【前半】相良宗介「駆け抜けるフルメタル・ストライク・ウィッチーズ」【ストパンxフルメタ SS】

2019年02月13日
【前半】相良宗介「駆け抜けるフルメタル・ストライク・ウィッチーズ」【ストパンxフルメタ SS】

相良宗介「駆け抜けるフルメタル・ストライク・ウィッチーズ」

元ネタ:ストライクウィッチーズシリーズ,フルメタル・パニック!
1: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 21:18:16.77 ID:SPrZEycQo
北大西洋 某所 デ・ダナン 発令所

マデューカス「そろそろです、艦長」

テッサ「ええ。良い頃合いですね」

マオ『こちらウルズ2。目標に到達』

クルツ『こちらウルズ6。所定の位置についたぜ』

宗介『こちらウルズ7。いつでも行ける。合図をくれ、ウルズ2』

マオ『了解。っていうわけだけど?』

テッサ「よろしい。作戦を開始します」

マオ『作戦開始だ。派手にいくよ!』

クルツ『ヤッホー!! まずはズドンといくぜぇ!!』

宗介『ウルズ7、突入する』

カリーニン「情報通りなら、あの施設には……」

テッサ「ええ。捕えられてるウィスパードがいるはず。必ず、助け出さなくてはいけません」

カリーニン「勿論です。それに彼らなら失敗はないでしょう」

テッサ「そこは全くもって心配していませんよ、カリーニンさん」


3: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 21:32:05.06 ID:SPrZEycQo
マデューカス「んんっ」

テッサ「失礼。――そこは何も心配していません、少佐。貴方が目をかけた人たちですもの」

カリーニン「恐縮です」

マデューカス「とはいえ、今回も同じかもしれませんな」

テッサ「無論、流された情報を鵜呑みにするわけにはいきません。かといって、看過するわけにもいきません」

カリーニン「時として虎穴に入らなければ得られないものもあります」

テッサ「その通り。事実、彼らを保護するためには多少の危険を冒さなければいけません」

マデューカス「それは承知しております」

テッサ「マデューカスさんの懸念も理解しているつもりです。嘘の情報に振り回されていては、本物にはたどり着けないかもしれない」

マデューカス「はい」

テッサ「でも、そこは情報を命がけで集めてくれる私たちの仲間を信じましょう。一つ一つ潰していけば、いつか必ず辿りつけるはずです」

カリーニン「大佐殿の言う通りです」

テッサ「甘い考えですか?」

マデューカス「いえ。私はそうした考えに惹かれ、ここにいるのです」

テッサ「ありがとうございます」

4: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 21:48:40.48 ID:SPrZEycQo
マオ『こちらウルズ2。対象の制圧は完了しました』

テッサ「最終目標は?」

マオ『確認できません』

クルツ『こちらウルズ6。逃げだす奴らもいない。またガセだったんじゃねえか?』

マオ『これで5回目めか。テッサぁ、いくらなんでもこうも続くとミスリルの能力が疑われるんじゃない?』

テッサ「うーん……そうよね……」

マデューカス「聞こえているぞ」

マオ『し、失礼しました!』

テッサ「相良軍曹は?」

マオ『あいつのことだから、そろそろ……』

宗介『こちらウルズ7。目標地点に到達、制圧も完了しました』

マオ『ほら、きた』

テッサ「最終目標はいましたか?」

宗介『いえ。確認できません』

テッサ「はぁ……。そうですか。わかりました。作戦を終了します。速やかに撤収を開始してください」

6: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 22:00:25.95 ID:SPrZEycQo
マデューカス「そもそも、この日本人が存在しないという可能性はありませんか」

テッサ「ここまでくるとそれも視野に入れざるを得なくなりますね」

カリーニン「しかし、全世界に散らばる者たちがこうして同一の人物をこちらに渡してくるということは、完全な虚構の人物とは言えないでしょう」

テッサ「ええ。皆が同じ人間のことを調べているのだから、存在はするはずです」

マデューカス「やはり、どこぞの組織が我々をかく乱しているわけですか」

テッサ「そうした組織は一つだけにしてほしいのだけれど」

カリーニン「黒幕は一つだけでしょう」

宗介『大佐殿。施設の人間はどうしますか?』

テッサ「一応、話を聞きます。そのまま拘束しておいてください」

宗介『了解』

マオ『ソースケ、あんたはそろそろ帰らないとまずいんじゃないの?』

宗介『む……』

テッサ「なにかあるのですか?」

宗介『はっ。その……千鳥かなめとの約束が……ありまして……」

テッサ「そうですか。では、相良軍曹はそのまま日本へ向かってもらってもいいですよ。アーバレストならここからでも行けるでしょうし」

7: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 22:11:32.48 ID:SPrZEycQo
宗介『いえ。この機体の稼働時間を鑑みれば、ここから移動を始めればおそらくメキシコあたりで活動不能になります』

テッサ「……」

カリーニン「大佐殿、何卒、ご慈愛を」

テッサ「わかりました。急いで撤収してください。施設にいた人たちをダナンへ」

クルツ『地図にない島で研究してたような連中だぜ? いいのか?』

テッサ「構いません。彼らに何かを知る機会なんて一秒たりとも与えませんから」

マオ『おー、こわ。それじゃあ、護送を開始しますか。途中で自決しないようにしっかり見張ってな、野郎ども』

クルツ『ウルズ6、了解だ』

宗介『ウルズ7、了解』

テッサ「少佐」

カリーニン「はっ。行ってまいります」

テッサ「申し訳ありません。嫌な役を押し付けて」

カリーニン「いえ。尋問は慣れています。的確な配役かと」

テッサ「お願いします」

マデューカス「少しでもこの日本人のことが分かればいいのですが……」

10: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 22:30:50.25 ID:SPrZEycQo
格納庫

マオ「結局、何もでなかったわね」

クルツ「聞いたかい、姐さん。あいつらがやってた研究の内容」

マオ「全く新しい技術で空を飛ぶ研究でしょ」

クルツ「ああ。生身でどれだけ音速に近づけて、しかもそれで自由に空を飛びたかったんだと。ドラえもんかっつーの」

マオ「バカな研究、とはいえないわね。こっちだってデ・ダナンにのってるんだし」

クルツ「それはそうだけどよ。いくらなんでも生身で音速なんて無理だろ。一瞬で赤身の肉片になっちまうぜ」

マオ「少佐が聞いた話では理論自体は完成していたみたいね」

クルツ「マジか?」

マオ「ただ、それに必要なものがこれ」ペラッ

クルツ「これは?」

マオ「研究員の一人が出してきた資料の一部よ」

クルツ「なになに……。魔道エンジンを始動させるには、魔法力が必要になる……?」

マオ「そう。魔法の乗り物を動かすには魔法が必要なわけよ」

宗介「ナンセンスな研究だな」

11: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 22:54:33.41 ID:SPrZEycQo
クルツ「お前、まだ居たのか。早く行かないと、またかなめちゃんに怒られるぜ?」

宗介「それは分かっているが、すぐに日本には戻れない。大佐殿もこれが最大船速だと言っている」

マオ「そうなの? テッサも健気ねぇ」

宗介「ああ。大佐殿にはいつも迷惑をかけてしまっている」

クルツ「こいつは……」

宗介「それにしても、この乗り物が実現する可能性はあったのか」

マオ「あったからこうして大金叩いてやってたんでしょ」

宗介「よくわからん連中だ」

クルツ「まぁ、世の中にはアーバレストみたいな魔法じみたASもあるぐらいだからなぁ。魔法も現実にあるかもしれねえ」

宗介「あれも確かにまだ分からないことが多い。だが、あれは兵器として十分に運用できている。しかし、魔法など非科学的すぎる」

マオ「はいはい。あんたは吹っ切れたのよね、色々と」

宗介「ああ。問題ない」

クルツ「愛の力ってかぁ? 言ってくれるぜ」

宗介「いや。アーバレストの力だ」

マオ「バカ」

12: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 23:05:06.40 ID:SPrZEycQo
テッサの部屋

テッサ「どう思います?」

カリーニン「この魔法力という単語がなければ間違いなくウィスパードの知識です。疑いようもなく」

テッサ「ですね。この理論自体に矛盾点や疑問点はありません。魔法がなければ」

カリーニン「では……」

テッサ「この一件からは手を引きましょう。これ以上、この日本人を探しても疲弊するだけだわ」

カリーニン「了解です。各員にはそのように伝えておきましょう」

テッサ「お願いしますね」

カリーニン「はい」

テッサ「……」

カリーニン「大佐殿。何か気になることがあるのなら、言ってください」

テッサ「いえ。ここまでの小型航空機があと一歩で完成するというのに、どうして魔法などという非現実な力に頼っているのかがどうしてもわからない」

カリーニン「同感です。魔法力というものに全てを依存した研究であるのも首を傾げるところです」

テッサ「まるで魔法が実在するような書き方……」

テッサ(私だけでは分からないのかもしれない。彼女にも意見を聞いたほうがいいかしら……?)

13: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 23:28:05.99 ID:SPrZEycQo
欧州 501基地

バルクホルン「予算の削減だと? 誰がそんなことを言い出したんだ」

ミーナ「ブリタニア軍空軍のマロニー大将が根回ししているみたいね。まぁ、501だけに活躍されて困るのはマロニー大将だけではないでしょうけど」

バルクホルン「馬鹿げている。ネウロイの脅威に対して己の面子が大事だというのか」

ミーナ「ふふ……」

バルクホルン「何がおかしいんだ、ミーナ」

ミーナ「ごめんなさい。坂本少佐も同じことを言っていたから、ついね」

バルクホルン「誰でも同様の発言をするに決まっている。人間同士で足を引っ張り合ってネウロイに立ち向かえるものか」

ミーナ「そうね」

エーリカ「削減されるとユニットとかおいそれと壊せなくなるなぁ」

バルクホルン「ハルトマン。お前はこの事態を許容する気か?」

エーリカ「決まったものはしょーがないじゃん。なるようになるって」

バルクホルン「おまえなぁ……」

エーリカ「それにお金がないからって理由で戦えなくなるほど、弱いウィッチなんてここにはいないだろ?」

バルクホルン「……無論だ」

14: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 23:40:49.61 ID:SPrZEycQo
ミーナ「ハルトマンを見習わないとね。確かに軍上層部のやり方には憤りを感じるけれど、決まったことに愚痴を言っても仕方ないわ」

バルクホルン「そうだな……。一介の軍人に口を挟む余地はないか」

エーリカ「はい。それじゃ、この話はおしまい。そろそろ食堂にいこーっと」

ミーナ「昼食の時間はとっくに終わっているでしょう?」

エーリカ「宮藤がおやつを用意してくれてるんだってー」

バルクホルン「まて、ハルトマン!! お前はそれが目的でこの話し合いを切り上げようとしたのか!!」

エーリカ「おやつだーおかしだー」テテテッ

バルクホルン「またんかぁ!!! ハルトマン!!!」

ミーナ「まぁまぁ」

バルクホルン「しかし!!」

ミーナ「本心も混じっていると思うわよ」

バルクホルン「それは……分かっているが……」

ミーナ「彼女は誰よりも私たちを信頼してくれている。だからこその言い方だと思うわ」

バルクホルン「……ミーナはどうする?」

ミーナ「勿論、食堂に行きましょう。宮藤さんが用意したなら扶桑のものでしょうし、食べないのは損よ」

17: SS速報VIPがお送りします 2015/07/25(土) 23:55:13.27 ID:SPrZEycQo
廊下

バルクホルン「とはいったものの、やはりこのタイミングでの予算削減は501にとっても痛手ではないのか」

ミーナ「ええ」

バルクホルン「先日からネウロイの襲撃が頻発し、出撃回数も増えている。ミーナが隊長として椅子に座り、指示を出すだけでは間に合わないぐらいにな」

ミーナ「私は気にしないわ。撃墜数にもそれほど執着があるわけでもないもの」

バルクホルン「そういうことじゃない」

ミーナ「分かっているわ。501が戦えば戦うほど、予算は削減され、部隊としての機能が低下していく。由々しきことね」

バルクホルン「それが分かっているなら、抗議はすべきだ。ハルトマンのように仲間を信じることも大事だが、それだけでは守れないものもある」

ミーナ「そうなのよね」

ドォン……ドォン……

バルクホルン「この音は……」

ミーナ「リーネさんね。最近、よく射撃訓練をしているみたいよ」

バルクホルン「熱心なのはいいことだ。ハルトマンにもリーネぐらいの気概があればな……」

ミーナ「でも、おかしいわね。宮藤さんがおやつを用意したのなら、リーネさんも食堂へ向かっていてもおかしくないけれど……」

バルクホルン「そのことを知らないのかもしれない。私が伝えてこよう」

18: SS速報VIPがお送りします 2015/07/26(日) 21:20:55.75 ID:7rR2LjeYo
訓練場

リーネ「ふっ……!」バァン!!

ルッキーニ「はっずれぇ」

リーネ「はぁ……」

ルッキーニ「そろそろ芳佳のおやつが出来上がった頃じゃない?」

リーネ「私はもう少しだけ訓練していくから、ルッキーニちゃんは先に行ってて」

ルッキーニ「いいの?」

リーネ「うん。付き合ってくれてありがとう」

ルッキーニ「にゃは。わかったー。じゃ、またあとでねー」

リーネ「うんっ」

リーネ「結局、命中率は8割ぐらい……。もっとがんばらなきゃ……私は……」

バルクホルン「リーネ」

リーネ「バルクホルンさん。お疲れ様です」

バルクホルン「宮藤が菓子を振る舞ってくれるらしいが、お前は行かないのか」

リーネ「わ、私はあとで行きます。先に召し上がっていてください」

19: SS速報VIPがお送りします 2015/07/26(日) 21:33:28.47 ID:7rR2LjeYo
バルクホルン「長時間訓練していたようだな。薬莢の数がそれを示している」

リーネ「ごめんなさい。すぐに片付けます」

バルクホルン「いや、訓練が終わってからで構わない。それにしても随分と真剣にしていたな」

リーネ「そ、そんなことないですよ」

バルクホルン「あの訓練嫌いのルッキーニが傍にいたほどだ。奴は余程のことがない限り、あんなことはしない」

リーネ「私が無理を言っただけです」

バルクホルン「そうか。……自主的な訓練なのだからどうこう言うつもりはないが、無理はするな。ネウロイの出現件数が上がっているのは理解しているだろう」

リーネ「実戦で支障を出すことはないように気を付けています」

バルクホルン「なら、いいんだ。訓練、頑張ってくれ」

リーネ「ありがとうございます、バルクホルンさん」

バルクホルン「ではな」

リーネ「はい!」

リーネ「……」

リーネ(ネウロイの出現数が上がっているからこそ、もっと私はがんばらないと……)

リーネ(このままだと……)

20: SS速報VIPがお送りします 2015/07/26(日) 21:55:43.37 ID:7rR2LjeYo
食堂

芳佳「あれ? リーネちゃんは?」

ルッキーニ「まだとっくんちゅー。はむっ。おいしー」

芳佳「えぇ? まだしてるんだ……」

美緒「かれこれ2時間か。射撃訓練に対して時間を割きすぎだな」

シャーリー「宮藤。リーネに差し入れでもしてきたらどうだ?」

エイラ「疲れたときは甘いものっていうしな」

芳佳「そうですね。ちょっと行ってきます」

美緒「ふむ……」

シャーリー「戦闘が続いてるし、リーネは休ませるべきかもしれませんね、少佐」

美緒「リーネはそこまで愚かではない。自身の体力、魔法力の限界は知っているはずだ」 

シャーリー「周りが見えなくなってたりしたら、危ないんじゃないですか」

エイラ「リーネって結構、溜め込むタイプっぽいもんなぁ」

シャーリー「ルッキーニぐらい能天気なら、こっちも楽なんだけどね」

ルッキーニ「ふいー。おかわりもらおーっと」

22: SS速報VIPがお送りします 2015/07/26(日) 22:03:22.15 ID:7rR2LjeYo
訓練場

リーネ「はぁ……はぁ……。もう一度だけ……」

芳佳「リーネちゃーん!!」

リーネ「芳佳ちゃん……」

芳佳「まだ訓練してたの?」

リーネ「うん。満足できる結果が出なくて」

芳佳「そろそろ休憩にしない?」

リーネ「そうだね。休憩にする」

芳佳「はい。これ。扶桑のお菓子で、おはぎっていうの。食べてみて」

リーネ「ありがとう。いただきます」

芳佳「どう? リーネちゃんの口に合えばいいんだけど」

リーネ「おいしい。もう一つ、もらってもいい?」

芳佳「もちろん! どんどん食べて!」

リーネ「わーいっ」

芳佳「ふふっ。リーネちゃんが笑顔だと私もうれしいな」

23: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 22:18:09.77 ID:Gl6weT7Ao
リーネ「ごちそうさま。美味しかったよ、芳佳ちゃん」

芳佳「お粗末さまでした。リーネちゃん、これから時間があるなら……」

リーネ「ごめんね。もう少しだけ訓練続けたいの」

芳佳「でも……」

リーネ「私なら大丈夫だよ。芳佳ちゃんの作ってくれたお菓子で元気もでたから」

芳佳「リーネちゃん……」

リーネ「お願い」

芳佳「……無理だけはしないでね」

リーネ「うんっ。ありがとう、芳佳ちゃん」

芳佳「あとで一緒にお風呂はいろうね」

リーネ「はーい」

リーネ「……」

リーネ「やらなきゃ」

リーネ「もっと、がんばらないと……」

リーネ「ふっ!」バァン!!

