救急隊員「急患だと!? 救急車出撃ィィィィィ!!!」

2019年06月14日
救急隊員「急患だと!? 救急車出撃ィィィィィ!!!」

1: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:11:06 ID:hHk8pSzo
<救急病院>

同僚「おーい、近くの町で急患が出たらしい! 男性がブッ倒れてるんだとよ!」

救急隊員「急患だと!? 救急車出撃ィィィィィ!!!」

同僚「おいおい、そう焦んな。最近はイタズラ通報も多いんだからよ」

同僚「ま、リラックスしてのんびり安全運転で行こうや」

救急隊員「バカヤロウ! いかなる時も全速で出撃すんのが救急車の心意気ってもんだ!」

2: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:15:49 ID:hHk8pSzo
救急隊員「エンジン始動!」キュルルル…

救急隊員「アクセル全開ィ!!!」グンッ

救急隊員「いざ発車ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

ブロロロロロロ……!





同僚「あのバカ……俺たちを乗せないで行っちまいやがった」

3: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:18:58 ID:hHk8pSzo
ブロロロロ……!

救急隊員「飛ばすぜ、飛ばすぜ、飛ばすぜェェェェェ!!!」

救急隊員「――ん」

救急隊員(ったく、危ねェな。今日は一般車どもがどきやがらねェ……どうなってやがる)

救急隊員(あ、そういやサイレン鳴らすの忘れてた)

救急隊員(ついでにいうと俺の愛車はサイレンブッ壊れてたっけ!)

救急隊員「じゃ、いつものように窓を開けて――」ウイーン

4: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:21:14 ID:hHk8pSzo
救急隊員「大きく息を吸って……」スゥゥ…

救急隊員「ピィィィィポォォォォォォ!!!」

救急隊員「ピィィィィィィポォォォォォォォォ!!!」

救急隊員「ピィィィィィィィィプォォォォォォォォォ!!!」

5: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:25:14 ID:hHk8pSzo
運転手A「おっ、この声はアイツか」スイッ



運転手B「救急車だ、道をゆずらないとな」スイッ



運転手C「いつも思うけど、本物のサイレンより声がデカイってどういうことなんだ……」スイッ

6: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:27:00 ID:hHk8pSzo
ブロロロロロロ……!

救急隊員「よしよし、ちゃんと道ができやがったぜ」

救急隊員「まるでモーセが起こした奇跡みたくなってやがる」

救急隊員「ピィィィィィッポォォォォォォォォォォウ!!!!!」ギャルルッ



ブロロロロロロロロ……!

7: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:30:22 ID:hHk8pSzo
ブロロロロロロ……!

救急隊員「あん? おめえらは――」



暴走族A「チィッス!」

暴走族B「お久しぶりっす!」

暴走族C「相変わらずの暴走っぷりっすね!」



救急隊員「バカヤロウ、これは暴走じゃねェよ! 人助けだ!」

8: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:34:57 ID:hHk8pSzo
暴走族A「しっかし信じられないっすよ、アンタが元ゾクでも元ヤンでもないなんて」

暴走族A「もしアンタがゾクだったら、伝説の一つや二つ作ってたでしょうに」



救急隊員「へっ、俺ァガキの頃から将来は救急車の運転手になるって決めてたんだ!」

救急隊員「ゾクなんつうもんに入る余裕なんざなかったよ!」

救急隊員「事故って俺の仕事増やすんじゃねェぞ、クソガキども! んじゃな!」

ブロロロロロ……!



暴走族A「……かっこいい」

暴走族B「真の漢ってのは、きっとああいう人のことをいうんだろうな」

暴走族C「ああ、そうに違いないぜ」

9: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:38:10 ID:hHk8pSzo
<現場>

患者「う、ううう……」ハァハァ…

レーサー「しっかりして下さい! 先ほど救急車を呼びましたから!」

作曲家「この方の生命のリズムがどんどん弱まっています……ダメそうですね」

青年「いいなぁ……死ねるなんて羨ましいなぁ……」



ちなみにこの四人、全くの赤の他人である。

10: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:40:39 ID:hHk8pSzo
ギャリリリィ!!!

