男「黙ってついてこい」 女「誘拐ならおすすめしません」

2019年03月02日
男「黙ってついてこい」 女「誘拐ならおすすめしません」

1: VIPがお送りします 2015/05/02(土) 23:59:32.816 ID:57ffMtf90.net
男「何を言ってるんだお前……」

女「私を誘拐するつもりなんでしょう?」

男「まあ……そうなんだが」

2: VIPがお送りします 2015/05/02(土) 23:59:55.750 ID:57ffMtf90.net
女「なんで私を誘拐しようとするんですか?」

男「こんな時間に人通りの少ない道を歩いているお前が悪い」

女「それはそうですね」

3: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:00:16.553 ID:25PqrL1R0.net
男「これナイフ。わかるか?」

女「わかりますよ。バカにしないでください!」

男「怖くないのか……?」

女「怖いですよ」

男「全然怖がってるようには見えないな」

4: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:00:37.124 ID:25PqrL1R0.net
女「じゃあ怖がってあげましょうか」

男「なんだそりゃ」

女「キャーー! 殺される!!」

男「黙れ、人が来るだろ!!」

5: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:01:07.823 ID:25PqrL1R0.net
女「誘拐の目的は身代金ですか?」

男「他に何があるんだ」

女「私のカラダ目当てかも」

男「自意識過剰なやつだな」

6: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:01:32.095 ID:25PqrL1R0.net
女「私は可愛い現役JKですからね」

男「自分で言うなよ」

女「可愛くないですか?」

男「うるせえな」

9: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:02:02.132 ID:25PqrL1R0.net
女「身代金が目的ならおすすめしません」

男「だからなんでだよ」

女「成功率が極めて低いからです」

男「そんなことわかってんだよ」

女「いいえ、わかってません」

10: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:02:23.098 ID:25PqrL1R0.net
男「とにかくついてきてもらおうか」

女「わかりました。そこの車に乗ればいいんですね」

男「やけに素直だな……」

11: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:02:42.543 ID:25PqrL1R0.net
女「あなたの家まで連れていかれるんですね」

男「ああ、そうだ」

女「誘拐された実感がわいてきました」

男「俺は誘拐した実感がまったくないよ」

12: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:03:03.921 ID:25PqrL1R0.net
男「なんでそんなに協力的なんだ」

女「積極的な人質なんです」

男「そんな人質いねえよ」

女「でも、いるんです」

13: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:03:32.643 ID:25PqrL1R0.net
男「とにかくさっさと出発するぞ」

女「まってください!」

男「あ?」

女「シートベルト!」

男「うるせえな……」

15: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:04:04.017 ID:25PqrL1R0.net
女「まだつかないんですか?」

男「もうすぐだ」

女「ちゃんとシートベルトしたんですね」

男「事故でも起こしたら計画が破綻するからな」

17: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:05:20.671 ID:25PqrL1R0.net
男「ついた。ここだ」

女「結構、その、ぼろいですね」

男「うるせえな」

女「でも、好きな形です」

男「なんだそりゃ」

19: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:06:36.199 ID:25PqrL1R0.net
女「中は意外と綺麗」

男「ちょっと待て。勝手に入っていくな」

女「だって誘拐したんでしょう?」

男「誘拐犯の家に先導して入っていく人質がいるかよ」

21: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:08:49.338 ID:25PqrL1R0.net
男「さてと、そろそろお前の親が心配しているころか?」

女「まだ11時ですよ」

男「午前中ならまだしも、夜の11時だぞ」

女「そんなのわかってますよ。外が暗いから」

男「もう充分遅い時間だ」

25: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:10:09.945 ID:25PqrL1R0.net
女「最近の高校生はこんな時間、遅いうちに入りません」

男「恐ろしい時代になったな」

女「あなたの時代とは違うんです」

男「俺も結構若いんだけどな」

26: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:14:31.077 ID:25PqrL1R0.net
男「じゃあどうするかな」

女「知りませんよ」

男「……食パン食べる?」

女「なんでですか」

男「いや、安かったからたくさん買ってただけ」

女「食べませんよ」

男「うーむ」

29: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:17:12.049 ID:25PqrL1R0.net
男「もういいや、電話しよう」

