ヒロイン「それじゃなに?アタシより唐揚げのほうがいいっていうわけ!?」俺「う、うん……」

2019年05月22日
ヒロイン「それじゃなに?アタシより唐揚げのほうがいいっていうわけ!?」俺「う、うん……」

1: VIPがお送りします 2016/02/06(土) 07:38:15.884 ID:SGH3tP3CM.net
ヒロイン「信じらんない!唐揚げよ!?ただのお惣菜の唐揚げよ!?バッカじゃないの!?
     だいたい何よ、『手からから揚げ出す能力』って……子供みたいなこと言ってんじゃないわよ……小学生じゃあるまいし……」

俺「そうは言うけど、実際に手のひらから唐揚げ出せるようになってるわけだし……
  それに衣はカリッとサクサクで肉はジューシィなんだからしょうがないだろ……
  味だって以前は普通の唐揚げしか出せなかったけど、最近はガーリック味も三回に一回は出せるようになったし……」

ヒロイン「ハァ!?唐揚げ食べたかったら買ってくればいいだけでしょ!?
     買えばいいじゃない!お総菜屋でもお弁当屋でも!オリジン弁当でもほっともっとでも!
     二千円もあれば唐揚げなんか好きなだけ買って食べられるでしょうが!!」

俺「いやでもタダで掌から唐揚げ出てくるって凄いじゃん……」

ヒロイン「タダ!?タダで唐揚げ出すとかそういう問題なわけ!?
     ああそう、ああそう!!(ダンッ!)そんなにタダで唐揚げが食べたいの!!
     そんなことならアタシが毎日唐揚げ作るわよ!朝!昼!晩!アンタの好きなときに!食べたいだけ!
     それでいいでしょ!? ……ちょっと、あんた何もぐもぐしてんのよ……」

俺「いや、唐揚げ……」モグモグ

ヒロイン「はぁぁぁあ!?アタシと話してる最中に唐揚げ食ってんじゃないわよ!!(ダンッ!)」

俺「お前がガミガミ怒るからお腹空いちゃったんだよ……危ないからテーブル叩くのやめろよ……」ジューシィー……(唐揚げ出現音)

ヒロイン「アタシのせいだっていうわけ!? アンタいい加減にしないと……!!
     ちょっと、アンタまた唐揚げ出したわよね……いい加減にしなさいよホント……」

俺「チッ、わかったよ……」

ヒロイン「なんなのよその態度……たかが唐揚げじゃない……ただの鶏の唐揚げよ……?
     そりゃ揚げたての唐揚げは美味しいかもしれないけど、でも所詮は唐揚げじゃない……
     アタシのことよりそんなものが大切だっていうの……? どうしてよ……? どうして……」

俺「君を傷付けるつもりじゃなかったんだ……でも、しょうがないんだよ……」ジューシィー……

ヒロイン「こんなことって……ひどいよ……どうして……
     あのデートは何だったの!? あの告白は何だったの!? 一緒に過ごした毎日は何だったのよォ!!
     アタシのこと好きだって言ってくれたじゃない!!愛してるって言ってくれたじゃない!!
     あの言葉は何だったのよぉ……? ……答えてよ!!ねぇ!答えてよぉぉっ!! ……うっうっ……」

俺「ごめん……」

ヒロイン「いやぁぁっ!!聞きたくない!!アタシはアンタに謝って欲しいんじゃないの!!」

俺「ごめん……」モグモグ

ヒロイン「……何よ、唐揚げ唐揚げって……ただ鶏肉に下味つけて粉つけて油でカラリと揚げただけじゃない……
     ……っ!!こんなものっ!!こんなものっ!!こうしてやるっ!!こうしてっ!!」バッ! グシャッグシャッ

