#20 「未来へ託して」#番外編:神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」

2019年02月08日
#20 「未来へ託して」#番外編:神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」

#20 「未来へ託して」
神様が過去に神宮地下へ封印した物、それは国を崩壊させる力を持っていた・・・



264: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:47:07 ID:RXcKkTRQ
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【#20】



── 神宮・授与所


A子「暇だね~」

同僚巫女「今日は本殿の参拝は出来ないからね」

A子「それでか~」グテッ

巫女「A子ちゃん・・・ 奉務中なんだし、もう少ししゃんとしないとダメだよ?」

A子「だって、お客さん少ないし~」

巫女「参拝者ね」

A子「今日は売り上げヤバそうだね~」

巫女「あんまりそういう言葉は使わない方が良いと思うよ?」

265: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:48:55 ID:RXcKkTRQ

A子「どうしよう、駅前までお守り売り歩いてこいって言われたら」

巫女「神ちゃんさんじゃあるまいし・・・」

A子「・・・神ちゃんかぁ~」ボー


巫女「そう言えば、A子ちゃんって神ちゃんさんと仲良いよね」

A子「あ~ 私と神ちゃんは深い精神の所で繋がっているのです!」フンスッ

巫女「はいはい。 でも、神ちゃんさんは・・・ その・・・」

A子「神さま?」

巫女「」コクッ

A子「そんなの気にする必要ないって」

巫女「ダメだよ。 神ちゃんさんは神であることを隠しているみたいだけど、やっぱり接し方も一線は置かないと失礼じゃ?」

A子「別に神さまは偉くないんだし」

巫女「それは巫女として超えちゃいけない発言じゃ・・・ せめて先輩として敬わないといけないと思うけど」

266: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:50:13 ID:RXcKkTRQ

A子「え~ イビキかいて腹出して寝るのに?」

巫女「・・・・・・」

A子「金欠で神宮菜園から野菜盗んで食べてるのに?」

巫女「・・・それはA子ちゃんもじゃ」

A子「お給料14万しかもらえない神さまってどうなの?」

巫女「14万!? 私より低いの!?」

A子「ちょっと待って。 私も14万なんだけど」

巫女「・・・・・・」

A子「ねぇ、巫女ちゃんは幾らもらってるの?」ガシッ

巫女「ちょ・・・ 私もそんなに変わら・・・ そんなに揺らさないで! A子ちゃん目が怖い!」ユサユサ

267: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:51:32 ID:RXcKkTRQ

A子「はぁ~ 私はこんなにも立派な巫女なのに。 神宮のミス巫女だよ?」

巫女「その・・・ えっと・・・(そのミスは別の意味って・・・ 言わないでおいた方が良いかな)」


A子「私、やっぱり巫女に向いてないのかなぁ・・・」

巫女「A子ちゃんは神宮の巫女に憧れて入ったんじゃないの?」

A子「違うよ。 神ちゃんに進められて」

巫女「え!? どうして神ちゃんさんがA子ちゃんを?」

A子「・・・・・・。 そういえば神ちゃんに初めて会ったのも丁度この位の時期だったなぁ」ボー

268: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:52:13 ID:RXcKkTRQ

──
────
──────




── 4年前


神様「ねぇ、暇なら神宮で巫女やらない?」

A子「やる」




──────
────
──

269: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:53:21 ID:RXcKkTRQ


巫女「・・・・・・」

A子「今日は良い天気だよね~」

巫女「もしかして話すの面倒になった?」

A子「・・・うん」


巫女「それより、A子ちゃんって今日は午後から舞の奉納入ってなかったっけ?」

A子「え?」

巫女「確か祭儀神様の願掛け祈祷の・・・」

A子「やべっ! 忘れてた! 今何時?」

巫女「11時50分。 早く行った方が良いかも」

A子「うわ~! 行ってくる~ 今日も昼抜きだよ~」タッタッタッ


巫女「・・・大丈夫かなぁ」

270: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:54:28 ID:RXcKkTRQ


─── 奥社近くの森


A子「ごめ~ん、遅れた」タッタッタッ

祭儀神「おー、ちゃんと来たか。 忘れてるかと思った」

A子「嫌だな~ 私がおっちゃんとの約束を忘れるわけないじゃんよー」

祭儀神「本当かよ・・・」


A子「それより私は何すれば良い?」

祭儀神「A子ちゃんは、右側の木にこれを取り付けていって欲しい」

A子「何? このマッチ箱みたいなやつ」

祭儀神「俺に聞くなよ。 B夫に聞けよ」

A子「聞いたけど訳分かんなかったんだもん」

祭儀神「あいつに聞いて理解できない事を俺に聞くなってーの・・・」

271: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:55:23 ID:RXcKkTRQ

A子「木に巻き付ければ良いの?」

祭儀神「あぁ、地面すれすれの所が良いらしい」

A子「ふーん、じゃ行ってくる」

祭儀神「まてまて、この段ボールに入っている分全部だ」

A子「うそ! 超いっぱいあるじゃん!」

祭儀神「超いっぱいあるんだよ。 だから本殿の参拝を止めてまで時間作ったんだろーが」

A子「そっか。 これは時間かかるね~」

祭儀神「ま、緊急事態だしな」チラッ

A子「・・・・・・」


祭儀神「決心はついたか?」

A子「まだ。 そんなのつく訳ないじゃんよ・・・」

祭儀神「あー まぁ、そうだよな・・・」

272: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:56:45 ID:RXcKkTRQ

──
────
──────



─── 数日前・喫茶ねこまた


神様「2人とも神にならない?」

神使「またそんな事を・・・」

A子「丁重におとこわりします」

神様「いや、いつものおふざけな感じじゃなくて今回は真剣なんだけど」

神使「いつもと同じノリじゃないですか」

A子「私は24歳になったら神宮を定年、翌年にIT社長と結婚してスカイチュリーの最上階に住む予定だから」

神使「スカイチュリーには住めないと思いますが・・・」

神様「神にならずにこのままいってもA子ちゃんは結婚できないよ?」

A子「んがっ!」

273: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:57:39 ID:RXcKkTRQ

神様「だから神になってよ~ お願い」

A子「神になったら結婚できる?」

神様「・・・・・・」

A子「何とか言ってよ~」


神使「何か理由があるんですか?」

神様「まぁ・・・」


ガチャッ


一同「?」クルッ

猫神「ハロ~」

神様「猫神か・・・ 何だよ、今大事な話してんだからあっち行ってろって」シッシッ

274: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 01:58:49 ID:RXcKkTRQ

猫神「第零柱絡み~?」

神様「・・・・・・」

神使「第零柱?」

A子「チュウ?」

神様「お前、何か知ってるのか?」

猫神「ん~ もう一人の神ちゃんの件とか~?」

神使「もう一人って、神宮の奥社にいる内宮神様の事ですか?」

A子「内宮神ちゃんがどうかしたの?」

神様「・・・・・・」


猫神「か~みちゃん」

神様「ハァ~・・・ レセプションルームに皆を集めてくれ。 話がある」

猫神「オッケ~」

277: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:28:47 ID:RXcKkTRQ


─── 喫茶ねこまた・レセプションルーム


祭儀神「話って何だ?」

A子「おっちゃんがキャバクラに金をつぎ込んでる件についてだと思う」

祭儀神「!? お、俺は月5万までしか使ってないからソフトな方だと思うぞ」

猫娘「十分使ってますニャ。 ニャ」


神使「神様、何かマズい事でも起きているんですか?」

神様「ん~ マズいっちゃマズいけど」

猫神「今までで一番マズいよね~」

一同「え!?」

神様「お前は少し黙ってろや」

猫神「ごめんごめ~ん」

278: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:31:07 ID:RXcKkTRQ

猫娘「まさか! 日本の危機ですかニャ!? ニャ」

A子「流石にそれはないって。 そんなもの私達に話しても仕方ないし」

神様「いや・・・ あの~・・・」

神使「まさか・・・ 神様・・・」

神様「そのレベルのお話しでございます」

一同「!?」

神様「って言っても、A子ちゃんと犬ころの協力があれば解決したも同然」

神使「私とA子ちゃんでそんな危機をどうにか出来るとは思えないのですが・・・」

A子「確かに私は神宮きっての可愛い巫女で、巫女服が似合うね! ってよく言われるし、立派な巫女だと思うけど」

神使「神様の方が可愛くて巫女服が似合います」

A「お、おふっ」

一同「・・・・・・」

神様「い、今その話は置いておこう・・・///」

神使「あっ! す・・・ すいません///」

A子「くそっ、惚気やがって・・・」ボソッ

279: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:32:15 ID:RXcKkTRQ

神使「えっと・・・ 猫神様が第零柱がどうとか言っていた気がするのですが関係があるのですか?」

神様「長官くん」

長官「何かな?」

神様「神宮の動きについて話してくれる?」

長官「・・・動きというのは?」

神様「土地の件だよ」

長官「・・・・・・。まだ未確認情報だが、土地の売却計画が進んでいるようだ」

神使「土地って、まさか神宮の土地ですか?」

長官「あぁ。 奥社近辺の土地だと思う」

A子「奥社って内宮神ちゃんがいる場所じゃん」

祭儀神「おいおい、そんな話聞いてないぞ?」

長官「私も正式には聞いていないが、宮司会で話し合われているようだ」

280: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:33:41 ID:RXcKkTRQ

神使「確か奥社は大昔に龍を封印していると伺っておりますが」

A子「龍? 何それ」

猫娘「そんなもの本当にいるんですかニャ? ニャ」

祭儀神「俺も長いこと生きているが見たことはないな」

長官「当時の人達にとっては迷信も奇跡も現実と区別が付かなかったからね」


神様「・・・・・・」


神使「神様?」

神様「龍はいた。 いや龍じゃないかも知れないけど・・・」

一同「はい?」

281: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:36:13 ID:RXcKkTRQ

祭儀神「おいおい、本当かよ」

神様「私にもよく分からないんだ。 でも何かがいた・・・ いや、あった」

神使「どういう事ですか?」

猫神「昔ね~ 大勢の人があの場所で亡くなったんだよ~ 私は当時出雲にいたから知らないんだけど~」

神様「亡くなった者は皆、青い龍を見たと言っていた」

一同「・・・・・・」

A子「じゃぁ、あの場所には本当に何かが封印されているって事?」

神様「」コクッ

B夫「亡くなった人だけだ見えた青い龍・・・」

神様「正体は全く分からなかった。 私と一緒にいた者も龍が見えたと言った後に・・・」

神使「それを封印しているのが第零柱という事ですか?」

神様「そう」

祭儀神「それは俺も初耳だな」

神様「零柱に関して知っているのは私と猫神、あとは凄爺だけだ。 神の中でもトップシークレット扱いだし」

282: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:36:54 ID:RXcKkTRQ

長官「もしかして、神宮はそれに気付いているのかな?」

神様「たぶん。 タイミングが良すぎる」

神使「タイミング?」

神様「私と内宮神との意識共有のリンクが切れた」

A子「内宮神ちゃんと!?」

神使「ちょっと待って下さい。 それって・・・ 幼女神さまと同じじゃ・・・」

神様「あぁ。 今の私と内宮神は別者だ」

神使「・・・・・・」

283: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:39:20 ID:RXcKkTRQ

祭儀神「一つ聞いても良いか?」

神様「なに?」

祭儀神「四柱結界と、その第零柱とは関係あるのか?」

猫神「四柱結界は日本の地下に溜る神力放出を抑制する役割がメインだけど~」

神様「他には、飽和神力を零柱に送って結界維持の強化の役割も担っている」

祭儀神「なるほどな・・・」

神使「それで内宮神様が常に奥社にいると」

神様「そう言う事」

長官「ちょっと待った。 それほど大きな神力結界なら管理神も神力を使う必要があるんじゃないか?」

祭儀神「そうだな。 ・・・まさか神ちゃんが自分の神力を封印している理由って・・・」

神様「いや、ほとんどは内宮神の神力だ。 私は向こうの神力が足りなくなった時にたまに渡す程度」

神使「いざという時のために神力が使えるように貯めていたのですか・・・」

猫神「神を作るため、封印を維持するため・・・ 両方をこなすとなると結構な神力が必要だからね~」

284: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:40:33 ID:RXcKkTRQ

神様「簡単に説明するとこんな状況。 以上を踏まえて、皆に協力をお願いしたい」

長官「そんな秘密を話さざるを得ない程までに緊迫した状況ということだね」

神様「」コクッ


B夫「オッケ。 俺がすべきことは土地の売却の進行をハッキングで調べればいい訳ね」

神様「もう一つ、封印した物の正体を知りたい」

B夫「それはハイレベル」

神様「今の技術ならもしかしたら正体が分かるかも・・・」

B夫「・・・分かった。 両方とも速攻で調べる」

神様「長官君達は、いざという時のために他の神達に協力を取り付けておいてもらいたい」

長官「お安いご用だ」

285: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:41:50 ID:RXcKkTRQ

A子「ねぇ、それと私が神になる事とどういう関係があるの?」

神様「それは~・・・」

A子「まさか! 私が生け贄の巫女として龍の怒りを静めるとか!?」

祭儀神「A子ちゃん、話聞いてたのか・・・?」

神様「この先、正直何が起こるか分からない」

A子「マジですか」

神様「万が一・・・ 封印が解かれて再封印を行う必要があった場合・・・ 神を作るために必要な神力が溜るまで時間が必要だ」

A子「どのくらい?」

神様「A子ちゃんに3回位生まれ変わってもらわないといけない位」

A子「そんなに!?」

286: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/13(日) 23:42:26 ID:RXcKkTRQ

神様「だから今、二人を神にしたい」

神使「・・・・・・」


A子「神使さんが神になるのは分かるけど、何で私もなの? やっぱり生け贄?」

神様「A子ちゃんを神にしたい理由は・・・」

A子「理由は?」



神様「私が認めた人間だから」ニコッ



──────
────
──

290: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:39:19 ID:OBRMEeiE


─── 奥社近辺の森


祭儀神「よしと。 これで全部終わったな」

A子「ちかれた~」グテッ

祭儀神「予定より早く終わったな」

A子「おっちゃんが、1個設置するごとに休憩なんかしなければもっと早く終わったと思います!」

祭儀神「おれも年なんだよ。 少しは大目に見てくれよ」

A子「私100個も付けたんだよ? おっちゃんは30個しか付けてないじゃん!」

祭儀神「あとでお供え物分けてやるから」

A子「マジで!?」

祭儀神「さっき高級和牛肉のお供えがあったから」

A子「よっしゃー!! おっちゃん偉い!」グッ

祭儀神「そりゃどうも」

A子「私は一生おっちゃん派だよ」

291: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:40:07 ID:OBRMEeiE

祭儀神「ふふ・・・ ふはははっ!」

A子「ちょとどうしたの?」

祭儀神「いやいや、すまない。 おかしくてな」

A子「頭が?」

祭儀神「違うわ。 俺は神宮の神だ」

A子「知ってる」

祭儀神「しかも神の中でも最高位の祭儀神」

A子「最高位なんだ。 はじめて聞いた」

祭儀神「そんな俺に自然に接してきた人間は、A子ちゃんが初めてだ」

A子「?」

祭儀神「神宮歴代の大宮司達でさえ、俺の前では頭を下げ常に一歩引いてんだぞ?」

A子「そうなんだ」

292: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:41:26 ID:OBRMEeiE

祭儀神「それに引き換え、A子ちゃんはただの巫女。 今まで俺はここの巫女とまともに会話すらした事もない」

A子「私はただの巫女じゃありません~ 神宮のミス巫女です~」ベー

祭儀神「そうかそうか、それはすまないな」ペコリ

A子「分かればよろしい」

祭儀神「神ちゃんがA子ちゃんをどうしても神にしたいのはよく分かる」

A子「どういうこと?」

祭儀神「A子ちゃんは、神ちゃんと同じなんだよ」

A子「私が?」

祭儀神「あぁ、きっと神ちゃんのような神になれる」

A子「それって月給14万のダメ神になるって事?」

祭儀神「はははっ! そうだな、ダメ神だ。 神ちゃん以上のダメ神になれる素質がある」

293: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:42:27 ID:OBRMEeiE

A子「ちょっとおっちゃん、裏まで顔貸してくれる?」

祭儀神「あいにく、俺はこれからキャバクラだ」

A子「このおっさん・・・」

祭儀神「じゃ、戻るか」

A子「あ~ 私ちょっと奥社に行ってくる」

祭儀神「内宮神か?」

A子「うん」

祭儀神「分かった」

A子「じゃ、また後で」タッタッタッ

祭儀神「気をつけろよ」

A子「あいよー」


祭儀神「・・・・・・。 さて、急いで出かけるか」

294: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:43:22 ID:OBRMEeiE


─── 神宮・奥社


コンコン


 神聖な社に何用か? 合い言葉を述べよ


A子「知らない」


ギー


内宮神「A子ちゃん」

A子「ちょっとお邪魔しても良い?」

内宮神「もちろん。 上がって」

A子「おじゃましま~す」

295: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:44:42 ID:OBRMEeiE

内宮神「どったの? お昼は午前中に置いていったお供えをもらったけど」

A子「内宮神ちゃん、神ちゃんと意識が別れたんだって?」

内宮神「・・・あっちから聞いたの?」

A子「うん」

内宮神「そう・・・ 数日前にね」

A子「内宮神ちゃんはこれからどうするの?」

内宮神「私は・・・ 私のやるべき事をやるだけ」

A子「ずっとここに居るの?」

内宮神「封印の事は聞いた?」

A子「うん。 龍だか何だかよく分からない物を封印してるって」

内宮神「この結界だけは絶対に維持しないといけない。 それが私の役目」

A子「でも・・・」

296: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/15(火) 01:45:50 ID:OBRMEeiE

内宮神「ここら辺の土地を売り払おうとしているんだって?」

A子「うん」

内宮神「大丈夫。 絶対にそうはならないから」

A子「そうなの?」

内宮神「その為に神ちゃんが策を練っているんでしょ?」

A子「でも、流石にどうなるか・・・」

内宮神「絶対何とかなる。 今までだって守り通してきたんだから」

A子「内宮神ちゃん・・・」

内宮神「この場所が・・・ いや神宮自体が取り壊しになるって話が今まで何度もあったんだ」

A子「え?」

内宮神「そんな危機が何度も何度もあって・・・ でも、ここは何千年も無事にこの場所にある。 今回だってきっと・・・」



内宮神「だから、私は・・・ 神ちゃんを信じる」

A子「・・・・・・」

299: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:25:31 ID:EMPt/aag


─── 喫茶ねこまた・サーバールーム


ガチャッ


猫神「ハロ~」

B夫「猫神様いらっしゃい」

猫神「祭儀神君から機械の設置が終わったって電話があったよ~」

B夫「オッケ」

猫神「何を取り付けたの~?」

B夫「奥社の下に何が埋まっているのかを調べるための測定器」

猫神「でも封印されているから分からないんじゃないの~?」

B夫「それは計測してみないと。 たぶん10分位で結果が出る」

猫神「ふ~ん。 で、売却の件の方は何か分かった~?」

300: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:26:50 ID:EMPt/aag

B夫「これ見て」カタカタ

猫神「メール? ハッキングしたの?」

B夫「宮司会は議事録自体がないし、この件に関する書類は手書き保管されているからさすがに取り出せない」

猫神「じゃぁこのメールは~?」

B夫「最終的な文章を作るためには下っ端が各所とやり取りをして詰めていく」

猫神「あ~ なるほど~ 最終文章は分からなくても、直前までのやり取りが分かれば良いって事だね~」

B夫「ザッツライト。 このメールの最後、“それでは、こちらの契約草案で最終とさせていただきます”って書いてある」

猫神「さすがB夫くん。 怖いね~」

B夫「その言葉、全反射でお返しします」

猫神「で? メールの中身は~?」

B夫「今開く」カタカタ

猫神「差出人は~ 神宮の新規開拓室?」

B夫「そう。 相手は、日本新燃準備会社」

猫神「聞いたことない所だね~? B夫君知ってる~?」

B夫「・・・・・・」

301: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:28:17 ID:EMPt/aag


ピピピピ


猫神「何の音~?」キョロキョロ

B夫「簡易測定が終わった。 えーと・・・」

猫神「何これ? 凄い文字の羅列だね~ Pbって文字がいっぱいあるけど~」

B夫「・・・やっぱり」

猫神「?」


B夫「猫神様、すぐに神ちゃんのところへ行きましょう」

302: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:29:26 ID:EMPt/aag


─── 神宮近くの裏通り


神様「いや~ 久々の伊勢だね」モグモグ

神使「いつの間に赤福なんか買ったんですか・・・」

神様「お前が駅でおしっこ行っているとき」

神使「大きい声でそう言う事は言わないで下さい///」

神様「お前が聞いたんじゃねぇかよ!」ゲシッ


神使「それより・・・ 神宮に行く道とは違いますね」

神様「考えなしで敵地に乗り込むほど私は愚かじゃないのだよ」

神使「ではどちらへ?」

神様「あった。 ここ」

神使「雑居ビル・・・ のようですが」

303: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:30:51 ID:EMPt/aag

神様「この汚らしい建物は、なんと! 神様機構の本庁舎なのだ!」

神使「え・・・ この壁のコンクリが所々剥がれ落ちている建物がですか?」

神様「うん。 通称ボロビル」

神使「・・・・・・。 表札に“田中”って書いてありますが」

神様「神様機構なんて看板出せるわけないだろ」

神使「それはそうですが・・・ なんで田中なんです?」

神様「ちなみに両隣の建物も機構の持ち物。 中はスッカラカンだけど」

神使「長官さんはこんな所で仕事をしていたのですか・・・」

神様「長官君は神宮にいる事が多いし、ほとんど倉庫代わりだね。 普段は誰もいないはず」

神使「なんか勿体ないですね」

神様「しばらくはここが私達の前線基地」

神使「神宮まで徒歩で10分といった場所ですね」

神様「専用の地下通路があるから5分で着く」

神使「あっ、そういう所は流石ですね」

304: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/16(水) 00:31:59 ID:EMPt/aag


prrr prrr


神様「?」ゴソゴソ

神使「メールですか?」

神様「猫神だ。 B夫と猫娘を連れてこっちに来るって」

神使「随分と急ですね。 何か分かったんでしょうか?」

神様「らしいな。 明日から早速行動開始だな」

神使「きちんとした作戦を立てて下さいね?」

神様「へいへい」テクテク


神使「・・・・・・」

307: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 00:56:13 ID:QRRK9RNQ


─── 翌日・神様機構本庁舎(ボロビル)


猫神「この建物まだあったんだねぇ~」

長官「私もボロビルに来たのは久しぶりだ」

神使「本当にボロビルと言うのですね・・・」


神様「あれ? 祭儀神は?」キョロキョロ

A子「なんか出かけてるみたい。 昨日キャバクラに行くって出たきり戻ってない」


B夫「時間も惜しいし始めよう」

神様「おっ、B夫やる気だねぇ」

猫神「悠長な事を言っていられない状況だしねぇ~」

神様「聞きましょうか」

308: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 00:58:36 ID:QRRK9RNQ

B夫「まずは封印されているものについて」

神使「何か分かったのですか!?」

B夫「取り付けてもらった測定器が奥社近辺で大量の鉛を検出した」

神様「なまり?」

B夫「そう、通常では考えられない量」

神使「どういう事です?」

B夫「過去にこの場所で鉛が大量に生成される事象が起こっていたと考えられる」

A子「鉛ってどうやったら出来るの?」

B夫「方法は色々あるけど・・・ 他に検出した物質と合わせて推察するに、ある物質が核分裂を起こした後に出来たと考えられる」

神使「核分裂!?」

309: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 00:59:51 ID:QRRK9RNQ

B夫「単刀直入に言う。 高純度のウランが大量に地下にあると思われる」

一同「ウラン!?」

神使「それって原子炉とかに使われる燃料ですよね?」

B夫「ザッツライト」

長官「なんでそんな物が日本に?」

B夫「ウラン自体は結構どこにでも微量ながらある。 日本でもいくつか採掘できる場所もあるし」

長官「これは驚いたな」

神使「でも仮にウランだとしたら、龍というのは一体・・・」

B夫「高速の放射線粒子が物質と相互作用するときに青く光る現象がある。 もちろん核分裂時にも起こる」

神使「青く・・・ まさかその光が!?」

310: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 01:00:58 ID:QRRK9RNQ

B夫「目視できる程では無いけど、目や頭部内で反応が起こると青く光ったと感じるという報告がある」

神使「それが青い龍の正体・・・」

B夫「正確にはチェレンコフ効果」

A子「私、感じた事ないよ?」

B夫「これを感じたらまず助からない」

A子「何それ怖い!」


神使「仮に、今結界を解いた場合どうなるんです?」

B夫「推定埋蔵量からすると結界解除と同時に核分裂の暴走が始まって一瞬で一帯が吹き飛ぶ」

神使「一帯というのはどのくらいの規模です?」

B夫「日本はもう住めないかもね」

一同「!?」

311: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 01:02:10 ID:QRRK9RNQ

神使「しかし、当時はそこまでにはなっていなかったのでは?」

B夫「当時は鉱物が核崩壊をある程度抑制していたと考えられる」

神使「今は違うんですか?」

B夫「地殻の変動で奥社近辺に地下水が流れてる。 しかもかなりの量」

A子「神宮菜園も地下から水汲んでるって言ってた」

神使「それが何か問題でも?」

B夫「水が核分裂のスピードを速める。 この辺を掘ったら水がウランに浸かって間違いなく暴走する」

神使「ちょっと想像を超えた事態ですね・・・」

猫神「もう一つマズい事があるんだよね~」

長官「まだあるのかね・・・」

312: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 01:03:30 ID:QRRK9RNQ

B夫「土地の売却に関して」

神使「ウランの事を話せば神宮も思いとどまるのでは?」

B夫「逆。 神宮はそのウランを採掘しようとしてる」

一同「は!?」

B夫「あの土地を取得しようとしているのは“日本新燃準備会社”という所」

A子「何その変な名前の会社。 センスないね」

B夫「1年前にインターナショナルエクスプロレーションという資源開発の世界的企業と合弁で設立された会社」

神使「合弁?」

B夫「そう、筆頭株主は神宮土地開発財団」

長官「神宮? どういう事かね?」

B夫「神宮が神宮の出資した会社に土地を売り払うって事」

神使「なるほど・・・ つまり営利事業が出来ない神宮のダミー会社という事ですか?」

B夫「ザッツライト。 神宮も地下にウランが埋まっている事に気付いている」

313: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/17(木) 01:05:19 ID:QRRK9RNQ

長官「しかし、封印を解いたら暴走するようなものを採掘するだなんて無理だろう」

B夫「ウランは時間経過と共に減衰していく。 通常の計算では発掘には問題ないという結果になる」

神使「しかし、話せば分かってもらえるのでは?」

B夫「相手は世界的な資源開発会社。 結界で自然界から隔離状態で維持されているなんて信じるわけない」

長官「至急契約の中止を進めよう」

猫神「それが~」

B夫「契約はすでに終了して売買契約が締結されている」

長官「なっ!」

B夫「しかも、発掘作業が来週から始まる」

神使「そんな・・・」

神様「・・・・・・」


長官「神宮は神が不要な存在になっているようだな・・・」ハァ

318: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:26:13 ID:IgWVRr3Y


神使「神様、どうしましょう・・・」

神様「すまない」

神使「神様・・・」

神様「ちんぷんかんぷんで何を話しているのか全く分からない」


一同「」ガクッ


神様「でも、一つだけ・・・」

一同「?」

319: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:29:02 ID:IgWVRr3Y

神様「リンクが切れる直前、内宮神は“この結界は私が守るから気にするな”って言ったんだ」

一同「・・・・・・」

神様「私は、結界を守れるようにしておくから後は任せろと告げた」

神使「神様・・・」

神様「私は絶対諦めない。 今までだって守ってきたんだ」グッ

一同「・・・・・・」


長官「四柱結界の威力をさらに上げるのはどうだ?」

神使「なるほど、結界の威力を上げれば第零柱の封印も強化できるという事ですね」


 祭儀神「それは無理だな」テクテク


猫神「祭儀神く~ん?」

祭儀神「遅れてすまないな」

320: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:30:24 ID:IgWVRr3Y

A子「キャバクラの朝帰りは良くないと思います」

祭儀神「失礼だな、青森に行ってたんだよ。 その前にキャバクラには寄ったけど」

猫娘「キャバクラには行ってるニャ。 ニャ」

猫神「青森って、凄爺のところ~?」

祭儀神「あぁ。 四柱結界について聞いてきた」

猫神「そっか~・・・」

祭儀神「四柱結界はボロボロだ。 持ってあと数十年」

長官「数十年!?」

祭儀神「今の状態を維持して数十年だ。 とても出力を上げるなんて不可能だな」

B夫「俺の計算だと、第二柱が決壊寸前。 出力アップより先にこっちを修復する方が先」

長官「だったら、この際新しく結界を張り直すというのは?」

B夫「その場しのぎ。 問題解決とは言えない」

神様「・・・・・・」

321: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:32:46 ID:IgWVRr3Y

A子「なんか一辺に色々起こってるんだね~」


長官「少し妙じゃないか?」

猫神「・・・・・・」

長官「四柱結界は少し前から不安定な状態にあったが・・・」

神使「確かに神様と内宮神様の件も含め、神宮がある程度知っていたとしてもタイミングが・・・」

B夫「もしかして偶然だと思ってる?」

長官「どういうことかね?」

神使「まさか・・・」

B夫「四柱結界は意図的に不安定にされている」

長官「何だと?」

322: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:34:08 ID:IgWVRr3Y

B夫「神宮のメールを漁っていたらこんなもの見つけた」ペラッ

長官「・・・これは!?」

神使「第三柱結界減衰化計画!?」

B夫「神ちゃんが再封印をして失敗に終わったみたいだけど」

猫神「たぶん、他の四柱にも手をつけてるだろうね~ 特に今は第二柱とか」

長官「あいつら・・・」


B夫「それと・・・」チラッ

猫神「・・・・・・」

長官「まだ何かあるのか・・・ この際だ、全て話してくれ」


猫神「神ちゃん? 内宮神ちゃんとのリンク・・・ もしかして、自分から切った~?」

一同「え!?」

神様「・・・・・・」

323: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:34:49 ID:IgWVRr3Y

神使「ちょっと待って下さい。 どういう事ですか!?」


神様「」トテトテ


神使「神様?」

神様「ちょっと出かけてくる・・・」


ギー バタン


神使「神様・・・」

猫神「今日は、一旦解散しようか~・・・」

324: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/18(金) 00:35:27 ID:IgWVRr3Y