24: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 22:26:00.58 ID:Gl6weT7Ao
芳佳「うーん……リーネちゃん……大丈夫かな……」

ペリーヌ「宮藤さん。ミーナ中佐とバルクホルン大尉が探していましたわよ」

芳佳「え? そうなの?」

ペリーヌ「貴方の作ったあの真っ黒なお菓子が気になっているようでしたわ」

芳佳「そうなんですか。ペリーヌさんは食べましたか?」

ペリーヌ「どうしてわたくしがあのような気品の欠片もないものを口にしなければなりませんの」

芳佳「ひどーい!! あれは扶桑のお菓子なんですよ!!」

ペリーヌ「ともかく、わたくしは遠慮しますわ」

芳佳「むぅ……。坂本さんだって美味しいって言ってくれたのに……」

ペリーヌ「いい加減、少佐のことを馴れ馴れしく呼ぶのはやめなさい」

芳佳「坂本さんがそう呼べっていったんです」

ペリーヌ「ですから――」

芳佳「それより、ペリーヌさんもリーネちゃんのこと気にかけてくれませんか?」

ペリーヌ「はぁ? どうしてわたくしがそんなことをしなければなりませんの」

芳佳「最近のリーネちゃん、様子がおかしいんですよ?」

25: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 22:35:44.43 ID:Gl6weT7Ao
ペリーヌ「みたいですわね」

芳佳「みたいって……」

ペリーヌ「以前の戦闘でネウロイを撃墜できたことで舞い上がっているだけでしょう。放っておけばそのうち、ぬか喜びだったと気が付くはずですわ」

芳佳「なっ……」

ペリーヌ「新人のウィッチにはよくあることですわ。一度の成功で己の能力を過信してしまうのはね」

芳佳「どうしてそんなこというの!?」

ペリーヌ「事実です。貴方も注意なさい」

芳佳「酷い!! 私のことはともかく頑張っているリーネちゃんにそんな言い方……!!」

ペリーヌ「努力のやりかたを誤れば、それはただの徒労ですわ」

芳佳「ペリーヌさん!!」

美緒「何を揉めている」

ペリーヌ「坂本少佐……!」

芳佳「坂本さん……」

美緒「どうかしたのか?」

ペリーヌ「い、いえ、なんでもありませんわ。おほほほ。わたくしは任務があるので失礼します」

27: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 22:43:59.53 ID:Gl6weT7Ao
美緒「宮藤。本当になんでもないのか」

芳佳「……」

美緒「リーネのことか」

芳佳「はい……」

美緒「ペリーヌが厳しいことをいうのはそれだけ心配しているということだ。気にするな」

芳佳「だからって……あんなこと言わなくても……」

美緒「だが、リーネが根を詰めているのは少々気がかりだな」

芳佳「やっぱり、止めたほうがいいですか?」

美緒「うむ。あまり酷いようなら我々で抑制してやらねばならないか」

芳佳「はい!」

美緒「今は様子を見ておけ。無理に止めて意固地になられたほうが厄介だからな」

芳佳「分かりました」

美緒「では、食堂のほうへ戻ろう。ハルトマンが待ちくたびれているぞ」

芳佳「ハルトマンさんもですか!? 急いで戻りましょう!!」テテテッ

美緒(リーネ……私と同じようになるなよ……)

28: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 22:50:56.31 ID:Gl6weT7Ao
サーニャの部屋

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「サーニャ?」ガチャ

サーニャ「うぅん……」

エイラ「まだ寝てたか。じゃ、これ、おいとくかんな」

サーニャ「ん……」ピクッ

エイラ「起きたら、食べてくれ。宮藤のお手製だから、きっとサーニャも満足するはずだ」

サーニャ「……」ピコンッ

エイラ「ん? サーニャ……?」

サーニャ「……!」バッ

エイラ「どうした?」

サーニャ「何か、いる。この方角に……」

エイラ「ネウロイか?」

サーニャ「そうかも」

エイラ「わかった。中佐に伝えてくる」

29: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 23:00:15.33 ID:Gl6weT7Ao
食堂

芳佳「あんな言い方しなくてもいいのに……ペリーヌさん……」

シャーリー「ペリーヌは、なぁ?」

エーリカ「気にしない、気にしない。はむっ」モグモグ

芳佳「でも……」

エイラ「中佐! まだいるか!」

ミーナ「どうかしたの?」

エイラ「サーニャがネウロイらしきものを感知したんだ」

ミーナ「なんですって」

ルッキーニ「でも、まだ警報なってないよ?」

バルクホルン「こちらの網を掻い潜ってきたというのか」

エーリカ「ま、どちらにせよサーニャんが感知したんなら、何かが入ってきたんだろ。さぁて、いくかー」

美緒「そうだな。宮藤、リーネをハンガーまで連れてこい」

芳佳「了解!」

美緒「出撃だ!! 総員、急げ!!!」

30: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 23:19:51.88 ID:Gl6weT7Ao
陣代高校

かなめ「はぁ……」

恭子「今日も休みかな?」

かなめ「え? 何が?」

恭子「なにがって、相良くんだよ。今のため息も、そういうことでしょ?」

かなめ「な、なんであいつが一週間ほど休みだからってため息をもらさないといけないのよ!! そんなことあるわけないじゃない!!」

恭子「そーなの? でも、カナちゃん、相良くんが欠席し始めたときから、元気ないよね」

かなめ「そんなわけないっていってるじゃない!! うは、うはははは!!」

恭子「はいはい。もう言わないよ」

かなめ「あはははは……はぁ……」

かなめ(別にソースケの心配をしているわけじゃないけど、あいつのことを四六時中考えちゃうのよね……)

かなめ「って!! そういうこともなぁぁぁい!!!」

恭子「お! カナちゃん、ちょっと元気になったぁ?」

かなめ「あたしはずっと元気よ!!! あいつがいなくてもね!!」

宗介「そうか。それはよかった」

31: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 23:30:21.34 ID:Gl6weT7Ao
かなめ「ソースケ……!」

恭子「あ、相良くん。ひさしぶりー」

宗介「常盤も元気そうだな」

恭子「うんっ」

かなめ「あんた、今まで何してたのよ」

宗介「ここでは言えん。その理由は、千鳥なら分かるはずだ」

かなめ「そりゃ……まぁ……」

恭子「え? なになに? 二人だけの秘密なの?」

宗介「ああ。常盤にだけでなく、外部には洩らせない情報を含んでいる。たとえユダの揺りかごや鉛のスプリンクラーを使われようが、俺が口を割ることはない」

恭子「とにかく絶対に話せないことなんだ」

宗介「そういうことだ。すまないが諦めてくれ」

恭子「わかった!」

かなめ「まぁ、あんたが無事なら、それでいいけど」

宗介「ところで千鳥。今週末に何か予定はあるか?」

かなめ「え? 別に、な、ないけど?」

32: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 23:37:17.62 ID:Gl6weT7Ao
宗介「そうか。ならば、付き合ってほしい」

かなめ「な、何によ」

宗介「そうだな。ここでは言えない」

恭子「おぉ! こ、ここでは言えないことなんだ!!」

かなめ「な!? ど、どういうことよ!! 何をするつもりなのよ!!」

宗介「とにかく言えん。千鳥、付き合えるのかどうか、答えてくれ」

かなめ「内容によるわよ。危ないことなら、絶対に付き合わない」

宗介「いや。危険は一切ない。なぜなら、俺の部屋に来るだけで済むからだ」

かなめ「あ、あんたの……」

恭子「なるほど。それは言えないよね」

かなめ「ちょっと! なんか変な勘違いしてない!?」

宗介「どうなんだ、千鳥」

かなめ「ど、どうなんだって……あの……その……急にいわれても……困るんだけど……」

宗介「そうだな。では、今日一日考えてくれ。明日、最終確認をする」

かなめ「う、うん……明日までには心の準備を……する……」

33: SS速報VIPがお送りします 2015/07/28(火) 23:48:10.10 ID:Gl6weT7Ao
夜 千鳥宅

かなめ「うーん……うーん……」

かなめ「週末にソースケの部屋……これは……あれなのかな……」

かなめ「いやいや。今までのことを考えれば、そんなことは絶対にない。きっと部屋に言ってみたら、またテッサとかがいるはずよ」

かなめ「そうよ。そうに決まってる。あいつが私を呼びつけるってことは絶対にミスリルが絡んでるんだから。うん、絶対にそう」

かなめ「あー、危ない、危ない。おかしな勘違いをして、まーた赤っ恥をかくところだった!!」

かなめ「まったく!! あいつもイチイチ勿体ぶるからいけないのよ!! 確かにおいそれと話せることじゃないんだろうけど!! それでも言い方ってものがあるじゃない!!」

かなめ「はぁーあ、緊張して損した。早く、ねよっと」

かなめ「……」

かなめ「でも、万が一って……ことも……」

かなめ「ううん!! ないない!! ぜぇーったいにない!!」

かなめ「あの朴念仁に限ってそんなことあるわけ……」

かなめ「でも、兵士って戦争から帰ってきたら……色々溜まってるとかいうし……」

かなめ「だぁー!!! なんであたしがこんなことを考えなきゃいけないの!!!」

かなめ「相手はソースケよ!! ソースケ!!! あの戦争バカのソースケ!!! ないない!! 地球が逆回転したってありえない!!」

34: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 00:00:54.69 ID:bGSeaUKoo
週末 セーフハウス

宗介「よく来てくれた。礼を言う」

かなめ「別に……暇だったし……」

宗介「中に入ってくれ」

かなめ「……テッサは? いるんでしょ?」

宗介「いないぞ」

かなめ「なら、クルツくんとか」

宗介「いや、俺だけだ」

かなめ「なら……」

宗介「マオもカリーニン少佐もいない」

かなめ「……二人きりなの?」

宗介「そうだ」

かなめ「週末に二人きり?」

宗介「そういうことになる」

かなめ「マ、マジ……?」

35: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 10:53:46.04 ID:bGSeaUKoo
宗介「まずはこれを渡しておきたい」

かなめ「これは? 開けてもいいの?」

宗介「それは千鳥のために用意したものだ。そのような確認は必要ない」

かなめ「あたしのため……。って、前にも似たようなことがあった気がする」パカッ

宗介「肯定だ。以前と同様の使い方で十分に身を守れるはずだ」

かなめ「まーた、イヤリング型の閃光弾か……」

宗介「デザインは変更させた。星型のものでは似合わないと言っていたからな」

かなめ「これってもしかして、猫?」

宗介「ああ。月にしようかと思ったが、天体の形ではまた君が拒絶する可能性があったので却下しておいた」

かなめ「デザインの問題じゃないんだけど……。でも、ソースケなりに考えてはくれてるんだ」

宗介「実用性だけを重視しては不快にさせるだけだと学んでいる。同じ轍は踏まん」

かなめ「……」

宗介「どうした。やはり、月のほうがよかったか」

かなめ「ううん。ありがとう。これ、大事にするね」

宗介「そうか。それは嬉しい限りだ」

36: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 11:01:47.58 ID:bGSeaUKoo
かなめ「今日はこれを渡したかっただけ?」

宗介「いや。用件がこれだけならば学校で済ませている。実はいうと、本題は別にある」

かなめ「う、うん」

宗介「千鳥」

かなめ「は、はい!」

宗介「これを読んでほしい」ペラッ

かなめ「なによ……ソースケの口から言えばいいじゃない……」

宗介「そうしたいのは山々だが、俺の口からはとても……」

かなめ「ソースケって意外とシャイなところあるよね」

宗介「そうか?」

かなめ「じゃ、じゃあ、読みます」

宗介「時間をかけてくれても構わない。俺は何時間でも待つ」

かなめ「も、もう……すぐに読むわよ……」

宗介「いや。真剣にじっくり読んでほしい」

かなめ「わ、わかった! 読む! 読めばいいんでしょ!!」

37: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 12:22:10.20 ID:bGSeaUKoo
宗介「頼む」

かなめ「え、えーと……」ドキドキ

かなめ「魔導エンジン……瑞星……栄12型に換装……出力向上を図った上……一一型として制式に採用……」

宗介「どうだ?」

かなめ「……」

宗介「千鳥? 何か気になる点でもあったか?」

かなめ「魔導エンジンの問題。高高度性能不足。しかしマーリン系エンジンにより解決。高速および長い航続距離。高高度性能。マーリンエンジンの量産」

宗介「千鳥、どうした」

かなめ「P-51B型・C型が完成。後に機体形状の変更、D型。D型は、魔力配分効率化並びにマッピング変更を容易にする改良。使用目的に合わせたセットアップが可能に――」

宗介「千鳥!!」

かなめ「え……あ……な、なに……?」

宗介「大丈夫か」

かなめ「うん……」

かなめ(やっぱり、これって……ウィスパードの……)

宗介「少し待て。今、飲み物を用意する」

38: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 12:34:58.79 ID:bGSeaUKoo
かなめ「で、これはなんなの?」

宗介「こちらに来る前、大佐殿が俺に渡してきた機密書類だ。といっても、俺も何が書かれているのかは知っている」

かなめ「どういうこと?」

宗介「未だ詳細は判明していないが、とある研究機関が極秘で開発していたとされる『飛行脚』なるものの設計図らしい」

かなめ「ストライカーユニットのことね」

宗介「ストライカーユニット? 飛行脚のことを言っているのか」

かなめ「原型を作りだしたのは合衆国のライト姉妹。小型強力な内燃機関を応用したものが発明されて航空用ユニットとしての第一号が完成したのよ」

宗介「何を言っているんだ?」

かなめ「なにって、あたしは知っているから」

宗介「千鳥……」

かなめ「そんなことより、これが本題だったわけ?」

宗介「肯定だ。大佐殿からこれを千鳥に見せてほしいと言われたのだ。そして意見を聞いてきてほしいとも言われた」

かなめ「あぁ、そうなの……そうなんだ……」

宗介「どうした、千鳥? 顔色が悪いぞ」

かなめ「やかましい!!!」

39: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 13:03:10.68 ID:bGSeaUKoo
日本海 デ・ダナン 艦長室

テッサ「相良さんから連絡がありましたか?」

カリーニン「はい。千鳥かなめは飛行脚のことを知っていたようです」

テッサ「そうですか」

テッサ(私の知識にはないことを知っていた。やっぱり、かなめさんはウィスパードとして一線を画す存在なのかもしれないわね)

カリーニン「また千鳥かなめは飛行脚のことを『ストライカーユニット』と呼称したそうです」

テッサ「その名称、研究書に記述がありましたか」

カリーニン「いえ。全くありません」

テッサ「……」

カリーニン「どうされますか」

テッサ「ウィスパードが関係しているのなら、調査しなくてはなりませんね」

カリーニン「では、手を引くという件は撤回しますか」

テッサ「ええ。まずはこの飛行脚がどこまで出来上がっているのか、確認しておきたいですね。机上の空論だけで終わっているのか、それとも形になってしまっているのか」

カリーニン「このようなものが完成し、実用化されているとなれば現代戦を一変させる個人兵装となるでしょう」

テッサ「ますます争いが激化する。危険な代物だわ」

40: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 13:45:31.50 ID:bGSeaUKoo
マデューカス「失礼いたします、艦長。たった今、情報部より報告がありました」

テッサ「どうやら、急ぎのようですね」

マデューカス「本来なら文書にて提出するところなのですが、事情が事情だけに口頭になってしまいますがご了承ください」

テッサ「構いません。報告してください」

マデューカス「はっ。対象者の現在地に関することが上がってきました」

テッサ「どこですか」

マデューカス「日本の神奈川県横須賀市です」

テッサ「横須賀?」

マデューカス「厳密には横須賀市に属する孤島になりますが」

テッサ「孤島ですか」

マデューカス「ええ。地理的には東京都青ヶ島村よりも更に南へ50キロ先にあります」

テッサ「また地図にない島ですか」

マデューカス「日本政府も存在を公にはしておりません」

テッサ「行きましょう。ただ途中で東京湾に寄ってください。大事なお客さんをお迎えしなければならないので」

マデューカス「アイ、マム」

41: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 15:51:28.29 ID:bGSeaUKoo
セーフハウス

かなめ「あーあ、こういうオチなのよね、やっぱり……。まぁ、今回はあたしが悪いか」

宗介「千鳥」

かなめ「なにぃ?」

宗介「今から東京湾に向かうぞ」

かなめ「なんで? 釣りでもする気?」

宗介「そうではない。大佐殿からの要請だ。俺は君をデ・ダナンまで護送することになった」

かなめ「行かない」

宗介「そういうわけにはいかない。それが俺の任務だ」

かなめ「危険なことはないって言ったじゃない」

宗介「危険はない。君に相談したいことがあるだけだと大佐殿も言っている」

かなめ「テッサがあたしに相談って……」

宗介「恐らくは飛行脚に関することだろう。頼む。大佐殿のために一緒に来てくれ」

かなめ「むぅ……」

宗介「頼む、千鳥」

42: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 16:14:22.74 ID:bGSeaUKoo
東京湾 港

かなめ「ったく、いつまで待たせる気なのよ」

クルツ「ヘイ、そこの彼女。これから大西洋までクルージングなんてどうだい?」

かなめ「生憎、間に合ってます」

クルツ「そりゃないぜ」

かなめ「久しぶりね、クルツくん。マオさんも」

マオ「元気そうでなによりよ」グイッ

クルツ「いででで!! 姐さん!! いてぇって!!」

マオ「護衛対象をナンパするなっていつもいってんでしょうが、このバカ!」

クルツ「ジョークだろ。大体、今更かなめを口説き落せるわけないじゃねえか」

マオ「そういう問題じゃないんだよ」

かなめ「あはは。相変わらずですね」

マオ「恥ずかしい限りよ。で、もう一人のバカ野郎は?」

かなめ「なんか忘れ物があるから待っていてって言われたんだけど」

マオ「そう。何を忘れたんだか。約束の時間までには間に合うだろうけど」

43: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 16:44:27.38 ID:bGSeaUKoo
クルツ「で、かなめ。今回のことはソースケから聞いてるか?」

かなめ「詳しいことは何も。テッサが相談したいことがあるとかないとかってぐらいだけど」

マオ「飛行脚のことは聞いてるね。実際問題、あれが実用化されていれば大変なことになる」

クルツ「しかも使ってる動力機関って第二次世界大戦時のもんだろ? 前時代のもんで人一人が飛べて、音速にも近づけるなんておかしいぜ」

マオ「だからこそ、飛行脚がつまんない組織で使われないようにしないといけないって話よ」

かなめ「でも、この世界では無理なのよね。そもそも魔法力を動力にする魔導エンジンは作れない。そしてそれを起動させるだけの魔女も存在していない」

クルツ「かなめ?」

マオ「だいじょうぶ?」

かなめ「え? ああ、うん。ヘーキ、ヘーキ」

かなめ(相談したいのはあたしのほうよ……はぁ……)

宗介「待たせたな」

クルツ「おらぁ、ソースケ。どこで油を売ってたんだよ。しかも、かなめを一人にして。何かあったらどうするつもりだぁ?」

宗介「問題ない。暴漢が千鳥に危害を加えようとすれば、手痛い教訓を学ぶことになったはずだ」

マオ「なんか自衛のための装備でも持たされたわけぇ?」

かなめ「ま、まぁ……色々と……」

46: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 18:30:44.37 ID:bGSeaUKoo
クルツ「女の子に物騒なものをもたせるんじゃねえよ」

宗介「必要最低限に留めている」

クルツ「あのなぁ」

マオ「はいはい。そこまで。それじゃ、これからダナンに乗艦してもらうから」

かなめ「ここから?」

マオ「そう。ここから」

宗介「了解だ。必要な荷物は既にコンテナに積んである」

クルツ「おいおい。コンテナってこれかぁ? 一泊二日の着替えにしては多すぎねえか?」

宗介「千鳥の荷物は手で持つことができる程度のものだ」

クルツ「ってことは、これ全部お前ので詰まってんのかよ」

宗介「そういうことになる」

クルツ「何があんだよ」

宗介「必ずしも重要というわけではないが、念のために用意した。気にしないでくれ」

かなめ「あのぉ……ここからどうやって潜水艦に……?」

マオ「ふっふーん。わかってるくせにぃ。はい、酸素ボンベ」

47: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 18:38:16.77 ID:bGSeaUKoo
デ・ダナン 格納庫

かなめ「うぅ……なんで東京湾なんかでスキューバダイビングを……」

マオ「よかったでしょ?」

かなめ「よくないっ! 視界も悪いし、すんごい怖いし!!」

マデューカス「お久しぶりです」

かなめ「あ、こんにちはー」

宗介「中佐殿!! 千鳥かなめ、乗艦完了いたしました!!!」

マデューカス「相良軍曹がいつもご迷惑をおかけしています」

かなめ「い、いやぁ、まぁ、もう慣れましたし」

マデューカス「君は相変わらずのようだな。いつまで彼女を困らせるつもりだ」

宗介「も、申し訳ありません!!」

マデューカス「そもそもだな――」

テッサ「そこまでにしてください」

マデューカス「大佐殿、しかしですな」

テッサ「もういいから。マデューカスさんは黙っていてくださいっ」

48: SS速報VIPがお送りします 2015/07/29(水) 18:49:01.67 ID:bGSeaUKoo
マデューカス「申し訳ありません……」

テッサ「かなめさん、元気でしたか?」

かなめ「うん。テッサも元気そうでよかったわ」

テッサ「急に呼びつけてごめんなさい。でも、至急確認したいことがあったんです」

かなめ「別にいいわよ。気にしてないし。それにあのストライカーユニット、じゃなくて飛行脚のことは広めちゃいけないとあたしだって思うもん」

テッサ「ええ。その通りです。どうやら私だけの知識ではどうにもならなくて」

かなめ「それであたしを呼んだわけでしょ。さぁ、パパっと片付けちゃいましょうよ」

テッサ「そうですね。かなめさんは私の部屋に来てください。あとのことはお願いしますね」

マデューカス「お任せください」

宗介「次の任務はなんでしょうか」

マデューカス「この地図をみたまえ」

クルツ「この赤い印のところにいくんスか」

マオ「でも、ここには何も存在していないはずですが」

マデューカス「例によって地図には描かれていない島へ潜入する。そこには飛行脚の生みの親がいるとの情報だ。我々はその人物を保護する」

宗介「はっ! ただちに作戦準備に取り掛かります!!」

51: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 15:00:06.21 ID:gQYyBvRao
艦長室

テッサ「紅茶を淹れました。どうぞ」

かなめ「ありがとう。んで、あたしにできることってなに?」

テッサ「この研究レポートは見ていただけましたか?」

かなめ「斜め読み程度だけどね」

テッサ「やはり、かなめさんは知っていましたか?」

かなめ「うん。それがストライカーユニットって呼ばれるほうが多いことは、知ってる」

テッサ「魔法力を行使して空を飛べることも?」

かなめ「けど、この世界にウィッチはいない。ストライカーユニットが実用化される可能性は皆無よ」

テッサ「それなら安心っ。と言いたいところですけど、それなら尚のこと何故このようなものを研究し、開発しようとしていたのかが気になりますね」

かなめ「この世界にはウィッチはいない。言い換えれば、別の世界には存在することになる」

カリーニン『――大佐殿、よろしいですか』

テッサ「はい。なんでしょうか」

カリーニン『準備が整いました。いつでも開始できます』

テッサ「分かりました。すぐに作戦を開始します。各員にもそう伝えておいてください」

52: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 15:21:08.68 ID:gQYyBvRao
発令所

