・・・え?」

魔王「眠いのか?」

勇者「眠くなどない! 魔王め!」トローン

魔王「いや、とても眠そうだぞ」

勇者「ハッ! まさか!?」

魔王「料理長は何も入れていないぞ」

勇者「・・・・・・ん」トローン

22: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:25:06 ID:mcWhYPL.
魔王「・・・・・・魔族長よ」

魔族長「ハッ! ・・・・・・なんですかこれは」

勇者「・・・・・・すう、すう」

魔王「その勇者を客室のベッドへ運んでくれ」

魔族長「この娘は、本当に勇者なのですか?」

魔王「まあ、そうなんだろうな」

魔族長「寝ている隙に攻撃しては?」

魔王「そういう訳にもいかないだろうに」

魔族長「・・・・・・はあ」

23: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:25:42 ID:mcWhYPL.
魔王「だって仕方ないだろう! 寝ているんだもの」

魔族長「ええ、まあ確かに」

魔王「・・・・・・そんな目で見るなよ」

魔族長「魔王様、私の職務はなんでしょう」

魔王「魔族の部隊を率いて戦うことだ」

魔族長「もう一度」

魔王「・・・・・・魔族の部隊を率いて、戦うことだ」

魔族長「・・・・・・」

魔王「すまんって」

魔族長「・・・・・・はあ」ダキ

勇者「・・・・・・ん、すう、すう」

魔王「起こさぬようにな」

24: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:26:22 ID:mcWhYPL.
魔王城、客室

魔族長「・・・・・・はあ」ドサ

勇者「・・・・・・うーん」

魔族長「戻りますか。・・・・・・ん?」

勇者「・・・・・・」ギュ

魔族長「袖を離しなさい」グイ

勇者「・・・・・・すう、すう」ギュウ

魔族長「・・・・・・はあ」

勇者「すう、すう」

魔族長「・・・・・・動けない」

25: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:52:09 ID:mcWhYPL.
夕方、魔王城、王の間

勇者「おはよう、魔王め!」

魔王「ああ、おはよう」

勇者「だまれ!」

魔王「なんて理不尽なんだ。お前が先に言ったのではないか」

勇者「挨拶は基本だと勇者学校で習ったのだ!」

魔王「・・・・・・さっきは聞きそびれたが、その恐ろしい学校は一体なんなのだ」

勇者「きさまを倒す勇者をそだてる学校だ!」

魔王「ああ、やっぱり」

勇者「聞いているぞ! 魔王はとても恐ろしい魔族なんだ!」

26: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:53:04 ID:mcWhYPL.
魔王「ああ、そうだろうな」

勇者「こう、身長は3mくらいあって」

魔王「そんなことはないけどな」

勇者「たまに火を吹くらしい!」

魔王「火も吹かないし、たまにってなんだよたまにって」

勇者「・・・・・・うーん」

魔王「どうした」

勇者「・・・・・・きさま、ほんとうに魔王か?」

魔王「お前にだけは言われたくない」

27: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 00:57:52 ID:mcWhYPL.
勇者「私を馬鹿にするな! 成績は一番なんだぞ!」

魔王「そうらしいな。魔界もしばらく安泰だ」

勇者「壷を壊すのも一番早い!」

魔王「壷? なんだそれは」

勇者「人の家に入って、壷や木箱を壊す授業だ!」

魔王「泥棒じゃないか」

勇者「私は勇者だ!!」

魔王「そ、そうか」

勇者「宝箱の中身を盗むのも早い!!」

魔王「今盗むって言ったけどな」

28: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 01:02:38 ID:mcWhYPL.
勇者「あ!!」

魔王「今度はなんだ」

勇者「今何時だ!!」

魔王「5時過ぎだ」

勇者「も、門限を過ぎている!! 計ったな!?」

魔王「門限があるのか」

勇者「あるに決まっているじゃないか! 私をなんだと思っている!!」

魔王「勇者、じゃないのか?」

勇者「そうだ! ああ、どうしよう。お母さんに怒られる」

魔王「・・・・・・ルーラで帰ればいいじゃないか」

勇者「そんな難しい魔法使える訳ないでしょう!?」

魔王「本当にどうやってここまで来たんだ」

29: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 01:06:14 ID:mcWhYPL.
勇者「どうしよう! う、ぐす・・・・・・怒られるよう」

魔王「はあ、魔族長よ」

魔族長「・・・・・・」

魔王「・・・・・・魔族長?」

魔族長「はい」

魔王「・・・・・・怒っているのか?」

魔族長「いいえ」

魔王「この勇者をルーラで送ってやってくれ」

魔族長「・・・・・・はあ」

魔王「そんな目で見るなよ」

30: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 01:12:14 ID:mcWhYPL.
魔族長「ほら、行きますよ」

勇者「何処に連れていく気だ!!」

魔族長「何処に住んでいるのですか?」

勇者「はじまりの街だ!」

魔族長「では、そこへ」

勇者「なっ!? あ、ありがとう! 魔族め!!」

魔王「今度はもう少し大きくなってから来るといいぞ」

勇者「これから先も第2、第3の勇者がお前に挑むからな!!」

魔王「勇者の言うことじゃないだろう、それ」

勇者「うるさい! 明日も来るからな!!」

魔王「ああ、もう分かったから。おかえり」

魔族長「ルーラ」ヒューン

勇者「今日は私の勝ちだからな!!」ヒューン

魔王「・・・・・・はあ、お前の勝ちではないけれど、俺の負けではあるよ」

31: ◆rPuHN1dQX2 2017/04/04(火) 01:22:36 ID:mcWhYPL.
完。ありがとうございました。

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