─── 10分後・神宮奥社


神様「」コンコン


ギー


内宮神「久しぶり」

神様「よっ」


内宮神「上がって」

神様「ん」


ギー バタン

326: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:50:19 ID:ql5LHZOg


─── 夜・機構ビル屋上


神様「・・・・・・」ボー


ギーッ


神様「?」クルッ

 神使「神様、ここにいたんですか」テクテク

神様「犬ころか」


神使「何しているんです?」

神様「何も?」

327: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:51:40 ID:ql5LHZOg

神使「隣、座っても良いですか?」

神様「・・・どうぞ」

神使「失礼します」

神様「・・・・・・」

神使「曇っていて月は見えないですね」

神様「そうね」


神使「どちらへ行かれていたのですか?」

神様「ちょっと」

神使「・・・・・・」

神様「内宮神の所だよ。 ちょっと顔見ておこうと思って」

神使「次の作戦会議は明日の朝だそうです」

神様「ん」


神使「・・・・・・」

神様「・・・・・・」

328: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:53:09 ID:ql5LHZOg

神使「神様、何か隠してらっしゃいますね?」

神様「はて、どのことでしょうか? 懲りずに鬼牡蠣の封印解除を狗神にやらせていることかな?」

神使「先日、神様が仰った私とA子ちゃんを神にしたいというお話しです」

神様「そっちか。 本心だし嘘じゃない」

神使「再封印をすることになった場合、神力が足りなくなるから先に私達を神にしたいんですよね?」

神様「・・・そうね」

神使「つまり、二人を神にするには結構な量の神力が必要だと」

神様「まぁ・・・ それなりには」

神使「それだけ神力を使って、いざという時に再封印は出来るんですか?」

神様「・・・・・・」

神使「もし出来るのであれば、今私達が神にならなくても問題ないと思いますが?」

神様「・・・・・・」

329: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:54:28 ID:ql5LHZOg

神様「ハァ~・・・ しくったね~」

神使「神様らしくないですね」


神様「・・・・・・。 神になってくれる?」

神使「お断りします」

神様「・・・・・・」


神使「全て知っていらしたんですね?」

神様「・・・・・・」

神使「四柱結界の件も神宮が手を引いていると。 神宮が結界を壊して封印されているものを掘り出そうとしている事も」

神様「・・・・・・」

神使「そして、危険な状態になっている内宮神様を助けるために意識共有を切った」

神様「・・・・・・」

330: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:55:51 ID:ql5LHZOg

神使「他に方法はないんですか?」

神様「まるで私がこれから何をしようとしているのか分かっているような言い方だな」

神使「分かります」

神様「・・・・・・」


神使「分かりますよ。 神様は優しいですから・・・ 何をしようとするかなんて簡単に分かります」

神様「」フッ


神使「もう少し一緒に考えましょうよ。 いつもみたいな小ずるい手段でも」

331: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:57:20 ID:ql5LHZOg

神様「・・・なぁ、神使」

神使「?」

神様「人も神使も神も、この世界に生がある物には全て終わりがある」

神使「・・・・・・」

神様「お前や私は人に比べれば随分と長いけど、それでもいつかは終わりを迎えるときが来る」

神使「・・・・・・」

神様「次の世代に役割を繋ぐことでこの世界は回っているんだ」



神様「だから・・・」


神様「私は、自分の役割をお前に託すと決めている。 当然、お前も次の世代に繋ぐことになる」

神様「私は・・・ 私はお前にこの国の平和を任せたい」

神使「それは今でなくても・・・」

332: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:58:07 ID:ql5LHZOg

神様「なぁ、お前はこの国が好きか?」

神使「もちろんです」

神様「即答か」

神使「神様が作ったこの国が大好きです」


神様「今まで頑張ってきて良かった」フッ


神使「ですから、神様───」

神様「私は、お前が好きと言ってくれたこの世界を壊したくない」

神使「神様・・・」


神様「これまで凄く時間がかかったんだぞ? もう一度作れと言われても私には無理だ」

神使「しかし! まだ方法が!」

333: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 03:59:07 ID:ql5LHZOg

神様「神使さま」

神使「!?」


神様「私の愛する神使さま・・・ どうか私の望みを聞いていただけないでしょうか・・・」

神使「・・・・・・」

神様「あなたが好きだと言ってくれたこの国を、私は壊したくないのです」

神使「・・・嫌です」

神様「・・・・・・」


神使「神様のいない世界なんて嫌です!」

神様「」ニコッ


神使「ぅ・・・」

334: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 04:00:19 ID:ql5LHZOg


神様「お願いいたします・・・ どうか私の我が儘を許して下さい」フカブカ


神使「っ・・・ くっ・・・・・・」


神様「あなたなら大丈夫。 私が認めたんですから」

神使「そんな事・・・ 言わないで下さい・・・」



神様「あなたにこれを」ゴソゴソ

神使「これは・・・ 神様のお守り・・・」

神様「最後の1個はあなたに渡すと決めていました」

神使「・・・・・・」

神様「その中には他のお守りと違って、私のおまじないを入れてあります」

神使「おまじない?」

神様「ぜひ、これを神使さんに持っていて頂きたいのです」スッ

神使「・・・・・・」

335: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 04:01:07 ID:ql5LHZOg

神様「お願いします。 受け取って下さい」

神使「・・・・・・」ギュッ

神様「ありがとう」


神使「・・・・・・」

神様「」ニコッ


神使「どうして神様はそんなに優しいんですか・・・」

神様「それはあなたもです」

336: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/19(土) 04:02:48 ID:ql5LHZOg


神使「一つだけ約束して下さい」

神様「?」


神使「最後まであがいて下さい。 いつもみたいに・・・ どんな手を使ってでも」

神様「・・・・・・」

神使「それが条件です」



神使「それに」

神様「?」

神使「当日は、エガちゃんのスペシャル番組もありますから」


神様「分かった」クスッ




神使「神様!」ダキッ

神様「神使さん・・・」ダキッ

339: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:28:28 ID:euA81Vw6


─── 翌日


ガチャッ


神使「遅くなりました」テクテク

神様「わりーね」トテトテ


猫神「おはよ~ 神ちゃ・・・ !?」

祭儀神「ほぉ」

長官「これは驚いたな」

B夫「?」

A子「みんなどったの?」キョロキョロ

猫娘「神使先生凄いニャ。 ニャ」

A子「え? 何が??」

340: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:30:20 ID:euA81Vw6

神様「たっぷりと神力を使わせて頂きましたので」ツヤツヤ

神使「お恥ずかしいです・・・」

A子「ねぇ、何が? みんな何に驚いてるの?」


神様「ご紹介しよう! 神使之神だ!」

神使「・・・///」ペコリ


A子「え!? 神使さん神になったの?」

猫娘「見て分からないんですかニャ? ニャ」

A子「ちょっと猫娘ちゃん、もしかして私をディスってる?」

猫神「あっ、そう言えばこの中でA子ちゃんだけ~・・・」

A子「猫神様まで私をディスったー!」

B夫「猫神様? 俺も人なんだけど・・・」

祭儀神「どうすんだ? A子ちゃんは」

A子「そんな事を言っても私は流されませんので」プイッ

341: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:31:38 ID:euA81Vw6

神使「私のことはともかく・・・ 早速会議を進めましょう」

B夫「みんなには俺は見えてないのかな?」キョロキョロ

猫娘「ニートは人じゃないニャ。 ニャ」

B夫「・・・・・・」

神様「じゃぁ、長官君からよろ」

長官「あぁ。 昨日の夜に神宮の方から正式に土地売却の話を受けた」

祭儀神「無理矢理聞き出したんだがな」

猫神「何て言ってた~?」

長官「・・・これが契約書のコピーだ」バサッ

猫娘「うニャ~ 分厚いニャ。 ニャ」

長官「B夫君の言ってた通り売却はすでに完了済み。 奥社の取り壊しと地質調査が4日後だ」

神使「急ですね」

B夫「やっぱりスケジュールは短縮されたか」

神様「なんとかして止められないの?」スリスリ

A子「?」チラッ

342: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:32:24 ID:euA81Vw6

長官「契約解除は違約金が100億と神宮の土地の全てを譲渡だそうだ」

神使「随分とメチャクチャな契約ですね」

B夫「周りが反対してくると見込んだ防御策」

祭儀神「全く、呆れて言葉もでんわ」

長官「言葉は出なかったが、手は出てたな」

祭儀神「うっ・・・」

神様「お前、手を出したのかよ・・・」スリスリ

猫神「?」チラッ

343: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:33:13 ID:euA81Vw6

祭儀神「ちょっとド突いただけだよ」

長官「あれは殴ったと言うんだよ」

猫神「祭儀神君がキれるなんて珍しいねぇ~」

祭儀神「すまん・・・」


B夫「地質調査のボーリングだけは何としても阻止しないと」

神様「残り4日か」スリスリ

祭儀神「?」チラッ

344: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:34:09 ID:euA81Vw6

B夫「時間的に出来ることは限られる」

祭儀神「念のため、当日に各結界へ神を集めて強度を一時的に上げる手は打った」

神使「しかし、四柱結界がもつでしょうか?」

祭儀神「ギリギリの所で凄爺に調整を頼んでいる」

猫神「でも、その場しのぎにしかならないねぇ~」

神様「特に第二柱は不安だな」スリスリ

長官「?」チラッ

345: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:35:04 ID:euA81Vw6

A子「あの~」

一同「?」

A子「私バカだから詳しくは分からないんだけど、四柱結界っていうのが大きければそれだけ結界も強くなるの?」

B夫「原理的にはそう。 でも日本国内東西南北の最端から結界を張っても計算上は今とあまり変わらない」

A子「だったら海外は使っちゃダメなの?」

一同「海外!?」

A子「うん、世界中から貼れば凄く強くなるんじゃない?」

一同「・・・・・・」

A子「ごめん、無理だよね・・・ わすれて」ハハハ

B夫「いや、それはありかも」

祭儀神「でも海外って、どうやって結界を張るんだ?」

猫神「海外か~・・・」

346: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:35:50 ID:euA81Vw6

神様「う~ん・・・」スリスリ

一同「・・・・・・」チラッ


A子「ねぇ、神ちゃん?」

神様「なに?」スリスリ

A子「さっきから何やってるの?」

祭儀神「俺も気になって集中出来ないんだが」

長官「そ・・・ そうだな。 目のやり場に困るというか・・・」

猫神「女の子がそんなところ、ちょっとはしたないね~」

347: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/20(日) 04:37:05 ID:euA81Vw6

神様「いや、股が痛くてさ」

神使「!!」ブボッ

A子「ちょっと神使さん、お茶吹き出して汚い~」

神使「すいません」ゲホッ ゲホッ


猫神「いや~・・・ まぁ・・・ 神ちゃんも女の子だものねぇ~・・・///」

長官「そういう反応に困ることは言わないでくれ・・・」


祭儀神「程々にな」ボソッ

神使「・・・・・・///」

352: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:27:57 ID:B9wXo4AQ


─── 翌日(取り壊し3日前)・ボロビル


ガチャ


A子「ちわ~」

猫娘「A子さんニャ。 ニャ」

A子「あれ? みんなは?」キョロキョロ

猫娘「うニャ~ みんな用事があるみたいで今日は作戦会議はお休みになったニャ。 ニャ」

A子「そうなんだ。 私は別に用事ないけどさ」

猫娘「長官さんと祭儀神様は青森、猫神様はウサちゃんに会いに行くって言ってたニャ」

A子「ウサちゃん?」

猫娘「詳しくは分からないですニャ。 ニャ」

353: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:29:22 ID:B9wXo4AQ

A子「ふーん。 神ちゃん達は?」

猫娘「神ちゃん様と神使先生は二人で出かけたニャ。 ニャ」

A子「くそ、デートかよ・・・」チッ

猫娘「とってもラブラブだったニャ~。 ニャ」

A子「あっ、そういう話は心が痛くなるから結構ですので」

猫娘「A子さんも彼氏いない歴=年齢でも諦めなければ良いことありますニャ。 ニャ」

A子「諦めてないし」

猫娘「ニャ? ニャ」

A子「私はこう見えても猫娘ちゃんよりは人生経験豊富なのです」

猫娘「私はこう見えてもA子さんより数百年長く生きてますニャ。 ニャ」

A子「大変失礼いたしました、猫娘先輩」フカブカ

猫娘「ニャ。 ニャ」

354: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:30:48 ID:B9wXo4AQ


 B夫「おはよう」テクテク


猫娘「もうお昼ニャ。 ニャ」

A子「相変わらずB夫さんはお寝坊さんだね~」

B夫「徹夜で調べ物してたんだけど・・・ あっ、猫さん昨日は夜食ありがとう」

猫娘「ニャ。 ニャ」

A子「おやぁ~? 猫娘ちゃんはB夫さんにお優しいんですねぇ~」

B夫「猫さんは俺に首ったけ」

猫娘「B夫さん? 何度も言いますが、本気で不快なのでそういう事は言わないで下さい」

B夫「すいません・・・」

A子「B夫さんも余計な事を言わなきゃ良いのに」

B夫「?」

355: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:33:21 ID:B9wXo4AQ

猫娘「お、お腹が空いたニャら“ねこまんま”で良ければすぐ作るニャ。 ニャ」

B夫「おねしゃす」

猫娘「A子さんも食べていきますかニャ? ニャ」

B夫「猫さんの猫飯は最高。 なんせ本物だし」

A子「それって人が食べても大丈夫なの?」

猫娘「とっても美味しいですニャ。 ニャ」

A子「質問の答えになってないんだけど・・・ 私は戻って食べるから気にしないで」

猫娘「ニャ。 ニャ」


A子「じゃぁ私神宮に戻るね?」

猫娘「また明日ニャ。 ニャ」

A子「じゃぁね~」テクテク

356: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:34:18 ID:B9wXo4AQ


─── キセキ野教会


猫神「ここか~・・・」


ギー


猫神「お邪魔しま~す」

修道女「?」クルッ

猫神「お邪魔しても良いですか~?」

修道女「もちろんです。 どうぞお入り下さい」

猫神「立派な教会ですね~」

修道女「ありがとうございます」

357: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:35:21 ID:B9wXo4AQ

猫神「はじめまして~ わたし猫神と申します~」

修道女「猫神さま・・・?」

猫神「日本の神で~す」

修道女「!? あっ、シスターうさーを呼んで参ります!」

猫神「いえいえ、私が用があるのは~───」


 うさー「ね~ シスターちゃん、お腹すいたから塩バタコーンラーメン作って」テクテク


修道女「シスターうさー、お客様の前ではしたないことを言わないで下さい・・・」

うさー「ん?」

猫神「ハロ~ 久しぶりだね~ うさーちゃ~ん」

うさー「げ! 猫神・・・」

猫神「」ギロッ

うさー「さま」

358: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:36:09 ID:B9wXo4AQ

猫神「久しぶり~」ニコッ

うさー「う~ 私、何も悪い事してないよ」

猫神「別にお説教しに来たわけじゃないよ~」

うさー「本当に?」

猫神「ちょっとお願いがあって~」

うさー「私に?」

猫神「ん~ うさーちゃんもだけど、本命はシスターちゃんの方かなぁ~?」

修道女「私・・・ ですか?」

うさー「?」

359: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:37:04 ID:B9wXo4AQ


─── 1時間後


修道女「はい、えぇ・・・ 緊急事態だそうで・・・ はい」


うさー「どうしてパチカンなんかに電話を?」

猫神「世界がヤバい~ って感じで~」

うさー「世界?」


修道女「猫神様、お待たせいたしました。 電話を繋いでもらいましたのでどうぞ」スッ

猫神「ありがとう~ ここしかツテがなかったもので迷惑掛けるね~」

修道女「いえ、お気になさらず」


猫神「もしもし~ あっ、日本語でも大丈夫ですか~?」

360: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:38:14 ID:B9wXo4AQ

うさー「ねぇ、シスターちゃん。 電話の相手って誰?」

修道女「パチカンの法王庁です」

うさー「・・・・・・? え!? まさか法王さま?」

修道女「はい」

うさー「なんでシスターちゃんが法王さまを知ってるの!?」

修道女「一応・・・ 私も括りでいえばその・・・」

うさー「まぁそうだけど・・・ 私も神だけど連絡先なんて知らないよ?」

修道女「シスターうさーは、日本の神じゃないですか」

うさー「え~ 私も法王さまと友達になりたい~」

修道女「シスターうさー、ちょ・・・ 揺らさないで下さい」ユサユサ

361: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:39:19 ID:B9wXo4AQ


ペシッ!


うさー「痛い!」

猫神「他宗教の神に手を出しちゃダメだよ~」

うさー「う~ だって~」

修道女「お電話終わったのですか?」

猫神「うん」


ギー


一同「?」クルッ

?「こんに~ちは、シニョリータ」

うさー「げっ!」

362: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/21(月) 00:40:06 ID:B9wXo4AQ

猫神「随分と早いですね~」

?「私に距離など関係ありませ~ん」

猫神「さすが~」

?「お話しの前にコーヒーでもいかがですか?」キラッ

猫神「わたし、紅茶派なもので~」

?「それは残念で~す」

猫神「時間がないので本題でも良いですか~?」

?「お伺いしま~す」

366: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:50:58 ID:/2UkAQLU


─── りんごちゃん神宮本殿


凄爺「遠いところ、良く集まってくれた」

長官「すでに皆には状況を説明した通り、かなり不味い状況だ」

昭宮神「驚きました。 そんな危機になっていただなんて・・・」

狐神「本当だよ。 ついこの間、神ちゃんと会ったときには何にも言ってなかったのに」

祭儀神「神ちゃんはギリギリまで粘って一人で何とかしようと溜め込む癖があるからな」

凄爺「それも込みで皆、あのガキを慕っているんじゃろ?」


一同「・・・・・・」フッ


凄爺「さて、時間もない。 ワシから四柱結界の説明をしよう」

367: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:52:09 ID:/2UkAQLU


─── 神宮・奥社


A子「ムフフ。 今日のお供えも完璧なのです! 内宮神ちゃん喜んでくれるかな~」テクテク


チカッ チカッ


A子「あれ? 奥社の中が光ってる」タッタッタッ


トントン


A子「内宮神ちゃん? 入るよ?」


ギー

368: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:53:03 ID:/2UkAQLU


ゴゴゴゴ


A子「うわっ! なにこれ!」

内宮神「A子ちゃん! 危ないからそれ以上近寄らないで!」


ゴゴゴ


A子「ちょ、内宮神ちゃん! なにこの光!」

内宮神「結界が少し弱まってて・・・」クッ

A子「だ、大丈夫!?」

内宮神「封!」


ピカッ

369: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:54:10 ID:/2UkAQLU


ゴゴ… ゴ……


A子「収まった」

内宮神「ハァ・・・ ハァ」バタッ

A子「内宮神ちゃん!」タッタッタッ

内宮神「ハァ・・・ ハァ」

A子「大丈夫?」

内宮神「大丈夫・・・ しばらくは封印が効くから・・・」ハァハァ

A子「そうじゃなくて・・・ 内宮神ちゃんがだよ」

内宮神「私も大丈夫。 すぐ回復するし」

A子「内宮神ちゃん・・・」

内宮神「あっ、ご飯持ってきてくれたの? ありがとう。 後で食べるね」ニコッ

A子「・・・・・・」

370: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:55:21 ID:/2UkAQLU


─── 10分後


A子「今までずっとこんな事してたの?」

内宮神「最近結界が薄くなっていてね。 たまに封印の強化が必要で」

A子「四柱なんとかってやつ?」

内宮神「よく知ってるね。 でも大丈夫、まだ私だけでも何とか持たせられるから」

A子「私も何かお手伝いできる事ない?」

内宮神「心配ないって」

A子「でも、あんな辛そうな内宮神ちゃん見たくないよ」

内宮神「A子ちゃん・・・ これは神の仕事なんだからA子ちゃんが気にしなくても大丈夫」

A子「神・・・」

内宮神「?」

371: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:56:43 ID:/2UkAQLU

A子「私も神になれば力になれる?」

内宮神「あっ! 別にA子ちゃんに神になってくれって言っているわけじゃないからね? 気にしないで」

A子「・・・・・・」

内宮神「これは私の仕事だから。 普段ゴロゴロしてるんだからこういうとき位は、ね」

A子「でも、神ちゃん私を神にしたがっていたし」

内宮神「あ~ それは何と言うか・・・」

A子「内宮神ちゃんも神ちゃんとこの間まで同じだったんだから理由は知っているんだよね?」

内宮神「う~ん・・・ 今の私は神ちゃんじゃないし・・・」

A子「」ジーッ

内宮神「神ちゃんがA子ちゃんを神にしたい理由は、結界維持に協力して欲しいなんて事じゃないから」

A子「?」

372: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:58:38 ID:/2UkAQLU

内宮神「・・・さて、体調も良くなってきたしご飯食べよっかな~」ゴソゴソ

A子「内宮神ちゃんは私が神になったら嬉しい?」

内宮神「もちろん! でも、それはA子ちゃんが納得して神になってくれたらだけどね」モグモグ

A子「そっか・・・」

内宮神「おっ、このお魚おいしいねぇ~」モグモグ

A子「じゃ、私戻るね」

内宮神「あっ! ちょっと待って」

A子「?」


内宮神「これ、A子ちゃんにあげる」スッ

A子「本? 分厚いね~」

内宮神「私と神ちゃんの集大成!」フンスッ

A子「・・・・・・」ペラペラ

内宮神「A子ちゃんに持っていて欲しい」

A子「なに・・・ これ・・・」

373: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 04:59:56 ID:/2UkAQLU

内宮神「名付けて“この国の本”。 この国の理、仕組みとか~ 神の作り方とか色々書いてある」

A子「こんなの、私が持っていて良いものじゃないよ・・・」

内宮神「A子ちゃんにそれを託したい」

A子「何で私がこんな大切な物を?」

内宮神「犬ころに渡すのが筋なんだけど、たぶんA子ちゃんの方が良いかなぁ~って」

A子「どういう事?」


内宮神「私、A子ちゃんと出会えて嬉しかった。 今まで生きていた中で最高に楽しかったよ」

A子「なに言ってるの?」

内宮神「だから・・・ これを託したい」

A子「なんで急にそんな事言うの?」

内宮神「この先、どうなるか分からないしね」

A子「ダメ・・・ ダメだよそんな事言っちゃ・・・ まさか、内宮神ちゃん・・・」

内宮神「大丈夫。 最後まであがくから。 私も神ちゃんも諦めが悪いのが長所だしね」ニコッ

374: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/22(火) 05:00:51 ID:/2UkAQLU


─── 夜・ボロビル(神ちゃんの部屋)


コンコン


神様「だれ?」


 A子「わたし」


神様「A子ちゃん?」トテトテ


ギー


神様「今日はごめんね、急に休みにしちゃって

A子「・・・・・・」

神様「A子ちゃん? どったの?」

A子「わたし、決めた!」

神様「?」

377: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:16:55 ID:7UlgirJs


─── 翌日(取り壊し2日前)・ボロビル


A子「おっはよ~!」

神様「遅れてわりーね」


猫神「もぉ~ いくら何でも1時間は遅れ・・・ す・・・・・・」

祭儀神「ほぉ」

長官「これは驚いたな」

神使「A子ちゃん!?」

猫娘「ニャー!! ニャ」

B夫「?」キョロキョロ

378: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:18:10 ID:7UlgirJs

神様「紹介しよう! A子神だ!」

A子「みなさんごきげんよう! 私の名は神宮のミス巫女、A子神!」

一同(巫女なのか・・・ 神なのか・・・)


A子「これからは私の時代。 私が救世主でありこの国の最高神!!」フンスッ

神様「あっ、最高神はA子ちゃんには譲れないから」

A子「え~ そうなの~?」

長官「A子ちゃんは最高神になる前に神階を上げていかないとな」

祭儀神「ダメ神が誕生してしまったな」ハハハ

A子「そんな~」

猫神「最高神はやっぱり神ちゃんじゃないとね~」

379: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:19:32 ID:7UlgirJs

神様「あ~ その件なんだけど~」

一同「?」

神様「もし、私の身に何かあった場合は次の最高神の任は神使に委ねる」

一同「え!?」

神使「ちょっ、神様どういう事ですか!?」

神様「ん? 言った通りだけど」

長官「神ちゃん、どういうつもりかね?」

祭儀神「このタイミングでそう言う冗談は勘弁してくれ」

神様「まぁまぁ落ち着けって」

A子「ごめん神ちゃん、私そういうつもりで言ったんじゃ・・・」

神様「A子ちゃんも、私もそういうつもりで言っているわけじゃないから。 これは万が一の時のため」

猫神「万が一って~?」

神様「前に言っただろ? 何が起こるか分からないって」

一同「・・・・・・」

380: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:20:38 ID:7UlgirJs

神様「今回一番危険なのは私と内宮神だ。 結界の真下で封印強化をするんだから」

祭儀神「それを回避するためにこうして作戦会議を開いているんだろうが」

神様「成功の保証はない」

一同「・・・・・・」

神様「これは私と内宮神しか出来ないことっていうのは理解できるだろ?」

長官「しかし、次の最高神の指名を今する必要は・・・」

神様「だ~か~ら~ よく考えろって。 私達に何かあったら最高神がこの国にいなくなるだろうが」

神使「それと私が最高神になるということにどう関係があるんですか?」

神様「次の最高神はお前に委ねると私が決めているから」

神使「しかし・・・ いくら何でも私は身分不相応かと思います」

神様「そう? それを言ったら私が最高神やってる方が不相応だろ」

一同「・・・・・・」

神様「あの・・・ そこは出来ればみなさんに否定して頂きたかったです・・・」

381: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:21:31 ID:7UlgirJs


A子「私は異存なし!」


神使「A子ちゃん?」

神様「さすがA子ちゃん、私と内宮神が認めただけのことはある」ウンウン

長官「・・・・・・」

祭儀神「・・・・・・」

猫神「・・・・・・」


神様「分かってくれ。 最高神不在だけは絶対にしたくない」

神使「神様・・・」

神様「安心しろって。 そう簡単にくたばるつもりはないから」

382: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/23(水) 06:22:36 ID:7UlgirJs

祭儀神「神宮祭儀神として認めよう」ハァ

長官「私も、神様機構長官として認めるよ」

猫神「神ちゃんは一度言ったら取り下げないもんねぇ~」


神様「神使、お前の気持ちを聞かせてくれ」

神使「・・・・・・。 分かりました」

神様「ありがとう」


神様「神勅! 私、神様は自身が最高神を全うすることが出来なくなった場合の次の最高神として神使を指名する」

一同「」フカブカ

神様「以上! 最高神神様より神勅を申し伝えた!」

388: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:37:50 ID:tsn2o6U.


─── 翌日(取り壊し前日)・ボロビル


ガチャ


神様「いや~ 今日は暑いね~」トテトテ

長官「おはよう、神ちゃ・・・」

祭儀神「随分と遅かっ・・・」

猫娘「おはようございますニャ。 ニャー!!」

神使「神様、せめて服は着て下さいよ・・・」

神様「お前の目は節穴か? 着てるだろうが」

神使「Tシャツとパンツは服を着ているうちに入らないかと・・・」

神様「裸じゃないし~」ベー

A子「いつも通りの神ちゃんじゃん。 別に驚くことはないと思うけど」

神使「A子ちゃんもだいぶ毒されてますね・・・」ハァ

389: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:39:24 ID:tsn2o6U.

神様「あれ? 猫神は?」キョロキョロ

猫娘「昨日の夜にお出かけしましたニャ。 朝には戻るって言ってたんですけどニャ~。 ニャ」

神様「どこ行ったんだ?」

祭儀神「そう言えば、昨日色々なところに電話しているのを見たな」

A子「ウサちゃんがどうこう言ってるの聞いた」

神様「ふ~ん。 んじゃ、いるやつだけで先に明日の最終確認をしようか」

長官「待ってなくても良いのかい?」

神様「午後は内宮神と打ち合わせあるしあんまり時間ないんだよ」

長官「そうか。 それじゃ始めようか」


神様「では、作戦本部長のB夫! よろ」

B夫「オレ、いつから作戦本部長に?」

390: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:40:50 ID:tsn2o6U.

