【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

2019年03月08日
【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

元ネタ:ぼくたちは勉強ができない
480: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:28:44 ID:GTAXl2Ic
>>1です。
投下します。

以前、作品の時系列を飛び越えるのは嫌だと言いましたが、それをやってしまいました。
想像していたら止まらなくなり、書き上げてしまいました。
完成したものを消そうとも思いましたが、手前味噌ながらとても面白く仕上がりました。
もったいないと思ってしまいました。

自分では、すごく面白いと思います。
なので、勝手ではありますが、投下します。
本編で言及されていないことについて、多く書いています。
わたしの想像によるところも多いので、不快に思われる方もいるかもしれません。
それだけ、前置きしておきます。

481: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:34:44 ID:GTAXl2Ic
………………唯我家

カリカリカリ……

文乃「……できた!」

文乃「成幸くん、採点お願いしてもいい?」

成幸 「ああ、任せとけ」

キュッキュッ……キュッ……

成幸 「……ふんふん……うん……おお」

成幸 「すごいぞ、古橋。満点じゃないか。初めてじゃないか?」

文乃「ほんとに!? ケアレスミスもなし!?」

パァアアアアアア……!!!

文乃「やったー! やったよ成幸くんっ!」 ギュッ

成幸 「っ……」 (う、嬉しいのはわかるが、古橋……!)

成幸 (急に両手を握るのはやめてくれ……!!) カァアアアア……

成幸 「ふ、古橋っ」

文乃「? なぁに、成幸くん?」

482: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:35:15 ID:GTAXl2Ic
成幸 「……ち、近い。あと、手……」

文乃「……?」

ハッ

文乃「わぁ!」 パッ

文乃「ご、ごめんね、成幸くん。数学で満点なんて、びっくりして、嬉しくて……」

文乃「つい……」

成幸 「あ、ああ。気持ちはわかるし、分かってくれればいいよ……」

文乃「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃「あっ、あの……――」


「――――……ウォッホン!!」


文乃「……!?」 ビクッ

文乃「み、水希ちゃん……?」

483: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:35:55 ID:GTAXl2Ic
水希 「………………」

ジトーーーッ

水希 「……まじめに勉強してると思ったから、少し目を離したらこれですか?」

水希 「もう試験までそう日にちもないんでしょうから、」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「もう少しまじめに勉強した方がいいと思いますよ?」

文乃「た、たしかにその通りなんだよ……ごめんね、成幸くん」

文乃 (うぅ……相変わらずすごい圧だよ、水希ちゃん……)

成幸 「い、いや、俺の方こそ、ごめんな……」

成幸 (怖え……。一体何に怒ってるんだ、水希の奴……)

水希 (まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから)

水希 (目を光らせてないと)

和樹 「……なぁなぁ、母ちゃん。頼むよー」

葉月「わたしからもお願いー。おーねーがーいー」

花枝 「そんなお金はないの。これで我慢しなさい」

484: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:36:40 ID:GTAXl2Ic
水希 「……? こら、和樹、葉月。またわがまま言ってるの?」

水希 「お母さん内職で忙しいんだから、邪魔しないの」

葉月&和樹「「はーい……」」 ショボーン

文乃「……? わっ、小さくてかわいいクリスマスツリーだね」

文乃「そっか。もうクリスマスの季節かぁ……」

葉月「……そうなの。小さいの」 ショボーン

和樹 「テーブルに置くようなやつだよ。飾り付けとかできない……」 ショボーン

成幸 「……あー、飾り付けとかしたいのか。俺も小さい頃憧れたなぁ」

成幸 「兄ちゃんが働いてお金稼げるようになったら買ってやるから、今はこれで我慢しな」

葉月「うん……」

文乃「クリスマスツリー……」

ハッ

文乃「……ねえ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃「もし良かったら、なんだけど……」

485: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:37:26 ID:GTAXl2Ic
………………翌日 唯我家

葉月「わぁああああああああ!!!」

和樹 「うおーーーーーーー!!!!」

葉月&和樹 「「大きいクリスマスツリーだぁ!!!」」

キラキラキラ……

成幸「……ふぅ。持ってくるだけで一苦労だったな」

文乃「おつかれさま、成幸くん。車でも出せたら良かったんだけど」

成幸 「いやいや、そんな贅沢は言えないよ。それより……」

成幸 「いいのか? あのツリー、借りちゃって……」

文乃「いいのいいの。もう十年くらい物置から出してなかったし」

文乃「……お母さんが亡くなってから、出したことなかったし」

成幸 「あっ……そ、そうか……」

文乃「……ん、ごめんね、変な話して」

文乃「もう使ってないから、使ってくれた方がきっとツリーも嬉しいと思うし」

成幸 「……おう。ありがとな、古橋」

486: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:40:34 ID:GTAXl2Ic
葉月「わー、飾り付けもいっぱいはいってるー!」