救急隊員「着いたぜ! 患者はどいつだ!」ガチャッ



患者「息が……苦しい……」ハァハァ…

レーサー「来て下さいましたか!」

作曲家「おおっ、荒々しいリズムで登場しましたね」

青年「あーあ、どうせ助けられっこないのに、わざわざ来ちゃって……」



救急隊員「ええい、めんどくせえ! 全員車に乗りやがれ!」

12: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:45:00 ID:hHk8pSzo
救急隊員「おめぇら、ブッ飛ばすから舌噛むんじゃねェぞ!」

救急隊員「ピィィィィィポォォォォォォォォ!!!」

救急隊員「ピィィィィィィィィポォォォォォォォォ!!!」

ブロロロロロロ……!




青年「うわぁっ! 速すぎじゃないですか!?」ガクンッ

作曲家「うおおおおお!? なんという独特のテンポ!」ヨロッ

レーサー「このド迫力……! ボクのF1マシンにも負けちゃいない……!」

患者「いてっ」ゴンッ

13: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:48:52 ID:hHk8pSzo
救急隊員「ピィィィィィポォォォォォォォォ!!!」

救急隊員「ピィィィィィィィィポォォォォォォォォ!!!」



作曲家(おおお……この旋律……! この猛々しさ……! こ、これだ……!)

作曲家(私は長らく活動を停止していたが、ようやく新曲を作ることができそうだ!)

作曲家(ありがとう運転手さん! おかげでスランプを脱しましたよ!)



患者「あだっ」ガンッ

14: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:51:27 ID:hHk8pSzo
救急隊員「ピィィィィィィポォォォォォォォ!!!」ギャルルッ



レーサー(ふむ……粗削りだが、すさまじいテクニックだ……!)

レーサー(今度のグランプリ、やはり世界には勝てないとすでに諦めていたが……)

レーサー(ボクのテクニックにこの人のテクニックを取り入れれば、優勝も夢ではない……!)



患者「あうっ」ガツッ

15: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:56:23 ID:hHk8pSzo
救急隊員「ピィィィィィィィィィィポォォォォォォォォォォォウ!!!」ブォンブォンブォン



青年「ひぃぃぃぃぃっ! スピードメーター振り切れてるじゃないかぁ!」

青年「こんな怖い目にあったのは生まれて初めてだぁぁぁぁぁ!」

青年「世の中は下らないって決めつけて、冷めたことばかりいってごめんなさい!」

青年「もう死にたいなんていいません! だから降ろしてぇぇぇ!」



患者「きゃんっ」ゴッ

16: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 20:59:09 ID:hHk8pSzo
<救急病院>

ギャルルルゥ!

救急隊員「到着ゥ!」ガチャッ



同僚「相変わらず早いな! 往復で5分かかってねえぞ! ――で、患者は?」



救急隊員「めんどくせェから、通報現場にいた奴らを全員乗せてきた!」

同僚「ったく、しょうがねーなぁ……」

17: 深夜にお送りします 2016/04/22(金) 21:03:59 ID:hHk8pSzo
患者「全身あちこちぶつけてたら、打ちどころが良すぎて、すっかり回復しました!」シャキーン

作曲家「おおお……新しいメロディが次々に生まれてくる……!」パァァ…

レーサー「今度のグランプリ、必ず優勝してみせます!」ビシッ

青年「ボクは生きてる……! 生きてるってなんて素晴らしいんだ!」ジーン…



同僚「みんな元気じゃないか。やっぱりイタズラだったのか」



救急隊員「イタズラでよかったぜ……。急患なんてのは、いねぇに越したことねぇからな」







― おわり ―

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