テッサ「ごめんなさい。遅くなりました。指揮は私が執ります」

マデューカス「アイ、マム。これより艦長が指揮を執る!!」

テッサ「ダーナ、目標地点の座標は?」

ダーナ『北緯31°44′13″東経139°45′50″です』

マデューカス「あらゆる地図に描かれてはいませんが、衛星写真ではこの地点に島が確認できます。間違いないでしょう」

テッサ「結構。これよりダナンは無名の孤島へ向かいます」

マデューカス「アイアイ、マム! 発進準備!!」

テッサ「研究施設へは誰が突入することになりましたか」

カリーニン「メンバーに変更はありません」

テッサ「分かりました。それでいいでしょう」

カリーニン「そろそろ奴らも罠を仕掛けてくるかもしれません」

テッサ「そう思うからこそ、いつも相良軍曹を選出していたのでしょう?」

カリーニン「恐縮です」

テッサ「不用意に侵入してラムダ・ドライバを搭載しているASがいたら大変ですもの」

53: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 15:35:24.00 ID:gQYyBvRao
格納庫

マオ「そろそろ島に着くよ。装備の最終確認をしておきな」

クルツ「こっちはパーフェクトだぜ、姐さん」

マオ「ソースケはぁ? オッケー?」

宗介「肯定だ。異常はない」

クルツ「あのコンテナは未開封だけどいいのかよ」

宗介「ASを使用するならば、アレの出番はない」

クルツ「あくまで保険ってわけか」

宗介「そういうことだ。使わないに越したことはない」

クルツ「なにをもってきてんだよ」

マオ「無駄口をたたくな、野郎ども!! 発艦準備だ!!!」

クルツ「はいよぉ!」

宗介「了解。――ハッチ閉鎖。バイラテラル角3.5」

アル『ラジャ』

宗介「行くぞ、アル。任務開始だ」

54: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 15:48:28.15 ID:gQYyBvRao
孤島 アーバレスト内

宗介「こちらウルズ7。目標地点に到着した」

クルツ『こちらウルズ6。所定の位置についたぜぇ』

宗介「妙だな……」

アル『熱源反応、0』

マオ『見張りはおろか、研究施設内に人の気配がないわね。クルツ、どう?』

クルツ『ああ。人影は見当たらねえ。ただの廃墟っぽいぞ』

宗介「油断するな。セーフハウスに新築も廃墟もない」

マオ『こーんないかにもな場所でわざわざボロボロの建物を使うってどうなの』

クルツ『まぁ、確かに地下に研究施設があるのかもしれねえけどよ』

マオ『そうなるとASのままじゃ調査できないわね。――大佐、どうします?』

テッサ『はい。ウルズ6は同位置で待機。ウルズ2、ウルズ7は施設内の調査を行ってください』

マオ『ウルズ2、了解』

宗介「ウルズ7、了解」

テッサ「十分に注意してください。何があるかわかりませんから」

55: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 16:03:19.58 ID:gQYyBvRao
研究施設

マオ「こりゃ、完全にハズレたね。人が入った形跡がぜーんぜんない」

宗介「しまった」

マオ「どうした?」

宗介「こんなときのためにアレを持ってきたのに……」

マオ「コンテナに入ってるおもちゃのこと?」

宗介「あれは玩具ではない。上手く運用すれば現代戦の様相を一変させるだけのポテンシャルが――」

マオ「ちょっとまった。ここ、何かあるわ。これは床に扉……。キッチンやクローゼットは近くにないし、収納スペースってわけじゃなさそうね」

宗介「やはり地下に続いているのか」

マオ「そうみたいね。開けるよ」

宗介「了解」

マオ「……」ガチャ

宗介「……」

マオ「こちら、ウルズ2。施設内にて地下への通路を確認。これより地下へ向かいます」

カリーニン『了解。気を付けてくれ』

56: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 16:14:30.51 ID:gQYyBvRao
宗介「地下は割と新しいな」

マオ「こっちがメインだったってわけだ」

宗介「上階のフロアは荒れ放題だ。少なくとも十数年は人の出入りはなさそうだったが」

マオ「海底にトンネルでもつくってんじゃないの?」

宗介「孤島という地形を上手く利用したわけか」

マオ「問題はそこまで金をかける研究だったのかってことね」

宗介「俺個人の見解では魔法など存在しない力に頼るなど、問題外だ」

マオ「魔法の研究でもしてたのかもね」

宗介「バカな。仮にも科学者がそのような非現実で非科学的なものを追い求めるのか」

マオ「世の中の研究者ってのは大抵はバカでロマンチストの集まりよ」

宗介「よくわからん」

マオ「扉があるわね」

宗介「次は俺が開けよう」

マオ「カウント開始」

宗介「了解。3……2……1……!」ガチャ

57: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 16:29:24.23 ID:gQYyBvRao
マオ「誰かいる?」

宗介「……」

マオ「ソースケ?」

宗介「いかん、マオ。すぐにここから撤退するぞ」

マオ「何を見つけたの」

宗介「よく分からんが時限爆弾のようなものが部屋の中央に設置してある。カウントも既に5分を切っている」

マオ「ちっ。罠だったわけか」

宗介「逃げるぞ」

マオ「そうね。テッサ! 緊急事態が発生した!! ウルズ2、ウルズ7はこれより帰還する! 拒否されるとこっちが死ぬ!!」

テッサ『詳細は後ほど聞きます。すぐに戻ってきて』

マオ「感謝感謝!」

宗介「む……」

マオ「ソースケ! 足を止めるな!」

宗介「10秒くれ。人が倒れている」

マオ「なにぃ? こんなときに、もう!!」

58: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 16:38:36.03 ID:gQYyBvRao
宗介「生きているか?」

「う……うぅ……」

宗介「大丈夫そうだな。これよりここから離脱する。いいな?」

「はやく……逃げろ……。私のことは……」

宗介「そうはいかない。お前には聞きたいことが山ほどある」

「アマルガムが……私にさせた研究は……とんでもないものだったんだ……」

マオ「そういうことはあとできいてやる!! 今はここから出るのが先だよ!!」

「ダメだ……あの装置を……停止させなくては……」

宗介「無理だ。いくら専門家といえど4分弱であの爆弾は解体できない」

マオ「結構な大きさだしね。10分は欲しいか」

「あれは……爆弾じゃない……タイム・ハザードと同様の、いや、それ以上の、ことを……無理矢理……引き起こす……」

宗介「タイム・ハザード?」

「逃げてくれ! アマルガムはあの世界からウィッチを……連れてこようとしているんだ……!!」

宗介「お前はどうするつもりだ。その傷で何ができる?」

「私はここで死ななければならない。でなければ、この世界はもっと歪んでしまう」

59: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 16:50:50.66 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 発令所

テッサ「どうかしましたか」

マオ『地下施設にて研究員らしき人間を発見。重傷、いや、重体です』

マデューカス「保護し、連れてこい」

マオ『それが自分はここに残って装置を停止させないといけないとか、なんとか。あとアマルガムがどっかからウィッチを連れてこようとしていると言っていて動こうとしません』

テッサ「なんですって!?」

マオ『どういう意味かわかるの?』

テッサ「……」

カリーニン「大佐殿」

テッサ「その装置が停止できなければウィッチをこちらへ連れてくることができるようになる。そういうことですか」

マオ『相当錯乱しているようだけど、信じるわけ』

テッサ「信じないわけにはいきません」

宗介『お言葉ですが、大佐殿。逃亡目的の口上ということも考えられます』

テッサ「その人物に任せましょう。二人はただちに戻りなさい。これは命令です」

マオ『了解。あとで説明してよね』

60: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 17:22:19.07 ID:gQYyBvRao
地下施設

マオ「そういうことだから、ソースケ。ここから出るよ」

宗介「了解した」

「君たちは……ミスリルの……? あの男の言った通り……来たのか……」

宗介「そうだ」

マオ「ん? ちょっと、あんた……もしかして……」

宗介「この男、保護対象者か」

マオ「ってことは、あんたが飛行脚の生みの親ってわけ?」

「そうだ……。私は知っている。違う世界に魔女と魔法があることを……」

マオ「思春期にありがちな妄想ってわけじゃないのよね」

「その世界へいくために……アマルガムはあのような装置を……」

マオ「テッサ、保護対象の少年だったわ。どうする?」

テッサ『なっ……。いえ、命令に変更はありません。二人は戻ってきてください』

マオ「よほどのことなのね。わかった。ソースケ、行くよ」

宗介「ああ。急ごう」

61: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 17:34:39.45 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 発令所

マデューカス「よかったのですか、艦長。あの人物は……」

テッサ「分かっているわ。だけど、ここで彼を保護してしまえば、飛行脚が完成してしまうことになる」

カリーニン(大佐殿はあの飛行脚が実用化されるものと考えているのか)

テッサ「それだけは避けないと……」

カリーニン(全員を救うためには保護対象者が装置を止めなければならない、か)

クルツ『マオ、ソースケ! 急げよ!! 時間がないぞ!!』

宗介『クルツ、お前は先に戻っていてもかまわんぞ』

クルツ『うるせぇ! んなこという暇がありゃあ戻ってこい!! あと50秒で俺は戻るぞ!!』

マオ『いい根性してるわね!!』

テッサ「我々もいつでも動けるようにしておきましょう」

マデューカス「アイ、マム」

テッサ「各員の乗艦が完了次第、最大船速でこの海域を離れます。方角はどこでもいい。とにかく遠くへ行きましょう」

マデューカス「はっ!」

テッサ(急いでください。相良さん、メリッサ。万が一、違う世界と繋がってしまうことになってしまったら、どうなるか……)

63: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 17:51:30.44 ID:gQYyBvRao
艦長室

かなめ「……遅い」

かなめ「気が付くのが遅い」

かなめ「知っているということは、既に得ているということ」

かなめ「ストライカーユニット、ウィッチ、そしてネウロイ。それらをあたしが知っているということは、一度経験しているということになる」

かなめ「避けることはできない。必ずそれは起こる」

かなめ「時空が割ける」

ゴゴゴゴ……

かなめ「きゃぁ!?」

かなめ「いたたた……。なに!? なにがあったのよ!?」

≪かなめさん、大丈夫ですか?≫

かなめ「テッサ……!?」

≪無事でよかった≫

かなめ「これ、滅多なことではしないって言ってなかったっけ?」

≪緊急事態なんです。かなめさんはそのまま待機しておいてくださいね≫

64: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 17:59:06.89 ID:gQYyBvRao
発令所

テッサ「被害報告を」

マデューカス「各部動力機関に問題はありません」

テッサ「あれだけの衝撃が海中で起こったのにですか」

マデューカス「そういうことになります」

カリーニン「今の衝撃は施設が爆発したことによる影響でしょう」

テッサ「爆発の衝撃ならいいけど。突入部隊の三名は?」

カリーニン「無事に乗艦が完了したと衝撃が到達する直前、報告がありました」

テッサ「結構。ダーナ、現在位置を」

ダーナ『不明』

テッサ「え? 現在の座標は?」

ダーナ『不明』

テッサ「どうして?」

ダーナ『位置情報を更新できません。現在地を起点にすることは可能です。実行しますか?』

テッサ「まさか……」

65: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 19:03:55.06 ID:gQYyBvRao
上空

ミーナ「サーニャさんが感知した地点はこのあたりなのね」

エイラ「そうだ」

ルッキーニ「でも、なーんにもいないよ?」

バルクホルン「リベリアン、音は拾えるか」

シャーリー「ちょっとまて……」

芳佳「坂本さん、どうなんですか?」

美緒「私の魔眼でも視認はできないな」

ルッキーニ「ホントにサーニャは感じたのぉ? 寝ぼけてたとかない?」

エイラ「あるわけないだろ。サーニャの能力はお前だって知ってるだろ」

シャーリー「海の中から音がする。聞いたことがない音だ」

ミーナ「海中から?」

芳佳「もしかしてネウロイ!!」

美緒「それはありえん。奴らは海水を嫌う」

シャーリー「けど、サーニャが探知したっていう範囲からは他に音は聞こえないんだ」

66: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 19:16:56.89 ID:gQYyBvRao
バルクホルン「潜水艦か?」

シャーリー「にしては静かすぎるけどな」

ルッキーニ「たしかめりゅの?」

美緒「潜水艦にしても何故、この海域にいるのかは確認せねばならんな」

エイラ「このご時世に潜水艦なんて意味ないのになー」

美緒「ネウロイの殲滅目的としては使い道がないからな」

ミーナ「侵攻目的なら別だけれど」

バルクホルン「それこそ意味がない。この時代に人間同士で争うなど」

芳佳「人と人が戦争なんて、嫌です……」

美緒「ともかく行ってみるか。シャーリー、バルクホルン、私のあとについてこい。他の者はここで待機だ」 

ミーナ「大丈夫なの、美緒」

美緒「心配するな。ネウロイじゃなければ戦いにはならん」

ミーナ「貴方を信じるわ」

美緒「行くぞ」

バルクホルン「了解!」

68: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 19:34:57.85 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 発令所

テッサ「座標が特定できない原因は?」

マデューカス「衛星との通信が一切不能になっているのが主な原因かと」

テッサ「なるほど……」

マデューカス「それと海域にも変化が生じています」

テッサ「島がないのでしょう?」

マデューカス「ええ。爆発で吹き飛んだとは思えないほど、綺麗さっぱり」

テッサ「ダーナ、現在地を起点として登録して、そのあとメインタンク・ブロー」

ダーナ『アイ、マム』

カリーニン「測量せねばなりませんな」

テッサ「ええ。かなめさんのいっていたことが起こってしまったのなら……」

ダーナ『熱源体を確認しました。熱源反応は3』

マデューカス「上空からか。空軍の機体でしょうか」

テッサ「映像を」

マデューカス「アイ、マム。上空を映せ」

69: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 19:48:15.21 ID:gQYyBvRao
上空

美緒「あれは……なんだ……」

シャーリー「戦艦としてはあまりに洗練されたフォルムだな」

バルクホルン「あのような巨躯で海に潜れるものか。あれはネウロイではないのか、少佐」

美緒「コアは確認できん。あれは人工の乗り物だ」

バルクホルン「なに……」

美緒「そしてあの艦、我々を見ているようだ」

シャーリー「潜望鏡かなにかで?」

美緒「そのようなモノではないだろう。それに潜望鏡ではこの高高度を視認できんはずだ」

シャーリー「それもそうか」

バルクホルン「どうする、少佐? もし、どこかの国が極秘裏に作りだした戦艦ならば……」

美緒「……私が行こう。お前たちはミーナのところに戻っていろ」

バルクホルン「何を言っているんだ!」

シャーリー「そんな命令、聞けると思っているんですか?」

美緒「聞いてもらわなければ困るな。私の使命は部下を五体満足で帰投させることだ」

70: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:05:38.83 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 格納庫

クルツ「結局、あのあとどうなったんだ?」

マオ「艦長とも連絡つかないしね。まぁ、しばらく待機してろってカリーニン少佐はいってたけど」

宗介「……」

マオ「どうしたの、ソースケ」

宗介「先ほどの衝撃が気になる。あの島、いや、施設が爆発したのだろうか」

マオ「そう考えるのが妥当じゃない?」

宗介「となると、あの男は……」

マオ「死んだわね。間違いなく」

宗介「だろうな」

マオ「珍しいじゃない。状況次第で見捨てなきゃいけない命なんて掃いて捨てるほどあることは身に染みてるでしょ」

宗介「それは分かっている。俺が気になっているのは奴が命を賭してまでやろうとしていたことだ」

クルツ「なんだっけ。ウィッチがどうのこうのだっけか? アマルガムの連中が薬漬けにしちまった結果じゃねえのか」

宗介「その可能性もあるだろうが、奴の目は死んでいなかった」

クルツ「あー、そりゃホンモノだ。だったら、理由があってやったことにちがいねえ。気にはなるな」

71: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:15:14.46 ID:gQYyBvRao
カリーニン「揃っているな」

マオ「少佐。現況の説明をお願いいたします」

クルツ「さっきのアレはやっぱり施設が爆発した所為っスか?」

カリーニン「事実確認の最中だ。それについては後ほど報告する」

マオ(こっちが混乱しちゃうようなことが起こったわけね)

カリーニン「それとは別に、これよりここに一人の女性がやってくる」

宗介「女性? どこかの兵士ですか」

カリーニン「いや。それは言えん。ともかく、粗相のないようにな」

マオ「銃器の携帯は?」

カリーニン「……許可する」

クルツ(敵かもしれねえってことかぁ? 一体、外では何が起こってんだよ)

カリーニン「私が艦長のところまでその女性を案内する。相良軍曹、私とともにこい」

宗介「はっ」

カリーニン「お前たちも余計な詮索だけはするな」

マオ「了解」

72: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:26:07.92 ID:gQYyBvRao
甲板

美緒「ほう? ここから戦闘機を発艦させることができるようだな。本当に潜水艦なのか」

カリーニン「紛れもなく、潜水艦だ」

美緒「招待してくれたことに感謝する。私たちに戦う意思はない」

カリーニン「そのようだな」

宗介(この女、何者だ……? 銃器は持っていないようだが、背中にあるのはソードか。白兵戦に絶対の自信があると見える)

美緒「私が聞きたいのはこの艦がどこで造られ、どこに所属し、何の目的でここの海域にいるのかだ」

カリーニン「それを説明するにはもう少し互いのことを知らなければならない」

美緒「一理あるな。名前も知らぬ相手に聞いていいことではなかったか」

カリーニン「貴方さえよければ艦長のところへ案内するが」

美緒「いいのか? はっはっはっは。では、好意に甘えよう」

宗介「拘束するかもしれんぞ」

美緒「そうした忠告をしてくれる者が拘束するとは思わん」

宗介「……」

美緒「では、案内してくれ」

74: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:32:35.63 ID:gQYyBvRao
格納庫

宗介「念のためだ。この刀剣は預からせてもらう」

美緒「ああ。扱いには気を付けてくれ」

宗介「了解した」

カリーニン「ついてきてくれ」

美緒「うむ。あれはなんだ?」

カリーニン「見てわからないか?」

美緒「うーむ……。全く、わからん」

カリーニン「そうか」

宗介(この女、ASを知らないのか?)