和樹 「兄ちゃん、文姉ちゃん、一緒に飾り付けしようぜ!」

成幸 「……そうだな。じゃあ、やるか、古橋」

文乃「うん! よーし、久しぶりにやっちゃうぞー!」

ワイワイワイ……

葉月「この大きなお星様は、てっぺんね。兄ちゃん、つけて」

成幸 「よしきた。任せとけ」

成幸 「……よいしょっ、と。おお、様になるな」

文乃「ふふ……」 (成幸くん、いいお兄ちゃんだなぁ……)

文乃 (……なつかしい)

文乃 (昔、わたしも、お母さんとお父さんと、三人で飾り付けしたなぁ……)

文乃 (お父さん、そういうセンスがないから、お母さんとふたりでダメだししたりしたっけ)

文乃 (ふふ……)

487: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:42:25 ID:GTAXl2Ic
成幸 「……ん」

成幸 (古橋、なんか……笑ってて、楽しそうなのに……なぜか、)

文乃「………………」

成幸 (“寂しそう” ? に、見えるような……)

成幸 (そういえば……)

成幸 「……なぁ、古橋。今年のクリスマスは、お父さんとパーティか?」

文乃「……ううん。お父さん、クリスマスは研究室の忘年会なんだって」

成幸 「なっ……」

成幸 「あのお父さん、またそんなこと言って……!」

文乃「あっ、ち、違うんだよ? わたしが、忘年会の方に行ってって言ったんだよ」

文乃「お父さんは、忘年会は欠席しようかなって言ってくれたんだけど……」

文乃「……お父さんの仕事の邪魔になりたくないから。だから、行ってって言ったんだ」

成幸 「ん、そうか……。なんか、ごめん。いきなり、お父さんのこと悪く言いそうになって……」

文乃「……ううん。そうやって、わたしのことで怒ってくれるのは、嬉しいよ」

文乃「でも、わたしは大丈夫だよ。もうお父さんと仲直りできたし。気にしないで」

488: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:43:20 ID:GTAXl2Ic
成幸 (……俺は短絡的すぎる。てっきり、また古橋が寂しい思いをするのかと思って、頭に血が上ってしまった)

成幸 (っていうか、研究室もクリスマスなんかに忘年会を入れるなよ……)

成幸 (俺は絶対、大学進学しても、クリスマスは家に帰って家族と過ごすぞ)

成幸 (……いや、そんなことは今はどうでもよくて)

文乃「わっ、葉月ちゃんも和樹くんもきれいに飾り付けしてるねぇ。わたしも負けられないな」

成幸「………………」

成幸 「……なぁ、古橋。もしよかったらなんだけどさ、」

文乃「うん?」

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

文乃「へ……?」

ボフッ

文乃「へぇえ……?///」

489: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:44:02 ID:GTAXl2Ic
………………夜

成幸 「……ってことで」

成幸 「母さん、水希、頼む! クリスマスパーティ、古橋を呼んでもいいか?」

花枝 「まぁ……まぁまぁ……」 パァアアアアアア……!!!

花枝 「文ちゃんをクリスマスに誘ったの!? まぁ……」

花枝 「いいに決まってるでしょ! よくやったわ、成幸!」

成幸 「え? ああ、うん……」 (よくやったってなんだ? まぁ、賛成してくれてよかったけど……)

成幸 (問題は……)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (こっちだよなぁ……)

葉月「ねぇねぇ、姉ちゃん見て見て!」

和樹 「クリスマスツリー! きれいだろ。文姉ちゃんが貸してくれたんだ!」

水希 「うん、とってもきれい」 ニコッ 「ふたりとも飾り付けがんばったのね。えらいえらい」 ナデナデ

葉月&和樹 「「えへへ~」」

490: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:45:02 ID:GTAXl2Ic
水希 「………………」

水希 (……葉月も和樹も嬉しそうだわ。悔しいけど、古橋さんのおかげ、だよね)

水希 「……いいよ」

成幸 「ん……?」

水希 「いいよ。古橋さん呼んでも。きっと、葉月と和樹も喜ぶだろうし」

成幸 「ほ、本当か!?」 パァアアアアアア……!!!「ありがとう、水希!」

水希 「……べつに、わたしにお礼言うことないと思うけど」

花枝 「……ふふっ」

水希 「なに、お母さん?」

花枝 「べつに~」 クスクス 「なんだかんだ、あんたも文ちゃんのこと大好きだもんね」

水希 「なっ……」 カァアアアア……「そ、そんなわけないでしょっ! べつに、古橋さんのことなんて……」

水希 「………………」

水希 「……嫌い、では、ないけど」 プイッ

花枝 「ふふ」

491: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:45:55 ID:GTAXl2Ic
花枝 「文ちゃんが来るなら、クリスマスパーティ、気は抜けないわね」

花枝 「水希。特別に牛肉の購入を許可します。ローストビーフを作ってちょうだい」

葉月「牛肉!?」  和樹 「ローストビーフ!?」

水希 「いいの?」

花枝 「もちろんよ。文ちゃんが来るとなっては手は抜けないわ。気合い入れてごちそう作るわよ、水希」

水希 「……ま、まぁ、そうね。美味しいごちそうを山ほど用意して、唯我家の女のすごさを見せてあげないと」

水希 (……古橋さんって、本当に美味しそうにごはん食べてくれるから、作りがいがあるんだよね)