長官「そう言えば、この中でB夫君だけ神じゃないな」

祭儀神「なぁ神ちゃん、コレもついでに神にしておいた方が良いんじゃないか?」

B夫「ついでって・・・ オレは神になんかなりたく──」

神様「それは猫神のオモチャだから私が勝手に弄っちゃダメだろ」

猫娘「ニート神なんて必要ないと思いますニャ。 ニャ」

B夫「あの・・・ オレの意見は? って言うか、猫さんの言葉が心に痛いんだけど・・・」

神様「まぁ落ち着いたら寝てる間にでも適当に神にさせときゃいいんじゃね?」

猫娘「一発で熟睡できるニャ。 ニャ」ポキポキ

B夫「それ寝るって言わない。 やめて、猫さんパンチはマジ洒落にならないから」

神様「諦めろって。 それがお前の運命なんだ」ポンポン

391: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:42:32 ID:tsn2o6U.

B夫「・・・・・・。 四柱結界についての状況を!」

猫娘「観念したニャ。 ニャ」

神様「長官君達は凄爺と打ち合わせしたんだって?」

長官「あぁ。 各四柱に神を集めて明日の準備を進めてもらっている」

祭儀神「第一柱は昭宮神、第二柱は狐神、第三柱は狗神、第四柱は猫神を責任者にする予定だ」

神使「頼もしいですね」

長官「ただ、問題は第二柱だね。 想像以上に酷いようだ」

神様「猫神に第二柱へ回ってもらえば良いんじゃない? あいつ神力多いし」

祭儀神「いや、第二柱は神力の強さより持続性の方が重要だ。 狐神の方が適任だと思う」

神様「なるほどね。 確かに狐神はネチネチしてるしな」

神使「神様、そんな事言って狐神様に怒られますよ?」

B夫「第二柱は先に修復をしておけば良い。 どちらにしろそれだけ強い神力を四柱に送っても10分が限界」

神様「その間、私と内宮神で零柱の結界強化をするわけね」

B夫「そう。 そしてA子ちゃんと神使さんで掘削を妨害して追い返す」

神使「10分ですか・・・ あまり時間がないですね」

392: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:44:09 ID:tsn2o6U.


ガチャッ


 猫神「遅れてごめ~ん」


猫娘「お帰りなさいですニャ。 ニャ」

神使「どちらへ行かれていたんですか?」

猫神「結界の強度が大幅に上げられそうだよ~」

祭儀神「本当か!?」


猫神「昨日の敵は今日の友ってね~」

一同「?」

猫神「神ちゃんと神使君のおかげだよ~」

神様・神使「はい?」

393: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:45:47 ID:tsn2o6U.

猫神「ほら~ これ見て~?」スッ

神様「猫神、スマホなんて持ってたのかよ・・・」

神使「写真ですか? って、これは!」

神様「げっ、うさーとシスターちゃんじゃん!」

A子「となりのおっさん誰?」

神使「この方はまさか・・・」

猫神「天使さんだねぇ~」

長官「天使?」

祭儀神「おいおい、なんだよそれ」

A子「天使って、背中に羽があって頭に輪っかがある裸の子供だよね」

B夫「ちょっと想像と違う」

猫娘「結界の協力してもらうのに、そんな言い方失礼だよ~」

394: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/25(金) 23:49:34 ID:tsn2o6U.

神使「協力って・・・ パチカンが協力してくれるんですか!?」

猫娘「そう。 四柱結界の強化を海外から補ってもらおうと思ってねぇ~」

B夫「なるほど。 パチカンは世界各国に教会があるから上手くいけば四柱結界の強度を上げられると」

猫神「ピンポ~ン。 その通り~」

祭儀神「でも、あっちの力と日本の神力って互換性とかあるのか?」

猫神「それをしてくれるのが彼女~」

神使「シスターさんですか?」

猫神「彼女はパチカンと日本の神の力を扱える唯一の神なんだ~」

神使「そう言えば、以前そんな事があった気がしますね」

猫神「神ちゃんお手柄だよ~」

神様「ほめよ」

長官「これは、想像も付かない事態だな」

B夫「早速作戦を練り直そう」


猫神「それより~ 何で神ちゃんは裸なの~?」

397: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 00:58:19 ID:z7VwAaLU


─── 取り壊し当日・ボロビル


神様「さて諸君! いよいよ本番当日、張り切っていこー!」

A子・神使「おー」

神様「ねぇ、人少なくない?」

B夫「猫神様は昨日の夜にキセキ野教会へ向かった」

神様「長官君と祭儀神は?」

B夫「神宮。 作戦中に神宮へ誰も入れないように人払いを頼んだ」

神様「あ~ それで」

398: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:00:00 ID:z7VwAaLU

B夫「今日は神宮自体が終日参拝禁止になってるけど念のため」

神使「参拝禁止なんですか?」

B夫「名目上は害虫駆除だって。 神職も巫女も立ち入り禁止にしてるらしい」

神様「どんだけ害虫がいるんだよ・・・」

A子「ある意味害虫駆除だけどねぇー」

B夫「掘削は昼過ぎから。 奥社を取り壊してその下でボーリングをする予定になってる」

神使「それを阻止するのが今日のミッションですね?」

B夫「そう。奥社の取り壊しとボーリングの阻止。 それ以上は求めない」

A子「フルボッコしたい」

B夫「突貫作戦だしイレギュラーな事態は避けたい。 一つでも状況が狂うと対応できなくなる」

神使「そうですね」

399: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:01:58 ID:z7VwAaLU

B夫「あと、コレを耳につけて」

A子「イヤホン?」

B夫「簡易通信機」

神様「かっちょいい~」キラキラ

A子「SEみたい!」キラキラ

神使「SPですね」


B夫「それと、3人は神用の装束を着て」

神使「装束ですか?」

B夫「神用の装束は神力が練られているから。 念のため」

神様「私は犬ころに買ってもらったやつ着よ~」

B夫「神使さんはこれ着て。 長官さんが準備してくれた」

神使「ありがとうございます」

400: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:04:01 ID:z7VwAaLU

A子「私は可愛いやつでお願いします。 ピンク色が良い」

B夫「A子ちゃんは、宝物庫行って適当に見繕ってきて」

A子「なにそれ!」

B夫「しょうがないじゃん、サイズ分からなかったんだし」

A子「え~ 面倒くさいな~」


B夫「俺はここで各所と協調を行う」

神使「よろしくお願いします」


神様「じゃぁ、準備に移りますか!」

401: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:05:33 ID:z7VwAaLU


─── 30分後・神宮 宝物庫裏


A子「」キョロキョロ


 A子ちゃん?


A子「うわっ!」ビクッ

同僚巫女「こんな所でなにやってるの?」テクテク

A子「巫女ちゃん・・・? えっと~ ちょっと・・・ 散歩?」

同僚巫女「その格好で?」

A子「え!?」

402: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:06:45 ID:z7VwAaLU

同僚巫女「A子ちゃんが着てるのって、神用のご装束だよね? 神さま見習いのものっぽいけど」

A子「あっ、これは・・・ ピンクで可愛かったから着てみたくて。 って、これって見習い用なの!?」

同僚巫女「神しか着用できないと思うんだけど、どうしてA子ちゃんが着られたの?」

A子「あれ~? 装束の神力が切れてたのかなぁ?」アセアセ

同僚巫女「・・・・・・。 今日は神宮全体が立ち入り禁止だよ?」

A子「そうだっけ?」ハハハ

同僚巫女「神職も巫女も立ち入り制限がかかってる」

A子「ん? じゃぁ、どうして巫女ちゃんはここに?」

同僚巫女「A子ちゃんって隠すの下手ね」

A子「え?」

403: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:07:34 ID:z7VwAaLU


ゾロゾロ


A子「みんな・・・」


巫女B「何を隠しるんだい?A子」

巫女C「全部ゲロッちゃいなさい」

同僚巫女「A子ちゃん、みんな何となく気付いてる。 今日、神宮に危機が訪れるって事を」

A子「どうして・・・」

同僚巫女「言ったでしょ? A子ちゃんは隠すのが下手だって」ニコッ

404: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/27(日) 01:09:16 ID:z7VwAaLU


─── ボロビル


B夫「さてと・・・」

B夫「・・・・・・」ポチッ


キュイーン


B夫「システムオッケ。 四柱からの神力計算も問題ない」

B夫「・・・・・・。 大丈夫、絶対上手くいく」

406: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:08:24 ID:PhnF7H8c


─── 神宮


神宮職員「では、そろそろ参りましょうか」

エネルギー社社員「そうだな。 おい重機の準備は大丈夫か?」

作業員「大丈夫です」

社員「妨害対策は大丈夫だな?」

職員「今日は神宮全体を立ち入り禁止にしてあるので大丈夫かと思います」

社員「思いますじゃ困るんだけどなぁ~」

職員「・・・・・・」

社員「ま、何かあれば力尽くでも排除するぞ」

職員「はぁ」


社員「よし、じゃぁ行くぞ」

407: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:09:05 ID:PhnF7H8c


─── ボロビル


長官『B夫君、対象が移動を開始したようだ』

B夫「了解、あとは引き継ぐ。 長官さんと祭儀神様も位置について」

長官『分かった。 神宮の人払いは任せてくれ』

祭儀神『誰も入れさせないよ』


B夫「こちら作戦本部。 みなさん、最終準備に入って下さい」

408: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:11:04 ID:PhnF7H8c


─── 第一柱・東京


昭宮神「神々の皆さん、まもなくです。 位置について下さい」

他神A「関東の神が全員集まるなんて初めてだね」

秋葉神「全国のアニオタ達よ! 我に力を!」


昭宮神「我が愛しの神様のお役に立てるよう全力でいきますよ!」

他神A「神ちゃんがお付きと結ばれたって聞いてショボ暮れてるかと思ったのに」

秋葉神「逆に嬉しそうですね」

昭宮神「当たり前じゃないですか。 神様の幸せが私の生きがいですから」

秋葉神「確かに。 それは日本の神、全ての総意だね」


昭宮神「神様の幸せは必ず守って見せます。 全力でいきますよ!」

一同「おー!」


昭宮神「こちら第一柱。 いつでもOKです」

409: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:12:21 ID:PhnF7H8c


─── 第二柱・出雲


狐神「はーい! それじゃぁ時間だからみんな位置について~」


ガヤガヤ


狐神「四柱の中で一番ボロボロなのがココなんだから、気合い入れて行くわよー」

他神B「狐ちゃーん! こっちは準備オッケーだよー!」

他神C「こっちも応急処置だけど穴は塞ぎ終わったー」

狐神「ありがとー」


狐神「もしもし? 第二柱神力強化の準備完了。 合図と同時に結界修復に入るよ」

410: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:13:46 ID:PhnF7H8c


──── 第三柱・あにあに村


神主「凄い人だね・・・」

巫女「皆さん神だから人とは違うと思うけど」

神主「あ~ そうか」


狗神「鬼牡蠣の結界解除の任を放棄してまで来たのですから失敗で出来ませんね」

他神D「狗神・・・ お前、懲りずにまだあんな物の結界解除やってたのかよ・・・」

狗神「神様の大好物ですからね」

他神E「なるほどな、それは手を抜けないか」

狗神「えぇ、当然こちらも手を抜けませんけどね」

他神D「だな」


狗神「こちら第三柱。 準備が整いました。 いつでもご指示を」

411: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:16:42 ID:PhnF7H8c


─── 第四柱・四国


他神「シスターうさー、こっちの準備はOKよ」

うさー「ありがと」

他神F「シスターうさー、頑張りましょうね」

うさー「そ、そうだね」

他神G「シスターうさー ───」

うさー「もー! 皆してシスターシスターって言わないでよ! 今日は修道服着てないでしょ! 今はウサ之神なの!」

他神H「はいはい。 猫神の代役なんだから面目潰すんじゃないわよ? 失敗したらお説教どころじゃ済まないわよ?」

うさー「うー 分かってるよ~」


うさー「もしもし、第四柱の神力強化準備できたよ」

412: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:18:42 ID:PhnF7H8c


─── キセキ野教会


B夫『猫神様、四柱結界の準備はオッケ。 そちらの準備が出来たら連絡を』


猫神「日本側の四柱結界の準備が出来たよ~ 天使さん」

?「天使は止めて下さ~い。 ミカエルで~す」

猫神「ごめんね~ ミカエルさん。 で、そちらの準備は~?」

ミカエル「世界中の教会からパチカンへ祈りが届いていま~す」

猫神「さすが世界一の信者数を誇るだけあるね~」

ミカエル「その祈りを修道女さんを経由して神宮に送り届けま~す」

修道女「私にそんな大役が務まるでしょうか・・・」

ミカエル「これはパチカンと日本の神の力を扱うことの出来るあなたにしか出来ない事で~す」

猫神「大丈夫だよ~ うさーだって頑張るんだから~」

修道女「そうですね・・・ 弱音を吐いてすいません。 全力で頑張ります!」

413: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:21:38 ID:PhnF7H8c

猫神「神力の安定化は私がきちんと補佐するからね~」

ミカエル「パチカン側からの祈りは私がきちんと制御しま~す」

修道女「ありがとうございます」フー


修道女「いつでもOKです!」


ミカエル「まさか、日本の神へ協力する日が来るとは思ってもみませんで~した」

猫神「ふふっ。 ちょっと前まではいがみ合ってたのにね~」

ミカエル「全くで~す」


猫神「B夫く~ん、聞こえる~?」

B夫『聞こえてる』

猫神「こっちも準備OKだよ~ 凄爺との協調よろしくね~」

B夫『任された。 りんごちゃん神宮聞こえますか?』

414: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:23:25 ID:PhnF7H8c


─── りんごちゃん神宮


狐娘「あっ、はい。 りんごちゃん神宮の狐娘です」

B夫『現在の四柱結界の状態は?』

凄爺「問題ない」

狐娘「第二柱が若干不安定ですがそれ以外は普段と同じ状態を保っております。 と凄爺様が申しております」


B夫『最初の合図で第二柱の穴を塞いで四柱結界を正常に保つ」

凄爺「分かった」

狐娘「四柱の安定化はお任せ下さい。 と凄爺様が申しております」

415: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:24:15 ID:PhnF7H8c

B夫『次に四柱結界からの出力を神力注入で10倍にアップ』

凄爺「・・・問題ない」

狐娘「持ちこたえられると思います。 と凄爺様が申しております」


B夫『最後に、パチカンから想像できない量の神力が送られる。 しかも凄く癖のある神力』

凄爺「・・・・・・全く問題ない」

狐娘「私もお手伝いいたしますので二人で何とか耐えて見せます。 と凄爺様が申しております」


B夫『ご武運を』

凄爺「任せておけ」

狐娘「全ては俺が責任を取るからこっちは何も心配するな。 と凄爺様が申しております」


凄爺「・・・・・・」

416: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:27:46 ID:PhnF7H8c


─── ボロビル


B夫「あー あー 神ちゃん、内宮神ちゃん、聞こえる? そっちの準備は?」

神様『大丈夫、封印強化の準備は出来てる』

内宮神『いつでもオッケ~』


B夫「神使さん、A子ちゃん、そっちの準備は?」

A子『ばっちし!』

神使『何とか足止めして見せます』

B夫「パチカンからのサポートで奥社から半径30mは結界強化が働いて掘削は出来ない。 ただし持続時間は30分」

神使『はい』

B夫「結界強化発動からなるべく早く追い出して」

A子『任せとけ!』


B夫「神ちゃん、作戦スタートの合図を」

417: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/28(月) 03:28:55 ID:PhnF7H8c


─── 神宮・奥社


神様「内宮神」

内宮神「なに?」


神様「迷惑をかける」

内宮神「いまさら」


神様「さすがに今回ばかりは全力でいかないとな」

内宮神「おふざけ禁止だね」


神様「スタートの合図を一緒に」

内宮神「はいよ」




神様・内宮神「作戦スタートゥ!」

421: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:31:50 ID:UH6vFusI


─── 第二柱


狐神「来た。 みんなー準備は良いわねー?」

神B「いつでもどうぞ!」

神C「待ってました!」


狐神「トップバッターの意地を見せるわよ!」

他神達「おー!」


狐神「神力放出開始!!」


ポワポワ

422: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:34:38 ID:UH6vFusI


─── ボロビル


B夫「よし。 第二柱神力結界の修復開始を確認」

狐娘『こちらりんごちゃん神宮です。 四柱結界の安定化を確認しました』

B夫「了解。 全四柱神力放出スタート!」


昭宮神『第一柱、神力放出開始!』

狐神『第二柱、神力放出全開!』

狗神『第三柱、放出開始しました!』

うさー『第四柱もはじめたよー』


狐娘『こちらりんごちゃん神宮、各四柱からの神力アップを確認しました』

凄爺『うおー! ちょっと強すぎないか!?』

狐娘『神力増幅問題ありませんのでこのまま維持して下さい、と凄爺様が申しております!!』

423: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:35:27 ID:UH6vFusI

B夫「さてと・・・ 猫神さま」

猫神『はいは~い』

B夫「お願いします」



─── キセキ野教会


猫神「オッケ~」

ミカエル「こちらも準備オッケーで~す」

猫神「シスターちゃん、大丈夫~?」

修道女「いつでも」

猫神「それじゃぁ~ 始めましょ~う!」

424: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:36:13 ID:UH6vFusI


ポワポワ


猫神「想像以上に・・・ 凄いねぇ~」クッ

ミカエル「世界中の教会に寄せられている祈りですから当然で~す」

修道女「くっ」ピカー


猫神「シスターちゃん大丈夫~?」

修道女「問題ありません!」ピカー

425: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:37:06 ID:UH6vFusI


─── ボロビル


B夫「パチカンからの神力を確認・・・ これは凄い・・・」

猫神『いけそう~?』

B夫「奥社の周りを完全に封印できてる。 周囲30m以内は掘削どころか機械も動かないはず」


B夫「りんごちゃん神宮、大丈夫ですか?」

凄爺『大丈夫じゃないわ!! なんじゃ、このクセのある神力は!』

狐娘『想像以上ですけど・・・ 余裕です!! と凄爺様が申しております!!』クッ

凄爺『おーい!』

426: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:37:42 ID:UH6vFusI

B夫「神ちゃん、内宮神ちゃん」

神様『なに?』


B夫「神使さん、A子ちゃん」

A子『ん?』

神使『何でしょうか』


B夫「後はよろぴこ」

427: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/29(火) 03:39:07 ID:UH6vFusI


─── 神宮・奥社


神様「さてと、四柱からの神力も来ているみたいだし」

内宮神「はじめますか」


神様「失敗は出来ないな」

内宮神「もちろん」


神様「・・・頼むぞ内宮神」

内宮神「頼まれた」ニコッ



神様・内宮神「第零柱! 神力封印!!」


ポワポワ

431: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:08:56 ID:svLU5C2.


─── 神宮・奥社前の森


エネルギー社社員「ここから先が整地場所だ」

作業員「奥にある小さなお社は?」

社員「取り壊してくれ。 あの下がボーリング場所になる」

作業員「分かりました」


A子「ちょっと待った!!」ズサー


一同「?」

神宮職員「君は・・・ 巫女のA子君か?」

社員「おい、部外者の方は大丈夫なんじゃなかったのか?」

職員「すいません・・・」

432: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:09:57 ID:svLU5C2.

社員「ここはすでに神宮の土地ではない。 出て行きなさい」

A子「出て行くのは貴方たちの方です!」ビシッ!

職員「A子君、気持ちは分かるけど宮司会で決った事なんだ。 ほら、早くあっちに行って」グイグイ

A子「その手を放しなさい!」


ピカッ


一同「!?」

A子「私は神宮が誇るミス巫女、A子神!」フンスッ

職員「そのミスは・・・ って、神?」

社員「・・・巫女なのか神なのかハッキリしたほうが良いぞ?」

433: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:11:15 ID:svLU5C2.

A子「奥社では今、重要な神祭が行われています」

社員「どんな仕掛けか知らんがそんな子供だまし、私には通用しないぞ」ポチッ


キュイーン


A子「神の存在を信じられない愚かな者よ! 神の・・・ 力を・・・ あじ・・・ 味?」

社員「やっぱり」ハァ

A子「ちょっと神使さん、イヤホンに雑音が入って聞き取れないよ」ボソボソ

社員「今、ジャミング装置のスイッチを入れたからイヤホンは使えないぞ?」

A子「えっ?」


社員「お前みたいな奴は今まで沢山経験してるんだよ。 おい、アイツを早く退かせ」

職員「ほらA子君、邪魔だからこっちに来て」グイグイ

A子「うわっ! ちょ・・・ ちょっと待って~」ズルズル

434: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:12:07 ID:svLU5C2.

職員「その着ている装束どこから持ってきたの? 神用の装束に似てるけど」

A子「だから私は本当に神なんだって~!」

職員「分かったから、ほら早く」


社員「ったく。 おいボサッとしてないで早く作業を進めろ」

作業員「それが、ここから先に入ると重機が止まってしまって・・・」

社員「ったく、今度はどんな手を使ってんだよ」


神使「そこから先は神聖な結界が張ってるので掘削は出来ませんよ?」スタスタ

社員「あ?」

435: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:13:16 ID:svLU5C2.

神使「大人しく諦めて今日はお引き取り頂けないでしょうか?」

社員「次から次へと面倒だなー」

神使「神宮の中でも最も神聖な場所を掘り返すなど、ましてや奥社を取り壊すなんて認められません」

社員「その神宮が認めてるんだが?」

神使「ここから先は神の領域です」

社員「これだから宗教絡みは面倒なんだよ」ポリポリ

神使「この地に手をつけてはいけません。 これは警告です」

社員「祟られるのか? 呪われるか? そういうの何百回も経験してるがまだピンピンしてるぞ?」

神使「貴方たちのやろうとしていることは───」

社員「はいはい。 分かったよ」ハァ

神使「・・・・・・。 理解が早くて助かります」ホッ

436: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:13:53 ID:svLU5C2.

社員「おい、ここで掘削を開始しろ」

神使「!?」

作業員「分かりました。 おい、ここでボーリングしてくれ」

神使「えっ、ちょっと・・・」

作業員「ほら、どいたどいた」シッシッ



神使「B夫さん、聞こえますか?」ボソッ

社員「さっきジャミングしてるって言っただろ。 通信機は使えないぞ」

神使「・・・・・・」

437: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:14:43 ID:svLU5C2.


 貴方たち何をやっているんですかー! タッタッタッ


神使「!?」

A子「巫女ちゃん?」


同僚巫女「遅くなってごめんね」

A子「どうして皆がここに・・・?」

同僚巫女「巫女が神の補佐をするのは当たり前でしょ?」

A子「巫女ちゃん・・・」

巫女B「それに、うちの巫女は神ちゃんを奉るだけあって首を突っ込むのが好きなんだよね」

職員「君たち、いつの間に! 今日は神宮内の立ち入は禁止と言ったはずだぞ!」

社員「ま~た大量に湧いてきやがってめんどくせーなー!!」

438: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:15:32 ID:svLU5C2.

同僚巫女「ここから先は神の領域です」

社員「さっき聞いた」

巫女B「この地に手をつけてはいけません。 これは警告です」

社員「それも聞いたよ!」

巫女C「貴方たちのやろうとしていることは───」

社員「だからそれもさっき聞いたよ!!」


同僚巫女「考え直していただけないでしょうか?」

巫女B「引かないってんなら私達にも考えがあるよ」

社員「力ずくで止めるか? 俺は空手と柔道有段者だから手強いぞ?」

巫女C「なにその古い脅し! 私なんか書道初段よ!」

巫女D「私も弓道6級!」

巫女E「私だって生け花3級!」

社員「お前ら・・・ 漫才集団かよ!!」タッタッタッ

439: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 05:16:13 ID:svLU5C2.


巫女達「きゃ~」ワラワラ

社員「まてコラ! 散ってんじゃねーよ!」


巫女B「こんな機械壊してやる!」ゲシゲシ

作業員「やめろ! 幾らすると思ってんだ!」


巫女C「こっちだって!」ガチャガチャ

作業員「ネジ抜くな! 掘削機動いてんだよ! っていうか、なんでネジ回しなんか持ってんだよ!!」


社員「お前ら・・・ 調子に乗りやがって・・・」イライラ

444: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:08:30 ID:svLU5C2.


─── 奥社


 ワー ワー
 ガヤガヤ


神様「!?」タッタッタッ

内宮神「ちょ、神ちゃん!? 今離れられるとキツいって~!」ポワポワ


バンッ


神様「な!」

内宮神「どうした神ちゃん。 外で何が?」ポワポワ

神様「あいつら結界外で掘削を開始しやがった」

内宮神「え!?」

445: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:09:44 ID:svLU5C2.

神様「おいB夫聞こえるか!?」


ザザザザ


神様「クソッ! 通信機が動かない」


 痛い! 痛い!


神様「!? あれは・・・」


社員「こっちは何兆円っていう規模のプロジェクト抱えた仕事してんだよ! 巫女風情が出張ってんじゃねーよ!」

同僚巫女「こっちは仕事じゃないのよ!巫女さんは奉職なんだから!!」

巫女B「そうだ! 守銭奴ごときが神ちゃんの地を汚すな!!」

巫女C「神ちゃんがこの地を守るためにどれだけ頑張ってきたと思ってんのよ!!」



神様「みんな・・・」

446: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:11:06 ID:svLU5C2.


ザザザザ


B夫『か─ ザザザ ちゃん─ ザザザ こえる?』

神様「!? B夫か!」

B夫『状況─ ザザザ ないんだけど─ ザザザ 』

神様「あいつら結界外で掘削を始めやがった!」

B夫『どのくら─ ザザザ ずれて─ ザザザ 』

神様「本殿方向に50m位前!」

B夫『調整す─ ザザザ 少し粘れ─ ザザザ 』

神様「・・・・・・」

B夫『か─ ザザザ ちゃん? 聞こえて─ ザザザ 』


 巫女「痛い痛い! やめてー!」

 A子「放せー!」ジタバタ

 神使「お願いします! 巫女さん達に手を出さないで下さい!」

447: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:12:14 ID:svLU5C2.

神様「・・・結界を全て解除してくれ」

B夫『え!?─ ザザザ どういう─ ザザザ』

神様「私に案がある」

B夫『ちょ、神ちゃ─── ザザザ』


ピッ


神様「内宮神」

内宮神「何? いま集中してるから手短に」ポワポワ

神様「・・・・・・」

内宮神「神ちゃん?」

448: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:13:14 ID:svLU5C2.

神様「結界維持はもう大丈夫そうだ。こっちに来てみろ」

内宮神「? あいつら諦めて出て行った?」トテトテ


神様「ほら、外に出て見てみ?」

内宮神「ん? まだ人が沢山いるっぽいけど」キョロキョロ


タッタッタッ
ガチャ


内宮神「ちょ、神ちゃん!?」

449: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:14:13 ID:svLU5C2.


 神使「内宮神様~」タッタッタッ


内宮神「あ! 犬ころ」

神使「どうしたんです? 神様は?」

内宮神「この中。 私を外に出して立てこもりやがった」

神使「え!?」

内宮神「神ちゃん! ここ開けろって!」ドンドン

神使「神様! 何を考えているんですか!?」ドンドン


 神様「すぐに皆を連れてここから離れろ」


神使「神様?」

内宮神「どういう意味だよ! 封印の維持は私の仕事だ! 早く開けろ!!」ドンドン

神使「神様! 何をする気ですか!」ドンドン

450: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:15:18 ID:svLU5C2.


 神様「神柱封印する」


内宮神「神柱・・・ おい、何考えてるんだ! ふざけるな!」

神使「神柱封印って・・・」

内宮神「私がするって約束だろ! 私にやらせろ!」

神使「まさか神様・・・」


 神様「犬ころ」


神使「・・・ぇ」


 神様「こうなる前にお前と二人きりで旅が出来て本当に良かった」


神使「何・・・ 言っているんですか・・・」


 神様「お前と一緒に過ごせた時間は私の宝物だ」


神使「神・・・ 様・・・?」

451: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:16:37 ID:svLU5C2.


 神様「楽しい時間を過ごせた事を心の底から感謝する」


神使「嫌だ・・・ 神様・・・ お願いですから出てきて下さい!」ドンドン


 神様「私は・・・ この国を守る。 お前や皆が好きと言ってくれたこの国を」


神使「神・・・様・・・」ストン

内宮神「おいこら! 何一人で格好つけてんだよ!」


 神様「内宮神、今度はお前が自由になる番だ」


内宮神「いい加減にしろ! 私はそんな理由で意識共有を切ったんじゃない!」

神使「まさか意識共有を切ったのって・・・ 内宮神さまの方から?」

452: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:17:41 ID:svLU5C2.

内宮神「お前には犬ころがいるだろ! これから二人で楽しく暮らすんだろうが!」

神使「内宮神さま・・・」


 神様「お前を一人こんな所に閉じ込めておくことなんて出来るわけ無いだろ! 見損なうな!!」


内宮神「神ちゃん・・・」


 神様「犬ころ・・・ いや、狛犬の神使よ」


神使「・・・・・・」


 神様「この国を頼んだ」


神使「何言っているんですか・・・ こんなに早く諦めるだなんて神様らしくないですよ・・・」


 神様「諦めてなんかないよ」


神使「え?」

453: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:18:28 ID:svLU5C2.

 神様「予定通りなだけだ」


神使「嫌です・・・ 神様のいない世界なんて、私には耐えられません・・・」


 神様「神使さま。あなたの事を心の底から愛しています・・・ ありがとう」


神使「神様! 待って下さい!!」


 神様「神勅! 最高神の任を我が神使へ委譲す!!」


ポワポワ


神使「神様ー!」

454: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:19:19 ID:svLU5C2.