クルツ「あれが少佐のいってた女かよ」

マオ「軍服の下は水着みたいだね」

クルツ「この辺で海水浴でもしてたのかねぇ」

マオ「こんな何もない場所で? 遭難の間違いじゃないの?」

クルツ「それにしても、美人だなぁ。ありゃあ、間違いなくいい女だぜぇ」

77: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:44:15.84 ID:gQYyBvRao
艦長室

カリーニン「大佐殿、お連れしました」

テッサ「はい、ありがとうございます。どうぞ、入ってください」

美緒「失礼する」

かなめ「ね、ねえ、テッサ。あたしがいていいの?」

テッサ「むしろ、いてもらわないと困ります」

かなめ「えぇ……」

美緒「ふむ。ここの艦長はそちらか?」

かなめ「え!? いえいえ!! あたしはちんけな小娘ですから!!」

美緒「では……」

テッサ「私がこの艦の長です」

美緒「名乗ってくれないのか」

テッサ「部外者をここまで案内したのだって結構なサービスなんですよ? 名前を答えるのは、貴女の名前を聞いてからにします」

美緒「なるほど」

かなめ「ちょ、ちょっとテッサ……」

78: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:53:14.55 ID:gQYyBvRao
美緒「気にするな。彼女の言っていることは尤もだ。私が逆の立場でも同様の応対をしていただろう」

かなめ「え……」

テッサ「それはどうも」

美緒「それに、ここで怒りを露わにし艦長を殴りかかれば、両脇の男がどういった行動をとるのかぐらいは予測がつく」

カリーニン・宗介「「……」」

美緒「鍛え抜かれた兵士のようだな」

テッサ「ええ。私の自慢の部下であり仲間です」

美緒「ふっ。そうか」

かなめ(なんかいい人っぽい)

美緒「私は第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』に所属している、坂本美緒だ。階級は少佐。原隊は扶桑皇国海軍遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊」

テッサ「聞いたこともない団ですけど、主にどこで活動を?」

美緒「聞いたことがないのか。501の知名度もまだまだなのだな」

かなめ「501が活動しているのは基本的に欧州でしょ? 今はガリア解放を目指してるんだっけ」

美緒「うむ。その通りだ」

宗介「千鳥、どこでそんな情報を手に入れたんだ? 俺は知らないぞ」

79: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:02:46.91 ID:gQYyBvRao
かなめ「え? あぁ……その……」

テッサ「坂本少佐。貴方はウィッチなのですか」

美緒「そうだが」

テッサ「貴方が両脚に装着していたものはストライカーユニット、飛行脚ですね」

美緒「私のことはともかく、ストライカーユニットのことを知らないのか」

テッサ「いえ。知ってはいます。ただの確認ですから」

美緒「よくわからんな」

テッサ「困ったことになったわ……」

かなめ「ねえ、もしかしてなんだけどさ……」

テッサ「かなめさんの不安は的中していると思います」

かなめ「えぇぇ!?」

宗介「大佐殿、これは一体どういう……」

カリーニン「軍曹、詮索はするなといったはずだ」

宗介「……了解」

カリーニン「必ず説明はする。それまでは何も聞かないでくれ」

80: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:18:23.99 ID:gQYyBvRao
美緒「そろそろ聞かせてもらえるか?」

テッサ「そうですね。では、自己紹介をいたしましょう。私はミスリル作戦部西太平洋戦隊総司令官・TDD-1『トゥアハー・デ・ダナン』艦長、テレサ・テスタロッサです」

美緒「聞いたことがない隊だな。名称からして海軍なのか」

テッサ「まぁ、そう思ってもらっても構いません」

美緒「厳密には違うのか」

テッサ「ええ。そうですね。詳しいことを話すことはまだできませんので、ご了承ください」

美緒「隣にいるのが副艦長か?」

かなめ「違います。あたしは一般市民なんです」

美緒「一般人にも解放している戦艦か」

テッサ「うふふ。割と開放的なんですよ、この艦は」

美緒「いいことだな。私にはその開放的な部分を見せてくれないのを除けばだが」

テッサ「501の基地を見せてほしいと言えば、簡単に見せてくれますか?」

美緒「……」

テッサ「無理でしょう? そういうことです」

美緒「いや、いいぞ? 今から来るか?」

82: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:26:56.92 ID:gQYyBvRao
テッサ「え……」

美緒「隠すことはなにもない。テスタロッサ艦長さえ良ければ歓迎しよう」

テッサ「どういうつもりですか」

美緒「私の腹の色を探ろうとしても無駄だ。裏はないからな」

テッサ「……」

美緒「ただし、条件がある。男を連れてはいけない」

宗介「失言だな。それは大佐殿を拘束すると宣言しているようなものだ」

美緒「そうではない。私たちの隊長は男に厳しくてな。ウィッチと男性職員の接触を極端に嫌い、禁止にしている」

テッサ「ということは、501には女性しか所属していないと」

美緒「そもそもウィッチに男は存在しない。過去には魔法力を有していた男も存在していたらしいが」

宗介「信頼するに足りん説明だ」

美緒「お前はウィッチのことも知らないのか?」

宗介「知らんな。そのように呼称される女兵士部隊など噂ですら耳にしたことがない」

美緒「お前たち、どこから来た?」

カリーニン「説明したところで信じてはもらえんだろう」

83: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:36:02.36 ID:gQYyBvRao
テッサ「……」

かなめ「どうするのよ、テッサ」

テッサ「分かりました。501の基地に案内してもらえますか?」

宗介「大佐殿!! 正気ですか!! このような正体のわからない連中についていくなどと……!!」

カリーニン「軍曹、控えろ」

宗介「しかし、もしも大佐殿の身になにかあれば……」

カリーニン「女性の護衛をつければ問題ないはずだ」

宗介「マオですか」

カリーニン「信頼できないとは言わせんぞ」

宗介「……了解です。差し出がましい真似をして失礼しました」

美緒「話はまとまったか」

テッサ「ええ。ところで、この艦ごと近くまで連れて行ってもらえるんですか?」

美緒「基地に総攻撃をかけるつもりはあるか?」

テッサ「そんなことをする理由が私たちにあるとでも?」

美緒「ないな。では、我々で誘導する。艦ごとついてきてくれ」

84: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:41:55.04 ID:gQYyBvRao
上空

ミーナ「まだかしら……」

バルクホルン「まだ1時間は経過していない。焦るな」

ミーナ「けど……」

芳佳「あの、坂本さんが1時間以内に戻らなかったら……」

シャーリー「あの戦艦に総攻撃を仕掛ける」

芳佳「そんな、ネウロイじゃないのに……」

バルクホルン「リベリアン、宮藤を脅すな。そのような命令は受けていないだろう」

シャーリー「似たようなもんだろ。全員であの戦艦にこい、なんてさ」

バルクホルン「……」

ルッキーニ「おーい!! みんながきたよー!!」

エイラ「サーニャたちか。これで戦力は揃ったな」

シャーリー「501の総力をあげれば、どんな奴からだって少佐を救い出せるさ。確実にな」

バルクホルン「そうだな。無益な戦闘にならないことを祈る」

ミーナ「美緒……」

85: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:50:36.58 ID:gQYyBvRao
美緒「はっはっはっはっは」ブゥゥゥン

芳佳「坂本さん!!」

ミーナ「美緒!! 無事だったのね!?」

美緒「すまんな。心配をかけたか」

ミーナ「当たり前でしょう!?」

ペリーヌ「聞きましたわ、坂本少佐! そのような危険なことはおやめになってください!」

美緒「だが、こうしなければ不安は取り除けなかっただろう」

ミーナ「だからって、単独で向かうなんて軽率すぎるわ」

美緒「相手はネウロイではなく、人間だ。殺し合いになるわけがない」

ミーナ「それでもよ!」

エーリカ「で、少佐。あの船、ついてきてるみたいだけど、お茶会にでも誘ったの?」

美緒「察しがいいな。流石はハルトマンだ。はっはっはっは」

リーネ「そ、それじゃあ……もしかして……」

美緒「あの艦を501基地に寄港させる約束をした。はっはっはっは」

ミーナ「な……!?」

86: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:01:18.15 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 発令所

テッサ「あれが501のウィッチたちですね」

マデューカス「ううむ……年頃の娘がなんとハレンチな恰好を……」

テッサ「マデューカスさんは下を向いていてください」

マデューカス「ア、アイアイ、マム」

カリーニン「飛行脚が実用化されている世界に来てしまいましたか」

テッサ「そのようですね。理由は分かりませんが、現実に彼女たちが目の前で飛んでいる」

カリーニン「はい」

テッサ「まずは情報を収集しましょう。この世界のことを知らなくてはならない」

カリーニン「501は主に欧州で活動していると言っていました。この海域は欧州なのでしょうか」

テッサ「少なくとも近くに八丈島がある海域ではないでしょうね」

カリーニン「今はまだ状況を把握しているものが殆どおりませんが、徐々に判明すれば混乱は必至です」

テッサ「そのあたりの対策も練っておかくてはなりません。そのためには艦長である私が事態を把握しないと」

カリーニン「お気をつけて」

テッサ「では、行ってきます」

87: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:10:54.56 ID:gQYyBvRao
上空

シャーリー「あれ、本当に戦艦か? すげえ速度でてるぞ」

エイラ「なんか怖いな」

サーニャ「あれだけの潜水艦が造れる国なんて……」

ルッキーニ「シャーリーと似たような魔法使えるウィッチが乗ってるんじゃないの?」

シャーリー「へぇ。それは興味あるな」

美緒「残念ながらシャーリーの期待に添える人物は乗艦していなかった」

シャーリー「そうなんですか?」

ペリーヌ「ですが、海上であれほどの速度を出せる艦など、ウィッチがいなければ説明がつきませんが」

美緒「だが、ウィッチはいなかった」

エーリカ「乗組員全員を紹介してもらったのか?」

美緒「いや、そんな確認は必要なかった」

芳佳「え……?」

美緒「奴らはウィッチを知らなかったからな」

リーネ「ウィッチを知らないって……そんなこと……」

88: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:21:48.26 ID:gQYyBvRao
ミーナ「どこの所属なのかも答えてはくれなかったのね」

美緒「そうだな。海軍なのかも定かではない」

バルクホルン「あれだけの戦艦を所有し運用しているんだ。海軍以外に何がある」

美緒「潜水艦なのに、戦闘機が発艦できる。これはどういうことだと思う?」

バルクホルン「な、なに? 現行の潜水艦でそこまでの規模のものはないし、技術的にも製造不可能だろうに」

ミーナ「ネウロイとの戦闘を考慮した設計ということなの」

美緒「現実的に考えればそうなる。しかし、ウィッチの存在そのものを知らない連中というのがわからん」

エーリカ「ウィッチを知らないならネウロイだって知らないよね」

美緒「私はそう考えている」

エイラ「ネウロイを知らないってどこの世界からきたんだよぉ」

サーニャ「ネウロイの侵攻もなく、ウィッチもいない地域で造られた潜水艦なの?」

エイラ「そんな地域があるか?」

サーニャ「ないかしら?」

芳佳「そんなのあるの!?」

美緒「奴らのことは基地で聞く。それまでは余計な予想はするな。先入観はなくせ。いいな」

89: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:34:29.36 ID:gQYyBvRao
デ・ダナン 格納庫

マデューカス「陸地と建物が肉眼で確認できました。そろそろ着くころでしょう」

テッサ「そうですか。メリッサ、護衛をお願いね」

マオ「まっかせといて」

かなめ「あたしもいかなきゃダメぇ?」

テッサ「ごめんなさい。けど、身の安全は約束します」

マオ「あたしが守ってあげるってぇ。ソースケじゃなくて悪いけどねぇ」

かなめ「別に、あたしは……そういうのは……」

宗介「……」

クルツ「護衛を外されて残念だったなぁ。でも、女だらけの部隊は見てみたいぜぇ」

宗介「ああ。そうだな」

クルツ「お! お前もわかるようになってきたかぁ」

宗介「マオを信頼していないわけではないが、多勢に無勢だ。マオだけで本陣に乗り込み、不測の事態が起こった場合、対応できるとは思えん。守るためにはそれなりの数がいる」

クルツ「でもよ、相手の条件は男はダメで女のみ、なんだろ?」

宗介「ならば、問題ない。アレを使えば性別など関係ないからな」

90: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:40:58.49 ID:gQYyBvRao
501基地 港

テッサ「ここが501……」

マオ「歴史的な建造物っぽいわねぇ。こんなの日本にあったんだぁ」

かなめ「……」

ミーナ「ようこそ、501へ。私が隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」

マオ「どうも。メリッサ・マオ」

テッサ「テレサ・テスタロッサです」

かなめ「ええと、千鳥かなめです」

ミーナ「どうぞ、こちらへ」

かなめ「……」

ミーナ「私の顔に何かついているかしら?」

かなめ「ああ、すみません。私の知り合いに雰囲気が似てたので」

ミーナ「それは光栄ね。では、友人のように接してくれても構いませんよ、千鳥さん」

かなめ「は、はぁ」

テッサ「ヴィルケ中佐……。一筋縄ではいかなそうですね」

91: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:48:10.08 ID:gQYyBvRao
廊下

テッサ「ここの役割とはなんですか?」

マオ「……」

ミーナ「ここは欧州の砦となる場所です。ここが陥落すればネウロイはブリタニアまで侵攻してしまうことになるわ」

マオ(ぜーんぜんわかんないけど、自分の置かれている状況はなんとなくわかってきたわね。そりゃ少佐も口を閉ざすわ。動揺を顔に出さないようにしないと)

テッサ「なるほど。そのネウロイとはなんですか?」

ミーナ「本当に何もしらないのね」

テッサ「申し訳ありません。田舎者でして」

ミーナ「何を知らないのかしら?」

テッサ「この世界の全て、といって信じてくれますか?」

ミーナ「歴史の授業でもしたほうがいいの?」

テッサ「できるならお願いしたいですけど、流石にそこまで時間を割けません。私にも大事な友人と部下がいますから」

ミーナ「それはよかったわ。どうやら、からかっているわけではなさそうね」

テッサ「貴方をからかうなんて恐れ多いです」

かなめ(501……全部知ってる……これもあたしがウィスパードだからなの……。でも、テッサは知らないみたいだし……)

92: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:56:43.64 ID:gQYyBvRao
格納庫

バルクホルン「ミーナと少佐だけで大丈夫なのか」

シャーリー「相手はウィッチじゃないんだから、どうしたって二人には勝てないだろ」

エーリカ「それに少佐も言ってたことだけどさ、私たちに危害を加えようとか、そういう気はないでしょ」

バルクホルン「そうとも限らない」

エイラ「なんでだ?」

バルクホルン「予算削減の件は聞いているか?」

リーネ「いえ、知りません」

バルクホルン「軍上層部の決定でな。501の予算が減らされた」

ペリーヌ「何故? わたくしたちは日夜ネウロイの脅威から空を守り、結果を出していますわ」

バルクホルン「だからだ」

芳佳「意味が分からないんですけど……」

バルクホルン「501は活躍し過ぎなんだろう。それを目障りに思う輩が軍にいる。宮藤が赤城を守った件も大きく絡んでいるそうだ」

芳佳「そんな!! 納得できません!!」

バルクホルン「私とて同じだ。だが、それが軍のやり方なんだ」

93: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:04:25.75 ID:gQYyBvRao
芳佳「どうして守りたいものを守って、怒られなきゃいけないの……!」

リーネ「芳佳ちゃん……」

ペリーヌ「活躍のし過ぎですか。獲物を他の部隊にも分けろ、というわけですわね」

シャーリー「つまんないことするよな。こっちが戦闘狂の集まりとでも思ってるのかよ。それはカールスラントの軍人だけだろ」

バルクホルン「誰のことを言っている?」

シャーリー「お? 自覚あるのか」

バルクホルン「きさまぁ!!」

エイラ「やめろ、こらぁ!」

サーニャ「……」ピクッ

ルッキーニ「サーニャ、どったの?」

サーニャ「何か、いるわ」

ルッキーニ「なにかって?」

サーニャ「こっち」タタタッ

ルッキーニ「にゃににゃにー? むしー?」テテテッ

エーリカ「なんだ? サーにゃん、私もまぜてよー」

94: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:10:34.38 ID:gQYyBvRao
滑走路

ボン太くん「ふもふもー」

クルツ『おい、ソースケ。そりゃあ、大丈夫なのかよ』

ボン太くん『問題ない。この強化服は婦女子を油断させることができるからな』

クルツ『でも、目立つだろうが』

ボン太くん『俺はそんなヘマはしない。それにこれならば不測の事態にも対応できるだけの装備が整っている』

クルツ『まぁ、生きて戻って来いよ』

ボン太くん『ウルズ7、了解』

ボン太くん「ふも、ふもふも」キョロキョロ

サーニャ「あれ」

ルッキーニ「にゃにあれー!?」

エーリカ「おぉー。なんだあれー?」

ボン太くん「ふもっ!?」

ルッキーニ「にゃっはー!!!」テテテッ

ボン太くん(ちぃ、もう見つかるとは。だが、捕まるわけにはいかん)

95: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:16:14.21 ID:gQYyBvRao
ルッキーニ「つっかまえたー!!!」

ボン太くん「ふもも!!」ババッ

ルッキーニ「ふぎゅ!?」ビターン

エーリカ「ルッキーニのタックルをよけた……!? 只者じゃないみたいだな」

サーニャ「ルッキーニちゃん、大丈夫?」

ルッキーニ「いたいぃ……顔、うったぁ……」

ボン太くん「ふも、ふもも、ふもっふ」

エーリカ「えらそーに。そっちがその気なら、こっちも本気でいくぞ」

サーニャ「ハルトマンさん、あの生物の言っていることがわかるんですか?」

エーリカ「わかんなーい」

ボン太(こいつらの相手をしている暇はない。まずは屋内に潜入し、身を隠す)

ボン太くん「ふもー」テテテテッ

サーニャ「逃げる……」

エーリカ「おいかけろー!!」

ルッキーニ「うにゃー!!! まてまてー!!!」

96: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:22:25.09 ID:gQYyBvRao
「わー!!」

芳佳「なんだろう?」

バルクホルン「何を騒いでいる――」

ボン太くん「ふももももー!!!!」ダダダッ

バルクホルン「な、なに……!?」

エイラ「なんだ、こいつ!?」

ボン太くん「ふもぉ……!」

ボン太くん(くっ。しまった。敵に囲まれてしまったか。それにしても本当に女しかいないのか)

エーリカ「ひっひっひ。ついに追いつめたぞ」

芳佳「な、なんだろう、あれ……」

リーネ「可愛い……」

ボン太くん(これ以上、騒ぎになれば千鳥たちがどうなるかわからん。仕方ない、少しの間だけ眠っていてもらうぞ)

ボン太くん「ふもっ!!」ジャキン!!!

シャーリー「こいつ! 銃を……!!」

バルクホルン「可愛い外見をしてテロでも起こすつもりか!!」

97: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:28:02.05 ID:gQYyBvRao
ボン太くん「ふもっふ!!」バァン!!!

バルクホルン「おのれ……!!」ギィィンン!!!

ボン太くん「ふもも!?」

ボン太くん(なんだ、あの障壁は!? 訓練弾とはいえ、銃弾が止められただと!? まさか、ラムダ・ドライバか!?)

シャーリー「着ぐるみか何かか、これ?」

サーニャ「え……。こういう生き物じゃないんですか……」

エイラ「とにかく捕獲すればわかるだろ」

芳佳「熊なら私に任せてください!! 扶桑では野生の熊と友達になったぐらいですから!!」

リーネ「そ、そうなんだ!」

ボン太くん「ふも……」

芳佳「大丈夫だよ。ほら、怖くないよ。こっちにきて」

ボン太くん「……」

芳佳「もう少し、もう少し……」

ボン太くん「ふもっ」バァン!!!

芳佳「痛っ!?」

98: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:36:02.19 ID:gQYyBvRao
バルクホルン「宮藤!!!」

リーネ「芳佳ちゃん、大丈夫!?」

芳佳「おでこ……いたい……」

ボン太くん「ふもぉ?」

ボン太くん(どうやら全員がラムダ・ドライバを使えるわけではないようだな)

バルクホルン「貴様、宮藤に手を出したな……」

ボン太くん「ふも?」

バルクホルン「ふも?ではない!! 貴様だけは許さんぞ!!! 怪生物め!!!」

シャーリー「だから、あれ着ぐるみだろ?」

ボン太くん(状況は不利か。退路を確保しなければなるまい)

ボン太くん「ふもっ!!」ダダッ

エイラ「こっちは通行止めだ」

ボン太くん「ふもぉ!? ふもも!!」ダダッ

エーリカ「こっちも通れないよ」

ボン太くん(なんだ、こいつら……! まるで俺の行動を先読みしているように……!!)

99: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:44:47.16 ID:gQYyBvRao
エイラ「私の魔法に逃げ道はないんだな」

ボン太くん(魔法だと? 何を言っているんだ)

バルクホルン「くらえぇぇ!!!」ブゥン!!!

ボン太くん「ふもっ!」ババッ

ボン太くん(動きが直線的すぎるぞ! このアマチュアめ――)

ドォォォン!!!!

ボン太くん「ふももも!?」

バルクホルン「外したか」

ボン太くん(素手で外壁が木端微塵だと……!? グレネード以上の威力か……!? なにがどうなっている!)

バルクホルン「だが、次は外さん」

ボン太くん(あの拳が当たればこの強化服もただでは済まんか。奴はやはりラムダ・ドライバを……)

シャーリー「つかまえたぁ!!!」

ボン太くん「ふもっふ!」

ボン太くん(甘いぞ!! そんな速度では――)

シャーリー「加速!!」ピコンッ

100: SS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:52:56.16 ID:gQYyBvRao
ボン太くん(なに!?)

シャーリー「ふっふーん。あたしにスピードで勝てるわけないだろ」ギュゥゥ

ボン太くん「ふもー!?」

ルッキーニ「わーい!! シャーリーがつかまえたー!!」ギュゥゥ

ボン太くん(何なんだ、こいつらの常軌を逸した能力は。全てラムダ・ドライバの力なのか……?)

バルクホルン「全員で怪生物を捕えるんだ!!」

サーニャ「はいっ」ギュゥゥ

リーネ「結構、柔らかいね」ギュゥゥゥ

芳佳「そうだね!」

ボン太くん(くそ……!! 何故だ!! 微動だにできん!! 女の力とはとても思えん!!)