水希 (えへへ。ごちそう用意したら、どんな顔して食べてくれるかな。美味しいって言ってくれるかな)

水希 「……?」

ハッ

水希 (い、いけないいけない。あの女は、お兄ちゃんによりつく悪い虫)

水希 (たとえどんなに良い人でも、気を許しちゃダメなんだから)

水希 「………………」

水希 (……まぁ、でも)

水希 (ごちそうは、たくさん食べてもらおうっと。えへへ、何作ろうかな)

492: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:47:07 ID:GTAXl2Ic
花枝 (水希ったら、表情コロコロ変えて、なんだかんだ楽しそうじゃない)

花枝 (本人は否定するけど、ほんとは文ちゃんのこと大好きなのよね)

クスクス

花枝 (でも、そっか……古橋さん、クリスマスは忘年会なのかぁ。まぁ、お付き合いもお仕事の内だものね)

花枝 (でも今の古橋さんだったら、忘年会が終わってすぐ、家に駆けつけそうなものだけど……)

花枝 「………………」

花枝 「……いけるかしら」 ボソッ

成幸 「? 母さん、何か言ったか?」

花枝 「……ううん。なんでもない。文ちゃんに喜んでもらうには、どういしたらいいか考えてただけよ」

成幸 「はは。あいつは食いしん坊だからな。食べ物山ほど用意すれば喜ぶよ」

花枝 「………………」

成幸 「……母さん?」

花枝 「あんたさ、もう少し女心ってものを勉強したら?」

成幸 「古橋みたいなことを母親に言われた!?」

493: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:47:41 ID:GTAXl2Ic
………………古橋家

零侍「文乃」

文乃「……? なぁに?」

零侍「いや……」

零侍「……クリスマスは唯我さんの家に伺うのだろう。失礼のないようにな」

文乃「わかってるよ。ちゃんとするよ」

零侍「美味しい美味しいと、人様の家で食い意地を張らないようにな」

文乃「わかってるよ! それが年頃の娘に言うこと!?」

零侍「す、すまん……」

文乃「あ、いや……そんな、本気で怒ってるわけじゃないから、気にしないで……」

零侍「そうか……。すまない。私も、冗談のつもりだった」

文乃「……うん。わかってるよ。大丈夫」

零侍「………………」

文乃「………………」

494: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:48:27 ID:GTAXl2Ic
文乃 (……気まずい、けど)

文乃 (嫌じゃ、ない。お父さんが、必死で、がんばって、わたしと会話をしようとしてくれてるって、わかるから)

クスッ

零侍「……ん、どうかしたか?」

文乃「ううん。あのね、お父さん。クリスマスツリー、成幸くんに貸したって言ったじゃない」

零侍「ああ」

文乃「成幸くんの弟妹ちゃんたちと一緒に飾り付けもしたんだよ。そしたらね……」

文乃「……そうしたら、思い出したんだ。昔、三人でクリスマスツリー、飾り付けしたこと」

零侍「………………」

文乃「……えへへ。すごく楽しかったなぁ、って。それだけ」

零侍「……ああ。私も、楽しかったと思うよ。なつかしいな」

文乃「うん」

零侍「………………」 スッ 「……今年のクリスマスも、楽しんできなさい」

ポンポン

文乃「……うん!」

495: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:49:06 ID:GTAXl2Ic
………………

零侍「……はぁ。我ながら、本当に……なんというべきか。不器用だな」

零侍「……まぁ、いい。今日明日で気を許せるわけもない」

零侍「文乃が受け入れてくれるなら、私は、私に出来る範囲で、会話を続けなければ」

prrrrrr……

零侍「ん……? 電話?」 (こんな時間に、なんだ? 研究室からか?)

零侍「……!?」

ピッ

零侍「……古橋ですが」

零侍「ええ。おかげさまで、一応、順調ではあるかと……」

零侍「……え?」

零侍「は、いや、しかし……私は……」

零侍「……わ、わかりました。そうさせていただきます。はい……はい。では、失礼します」

零侍「………………」

零侍「……な、なんてことだ」

496: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:49:37 ID:GTAXl2Ic
………………クリスマス当日 唯我家前

文乃「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (服装、よし。髪型、よし。プレゼント、よし。うん、完ぺき……だと思う)

ドキドキドキドキ……

文乃 (い、いつも勉強教わりに来てる成幸くんの家とはいえ……)

文乃 (さすがに、余所様の家庭のクリスマスパーティに参加するのは緊張するなぁ……)

文乃 (それに……)


―――― 『クリスマス、うちに来ないか?』


文乃「はうっ……」

カァアアアア……

文乃 (あ、あくまで家庭のクリスマスパーティにお呼ばれしただけだから!)