 神様「神勅! 我が身を持って永久封印を命ず! 神柱封印!!」



ピカー
ゴゴゴゴ


 神様「後は頼んだ」


ゴゴゴゴ


神使「神様ーー!! 戻ってきて下さーい!!」


ピカッ
ゴゴゴゴ

455: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:20:27 ID:svLU5C2.


職員「うわっ。何だ!?」

社員「地震か!?」

作業員「祟りだ・・・ 祟りだー」タッタッタッ

社員「おい、お前達どこへ行く!」


A子「神ちゃん・・・ うそ・・・ 神ちゃん!?」ジタバタ

職員「ほら、危ないから暴れないで!」

A子「うるさい! 放せー!!」


バチバチッ


職員「痛!」

A子「神ちゃん!!」タッタッタッ

職員「A子君!」


A子「神ちゃん・・・ 嘘だ・・・」タッタッタッ

456: ◆8YCWQhLlF2 2018/05/30(水) 21:21:17 ID:svLU5C2.


ゴゴゴ… ゴ…


神使「神様? ・・・神様? どこですか」キョロキョロ

内宮神「・・・そんな」ドサッ


 A子「神使さーん! 神ちゃんは!?」タッタッタッ


神使「神様・・・ 神様・・・」


A子「ねぇ・・・ 内宮神ちゃん? 嘘でしょ?」


内宮神「何だよ・・・ 何なんだよ・・・」

A子「嘘だ・・・ そんな・・・ 神ちゃん!!」



神使「神様ー!!」

461: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:36:40 ID:4LGehj.I


A子「なんで? 何で神ちゃんが?」

内宮神「すまない、私が神柱封印をするなんて言わなければ・・・」

A子「こんなお別れなんて嫌だよ・・・」ポロポロ

内宮神「・・・・・・」


神使「神様・・・」ガクッ


ポトッ


神使「・・・・・・。 神様のお守り・・・」ギュッ

462: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:37:37 ID:4LGehj.I


~~~~~~
~~~~
~~



神様「あなたにこれを」ゴソゴソ

神使「これは・・・ 神様のお守り・・・」

神様「最後の1個はあなたに渡すと決めていました」

神使「・・・・・・」

神様「その中には他のお守りと違って、私のおまじないを入れてあります」

神使「おまじない?」

神様「ぜひ、これを神使さんに持っていて頂きたいのです」


~~
~~~~
~~~~~~

463: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:39:26 ID:4LGehj.I

神使「神様・・・」ゴソゴソ

A子「神使さん・・・ そのお守り、神ちゃんの」


神使「? 中に紙が・・・ 何か書いて・・・」

内宮神「それは・・・」

神使「ご存じですか?」

内宮神「・・・なんでも願いが叶う“最後の言霊”」

神使(幼女神さまから頂いた文字と同じ・・・)


A子「じゃぁ、それを使って神ちゃんを!」

内宮神「言葉だけ知っていても、最後の言霊を受け取っていないと効果はないんだ」

A子「誰が持ってるの!?」

内宮神「神ちゃんの前の最高神。 でも、神ちゃんは受け継いでない」

464: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:41:06 ID:4LGehj.I

神使「何故神様がこの言葉を?」

内宮神「800年位前によその国から来た奴に教えてもらったんだ。 うさーの所にいたクソ坊主」

神使「・・・・・・確か言霊を受け継ぐと前の最高神様が消えると聞いたことがあるのですが」

内宮神「そう。 だから神ちゃんは幼女神から言霊の受け取りを拒否してた」


神使(私が神様から最高神の命を受け、以前幼女神さまから最後の言霊を預かったという事は・・・)

神使「!?」

A子「神使さん?」

465: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:42:07 ID:4LGehj.I

神使「・・・・・・」ピピピ


prrrr prrrr


神使「あっ、キー子さんですか?」

キー子『神使さん、お久しぶりです』

神使「つかぬ事を伺いますが、幼女神さまはお元気でしょうか?」

キー子『幼女神さまですか? はい、隣でテレビを見て笑い転げておりますが』

 幼女神『キー子も見ろ。 エガちゃんが最高じゃぞ』ケラケラ

神使「・・・・・・」

キー子『神使さん? 急にどうされたんです?』

 幼女神『だれじゃ? ワシにも変わっ───』

神使「」ピッ

466: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:43:33 ID:4LGehj.I

神使(幼女神さまが消えていない・・・ 受け継ぐ順番が変わったから無効になった・・・?)

神使(いえ、この言霊・・・ 多分まだ使える気がします)

神使(神様がこれを私に託した理由・・・ 賭けてみますか)



神使「内宮神さま、ちなみにこれは何て書いてあるんですか?」

内宮神「・・・・・・」

神使「最後の言霊は幼女神さまが持っているんですよね? 私が聞いても大丈夫かと」

内宮神「キガルタ・・・ アンガルシェ」


神使「キガルタ アンガルシェ」


ピカー


A子「!?」

内宮神「なんだ・・・ この光は・・・」

467: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:44:16 ID:4LGehj.I


ピカー


内宮神「お前まさか!? まずい!」

A子「空から誰か降りてくる!」

内宮神「!?」


フワフワ
バサッ バサッ


社員「おい、何だよ・・・ あれ・・・」

職員「人が宙に・・・」

作業員「背中に・・・ は、羽根が付いてる!?」


バサッ バサッ

468: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:45:11 ID:4LGehj.I

神使「あなたは・・・」

?「お久しぶりで~す」

神使「住職・・・ いや、天使さん?」

A子「天・・・使・・・?」

ミカエル「ミカエルと申しま~す。 シニョリーナ、今度ゆっくりコーヒーでも」

一同「・・・・・・」

ミカエル「神がお呼びです。 一緒に」スッ

神使「神・・・?」

A子「キリストさんが助けてくれるの?」

ミカエル「何か誤解しているようですが、私はキリストの使いなどではありませ~ん」

神使「どういう意味です?」

ミカエル「私は神の使いで~す」

神使「・・・・・・」

469: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:45:57 ID:4LGehj.I

ミカエル「この姿であまり長くとどまれませ~ん、さぁ手を」

A子「お願い! 神ちゃんを助けて!」

ミカエル「神は肉体を失うと復活できませ~ん」

A子「そんな・・・」


内宮神「待ってくれ! そいつを連れて行かないでくれ!」

神使「内宮神様?」

内宮神「そいつまでいなくなってしまったら私は・・・ 罪の重圧に耐えられない・・・」


神使「私を神様の元に連れて行ってくれるのですか?」

ミカエル「甘えた事を言ってはいけませ~ん。 話があると言っているだけで~す」

神使「・・・・・・」

470: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 15:46:56 ID:4LGehj.I

ミカエル「行かないのですか?」

内宮神「頼む・・・ 連れいていかないでくれ・・・」

ミカエル「あなたの考えているようにはならないと思いますよ?」

内宮神「え?」


ミカエル「さぁ、手を」

神使「・・・・・・」スッ

ミカエル「目をつぶっていて下さ~い」


ピカー
バサッ バサッ



A子「神使さん?」キョロキョロ

内宮神「消えた・・・」

474: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:15:42 ID:4LGehj.I


─── ?


?「もう目を開けても大丈夫です」

神使「こ、ここは・・・」キョロキョロ

?「初めまして」

神使「誰です? どこにいるのですか?」

?「今は声だけで許して下さい」

神使「あなたがミカエルさんの言っていた・・・」

?「私には貴方たちのように名はありませんが、神の神と言ったところでしょうか。 女神とでも呼んでおいて下さい」

神使「神の神・・・」

女神「もちろん私の上には神がいて、その上にも神がいると思いますが」

神使「?」

女神「私にも分からないことはあります」

475: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:17:43 ID:4LGehj.I

神使「その女神さまがどうして私を・・・」

女神「この場所にあなたは長くとどまる事は出来ないので手短にお話しします」

神使「・・・・・・」

女神「あなたは先ほど“最後の言霊”を唱えましたね?」

神使「はい」

女神「統治を担う最高神のみが使う事の出来るたった1度の願い。 そのを願いを叶えたいと思います」

神使「じゃぁ神様を助けることが!?」

女神「ただし問題があります」

神使「問題?」

女神「あなたが最後の言霊を唱えられたという事は、あなたが新しい最高神だという事」

神使「・・・・・・」

女神「最後の言霊は唱えた最高神の身を犠牲にします。 知っていますね?」

神使「・・・承知しています」

476: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:20:37 ID:4LGehj.I

女神「そして、新たな最高神が最後の言霊を受け継ぐと前の最高神は消えるのです」

神使「しかし、幼女神さまは・・・」

女神「あれは、2つ前の最高神」

神使「・・・・・・」


女神「あなたの願いは前の最高神に戻ってきてもらう事ですね?」

神使「・・・はい」

女神「しかし、あの子は身を捧げ肉体を失いました。 神として復活することはできません」

神使「・・・・・・」

女神「しかし・・・ 誰の案ですか?」

神使「?」

477: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:21:31 ID:4LGehj.I

女神「随分と回りくどいことをされたようで。 私も言霊の受け渡しにこんな不備があるとは気付きませんでしたが」

神使「たぶん・・・ 偶然です。 いえ、こうなるようになっていたのではないでしょうか」

女神「・・・・・・。 そうですね」


トテトテ


神使「?」クルッ

?「・・・・・・」

神使「!? 神・・・ 様・・・」

478: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:22:12 ID:4LGehj.I

?「こんにちは」ニコッ

神使「神様にそっくり・・・」

女神「全く同じはずですが、違いが分かるのですか?」

神使「私が神様と他の方を間違えるわけありません」

女神「そうですか」

神使「それで、神様は一体!?」

女神「もし、どのような形でもというのなら願いを叶えましょう」

神使「どのような形でも? というのは・・・」

女神「言葉の通りです」

神使「・・・・・・」

女神「先ほども言ったとおり、神は肉体を失うと再び神として生を与えることが出来ません」

神使「・・・・・・」

479: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:23:12 ID:4LGehj.I

女神「しかし、あなたは最高神の身を捧げ、完全とは言えないまでもその願いを叶える事が出来ます」

神使「構いません。 それで神様がまた皆と楽しく暮らせるのであれば!」

女神「分かりました。 短い間でしたが、あなたは最高神を終えその力を次の相応しい人物に移します」

神使「はい」


女神「力を楽にして」ポワポワ

神使「」

女神「最後に、何か言い残すことはありますか?」

神使「神様がこの先ずっと幸せに過ごせるようお願いします」

女神「ずっと・・・。 分かりました、その願い聞き入れましょう」

神使「ありがとうございます」フカブカ


ピカー


女神「お幸せに~」

480: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:24:09 ID:4LGehj.I


女神「・・・・・・」


ミカエル「終わったみたいです~ね」テクテク

女神「ミカエルですか。 ここに来るなんて珍しいですね」

ミカエル「こんな時でなければお会いできませんから」

女神「教会で何かやっていた途中ではないのですか?」

ミカエル「そう言えばそうで~すね。 急に消えたからビックリしているかも知れませ~んね」

女神「あなたも長くこの場所にいられません。 お戻りなさい」


ミカエル「良いので~すか?」

女神「何がです?」

ミカエル「最後の言霊は1回の願いとの引き換えで~すよね?」

女神「そうですね」

ミカエル「叶えすぎじゃないで~すか?」

481: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:25:02 ID:4LGehj.I

女神「・・・ミカエル、あなたはどこまでこの件に関わっているのです?」

ミカエル「私は成り行きで動いているだけで~す」

女神「800年前、あなたは何故あの子に最後の言霊の読み方を教えたのですか?」

ミカエル「さぁ? 覚えていませ~んね」

女神「初対面で裸に剥かれたことは覚えているのに?」

ミカエル「・・・・・・」

女神「まぁ、良いです。 些細なことですから」

ミカエル「それでは、私は下界に戻ってコーヒーを飲んできま~す」

482: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:25:40 ID:4LGehj.I

女神「あっ、ミカエル」

ミカエル「?」


女神「今度ここに来ることがあれば、牡蠣とやらを持ってきて下さい」

ミカエル「分かりま~した」


女神「出来れば“鬼牡蠣”を!」

ミカエル「気長にお待ち下さ~い」



───
─────
──────

483: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:26:44 ID:4LGehj.I

──────
─────
───



─── 時は流れて……


A子「ふぃ~ もう歩けないよー」テクテク

お付き「ここに来たいと行ったのはA子さんじゃないですか・・・」

A子「言ったけどさぁ~」

お付き「あっ! あれじゃないですか?」

A子「どこどこ?」キョロキョロ

お付き「丘の上です。 ほら、人もいますよ?」

A子「!!」タッタッタッ

お付き「ちょ、A子さん!」

484: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:27:25 ID:4LGehj.I


─── 丘の上の小さなお店


女性「どうもね~」

客「美味しかったよ。 また来るね」テクテク

男性「ありがとうございました」


女性「・・・・・・。 さてと、じゃぁ今日は終わりにしちゃいましょうか」

男性「そうだね」


 A子「あの!」


女性・男性「?」クルッ

485: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:28:18 ID:4LGehj.I

A子「あの! まだ・・・ まだ、開いてますでしょうか!?」

女性「・・・・・・。 ごめんね、今日はもうおしまいなの」

A子「そんな・・・」

女性「今日は大切なお客様が来る予定でね」

A子「・・・・・・」


女性「どうします? あなた」

男性「販売用の牡蠣はもう無くなってしまいましたが、確か取れたての最高級の物があったよね」

女性「そういえば」

男性「最高神様にお出しするにはもってこいだと思うよ? なにせ鬼牡蠣だから」

女性「確かに。 神宮美食クラブきっての食通ですからね」

A子「・・・・・・」ウルウル

女性「久しぶりだね。 A子ちゃん」

A子「お久しぶりです」フカブカ

486: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:29:29 ID:4LGehj.I

男性「そちらの方は?」

お付き「神宮の者です。 大宮司のご両親様にお目にかかれて光栄です」ペコリ

男性「神宮の方ですか。 いつも息子がお世話になっております」ペコリ

女性「迷惑掛けてない? あの子、昔から勢いだけで生きている節があるから」

お付き「そんな事は・・・ 多少やんちゃなとことがあるのは事実ですが・・・」

女性「やっぱり?」フフッ


A子「うっ・・・ うっ・・・」ポロポロ

お付き「ちょ、A子さん!? どうされたんですか?」オロオロ


A子「神ちゃん、神使さん・・・」ポロポロ

神使「噂は聞いています。 立派な神になったみたいですね」

A子「そんなこと・・・ ない・・・」グスッ

神様「あの神宮をここまで変えるなんて、さすが私の認めたA子ちゃん」ニコッ

A子「うっ・・・ 私・・・ 神ちゃんみたいな・・・ 神になりたくて・・・ 一生懸命頑張った」ポロポロ

487: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:30:11 ID:4LGehj.I

お付き「えっ!? 神?」

神様「元だけどね。 今はただの牡蠣小屋の陽気なおばちゃん」

A子「そんな事ない。 今なら分かる・・・ 神ちゃんがどんなに凄い最高神だったかが」

神使「おや、私も最高神だったんだけどね」

神様「1日だけ、いや半日だけ?」

お付き「え!? 最高神!?」アワアワ


神使「お付きの方は、神使さんですか?」

お付き「は、はい! A子神のお付きで狛犬の神使と申します!」フカブカ

神様「あら、狛犬だって。 あなたと同じ」

神使「元だけどね」

お付き「この国の礎を築いた最高神様にお目にかかれて光栄です!」フカブカ

神様「私達はもう神や神使じゃないんだから、そんなに気を遣わないで?」

488: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:30:55 ID:4LGehj.I

お付き「まさか大宮司のご両親様が元最高神様だったなんて・・・」

神様「あの子には内緒にしておいてね?」


A子「神ちゃん! 会いたかったよー!」ダキ

神様「おっと~ 今日はお付きの神使と二人だけでここまで来たの?」

A子「うん。 最高神が自由に外出できるようになるまでこんなに時間と労力が必要だったなんて・・・」

神様「頑張ったね」ナデナデ

A子「やっぱり神ちゃんは凄い・・・ 凄いよ」

神様「でも、事前に神宮から連絡があったから完全に自由になるまではもう少し先みたいだけど」クスッ

A子「だね」クスッ

489: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:31:31 ID:4LGehj.I

神使「でも、そんな貴重な時間を使ってまでどうしてこんな所へ来たんです?」

A子「今日はお二人にお願いがあって参りました!」

神様「あら、私達なんかに最高神様からお願い?」

神使「これは断るわけにはいかなそうだね」


A子「えっと・・・ その~」

神様・神使「?」




A子「二人とも、神にならない?」ニコッ

490: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:32:08 ID:4LGehj.I


─── 夜・丘の上


神様「・・・・・・」

 神使「ここにいたのか」スタスタ

神様「?」クルッ

神使「何してるんだい?」

神様「何も。 ただ空を」


神使「隣、座っても?」

神様「どうぞ」

神使「じゃぁ、失礼して」

神様「・・・・・・」

491: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:32:48 ID:4LGehj.I

神使「今日は晴れていて月が綺麗だね」

神様「そうね」


神使「ふふっ」

神様「?」

神使「すまない。 ちょっと思い出し笑いを」



神様「ねぇ、あなた」

神使「なんだい?」

神様「私、間違ってなかったみたい」

神使「そうだね」

492: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:33:44 ID:4LGehj.I

神様「二人を見て思い出しました。 あなたと歩んできた旅を・・・」

神使「私もだ」


神様「毎日がとても楽しくて、毎日がとても幸せで」

神使「あぁ。 でも・・・」

神様「?」

神使「神宮の神柱封印の件だけはいただけなかったな」

神様「まだ怒っているんですか?」

神使「まさか」

神様「でも・・・ 確かに無謀な賭けでした」

神使「君からもらったお守り、あの時気がつかなかったらと思うと今でもゾッとするよ」

神様「私は信じていましたよ?」


神使「今も昔も、君は変わらないな」

神様「?」

神使「君といると毎日とても楽しい旅をしているようだ」

493: ◆8YCWQhLlF2 2018/06/01(金) 21:34:32 ID:4LGehj.I

神様「もう少しだけ、二人の旅を続けさせて下さい」

神使「もちろん。 まだまだ先は長そうだけどね」

神様「ふふっ」クスッ


神使「これも予定通りなのかい?」

神様「さぁ?」


神使「やっぱり君は・・・」




神使「神様だ」ニコッ

神様「神力ゼロですが」ニコッ





神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
── おしまい

522: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:53:38 ID:soVEIZkM
完結しているので続けるのは難しいかなぁと。
書き切った感もありますし。

でも、スレが余っているのは勿体ないか……

523: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:54:55 ID:soVEIZkM

■ 神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 番外編・2018年夏


ガタンゴトン


神様「」ゲシ ゲシッ

神使「・・・・・・」

神様「」ゲシ ゲシッ

神使「神様、さっきから痛いんですが・・・」

神様「何でこの電車は冷房がついてないんだよ!」

神使「今時珍しいですよね」

神様「今は2018年だぞ? あり得ないだろ!」

神使「神様? 一応は日本の神なんですから西暦でなく和暦を使いましょう」

神様「グローバルに生きる私は常に世界基準なんだよ! あと一応は余計だ」ゲシッ

神使「しかし、本当に暑いですね・・・」


ガタンゴトン

524: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:55:34 ID:soVEIZkM


─── 1時間後・とある田舎の駅


プシュー


神使「ホーム低いので気をつけて下さいね」

神様「はいよ」ガクッ

神使「・・・・・・」

神様「うん。 思ったより低かったね」

神使「ちゃんと下を見て確認しないからです」

神様「私は常に上を見て歩む。 決して下は見ない」

神使「そういう意味ではありません」

神様「しっかし、ビックリする位何もないな」キョロキョロ

神使「凄いですね、見渡す限り一面の緑です」

神様「見える範囲に人工物がないんだけど。 ここに駅は必要なのか?」

525: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:56:09 ID:soVEIZkM

神使「さて、それでは行きましょうか」

神様「ちょい待ち」

神使「?」

神様「私が次に言いたいことは分かるよね?」

神使「要調査神社です」

神様「帰る。 あとはよろぴこ」トテトテ

神使「仕事です」グイッ

神様「何の調査だよ~」ジタバタ

神使「これから行く神社は予算が足りなく、このままでは廃社になってしまうそうなんです」

神様「そんな神社腐るほどあるだろ」

神使「主神の居られる神社というのが問題なんです」

神様「そんなの神宮で予算付けてやれよ。 神がいれば最低限の金は出すだろ」

526: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:56:54 ID:soVEIZkM

神使「神宮の資料によると寄付金を断っているようで」

神様「は? お金くれるのを断るなんてあり得ないじゃん、何で?」

神使「それを調べるのが私達の仕事です」

神様「はは~ん、売り上げの大半を給料にして、神社の財布と個人の財布は別です! とか言うパティーンね」

神使「どうしてそんな悪知恵ばかり知っているんですか・・・」

神様「ちなみに、その神社運営が下手な神って?」

神使「この先にある大神之神社の主神様です」

神様「大神之神社?」

神使「はい、狼之神様こと、大神様です」

527: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:57:29 ID:soVEIZkM


─── 田舎道


テクテク


神使「見えました。 あれが大神之神社のようですね」

神様「鳥居の横にあるのは社務所か?」

神使「売店のようですが」

神様「こんなド田舎に売店なんか作っても誰も来ないんじゃない?」

神使「随分と寂れていますね」

神様「ちょっと寄ってこーぜ、オシッコしたい」トテトテ

神使「またそんなはしたない事を・・・」

528: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:58:44 ID:soVEIZkM


─── 売店


ガラガラ


神使「ごめんくださ~い」

神様「誰もいないね」キョロキョロ

神使「これは・・・ 駄菓子屋さんのようですね」

神様「すげー くじとか安っぽいオモチャも置いてる。 ホコリ被ってるけど」トテトテ

神使「神様、勝手に入っちゃダメで───」


ダダダダダ


神使「?」

529: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:59:16 ID:soVEIZkM

巫女「いらっしゃいませー!」ズサァー


神使「あっ、勝手にすいません」

巫女「いえ大丈夫です!」ハァハァ

神使「お忙しいようでしたら後ほどお伺いいたしますが」

巫女「気にしないで下さい! 全然忙しくないです!」

神使「?」


神様「これと~ あっ、これも」ゴソゴソ

神使「ちょっと神様、買うんですか?」

神様「当たり前だよ、餅飴は青リンゴと・・・ おっ、コーラもあるじゃん」

530: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 02:59:51 ID:soVEIZkM

巫女「・・・・・・」ソワソワ

神使「失礼ですが、大神之神社の巫女さんでしょうか?」

巫女「え? 私ですか?」

神使「はい。 巫女さんの格好をしているもので」

巫女「あぁ。 まぁそんなもんです」

神使「? ということはこちらの駄菓子屋さんも神社が運営を?」

巫女「そうなりますね」

531: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:00:27 ID:soVEIZkM

神様「私これ買う」ドサッ

巫女「!? こ、こんなに沢山・・・」

神使「あんまり無駄遣いしちゃダメですよ?」

神様「私の全財産を投入だ!」

巫女「全部で180円です!」

神様「はい」ジャラジャラ

神使「それが全財産なんですか・・・」


巫女「嬉しー!」キャッキャッ

神様・神使「はい?」

巫女「売れたの久しぶりなんです!」

神様・神使「・・・・・・」

巫女「今日はおかげで贅沢できそうです」ニヘラ

532: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:01:11 ID:soVEIZkM

神使「えっと・・・」

神様「し、神使君も何か食べたいんじゃない?」

神使「そ、そうですね。 では、私は・・・ これを頂けますか?」

神様「いいねぇ~ 酢イカ。 私も好き」

神使「1本おいくらですか?」

巫女「20円です」

神使(安い・・・)

神様「神使君金持ってんだろ? ここは大人買いだろ~」ウリウリ

神使「で、では全部頂きます」

巫女「え!?」

神使「この容器ごと・・・ でも何本入っているんでしょうか」

巫女「100本です!」

神使「あっ、1本も売れていないんですね・・・ では2000円で」スッ

巫女「あ・・・ ありがとう・・・ ございます・・・」ウルウル

533: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:01:50 ID:soVEIZkM

神様「じゃ、またね~」トテトテ

神使「ちょっと、神様」グイッ

神様「グヘッ!」

神使「駄菓子を買いに来たんじゃないですよ」

神様「あ? そうか、オシッコをしに来───」

神使「すいません、私達こちらの神社に用がありまして」

巫女「神社に・・・」ピクッ

神使「社務所は横の鳥居から入っていけば良いんでしょうか?」

巫女「遊び半分で参拝に来たのであれば、今すぐ立ち去った方が身のためですよ?」

神使「そういう訳では・・・ 狼之神様とお会いしたく」

巫女「!?」

神使「申し遅れました。 私達、神宮の者です」

巫女「神宮?」キョトン

534: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:02:37 ID:soVEIZkM


─── 大神之神社・参道


テクテク


巫女「先ほどは失礼しました。 大神様のお知り合いとは知らず・・・」

神様「かなりご無沙汰だけどね」


神使「木々が凄いですね。 だいぶ気温が低く感じます」

巫女「無造作に生えているように見える木も、気温を下げるために手入れをして配置しているんです」

神使「へぇ~ 参拝者思いな作りなんですね」

巫女「はい。 神社に踏み入れたら一気に気温が低くなった方が怖さが増しますからね」ニコッ

神使「怖さ・・・ ですか?」

535: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:03:17 ID:soVEIZkM

巫女「あっ、こちらが本殿です」

神使「これは随分と・・・」

神様「壊れ~かけの~神社~♪」


神使「主神様はこちらに?」

巫女「はい。 ただ、今はあまりお見せできる状態ではなく」

神様「大丈夫だって。 そういうの馴れてるし」

巫女「そうですか? では」


ギィ


巫女「大神様、お客様です」

大神「フンッ! フンッ! あ? 客ってだ───」


ギィー バタン

536: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/09(日) 03:03:58 ID:soVEIZkM

神様・神使「・・・・・・」

巫女「どうされたんです? 急に閉めて」

神様「ねぇ、真っ裸の女が竹刀振ってたんだけど・・・」

神使「神様にもそう見えましたか」

巫女「最近暑いですし」

神様「いや、まぁ何となく言いたいことは理解できるし気持ちも分かるけど・・・」


バンッ


大神「おい、騒々しいぞ!」

神様「お巡りさ~ん! 露出狂の痴女がいます~」

大神「露出なんかしとらんわ! 褌とサラシを巻いているだろうが!」

神様「服着ろよ! 服!」

神使(神様がそれを言いますか)

大神「まさか・・・ 神ちゃんか!?」

543: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:31:41 ID:1JKUSx3.


─── 社務所


巫女「お水です」コトッ

神様「ありが、えっ!? 水?」

巫女「どうぞ」コトッ

神使「あ、ありがとうございます」


神様「お茶請け、いや水請けとかないの?」

神使「水請けって・・・ 先ほど買った酢イカならありますが」パカッ

神様「水と酢イカって合うか?」

巫女「頂きます」クチャクチャ

神様「売ったお前が食うんかい・・・」

544: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:34:02 ID:1JKUSx3.

大神「それより、どうしたんだ神ちゃん。 随分と久しぶりじゃないか」クチャクチャ

神様「仕事だよ。 ってお前も食うのかよ」

大神「土産だろ? そんな事よりこんな田舎に仕事なんかあるのか?」

神様「お前の神社が参拝者もなく赤字続きの借金まみれで潰れそうだから調べに来たんだよ」

神使「そんなぶっちゃけなくても・・・」


大神「えーと、君は神ちゃんの連れか?」

神様「あ~ これは犬ころ」

神使「神様のお付きで狛犬の神使と申します」フカブカ

大神「ほぉ~ 狛犬の神使とは珍しいな」

545: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:35:17 ID:1JKUSx3.

巫女「わぁ~ 私以外の神使って初めてお会いしました!」キラキラ

神使「よろしくお願いいたします」ペコリ

巫女「神使さんは、その・・・ お一人なんですか?」モジモジ

神使「え!? いや・・・ まぁ・・・」

神様「これは私の犬ころだから。 狛犬はワシントン条約で保護されてる希少種だから交尾はダメ」

神使「そんな物で保護されていません。 あと、はしたない言葉を使わないで下さい」


巫女「確かに人や神と少し違う匂いがしますね」クンクン

神使「うっ・・・///」

神様「悪魔に魂を売り渡した極悪邪道腐れ犬ころだし腐臭とか漂ってるんじゃない?」

神使「失礼な・・・」

巫女「とても良い匂いです。 心が安らぐような気分が落ち着くような」クンクン

546: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:36:23 ID:1JKUSx3.

大神「これは、ラベンダーだな」

神様「狛犬ってラベンダーの匂い発するの?」

神使「発しません。 ラベンダーの香りの匂い袋をもっているもので」

神様「相変わらずオシャレさんですね~」

神使「ほんの少しだけなのですが、よくお分かりになりましたね」

巫女「鼻には自信がありまして」


神様「ちなみに私はどんな匂いする?」

巫女「そうですね・・・ 草木の香りと言いますか、大地の香りと言いますか・・・」

大神「正直に言ってやれ。 雑草と土の匂いだ」

神様「・・・・・・」

547: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:37:43 ID:1JKUSx3.