エーリカ「いえーい。やっとだきつけるー」ギュゥゥ

エイラ「お前、どっからきたんだよ。飼い主とかいるのか?」

ボン太くん「ふもぉふもぉ」

バルクホルン「よし、覚悟はいいな?」ポキポキ

ボン太くん「ふ、ふもぉ……!!!」

102: SS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 00:04:27.63 ID:BtA5ZLhxo
執務室

美緒「これがこの世界の成り立ちだ。大まかな説明になってしまったが理解できたか?」

テッサ「はい。納得した、とは言えませんけど」

マオ(魔女が古来からいて当たりまえの世界。んで、ネウロイとかいう変な生物が人間の住処を荒らしまくってる、ね)

かなめ(どれもこれも知ってる……どうしてあたしだけ……)

ミーナ「千鳥さん、顔色が悪いけれど、大丈夫?」

かなめ「え? あ、ああ、大丈夫です。ちょっと船酔いしただけで、うははは」

ミーナ「そう。無理はしないでね」

美緒「私があの潜水艦、ダナンといったか、あの中で見た機械兵器は艦長らの世界では当たり前のように軍事運用されているのか?」

テッサ「はい。まぁ、私たちが所有しているAS、アーム・スレイブはちょっとだけズルいんです」

美緒「最新のものが揃っているということか」

テッサ「ええ」

美緒「テスタロッサ大佐は、有能な指揮官なのだな。新型を優先的に運用できるのはそれだけ隊として優秀である証だ」

テッサ「ありがとうございます。その点でいえば501も同じでしょう? 各国のエースが集まっている。そしてそれをまとめあげ指揮を執るなんて並の指揮官にはできませんから」

ミーナ「うふふ。素直に喜んでおくわね」

108: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 20:41:48.85 ID:rUagG+O1o
かなめ「ところでさぁ、テッサ。ウィッチだとかネウロイだとかはいいとしてさ」

マオ(いいんだ)

かなめ「坂本さんたちがあたしたちのことを信じてくれたかどうかはわからないんじゃない?」

テッサ「そうですね……」

美緒「信じていると言っても、その言葉を信用はできんということか」

かなめ「だってそうじゃないですか。あたしたちがこことは全然違う時代で文明にも差がある世界から来ましたなんて、普通は信じられないと思いますけど」

ミーナ「坂本少佐が見たという人型の機械兵器、規格外の潜水艦を見せられては信じる他ないと思うけれど」

テッサ「それはどうでしょう」

美緒「なに?」

テッサ「我々はとある事情から坂本少佐たちの世界を素直に受け入れることができます。ですが、貴方たちの立場は我々とは違う」

マオ(すんなり受け入れているのはテッサとかなめだけじゃないの? まぁ、この辺りは突っ込んだところでまともな答えは返ってこないだろうけど)

テッサ「ストライカーユニットと呼ばれる兵器に関して、何か疑問を持ったことがないですか?」

ミーナ「ユニットに?」

美緒「……」

テッサ「たとえば、このストライカーユニットの技術だけが異様に発達している、とか」

109: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 21:03:16.99 ID:rUagG+O1o
ミーナ「いいえ。先ほど説明したように、ストライカーユニットの原型となったものはライト姉妹が開発しているわ。そして更に古来より、ウィッチは空を飛んでいた」

テッサ「宮藤理論でしたか。その理論により、ストライカーユニットは劇的に進化したのではないですか?」

ミーナ「それは……」

テッサ「確かに正当な段階を経て、技術が向上したとみることもできます。この世界に存在する魔法も科学の一部ならば、私たちの常識では考えられない手順もあるのでしょう」

マオ「ちょっといい? このストライカーユニットは魔法力によって駆動するってことみたいだけど、使っている動力部ってのは他の戦闘機でも使えたりする?」

ミーナ「ユニットに合わせて開発されたものよ。魔導エンジンを他の兵器に転用、流用はできない」

マオ「長いこと研究されたからこそ、ユニット自体は徐々に性能をあげてきたというわけね」

ミーナ「ええ。そうよ」

テッサ「艇体に跨り、尚且つ別のエンジンユニットを必要とした形から、宮藤理論を元に脚に「履く」ことで訓練を積まずとも飛行し身体能力を強化できるようになったことについては?」

ミーナ「だから、それは長い歴史からみても順当に――」

美緒「テスタロッサ大佐」

テッサ「はい、なんでしょうか?」

美緒「お前はユニットの性能が時代に合っていないと言いたいのか?」

テッサ「端的に言えばそうですね」

美緒「それを確認できたとして、お前になんの益がある?」

111: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 21:19:06.83 ID:rUagG+O1o
テッサ「そうですね。少なくとも宮藤理論の生みの親である宮藤一郎氏には会わなくてはいけないでしょう」

美緒「何故だ」

テッサ「私たちが元の世界へ戻る術を知っている可能性があるからです」

美緒「……」

かなめ(その人がウィスパードかもしれないから。でも、ウィスパードがこの世界にいるとすれば……)

テッサ「宮藤一郎さんは今、どこにいますか?」

ミーナ「宮藤博士は……」

美緒「ついてこい。会わせてやろう」

テッサ「いいのですか? ありがとうございます」

ミーナ「美緒!」

美緒「構わんだろう。どうせすぐにわかることだ」

ミーナ「だからって……」

テッサ「何か問題でも?」

美緒「いや、ない。行くぞ」

テッサ「よろしくお願いします。坂本少佐」

112: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 21:28:23.74 ID:rUagG+O1o
美緒「ん?」ガチャ

ペリーヌ「あ、あら、坂本少佐。これからどちらに?」

美緒「盗み聞きか、ペリーヌ」

ペリーヌ「い、いえ! とんでもありませんわ!! わたくしはただ、少佐のことが心配で……」

美緒「やれやれ……」

マオ「少佐は好かれているようね」

美緒「優秀な者に好かれるのは指揮官としては幸せなことだな」

ペリーヌ「わ、わわ、わたくしが優秀だなんて……そんなぁ……」モジモジ

テッサ「貴方は坂本少佐のことが大好きなんですね」

ペリーヌ「勿論ですわ。あなた方が何者かは知りませんが、もし狼藉を働くというのなら容赦はしません」

マオ「へぇ、面白いじゃない」

ペリーヌ「わたくしに勝てるとでも?」

美緒「やめんか」

テッサ「そうですよ。私たちはあなた方に迷惑なんて一切かけませんから」

かなめ(あのバカが既にかけてそうなんですけど)

113: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 22:24:54.12 ID:rUagG+O1o
基地周辺

バルクホルン「どこに逃げた!!」

シャーリー「こっちに来たと思うんだけどなぁ」

エーリカ「でも、あいつ中々やるよね。トゥルーデに殴られる瞬間、体を転回させて私たちを振りほどくと同時に逃げ出すなんて」

エイラ「魔法つかっとけばよかったな。油断した」

芳佳「サーニャちゃん、どこにいったかわからない?」

サーニャ「……こっち」

ルッキーニ「こっちだー!! いそげー!!」

エイラ「こっちだな!」

バルクホルン「いいか!! 必ず生け捕りにするんだ!!」

エーリカ「りょーかいっ」

リーネ「あの、いじめるのはよくないような……」

バルクホルン「何をいう。奴は銃器を巧みに扱っていたんだぞ。危険生物と言わずしてどうする」

シャーリー「だから、着ぐるみだって」

芳佳「あの子を探しましょう! きっと怯えているだけです!! 優しくすればきっと友達になれます!!」

114: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 22:42:44.56 ID:rUagG+O1o
ボン太くん「ふも……ふも……ふもる……」

ボン太くん(はぁ……はぁ……。なんとかここまで逃げることはできたが……)

「こっちだー!! いそげー!!」

「こっちだな!」

ボン太くん「ふもっ!?」

ボン太くん(奴らめ、どうして的確に俺の位置を割り出しているんだ。発信機をつけられたか? いや、それなら簡単に気が付けるはずだ)

「いいか!! 必ず生け捕りにするんだ!!」

ボン太くん(捕まれば待っているのは想像を遥かに超える拷問か。奴らの能力を鑑みれば、恐らく致命傷になるようなものだろう)

ボン太くん(ここにいてはいずれ捕まる。とにかく、移動し、ダナンへ帰還するしかない)

ボン太くん(千鳥たちのことはマオに任せるか。支援できないのは戦略的には痛手だが、マオならば多少のイレギュラーでも十分に処理できるからな)

ボン太くん「ふもっ」プシュー

ボン太くん「ふも? ふもも? ふも?」

ボン太くん(なんだ、何が起きた?)

『損傷過多。システムダウン』

ボン太くん(くっ。この強化服を完全に沈黙させるとは、あいつら、どれほどの腕力なんだ。あの細腕からは想像もできんぞ)

115: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 22:52:50.70 ID:rUagG+O1o
宗介「ここで破棄するしかないか。だが、ここに捨て置くのも……」

宗介「うっ……つっ……」

宗介(やはりあの離脱時に足の筋を痛めたか。これでは行動範囲も制限されてしまう)

宗介「まいった」

芳佳「こっちもみてみまーす」ガサガサ

リーネ「芳佳ちゃん、一人だと危ないよぉ」

宗介「む……」

芳佳「え……」

宗介「見つかったか。仕方ない」チャカ

芳佳「わぁ!?」

リーネ(即座に拳銃を向けるなんて……。軍の人かな?」

宗介(この二人は先ほど見かけたな)

芳佳「えっと、ここでなにを……。あー!! リーネちゃん、あの人の後ろにあの子がいる!!」

リーネ「ホントだ。でも、なんだか萎んじゃってるけど……」

宗介「貴様たちは何者だ。ここで何をしている」

116: SS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 23:12:45.07 ID:rUagG+O1o
芳佳「私たちは後ろの子を探していただけなんですけど……」

宗介「ボン太くんのことか」

芳佳「ぼんたくん? その子の名前ですか?」

宗介「コードネームだがな」

リーネ「シャーリーさんの言う通り、着ぐるみみたい……」

芳佳「えー!?」

宗介「近づくな!」チャカ

芳佳「ごめんなさい!」

リーネ「や、やめてください。私たちは貴方に危害を加えるつもりはありません」

宗介「それを易々と信用するほど、俺は素人ではない」

芳佳「あれ? あの、足を痛めますか?」

宗介「そんなことはない」

芳佳「でも、右足を庇っているように見えるんですけど」

宗介「……」

宗介(隠していたというのに。こいつ、洞察力に優れているようだな)

117: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:10:22.40 ID:ZFvmmgXSo
リーネ「(そうなの? 私には分からなかったけど)」

芳佳「(足を痛めてる人が実家の診療所によく来てたから、自然とわかるようになったの)」

リーネ「(芳佳ちゃんって、やっぱりすごいね)」

芳佳「(すごくなんてないよ。患者さんを見てると誰でも慣れちゃうだけだから)」

宗介(坂本という女も訓練された兵士のようだったが、この少女も決してアマチュアではないということか)

芳佳「あの、怪我をしているなら私が治療しますけど」

宗介「何が狙いだ。強化服に使われている技術の提供か?」

芳佳「強化服ってなんですか?」

宗介「俺の背後にある着ぐるみのことだ」

芳佳「やっぱり、着ぐるみなんですね……」

リーネ「強化服ってどういうことですか?」

宗介「お前たちも目の当たりにしただろう。強化服の能力をな。小型のAS並と思ってくれてもいい」

芳佳「えーえす……?」

リーネ「えーと、ASってなんですか?」

宗介「アーム・スレイブのことだ。分からないのか?」

119: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:17:12.13 ID:ZFvmmgXSo
芳佳「リーネちゃん、知ってる?」

リーネ「知らない」

宗介「そういえば坂本も知らないと言っていたな」

芳佳「坂本って、坂本さんのことですか?」

宗介「坂本美緒と名乗っていたが」

芳佳「坂本さんは私たちの上官です」

リーネ「……」

芳佳「どこで坂本さんにあーむすれいぶっていうぼんたくんを見せたんですか?」

宗介「違う。ボン太くんはAS並の能力を持つ強化服だ」

芳佳「よくわかりません……」

リーネ(もしかして、この人……)

芳佳「そんなことより、足を見せてください」

宗介「見返りはなんだ? 技術提供に応じる気はないぞ。金銭の要求なら多少は――」

芳佳「そんなのいりません。とにかく足を診せてください」

宗介「近づくなと言っている」チャカ

120: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:29:55.98 ID:ZFvmmgXSo
芳佳「……」

宗介「この程度の怪我など何度も負ってきた。お前に治療されずとも自力でなんとでもなる」

芳佳「そうはいきません」

宗介「なんだと?」

芳佳「銃をつきつけたって、私は貴方を治療します」

宗介「必要ないと言っている」

芳佳「必要あります」

宗介「意味がわからん」

芳佳「怪我をしている人を放ってなんておけません」

宗介「これが目に入っていないのか。俺はお前に敵意を向けているんだぞ。そんな相手に対して治療を行うというのか」

芳佳「怪我をした人に善人も悪人もありません」

宗介「……」

芳佳「私はそうお母さんに教えてもらいました。だから、貴方を治療します」

リーネ「芳佳ちゃん……」

宗介「MSFに似たような奴がいたな。銃を突きつけられても怯むことなく医療に従事していた。だが、そういう奴ほど早死にする」

121: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:40:20.90 ID:ZFvmmgXSo
芳佳「どうしてですか?」

宗介「全員がその真摯な姿に心を打たれ、改心することなどないからだ。中にはそれを嫌う者もいる」

芳佳「貴方は嫌なんですか?」

宗介「見知らぬ相手に恩を売られるのは好きではない。後に何を請求されるかわからんからな」

芳佳「違います! 私に治療されるのが嫌なのかどうなのかを聞いているんです!」

宗介「だから、よくわからん奴に貸しなど作りたくないと言っている」

芳佳「だから!! その足を治療したくないのかどうかを聞いているんです!!」

宗介「何度言えばわかる! お前の治療などいらん!!」

芳佳「もー!! その右足、痛くないんですか!?」

宗介「痛みはある!!」

芳佳「その痛みは早く引いたほうがいいと思いませんか!?」

宗介「怪我は早期治療が肝要だ。それぐらい常識だろう」

芳佳「よし!! 治療します!!」

宗介「なぜ、そうなるんだ!!」

芳佳「じっとしてて!!」ピコンッ

122: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:47:23.02 ID:ZFvmmgXSo
宗介「お前、なんだその耳は?」

芳佳「使い魔の耳ですけど」

宗介「使い魔……?」

芳佳「ふっ……」パァァ

宗介「痛みが引いていく……」

芳佳「どうですか?」

宗介「信じられんが、治ったようだ」

芳佳「よかったぁ」

宗介「この力はなんだ? ラムダ・ドライバにはこういった使い方もあるのか?」

芳佳「え? らむだどらいば?」

宗介「それも知らないのか?」

芳佳「知りません。リーネちゃんは?」

リーネ「さぁ……。シャーリーさんなら知ってるかもしれないけど」

芳佳「そうだね。シャーリーさん、よく機械とかいじってるし、工具には詳しそうだよね」

宗介「そのシャーリーという人物は機械工学に詳しい人物なのか」

123: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:53:47.29 ID:ZFvmmgXSo
芳佳「ストライカーユニットとか特に詳しいです!」

宗介「ストライカーユニット……」

宗介(千鳥が言ってたものだな。確か飛行脚のことだったはず。この女、例の研究にもかかわっているのか。ならばラムダ・ドライバのことも知っていておかしくないが……)

芳佳「プラス・ドライバーの親戚かな?」

リーネ「そもそも工具なのかな?」

宗介「ラムダ・ドライバのことは忘れてくれ」

芳佳「でも、気になります!」

宗介「知らんのならいい。それで今の力はなんだ? 説明できるか?」

芳佳「説明って、今のは私の魔法なんですけど……」

宗介「魔法だと?」

芳佳「はい」

宗介「俺をバカにしているのか。この世に魔法など存在しない」

芳佳「え……」

宗介「なんだ、その顔は?」

芳佳「いえ、魔法はありますけど……」

124: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 23:00:37.88 ID:ZFvmmgXSo
宗介「いい加減にしてくれ。魔法などありえん」

芳佳「ウィッチならみんな魔法を使っているんですけど……」

宗介「おかしな漫画の読みすぎではないのか」

芳佳「えぇ……」

リーネ「あの」

宗介「なんだ?」

リーネ「ネウロイのことは知っていますか?」

宗介「ねうろい? なんだ、それは?」

芳佳「ネウロイを知らないんですか!?」

宗介「知らん。何かの兵器か?」

リーネ「貴方はあの潜水艦の乗員ですね」

芳佳「え……!?」

宗介「……」

リーネ「どうなのですか?」

宗介「どうやら今の質問で確信したようだな。確かに俺はあの潜水艦、ダナンの乗員でありテスタロッサ大佐の部下だ」

125: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 23:09:29.89 ID:ZFvmmgXSo
芳佳「だったら、あのぼんたくんで攻撃してきたのって……」

宗介「君たちと交戦する気はなかった。だが、褐色肌の少女が拘束しようとしてきたため、自衛行動をとった」

リーネ「ルッキーニちゃんのことみたいだね」

宗介「俺は大佐殿の身を案じただけだ」

芳佳「それならそう言ってくれたらよかったのに」

宗介「男では施設内に入れないと言われたのだ」

芳佳「そうなの?」

リーネ「ミーナ中佐はウィッチである私たちが男性職員と個人的に接触することを禁止してるからかな?」

芳佳「そうだったんだ」

宗介「坂本も似たようなことを言っていたな」

リーネ「潜水艦の乗員なら、大変なことになりますね」

宗介「そうだな。君たちに見つかったのは明らかな失策だ」

リーネ「もしバルクホルンさんに見つかったら、どうなるか……」

芳佳「それにサーニャちゃんとエイラさんはがっかりするよね。ぼんたくんが着ぐるみだったって知ったら」

リーネ「それはきっとシャーリーさん以外そうだと思う……」

126: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 23:32:17.72 ID:ZFvmmgXSo
宗介「覚悟はある。好きにしろ」

芳佳「そんなこと言われても」

宗介「こうなってしまった以上、俺がここで抵抗すれば千鳥と大佐殿がどうなるかわからないからな」

「宮藤! リーネ! どこにいるんだ!!」

芳佳「あ、バルクホルンさんの声……」

宗介「あの一際怪力の女か。ここまでのようだな」

リーネ「あの、ここは誤魔化しておくので、早く潜水艦へ戻ってください。ぼんたくんと一緒に」

宗介「敵兵を見逃すというのか」

芳佳「別に貴方は敵じゃないですよぉ」

宗介「交戦し、君には銃口すら向けた」

芳佳「だからって貴方が敵ってわけじゃないです」

リーネ「とにかく逃げてください。ぼんたくんの中に人がいたことは私たちの秘密にします」

宗介「何故、そうまでする?」

芳佳「ぼんたくんの秘密を広めても誰も幸せになりませんから」

宗介「……礼を言う」

127: SS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 23:42:43.87 ID:ZFvmmgXSo
バルクホルン「宮藤!!」

芳佳「バ、バルクホルンさん」

バルクホルン「怪生物は発見できたか?」

リーネ「い、いえ。ここにはいませんでした」

バルクホルン「おかしいな。サーニャも反応がなくなったと言っている」

シャーリー「おーい、そろそろ戻らないか? あんまり離れるとまずいだろ」

バルクホルン「分かっている。捜索は打ち切る。全員、基地まで戻るぞ」

ルッキーニ「えー!? さがしたーい!!」

エーリカ「さがしたいよねー」

サーニャ「はい……」

エイラ「この辺にいるはずなのになぁ」

芳佳「あはは……」

リーネ「も、戻りましょう! この間にネウロイの襲撃があれば一大事ですから!!」

バルクホルン「リーネの言う通りだ。怪生物の捜索は後日行う」

シャーリー「諦めたわけじゃないのか」

128: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 21:28:33.63 ID:QFJvfl9fo
滑走路

サーニャ「でも、どうして反応が突然消えたんだろう」

エイラ「サーニャの索敵範囲から逃れるなんてありえないはずなんだけどなぁ」

バルクホルン「いつか必ず捕縛し、剥製にしてくれる」

ルッキーニ「もう一回、ぎゅってしたーい」

シャーリー「着ぐるみだとおもうんだけどなぁ」

美緒「お前たち、何をしているんだ」

ミーナ「各人、任務はどうしたの?」

バルクホルン「それどころではなかったんだ!」

美緒「何かあったのか?」

ルッキーニ「こーんなにおっきなネズミがでたんだよー」

エーリカ「あれは熊だろー」

バルクホルン「熊でもネズミでもない。あれは怪生物だ。巧みに銃器を操り、剰え宮藤を負傷させた」

かなめ「それって……」

バルクホルン「何か知っているのか?」

129: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 21:36:11.46 ID:QFJvfl9fo
かなめ「い、いやいや!! 全然知りません!!」

マオ(ソースケかな)

テッサ(もー、相良さんったら)