文乃 (だから……)

ドキドキドキドキ……

497: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:50:09 ID:GTAXl2Ic
ガラッ

文乃「……!?」

成幸 「お、いたいた。来てたなら入ればいいのに。どうしたんだ?」

文乃「な、何もないよ。えへへ……」

文乃 (きみのことを思い出してドキドキしてたんだよ!)

文乃 (……なんて、口が裂けてもいえないよ)

文乃 (……っていうか、うるかちゃん、りっちゃん、違うからね! これは、ただの……)

文乃 (ただの、クリスマスパーティだからね!)

成幸 「? どうした? 早く入れよ」

文乃「あ、うん! お邪魔します」

パンパンパン!!!

文乃「わっ……」

葉月&和樹 「「文ねーちゃん! メリークリスマス!!」」

文乃「葉月ちゃん、和樹くん」 ニコッ 「メリークリスマス!」

498: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:50:59 ID:GTAXl2Ic
成幸 「ごめんな、古橋。ふたりがお前のこと驚かせたいって言ってたからさ……」

文乃「ううん。クラッカーの音なんて久々で、少しびっくりしたけど、」

文乃「こうやって出迎えてくれるの、すごく嬉しいよ。ありがとう、葉月ちゃん、和樹くん」

葉月&和樹 「「えへへ~」」

成幸 「さ、上がってくれ。水希と母さんが、古橋が来るからって大はりきりで作ったごちそうが待ってるぞ」

葉月「そうそう! すごいごちそうなの!」 ギュッ

和樹 「文姉ちゃんも絶対すごいって言うぞ!」 ギュッ

タタタタ……

文乃「わっ、わわわっ……」

ガラッ

花枝 「あら、文ちゃん。いらっしゃい」

水希 「……こんにちは、古橋さん」

文乃「どうも、こんにちは。お邪魔してます……って」

キラキラキラ……!!!!

文乃「す、すごい……!!」 パァアアアアアア……!!!「ほんとにすごいごちそうだぁ~~!!!」

499: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:51:55 ID:GTAXl2Ic
水希 「べっ、べつに……そんな、大したお料理じゃないですよ」

水希 「古橋さんがいつもお料理を美味しそうに食べてくれるから、ついつい気合い入れて作っちゃったとかじゃないですから!」

和樹 「? なんだ、姉ちゃん? 新手のツンデレってやつか?」

葉月「姉ちゃんも文姉ちゃんのこと大好きなのね!」

水希 「なっ……///」 ボフッ 「べ、べつに、そういうのじゃないもん……」

花枝 「ふふ……。さ、成幸も文ちゃんも、席について。お料理が冷める前にいただきましょう」

文乃「あ、はい!」

花枝 「……じゃ、いただきましょう。いただきます」

 『いただきます!!』

文乃 「どれも美味しそう……。どれからいただこうかな……」

水希 「……ん、では、これからどうぞ」

文乃「? これって……ローストビーフ?」

水希 「……牛肉なんか滅多に買えないから、作るの初めてですけど」

水希 「食べてみてください」

500: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:52:37 ID:GTAXl2Ic
文乃「うん。じゃあいただくね」

パクッ……モグモグ……

文乃「………………」

水希 「……ど、どうですか?」

文乃「……ふにゃ~、美味しい~~~~!!」

文乃「お肉がすっごくやわらかくて、ソースとよく合うよ! 本当に美味しいよ、水希ちゃん!」

水希 「そ、そうですか。それなら、よ、よかったです……」 プイッ

和樹 「? 姉ちゃん、顔赤いぞ?」

葉月 「文姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて嬉しいのねー」

水希 「ち、ちがうわよ! そんなのじゃないんだから……」

成幸 「いやー、しかし、ほんとにどれも美味しいな……」 モグモグ

成幸 「水希みたいな妹がいて、俺は本当に幸せ者だなぁ……」

水希 「も、もうっ。お兄ちゃんったら……///」

花枝 (兄の発言に照れる方を恥ずかしいと思ってほしいところだけど……)

花枝 (……まぁ、しょうがないわね。水希だものね)

501: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:53:15 ID:GTAXl2Ic
文乃「でも、ほんとにどれもこれも美味しいよ」

文乃「いいなぁ、成幸くん。わたしも水希ちゃんみたいな妹ちゃんがいてくれたらなぁ……」

水希 「……え?」

文乃「へ?」

葉月 「……文姉ちゃん。いい方法があるわ」

文乃「?」

和樹 「文姉ちゃんが、兄ちゃんの嫁に来たら、姉ちゃんは文姉ちゃんの妹になるぞ!」

文乃「っ……//」

成幸 「なっ……///」 ボフッ 「ば、ばかなこと言うんじゃない!」

水希 「………………」 ギリッ (……悔しい)

水希 (古橋さんが姉になるのを想像して、それもアリかな、なんて思っちゃう自分が、悔しい……!)