女「そうですか」

男「家の電話番号わかるか?」

女「ちょくちょくバカにするのやめてください」

男「よし、脅迫する」

30: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:21:08.243 ID:25PqrL1R0.net
男「……もしもし、娘さんは預かった」

女母「……はい……?」

男「わかっているのか? 娘さんは俺が誘拐した」

女母「はい……」

男「返してほしければ10万円用意しろ。場所は」

女母「あ、い、いいです」

男「……は?」

ツーツーツー

男「…………切れた」

女「……」

男「……」

女「…………だからおすすめしないって言ったんですよ」

35: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:24:15.003 ID:25PqrL1R0.net
男「イタズラだと思われたか……?」

女「いえ、そうであったとしても、なかったとしても」

男「……?」

女「私愛されてないんですよ、親から」

37: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:25:58.378 ID:25PqrL1R0.net
男「えっと……」

女「…………」

男「…………」

女「………………」

男「………………食パン食べる?」

女「……そうですね。少しお腹がすきました」

41: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:27:45.620 ID:25PqrL1R0.net
女「……」モグモグ

男「……」

女「……やっぱりかあ」モグモグ

男「食べてるところは」

女「はい?」モグモグ

男「食べてるところは少し可愛いな」

女「嬉しくありません」モグモグ

44: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:31:05.261 ID:25PqrL1R0.net
女「食パンご馳走様でした」

男「お、おう」

女「……」

男「……」

女「……10万は安くないですか?」

男「あ、いや、あんまり高いと払ってもらえないかもしれないし」

女「なんですかそれは」

男「要求に1億円とかする犯人はもはやネタだし、そんなにたくさんお金をもらっても使いきれないし」

女「控えめな誘拐犯さんですね」

45: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:33:05.319 ID:25PqrL1R0.net
女「まあ結局、10万の価値もなかったわけなんですけどね」

男「……」

女「感覚が狂ったのか、10万の価値を私につけてくれたあなたがありがたいです」

男「……そいつは狂ってるな」

49: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:35:46.781 ID:25PqrL1R0.net
女「さて、私をどうしますか誘拐犯さん」

男「どうするって……いってもな……」

女「人質としての価値はゼロです」

男「うーむ」

女「つまり、ただのJKです」

男「言い方がいかがわしい」

女「しかも可愛い」

50: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:39:13.236 ID:25PqrL1R0.net
男「解放しようか。別に殺したりするつもりも必要もないしな」

女「まあ、解放されても、私を望まない家に帰るだけなんですけどね」

男「……やっぱりやめた」

女「……はい?」

男「もう少し誘拐しておく。貴重なJKだしな」

女「言い方がいかがわしい」

男「しかも可愛い」

女「そうなんですよ。仕方ないですね」

51: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:41:12.114 ID:25PqrL1R0.net
男「別になにをするわけでもない。もう遅いから寝よう」

女「もう寝るんですか」

男「日が変わってるぞ。それとも最近の高校生はこんな時間遅くないのか?」

女「はい。これからが本番ですよ。トランプしたり恋話したり」

男「修学旅行かよ」

53: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:44:13.055 ID:25PqrL1R0.net
男「布団はひとつしかない」

女「いえいえ、私はいいですよ。使ってください」

男「誰がお前に使わせると言ったんだ」

女「だいたい紳士なら女子に譲るかと」

男「俺の使ってた布団なんか汚くて女子に使わせられるか」

女「ほー……」

56: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:44:57.265 ID:25PqrL1R0.net
男「でも俺だけ布団ってのも紳士的じゃない」

女「紳士なんですかね」

男「だから布団はひとつあるけれど、二人とも使わない」

女「公平で良いですね」

58: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:47:28.181 ID:25PqrL1R0.net
男「おやすみ」

女「襲ったりしないんですね」

男「そんなことしたら捕まっちまうからな」

女「あはは、誘拐犯がなに言ってんだか」

60: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:49:48.468 ID:25PqrL1R0.net
女「……起きてますか?」

男「……」

女「ううー、寝たのかな。つまんないー」

男「……あざとい」

女「起きてるじゃないですか」

男「うるせえな」

62: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:52:14.885 ID:25PqrL1R0.net
女「少し、私の話をしてもいいですか」