バルクホルン「そうか……」

美緒「ん? 宮藤も一緒だったか」

芳佳「はい! でも、私は何も知りません!」

リーネ「よ、芳佳ちゃん!」

美緒「何を言っている?」

テッサ「宮藤……?」

ミーナ「彼女は宮藤芳佳軍曹。お察しの通り、宮藤博士のご息女よ」

テッサ「まさか会わせてやるって……」

美緒「はっはっはっは。そこまで意地は悪くないつもりだ。……宮藤、少し付き合ってくれ」

芳佳「え? は、はい」

美緒「すまんな」

かなめ(こっちの軍曹はすごく可愛い。いいなぁ)

130: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 21:47:59.12 ID:QFJvfl9fo
デ・ダナン 格納庫

宗介「結論から言えば、失敗だ」

クルツ「だろうな。あんなもんで潜入するやつなんて天才か大馬鹿野郎のどっちかだぜ」

宗介「勝算はあった」

クルツ「どこのスパコンがそんな結果を弾きだしたんだよ!!」

宗介「計算外だったのは奴らがおかしな力を使うことだ」

クルツ「おかしな力だと?」

宗介「見たときはラムダ・ドライバかとも思ったが、どうやらそれは違うようだった」

アル『そもそもラムダ・ドライバはASでしか能力を発揮できません』

宗介「なに? 本当か?」

アル『肯定。ASにのみ搭載できるシステムです』

クルツ「だとさ」

宗介「ふむ……。では、あいつらの言っていたことは本当なのかもしれん」

クルツ「何を言っていたんだ?」

宗介「魔法だと言っていた」

131: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 22:12:52.26 ID:QFJvfl9fo
クルツ「魔法だとぉ? ソースケ、お前自身が否定してたものじゃねえか」

宗介「足の負傷を瞬時に治したという現実がなければ、俺も信じはしなかった」

クルツ「向こうに助けられたのか」

宗介「肯定だ。不審人物の傷を診ただけでなく、退却の手助けまでした。愚かな連中だ。軍人らしいが、とてもそうは思えん」

クルツ「普通は捕まえるよなぁ」

宗介「ああ。俺ならば目的を吐かせるためにあらゆる苦痛を与えるところだ」

クルツ「なのにその子は慈愛に満ちていたと。くぅ~、モーレツに興味がわいてきたぜ。女しかいないとか俺にとっては楽園でしかねえ!」

宗介「楽園か。クルツ、お前が考えているほど、現実は甘くないぞ」

クルツ「どういうこった?」

宗介「奴らの力ははっきり言って異常だ。理解の範疇を大幅に超えている」

クルツ「んなの関係ねえよ。女は綺麗かどうかだ」

宗介「あと、揃いも揃って服装がおかしい。狂的と言っても過言ではない」

クルツ「確かにあの眼帯の女もそれなに変だったが、周りが海ってことを考えればある意味水着は自然だったろ」

宗介「水兵の服に水着はまだいい。しかしそれ以外の者は制服らしきものを着用していたが、その下は下着のみだったんだぞ。相手は痴女だ。それでもいいのか?」

クルツ「マジか……マジかよ……ここは天国だったのか……」

133: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 22:25:41.72 ID:QFJvfl9fo


芳佳「坂本さん、どうしてここに?」

美緒「色々あってな」

芳佳「そうですか。でも、ちょうどよかったです。今日のあったこと、お父さんに報告したかったので」

テッサ「ここにいらっしゃるのですか?」

ミーナ「ええ。あそこよ」

マオ「あそこって……」

かなめ「お墓じゃない……」

テッサ「まさか……!」

美緒「宮藤一郎は、既にこの世にいない」

テッサ「そう……だったのですか……」

美緒「会わせてやりたい。いや、できることなら私とてもう一度、会いたい」

テッサ「……」

美緒(一番会いたがっているのは……)

芳佳「お父さん、今日ね、とっても不思議なことがあったんだー」

134: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 22:39:00.32 ID:QFJvfl9fo
マオ「悪人ね、坂本少佐。わざわざ宮藤軍曹の健気で不憫な姿をあたしたちに見せて、これ以上の追及をさせないようにするなんてさ」

美緒「……」

テッサ「効果的ではありますね。人道的かどうかはさておき」

かなめ「ちょっと待って。坂本さんがここまでするのは、きっとこの話はデリケートなことだからみだりにするなっていうことでしょ」

美緒「千鳥だったか」

かなめ「はい」

美緒「助け舟を出してくれたことには感謝するが、テスタロッサ大佐が言ったことに間違いはない。宮藤を利用し、逃れようとしたのも事実だ」

ミーナ「美緒……」

美緒「501、いや、ウィッチたちにとって宮藤博士は大きな存在だ。お前たちが宮藤博士のことを嗅ぎまわれば、いつかは宮藤芳佳に行きついたことだろう」

テッサ「そのとき、宮藤芳佳軍曹が傷ついてしまうかもしれない。だから、もう何も調べるな、というわけですか」

美緒「これは警告でもある。あまり好き勝手にはしてくれるな」

テッサ「見られて困るもの、あったんですね」

美緒「困りはしない。釘を打つだけで済むからな」

テッサ(どうやら釘だけでなく先手も打たれてしまいましたね。坂本少佐は私たちの人間性を見ている。ここでもし宮藤芳佳軍曹を傷つけてしまえば、最悪戦闘になり兼ねませんね)

美緒(そんなこと望んではいないだろう。お互いな。信じているぞ、テスタロッサ大佐)

135: SS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 22:45:52.49 ID:QFJvfl9fo
マオ「宮藤一郎はこの世にいない。故に、この話はおしまいってわけね」

美緒「そういうことになる」

芳佳「すみませーん。おまたせしましたー」

ミーナ「もういいの?」

芳佳「はい! ありがとうございます!」

テッサ「……」

芳佳「あの、私になにか……?」

テッサ「いえ。なんでもないわ。ごめんなさい」

芳佳「は、はぁ……」

美緒「では、戻るか」

ミーナ「そうね。貴方たちはどうするの?」

テッサ「一度、ダナンへ戻ります。知り得た情報の整理もしたいですから」

美緒「そのあとは?」

テッサ「どうしましょう? うふふふ」

かなめ(嫌な予感しかしない……。今後、どうなるんだろう……)

136: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:17:48.82 ID:LM+R7dv4o
501基地 ブリーフィングルーム

ミーナ「みなさん、揃っているかしら?」

エイラ「サーニャとルッキーニはいないぞ」

美緒「サーニャは夜間哨戒の時間だからいいとして、ルッキーニはどうした? 全員に招集をかけたはずだが」

シャーリー「どこかの木の上で寝てるんじゃないですか?」

美緒「まったく……。毎回のこととは言え……」

バルクホルン「しっかり監督しろ」

シャーリー「そんなのあいつが一番嫌うことだろ」

ミーナ「はいはい。静粛に。それではブリーフィングを始めます」

美緒「話すことは無論、あの潜水艦のことだ」

バルクホルン「何者なのかわかったのか」

美緒「お前たちが納得できるかどうかはさておき、奴らがどういった者たちなのか説明する」

エーリカ「どういう意味?」

美緒「奴らは我々の知らない世界からやってきた」

シャーリー「は……?」

138: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:28:56.80 ID:LM+R7dv4o
エイラ「意味がわからない」

美緒「分からなくてもいい。奴らの言っていることが真実かどうかもはっきりしないからな」

ペリーヌ「あの方々がネウロイのことを知らないという点だけは荒唐無稽な説明を信じろなんて無理な話ですわ」

ミーナ「実はいうとそれ以外にもあります」

エーリカ「あのはっやーい潜水艦のこと?」

美緒「その中で見た人型の機械兵器もだ。テスタロッサ大佐はその兵器をアーム・スレイブと呼んでいた」

シャーリー「なんだそれ。すっげーみてぇ!」

エイラ「少佐が見たっていうその兵器は、現代のどっかの国で造られたものには見えたのか?」

美緒「あれほどの科学力が現代にあるとは思えんのも確かだ」

バルクホルン「人型と言ったな。それは対ネウロイ用に開発されたものなのか」

美緒「対陸戦型ネウロイに特化させているのならば可能性はある」

シャーリー「でも、それを搭載してるのは潜水艦だ。ネウロイがまず出てこない海中でそんなもの持ってても意味ないんじゃないか?」

バルクホルン「そうだな……」

リーネ「(あの人、魔法も知らなかったよね?)」

芳佳「(うん。多分だけど、別の世界からきたっていうのは本当じゃないかな)」

139: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:46:37.66 ID:LM+R7dv4o
デ・ダナン 艦長室

テッサ「――以上が私が知り得た全てです。今のところは、ですけど」

カリーニン「大佐殿の予想通りでしたな」

テッサ「予想外のこともありましたけど」

マデューカス「この件についてはまだ口外するな」

マオ「中佐。中には感づいている者も出始めています。情報の開示は早急にしたほうがいいと思いますが」

マデューカス「それでは艦内が混乱する。分からんわけではないだろう」

マオ「ですが……」

テッサ「メリッサが信頼のおける人だけに留めるなら問題ありません」

マデューカス「艦長。無闇に広言しては秩序が乱れてしまいかねませんぞ」

テッサ「現状でも既に混乱の波紋は広がっています。時間の問題です」

カリーニン「魔法やストライカーユニットの存在はすぐには理解できないでしょうが、今が1944年であることは周囲の環境を見れば理解もできるでしょう」

テッサ「文明に差がありますからね」

マデューカス「我々の世界では丁度、第二次大戦中ですな」

テッサ「いいえ、この世界でも第二次大戦中ですよ。世界大戦にはなっていないようですけどね」

140: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 22:09:50.71 ID:LM+R7dv4o
宗介の部屋

クルツ「そのネウロイってやつと、あの坂本率いる美少女軍団は戦ってるってわけか」

かなめ「簡単に言えばそういうことになるんだと思う」

宗介「ネウロイという侵略者との戦いをこの世界では第二次大戦と言っているのか」

かなめ「1904年に扶桑海で大規模な怪異が発生するまで歴史に相違はなかった」

宗介「1904年といえば日露戦争だな」

かなめ「ネウロイの出現で歴史は変わった。いいえ、時間災害が起こったのよ」

クルツ「かなめ、そりゃあどういう意味だ?」

かなめ「世界大戦に発展しなかったのは、ネウロイの出現により人間同士で争っているわけにはいかなくなったってことよ」

クルツ「い、いや、俺が聞きたいのは時間災害ってことのほうなんだけどよ」

宗介「理由はわからんが、歴史が変わった瞬間という意味ではないのか」

クルツ「そういうことなのか? だったら、そのとき歴史は動いたって言ってくれ」

かなめ「あ、ごめんごめん。急にその単語が浮かんじゃって」

宗介「しかし、千鳥。この話は俺たちにしていいのか? 機密事項に匹敵する情報ではないのか?」

かなめ「テッサの許可は出てるわよ。それにソースケ、あんたはもう501の人たちとトラブルを起こしてるわよねぇ?」

141: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 22:19:54.04 ID:LM+R7dv4o
宗介「な、なんのことだ」

かなめ「ボン太くんで暴れたことはわかってるんだから、しらばっくれないで!」

宗介「う、うむ。すまない」

クルツ「まーた、おこられてんやの」

かなめ「クルツくんもソースケの暴走を止めてよね!!」

クルツ「お、おう」

かなめ「ホントに、うちの軍曹共は可愛げがないんだから」

宗介「誰と比べている」

かなめ「あんたも見たでしょ? セーラー服きて、中に水着を着てる女の子よ。宮藤芳佳ちゃん。階級はあんたと同じ軍曹」

宗介「あの少女が軍曹だと? どれほど優秀なんだ」

かなめ「ウィッチって時点であんたよりは優秀でしょ」

宗介「魔法というアドバンテージは大きいかもしれないが、それでも強化服を着用すれば勝てない相手ではない」

かなめ「勝とうとするな」

クルツ「んじゃ、俺はそろそろ部屋に戻るぜ。色々ありがとよ、かなめ」

かなめ「うん。また明日ね」

142: SS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 22:56:56.24 ID:LM+R7dv4o
艦長室

カリーニン「それと宮藤一郎氏のことですが」

テッサ「分かっています。名前は違いますが私たちが血眼で探していた保護対象者でしょうね」

カリーニン「我々が追っていたのは16歳の少年です。年齢に大きな差異がありますが」

テッサ「ある程度の予想はつきます。だけど、どれも仮説の域をでることはできませんね」

カリーニン「仕方のないことかと」

テッサ「この閉塞感から抜け出すためには宮藤一郎さんに話を聞くしかないのだけど、現状ではそれはできない」

カリーニン「残された手段としては彼の娘である宮藤芳佳から聞き出すしかないかと」

テッサ「それをすれば手詰まりになるかもしれません。この状況で501の皆さんに嫌われたくはないもの」

カリーニン「難儀なことですな」

テッサ「ええ。どうしたらいいでしょう」

カリーニン「皆目見当もつきません」

テッサ「私もです」

カデューカス「これからの指針はいかほどに」

テッサ「そうですね……。やれることは全てしておきましょうか」

143: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:06:13.60 ID:iSl8zvYgo
501基地 宮藤の部屋

芳佳「あの潜水艦、いつまでいるんだろう」

リーネ「ブリーフィングでは――」


美緒『ともかく、奴らのことで話せるのはここまでだ。潜水艦はしばらく停泊することになるかもしれんが、お前たちから奴らと接触することは禁じる。いいな』


芳佳「怪しい人たちだから、坂本さんはあんなこと言ったのかな?」

リーネ「そうだと思うよ」

芳佳「でも、ぼんたくんに入っていた人はそこまで悪い人には見えなかったけど……」

リーネ「銃を向けてきたのも、訓練を受けた軍人ならあり得ないわけじゃないもんね」

芳佳「ううん、そういうことじゃなくて、銃を向けただけで撃つ気がなかったというか」

エイラ『宮藤、いるか?』

芳佳「はい、なんですか?」

エイラ『非常招集。急げよ』

芳佳「ネウロイですか」

エイラ『それ以外に何があるんだ。いや、今は別のものもあるな。でも、今回はネウロイだ』

144: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:19:10.01 ID:iSl8zvYgo
格納庫

ミーナ「たった今、サーニャさんから通信がありました。三体のネウロイを確認。それも高速でこちらに向かってきているわ」

シャーリー「この前の奴か?」

バルクホルン「だとすれば厄介だ。あの速度に追いつけるのは現状でシャーリーのみ。振り切られたら終わりだ」

エーリカ「待ち伏せしかないね」

美緒「間もなくサーニャが一体と交戦する。エイラ、この地図に書かれているポイントCへ先行し、サーニャと合流。ただちにネウロイを落とせ」

エイラ「了解。待ってろ、サーニャ。今いくぞ」

ミーナ「坂本少佐、イェーガー大尉、クロステルマン中尉、宮藤軍曹はポイントAへ。バルクホルン大尉、ハルトマン中尉、ビショップ軍曹は私とポイントBへ向かいます」

バルクホルン「了解」

シャーリー「ルッキーニはどうしたんですか?」

ミーナ「ルッキーニ少尉は既に動いています」

シャーリー「え……?」

美緒「ミーナ、どういうことだ?」

ミーナ「あとで話すわ。今はネウロイの殲滅を優先しましょう」

芳佳「了解!! 発進します!!」

145: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:24:46.60 ID:iSl8zvYgo
上空 ポイントC

サーニャ「来る……」

ネウロイ「……」ゴォォォ

サーニャ「ここで止めなきゃ」

ネウロイ「……」ピカッ!!!

サーニャ「くっ……!」

エイラ「サーニャー!!!」

サーニャ「エイラ!」

エイラ「右旋回!! 回り込む!!」

サーニャ「了解!」

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

サーニャ「速い……! 追いつけなくなる……」

エイラ「サーニャ、この方角にフリーガーハマー発射だ」

サーニャ「どうして?」

エイラ「この方向に撃てば、6秒後にネウロイに直撃するんだな」

146: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:30:00.75 ID:iSl8zvYgo
上空 ポイントA

エイラ『ネウロイ、撃墜完了』

美緒「よくやった、エイラ。ではエイラはこちらに、サーニャはミーナ中佐の位置を魔法で確認し、援護に入れ」

サーニャ『了解』

芳佳「流石、エイラさん!!」

エイラ『もっと言ってくれ』

ペリーヌ「ふざけている場合ですの!?」

シャーリー「お出ましだ。ペリーヌ、大口開けてると、舌噛むぞ」

ペリーヌ「ふん。そんな素人臭いことわたくしがするとでも?」

ネウロイ「……」ゴォォォ

美緒「シャーリー!! 頭を押さえろ!!!」

シャーリー「了解!! ペリーヌ!! 援護してくれ!!」

ペリーヌ「わたくしは少佐とロッテが組みたかったのに!」

美緒「宮藤! 私についてこい!!」

芳佳「はい!!」

147: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:37:28.16 ID:iSl8zvYgo
ネウロイ「……」ピカッ!!

芳佳「でやぁぁ!!」ギィィィン

美緒「宮藤が防いだ!! 今だ!!」

シャーリー「くらえ!!」ズガガガ

ペリーヌ「ふっ!!」ズガガガ

ネウロイ「……」ゴォォォ

シャーリー「動きが鈍ったぞ!」

ペリーヌ「少佐!」

美緒「はぁぁぁぁ!!!」ザンッ!!!

パリィィィン……!!

美緒「ふぅ……」

ペリーヌ「しょうさー! すてきで――」

芳佳「わーい、坂本さん、かっこいいー」ギュゥゥ

美緒「はっはっはっは」

ペリーヌ「ぐぬぬ……!! おのれ、豆狸……!! 坂本少佐に気安く抱きつくなんて……!!」

148: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:46:25.13 ID:iSl8zvYgo
シャーリー「あとはミーナ中佐のところだけか」

美緒「カールスラントの三英雄とブリタニアが誇る期待の新人がいるのだ。何も心配はいらんだろう」

シャーリー「サーニャも向かってますしね」

美緒「エイラ、応答しろ」

エイラ『なんだー?』

美緒「お前も中佐のところへ向かえ」

エイラ『もう向かってる』

美緒「重畳。我々も移動するぞ」

ペリーヌ「はい!」

芳佳「リーネちゃんの援護しなきゃ」

美緒「とはいえ、ミーナたちのことだ。既に終わらせていることだろう」

シャーリー(最近、ホントにネウロイが多いな。変なことの前触れじゃなきゃいいけど)

美緒「ミーナ、今からそちらに行く。援護は必要か?」

美緒「……ミーナ? 応答しろ。ミーナ、聞こえないのか?」

芳佳「どうしたんだろう……」

149: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 12:52:51.36 ID:iSl8zvYgo
上空 ポイントB

ネウロイ「……」ゴォォォ

ミーナ「坂本少佐、応答を!!」

バルクホルン「ハルトマン!! ネウロイが旋回する!!」

エーリカ「みりゃ、わかるって!」

ミーナ「くっ。無線が通じないなんて」

リーネ「坂本少佐たちに何かあったんでしょうか」

ミーナ「いえ、サーニャさんとも連絡をとることができないわ。異常が起こっているのは私たちのほうかもしれない」

リーネ「異常って……」

バルクホルン「ミーナ!! このままではネウロイに振り切られる!!」

エーリカ「ダメだ!! 追いつけない!! シャーリーは!?」

ミーナ「交信ができないのよ!! 私たちでなんとかするしかないわ!!」

バルクホルン「ならば二手に分かれるぞ!! 私とハルトマンでネウロイを追いかけ進路を誘導する!!」

ミーナ「私とリーネさんで進路の先へ行けばいいのね。わかったわ」

バルクホルン「頼むぞ、ミーナ」

150: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 13:11:31.02 ID:iSl8zvYgo
ミーナ「急いで、リーネさん。大尉たちが誘導してくれても私たちが間に合わなければ意味がないわ」

リーネ「は、はい」

ミーナ「大丈夫。貴女ならできるわ。以前も似たような状況で成功させたのだから」

リーネ「あれは……」

リーネ(確かにできたけど、それ以降、私はまともな成果を出せていない……。きっとあれは……偶然……)

ミーナ「もうすぐ、来るわね」

リーネ(だから、ここで成功させなきゃ。たくさん訓練した意味をここで……!!)

ミーナ「――リーネさん!」

リーネ「はい」

ネウロイ「……」ゴォォォ

リーネ(できる……私なら……できる……)

リーネ「当たって!」ドォン!!

ネウロイ「……」ピカッ!!!

リーネ「あ――」


ドォォン!