成幸 「ほら、せっかくのごちそうが冷めちゃうぞ。どんどん食べろ」

葉月&和樹 「「はーい」」

502: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:55:37 ID:GTAXl2Ic
………………食後

文乃「……はふぅ」

文乃「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした。お母さん、水希ちゃん」

花枝 「お粗末様でした。文ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるわぁ」

花枝 「……ね? 水希?」

水希 「っ……」 プイッ 「ま、まぁね。美味しく食べてくれるから、嬉しいことは嬉しいかもね」

文乃「えへへ……。ありがと、水希ちゃん」

水希 「べつに……」 プイッ

文乃「あ、そうだ。あのね、クリスマスプレゼント持ってきたんだよ」

和樹 「クリスマス」  葉月 「プレゼント!?」

文乃「うん。えっと……」 ガサゴソ 「……はい、葉月ちゃんと和樹ちゃんには、クリスマスブーツ」

文乃「お菓子がたくさん入ってるよ。一気に食べちゃダメだよ」

葉月&和樹 「「ありがとう!! 文姉ちゃん!!」」

成幸 「……悪いな、古橋。プレゼントなんて用意させちゃって」

文乃「ううん。気にしないで。クリスマスパーティにお呼ばれしたんだから、これくらいは当然だよ」

503: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:56:56 ID:GTAXl2Ic
文乃「あと、水希ちゃんには、これ」

水希 「えっ……わ、わたしにもあるんですか?」

文乃「もちろん! はい、保湿クリーム。これわたしのお気に入りなんだ~」

水希 「あ、ありがとうございます……」 (すごく高そうなやつ……っていうか……)

文乃「わたしが使ってるやつと同じだよ。おそろいだね!」

水希 「っ……/// そ、そうですね……」

文乃「あと、お母さんにも。どうぞ。水希ちゃんと同じ保湿クリームです」

花枝 「私にも? なんか、気を遣わせちゃったみたいね。ありがとう」

文乃「いえいえ。気にしないでください。こちらこそ、こんな素敵なパーティにお招きいただいて、ありがとうございます」

水希 「……じゃあ、わたしからも」

文乃 「へ?」

水希 「プレゼントです。どうぞ」

文乃 「えっ……? わ、わたしに……? 用意してくれたの?」

水希 「……はい。いつも、兄と葉月、和樹がお世話になってますから。ツリーも、ありがとうございました」

文乃 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「ありがとう、水希ちゃん!」

504: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:57:45 ID:GTAXl2Ic
文乃 「開けてもいい?」

水希 「……は、恥ずかしいので、おうちに帰ってから開けてください。大したものじゃないので」

文乃 「うん。わかった! 開けるまで楽しみだよ~」

水希 「大したものじゃないから、そんなに期待しないでください……」

花枝 (……うんうん。水希とも良い感じじゃない。いいことだわ)

花枝 (文乃ちゃん、本当に良い子だし、まじめな話、本当に嫁に来てくれないかしら……)

水希 (お母さん、またろくでもないこと考えてる顔してる……)

水希 「……ケーキも作ってあるんです。持ってきますね」

文乃「ケーキ!?」 キラキラキラ……!!!!

文乃「はぁああ……水希ちゃんが作ったケーキ。絶対美味しいやつだよ……」

ジュルジュル

文乃「楽しみだね、成幸くん!」

成幸 「あ、ああ。よだれ垂れてるぞ、古橋……」

505: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:58:33 ID:GTAXl2Ic
水希 「……ちゃんとしたオーブンなんてないですから、なんちゃってケーキですよ」

水希 「そんなに期待しないでくださいね」

トトト……

葉月 「わたしたちもケーキ作り手伝ったの!」

和樹 「かーちゃんがフルーツ使う許可もくれたから、豪華なフルーツケーキだぜ!」

文乃「本当に? 楽しみだなぁ~」

ピンポーン

成幸 「? インターフォン? 誰だろう?」

花枝 「……あら。来たわね」 クスッ 「私が出るからいいわ」

成幸 「? なんだろう。何かの配達かな?」



  「……お邪魔します」



成幸 「? 男の人の声……? お客さんか?」

文乃「……!?」 (こ、この声……まさか……!?)

506: 深夜にお送りします 2019/01/05(土) 23:59:11 ID:GTAXl2Ic
ガラッ

零侍 「あ……こ、こんばんは」

文乃「お父さん!?」

葉月 「へぇ?」  和樹 「文姉ちゃんのお父さん?」

文乃「な、何で成幸くんの家にお父さんが来るの!?」

零侍 「なぜ、とはまたご挨拶だな。忘年会が終わったから来たのだが……」

文乃「そういうことじゃないよ!? お父さんが来るなんて聞いてないよ!?」

零侍 「聞いてない……?」 チラッ 「……やりましたね、唯我さん」

花枝 「ふふ。これくらいのサプライズはいいでしょう?」

零侍 「……まぁ、そうかもしれませんね」 フッ

零侍 「唯我さんに誘われたんだ。忘年会が終わったら、家に来ないかと」

零侍 「お言葉に甘えてお邪魔したのだが……嫌だったか? 文乃」

507: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:00:02 ID:qnUp5uO.
文乃「っ……」