神使「ちなみに巫女さんは何の神使さんなのですか?」

巫女「私は───」

大神「まてまて、今こそ名乗りの成果を見せるときじゃないのか?」ニヤッ

巫女「!? 確かに!」

神様・神使「?」

神様「まぁ、狛犬には負けるかもしれんがな。 全力でいけ」

巫女「はい!」


大神「こいつは別嬪じゃぞ? オスなら皆イチコロだ」

神様「ほぉ~ん。 私の美貌には足下にも及ばないと思うけどね!」


大神「さぁ、我が使いにしてこの地を守りし巫女よ! お前の真の姿を見せるが良い!」

548: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:38:48 ID:1JKUSx3.

巫女「ウゥ・・・」グルルル

神様・神使「!?」

巫女「グォ グガーー!!」メキメキ


ボキボキ ミシミシ


巫女「グギャーーー!!」グルルル


神様・神使「・・・・・・」

大神「うんうん、良い変身っぷりだ」

巫女「ありがとうございます!」


大神「どうだ神ちゃん、うちの神使は」

神様「う、うん。 立派な狼娘さんなのね・・・ なんか、生々しい変身だったね・・・」

神使「そ、そうですね。 ホラー映画のようでした・・・」

549: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/10(月) 00:40:54 ID:1JKUSx3.

大神「随分とありきたりな評価だな」

狼娘「少し拍子抜けですね。 大抵の人は泣き喚くか失神しますから」

大神「変身途中で涎をまき散らした方が良いんじゃないか?」

狼娘「なるほど。 最後に舌を垂らしてボタボタと涎がしたたり落ちれば更に怖いですね」

神様「いやいや、今ので十分怖いから」

神使「私も、腰が抜けて立てない位ビックリしました」

神様「犬ころもまだまだだな。 私を見ろ、オシッコ漏らしたぞ」ジワッ

神使「・・・・・・」


大神「お~ 95点! 合格点だ」

狼娘「ありがとうございます! 歴代3位の高得点です!」

大神「それより神ちゃん、あんまり汚さないでくれよ」


狼娘「大丈夫ですか?」ズイッ

神様「きゃー! 大丈夫! 怖いから変身解いて!」ジュワッ~

551: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/11(火) 01:31:44 ID:N4fvY2DA


─── 10分後


ガチャッ


神使「あっ、神様お風呂上がりました? って、また素っ裸で・・・」

神様「・・・・・・」ブルブル

大神「体くらい拭いてこい」

神様「み、水風呂なんですけど・・・ 冷え冷えなんですけど・・・」ブルブル

大神「暑いし水でも大丈夫だろ」

狼娘「湧き水って気持ち良いですよね。 お清めにも丁度良いですし」

神様「水なんかで何が清まるんだよ」ブルブル

神使「神がそんな事言わないで下さい」

552: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/11(火) 01:32:55 ID:N4fvY2DA

神様「神使君、早く着る物!」

神使「神様が着る物をねだるなんて珍しいですね」

神様「こんなん風邪引くわ!」

大神「鍛え方が足りないんじゃないのか?」

神様「どう鍛えりゃあんな冷たい水風呂に耐えられるようになるんだよ!」

神使「Tシャツと短パンは洗濯中なので巫女服でも良いですか?」ゴソゴソ

神様「ん」イソイソ

大神「ほぉ~ 神ちゃんの巫女姿なんて初めて見るな」

神使「そうなんですか? 神様は巫女服以外Tシャツとジャージ、後は小学生みたいな服しか持っていないので」

神様「」ゲシッ

553: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/11(火) 01:34:18 ID:N4fvY2DA

大神「昔はもっとゴテゴテした動きにくそうな服を着てたよな」

神様「装束だよ、いつの話してんだよ。 それを言うならお前だっていっつも鎧着てたじゃないかよ」

神使「鎧って・・・ いつの時代ですか・・・」

大神「流石に今の時代にあんな物着てても役に立たないしな」

狼娘「・・・・・・」


大神「あ~ そんな事より、ココへは何をしに来たんだ?」

神様「さっき言っただろうが。 廃社寸前の経営状態だから調べに来たんだよ」

大神「そんな事言われてもなぁ~ 人が来ないんじゃどうしようもないだろ」

神使「休日なのに参拝者の方が1人も来ていないようですね」

大神「もう何ヶ月も鳥居から奥に来た奴はいないな」

554: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/11(火) 01:36:47 ID:N4fvY2DA

狼娘「威嚇が足りないんでしょうか?」

神様「威嚇してんのかよ・・・」

大神「畏れは大事だろ」

神使「失礼ですが、地元の方や氏子さん達は?」

大神「年に一度ある祭儀の時だけだな」

狼娘「それも年々人が来なくなり去年はゼロでしたね」

神様「祭儀って?」

狼娘「大神様と私で参列者を徹底的に恐怖へ陥れるんです」

神様・神使「・・・・・・」

神様「もしかして、さっきのホラー映画ばりのやつを披露したり?」

狼娘「はい! でも最後に本殿までたどり着いたのは10年位前でしたね」

555: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/11(火) 01:37:32 ID:N4fvY2DA

神使「何でそんなことを?」

大神「神としての威厳を示す。 畏れは大事だろ?」

神様「この神社に人が寄りつかず破産寸前な理由が分かった気がするよ」ハァ

神使「そうですね」

大神・狼娘「え!?」

神様「え? じゃねーよ! 気付よ!」

大神「狼娘、分かるか?」

狼娘「う~ん、やっぱりヨダレをまき散らさなかったのがいけないんでしょうか」

神様「ちげーよ! 逆だよ、逆!」

大神・狼娘「?」キョトン

神様「はぁ~・・・ これは面倒くせーな・・・」

557: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:40:13 ID:lsHExe6s


─── 夕方・神社近くの田舎道


テクテク


神様「暇だから散歩に出たは良いものの、ビックリする位何もない村だな」

神使「でも長閑で良い雰囲気です」


神様「おっ、ようやく第一村人発見」

神使「畑のお手入れでしょうか?」


神様「こんちわ~」

村人「ん?」クルッ

神使「立派なトウモロコシですね」

558: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:41:09 ID:lsHExe6s

村人「見かけん顔ですな。 旅行かい?」

神様「まぁそんな感じ」

村人「残念だけど、この村には何もないで?」


神様「・・・・・・」ジーッ


村人「モロコシが気になるのか、食べるけ?」ポキッ

神様「いいの!?」

神使「すいません、何か催促したような感じで・・・」

村人「えぇって、今年は余るほど収穫があってな」

神様「甘い!」モグモグ

神使「生で食べるんですか・・・」

559: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:42:06 ID:lsHExe6s

村人「このモロコシは生でもいけるで」

神様「イケルで」モグモグ

神使「・・・では私も」パクッ

村人「どうだ?」

神使「本当ですね。 生でもこんなに美味しいと動物に持って行かれたり大変じゃないですか?」

村人「あ~ ここらの畑はそういうのがないんだよ」

神様「猿とかいないの?」

村人「猿もイノシシも沢山いるがな。 でも畑の作物は絶対荒さんのだわ」

神使「珍しいですね」

村人「良かったらもう少し持っていくか?」

神様「マジで! 頂戴頂戴」

560: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:43:16 ID:lsHExe6s


 ワオーン


村人「!?」ピクッ

神使「遠吠え?」

村人「あ、すまん。 用事思い出したからワシは帰るわ」

神使「え? あ、はい。 ごちそうさまでした」

村人「あんたらも日が落ちる前に村出てはよ帰れよ。 モロコシは好きなだけ持っていってええから」スタスタ


神使「急にどうしたんでしょう」

神様「ねー」ポキポキッ

神使「日も傾いていますし、暗くなる前に戻りましょうか」

神様「もう少し」ポキポキッ

神使「それ以上はダメです。 持っていくのは2~3個にして下さい」

561: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:44:04 ID:lsHExe6s


─── 10分後


テクテク


神様・神使「・・・・・・」

神様「神使君?」

神使「・・・はい」

神様「気付いてる?」

神使「えぇ。 あまり良い感じではなさそうですね・・・」

神様「せーの、で振り向いてみようか」

神使「分かりました」

神様「せーの!」

神様・神使「」クルッ

562: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:45:01 ID:lsHExe6s


グルルル


神様「な~んだ・・・ 野生のチワワが唸ってるだけじゃ~ん」

神使「どう見ても立派な狼さんだと思います・・・」


狼「グルルル」ノシッ ノシッ


神様「こっちに来るんですけど・・・ お前仲間なんだから私達は無害ですって通訳しろよ」

神使「狼さんの言葉なんて分かりませんよ・・・」

神様「使えねー犬ころだな。 ヤベーな、逃げるか?」

神使「目を反らすと襲ってくると思いますが・・・ 神様の持っているトウモロコシを餌にするというのは?」

神様「それはあり得ない。 絶対にダメだ、これだけはダメだ」ギュッ

神使「しかし、狼さんがトウモロコシをガン見てますが」

563: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:46:05 ID:lsHExe6s

狼「グオー!!」

神様・神使「ひえぇ~!」


?「こら! アンタは何吠えてるの!!」ペシッ

狼「キャウ~ン!」


神使「狼娘さん!」

狼娘「大丈夫でしたか? 本当に申し訳ありません!」ペコペコ

神様「助かった~」ストン


狼娘「このお二人は大神さまの客人です! 匂いで分からないんですか!」

狼「」プイ

狼娘「きちんと謝りなさい!」

564: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/12(水) 01:47:04 ID:lsHExe6s

狼「グルル」

狼娘「大神さまの右腕である私にまで牙を見せるとは良い度胸です! お前は反省するまでご飯抜きです!!」

狼「!?」ペコリペコリ

狼娘「今更謝っても無駄です! 私が本気で怒る前に早くお山に帰りなさい!!」

狼「」タッタッタッ


狼娘「大丈夫ですか? 立てます?」

神様「うん・・・ ちょっとだけ漏れたけど」

神使「またですか・・・」

神様「に、2滴だけだよ」ジュワ~

神使「全部出し切ったように見えますが・・・」

566: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:27:59 ID:Qvq90ftc


テクテク


神様「犬ころ、疲れたからおんぶ」

神使「・・・・・・。 すいません、今日はちょっと・・・」

狼娘「本当に申し訳ありませんでした。 後でキツく叱っておきますので」

神様「この地の守護も担ってるんだから、ちゃんと管理しておかないとダメだと思うの」

神使「確かに野生の狼さんが現れると、村人の方もビックリするかも知れませんね」

狼娘「村の方達の臭いは全員教えているので、絶対牙を剥いて危害を加えることはないのですが・・・」

神使「人里まで降りてきて、お腹でも空いていたんですかね」

狼娘「いえ・・・ ちょうど見回りの時間なんです」

神様「見回り?」

狼娘「はい。 村の作物を荒らす猿やイノシシを追い払ったり部外者が侵入しないようにと」

神使「なるほど、私達の匂いを部外者だと思ったわけですね。 しかも神様はトウモロコシを持っているせいで余計に」

神様「これは盗んでないし!」ギュッ

567: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:29:59 ID:Qvq90ftc

狼娘「どちらかというと、お二人に付いた大神さまの匂いが原因かと」

神使「大神さまの匂い?」

狼娘「はい。 大神さまは村の狼たちにとって雲の上のような存在ですから」

神様「でも唸られたけど」

狼娘「大神さまと決闘をした凄腕と思い、自分も決闘したいと思ったようです。 大神さまと決闘することは皆の憧れですから」

神様「なにその危険な関係・・・」

神使「でも、どうして狼さん達が村を守るお仕事をされているんですか?」

狼娘「この村の作物を守るためです。 昔は作物の出来不出来が村人の死活問題でしたから」

神様「なるほどね~ その代わりに村人から神社に作物の献上があったとか?」

狼娘「」コクッ

神使「持ちつ持たれつですね。 山の狼さん達の食事は献上から賄っているのですか?」

狼娘「・・・いえ」

神様「今の時代に献上とか概念ないだろ~」

神使「え!? それではタダ働きじゃないですか」

狼娘「・・・・・・」

568: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:30:52 ID:Qvq90ftc

神様「大神は何て?」

狼娘「見回りだけは絶対に手を抜くなと。 それが私達の勤めだと」

神様「ふ~ん・・・」

神使「参拝のない神社運営に狼さん達の餌、それは赤字が続きますよね・・・」

神様「しかも駄菓子屋にも客は来ず、と」

狼娘「う~・・・」

神使「大神さまはどうされるつもりなんでしょう」

神様「さ~ね~」


狼娘「あの!」

神様・神使「?」

狼娘「神社を・・・ 大神様を助けてあげて下さい!!」

神様「・・・・・・」

569: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:31:35 ID:Qvq90ftc


─── 駄菓子屋


ガラガラ


狼娘「どうぞお入り下さい」

神様「おじゃま~」

神使「失礼します」

狼娘「よろしければ好きな駄菓子を取って食べて下さい」

神様「いいの!?」

神使「ダメです。 売り物なんですから」

狼娘「気にしないで下さい。 置いておいてもお客さん来ませんから」ニコッ

神使「・・・・・・」

狼娘「お茶持ってきますので中に入ってお待ち下さい」スタスタ

570: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:32:26 ID:Qvq90ftc

神使「神様、何とかならないですかね?」

神様「ふもふ、ふぁふもむ」モグモグ

神使「・・・・・・」

神様「ふもふぉ、ふもぉもむ」モグモグ

神使「・・・・・・食べた分はお金払って下さい」

神様「ふもっ!?」

571: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:33:36 ID:Qvq90ftc


─── 駄菓子屋・奥


テクテク


神様「あれ? 下に行く階段がある」

神使「地下室でもあるんですかね?」


狼娘「あぁ、倉庫です」スタスタ


神使「倉庫ですか?」

狼娘「元々この場所には道場がありまして、駄菓子屋を作るときに地下に移したんですけど今は倉庫として使っています」

神様「ふ~ん」

狼娘「さっ、どうぞお入り下さい」

572: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:34:29 ID:Qvq90ftc


─── 駄菓子屋・奥の部屋


狼娘「どうぞ」コトッ

神様「あっ! お茶だ!」

狼娘「私のへそくり茶ですが。 神使さんもどうぞ」コトッ

神使「ありがとうございます。 そんなに大事な物を良いんですか?」

狼娘「せめてものお詫びです。 こんな物がお詫びになるとも思っていないですが・・・」

神使「そのお気持ちで十分です。 いただきます」ズズッ


神様「神社の運営が厳しい?」

狼娘「」コクッ

神使「失礼ですが月の売り上げはどのくらいでしょうか」

狼娘「ここ数年ゼロです・・・」

神様・神使「・・・・・・」

573: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:35:22 ID:Qvq90ftc

狼娘「あっ、今日2100円の売り上げがありました」

神使「それは私達ですね・・・」

狼娘「貯金を切り崩して何とかしのいでいるのですが、多分長く持ちません」


神使「実は、神宮から神社運営の寄付金の話がありまして」

狼娘「本当ですか!?」パァ

神使「はい。 それも20年前から」

狼娘「え?」

神様「大神の奴が寄付金を断ってんだってよ」

狼娘「何で・・・」

神使「もしよろしければ、神社の運営帳簿を見せて頂けますか?」

狼娘「はい。 今持ってきます」スタスタ

574: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:36:22 ID:Qvq90ftc


神使「狼娘さんは寄付金のことを知らなかったようですね。 どういう事でしょうか?」

神様「別に金があるのか、それとも・・・」


狼娘「お待たせしました」スタスタ

神使「あっ、ありましたか?」

狼娘「はい。 こちらが帳簿です」スッ

神使「拝見します」ペラッ

神様「どう?」ニョキッ

神使「酷い赤字ですね・・・ これでは破綻も時間の問題かと」

狼娘「・・・・・・」

575: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:37:23 ID:Qvq90ftc

神使「ん? 20年前に結構な入金があるようですが」

神様「おいくら万円?」

神使「2000万です」

神様「なんだ、金持ってんじゃん」

神使「でも、それも毎月の補てんで食い潰して残っていないようですが」

狼娘「そのお金は・・・ 大神様がご自身の鎧をお売りしたお金でして・・・」

神使「鎧?」

神様「・・・もしかして大神之武神鎧?」

狼娘「」コクッ

神様「・・・・・・」

576: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 00:38:25 ID:Qvq90ftc

神使「その大神之武神鎧というのは?」

神様「あいつが命より大事にしていた特注の鎧。 武神大神のトレードマークだ」

神使「武神?」

神様「そう、あいつは武神だからな。 昔は将軍やら全国の城主から絶大な信仰があったんだよ」

神使「それって国宝級じゃないですか! それをこんな値段でお売りに?」

狼娘「あの時は参拝者も減り本当にお金がなく・・・ 山の狼たちの餌もろくに出せない位困窮してまして・・・」

神使「そんな状況でなぜ寄付金をお受けにならなかったんでしょうか?」

神様「・・・・・・」

神使「神様?」

神様「アイツらしいな」

神使「どういう意味です?」

神様「不器用は変わらず、か」

578: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 23:54:10 ID:Qvq90ftc


─── 夜・本殿前


大神「フンッ! フンッ!」


神様「素振りなんかして何と戦うんだよ」トテトテ

大神「? 神ちゃんか」

神様「ちょっと二人で話できるか?」

大神「向こうの木の陰に二人隠れているようだが?」チラッ


 狼娘・神使「」コソッ


神様「盗み聞きさせてやる位は良いんじゃない?」

大神「・・・そうか。 そうだな、丁度良い時期かもしれん」フッ

579: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 23:55:15 ID:Qvq90ftc

神様「ほい、モロコシ」スッ

大神「これは?」

神様「さっき村の人からもらった」

大神「この村のモロコシは美味いだろ」

神様「最高だね」モグモグ

大神「うむ。 相変わらず美味いな」モグモグ


神様「いつだ?」

大神「・・・・・・。 もってあと1年という感じかな」

神様「私の見立てと同じだ。 お前の神力がほとんど底をついている」

大神「潮時だよ。 武神などこの時代に必要ない」

神様「お前が鎧を着て戦に出ている姿は今でも目に焼き付いてる」

大神「惨い時代だったな。 多くの人を傷つけた」

580: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 23:56:12 ID:Qvq90ftc

神様「私はお前が人を傷つけたところを見たことないけど?」

大神「・・・・・・」

神様「私の記憶だとお前の刀には一度も血が付いたことはなかった」

大神「美化しすぎだ」

神様「私の目は節穴じゃないよん。 よくあんな事が出来るな」

大神「私の勝手なこだわりだ。 さすが神ちゃん、よく気がついたな」

神様「私だけじゃなくて上の方の武将とかは気付いてたみたいだけど?」

大神「・・・・・・」

神様「まぁ、それ込みでお前を武神として崇敬してた訳だけど」

大神「皆を騙せていたと思っていたが・・・」フッ

神様「しかし、あんだけ偉いさんから崇敬されてた武神さまがこんなボロ神社の主神とはねぇ~」

大神「確かに。 私を慕ってくれた者達に顔向けできないな」

581: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/13(木) 23:56:59 ID:Qvq90ftc

神様「寄付金、断ってるんだって?」

大神「何の役にも立たない私がもらう価値などない」

神様「私なら一日中寝て過ごしたとしても貰うけどなぁ~」

大神「・・・・・・。 神ちゃんの役割と私の役割は違う」

神様「でも、村の農作物を守っているんだし少し位は良いんじゃない?」

大神「対価などモロコシ1本でも多い位だよ」

神様「お堅いね~」

大神「すまないな、面倒な性格で」


神様「武神ではなく普通の神じゃダメか?」

大神「私には他に才がない。 この神社の姿を見れば分かるだろ?」

神様「狼娘はどうするんだ?」

大神「・・・・・・」

582: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/14(金) 00:01:45 ID:iH9wdNQw

神様「話を変える。 あの駄菓子屋は?」

大神「話が変わってないな」フッ


大神「狼娘が小さかったとき・・・ まだこの神社に人の参拝があったときだが、あいつは人の子とじゃれ合うのが好きでな」

大神「神使になることが出来たら、駄菓子屋を作りたいと夢を語ってくれた」

神様「・・・・・・」


大神「私がいなくなっても狼娘が暮らしていけるようと、あれを拵えたんだが」

神様「鎧、売ったんだって?」

大神「あぁ、さすがに赤字が酷くてな。 鎧で夢は買えぬが、金に変えれば駄菓子屋は作れる」

神様「それでも神宮からの寄付金は使わずか」

大神「私の手で何とかしてやりたかった。 それだけだ」

神様「相変わらず不器用さんだね~」

大神「そうだな、私は面倒な性格でしかも不器用だ。 自分でもそう思うよ」

583: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/14(金) 00:02:33 ID:iH9wdNQw

大神「狼娘は私の宝、鎧なんかと比べられる物ではない。 迷いもなかったし後悔もない」

大神「駄菓子屋でも作るか、と言ったときのアイツの顔・・・ 今でもハッキリと覚えている。 作って良かった」

神様「そう」


大神「でも、ご覧の通り村から子供だけでなく人すら少なくなってな・・・」

神様「どこも同じだ。 散々見てきた」

大神「アイツには逆に苦労を背負わせてしまったようだが」ハハハ

神様「・・・・・・」


大神「神ちゃん、偉そうなことを散々言っておいて勝手な願いだが・・・ 狼娘を頼めないだろうか?」

神様「・・・・・・」

584: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/14(金) 00:03:24 ID:iH9wdNQw

大神「私がいなくなったらアイツは・・・」


 狼娘「いや・・・ うそ・・・」


大神「」チラッ

神様「・・・・・・」


 狼娘「イヤだ!」タッタッタッ

 神使「あっ、狼娘さん!」


大神「・・・・・・」ハァ


 神使「神様! 狼娘さんが外に!」


大神「すまん・・・ 神ちゃんに任せても良いだろうか。 私はこういう事が苦手でな・・・」

神様「分かった。 私に全て任せておけ」

大神「恩に着る」スタスタ

585: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/14(金) 00:04:33 ID:iH9wdNQw


スタスタ


神使「神様・・・」

神様「・・・・・・」

神使「まさかこんな事になっているだなんて・・・」


神様「」ニタァ

神使(うっ・・・ なぜこの状況で神様はこんな笑みを・・・)

神様「神使君や、ここへ電話を繋いでくれたまへ」スッ

神使「ここは?」

神様「神ちゃんプレゼンツショーの始まりだよ」ウヒャヒャ

589: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:10:08 ID:vEtqBjXo


─── 駄菓子屋前


狼娘「・・・大神さま」グスッ


 神様「狼娘ちゃん」


狼娘「・・・・・・」

神様「お願いがある」

狼娘「嫌です!」

神使「狼娘さん・・・」

神様「この私が手塩に掛けて育てた神を、そう易々と諦めるとでも思うのかい?」ニヤッ

狼娘「え?」クルッ

神使「駄菓子屋の地下倉庫を見せてもらえる?」

狼娘「倉庫?」

590: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:11:28 ID:vEtqBjXo


─── 深夜・駄菓子屋地下倉庫


ギーッ


神様「うはっ! ゴミ屋敷!」

神使「これは、また凄いことになっていますね・・・」

狼娘「すいません・・・」

神様「倉庫って言ってももう少し綺麗に使わないと」

神使「神宮にある神様の私物倉庫と同じようなもんじゃないですか」

神様「もっと綺麗ですぅ~」ゲシッ

狼娘「こんな時間に倉庫に来てどうするんですか?」

神様「決ってんじゃん。 片づけるんだよ」

狼娘・神使「え!?」

591: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:12:32 ID:vEtqBjXo

神様「明日の朝までにここを道場に戻す」

狼娘「道場に!?」

神様「時間がないし、ちゃっちゃとやるよ~」トテトテ

狼娘「で、でも・・・」

神様「狼娘ちゃんは掃除機持ってきて」

狼娘「掃除機は・・・ 無いです・・・」

神様「は?」

狼娘「そういう高い物は・・・」

神様「あ~・・・ じゃぁ箒とちりとりでも・・・」

狼娘「それならありますが」

神様「大神を助けたいんだろ?」

狼娘「すぐ持ってきます!」タッタッタッ

592: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:13:32 ID:vEtqBjXo

神様「いや~ これはやりがいがあるねぇ~」

神使「朝までに終わるんでしょうか?」

神様「終わらせるしかない」キッ

神使「神様・・・」


神様「さて、んじゃ大物から始めて神使君」

神使「え? ・・・神様は?」

神様「膝に水が溜っててさ、ドクターストップかかってんだよ」

神使「・・・・・・」ハァ

593: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:14:20 ID:vEtqBjXo


─── 2時間後


神様「お~ だいぶ片づいてきたね。 がんばれ~」

神使「神様も少しは手伝って下さいよ・・・」

神様「さっき言っただろうが、腰やっちゃってドクターストップかかってんだよ」

神使「膝の水はどうしたんですか・・・」

狼娘「あっ、私バケツの水を取り替えてきますね」スタスタ

神様「よろぴこ~ ついでに何か駄菓子差し入れで持ってきて~」

狼娘「は~い」

594: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:15:50 ID:vEtqBjXo

神使「しかし、どういう事ですか? あの電話は」

神様「あ?」

神使「さらなる剣の上達に一生懸命な腕利きの剣道バカを紹介しろだなんて」

神様「いや、剣道“バカ”までは言ってないと思うけど・・・」

神使「とりあえず、明日は神宮付属道場の師範の方が来るそうですが」

神様「へぇ~ 剣道バカなの?」

神使「1年中剣道のことばかり考えている方で、凄腕の剣士がいると聞くとすぐに手合わせに行く位だとか」

神様「あ~ バカだねぇ~」

神使「でも剣道界で名は知れ渡っていて協会の理事も務めていると聞きました」

神様「それは良いカモだ! いや~ 楽しみだ」ウヒャヒャ

595: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:17:26 ID:vEtqBjXo


─── 翌日・鳥居前


神使「神様、あの方ではないですか?」

神様「お~ 間違いないね。 お~い!」


 剣士「?」スタスタ


神使「遠いところご苦労様です」

剣士「神宮付属武道館の剣士と申します」ペコリ

神使「神使と申します」ペコリ

神様「かわゆい神ちゃんと申します」ペコリ

剣士「凄腕の女剣士がいると聞き参上しました」

神様「いや~ 凄いよ? 剣道界の勢力図を塗り替える逸材だね、あれは」

剣士「ほぉ~ それは楽しみですね。 しかし、それは私が剣を交えてから判断させて頂きましょう」

神様「ビビるなよ?」ニヤッ

596: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:18:25 ID:vEtqBjXo


─── 本殿


大神「・・・・・・」ハァ


コンコン


大神「?」


ギーッ


狼娘「失礼します」ペコリ

大神「狼娘・・・」

狼娘「大神さま、お話しがございます。 一緒に来て頂けますでしょうか」

大神「・・・・・・」

狼娘「お願いします」キッ

大神「・・・・・・。 分かった」スタスタ

597: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 00:19:17 ID:vEtqBjXo


─── 駄菓子屋・廊下


狼娘「・・・・・・」スタスタ

大神「狼娘、昨日の話のことだが・・・」スタスタ

狼娘「」スタスタ

大神「・・・・・・」ハァ



狼娘「どうぞお入り下さい」

大神「ん? ここは・・・ 倉庫じゃないか」


ギッー


大神「!?」

600: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:05:24 ID:vEtqBjXo


─── 倉庫改め道場


神様「お、来たか」

大神「これは・・・ 一体どういう事だ!?」

神様「いや~ お前ガラクタ置きすぎ。 掃除するの大変だったんだから」

神使「神様は何もしていませんが・・・」

神様「古くさいけど結構良い道場じゃん」

大神「なぜこんな事を・・・」

神様「ちょうど狼娘と稽古の時間だろ?」

大神「まさか、ここで狼娘と稽古をしろと?」

神様「狼娘ちゃんはケガのため見学」

大神「ケガ?」

601: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:06:45 ID:vEtqBjXo

神様「今日のお相手はこちらの方です! ババン!」


スタスタ


剣士「よろしくお願いします」フカブカ

大神「・・・・・・。 だれだ?」

剣士「神宮付属武道館の剣士と申します」

大神「で?」

神様「ちょっとあの人と勝負して?」

大神「は?」

神様「狼娘ちゃんが稽古できないからこの人と勝負して?」

大神「意味が分からんのだが・・・」

剣士「あなたが剣に自信があると聞き、手合わせをお願いできればと参上しました」

大神「・・・・・・」

602: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:07:59 ID:vEtqBjXo

神様「実は~ぁ」サササッ

大神「うっ、何だ近いな・・・」

神様「狼娘ちゃんがアレにコテンパンにやられちゃって~」ボソッ

大神「何? 本当か狼娘」

狼娘「え? あ、はい。 痛い痛い~」スリスリ

神使(見事な棒読みですね・・・)

神様「次は私と神使君をボコするって。 まぁ神使君はどうでも良いんだけど私は流石にね~」ボソッ

大神「・・・・・・」チラッ


剣士「?」


大神「」ハァ

603: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:09:12 ID:vEtqBjXo

神様「あの男、強いよ? お前でも厳しいかもなぁ~」

大神「」ピクッ

神様「武の達人ってああいうのを言うんだろうな~ やっぱお前でも難しいかなぁ~」

大神「・・・・・・。 何を考えているのか知らんが、良いだろう。 守る必要があるのであれば私の意に反しない」

神様「そうこなくちゃ!」

大神「おい、そこの剣士」

剣士「?」

大神「手を抜くな。 どうなっても知らんぞ?」

剣士「望むところ」

大神「狼娘、竹刀を」

狼娘「はい!」スッ

大神「ん」

剣士「」ゴクリ


神様「はじめ!」

604: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:10:16 ID:vEtqBjXo


─── 数分後


剣士「くっ!」ガタッ

大神「良い剣筋だった」


剣士「・・・恥を忍んで、もう一勝負付けてもらえないでしょうか!」

大神「何度やっても同じだ。 私とお前では剣の重みが違う」

剣士「重み?」

大神「私は後ろにいる者達を身命を賭して守るために剣を振るった。 勝ち負けのために振るったお前の剣が勝てるわけない」

剣士「!?」

大神「そんな軟弱な剣で私を倒すことなど何度やっても無理だ」

605: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:11:13 ID:vEtqBjXo

剣士「しかし! あなたは私へ一度も有効をつかなかった!」

大神「ほぉ、そこまで見ていたとは見事だ」

剣士「まさか!? わざと・・・」

大神「狼娘、この者に水を」

狼娘「は、はい!」タッタッタッ


大神「ところで狼娘、傷は大丈夫なのか?」チラッ

狼娘「うっ・・・」ピクッ

大神「なら、良い」フッ


狼娘「あの!」

大神「?」

狼娘「私も稽古をお願いしても良いでしょうか!」

大神「・・・・・・。 もちろん」

606: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:12:15 ID:vEtqBjXo

神様「♪~」ニヤニヤ

神使(あ~ これはきっと神様の作戦通りに事が進んでしまっているんでしょうね・・・)

神様「んじゃ、次は“いつも通り”の大神と狼娘ちゃんの稽古開始!」

狼娘「よろしくお願いします!」

大神「こちらこそ。 久しぶりの道場だ、遠慮なく行くぞ」タッ


パンパン!