151: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 13:23:55.43 ID:iSl8zvYgo
バルクホルン「あの爆発は……!」

エーリカ「しまった!! 先行くよ!!」

バルクホルン「待て!! ハルトマン!!」

ミーナ「リーネさん!! リーネさん!!」

リーネ「あ……」

リーネ(落ちる……やっぱり……わたしじゃ……)

ネウロイ「……」

リーネ(狙われてる……? 私……芳佳ちゃん……)

ネウロイ「……」ピカッ!!

ドォォォン!!

リーネ「え……?」

バルクホルン「今のはなんだ!?」

エーリカ「変な方向から援護射撃がきたなぁ、っと!!」ガシッ

リーネ「あ……ハルトマンさん……」

エーリカ「私の目の前で墜ちるなんて絶対に許さないぞ」

152: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 13:27:40.50 ID:iSl8zvYgo
ネウロイ「……」ゴォォォ

ミーナ「トゥルーデ!!」

バルクホルン「今が好機だ!! やるぞ、ミーナ!!!」

ミーナ「任せて!!」

バルクホルン「砕けろ!!」

パリィィィン……

リーネ「ネウロイが……」

エーリカ「さっすが、ミーナとトゥルーデだ」

リーネ「そうですね」

エーリカ「で、リーネ、何か私にいうことがあるんじゃない?」

リーネ「え? あ、ご、ごめんなさい……ご迷惑を……」

エーリカ「違うね。それじゃあ、許さない」

リーネ「え、あ……えと……あ、ありがとうございました……?」

エーリカ「せいかいっ。怪我はない?」

リーネ「はい、大丈夫です。ユニットの損傷が激しいですけど……」

153: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 13:33:25.09 ID:iSl8zvYgo
バルクホルン「リーネ、無事か?」

リーネ「はい。なんとか」

エーリカ「まだまだだね、リーネ。世話が焼けるよ」

リーネ「……」

ミーナ「リーネさん……」

美緒『ミーナ!! 応答してくれ!!』

ミーナ「こちら、ミーナ。ネウロイは殲滅したわ。ただ、リーネさんが……」

芳佳『リーネちゃんがどうかしたんですか!?』

バルクホルン「落ち着け、宮藤。リーネは無事だ。ただネウロイの光線によってユニットが損傷した」

芳佳『はぁ……よかったぁ……』

リーネ「ごめんね、芳佳ちゃん」

芳佳『ううん!! リーネちゃんが無事ならそれでいいから!!』

リーネ「ごめんね……」

バルクホルン「先ほどの援護射撃、基地の方角からだったな」

ミーナ「……応答して、ルッキーニさん」

154: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 13:41:14.93 ID:iSl8zvYgo
501基地 滑走路

ルッキーニ「あい」

ミーナ『何かあったかしら?』

ルッキーニ「なんかねー、潜水艦にね、おっきな鉄の人形がいきなりでてきて、そこからバーンって空に向かって撃ったよ」

ミーナ『彼女たちの人型兵器ね』

シャーリー『ルッキーニ、どこにいたんだ』

ルッキーニ「基地をまもってたんだよー。中佐がみんな出払ったら危ないっていって」

美緒『そういうことか。ミーナ、ルッキーニに監視をやらせていたな』

ミーナ『彼女たちを信じることはできないもの。せめてもの保険は必要でしょう』

バルクホルン『だからって、ルッキーニ少尉を残すか』

エーリカ『いいんじゃない? ルッキーニなら一人で三人分ぐらいの働きするし』

ルッキーニ「にゃはっ」

美緒『それはそうとテスタロッサ大佐が我々の助太刀をしてくれたことになるな』

ミーナ『だからって、まだ味方とは断定できないわよ』

美緒『承知している。しかし、礼はしたほうがいい』

155: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 15:36:36.87 ID:iSl8zvYgo
デ・ダナン 宗介の部屋

かなめ「……」

宗介「どうした、千鳥?」

かなめ「え? べ、別になんでもないわよ。うは、うははは」

宗介「そうか」

かなめ(なんでちょっと緊張しているのかしら。ソースケと二人きりになったって、何が起こるわけでもないことは分かってるのに)

宗介「千鳥、すまないな」

かなめ「な、なによ、急に」

宗介「また君を危険な目に遭わせてしまっている」

かなめ「そのこと。いいわよ。なんとなくこうなる気もしてたし」

宗介「だが、千鳥のことは俺が守る。安心してくれ」

かなめ「ソースケ……」

宗介「千鳥……」

ドォォォン!!

かなめ「きゃぁ!? なんの音!?」

156: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 15:46:56.00 ID:iSl8zvYgo
M9内

クルツ「やっべぇ。思わず手が出ちまったぜ」

マデューカス『そこで何をしている、ウェーバー軍曹!!』

クルツ「いやぁ、バードウォッチングをしてたんスよ」

マデューカス『この真夜中に鳥など見えるのかね』

クルツ「俺の目は梟ばりッスからね」

マデューカス『ふざけるなぁ!!!』

クルツ「おっと! 通信装置に不具合が発生した模様!! 中佐! また後ほど!!」

マデューカス『待ちたまえ! ウェーバーぐんそ――』

クルツ「ふぃー。桃源郷を拝んでたら、まさか魔女たちの戦闘をこの目で見ちまうことになるとはな」

クルツ(かなめから話は聞いていたとはいえ、実際に目にすると結構ショックだな)

クルツ(ここは俺の知ってる世界じゃねえなぁ)

マオ『こーら、クルツぅ。ASを勝手に動かしてなにしてるの』

クルツ「姐さん、俺はこの世界を好きになれるかもしれねえ」

マオ『はいはい。何をウォッチングしてたかは想像できるね。はやく戻ってこい!! この軽薄ナンパ野郎!!!』

157: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 15:54:11.75 ID:iSl8zvYgo
クルツ「へいへい。戻りますよっと」

コンコン

クルツ「なんだぁ?」

『おー。にゃんだ、これー』

クルツ「この子は……?」

ルッキーニ『シャーリーが見たらよろこびそー』

クルツ「パンツ丸出しってことはこの子もウィッチか」

ルッキーニ『とー!!』

クルツ「な……!? ASに飛びつきやがった……!?」

ルッキーニ『誰かはいってるのー?』コンコン

クルツ「5年後なら相手してやったけど、こりゃ流石に犯罪だな」

ルッキーニ『おーい』

クルツ「どうする。振り落すのは簡単だが」

ルッキーニ『ルッキーニパンチ!!!』ガンッ!!!

ルッキーニ『あにゃー!! いたいぃ……』

158: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 16:02:59.37 ID:iSl8zvYgo
デ・ダナン 格納庫

M9『ただいま戻りましたぁ』

マオ「クルツ!! おりて――」

ルッキーニ「すごいすごい!! うごいてるー!! にゃはははは!!」

マオ「えぇ!? こらぁ!! クルツ!! ASの肩になにのせてんだい!!」

M9『レディーを振り落とすなんてマネ、俺にできるわけねえだろ?』

マオ「どこで取りつかれた?」

M9『甲板で。どうやら、ずっとうちらのことを監視してたみたいだ』

マオ「なるほどね」

マオ(まぁ、当然の対応よね)

ルッキーニ「たかーい!」

マオ「ええと、ルッキーニ少尉だったね?」

ルッキーニ「そうだけどー?」

マオ「降りてきな。そこは危ないよ」

ルッキーニ「だいじょーぶ。へーき、へーき」

159: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 16:09:57.94 ID:iSl8zvYgo
M9『そういうわけにもいかねえんだ。勝手に降ろさせてもらうぜ』グイッ

ルッキーニ「おぉぉ」

マオ「オーライ、オーライ。そのままゆっくりおろしてー」

ルッキーニ「うにゃ」

マオ「どう? 巨大兵器に首根っこをを掴まれた気分は? 生きた心地がしなかったでしょ」

ルッキーニ「もういっかいやって! もういっかい!!」ピョンピョン

マオ「いや、なんでそうなる」

クルツ「ヘイ、そこの彼女。あまり悪戯が過ぎるとそこのこわーいお姉さんがこわーい罰をあたえちゃうぞぉ」

ルッキーニ「えー……やだぁ……」

マオ「だったら、もう帰って寝な。ミーナ中佐にだって何を言われるか分からないだろ」

ルッキーニ「中佐には何も言われないと思うけど」

マオ「そう……」

クルツ「まぁまぁ、折角来たんだ。ちょっとぐらいゆっくりしていってもいいんじゃねえか?」

マオ「……ロリコン」

クルツ「そうじゃねえよ!! これは善意だよ!!」

160: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 16:19:46.83 ID:iSl8zvYgo
マオ「何が善意だ。あんたの魂胆は見え見えなんだよ。どーせ、この子を利用して501に取り入ろうとかしているでしょ?」

クルツ「なんだそりゃ。名案じゃねえか」

マオ「しまった……支援してしまったか……」

ルッキーニ「なんの話?」

クルツ「なんでもないよ。ええと、名前はルッキーニちゃんでいいのかな?」

ルッキーニ「うんっ」

クルツ「俺の部屋にくるかい? おやつやジュースをご馳走してあげるからさ」

ルッキーニ「おかし!? ジュース!? いいの!?」

クルツ「好きなだけ食べて飲んでいってくれ」

ルッキーニ「やたー! いくいくー!!」

クルツ「こっちだよー」

ルッキーニ「たのしみー」

マオ「……」

クルツ「どうした、マオ?」

マオ「あたしが警官なら絶対に逮捕するわ」

161: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 16:40:30.84 ID:iSl8zvYgo
501基地 滑走路

美緒「リーネ、念のためだ、医務室に行って来い」

リーネ「はい。分かりました」

芳佳「私が付き添います」

美緒「頼んだぞ」

シャーリー「あっれぇ? ルッキーニが見当たらないなぁ」

エーリカ「あの潜水艦の中にいるんじゃない? ルッキーニの言ってた人型兵器も片付いちゃってるみたいだし」

エイラ「もしかしてその兵器にくっついていったんじゃないだろうな、あいつ」

バルクホルン「ルッキーニ少尉ならあり得る」

サーニャ「危険だわ。助けにいかないと」

美緒「ミーナ、ルッキーニ少尉にどのような命令をしたんだ」

ミーナ「潜水艦の監視だけよ。潜入しろなんて言っていないわ」

美緒「また奴の悪い癖が出たか」

ミーナ「行きましょうか」

美緒「先ほどのこともあるからな」

163: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 16:55:01.78 ID:iSl8zvYgo
デ・ダナン 艦長室

マデューカス「先ほどの一件については以上です」

テッサ「そうですか。ウェーバーさんがバードウォッチングをしていたのですか」

マデューカス「ウィッチを見ていたと思いますが」

テッサ「でしょうねぇ。それに加えてルッキーニ少尉まで艦内に連れ込んでしまうなんて」

マデューカス「彼にはミスリルの一員である自覚が欠落しているのです。私が矯正しておきましょうか」

テッサ「けれど、ウェーバーさんが理由もなしにそうした行動をとるとは思えないけど……」

マデューカス「買いかぶりすぎです」

テッサ「うーん……」

カリーニン「大佐殿、よろしいですか」

テッサ「どうぞ」

カリーニン「失礼します。これより数名を連れてここを離れます」

テッサ「分かりました。カリーニンさん、よろしくお願いします」

カリーニン「了解です」

テッサ「さて、と。私は艦長としてお客様に挨拶をしないといけませんね」

165: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 17:15:09.00 ID:iSl8zvYgo
マオの部屋

テッサ「失礼します」

マオ「あら、テッサ。いらっしゃい」

テッサ「ここにルッキーニ少尉がいると――」

ルッキーニ「はむっ……。おぉー、おいしー!! これ食べたことないけど!!」

かなめ「でっしょ。こっちではまだ試作品すらないお菓子だからね」

ルッキーニ「ありがと、かなめー」

かなめ「どういたしまして」

テッサ「ずいぶんと仲良くなってるみたいですね」

かなめ「うん。無邪気でいい子よー」

テッサ「メリッサがここに連れてきたの?」

マオ「クルツの毒牙にかかる前に保護したのよ」

テッサ「それなら納得です」

クルツ「くそぉ……俺はまだ何もしてないだろうが……」

宗介「未然に防ぐのは最大にして最高の効果がある対処法だ」

166: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 17:40:43.47 ID:iSl8zvYgo
ルッキーニ「こっちも食べていい?」

かなめ「どうぞ、どうぞ」

ルッキーニ「にゃはっ! はむっ……はむはむ……」

マオ「ルッキーニって何歳なの?」

ルッキーニ「ふーふぃふぁいふぁふぉ」

かなめ「食べながら喋らないの」

ルッキーニ「ん……。12歳だよ?」

マオ「ふぅーん。随分と若いね」

かなめ「うん。なんていうか……大変ね……」

ルッキーニ「にゃにが?」

宗介「特に珍しくはない。これぐらいの少年兵は紛争地域にいけばいくらでもいる」

クルツ「それを言いだしたらキリがなくなるぜ」

テッサ「501に所属するウィッチは皆さん、若いですよ。平均年齢も15、16歳ぐらいですし」

宗介「豊富な経験を積んでいる司令官もその年齢なのですか」

テッサ「ウィッチの寿命は大体20歳までらしいですので、戦場に立てる人はどうしてもそれぐらいの年齢になってしまうみたいです」

167: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 17:54:17.55 ID:iSl8zvYgo
宗介「一流の兵士になるころには退役になるということか」

マオ「勿体ない話ね」

かなめ「仕方ないもんね。魔法力は衰退していくんだから」

ルッキーニ「そだね」

宗介「経験こそ戦場から帰還するために必要なものなのだが」

マオ「魔法ってのがあるんだから、あたしらの世界の兵士よりかは生存率高そうだけど」

クルツ「そうでもないみたいだぜぇ。さっきの戦闘を見る限りな」

テッサ「それを聞きたかったんです。ウェーバーさん、見たことを報告してくれますか?」

クルツ「おかしな戦闘機っつーか、金属の塊っつーか、そういうのが飛んでたんだ」

宗介「報告は明瞭にしてくれなくては困る」

クルツ「どういえばいいのかわかんねーんだよ。そうだな、ありゃ、例えるなら地対空ミサイルみたいな形だった」

宗介「ならば、ミサイルなのだろう」

クルツ「ミサイルがドッグファイトしてくる世界ってか? 旅客機にのって旅行は絶対にしたくねえな」

宗介「何者かが遠隔操作していたかもしれん」

ルッキーニ「ネウロイはネウロイ。ミサイルじゃないよ」

169: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:10:03.02 ID:iSl8zvYgo
クルツ「あれがかなめの言ってたネウロイか。想像以上に気味がわりぃな」

テッサ「正体不明の侵略者、ネウロイですか」

宗介「人間ではないものと戦うのか」

ルッキーニ「うんっ」

かなめ「怖くないの?」

ルッキーニ「なんで? 人と戦うほうが怖いじゃん」

宗介「……」

マオ「その子の言う通りだね。こっちの言葉が通じない生物と戦うほうが気も楽ってもんさ」

クルツ「んで、そのネウロイは二体以上いたはずだ。ウィッチたちが三部隊に分かれてたからな」

マオ「ネウロイって複数で襲ってくるの?」

ルッキーニ「そういうこともあるかなぁ」

テッサ「ウェーバーさんがM9でボフォースを使用した理由については?」

クルツ「可愛い女の子たちを助けるのに理由がいるかい?」

テッサ「真面目に答えてください」

クルツ「名前はわかんねえけど、対戦車ライフルを持ってる子だった。その子がネウロイに撃たれておちそうになったんだよ」

171: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:20:29.82 ID:iSl8zvYgo
宗介「対戦車ライフルだと? そのようなものを持って前線に出ていたというのか」

クルツ「おうよ。こう自動小銃を構えるみてえにな。それを担いで飛んでいるだけでも目が飛び出そうになったぜ」

宗介「どういう理屈だ。意味がわからん」

かなめ「それも魔法によるものよ。魔法力を使えば身体能力も上がるの」

宗介(あのとき強化服の機能を停止させた理由は魔法にあったのか。では、銃弾を防いだあの障壁も……)

ルッキーニ「それって、リーネだ! リーネが墜ちたの!?」

クルツ「いや、墜ちそうになったところを黒い軍服をきた子が救い上げてた」

ルッキーニ「戻らなきゃ!!」

マオ「もう帰っちゃうの?」

ルッキーニ「リーネが心配だもん!!」

宗介「待て。重度の負傷、もしくは戦死したというのならばお前にも連絡が入るはずだ。そういった連絡がないということは、そのリーネという者は無事なのだろう」

ルッキーニ「そんなのわかんないじゃん!」

宗介「落ち着け」

マオ「まぁまぁ、ルッキーニが心配になるのもわかるよ。ダナンの外まで送っていきましょう」

宗介(精神的にもまだ未熟な少女が少尉。人員が不足しているのか、それともルッキーニ少尉も戦場では一流なのか)

172: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:30:16.85 ID:iSl8zvYgo
格納庫

ルッキーニ「急がなきゃ!!」タタタッ

かなめ「ちょっと! 走ると危ないわよ!!」

テッサ「あら、あれは……?」

マデューカス「艦長、いいところに」

テッサ「何かありましたか?」

ルッキーニ「どいてー!! どいてー!!」

マデューカス「待ちたまえ。君の仲間が迎えにきている」

ルッキーニ「え? そなの?」

テッサ「501の皆さんが?」

マデューカス「はい。ルッキーニ少尉がここにいるはずだと、言っています」

宗介「なるほど。俺たちがルッキーニ少尉を誘拐したと誤解しているのか。万が一ということがある。千鳥、君は隠れているんだ」

かなめ「なんでそうなる。あんたじゃないんだから、そんな勘違いするわけないでしょうが」

宗介「希望的観測は危険だ。それに戦争とはそういった小さな行き違いで起こるものも多い」

ルッキーニ「どうでもいいから早く外にだしてー!!」

173: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:36:59.70 ID:iSl8zvYgo
シャーリー「おーい、ルッキーニー」

ルッキーニ「シャーリー!!!」

シャーリー「何してたんだ?」

ルッキーニ「かなめとメリッサからお菓子もらったー」

バルクホルン「餌付けされていたのか……」

エーリカ「おかし!? 私にもちょーだいっ」

かなめ「え? い、いや、いいけど、それ後ろの人が許してくれるの?」

エーリカ「ヘーキ、ヘーキ。はやく、おかしぃ」

バルクホルン「ハルトマン!!! 恥ずかしいとは思わんのかぁ!!!」

エーリカ「思わないね」

バルクホルン「くぅぅ……!!」

かなめ「良い性格してるわね……」

エーリカ「褒め言葉なんていらないから、お菓子ちょーだい」

かなめ「褒めてないし」

ルッキーニ「ねえねえ!! リーネは!? リーネはどうしたの!?」

174: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:45:23.63 ID:iSl8zvYgo
シャーリー「リーネは医務室だよ。今は宮藤がついてる」

ルッキーニ「わかった!!」ダダダッ

シャーリー「あ、おい」

テッサ「随分と心配されていますね。ルッキーニさんとリーネさんは仲が良いんですね」

美緒「家族を心配しないものなど、いないだろう」

テッサ「家族?」

美緒「私たちは仲間を家族だと考えている。家族は命を預けあうのではなく、命を共有する」

テッサ「共感できます」

美緒「それは嬉しいな」

宗介「……」

クルツ「その銃は必要なさそうだな。ケツを冷やさないように、そのまま納めとけ」

宗介「不思議だ。彼女らは相手を敵として認識している様子がない」

クルツ「いつも未知の生物と戦ってるんだ。人間のことぐらいは信じたいんじゃねえか?」

ミーナ「そうでもないわ。ウェーバー軍曹」

クルツ「お、美しいウィッチから声をかけてもらえるなんて、光栄だ。名前ぐらいは聞いてもいいよな? 俺の名前を知ってるんだからさ」

175: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 18:54:30.49 ID:iSl8zvYgo
ミーナ「テスタロッサ大佐から聞いていないのね。まぁ、いいでしょう。私はミーナ。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」

クルツ「ミーナか。いい名だ。これから、俺の部屋にこないかい?」

ミーナ「遠慮しておきます。私はお菓子にはつられませんから」

クルツ「ありゃ、手厳しい。でも、落とし難い的ほど燃えるタイプなんだよねぇ、俺って」

ミーナ「私を落とせるなら大したものだわ」

クルツ「ふふん。いつか嫌っていうくらい、俺の背中をひっかかせてやるぜぇ」

マオ「どこかで聞いたセリフだね」

宗介「同じ文句を言っているのだな」

クルツ「うるせぇ。で、ミーナ中佐殿。そうでもないってどういうことです?」

ミーナ「ルッキーニ少尉や宮藤軍曹は貴方の言う通り、人間を敵として見ることはあまりないでしょうね。ただ、隊長を任されている身としては色々と疑わなくてはならないのよ」