文乃「嫌とか、そういうのは、ない……っていうか……」

プイッ

文乃「嫌なわけないじゃない。お父さんが、来てくれたんだもん。嬉しいよ」

零侍 「そ、そうか……」

花枝 「ふふっ♪」

成幸 「……俺にくらいは教えておいてくれてもよかったじゃないか、母さん?」

花枝 「あんた、文ちゃんにバラしちゃいそうだから。敵を欺くにはまず味方から、ってね」

成幸 「……はぁ。母さんが楽しそうで俺は嬉しいよ」

零侍 「あー……はじめまして。文乃の父の、古橋零侍です。こんばんは」

葉月 「こんばんは! 双子の姉、葉月でーす!」 和樹 「双子の弟、和樹でーす!」

葉月&和樹 「「文姉ちゃんの父ちゃんめっちゃイケメンだー!!」」

零侍 「あ、ああ、どうも? ありがとう?」

文乃 「……イケメンではないと思う」 ボソッ

零侍 「……何か言ったか、文乃」

508: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:01:14 ID:qnUp5uO.
………………

零侍 「む……このケーキは、本当に……美味しいな」 モグモグ

文乃 「本当だよ。すごく美味しい」 ジーーッ 「お父さんがいなければ、もっとたくさん食べられたのにな」

零侍 「……その言い方は、冗談でも傷つくぞ」

文乃 「あ、ご、ごめんね。うそだよ?」

零侍 「……すまない。今のも冗談だ」

文乃 「………………」

零侍 「……そう怒るな。私が悪かったよ」

文乃 「……べつに。怒ってないし」

水希 「………………」 (古橋さんのお父さんって言うから、どんなすごい人かと思ったけど……)

水希 (少し暗い雰囲気だけど、普通の人だな……)

零侍 「あ……水希さん、だったかな?」

水希 「え? あ、はい」

零侍 「ケーキ、とても美味しいよ。ありがとう」

水希 「あ……ありがとうございます。そんな、大したものじゃないですけど……」

509: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:01:46 ID:qnUp5uO.
水希 「……ん、そういえば、あのクリスマスツリー」

零侍 「うん?」

水希 「貸していただいて、ありがとうございます。おかげで、葉月と和樹も大喜びで……」

葉月 「ああいう大きなツリーに飾り付けするの夢だったの!」

和樹 「めちゃくちゃ楽しかったんだ!」

零侍 「……そうか。それはよかった。ずっとしまっていたものだから、使ってくれるなら、逆にありがたい」

成幸 「……なぁ、古橋」 コソッ

文乃 「? なぁに?」 コソッ

成幸 「お父さん、来てくれてよかったな」

文乃 「ん……ま、まぁね。お父さんも楽しそうだし、良かったんじゃない?」

成幸 「そんなこと言って、古橋」 クスッ 「お前も楽しそうだぞ?」

文乃 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、それは、元々、この家にいるのが楽しいだけで……」

文乃 「べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん」

510: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:02:27 ID:qnUp5uO.
成幸 「ふふ、そうかよ」


―――― 『うちのお父さんが そういう人だからかなぁ……』

―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』


成幸 (……古橋、お前は気づいてないかもしれないけどさ)

成幸 (お父さんが怖くて、お父さんがいる家に帰りたくないって言ってた頃に比べたら、)


―――― 『べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん』


成幸 (“いてもいなくてもいい” ってことは、すごいことだぞ)

成幸 (まだぎこちなくて、仲良しとは言えないかもしれないけど、)

クスッ

成幸 (お父さんと、ちゃんと、父娘に戻れたんだな)

零侍 「む……」

零侍 (……唯我くんと、文乃。何やら楽しそうにコソコソ話している)

零侍 (ふむ……)

511: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:03:09 ID:qnUp5uO.
………………玄関前

文乃 「今日はお招きいただいて、ありがとうございました」 ペコリ

成幸 「そんなに改まらなくていいよ。お前にはいつも世話になってるしさ」

零侍 「私からも。本当にありがとう、唯我くん。とても楽しかったよ」

成幸 「はい。お父さんも来られて良かったです。ふるは――文乃さんも、嬉しそうでしたし」

文乃 「なっ……よ、余計なこと言わないでいいよ、成幸くん!」

成幸 「ははは……」

零侍 (……うむ。やはり)

零侍 「あっ、しまったな。大学に忘れ物をしてしまった」

零侍 「すまない、文乃。先に家に帰っていてくれ。私は一度大学に戻ってから帰る」

文乃 「それはいいけど……。もう遅いし、明日じゃダメなの?」

零侍 「今日必要なものなんだ」

零侍 「すまない、唯我くん。とても厚かましいお願いだとは思うのだが、娘を家まで送ってあげてくれないか?」

成幸 「もちろん、いいですよ」

文乃 「えっ……でも、さすがに悪いよ。寒いし……」

512: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:03:46 ID:qnUp5uO.
成幸 「夜道は物騒だしな。もう夜も遅いし、いいから送らせろよ」

文乃 「……うん。ありがと、成幸くん」

零侍 「……ちなみに、帰りはかなり遅くなる。間違いなく日をまたぐ。2時以降の帰宅になる」

文乃 「そんなに遅くなるの?」

零侍 「ああ。もう一度言う。唯我くん。私の帰宅は間違いなく日をまたぐ。帰宅は2時以降だ」

零侍 「もし万が一早く帰宅してもそのまま寝室に直行してそのまま寝るだろう。だから何の心配もいらない」

成幸 「え……? あ、はい……」 (何で俺に言うんだ……? っていうか心配って何だ……?)