剣士「!?」

神使「これは・・・ 凄いですね・・・」

剣士「凄いなんてものじゃ・・・ これが普段の稽古!?」ゴクリ


大神「入り方が雑だ! いつも言っているだろう!」パンッ

狼娘「はい!」

大神「刀の長さを考えろ! それでは守れんぞ!」パンッ


剣士「・・・・・・」

607: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:13:24 ID:vEtqBjXo

─── 数分後


神様「は~い。 見てるの飽きたから終わり~!」

大神・狼娘「・・・・・・」


神様「どうよ、うちの秘蔵っ子の力は」

剣士「こんな方達がいたなんて・・・」

神様「二人ともご苦労様~ ゆっくりと休んで下さいな」

剣士「・・・・・・。 あの!」

神様「おや~ 何かな?」

剣士「お願いがあります」フカブカ

大神「私か?」

剣士「弟子として私を鍛え直して頂けないでしょうか!」

大神「はぁ!?」

神様「」ウヒャヒャヒャ

神使(もはや隠す気すらないようですね・・・)

608: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:14:36 ID:vEtqBjXo

剣士「先生の剣の心得、感動しました! 是非私にもその心を!」

狼娘「!? だ、ダメです! 大神さまの右腕は私だけです! 私以外と稽古だなんて許しません!」プンプン

剣士「そこを何とか!」

狼娘「大神さまと剣を交えられるのは日に30分だけ。 私の稽古時間が減ってしまいます!」

剣士「姉さん! 雑用からでも結構です! 側でお二人の剣を見させて頂くだけでも結構です!」

狼娘「ね、姉さん!?」


神様「まぁまぁ、皆さんそう熱くならずに」トテトテ

神使(うわっ、神様が出てきた・・・ 〆の小芝居開始ですね)

609: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/15(土) 23:16:06 ID:vEtqBjXo

神様「大神師範も色々と忙しい」

大神「師範!?」

神様「あんた一人だけのために貴重な時間を割くというのも、ねぇ?」

剣士「確かに・・・ ではどうすれば」

神様「もう少し教えを請いたいという人がいればねぇ~」

大神「おいおい神ちゃん、何を言っているんだ!? 私は剣術を教えるなどそんな気は───」

神様「お前だって大好きな剣を振るって余生を過ごしたいだろ?」ボソッ

大神「ま、まぁ・・・ 剣を振るうのは好きだが・・・ しかし、私の剣は勝負事の物でなく───」

神様「おいおい、私に全部任せるんじゃなかった~? そう言ったよね? 昨日そう言ったよね?」ニヤッ

大神「うっ・・・」

神様「狼娘ちゃんのためを思ってやってるんだけどなぁ~」ボソッ

大神「・・・・・・。 分かった」ガクッ


神様「というわけで、あんたの知り合いに声を掛けて人集めてくれ。 話はそれからだ」

剣士「」コクッ

610: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:03:45 ID:/gkUaJus


─── 翌日


大神「・・・・・・」


ガヤガヤ


狼娘「受付はこちらになりま~す!」

神様「本日特価! “武神の水”は1本100円! 24本以上は配送料無料だよ~」


大神「なぁ、狛犬の神使よ」

神使「はい」

大神「この人の量は何だ?」

神使「みんさん凄腕の剣士さん達のようです」

大神「・・・・・・」

611: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:04:57 ID:/gkUaJus

神様「も~ 大神遅いって」トテトテ

大神「昨日は茶番に付き合ってやったが、今日は勝負などしないぞ?」

神様「だれも勝負なんかしろなんて言ってないだろうが」

大神「そうか」ホッ

神様「ちょっと相手してやるだけで良いって」

大神「・・・それを勝負と言うんじゃないのか? 」

神様「時代は違えど、こいつらは武の道を極めんとする剣士だぞ? お前、その元締めじゃないのか?」

大神「うっ・・・」

神様「この時代で武を志す者達を見捨てるの~? 大神さんて何の神なの?」

大神「・・・・・・」

神様「それしか才がないんだよね~? 他にできることなんか無いんだよね~?」

大神「・・・しかし」

612: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:05:44 ID:/gkUaJus

神様「狼娘ちゃんはどうすんの?」ボソッ

大神「それを言えば私が頷くとでも?」

神様「思ってるよ? 当たり前じゃん」

大神「・・・・・・」

神様「何か問題でも?」

大神「分かった・・・」ガクッ


神様「よーし! 狼娘ちゃん、皆さんを道場へお連れして」

狼娘「は、はい!」タッタッタッ

神様「神使君は水売って」

神使「え~・・・」

613: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:07:15 ID:/gkUaJus


─── 道場


神様「さて、皆さん防具は着けましたね?」

剣士達「はい!」

神様「それでは、大神総師範よりご挨拶! ババン!」


大神「・・・・・・」

剣士達「」ゴクリ

大神「あ~・・・ 私は、このような───」

神様「はい、ありがとうございました」

大神「・・・・・・」

614: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:08:07 ID:/gkUaJus

神様「んじゃ、最初に対戦したい人は前へ」

剣士「はい! 幸運館・館長です! よろしくお願いいたします!」

大神「待て待て」

剣士「?」


大神「面倒だ。 全員まとめてかかってこい」


ザワザワ


大神「武神・大神の力を見せてやる」ニヤッ

615: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:09:04 ID:/gkUaJus

神使「だ、大丈夫でしょうか? 30人はいると思いますが」

神様「楽勝だろ。 本物の戦で先陣切って剣を振るってた奴だぞ?」

狼娘「大神さま凄く楽しそうです。 何十年ぶりだろう・・・ こんな大神さま見たの」

神様「アイツの本気の剣は凄いぞ? 今相手したら私でも厳しいかもな」

神使「はいはい」

神様「」ゲシッ


大神「どうした? 来ないのならこちらから行くぞ!」タッ

剣士達「!?」

616: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:10:00 ID:/gkUaJus


─── 10分後


パン! パンッ!


大神「剣士A! お前の狙った場所は違うはずだ!! 敵は常に動いていることを忘れるな!」

剣士A「はい!」

大神「剣士B! 残心が無いぞ!」

剣士B「はい!」


パン! パンッ!


神使「凄いですね・・・ これだけの人数を相手にしながら一人ずつ助言するなんて・・・」

神様「あれでも全然本気出してないな」

狼娘「そうですね、大神さまの本気の一振りは当たらなくても気絶しますから」

神使「・・・・・・」

617: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:11:12 ID:/gkUaJus


─── 30分後


剣士達「参りました!」フカブカ

大神「こちらこそ相手頂き感謝する」ペコリ

神様「どうよ、剣士達の腕は」トテトテ

大神「皆良い腕を持っている。 正直少し見くびっていた私が恥ずかしい程だ」

神様「まだまだ上達すると思わない?」

大神「あぁ、さらなる高みへ登る可能性は秘めている」


ザワザワ


神様「お聞きになりましたか皆さん! うちの総師範が皆さんの上達を約束しました!」

剣士達「うおー!!」

大神「!?」

618: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:12:24 ID:/gkUaJus

神様「と、いうわけで当“神ちゃん道場”で指導を希望する方はこちらの入門届を提出して下さい」

大神「は?」

神様「指導料は月1万円、キッズクラスも併設予定なので知り合いの子供の入門を希望される方は割引がありますよ~」


剣士「入門届下さい!」

剣士「私にも!」

剣士「キッズクラスの分も一緒に下さい!」


大神「ちょ、ちょっと待て! どういう事だ!?」

神様「は? 入門届を配ってんだけど?」

大神「いや、そうじゃなくて。 まさか私が稽古を付けるのか?」

神様「他に誰がいるんだよ。 あ、キッズクラスは狼娘ちゃんが師範で稽古付けるから心配すんな」

狼娘「え!? 私ですか?」

619: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:13:48 ID:/gkUaJus

神様「二人とも毎日ちょー暇だろ? 少し位は武道の役に立てよ。 武神とその神使なんだから」

大神・狼娘「・・・・・・」


神様「お前は剣を教え、その対価を貰う。 お前の一つしか無い才を使ってな」

大神「・・・・・・」

神様「こいつらは戦のない今の時代で“武”を守っていく者達だ」

大神「!?」

神様「何かお前のこだわりに反することでも?」

大神「いいや、なさそうだ」フッ


神様「狼娘ちゃんはキッズクラスで頑張って。 駄菓子屋に子供も来て一石二鳥!」

狼娘「はい!!」


神様「皆さ~ん、当道場へ入門すると大神師範も毎日飲んでいる“武神の水”が80円で買えますよ~」

剣士「師範も飲んでいる!? すいません、武神の水を下さい!」

剣士「私も!」

620: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:14:44 ID:/gkUaJus

神様「はいはい押さないで! うひょ~ バカ売れだよ、笑いが止まんねーよ」ウヒャヒャ

神使「神様・・・」ハァ

大神「なぁ、さっきから思っていたんだがあの水は何だ?」

神使「本殿の裏から汲んだ湧き水をボトルに詰めただけです」

大神「・・・・・・」


神様「狼娘ちゃん、急いで水汲んできて」

狼娘「え? あ、はい!」タッタッタッ

621: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:17:35 ID:/gkUaJus

大神「神ちゃんは相変わらずだな」

神使「すいません、勝手なことをして・・・」ペコリ

大神「いや・・・ どうやら、私はまた神ちゃんに救われてしまったようだ」フッ

神使「?」

大神「何の取り柄もない私を武神へ指南してくれたのは神ちゃんなんだ」

神使「神様が?」

大神「知っているか? 神ちゃんは私より強いんだぞ?」

神使「え!?」

大神「おっと、これは喋ってはいけないことだったかな?」

神使「・・・・・・」

622: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 04:19:07 ID:/gkUaJus

神様「よっしゃ! んじゃ、早速明日から道場オープン!」

大神「まてまて」

神様「なんだよ、この期に及んで嫌だとか言うなよ?」

大神「言わんよ。 一つだけ条件がある」

神様「あ?」

大神「日が昇っている時間だけだ。 日が沈む前には皆この村から出ること」

神様「そんな事か。 おっけ~ おっけ~」


剣士「水を! 武神の水を60本下さい!」

神様「はい喜んで! 今汲んでくるからちょい待ちね」ウヒャヒャ

624: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:09:57 ID:/gkUaJus


─── 1週間後


神様「見てみて! このお金!」

神使「今月の月謝が大人クラス30万円、キッズクラスと駄菓子屋の売り上げが5万円です」

神様「武神の水の売り上げも1万あるよ!」

神使「それは帳簿に載っていないですね。 そのお金渡して下さい」

神様「ぇ?」

狼娘「うわぁ~ こんなに沢山のお金を見たの初めてです」

神使「これから毎月これだけの売り上げが入ってきますよ?」

狼娘「毎月!?」

神使「神社の修繕や備品購入もしやすくなりますね」

神様「ちょっと街出て鰻食いに行こうぜ~」

大神「いや、生活に必要な分として毎月2万円だけを頂くことにする」

神様「それだけで暮らしていけんのかよ・・・」

神使「残りはどうされるんです?」

625: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:11:01 ID:/gkUaJus


─── 村の畑


村人「いや~ 今年もモロコシ残っちまったな」

村人「うちも猛暑の影響か作物不良でほとんど廃棄だよ」


 神様「こんちわ~」トテトテ


村人「ん? お~ いつぞやの」

神使「先日はトウモロコシごちそうさまでした」

村人「美味かったろ。 今日も少し持ってい・・・ く・・・・・・」


 大神「邪魔する」スタスタ


村人達「!?」

626: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:12:06 ID:/gkUaJus

大神「これは懐かしい顔だ。 お前子供の時に神社の祭儀で本殿までたどり着いた者だな」

狼娘「あ! 覚えてます。 確か私の渾身の変身で気絶した方ですね」

村人「・・・・・・」

神様「あ~ 知ってんだ」

大神「当たり前だ。 村の者は全員匂いで分かる」


村人「い、いつも見回りご苦労様です・・・」ペコリ

大神「気にするな、助けて貰っているのはこちらだ」

神様「?」

627: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:13:13 ID:/gkUaJus

村人「き、今日は何か・・・」

大神「その作物は廃棄するのか?」

村人「はい、出荷は出来ないので・・・」

大神「これから廃棄する作物は神社に持ってこい。 私が全て買い取らせて貰う」

村人「え!?」

大神「いいな?」

村人「そ、そんな・・・ 神社の方には新鮮な作物を持っていきますので」

大神「前にも言ったはずだ。 献上は受け付けない」

村人「・・・・・・」

大神「私に廃棄する物を売るのだ。 わ・かっ・た・な?」ズイッ

村人達「わ、分かりました!! すぐにかき集めて売りに行きます!!」タッタッタッ

628: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:14:15 ID:/gkUaJus

神様「ねぇ、皆ちょー怖がってたけど。 逃げちゃったけど」

大神「畏れは大事だろ?」

神様「廃棄する野菜なんか買い取ってどうするつもりだよ」

大神「食べるに決っている」

神様「マジかよ・・・」

神使「廃棄といっても市場の出荷規格に合わないだけで物は新鮮で問題ありませんからね」

神様「金あるんだからまともな方を買えよ」

大神「この地に住まわせてもらっているせめてもの恩返しだ」

神使「どういう事です?」

大神「私や狼娘、それに山に住む狼は村の民に守ってもらっているからな」

神様「え? 逆じゃないの?」

629: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:17:35 ID:/gkUaJus

大神「残念だが日本で野生の狼がいるのはこの地だけだ」

神使「言われてみれば確かに・・・」

神様「そうなの?」

神使「確かニホンオオカミはすでに絶滅しています。 他に出没事例も聞いたことありませんね」

神様「いやいや、いるじゃん。喧嘩売られたじゃん」

神使「まさか、それを知って村の人達は・・・」

大神「あぁ。 皆は何も言わないが、影ながら私達の存在を隠してくれている」

神使「それで代わりに村の作物を守っていたんですか」

大神「山の狼たちの命と作物の見張りでは釣り合わないがな」

神使「もしかして献上がないというのは・・・」

大神「そんなものを受け取れるわけないだろ」

神様「うへぇ~ 面倒くせー性格してますなぁ~」

大神「何度も言うな・・・」

630: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:18:21 ID:/gkUaJus

神使「日が落ちるまでに道場の皆さんを帰らせているのも狼さん達を隠すためですか?」

大神「あまり知られたくはないからな」

神使「そうでしたか・・・ なんか私達が荒らしてしまったようですいません」

大神「心配するな、いつかは話すつもりだ。 これも時代の流れだろう」

狼娘「・・・・・・。 申し訳ありません大神さま!」フカブカ

大神「?」

狼娘「私・・・ 色々誤解していたみたいです。 村の方達とか、見張りの件とか・・・」シュン

大神「変わることが出来なかった私の責任だ。 狼娘が気にすることではない」

神様「そうそう、ついでに人を怖がらせるのも辞めた方が良いと思うぞ? 時代に合わない」

大神「しかし、神には畏れを持って接して───」

神様「変わるんだろ?」

631: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:19:34 ID:/gkUaJus

大神「・・・・・・。 そうだな、これからはもう少し───」


 剣士「名誉会長ー!」タッタッタッ


神使「名誉会長?」

剣士「ここにいましたか、名誉会長」ハァハァ

神様「バカ! 外に出てくるなっていっただろうが」ボソッ

神使「しかし完成したらすぐに知らせろと言ったのは名誉会長では・・・」


神使「神様? 剣士さん達に何をさせているんですか?」

神様「いやちょっとね・・・」アセアセ

大神「名誉会長ってのは何だ?」

神様「・・・・・・」

632: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:20:34 ID:/gkUaJus

神使「剣士さん、何が完成したんでしょうか?」

剣士「湧き水を汲み上げる大型の井戸が完成しまして───」

神様「うわー! 言うんじゃない!」

大神「井戸?」

神使「まさか“武神の水”を量産する井戸ではないですよね?」

神様「・・・・・・」

大神「剣士、急いで道場へ戻れ。 何があっても振り返るな」

剣士「え? あ、はい。 分かりました。 それでは名誉会長、先生、失礼します」タッタッタッ


大神「前言撤回だ」

神様「どの前言でしょうか・・・」

633: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:21:20 ID:/gkUaJus

大神「畏れは大事なようだ。 狼娘! お前の全力を見せてやれ!」

狼娘「はい!」

神様「ちょ、何する気? 言っておくけど狼娘ちゃんじゃ私に剣は敵わないよ?」


狼娘「ウゥ・・・」グルルル

神様・神使「!?」

狼娘「グォ グガーー!!」メキメキ


ボキボキ ミシミシ


狼娘「グギャーーー!!」グルルル


神様・神使「・・・・・・」ストン


狼娘「上手そうな匂いのする餌だ」ポタポタ

634: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:22:31 ID:/gkUaJus

神使「か、神様・・・ 謝って下さい」アワアワ

神様「」コテッ

神使「神様が失神した!?」


大神「お~ これは怖いな。 100点だ!」

狼娘「初めての100点! ありがとうございます!!」

大神「やはり畏れは必要だな」ハハハ


神様「」

神使「神様! 神様ー!!」

神様「」ジュワ~





神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 番外編・2018年夏
おわり

635: ◆8YCWQhLlF2 2018/09/17(月) 21:23:21 ID:/gkUaJus
じゅわ~

645: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:22:39 ID:WOS73er2

幼子「お母さん? どこ?」テクテク

 ガタガタ

幼子「!?」ビクッ

?「幼子」

幼子「お母さん!」タッタッタッ

?「こんな所でどうしたの?」

幼子「あのね、お祭り見てたら迷子になっちゃったの」

?「沢山の人がいるものね。 でも、もう大丈夫よ」ニコッ

幼子「ねぇ、あのガタガタしてる箱は何?」

?「あれは、お母さんと幼子の宝物。 幼子が大きくなったら一緒に開けましょうね」

幼子「うん!」

?「お母さんちょっとお仕事があるから、先に帰っててね」

幼子「はい!」ニコッ

─────
───

646: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:23:57 ID:WOS73er2

■ 神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 番外編・2018年冬



少女「お母さん・・・ お母さん!!」ハッ!


ガタンゴトン


少女「・・・・・・」ボー


 「ねぇ」


少女「?」クルッ


 「隣に座っても良い?」


少女「・・・・・・。 連れの方と一緒じゃないんですか?」

647: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:24:50 ID:WOS73er2

神様「あいつ寝ちゃってさぁ~ 暇だから誰かと喋りたいの」ヨイショ

少女「お小遣いをねだって、断られた腹いせにスネ蹴りして気絶させたように見えましたけど」

神様「見てたの!?」

少女「嫌でも聞こえる位に大きな声でしたから。 財布、返した方が良いですよ?」

神様「いいのいいの。 それより座っても?」

少女「・・・・・・。 もう座っているように見えますが」


ガタンゴトン

648: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:25:27 ID:WOS73er2

神様「♪~」ニコニコ

少女「・・・あの」

神様「3つ先の駅にデカい神社があってさぁ~」

少女「?」

神様「デカいくせにすげー田舎なもんで参拝者が全く来ないんだって」

少女「そう」

神様「あっ! 今、牛が見えた」

少女「・・・・・・」

神様「牛でけ~」

649: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:26:07 ID:WOS73er2

少女「特に用がないなら、できれば一人にして頂きたいのですが」

神様「ひま?」

少女「そうですね。 あまり会話も弾みませんし」

神様「違うって。 ナウじゃなくてこの先ずっと暇? って聞いたの」

少女「・・・どういう意味ですか?」

神様「バイトしない?」

少女「え?」

650: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:27:08 ID:WOS73er2


─── 錆礼田神社前駅


プシュー


神様「いや~ さすが神使君チョイス。 何もない所だね~」トテトテ

神使「神様、酷いですよ・・・ 見て下さいよ、こんなに大きい青あざが・・・」スリスリ

神様「お付きの分際で私に楯突くからだ」


 少女「お付き?」


神使「?」クルッ

神様「紹介しよう。 彼女は少女ちゃん」

少女「」ペコリ

神使「はじめまして」ニコッ

651: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:28:08 ID:WOS73er2

神様「電車の中で意気投合して仲良くなったのだ」

少女「私には意気投合した記憶がないですが」

神様「この出会いは何かの縁なのだよ。 そう、これから起こるであろ───」

神使「すいません、なんかご迷惑をおかけしたみたいで」

少女「はい。 結構」

神使「神様、可愛いからって他人を引きずり回すのは良くないですよ?」

神様「お前って本当に犬ころだな。 だから皆からダメすぎィーヌって呼ばれるんだよ」

神使「そんな風に呼ばれたの初めてなんですけど」

少女「それより私は何を? バイトって言ってましたけど」

神使「バイト!?」

神様「聞いて驚け、少女ちゃんを雇った」

神使「本当に驚きですよ。 雇うって、そんなお金───」

神様「金ならここにある」フリフリ

652: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:28:52 ID:WOS73er2

神使「それ私の財布に見えるのですが・・・」

神様「そう、これは神使君がワゴンセールで買ったダサい長財布」

神使「・・・・・・」

神様「これダサいから中身も含めて全部少女ちゃんにあげる」ポイッ

少女・神使「え!?」

神使「今月分の生活費が入っているのですが・・・」

神様「全部って言っても少し抜いてあるから大丈夫」

少女「・・・・・・(抜きすぎ)」ジャラ

653: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:30:13 ID:WOS73er2

神様「紹介しとくね。 これは私のお付きで犬ころ」

少女「えーと・・・ 執事とかそういう類いですか?」

神様「私は巫女さんで、この犬ころは雑用の召使いみたいなもん」

神使「神様、もう少しまともな紹介をして下さいよ・・・ それより私の財布───」

少女「もしかして、この神社の方なんですか?」

神使「いえ、私達神宮の者でして」

少女「神宮?」

神様「神社とか管理している営利団体」

神使「非営利です」

神様「宗教法人という隠れ蓑を使って労働基準法を無視しまくる極悪非道な───」

神使「少女さんは、こちらの神社へ来られる予定だったのですか?」

少女「私は・・・」

神様「ねー、寒みーし早く行こーぜ」

神使「そうですね」

654: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:31:14 ID:WOS73er2


─── 参道


テクテク

神様「しかし、相変わらず土地だけは広いなぁ~」

神使「神様ここ知っているんですか?」

神様「神社だろ? 遊園地じゃないことくらい私でも見りゃ分かるわ」

神使「そういう意味でなく・・・ ん?」ピタッ

神様「ふがっ!」ドンッ

神使「すいません。 大丈夫ですか神様」

神様「急に止まるなよ」

神使「見て下さい、あの小屋」

神様「あ? ただの倉庫じゃん」

神使「あの形と作りは相当年代物ですよ?」

655: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/26(水) 02:32:02 ID:WOS73er2

神様「昔はあんなのゴロゴロあったぞ。 珍しくもないだろ」

神使「神様の言う昔というのはいつのことですか・・・」

神様「ん~ 平安とか?」

神使「それこそ今の時代に残っていたら国宝級じゃないですか」


少女「・・・・・・」チラッ


神様「あのボロっちい建物が気になる?」ニョキ

少女「え!?」

神様「」ジー

少女「い、いえ別に」

神様「ま、早く社務所へ行きましょ」トテトテ

少女「・・・・・・」

659: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:23:52 ID:i7pReU3c


─── 社務所


神使「社務所も年代物ですね」

神様「家具も電化製品も古いな」

神使「でも、一部最近の物も見られるようですが」

神様「誰か住んでたんじゃね?」

少女「・・・・・・」

神使「え~・・・」

神様「あとは勝手にジモピーの老人会とかが会合開いてたとか」

神使「その可能性はありそうですね」

神様「ま、詮索してもしょうが無いし」

神使「そうですね。 電気とガスは事前に開通してもらっていますので最低限の生活は出来ると思います」

660: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:24:52 ID:i7pReU3c

神様「寒みーし、温かい物が飲みたい」

神使「では、お茶でも煎れてきますね」

神様「犬ころは掃除! お茶は少女ちゃんが煎れたのが飲みたい」

少女「え? 私ですか?」

神様「良いでしょ~ 少女ちゃ~ん」スリスリ

少女「わ、分かりましたから離れて下さい」

神様「よろぴこ~」

少女「はぁ~・・・」スタスタ

661: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:25:25 ID:i7pReU3c

神使「あっ、買ってきたお茶っ葉───」

神様「神ちゃーんキィークッ!」ゲシッ

神使「痛い!」ガクッ

神様「しまっとけ」

神使「え? でもコレがないとお茶が・・・」

神様「いいから!」

神使「?」

662: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:26:16 ID:i7pReU3c


─── 数分後


少女「お茶、煎れてきました」スタスタ

神様「わ~お、飲みたい飲みたい」ピョンピョン

神使「お茶位でそんなに興奮しないで下さい」

少女「どうぞ」コトッ

神使「ども~」

少女「はい、どうぞ」コトッ

神使「ありがとうございます。 でも、良くお茶っ葉とかお分かりになりましたね」

少女「!?」ピクッ

神様「・・・・・・」ズズズ

少女「台所なんてどこも同じような物です」

神使「確かにそうですね」

663: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:27:13 ID:i7pReU3c

神様「さて、んじゃ仕事でもしますか。 神使君、この神社の事前情報を教えて」

神使「錆礼田神社、由緒や主神などの情報は不明です」

神様「これだけデカいのに?」

神使「はい、ただ平安時代の書物に記載があるようで建立はかなり古いと思われます」

神様「ずっと無人か?」

神使「100年ほど前まで巫女さんがおられたようですが」

神様「巫女?」

神使「錆礼田神社は、宮司や神職は置かず代々巫女が管理をしていたようです」

神様「ふ~ん」チラッ

少女「・・・・・・」

664: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:29:37 ID:i7pReU3c

神様「後を継ぐ巫女はいなかったの?」

神使「それが・・・ 変なんです」

神様「あ?」

神使「当時こちらの神社から神宮に管理者変更の書類が届いたらしく、次の巫女の名前も記載されていたようです」

神様「それはどちら様?」

神使「それが、改めて書類を確認したら名前が消えていたそうで」

神様「・・・何言ってんの?」

神使「書類から書かれていた名前が消えたと言いました」

神様「あ~ 誰かがその書類を後から改竄したってこと?」

神使「いえ、改竄根はなかったそうで・・・ 綺麗に名前だけ空欄になっていたと」

神様「・・・・・・。 神使君、あなた疲れてるのよ」

神使「私は神宮から言われたことをお伝えしているだけですので・・・」

神様「それを真に受けるお前もおかしいし」

神使「そう言われましても」ポリポリ

665: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:30:33 ID:i7pReU3c

神様「少女ちゃんもこのクソ犬に言ったって! お前はやっぱりダメすぎィーヌだって」

少女「変・・・」

神様「ほら、少女ちゃんも私と同じ真っ当な思考の持ち───」

少女「なんで記憶が・・・」ボソッ

神様・神使「・・・・・・」ジー

少女「あっ! いえ、何でもないです」

神様「少女ちゃん? もしかして・・・」

少女「な、なんでしょうか」

神様「あなたも疲れているのよ」ポンポン

少女「そ、そうみたいですね」

神様「風呂だ! 風呂を沸かすのだ!! 疲れた体には風呂が効く!」

神使「・・・・・・」

666: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:31:50 ID:i7pReU3c


─── 30分後


神使「神様、お風呂湧きましたよ」

神様「ん。 バブある?」

神使「はい。 ラベンダーとゆず、森の香りと~」ゴソゴソ

神様「森の香りって意味分かんないんだけど・・・」

神使「後は“唐辛子”と、オマケでもらった“檜風呂に浮かべた檜玉の香り”ですね」

神様「!?」

神様「季節的に“ゆず”ですかね」

667: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:32:29 ID:i7pReU3c

神様「神使君? 最後なんて言ったの?」

神使「? “檜風呂に浮かべた檜玉の香り”ですか?」

神様「何それ! 檜の香りに檜の香り!? ミックスする意味あんの?」

神使「さぁ? コレにします?」

神様「聞くまでもないじゃん!」

神使「それでは───」

神様「ゆずでお願いします」

少女「・・・・・・(唐辛子って何?)」

668: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:33:13 ID:i7pReU3c


─── 夜・台所

神様「ふぃ~ 良いお湯でした~」ホクホク

神様「やっぱ風呂上がり後はカップラだよね~」ゴソゴソ


 神使「神様?」


神様「うわー!」ビクッ

神使「ダメですよ? 寝る前にカップ麺なんて」

神様「んだよ、ビックリしたなぁ~ ラーメン落とすところだったよ」ホッ

神使「太りますよ?」

神様「うるせー。 文句あるなら普段から私に贅沢な飯を寄こせ」

669: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:33:54 ID:i7pReU3c

神使「あの、お聞きしたいことがあるのですが」

神様「なに」

神使「神様は少女さんの事をご存じなんですか?」

神様「あ?」

神使「急にバイトで雇うとか、先ほども少女さんを観察していましたよね?」

神様「」

神使「少女さんは一体・・・」

神様「さぁね、少なくとも私はあの子と会ったのは初めてだ」

神使「そうですか」

670: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:35:16 ID:i7pReU3c

神様「ただ、よく似た神を知っている」

神使「神・・・ 似てるというのは?」

神様「遙か昔に、私はある少女を神にした。 そいつによく似ている」

神使「容姿がですか?」

神様「容姿だけじゃない。 雰囲気もどこか似ている」

神使「その神は今もご存命なのですか?」

神様「100年以上前に、神から人に戻した」

神使「え?」

神様「たぶん、生きてはいない」

神使「その神と少女さんに何か関係があるのでしょうか?」

神様「・・・・・・。 アイツはとても不思議なヤツだった・・・ 私でも理解できない位」

神使「分かりました。 お答え頂きありがとうございます」ペコリ

神様「もう良いのか?」

671: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/27(木) 00:36:07 ID:i7pReU3c

神使「神様もまだ考えている所なんですよね? 今はここまでで十分です」

神様「あっそ。 まぁ私にもよく分からないけど一応忠告だけしておく」

神使「?」

神様「流されるな。 自分を見失うな。 自分の行動を忘れるな」

神使「・・・はい」

神様「私のように完璧であれ。 じゃ」トテトテ

神使「あっ、神様! ラーメン忘れてます! あと、服着て下さい!」


 キャー!