マオ「あたしたちが賊国からの使者かもしれないから」

ミーナ「ええ。その考えはまだ持っているわ。私たちには人間の敵も多いのよ」

クルツ「なんでまた。ああ、いや。美人は敵を作りやすいっていうからなぁ」

マオ「バカ」

宗介「一つ聞かせてほしい。ルッキーニ少尉も宮藤軍曹も兵士、いや、ウィッチとしては優秀なのか?」

176: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:02:09.56 ID:iSl8zvYgo
ミーナ「何故?」

宗介「どちらも軍人としての心構えがなっていないと思うからだ」

ミーナ「なるほど。私から言えることは501には優秀なウィッチしかいないということよ」

クルツ「国籍とかも違うんだよな。名前からしても色々なところから引っ張ってきてる感じがするし」

ミーナ「ええ。その通りよ」

宗介「つまり、エース級が集まっているということか」

マオ「501はドリームチームってわけだ。それはさぞかし、戦果も素晴らしいんでしょうね」

ミーナ「おかげさまでね」

マオ「人間の敵が多いっていうのは、妬んでるやつら多いってことでしょ」

ミーナ「そういうことです」

宗介「俺たちも似たようなものだな」

ミーナ「え?」

マオ「うちらも新型をそろえて、各地では大活躍してるわけ。それが面白くないっていう連中は腐るほどいるわ」

ミーナ「貴方たちの部隊とも似ているところがあるようね」

マオ「あんたがどれだけ苦労しているのかは、わかるって話ね。それで敵じゃないよ、とは言わないけど」

177: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:18:27.59 ID:iSl8zvYgo
美緒「先ほどの戦闘で援護射撃を行った者は誰だ」

クルツ「はぁーい、おれでぇーす。みおみおー」

ミーナ「はぁ!?」

美緒「お前か。もう少し精悍な者を想像していたが」

クルツ「想像以上のかっこよさにほれちまったかい? なんらな、俺の部屋でゆっくりと話してもいいんだぜ?」

美緒「いいのか? そうだな。そうするか。お前とは時間をかけて話したいと思っていたところだ」

マオ「なんですって!?」

クルツ「おぉ! 一目見た時から感じてたんだ。俺と美緒は運命の赤い糸で結ばれているってな」

美緒「はっはっはっは。そうか。よくわからんが褒め言葉として受け取っておこう」

ミーナ「美緒!! 何を言っているの!?」

美緒「どうした、ミーナ。何を怒っている?」

ミーナ「男性と二人だけで何をするつもりなの!?」

美緒「あの位置からネウロイを狙撃した男だぞ。話を聞かなくてどうする」

クルツ「俺のスナイプは百発百中だ。獲物を絶対に落とす方法をベッドの上で語ってあげましょう」

美緒「よし、部屋に案内してくれ」

178: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:25:19.13 ID:iSl8zvYgo
ミーナ「やめなさい!!」グイッ

美緒「待て! 奴と話すのは……!」

ミーナ「どんな事情があっても許しません」

美緒「うぅむ……」

クルツ「そうはいかねえ。もう美緒は俺が落としちまったんだ。獲物はうばわせねえ」

マオ「こっちにきな」グイッ

クルツ「いでででで!!! 耳をひっぱるんじゃねえよ!!」

マオ「耳を鍛えないから痛いんだよ」

クルツ「どうやって耳をきたえるんだ!!」

美緒「すまんな。お前はええと……」

クルツ「クルツ・ウェーバー。覚えておいてそんはないぜ」

美緒「また機会があれば話をきかせてくれ」

クルツ「美緒の頼みならいつでも時間をあけておくぜ」

美緒「助かる」

ミーナ「もう戻ります!! 今回の件はあらためてお礼に伺います。それでは」

179: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:34:04.05 ID:iSl8zvYgo
かなめ「あはは……。クルツくんってこういう状況でも変わんないわね……たくましいというか……」

テッサ「すみません……」

マデューカス「ミスリルの名に泥を塗るつもりか……!!」

シャーリー「うちらの仲間を助けてくれたことには感謝してるんだ。まぁ、いつまでいるのか知らないけど、仲良くしような」

宗介「いいのか?」

シャーリー「なにが?」

宗介「ミーナ中佐はまだ俺たちを疑っている。お前はいいのか?」

シャーリー「面白いこというなぁ。確かにお前たちのことは殆ど知らないけど、敵ではないだろ?」

宗介「リーネというウィッチを救ったからか? それこそ油断させるための手段かもしれんぞ」

シャーリー「あははは。だったら、襲ってきてもいいよ。そのときは戦うからさ」

宗介「何を言っても無駄のようだな」

シャーリー「ああ、そうさ。中佐や少佐は知らないけど、あたしはもうお前たちを敵としては見ないよ。たとえ銃口を向けられてもね。それはルッキーニや宮藤も同じだと思う」

宗介「何故、そう言い切れる?」

シャーリー「リーネを救ってくれたから。それ以外にないよ」

宗介「愚かだ。だが、この世界で最初に出会えたのがお前たちでよかった」

180: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:44:55.62 ID:iSl8zvYgo
501基地 医務室

芳佳「なんともなくてよかったね」

リーネ「ごめんね……芳佳ちゃん……」

芳佳「どうして謝るの?」

リーネ「だって……私……また……」

芳佳「リーネちゃん?」

リーネ「ごめんね……なんでもないの……」

芳佳「大丈夫?」

リーネ「うん……。少し疲れちゃっただけだから」

芳佳「う、うん」

ルッキーニ「リーネぇ!!」

芳佳「ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「大丈夫ぅ!?」

リーネ「平気だよ。少し左足を火傷しただけだから」

ルッキーニ「よかったぁ……うにゃぁ……」

181: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 19:53:35.72 ID:iSl8zvYgo
リーネ「心配してくれてありがとう」

ルッキーニ「訓練通りにできなかった?」

リーネ「うん……」

ルッキーニ「そっかぁ」

芳佳「リーネちゃんは前にすっごく難しい狙撃を成功させてるんだし、今度はきっと上手くいくよ」

リーネ「そうだと……いいな……」

ルッキーニ「また練習に付き合ってあげりゅから」

リーネ「ごめんね……」

ルッキーニ「気にしない、気にしない」

リーネ「うん……」

芳佳「……」

ルッキーニ「どったの?」

芳佳「ううん。リーネちゃん、それじゃあ私たちは坂本さんに報告してくれるね。リーネちゃんはゆっくり休んでて」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん」

芳佳「いいの。おやすみ、リーネちゃん」

183: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 20:12:57.34 ID:iSl8zvYgo
廊下

ルッキーニ「リーネが無事でよかったね!」

芳佳「……」

ルッキーニ「芳佳ぁ? 元気ないぞー」

芳佳「え? あはは! そんなことないよー」

ルッキーニ「ならいいけどー」

芳佳「あはは……」

ミーナ「だから! 二人きりで話す必要はないと言っているでしょう!?」

美緒「しかしだな。お前と私が一緒になってしまってはここの指揮系統が……」

ミーナ「他の人と一緒でもいいでしょう!?」

美緒「ここ最近はネウロイの襲撃が増加傾向にある。戦力はなるべく待機させておいたほうがいい。話を聞くだけならだけなら私一人で十分だからな」

ミーナ「そうだけど、そういうことじゃなくて!」

美緒「よくわからんな」

ルッキーニ「しょうさー、ちゅうさー」

芳佳「坂本さーん。リーネちゃんは大丈夫でしたー」

184: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 20:22:33.02 ID:iSl8zvYgo
美緒「そうか。安心した」

ミーナ「けれど、リーネさんはしばらく出撃できないわね」

芳佳「どうしてですか? 一回の失敗ぐらいでそんな……」

美緒「それは関係がない。ユニットの損傷が激しい所為だ」

ルッキーニ「にゃんで? 2日もあればなんとかなるじゃん」

美緒「今まで通りならば修理用の部品もすぐに届いていたし、整備班の人員も揃っているために時間はかからなかった。だが、状況は変わっている」

芳佳「それって……」

ミーナ「宮藤さんも知っているかもしれないけれど、上層部の決定で501の予算は大幅に削減されているの」

美緒「故に修理も今まで以上に時間がかかる」

芳佳「そんなぁ!! どうにかならないんですか!? このままだとリーネちゃんは……!!」

美緒「なんとかしてやりたいのは山々だが、ユニットが直らないことにはどうにもできん」

ミーナ「宮藤さんの怒りは尤もです。けど、今は我慢して」

芳佳「私は……いいですけど……」

ルッキーニ「いつごろ直りそうなの?」

美緒「シャーリーにも頼んでみるが、早くても10日以上は要するだろうな」

186: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:12:07.71 ID:iSl8zvYgo
芳佳「その間にネウロイが来たら……」

美緒「無論、リーネは戦力としては考えない」

芳佳「そんな……そんなことになったら……」

美緒「宮藤? どうかしたのか」

芳佳「そんなことになったら!! リーネちゃんがどうなるかわかりません!!」

美緒「なに?」

ミーナ「どういうこと?」

芳佳「私、探します。リーネちゃんのユニットを直す方法を」

ミーナ「宮藤さん、聞き分けのないことを言わないで」

芳佳「探します」

美緒「勝手にしろ。しかし、任務に支障がでるようであれば鎖で繋いでも営倉に入ってもらうぞ」

芳佳「はい。構いません」

美緒「分かった。では、好きにしろ」

芳佳「行ってきます」

ルッキーニ「あぁ! よしかぁー!! まってよー!!」

188: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:18:59.99 ID:iSl8zvYgo
格納庫

芳佳「はぁ……はぁ……」

ルッキーニ「よしかぁ」

芳佳「ルッキーニちゃん……。追ってきたの?」

ルッキーニ「だって、急に走り出すから」

芳佳「ごめんね」

ルッキーニ「でも、どうしてあんなこといったのぉ? リーネが出撃できないのはユニットが壊れてる所為なんだよぉ」

芳佳「訓練でできたことが、実戦ではできないんだよね」

ルッキーニ「え……」

芳佳「だから、リーネちゃんは困ってる。苦しんでる」

ルッキーニ「うん、そうだと思う」

芳佳「だったら、実戦をもっと経験したいってリーネちゃんは考えていると思う。なのに、ここで出撃できないってことになったら……」

ルッキーニ「ユニットが壊れてるんだから、リーネだって納得すると思うけど」

芳佳「私はリーネちゃんを助けたい。苦しんでいるリーネちゃんを見たくなんてない」

ルッキーニ「わかった! あたしも手伝う!! やるぞー!!」

191: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:24:58.12 ID:iSl8zvYgo
芳佳「ありがとう! ルッキーニちゃん!!」

ルッキーニ「あたしもリーネを助けたいもん!」

芳佳「だよね!」

ルッキーニ「じゃあ、まずはシャーリーにたのもー!!」

芳佳「うん!!」

ルッキーニ「シャーリー!!!」テテテッ

芳佳「シャーリーさーん!!!」テテテッ


ミーナ「よかったの?」

美緒「かけてみるさ。宮藤の強さにな」

ミーナ「けれど、修理する術がないんじゃ……」

美緒「ウィッチに不可能はない。それにだ、ここでリーネが早期に出撃できることになれば私たちも助かる」

ミーナ「美緒はリーネさんがより多くの実戦を望んでいると思う?」

美緒「どうだろうな。だが、リーネが焦っているのは確かだ」

ミーナ「貴女と同じように?」

美緒「……なんのことか、わからんな」

192: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:37:04.69 ID:iSl8zvYgo
翌日 デ・ダナン 格納庫

宗介「ふむ……。どうするか」

かなめ「ふわぁぁ……ソースケ……おはよぉ……」

宗介「眠そうだな。低血圧は治っていないのか」

かなめ「寝不足もあるのよ。枕が変わると眠れないって本当だったわ」

宗介「寝苦しかったか? 大佐殿の部屋で寝たのだろう」

かなめ「そうだけどねー。ふわぁぁ……。で、なにしてんの?」

宗介「強化服の修理を試みようと思うのだが」

かなめ「したらいいじゃない」

宗介「こうなることは予想していなかったからな。手持ちの修理キットだけでは心もとない」

かなめ「ここにあるの拝借しちゃえば?」

宗介「それも考えた。だが、いつ元の世界に戻れるか分からない以上、艦のモノを俺の私物に使うわけにはいかない」

かなめ「そっか。補充もままならないもんね」

宗介「ああ。それゆえに困っている」

かなめ「うーん……。だったら、あの人に頼んでみたら? もしかしたら手を貸してくれるかもよ?」

193: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:41:34.03 ID:iSl8zvYgo
501基地 格納庫

シャーリー「どう思う?」

エイラ「どう思うって、こんなにメチャクチャじゃ、どうしようもないだろ」

シャーリー「だよなぁ……」

エイラ「修理用の部品が届くまでは手を付けられないな」

シャーリー「それはなぁ……」

エイラ「なんかあるのか?」

シャーリー「昨日の夜、ルッキーニと宮藤に懇願されたんだよ。だから、なんとかしてやりたいんだ」

エイラ「無理なもんは無理だろ」

シャーリー「なんとか手に入らないか? 交換用の部品とかさ」

エイラ「自腹でなんとかするしかないな」

シャーリー「流石にユニットを直そうと思ったら、あたしだけの給料じゃあ……」

かなめ「おはよーございまーす」

エイラ「ん? たしか、千鳥だったか」

宗介「シャーリーはいるか?」

194: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:52:45.34 ID:iSl8zvYgo
シャーリー「どうした、相良軍曹」

宗介「お前は確か機械工学の専門家だったな」

シャーリー「専門家っていってもあたしは……」

宗介「頼みたいことがある」

シャーリー「お前もかよ」

宗介「修理用の部品を分けてくれるだけで構わない」

シャーリー「それが一番難しいんだけどなぁ」

エイラ「おいおい。シャーリー。男と話してると中佐に怒られるぞ」

かなめ「だから、あたしがついてきたんだけどね」

エイラ「それでもあの中佐は納得しなさそうだけどな」

シャーリー「そっちの兵器には興味あるし、バラシてもみたいけど、今はこっちに手いっぱいなんだ」

宗介「それはなんだ?」

エイラ「ストライカーユニットだ。見た通り完全に壊れてるけど」

宗介「これが……」

かなめ「ウルトラマリンスピットファイア。癖は少なく基本性能が高い、ブリタニアの主力ユニットよね」

195: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 21:59:17.91 ID:iSl8zvYgo
エイラ「あ、ああ。そうだけど、よく知ってるな」

かなめ「え? ああ、うん。その、ミーナさんに教えてもらって」

宗介「スピットファイアといえば第二次大戦で活躍した戦闘機だ。何故、同じ名前がストライカーユニットにつけられている?」

かなめ「それは……」

かなめ(歴史が大きく変わった所為……でも、世界は同じだから……変わらないこともある……)

宗介「千鳥?」

かなめ「あ、ああ。大丈夫。なんでもないの」

かなめ(世界が同じ……? 何言ってんの? ここには魔法があるじゃない。あたしの世界には魔法なんてない。だから、この考えはおかしい)

かなめ(それは違う。1904年にネウロイが出現し、大きな時間災害が発生したの。そのとき、過去と未来が全て塗り替えられ――)

シャーリー「おい、千鳥。顔色悪いぞ」

かなめ「え……? そんなこと……」

エイラ「宮藤に診せてみるか。こっちにこい」

かなめ「あ、あたしは平気だから……」

エイラ「ダメダナ。病人にしか見えない」

宗介「待て。俺も行く」

197: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 22:05:18.31 ID:iSl8zvYgo
食堂

リーネ「野菜、切れたよ」

芳佳「ありがとー。あとは私がやるからリーネちゃんは休憩してて」

リーネ「うん。お願い」

芳佳「さーて、味付けを――」

エイラ「宮藤!」

芳佳「エイラさん?」

エイラ「病人を連れてきた」

芳佳「病人!?」

かなめ「だ、大丈夫だっていってるんだけど」

芳佳「千鳥さん! どうかしたんですか!?」

エイラ「気分が悪くなったらしいんだ」

芳佳「わかりました!!」ピコンッ

かなめ「本当にいいのに。ありがと、芳佳ちゃん」

芳佳「そんな。私も好きでやってますから」

198: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 22:10:16.61 ID:iSl8zvYgo
宗介「頼むぞ、宮藤」

芳佳「任せてください!!」

リーネ「……」

宗介「どうした、ビショップ」

リーネ「え!?」

宗介「お前も体調不良か?」

リーネ「いえ、そんなことありません」

宗介「そうか。怪我は大したことがなかったと聞いている」

リーネ「はい。脹脛に軽い火傷を負っただけですから」

宗介「兵士は任務をこなすことよりも生きて帰還することが重要だ。死んでしまっては意味がないからな」

リーネ「あ、はい」

宗介「それだけだ」

リーネ「……」

宗介「なんだ?」

リーネ「私の名前、知ってるんですね……少しびっくりして……」

199: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 22:18:06.66 ID:iSl8zvYgo
宗介「お前たちのことは少し調べたらわかった。世界的にも有名な者たちが集う航空団のようだな」

リーネ「そこに私を入れられると、困るんですけど……。あの、あなたの名前は……?」

宗介「自己紹介をしていなかったか。俺は相良宗介。階級は軍曹だ」

芳佳「相良さんっていうんですか!」

リーネ「え、えっと、リネット・ビショップです!」

宗介「知っている」

リーネ「あ、すみません……」

エイラ「私のことも知ってるってことか」

宗介「お前はエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉だな。戦歴も素晴らしいものだ」

エイラ「まぁな」

宗介「宮藤もリーネも大きな戦果を挙げているようだな。精神的な部分に問題はあるにしろ、どうやら一流の兵士であることには間違いないようだ」

リーネ「い、一流だなんて!!」

芳佳「そんな風になっちゃってるんですか!?」

かなめ「まぁまぁ、周囲の評価なんて気にしちゃダメよ。いつの時代もマスコミっていうのは大げさにいうんだから」

宗介「それはあるかもしれないな。特にウィッチはこの世界の希望だ。周りの期待は嫌でも大きくなる」

200: SS速報VIPがお送りします 2015/08/06(木) 22:27:19.26 ID:iSl8zvYgo
リーネ「そう……ですね……」

宗介「正規軍にいればプロパガンダはついて回る。それに潰されないようにしろ」

リーネ「はい」

芳佳「わかりました!! エイラさん、ぷろぱがんだーってなんですか?」

エイラ「あとで教えてやる」

宗介「だが、ミーナ中佐も言っていた。501には優秀なウィッチしかいないと。上官や指揮官にそうした評価をもらっていることを誇りに思え」

リーネ「……」

かなめ「リネットちゃん?」

リーネ「あ、私のことはリーネで構いませんよ。みなさんもそう呼んでますから」

かなめ「そう。それじゃあ、そう呼ぶわね、リーネちゃん。あたしのことはかなめでいいから」

リーネ「はい、かなめさん」

宗介「千鳥、気分はどうだ?」

かなめ「うん。もう平気。元気いっぱいよ!」

宗介「そうか……」

芳佳「あの、朝ごはんがまだなら一緒にどうですか? 今から朝食の時間なんですけど」

205: SS速報VIPがお送りします 2015/08/09(日) 10:19:11.88 ID:L+g/Ck1Vo
デ・ダナン 艦長室

テッサ「カリーニンさんからはまだ何も届いてはいないようですね」

マデューカス「まだ10時間ほどしか経っていませんからな。勝手の違う土地では苦戦するでしょう」

テッサ「そうですね」

テッサ(私は慌てている。気を静めないと的確な指示を出せなくなるわ。気を付けないと)

マデューカス「ところで艦長。相良軍曹と千鳥かなめが501基地のほうへ向かったようですが、よろしかったのですか」

テッサ「はい。昨夜の一件で501のみなさんは警戒心をある程度緩和してくれたようですし、健全なお付き合いをさせてもらいましょう」

マデューカス「こちらの世界で生きていく上では、今のところ501を頼るほかありませんからな」

テッサ「そういうことです」

マデューカス「とはいえ、我々と501が友好的な関係を結ぶと新たな懸念を抱くことになります」

テッサ「ええ。確かに」

マデューカス「そのとき艦長はどうするおつもりですか」

テッサ「……」

テッサ(問題点はまだあるわ。そうした事態に陥った時、私かかなめさんが……)

テッサ(いいえ。何が起こってもかなめさんの身の安全は絶対に守らないと。世界が違うために予測できなかったなんて言い訳はできないもの)

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