文乃 「じゃあ、わたしたち行くね。お父さんも気をつけて大学行ってね」

零侍 「ああ」

零侍 「……行った、か」 (……まったく。手くらい繋いだらいいものを。文乃のやつ、本当に楽しそうだ)

零侍 「……いかんな。ガラにもなく、唯我くんに嫉妬しているのか、私は――」

花枝 「――あら? いいと思いますよ? 年頃の娘さんのお父さんですもんね」

零侍 「……!? ゆ、唯我さん。いらっしゃったのですか……」

花枝 「ナイスアシストですね、古橋さん?」

零侍 「……アシストできているか、分かりませんが。娘の恋の応援くらいは、できるかなと」

513: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:05:33 ID:qnUp5uO.
花枝 「せっかく相手のお父さんがご厚意を向けてくれてるのに、うちの息子はニブいですけどね」

花枝 「成幸がもう少し恋心を分かってくれればいいんですけど」

零侍 「彼のそういうまじめなところに、好感を憶えます。それは美徳だと、私は思います」

花枝 「だといいんですけどね」 クスッ

零侍 「………………」

零侍 「あ、あの、唯我さん……」

花枝 「?」

零侍 「今日は……いえ、いつも、うちの娘がお世話になっています。本当に、ありがとうございます」

零侍 「この間のことも……本当に、どうお礼を言ったらいいか……」

花枝 「気にしないでください。息子が勝手にやったことがほとんどですから」

零侍 「……とはいえ、大人として、このままでは、あまりにも情けないと思います」

零侍 「なので、あの……もし、ご迷惑でなければ……」

零侍 「お礼と言うと、浅ましいですが……今度、一緒にお食事でも、と……」

花枝 「お食事? 私とですか?」

零侍 「は、はい……」

514: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:06:46 ID:qnUp5uO.
花枝 「……ふふっ」

零侍 「……?」

花枝 「いいですよ。ぜひ」

零侍 「!? ほ、本当ですか!?」

花枝 「うそなんかつかないですよ」

零侍 「あ……そ、それは、そうですよね」

零侍 「……では、また。その……電話をします」

花枝 「はい。待ってます」

零侍 「………………」

零侍 「……では、また」

花枝 「ええ。古橋さん、お気をつけて。それから……」

零侍 「?」

花枝 「メリークリスマス」 ニコッ

零侍 「あっ……」 ドキッ 「め……メリー、クリスマス」

515: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:07:23 ID:qnUp5uO.
………………

文乃 「えへへ、今日は本当に楽しかったなぁ……」

成幸 「“美味しかったなぁ” の間違いじゃないのか?」

文乃 「むっ……成幸くん? きみは、わたしのことを、ただの食いしん坊だと思ってないかい?」 プンプン

成幸 「冗談だよ。悪かった」

文乃 「ふーん、だ」 プイッ

文乃 「………………」

クスッ

文乃 「……ふふ」

成幸 「? どうかしたか?」

文乃 「ううん。楽しくって仕方なくてさ」 ニコッ 「怒るフリもできないよ」

成幸 「っ……」 ドキッ (そ、その笑顔はいくらなんでも反則だろ……)

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「お、おう。なんだ?」

516: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:08:02 ID:qnUp5uO.
文乃 「はい、これ」

成幸 「へ……? これ……プレゼント?」

文乃 「うん。成幸くんへのプレゼントだよ」

文乃 「さっき渡したら良かったんだけどね……えへへ」

文乃 (……なんか、みんなの前で渡すのが恥ずかしくて……なんて言えないよね)

成幸 「……あ、ありがとう。嬉しいよ」

成幸 「えっと……その……俺も」 ゴソッ 「……プレゼント」

文乃 「へ……?」

文乃 「あっ……ありがとう」 カァアアアア……

成幸 「俺も、さっき渡したらよかったんだけど……」

成幸 (みんなの前で渡すのが恥ずかしかった……なんて言えるわけないよな)

文乃 「……ふふ。なんか、わたしたち、似たもの同士だね」

成幸 「……だな」

517: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:08:39 ID:qnUp5uO.
文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (……ああ、もう。否定することも、難しいよね)

文乃 (こんなの、ずるいよ……だって……)


文乃 (――好きにならないわけ、ないじゃない)


文乃 (……ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん)

文乃 (正々堂々、明日、ふたりに、ちゃんと言うね)



文乃 (わたしが、唯我くんのことが好きだって、ふたりに言うね)