神使「少女さんに変なトラウマ植え付けないで下さい・・・」

673: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:14:57 ID:qW8GGYRo


─── 翌朝・社務所前


少女「あの・・・」

神様「うんうん。 よく似合う」

少女「私、こういう格好はあまり・・・」

神使「予備の巫女服なのですがサイズが同じで良かったです」

神様「神社でバイトするんだからその格好じゃなきゃダメ」

少女「そもそも私バイトするとは一言も・・・」

神様「いいから。 少女ちゃんは参道から本殿前までのお掃除お願い」

少女「・・・・・・」

神様「はい、箒」スッ

少女「まぁ、掃除位であれば」

神様「んじゃ、よろぴこ。 神使君は裏庭ヨロ」

神使「分かりました」

神様「それでは! 朝のお掃除スタートゥ」

674: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:15:48 ID:qW8GGYRo


─── 本殿


神様「さてと、一度ご神体でも覗いておきますかね」トテトテ


ギー


神様「うむ。 空っぽでござる」

神様「何か金目になる物はねーかな~」キョロキョロ


神様「木箱・・・ はは~ん、あれは宝箱じゃまいか?」

神様「♪~」トテトテ

675: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:16:33 ID:qW8GGYRo

神様「どうする神ちゃん。 開けるのか? 開けてしまうのか?」

神様「迷う必要など無い! これで私は大金持ち!!」ウヒャヒャ


パカッ


神様「イヤッホ~イ! 何も入ってな~い」

神様「・・・・・・。 まぁそう都合良く宝箱なんてないよね」


神様「・・・・・・」ハァ

神様「さて、他には何もなさそうだし」

676: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:17:29 ID:qW8GGYRo


─── 1時間後


神使「神様、裏庭のほう終わりました」スタスタ

神様「ん」ジー

神使「こんな隅っこで何をジーと見ているんですか?」

神様「あれ、どう思う?」

神使「少女さんですか? 綺麗にお掃除されていますね」

神様「やっぱお前の目は節穴だな」

神使「特に変わったところはないように思えますが・・・ 箒の扱いが上手いですね」

神様「あれ、神社での掃除にかなり慣れているぞ」

神使「そうなんですか?」

677: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:18:34 ID:qW8GGYRo

神様「ゴミを集める箇所が理想的だ。 わたしもあの場所は賛成だ」

神使「それは・・・ 偶然じゃないですか?」

神様「あと、一度も本殿に向かってゴミを掃いていない」

神使「ゴミを?」

神様「神のいる本殿にに向かってゴミを掃かないのは神社掃除の基本」

神使「巫女のバイト経験でもあるんでしょうか?」

神様「気になるのは、本殿以外にもう一カ所ゴミを掃いていない箇所がある」

神使「どこです?」

神様「あそこ」クイッ

678: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:19:20 ID:qW8GGYRo

神使「倉庫? 年代物の古い倉庫ですか?」

神様「あぁ」

神使「まさかあの倉庫も神域・・・」

神様「あの子、この神社で働いていたのは間違いないな」

神使「少女さんがここで? しかし、もう100年近く無人なんですよ?」

神様「・・・・・・」

679: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:20:43 ID:qW8GGYRo


─── 昼・社務所


神様「はぁ~ ちかれた」グテッ

神使「神様何もしてないじゃないですか・・・」

神様「コーラ飲みたい」

神使「ありませんよ」

神様「少女ちゃ~ん、コーラ飲みたい~」グイグイ

少女「ちょ、袴を引っ張らないで下さい」

神様「コーラ~」グイグイ

少女「それ以上引っ張ると脱げちゃ、本当に脱げちゃいますから!」

680: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:21:22 ID:qW8GGYRo

神様「うひゃひゃー かわえ~」ピョーン

少女「ちょ、本当に!!」ズルッ

神様「あっ」

少女「・・・・・・」

神使「ぶばっ!」ゲホゲホ


少女「キャー!!」


神使「み、見てないです。 私は見てないので!」プイッ

少女「・・・・・・」ジトー

神様「あ、いや・・・ その・・・ これは事故で」オロオロ

681: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:21:56 ID:qW8GGYRo

少女「分かっています、袴がハダけただけですので大丈夫です。 大声出してすみません///」

神様「うは~ きゃわゆい~」キラキラ

少女「からかわないで下さい」

神様「よし! 野球拳しよう! 絶対少女ちゃんを剥いてやる」ハァハァ

少女「!? わ、わたし飲み物買ってきます!」タッタッタッ

神様「・・・・・・」

神使「神様? 可愛いからってそんな事してたら嫌われちゃいますよ?」

神様「勘違いしてんじゃねーよ。 ちょっと調子に乗りすぎたけど・・・ 行くぞ」トテトテ

神使「ちょ、どちらへ?」スタスタ

682: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:22:30 ID:qW8GGYRo


─── 倉庫前


神使「ここは・・・ 倉庫ですよね」

神様「さっき、掃除中に本殿を見たけどもぬけの空だった」

神使「本殿にご神体がなかったのですか?」

神様「もぬけの空」

神使「まさか、この中に?」

神様「それを調べるんだよ。 少女ちゃんの反応を見る限り、この中に何かがあるはずだ」

神使「分かりました。 開けます」

683: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:23:22 ID:qW8GGYRo


ギー


神様「何もないな」キョロキョロ

神使「結構広いですね」

神様「上の方にも棚があるな。 犬ころ、調べて」

神使「ちょっと私でも手が届きそうにないです」

神様「そうだ。 本殿に丁度良い木箱があったからそれ持ってきて」

神使「木箱ですか?」

神様「それを踏み台にすれば届くかも」

神使「分かりました」タッタッタッ

684: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:24:06 ID:qW8GGYRo


─── 数分後


神使「持ってきました。 結構大きいですね」ヨイショ

神様「よし、それ足場にして上の棚調べて」

神使「はい」ゴソゴソ


神様「どう? 何かある?」

神使「特に何もないですね」

神様「ん~ 検討違いか・・・」

神使「そろそろ少女さん戻ってくるんじゃないですか?」

神様「そうだな。 取りあえず出るか」トテトテ

神使「箱は?」

神様「戻すの大変だし、置いておけ」

神使「はい」

685: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:24:59 ID:qW8GGYRo


─── 参道


少女(ペプシでも大丈夫かな?)テクテク


 はやくー


少女「?」コソッ


 神使「ちょ、待って下さいよ」タッタッタッ

 神様「少女ちゃんが帰って来ちゃうだろ!」


少女(あの二人、今倉庫から・・・)キッ

686: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/29(土) 00:26:05 ID:qW8GGYRo


─── 深夜・神様&神使の寝室


神様「zzz」グガー

神使「zzz」スヤスヤ


 ギー

 少女「」コソッ


神様「zzz」グガー

神使「zzz」スヤスヤ


少女「・・・・・・。 ごめんなさい」ボソッ


ポワポワ

687: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:40:17 ID:KjUZmOw2


─── 翌朝・社務所


神様「おふぁよ~」トテトテ

神使「もうお昼近いですよ?」

神様「お腹すいた。 牡蠣フライ食べたい」

神使「何で寝起きでそんな重い物を・・・ 街まで出たら何か食べましょう」

神様「ん? 出かけるの?」

神使「何言っているんですか、次の場所に行くんですよ?」

神様「あ?」

神使「少し遠いので長旅になりますが」

神様「少女ちゃんは?」キョロキョロ

神使「少女さん? ここには昨日来たときから私と神様だけですが」

神様「・・・・・・」

688: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:41:25 ID:KjUZmOw2


─── 参道


神使「良いお天気ですね」テクテク

神様「なぁ」ピタッ

神使「どうしたんです? こんな所で立ち止まって」

神様「あれ」

神使「倉庫ですか?」

神様「あの中、知ってる?」

神使「鍵がかかっていて中には入れなかったじゃないですか・・・」

神様「そう」トテトテ

神使「?」

689: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:42:41 ID:KjUZmOw2


─── 電車内


ガタンゴトン


神様「・・・・・・」

神使「どうしたんです? 今日は随分とアンニュイですね」

神様「お前、財布は持ってるか?」

神使「財布ですか?」ゴソゴソ

神様「私に取られて───」

神使「ありますよ?」スッ

神様「・・・・・・」

神使「どうしたんです?」

690: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:43:19 ID:KjUZmOw2

神様「今からいくつか質問をする」

神使「質問?」

神様「少女という名に聞き覚えは?」

神使「先ほども仰っていましたね・・・ 私の記憶にはありません」

神様「スネを見せろ」

神使「スネ?」ゴソゴソ

神様「右足だ」

神使「あれ? 青あざが・・・ 」

神様「その青あざはどうして出来た?」

神使「これは・・・」

691: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:44:10 ID:KjUZmOw2

神様「流されるな。 自分を見失うな。 自分の行動を忘れるな」

神使「その言葉どこかで・・・」

神様「少女ちゃんのハダけた袴、そそられただろ?」ボソッ

神使「あれ、なんで顔が赤く///」


神様「神使君? コレ何か知ってる?」

神使「それは神様の神力が入ったお守りですよね」

神様「そう。 これを私の右手でギュッと握って」

神使「?」

692: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:44:50 ID:KjUZmOw2

神様「よーし、歯を食いしばれー!」

神使「え?」

神様「神ちゃーんスーパーパーンチ」


ドカッ


神使「痛い!」クラクラ

神様「アーンド! 神ちゃんスーパーキーック!」


ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ


神使「痛痛痛痛! ちょ、神様それ以上蹴られるとまた気を失ってっ・・・ !!」ハッ

693: ◆8YCWQhLlF2 2018/12/30(日) 05:46:22 ID:KjUZmOw2

神様「少女という名に心当たりは?」

神使「少女さん・・・ 覚えています。 これは一体・・・ 何で忘れて・・・」

神様「間違いないな。 アイツと同じ力だ」

神使「これって・・・ まさか洗脳?」

神様「財布は?」

神使「あれ? 財布がない!?」

神様「・・・・・・」

神使「とにかく次の駅で降りて錆礼田神社に戻りましょう」

神様「いや、一旦神宮へ行く」

神使「神宮?」

神様「確認したいことがある」

698: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:11:48 ID:TFg8nSx6


─── 神宮


 ハロ~


A子「あ、神ちゃんだ。 神使さんも」

神様「久しぶり」

神使「ご無沙汰しておりますA子ちゃん。 ちゃんと巫女のお仕事してますか?」

A子「もちろん! でも、お守りの売れた数と金額が合わないんだよね~」

神様・神使「・・・・・・」

A子「神宮に用事?」

神様「ちょっと資料室で調べ物があって」

A子「ふ~ん。 誰もいないと思うけど室長呼ぶ? あっ、でもさっき室長に怒られたから会いたくないなぁ」

神様「いや・・・ いない方が好都合だからよばなくてもいいや」

699: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:13:19 ID:TFg8nSx6

A子「みんな明日からの旅行準備で忙しいからね」

神様「旅行?」

A子「そう、まぁ形式的には研修旅行だけど」

神様「なにそれ! 私呼ばれてない!」

A子「え~ 神使さん経由でメール送ったよ?」

神様「え?」クルッ

神使「」プイッ

神様「おいクソ犬」

神使「丁度、錆礼田神社に行く日と重なっていたもので・・・」

A子「錆礼田神社?」

神使「はい。 私達、今錆礼田神社におりまして」

700: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:14:02 ID:TFg8nSx6

A子「私達が行く所と近いね」

神様「そうなの?」

A子「うん、甘利錆礼手内神社」

神使「大きくて立派な神社ですね」

A子「100人位で行くからねぇ。 広くないと入れないんだよ」

神様「近いなら私も行きたい~」

A子「近いって言っても車で20分位かかるけど」

神様「仕事片づいたら合流しようよ」

A子「いいよ。 3日後には帰っちゃうからそれまでに連絡してね」

神様「分かった。 あとでメールするね~」

A子「は~い」

神使「それでは神様、時間もないですし」

神様「へいへい」

701: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:15:24 ID:TFg8nSx6


─── 資料室


神使「相変わらず凄い量の資料ですね」

神様「ここの資料は地域・管理神・年代・神社名の順で整理されている」

神使「さすが資料整理歴が長いだけあってよく知っていますね」

神様「普通は目的の資料を探すのに2日かかるが、私なら半日で探し出せる」ドヤッ

神使「今は神宮資料DBを使えば場所が数秒で分かりますから便利になりましたよね」

神様「は?」

神使「スマホの神宮アプリで“錆礼田神社 変更届”で検索っと」ポチポチ

神様「?」

神使「出ました。 N-45-386の棚です」テクテク

神様「ねぇ、それ何?」トテトテ

702: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:16:20 ID:TFg8nSx6

神使「え~と・・・ あった。 これですね」スッ

神様「・・・・・・」

神使「神様?」

神様「・・・いつから?」

神使「は?」

神様「そんなものいつから実用化されたんだよ!」

神使「たしか10年ほど前から・・・」

神様「私の職人芸が・・・ また一つ消えた」ガクッ

神使「ま、まぁ今はそれよりも資料のチェックを先に」アセアセ

神様「うん」シュン

神使「どうぞ、100年近く前の書類なので丁寧に扱って下さいね」

神様「ん」ペラペラ

703: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:18:12 ID:TFg8nSx6

神使「あっ、それです」

神様「錆礼田神社管理者変更届・・・ 早く見つかって良かったね・・・」

神使「・・・・・・。 受付年が1906年ですね」

神様「1895年の当社代表巫女の失踪により新管理者のへの変更を届ける。 か」

神使「123年前に先代の巫女が失踪・・・」

神様「失踪してから届け出まで11年あるな」

神使「でも次の継承者の欄が空白になっていますね」

神様「本当に?」

神使「はい。 前管理者の欄も空白ですよね」

神様「私と神使君は別世界にいるのか?」

神使「どういう意味です? まさか、神様には何か見えるんですか?」

神様「んじゃ、試してみますか」スッ

神使「神様のお守り・・・ 神力を使うんですか?」

神様「私と犬ころだけ知れば良いからほんの少しだけ」

704: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:18:46 ID:TFg8nSx6


ポワポワ


神使「文字が!?」

神様「やっぱり」

神使「ど、どいういう仕掛けですか?」

神様「解除したんだよ」

神使「解除?」

神様「限定的だけど。 全てを解除するとどこまで影響するか分からないからな」

神使「ちょっと待って下さい。 この名前って・・・」

神様「さて、錆礼田神社に戻りますか」

705: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:19:48 ID:TFg8nSx6

─── 錆礼田神社・倉庫前


少女「・・・・・・」ボー


~~~

幼女「お母さん?」テクテク

母「あら、どうしたの」

幼女「何してるの?」

母「・・・ちょっと昔のことを思い出してたの」

幼女「昔?」

母「お母さんね、昔ここである方に助けられたことがあるの」

幼女「ここで?」

母「そう。 あの時声をかけてもらえなかったらお母さん・・・」

幼女「そんな大事な場所なら大切にしないとね! 私、ここをずっと大切にするね」

母「ありがと」ニコッ

~~~

706: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:20:54 ID:TFg8nSx6


少女「お母さん・・・」


 神様「ハロ~」トテトテ


少女「・・・・・・」チラッ

神様「言われなくても掃除をするなんて流石だねぇ~」

少女「どこかでお会いしたことありましたでしょうか?」

神様「一昨日会ったじゃん~ 私のかわゆいバイト巫女ちゃん」

神使「ちなみに、私も覚えていますよ?」

少女「・・・・・・」

神様「いや~ 少女ちゃんにあげたダサい財布の中に私のポンタカード入れっぱなしだったの思い出してさぁ~」

神使「神様のではなく私のポンタカードです」

神様「たまったポイントでお菓子を買うのが私の楽しみなの」

神使「私のポイントです」

707: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:21:46 ID:TFg8nSx6

少女「貴方たちは一体何者なんですか?」

神様「私は神宮のかわゆい女神、こいつはお付きの神使なのだ」フンスッ

少女「神・・・ やっぱり」フッ

神様「おや? 少女ちゃんは神の存在を信じる口?」

少女「昔聞いたことがあるんです。 この力は神には効かないって」

神様「昔って?」

少女「・・・・・・。 私をどうするんです? 捕らえて実験台にでもします?」

神様「・・・・・・」

少女「それとも・・・ 殺して力ごと封印しますか?」

神様「そんな事するわけない。 私はこれでも神、二度とそんな暴言を吐かないでもらいたい」

少女「・・・・・・」

708: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/04(金) 23:22:37 ID:TFg8nSx6

神様「お母さんと同じ力を持っているんでしょ?」

少女「!?」

神様「少女ちゃんと同じ力を持つヤツを私は知っている」

少女「お母さんを知っているの!?」

神様「やっぱり」

少女「・・・もしかして、騙しました?」

神様「いいや、君のお母さんは古い古い私の大切な友人だ」

少女「・・・・・・」

神様「娘がいたなんてビックリしたけど」

神使「お話を聞かせてもらえないでしょうか」

神様「望むなら、私も隠さずアイツの話をすると約束する」

713: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:31:58 ID:u8y5Okis


─── 社務所


神様「この神社を守っていた先代の巫女が123年前に失踪した事を少女ちゃんは知ってる?」

少女「」コクリ

神使「それ以降この神社は無人になっています。 間違いないでしょうか?」

少女「間違いありません」


神様「そして、その失踪したとされる巫女は少女ちゃんと関係がある」

少女「・・・・・・」

神使「神宮に保管されている管理者変更届で確認しました。 後継者の欄には少女さんの名前が記載されています」

神様「これは私とコイツしか知らないし、他に言うことは絶対にしない」

少女「・・・・・・。 失踪した先代の巫女は私の母です」

714: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:33:13 ID:u8y5Okis

神使「失踪の原因というのは?」

少女「分かりません。 ある日突然・・・」

神様「う~ん・・・ だとすとると、おかしい点があるんだけど」

少女「何でしょう」

神様「少女ちゃんの年齢が合わないんだよ」

神使「お母様が123年前に失踪されたとすると、少女さんはそれ以上の年齢でないといけません。 ご子孫でしたら分かるのですが・・・」

神様「少女ちゃんはどう見ても10代」

少女「歳を・・・ 取れないんです」

神使「え?」


神様「少女ちゃん、生まれはいつ?」

少女「・・・・・・。 明治21年、西暦で言うと1888年です」

神様・神使「!?」

715: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:34:15 ID:u8y5Okis

神使「歳が取れないと仰っていましたが幼少期はあるんですよね?」

少女「はい」

神様「つまり、今の状態になるまでは成長していた」

少女「」コクリ

神使「神様、これは一体・・・」


神様「お母さんから何か詳しいことは?」

少女「私の持っている変な力・・・ たぶんそれが原因。 お母さんも持っていました」

神様「少女ちゃんのお母さんが神だったことは聞いてる?」

少女「お母さんが、神!?」

神様「最初からじゃない。 生まれは人だった」

少女「そんな・・・」

716: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:35:21 ID:u8y5Okis

神様「アイツの生まれは確か平安時代の後期」

少女「平安!? 人から神になったという事ですか?」

神様「そう。 でも、人に戻った。 最愛の伴侶と一緒になるために神から人へ」

少女「私の知っているお母さんは人に戻った後なんですか?」

神様「時代的にはそうだと思う」

神使「でも、神から人に戻ると神の力は使えなくなるんですよね?」

神様「あいつの力は生まれ持った物。 人に戻しても力は消えない」

少女「生まれ持った力・・・ 私と同じ」

神様「とても難しい力だったから・・・ アイツを人に戻したときに神力を少し残したんだ」

神使「人でありながら神の力を扱えるという事ですか?」

神様「いや、その力にだけ反応できる神力だけだ。 俗に言う神の力はない」

少女「・・・・・・」

717: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:36:20 ID:u8y5Okis

神様「少女ちゃんも出来るんでしょ? アイツと同じように時間移動が」

神使「時間移動!?」

神様「時を跨ぐことの出来る力。 神ですら犯すことの出来ない領域」

神使「洗脳とか催眠の類いではなかったんですか・・・」

神様「そんなトリックじみたモノじゃない」


少女「難しくて・・・ 私には完全に使いこなせないですが・・・」

神様「特に少女ちゃんは神力を持っていないから余計だろうね」

神使「時間移動って・・・ タイムトラベルって事ですよね?」

少女「はい。 厳密に言うと肉体を持っての時間移動と自身の意識共有の2パターンがあります」

神使「そんな力が人に・・・」

神様「私も最初にアイツから聞いた時はビックリした」

神使「それはそうですよね。 使い方を誤ればとても危険な力になります」

神様「あぁ。 アイツも力を使うときはいつも慎重だった」

神使「もし過去を改変してしまったら辻褄が合わなくなりますからね」

718: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:37:24 ID:u8y5Okis

神様「私が何度も宝くじのあたり番号を握りしめて泣いて頼みこんでも聞く耳を───」

神使「肉体の時間移動と意識共有というのは大きく違うのですか?」

少女「意識共有は現在の意識を過去の自分に上書きします。 過去の自分からすると突然未来の行動が頭の中に入ってくるんです」

神使「自分の意識だけが時間を超えて共有するということですか・・・」

少女「ただ、私の力だと効果があるのは2日前まで意識を移すのが限界です」

神使「肉体の時間移動も制限が?」

少女「いいえ。 制限無く過去未来へ肉体を持ったまま行くことが出来ます」

神使「タイムトラベルの方が簡単なんですか・・・」

少女「はい。 意識だけを過去に移す方が手間がかかるので」

719: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:38:12 ID:u8y5Okis

神使「ちなみに、その力は頻繁に?」

少女「意識干渉は昨日使いました」

神様「私達の行動を変えるため」

少女「昨日の私の記憶を1日前に移して、お二人に会わないように自分の行動を変えました」

神使「その結果、私達が少女さんと会っていない事になっていたのですね」

少女「お二人の一本前の電車に乗って先回りしてここへ来ましたので」

神様「なんでそんな事を?」

少女「・・・・・・。 あの場所に入ったから」

神使「あの場所?」

神様「倉庫」

少女「あそこは、私とお母さんの思い出の場所。 私が守るとお母さんと約束した場所だから」

神使「そんな大切な場所だったのですか・・・ 勝手に入って申し訳ありません」

720: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:39:28 ID:u8y5Okis

少女「私、過去にこの力を気付かれて何度も危険な目に遭いました」

少女「捕らえられ実験台にされて・・・ 殺されそうになったことも・・・」ガタガタ

神使「少女さん・・・」

少女「でも、お二人に先ほどお会いしたとき正直ホッとしました」

神様「?」

少女「心のどこかで、お二人なら気付いて助けてくれんじゃないかと思っていたのかも」

神様「この神社には頻繁に来てたの?」

少女「危険な目にあった時に。 ここに来るとお母さんに守ってもらえるような気がして・・・」

神使「という事は、最近も・・・」

少女「」コクリ

神様「・・・・・・」

少女「でも、今回が最後って決めていました」

神使「それはどういう・・・」

少女「少し疲れてしまったんです」ニコッ

神使「・・・・・・」

721: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:40:17 ID:u8y5Okis

神様「心配無用!!」

少女「!?」ビクッ

神様「この私が来たからには全て解決したも同然!」

少女「え?」

神様「辛い経験をした人はそれに見合う幸せが必要だ」

少女「幸せ・・・」

神様「じゃないと人はその辛さで押しつぶされちゃう」

少女「・・・・・・」

神様「だから少女ちゃんには、今までの辛さを帳消しにする位の幸せを私がプレゼントする」

神使「神様・・・」


神様「何も心配いらないから。 今まで一人でよく頑張った」ナデナデ

少女「・・・・・・」ウルウル

722: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 00:41:25 ID:u8y5Okis

神様「よし! まずは状況を整理しよう!」

神使「はい」


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」

少女「・・・・・・」


神様「神使君、進めて」

神使「え!?」

神様「お前こういう厨二病っぽい案件好きだろ」

神使「神様、もしかして勢いだけで突っ走りましたね?」

神様「テヘッ!」

神使「はぁ~・・・」ガクッ

723: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:33:47 ID:u8y5Okis

神様「早く進めろよ!」

神使「まず、問題点は二つあります。 一つはお母様の失踪、もう一つは少女さんの成長」

神様「そう、それ!」

神使「少女さん、時間移動の力はどの位の頻度で使っていますか?」

少女「意識共有は力のことが知らせそうになった時、何度か過去に飛ばして回避しました」

神使「それが原因という事は考えられませんか?」

少女「意識共有を安定して使えるようになったのは50年前からなので考えにくいと思います」

神使「タイムトラベルの方も頻繁に?」

少女「いいえ、タイムトラベルを最後に使ったのは私が18才の時です」

神様「100年以上前か・・・ その時アイツは?」

少女「私が7歳の時にはすでに行方が分からなくなっていましたから」

724: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:34:28 ID:u8y5Okis

神使「年齢的にそのタイムトラベルが少女さんの成長を止めた原因という可能性がありそうですね」

少女「」コクリ

神使「ちなみに、過去未来どちらへ?」

少女「両方行きました。 1回目はその時代から3日前」

神様「随分近いね」

少女「私が18歳になったらこの神社を継ぐことになっていたんです。 でも、私・・・」

神様「継ぐのを躊躇した」

少女「はい。 総代が神宮に提出した書類をすり替えました」

神使「それで、神宮の書類に名前が・・・ でも、最初は記載されていたと聞いていますが」

少女「私も昨日それを聞いて不思議に思いました」

725: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:35:06 ID:u8y5Okis

神様「その時近くに神でもいたんだろ。 アイツと違って少女ちゃんの力は不安定だから神には力が効きにくかった」

神使「神が側にいない所では改変の影響がでる・・・ しかし、それは二通りの時間の流れが発生していることに」

神様「アイツから聞いただけだけど限定的で小さいことなら結構あるらしいよ?」

神使「それは物理法則の書き換えが必要な位重大な事ですね・・・」

神様「未来の方は?」

少女「力の制御が不安定で・・・ たぶん暴走したんだと思います。 怖くてそれ以降使っていません」

神使「どの時代かも分からないですか?」

少女「はい、未来という事だけで。 気付いたら暗くて寒い森の中で・・・ 声がしたので怖くてすぐ戻りました」

726: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:35:43 ID:u8y5Okis

神様「どう? 解決した?」

神使「少女さんの成長に関して、一つだけ思い当たる節があります」

神様「聞いてやる」

神使「未来からの観測です」

少女「観測・・・」

神使「少女さんが未来に行ってその姿を誰かに見られた場合、その時間・その場所で少女さんが存在していたことが確定されてしまいます」

神様「どういう事?」

神使「例えば100年後に行って誰かの記憶に残った場合、少女さんは100年後に見られた状態でそこにいる必要があると言うことです」

神様「いないとどうなるの?」

少女「私を見た人の記憶に齟齬が発生する・・・」

神使「そうです。 ですから少女さんは未来で観測された状態と同じ状態になるまで歳を取れない」

神様「って事は、少女ちゃんが今の姿で1000年後まで行って誰かに見られたら1000年間年を取らないと?」

727: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:36:21 ID:u8y5Okis

少女「でも、先ほど複数の流れが存在することも可能と仰っていませんでしたか?」

神様「そうだよ。 人に見られた位、見間違いで済む可能性の方が高いし。 そんな未来に少女ちゃんなんか誰も知らないはずだし」

少女「私の記憶ですと長くても数秒しかその時代にはいなかった気がしますから見られても印象に強く残らない気が」

神使「複数存在できない位の重大な出来事だったのでは?」

神様「あ?」

神使「事象が複数存在する場合、分かれた事象がどこかで収束するんだと思います。 少女さんの場合収束できない事象だった」

神様「日本語でプリーズ」

神使「タイムパラドックスです」

神様「日本語で言えって言っただろーが! 厨二病!」ゲシッ

神使「痛い!」

神様「まぁ、何となく分かったけど」

728: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:37:01 ID:u8y5Okis

神使「少女さん」

少女「はい」

神使「未来にタイムトラベルしたのは18歳の時が最後と仰っていましたが、もっと若いときに行ったことは?」

少女「・・・・・・」

神使「あるんですね?」

少女「お母さんとは何度か。 でも遠くても2日程度でした」

神様「アイツが一緒なら問題は起こらないな」

神使「一人では?」

少女「ハッキリとは覚えていないんですが、私が7歳の時」

神使「過去未来どちらです?」

少女「分かりません・・・ 実際タイムトラベルしたのかも定かではないんですが、その直後に母がいなくなりました・・・」

神様「それが時間移動だったとしたらアイツの失踪に関係があると?」

少女「私がそう思い込んでいるだけかも知れないんですが」

729: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:37:37 ID:u8y5Okis

神使「何かその時のことで思い出すことはないでしょうか?」

少女「そうですね・・・」

~~~

少女「お母さん!」タッタッタッ

?「こんな所でどうしたの?」

幼子「あのね、お祭り見てたら迷子になっちゃったの」

?「沢山の人がいるものね。 でも、もう大丈夫よ」ニコッ