俺「や、やめろ!!唐揚げに何をする!!やめろ!!やめっ……!!
  あ、ああ……こんなにぐちゃぐちゃに……砂だらけになっちゃった……もう食べられないよぉ……」

ヒロイン「フウッ、フウッ、ぜぇぜぇ……フン、いいザマね……」

4: VIPがお送りします 2016/02/06(土) 07:40:04.199 ID:SGH3tP3CM.net
俺「……」

ヒロイン「な、何よ、その目は……アンタが悪いんじゃない、唐揚げ唐揚げって……」

俺「……三秒ルール……」モグモグ

ヒロイン「なっ!?ちょ、ちょっとアンタなにやってんのよ!?
     やめなさいよ!!地面に落ちた唐揚げなんて食べられるわけないでしょ!!」

俺「……うう、じゃりじゃりする……」

ヒロイン「当たり前でしょ!!アンタなにやってんのよ、バッカじゃないの!?」

俺「だって、もったいないだろ……」

ヒロイン「……くっ、そんなにその唐揚げがいいってこと……?
     なによ……なんなのよ……どうしてアタシじゃダメなのよ……どうしてアタシのことを見てくれないのよ……」

俺「……君のそういうところが嫌いなんだ、それに……唐揚げ、出せないだろ……」ポツリ

ヒロイン「!!」

ヒロイン「……いいわ、出してやろうじゃない。アタシが唐揚げを出せばいいってことなら、やってやるわよ……」

俺「常人には無理だよ、これは俺のように『選ばれた者』だけが持つ能力で……」

ヒロイン「アンタは黙ってみてなさいよ!!やってみなけりゃわかんないでしょ!!
     ……出せるわよ、アタシにだって唐揚げの一つや二つ……出せるわよ……
     なんなら、ケンタッキーのパーティバレルも出してやるわよッ!!」

俺「やめろ!!そんなに無茶をすると手が高温の揚げ油で使い物にならなくなる!!手のひらが野口英世になるぞ!!
  それに、アゲパワーが暴走すれば、素人主婦が調子こいて圧力鍋で揚げようとして失敗したのと同じことになる!!
  ケンタッキーは専用の圧力釜があるから揚げられるんだ、お前には無理だ!!やめろ!!」

ヒロイン「いいから黙ってて!!……唐揚げに恋人を奪われるくらいなら、手が吹き飛ぶくらいなによ……!!」

8: VIPがお送りします 2016/02/06(土) 07:42:37.754 ID:SGH3tP3CM.net
ヒロイン(おねがい、こんなことで彼を失いたくないの……!!
     唐揚げの神様……!!カーネルサンダース……!!香田晋……!!
     アタシに、ほんの少しだけ力を貸して……!!)

ヒロイン「あがれ……あがれ……!!」カラアゲオイシクツクルナラ……モミモミ……モミモミ……

俺「うっ!? こ、この光は!?」

ヒロイン「揚がれええええーっ!!!!」

ジューシィーッ……(出現音) プシャアアアーッ

俺「!!」

ヒロイン「そ、そんな……!? 変な汁しか出ないなんて……
     確かに、確かにジューシィな手応えがあったのに……」

俺「ペロッこれは……!!」

ヒロイン「もうおしまい……なにもかも……」

俺「ヒロインちゃん、もういいんだ。俺が悪かったよ」

ヒロイン「えっ、だってアタシは唐揚げを出せなかったのに……」

俺「いいんだ、いいんだよ。何も言わずにこの唐揚げを食べてみて」

ヒロイン「サクッとした衣の歯触り、ジューシィな鶏肉の味が口いっぱいにひろがる……
     ……なのに、少しもしつこくない、油っぽくない……むしろ爽やかな酸味がする……これって……」

俺「レモン汁だよ、君が出したんだ。唐揚げもレモン汁もジューシィな存在だからね。何も不思議なことじゃない。
  君が感じた手応えは、きっとレモンを絞る手応えだったんだろう」

ヒロイン「ウソ……アタシが……」

俺「唐揚げは確かに美味しい、揚げたてならなおさら。
  でも、どんなに美味しいから揚げでも、やっぱり揚げ物だから、どうしても油っぽくなって胃がもたれてしまう。
  そんな唐揚げをサッパリとさせるためには、レモン汁をかけることも大切なんだと思う……君のレモン汁を……
  レモン汁を勝手に掛ける奴は嫌われるけど、君になら勝手に唐揚げにレモン汁を掛けられても許せると思う……
  ……俺たち、やり直せないかな?」

ヒロイン「俺くん!!」ダキッ

俺「わっよせレモン汁が目に染みるよ」

ヒロイン「そうよね、こんなに涙が出てるのはレモン汁のせいよね……」

この二人が夫婦となり、後に全国規模の唐揚げチェーン店を出すことになるのだが
それはまた別の話である……

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