文乃 (だから、今日だけは許して)

文乃 (ふたりから嫌われちゃうかもしれないけど……)

文乃 (今日、いま、このときだけは……)

518: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:09:10 ID:qnUp5uO.
文乃 「……ねえ、唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「わたし、初めてなんだ。こんな風に、男の子とふたりで、クリスマスを過ごすって」

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「い、いやいや、さっきまで俺の家族とお父さんと一緒だっただろ?」

文乃 「うん、そうだね。でも、今はふたりきりだよ?」

成幸 「いや、まぁ……それは、その通りだけど……」

文乃 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 「……ねえ、唯我くん。わたしが今、何を考えてるか、わかる?」

成幸 「えっ……?」

成幸 「そ、そんなの、わかるわけないだろ」

519: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:10:06 ID:qnUp5uO.
文乃 「……うん。そうだよね。成幸くんは成幸くんだもんね」

成幸 「……?」

文乃 「じゃあ、それが分かるようになるまで、女心の授業は続くよ、成幸くん」

成幸 「!? 女心が分かれば、お前が今何を考えてるかも分かるようになるのか……すごいな、女心の授業……」

文乃 「わたしの授業は半端を許さないからね。覚悟しておいてね」

成幸 「……ああ、分かってるよ。お前が単位をくれるまで、お前の授業を受けないとな」

成幸 「はぁ。単位修得まで、どれくらいかかることやら」

文乃 「そうだね。がんばらないとだよ、成幸くん」

文乃 「……高校を卒業しても、単位を与えられなかったら、補習は続くからね」

成幸 「うへぇ。女心って大変だな……」

成幸 「でもまぁ、お前が付き合ってくれるなら、がんばって補習を受けるとするよ」

文乃 「ふふ……」

クスッ

文乃 「今の、言質とったからね。成幸くん」

おわり

520: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:10:51 ID:qnUp5uO.
………………幕間1 「TOMODACHI」

文乃 「お、おう……」

文乃 「すごいセンスだね、水希ちゃん……」

文乃 「でかでかと 『TOMODACHI』 と刺繍されたエプロンとは……」


………………

水希 (古橋さん、プレゼント開けてくれたかなぁ。気に入ってくれたかなぁ)

水希 (ふふ……)

キラン

水希 (……まぁ、認めてあげないこともないですが、)

水希 (まずは清く正しく、お兄ちゃんのお友達から始めてもらわないとね……ふふふ……)

水希 「………………」

水希 (……来年のクリスマスプレゼント用に、『KOIBITOMIMAN』 エプロンも作っとこうかな)

521: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:11:30 ID:qnUp5uO.
………………幕間2 「オマケ」

零侍 「……ゆ、唯我さん?」

花枝 「ごめんなさいねぇ、古橋さん。外食に行くって話をしたら……」

葉月 「こんばんは! 文姉ちゃんのお父さん!」

和樹 「ついてきちゃいました!!」

花枝 「お母さんだけずるいって言われてしまって……」

零侍 「あ、いえ……構いませんよ。葉月さんと和樹くんにもお礼をしなければなりませんから」

零侍 「葉月さん、和樹くん、何が食べたい? 私が何でも食べさせてあげよう」

零侍 (……まぁ、落胆していないと言えばウソになるが)

花枝 「あら、良かったわね、葉月、和樹」

葉月 「うーん、うーん……」 和樹 「何がいいかな……」

零侍 「……うむ」

零侍 (唯我さんの嬉しそうな顔が見られただけで、良し)

零侍 (しかし、まぁ……) ハァ (唯我くんのニブさは、間違いなく母親譲りだな)

おわり

478: 深夜にお送りします 2019/01/04(金) 13:03:59 ID:pikOTF8Q
ちなイッチはコミケではどんな作品を書いてるの?

479: 深夜にお送りします 2019/01/04(金) 13:53:32 ID:UAb/649Q
今までどんなSS書いてたのかも知りたい

524: 深夜にお送りします 2019/01/06(日) 00:19:27 ID:qnUp5uO.
>>1です。

まず第一に、わたし自身がコミックス派なので、本誌の話を先に出すことがためらわれました。
(文乃さんの家出のときだけ誘惑に負けてジャンプを買ってしまいましたが)。
また、明示されてない好意に関しても本編に先んじて描くのもよくないと思いました。
ただ、思いついて、書いていると、勝手ながらとても面白いと思ってしまいました。
なので、言い訳がましい前置きをして投下させてもらいました。
申し訳ないことだと思います。

今後、こういうのは控えようと思います。が、自分で面白いと思ったら、また投下すると思います。
不快に思われた方がいたらすみません。もうしわけないです。


>>478
あまり匿名掲示板で明言するのも正しくないと思うのでジャンルだけ言いますが、「プリキュア」の小説です。

>>479
今で匿名掲示板で投下したのは主に「とある」と「プリキュア」のSSです。
ギャグが苦手なのでシリアスばかりです。



また投下します。

ぼくたちは勉強ができないSS ▶

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