~~~


少女「お祭り・・・」

神様「祭り?」

少女「はい、お祭りの日だったと思います」

神使「こちらの神社はお祭りがあるのですか?」

少女「お母さんが亡くなってからは一度も」

730: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:38:12 ID:u8y5Okis

神使「他には?」

少女「あとは・・・」


~~~

幼子「ねぇ、あのガタガタしてる箱は何?」

?「あれは、お母さんと幼子の宝物。 幼子が大きくなったら一緒に開けましょうね」

幼子「うん!」

~~~


少女「たしか、宝がどうのって・・・」

神様「宝!?」グワッ

少女「え、えぇ。 大きくなったら一緒に開けようって」

神様「ほぉ~」ニヤッ

731: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:38:51 ID:u8y5Okis

神使「神様?」

神様「何かな? 神使君」

神使「この状況で変なことを考えていませんよね?」

神様「私は神だぞ? 人の喜びが私のご飯。 失敬なことを言うな」

神使「目の瞳孔が開いてますが? 鼻が大きく膨らんでますが? 口が緩んでいますが?」

神様「うるせーよ」ゲシッ

神使「痛い!」ガクッ


少女「ふふっ」クスッ

神使「すいません、こんな時に神様が不謹慎で」

少女「そんな事無いです。 少し落ち着きました」ニコッ

732: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:39:29 ID:u8y5Okis

神使「お祭りですか・・・」フムッ

神様「お宝ですか・・・」フムッ


神使「・・・・・・」ジトー

神様「そんな腐ったミカンを見るような目で私を見るのを止めて下さい」


神使「ちなみにこの神社のお祭りというのは何月ですか?」

少女「確か・・・ 毎年1月7日だったと思います」

神様「明日じゃん」

神使「・・・将来この神社でお祭りが開かれるという事でしょうか?」

少女「沢山の人がいました。 境内を埋め尽くす位」

733: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/06(日) 23:40:23 ID:u8y5Okis

神様「将来ここでそんな大祭なんか開かれるのかねぇ~」

神使「今のままでは可能性は低そうですが・・・」

神様「だったらさぁ~」

少女・神使「?」

神様「明日、祭りを開けば良いんじゃね」

神使「祭りを!? 私達がですか?」

神様「そう。 境内を人が埋め尽くす位の大きな祭りを開くんだよ」

少女「でも、そんな沢山の人この村には・・・ しかも明日だなんて」

神様「案がある」ニヤッ

神使「まさか神様・・・」

神様「神使君や、電話を繋いでくれたまへ」

735: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:15:48 ID:9436ABs2


─── 翌日


 プッ プッー

 おーい、神ちゃ~ん!


神様「A子ちゃ・・・」

神使「うわっ! 何ですかあの観光バスは!?」


 A子「お祭り開くって言うからみんな連れてきたー」


神様「あっ、うん」

736: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:16:32 ID:9436ABs2


─── 境内


ガヤガヤ


少女「あの、これは・・・」

神様「えっと、先に紹介するね。 この子は神宮の巫女でA子ちゃん」

A子「神宮が誇るミス巫女、A子です」ペコリ

少女「・・・・・・。 少女です」ペコリ


A子「ここって広い神社だね~」

少女「土地だけですが」

神様「ねぇ、なんで屋台とかまでいるの?」

A子「甘利錆礼手内神社も昨日までお祭りでさぁ。 話をしたら一緒に付いてくるって」

神様「そうなんだ・・・」

737: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:17:20 ID:9436ABs2

神使「まぁ、お祭りっぽくなりますし良いんじゃないですか? 神職と巫女だらけですが」

神様「そうね、100人位いるからそこそこ賑わってる感は出るかな」

A子「ここに来る途中でバスからスピーカーで宣伝しまくったから人いっぱい来ると思うよ?」

神様「さすがA子ちゃん、私の発想を超える大胆な行動・・・」

神使「よく捕まりませんでしたね」

A子「やだなぁ~ 警察に5回止められたよ」

一同「・・・・・・」

A子「でも正直に私は巫女で神のお告げが~ って言ったら何も言わずに見逃してくれた」

神様「それは単に関わりたくなかっただけじゃ・・・」

神使「あまり神宮の評判を落とさないで下さいね」

738: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:17:53 ID:9436ABs2


─── 夕方


ピーヒョロ ピーヒョロ

ガヤガヤ


神様「すげーな・・・ どこから見てもお祭りじゃん」

A子「ふごいね~」ペロペロ

神様「・・・・・・。 それ何?」ジー

A子「メロン飴、向こうで売ってた」

神様「へ、へぇ~」ジュルリ

神使「A子ちゃん、巫女装束着たまま食べ歩きなんてダメですよ?」

A子「食べてないもん! ペロペロしてるんだもん。 高速ペロペロー!」ペロペロペロ

739: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:18:24 ID:9436ABs2

少女「この神社にこんなに人が来るなんて・・・」ウズウズ

神使「少し見てきたらどうです?」

A子・神様「いいの!?」

神様「私は少女さんに言ったんです」

少女「良いんですか?」

神使「もちろんです。日が落ちる頃に倉庫で待ち合わせしましょう」

A子「よっしゃ! 少女ちゃん行こう!」ガシッ

少女「え?」

A子「こっち! さっきすごい美味しそうなもの見つけたんだ」タッタッタッ

少女「あ、ちょ、一人で歩けますから」タッタッタッ

740: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/09(水) 07:18:57 ID:9436ABs2

A子「じゃ~ね~ 神使さーん」

神様「じゃ~ね~ クソ犬ー」

神使「神様はダメです」ガシッ

神様「がー! メロン飴が! メロン飴が私を呼んでいるんだー!!」ジタバタ

神使「呼んでませんから。 私達は倉庫の方に行きますよ」

神様「私も高速ペロペロしたいー!!」ズルズル

744: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:46:55 ID:qSIVsP1Y


─── 倉庫前


神様「うー 寒ぶ」ブルブル

神使「まだ時間もありますし少し離れたところで監視しましょうか」

神様「こんな寒いのに外で監視とかありえないだろ。 本当に今日が過去の少女ちゃんが来る日かも分からないのに」

神使「そうですが・・・ では、一度社務所に戻ります?」

神様「ん~・・・」

神使「神様?」

神様「・・・・・・。 中に入ろうぜー」

神使「倉庫の中にですか? 少女さんが来てからの方が良いのでは」

神様「いいから」トテトテ

神使「ちょ、神様」

745: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:47:45 ID:qSIVsP1Y


ギィー


神使「また勝手に入ったら少女さんに─── !?」

神様「よ、久しぶり」

少女母「お久しぶり、神ちゃん。 そして」

神使「は、初めまして。 神様のお付きで神使と申します」

少女母「こんにちは」ニコッ

神使「もしかして、少女さんのお母様ですか?」

少女母「はい」

神様「いつの時代から?」

少女母「今から123年前」

神様「やっぱり今日で合ってたか」

746: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:48:39 ID:qSIVsP1Y

少女母「もうじき7歳の時の娘が来るわ。 その子を戻さないとね」

神様「人が多いし結構見られちゃうから修正も必要だな」

少女母「子供一人が見られた位じゃ時間軸なんて変わらないわ。 特にこれだけ多ければね」

神様「そうなの? んじゃ私達も挨拶しようかな」

少女母「それは勘弁して欲しいかな。 さすがに二人に見られると事象が確定しちゃうし」

神使「印象が強すぎるという事ですね?」

少女母「もし会うんだったら過去を少し弄らせてもうらうけど」

神使「会うのは止めておきましょう」

少女母「よかった。 正直言うと時間移動できる力も残り少ないしね」

神様「そう言えば、お前元の時代に帰ってないだろ。 失踪したことになっているぞ」

少女母「この後少しやることがあってね」

神様「まさか戻れないのか?」

少女母「」ニコッ

神様「・・・・・」

747: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:49:16 ID:qSIVsP1Y

少女母「ねぇ神ちゃん、ここ覚えてる?」

神様「?」

少女母「私、ここで神ちゃんに初めて会ったの」

神様「ここが・・・ あの時は周りに何も無かったからな」

少女母「2000年以上前だものね。 でも、私にとってはとても大切な場所」

神様「そうか」

少女母「他の人にはない力を持って生まれて・・・ 神ちゃんに救われなかったら私・・・」

神様「あの時のお前、酷い状態だったもんな。 精神も体もボロボロで」

少女母「でも、そういう過去があったからこそ、今の私がいてあの子もいる」

神様「そうだな」

748: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:50:40 ID:qSIVsP1Y

少女母「あの子も私と同じ力を持ってしまって、もう少し側にいてやりたかったんだけど・・・」

神様「大丈夫。 良い子に育ってるよ」

少女母「ありがとう、神ちゃん」ニコッ


 お母さーん?


神様「やべ、小さい方の少女が来た!」アワアワ

神使「見ちゃうとまずいですね。 神様、箱! この箱に入りましょう」

神様「声は聞こえちゃうけど大丈夫か?」

少女母「はい、耳栓」スッ

神使「ありがとうございます」

神様「私は?」

少女母「1個しかないから、神ちゃんは耳を塞いでおいてね」

神様「マジっすか!?」

少女母「絶対に覗き見はしないでね?」

神様「しゃーねな。 急げ!」ゴソゴソ

749: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:51:20 ID:qSIVsP1Y


 ギー


幼子「お母さん? どこ?」テクテク

 ガタガタ

幼子「!?」ビクッ

少女母「幼子」

少女「お母さん!」タッタッタッ

少女母「こんな所でどうしたの?」

幼子「あのね、お祭り見てたら迷子になっちゃったの」

少女母「沢山の人がいるものね。 でも、もう大丈夫よ」ニコッ

750: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:53:58 ID:qSIVsP1Y

幼子「ねぇ、あのガタガタしてる箱は何?」

少女母「あれは、お母さんと幼子の宝物。 幼子が大きくなったら一緒に開けましょうね」

幼子「うん!」

少女母「お母さんちょっとお仕事があるから、先に帰っててね」

少女「はい!」ニコッ

少女母「この小屋の裏に光った穴があるから、そこからお帰り」

幼子「はーい!」タッタッタッ


ギー バタン


─── 外


 幼子「♪~」タッタッタッ


少女「あれ? 今だれか小屋から出てきたような・・・」

A子「少女ちゃん? どったの?」ペロペロペロ

少女「・・・・・・。 !?」タッタッタッ

751: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:55:20 ID:qSIVsP1Y


─── 小屋の中


神様「行った?」ニョキ

少女母「えぇ」


神様「ふ~ 危機一ぱ───」


 ギー


神様「!?」バタン


少女「神様、神使さん、いますか? 今、だれかここから・・・ !?」ハッ

752: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:56:10 ID:qSIVsP1Y

少女母「久しぶり」

少女「お母・・・ さん・・・?」

少女母「」ニコッ

少女「本当に・・・ お母さん・・・」

少女母「未来のあなたに会いたくて、お母さんズルして見に来ちゃった。 な~んて」ニコッ

少女「お母さん・・・ お母さーん!!」ダキッ

少女母「ふふふ。 小さいあなたより甘えん坊さんだこと」ナデナデ

少女「お母さーん! 会いた・・・ かった・・・」グスッ

少女母「ごめんね、あなたには辛い思いをさせてしまって」

753: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:57:03 ID:qSIVsP1Y

少女「そうなんだ、やっぱりこの時代に・・・ さっき出て行ったのって・・・」

少女母「7歳の時の少女」

少女「やっぱり・・・ ごめんなさい。 わたし力の使い方が分からなくて、気付いたらここに・・・」

少女母「お母さんだって最初はそうだった」

少女「でも、あの日以来お母さんは戻ってこなかった・・・ 私がお母さんを」グッ

少女母「心配しないで? それとこれとは別の事象だから。 あなたが心配することじゃないわ」

少女「・・・・・・。 ねぇ、お母さんって昔、神さまだったの?」

少女母「神ちゃんから聞いたの?」

少女「」コクリ

少女母「そうよ。 これでも“時の女神”なんて呼ばれてたすごい神さまだったんだから」

少女「時の女神・・・」

754: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:57:57 ID:qSIVsP1Y

少女母「お母さんの言う事が信用できない?」

少女「そんな事ない」

少女母「必ずまた会えるから」

少女「お母さん」

少女母「だから、ね?」

少女「うん」


ガタガタ


少女「?」

少女母「そうだ。 これ、覚えてる?」

少女「箱・・・ 昨日の朝はなかったのにいつの間に・・・」

少女母「あなたが大きくなったら開けるって約束したわね」

少女「私とお母さんの宝物・・・」

755: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:58:43 ID:qSIVsP1Y

少女母「開けてみましょうか」

少女「いいの?」

少女母「えぇ。 私の宝物、そしてあなたにも宝物になって欲しいな」

少女「」テクテク


パカッ


神様「ちっす。あなたの宝物です」

神使「すいません」

少女「・・・・・・」

756: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/10(木) 02:59:40 ID:qSIVsP1Y

神様「お気に召しませんでしたか?」

少女「ふふっ、お母さんの宝物って───」


シーン


少女「お母さん?」キョロキョロ

少女「お母さん? お母・・・さん・・・」シュン


神使「少女さん・・・」

神様「・・・・・・」

758: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:34:34 ID:irKyNpU6


─── 参道


テクテク


神使「なんだか不思議な感覚ですね」

神様「あ?」

神使「100年以上前の方にお会いしたんですよ?」

神様「あ~」

神使「過去・現在・未来ってどういう繋がりなんですかね」

神様「私は常に未来を見据えているから過去なんか気にしないけどね」

神使「過去を変えれば未来が変わる。 未来を変えれば過去が変わる・・・ よく分からないですね」

神様「本当は変わらないんじゃないか?」

神使「?」

神様「それを証明する手立てはないけどな」

神使「そうですね」

759: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:35:35 ID:irKyNpU6


ガサゴソ


神様「?」

神使「森の奥ですね。 狸さんでしょうか?」

神様「いや、あれって・・・」ジー

神使「誰かいる感じがしますね。 暗くてよく見えませんが」

神様「あれ少女ちゃんだよ。 何であんな所にいるんだ?」


 少女「」キョロキョロ


神様「おーい! 少女ちゃ───」


 少女「!?」ビクッ

 シュンッ


神様・神使「!?」

神使「・・・・・・。 今消えませんでした?」

760: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:36:37 ID:irKyNpU6


 少女「どうしたんですか? こんな所で」テクテク


神様・神使「え?」クルッ

少女「? 森に何かあるんですか?」キョロキョロ

神様「少女ちゃん? いま森の中に」

少女「私、参道から歩いてきましたけど。 やっぱりお母さんは見つかりませんでした・・・」

神様「あ、うん。 でも・・・ あれ?」

少女「お話しがあります。 後ほど社務所で」タッタッタッ

神様「・・・・・・」

761: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:37:21 ID:irKyNpU6


神使「神様、本当に森の中にいたのは少女さんなんですか?」

神様「間違いない。 私、これでも視力4.0あるから見間違うなんて事は絶対にない」

神使「4.0なんて数字あるんですか・・・」

神様「あれは間違いなく少女ちゃんだった」

神使「考えられるのは18歳の時の少女さんという事ですね」

神様「もんぺ穿いてた。 もんぺ」

神使「まさか、少女さんがこの時代までいる原因を作ったのは・・・」


神様・神使「・・・・・・」


神様「やべ、どうしよう」

神使「大変な事をしてしまったような気がします」

762: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:38:02 ID:irKyNpU6

神様「お前、過去の自分に意識を移して回避してこい」

神使「できるわけないじゃないですか・・・ それこそ神様はどうなんです?」

神様「私を誰だと思ってんだよ、そんな神っぽいこと出来る分けねーだろ! ふざけんな!」

神使「逆ギレしないで下さい・・・」

神様「どうする、逃げるか?」

神使「最低ですね・・・ きちんと少女さんにお話をしたほうが」

神様「そ、そうね。 私は終始土下座をするからお前から話を───」


 カサカサ


神様「?」

神使「どうされました?」

神様「・・・・・・。 いや、私ちょっとコーラ買ってくる」トテトテ

神使「あ、ちょっと神様逃げないで下さいよ」

763: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:39:07 ID:irKyNpU6


─── 森の奥


神様「よ」

少女母「」ニコッ

神様「え~と・・・ いつのお前?」

少女母「さっき会ったばかりの私」ペロッ

神様「あ~ やっぱまだいたんだ。 っていうかなんでお前もメロン飴持ってるの?」

少女母「事象の収束って知ってる?」

神様「何だよ急に・・・ 確か、いくつかに分かれたメロン飴が最終的には1つになるって事だっけ?」

少女母「そう。 メロン飴じゃなくて時間だけどね」ペロッ

神様「・・・・・・。 それがどうした?」

少女母「あの子が狙われているって事も知ってる?」

神様「この前少女ちゃんから聞いた」

764: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:40:40 ID:irKyNpU6

少女母「あの子はこの先、生きている限り狙われる」

神様「あ? でもその度に回避したって・・・ まさか!?」

少女母「そう、事象の収縮。 あの子が狙われることは確定しているわ」ペロッ

神様「・・・・・・」

少女母「その先にあるのは・・・」

神様「まさか、お前それを回避するためにタイムトラベルを・・・」

少女母「勝手よね。 あれだけ時間移動はダメだって言っておきながら」ペロッ

神様「・・・・・・。 ねぇ、そのメロン飴───」

少女母「自分でも分かってる。 でも、母親としてあの子にしてやれることなんかこの位しかないから」

神様「そ、そうか」

少女母「虫のいい話よね」

神様「少女ちゃんが捕まって、力が悪用されたらもっと悲劇が起こるんだろ?」

少女母「・・・・・・」

765: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:43:02 ID:irKyNpU6

神様「回避できそうなのか?」

少女母「やっとたどり着けそう」

神様「分かった。 現在の少女ちゃんはどんな手を使ってでも私達が守る」

少女母「ありがとう」

神様「その代わり、回避出来たら知らせろよ?」

少女母「うん」フカブカ

神様「そんな畏まるな。 少女ちゃんが長いこと狙われ続けているのは私にも責任があるし・・・」

少女母「?」

神様「さっき、18歳の少女ちゃんを見ちゃったから」

少女母「違うわ。 神ちゃんのせいじゃないの」

神様「でも、間違いなくこの曇りなき眼に焼き付いてるけど・・・」

少女母「神が観測しても改変は起こらない。 神ちゃんならなおさら」

神様「あっ、そう言われれば・・・。 犬ころもハッキリ見たわけじゃないって言ってたし」

766: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/11(金) 20:44:16 ID:irKyNpU6

少女母「あの子を観測したのは私、さっき私も影から一緒に見てたわ」

神様「どういう事だ? 何でお前がそんな事をする必要が?」

少女母「事象の収束を遅らせるため」

神様「なるほど・・・ すいません、私の頭は完全にオーバーヒートしました。 だからそのメロン飴下さい」

少女母「ふふっ」クスッ

神様「・・・・・・。 お前さ、何処まで未来を知ってるの?」

少女母「元“時の女神”だもん。 何でも知ってるわよ?」ニコッ

神様「ったく。 怖いね~ 時間を超えられるヤツは。 ま、後は任せておけ」

少女母「ありがとう神ちゃん」

神様「その代わり取引だ」

少女母「?」

神様「お願いですからそのメロン飴下さい」ドゲザ

768: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:13:01 ID:kHiKDmPI


─── 社務所


ガラガラ


神様「ただいま~」ペロペロ

神使「神様、どこに行かれてたのですか?」

神様「ん? ちょっとそこまで」ペロペロ

神使「・・・まさかメロン飴を買いに?」

神様「おや~ 欲しくなっちゃった? ペロペロしたくなっちゃた? でも、あ~げない」ペロペロ

少女「・・・・・・」ジー

神様「あげない!」ペロペロ

769: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:13:47 ID:kHiKDmPI

少女「・・・・・・」ジー

神様「・・・・・・。 ちょ、ちょっとだけならペロってもいいよ?」

少女「いりません」

神使「そんなドロドロになった飴なんかあげようとしないで下さい・・・」

少女「それより、お話しがあります」

神様「私がかわゆすぎる件について?」

少女「この神社の今後についてです」

神様「あ~ 真面目なパティーンね」

770: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:14:31 ID:kHiKDmPI

神使「実は私達も少女さんにお話しがありまし───」

神様「シャーラップ!」ゲシッ

神使「痛っ!」

神様「その件は片が付いたんだよ!」

神使「どういう事です?」

神様「私は悪くなかったという事」

神使「・・・・・・」ジトー

神様「そんなにメロン飴が欲しいならくれてやるよ! お口を開きやがれ!」ズボッ

神使「ふがっ!」

771: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:15:18 ID:kHiKDmPI

神様「さぁ、少女よ。 このかわゆい神ちゃんに悩みを打ち明けなさい」

少女「私、この神社を継ごうと思います。 いえ、継がせて頂けないでしょうか」

神様「・・・・・・」

少女「身勝手なお願いだっていう事は承知してます。 でも───」

神様「いいよ」

少女「え?」

神使「あの神様、せめて少女さんのお話を最後まで聞いてから結論を出すべきでは・・・」ペロペロ

神様「寂れて人も来ないような無人神社を継ぎたい、って人がいるのに断る理由なんかないじゃん」

神使「それはそうなんですが・・・」

神様「それじゃぁ神使君、この神社を廃社にして売っぱらったらいくらになる?」

神使「社務所や本殿の解体費用でマイナスになると思います」ペロッ

神様「だろ? っていうか、返せよ私のメロン飴!」ガシッ

神使「あっ」

772: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:15:57 ID:kHiKDmPI

少女「私、この場所が私とお母さんを繋ぐ唯一の場所だって分かったんです」

神使「そうでしたか」

少女「だから、私がお母さんが守ってきた神社を・・・ お母さんの意志を継いで───」

神様「ダメ」

少女「・・・・・・。 え?」

神使「あの神様、意味が分からないんですが・・・」

神様「アイツのために継ぐんだったらダメ。 いい? 少女ちゃんの人生は少女ちゃんが決めること」

少女「・・・・・・」

神様「継ぐと言うのは守ることだけじゃない。 進まないと行けないんだよ」

少女「進む・・・」

神様「少女ちゃんはこの神社を継いで進むことが出来る?」

少女「できます」

773: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:16:35 ID:kHiKDmPI

神様「んじゃ今日からこの神社は少女ちゃんに任せる」

神使「少女さん、頑張って下さいね」

少女「ありがとうございます」ペコリ

神様「その代わりと言っちゃ何だけど~ お願いがあるんだよね~」クネクネ

少女「私に出来ることでしたら」

神様「本当に?」

少女「えぇ、まぁ」

神様「んじゃ、神になって?」

少女「神!? 私がですか?」


神様「そう。 お母さんと同じ“時の女神”に」

774: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:17:44 ID:kHiKDmPI

─────
───



─── X年後


神様「いや~ 懐かしいね~」トテトテ

神使「毎年来ているじゃないですか」テクテク

神様「参拝者もだいぶ増えたな」


神使「あっ、神様あそこ見て下さい。 少女さんです」

神様「ん? 隣に巫女服着たちっこいのがいるけど?」

神使「最近赴任した神使さんです。 彼女は去年神使学校を主席で卒業した優秀な子だと聞いています」

神様「へ~ 二人とも巫女服姿がきゃわゆい!」

神使「ご挨拶にいきましょうか」

神様「そうね」

775: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:19:10 ID:kHiKDmPI


新米神使「女神さま! お掃除終わりましたです!」ビシッ

少女「その女神さまっていうの恥ずかしいので止めて欲しいんですけど・・・」

新米神使「何を言っているんですか! 女神さまは私の憧れの神さまなんですから!」キラキラ

少女「憧れだなんて・・・」

新米神使「この神社に赴任し早1年、いつか私も女神さまのように立派な───」

少女「わ、分かりましたから。 それより本殿のお掃除をお願い出来ますか?」

新米神使「勿論です! でも・・・」

少女「?」

新米神使「どうして、この神社にはご神体がないんですか?」

少女「それは・・・」

新米神使「宮司も神職すらいないのも変だと思うんです。 衛士はいるのに」

少女「そう・・・ ですね・・・」

776: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:20:27 ID:kHiKDmPI

新米神使「あの衛士さん達って神宮の神付衛士ですよね?」

少女「よく知ってますね」

新米神使「学校で習いましたから。 神を守れる衛士は全国に5人しかいない精鋭さんだって」

少女「そうなんですか?」

新米神使「何か理由でも?」

少女「えーと・・・」

新米神使「新米とは言え私もこの神社の神使! ぜひ教えて下さい!」ズイッ

少女「・・・・・・。 そ、それよりお掃除済ませたらお昼は新米神使ちゃんの好きな鴨鍋にしましょう」

新米神使「か・も・な・べ!?」パァ

少女「頑張って下さいね」ニコッ

新米神使「はい! 喜んで!!」タッタッタッ


少女「・・・・・・」ハァ

777: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:21:24 ID:kHiKDmPI


 お~い! 少女ちゃ~ん!


少女「?」クルッ


神様「久しぶり~」

神使「ご無沙汰しております」ペコリ


少女「神様に神使様! もうそんな季節なんですね」

神様「ま~ね~」

少女「毎年気にかけてお越し頂きありがとうございます」フカブカ

神使「そんなに畏まらないで下さい」

神様「立派に神さまやっているみたいだね」

神使「可愛らしい神使さんも居るようで」

少女「神宮の方には何度も神使の配属は断ったんですが」

778: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:22:21 ID:kHiKDmPI

神様「まだ狙われてる?」

少女「はい。 でも神宮から派遣されている衛士さんたちがいるので」

神使「頼もしいですね」

神様「神社の方もそこそこ参拝者も来ているみたいだし」

神使「少女さんの神階も上がったそうで、おめでとうございます」

少女「私なんかまだまだです。 あの子と同じく右も左も分からない新米ですから」

神使「そんな事は無いですよ。 立派な主神様です」

神様「巫女服もよく似合ってる。 神だからってゴテゴテした服を着ないところが良し!」

少女「・・・・・・」

神様「少女ちゃん?」

少女「私、きちんとお母さんの後を継げているのかな?」

神使「立派に継げていると思いますよ?」

神様「そうそう、私が太鼓判を押してあげる」

779: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:23:03 ID:kHiKDmPI

少女「私、この神社のことを何も知らないんです。 お母さんから詳しく聞いた事なんて無かったので・・・」

神様「アイツも少し位は教えるなり残すなりしておけば良かったのにな」

神使「きっと力の存在を知られないように念を入れていたのではないですかね」

神様「でも、神体がないなんてちょっとおかしいよな」


 ?「だって、神よりも先に神体がある方がおかしくない?」


少女・神様・神使「・・・・・・」クルッ


?「この神社も主神様が付いたことだし、ご神体を用意しないとね」

少女「お母・・・ さん・・・ どうして・・・」

少女母「久しぶり」ニコッ

780: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:24:15 ID:kHiKDmPI

神様「よっ」

少女母「」フカブカ


神様「終わったのか?」

少女母「えぇ、全て」


神様「ご苦労様」

少女母「」ニコッ



神様「皆の者! 宴の準備だ!!」





おわり

781: ◆8YCWQhLlF2 2019/01/19(土) 21:26:40 ID:kHiKDmPI

ペロペロー!

オリジナルSS 特集ページへ ▶

このページのトップヘ