男「勝手にどうぞ」

女「ええ、もう少し興味を持ってくださいよ」

男「めんどくせえな」

女「私、妹がいるんですよ」

男「結局話すのかよ」

63: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:53:41.217 ID:25PqrL1R0.net
女「妹はなんでもできるんです。出来の悪い私と違って将来有望」

男「ああ、だからお前は愛されないのか」

女「さきに言わないでくださいよ」

男「だいたいわかるからな」

女「デリカシーのない人だな、まったく」

68: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 00:56:31.164 ID:25PqrL1R0.net
男「そんなに珍しい話じゃない」

女「そうでしょうか」

男「俺は三兄弟の末っ子だが上二人は優秀でよく比べられてた」

女「なんだ、仲間じゃないですか」

男「長男は一流企業に就職。次男は俳優の卵」

女「三男は?」

男「フリーター。金がないので誘拐を計画」

女「こうならないように気をつけなきゃ」

74: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:00:22.821 ID:25PqrL1R0.net
女「私の父は小さい会社の社長で、跡取りをどうするかいつも考えています」

男「でも女子なら、関係ないんじゃないか?」

女「いえ、女子しかいないので婿養子をとらないといけないんですよ」

男「あー、いい跡取りを得るために魅力的な娘が必要なわけか」

女「そういうことです」

79: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:03:48.017 ID:25PqrL1R0.net
女「だから親は妹を可愛がってるんですよ」

男「なるほど」

女「妹もまんざらじゃないようで、私を見下すし」

男「かわいそうに」

女「私なんかじゃ嫁の貰い手がみつからないんだそうです」

男「へー」

女「あ、私、嫁にどうですか?」

男「いいよ」

女「さっきから適当に返事してません?」

86: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:08:52.088 ID:25PqrL1R0.net
女「……でも、誘拐されても心配されないなんて、思わなかったなあ」

男「まあ、妹と比べられてもだな。結局自分は自分だ」

女「それはそうですけど」

男「気にしなきゃいいんだ。親なんか、自分が生きてるうちに死ぬんだ」

女「それはそうですけど」

男「だから泣くな」

女「……うるさいですね」

88: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:10:03.589 ID:25PqrL1R0.net
女「あの!」

男「なんだ」

女「少しだけ、ありがとうございました」

男「誘拐されてお礼言うとかバカか」

女「おやすみなさい!」

男「おう」

94: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:16:11.014 ID:25PqrL1R0.net
翌朝

女「……ふぁ」

男「目が覚めたか」

女「……おはよございまっす」

男「おはよう」

女「そういえば、誘拐されたんでした」

男「そうなんだよ、なんだろうなこの状況」

97: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:17:41.985 ID:25PqrL1R0.net
女「寝ている間に変なことしました?」

男「自意識過剰だっつーの」

女「寝顔見ました?」

男「それは見た。俺の方がはやく起きたから」

女「お嫁に行けない……」

男「どのみち嫁の貰い手がいないって話だっただろ」

女「むー」

98: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:18:38.180 ID:25PqrL1R0.net
女「今日は何をするんですか?」

男「昨晩は失敗したからな」

女「……?」

男「新しく誘拐をするんだよ」

99: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:20:03.700 ID:25PqrL1R0.net
女「えええ!」

男「うるせえな、朝から大きい声出すな」

女「私だけじゃ満足できないってことですか」

男「満足できねえよ。人質として」

100: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:22:03.135 ID:25PqrL1R0.net
男「さて、出発だ」

女「こんな朝っぱらからですか」

男「誘拐に時間帯なんて関係ないんだ」

女「いやいやありますよ、人目につきますよ」

男「他にすることねえんだよ」

女「これだから無職は」

男「フリーターだ」

101: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:25:34.823 ID:25PqrL1R0.net
女「じゃあ私とデートしましょう」

男「なにいってんだ」

女「どうせ暇なんでしょう」

男「誘拐犯とデートするなんて物好きだな」

女「愉快で良いじゃないですか」

男「ふーん、たしかに愉快だ」

102: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:27:34.288 ID:25PqrL1R0.net
男「というわけでついて来たが俺金ないぞ」

女「わかってますよ。誘拐を実行するくらいですからね」

男「わかってるならいい」

女「お金はかかりませんから」

男「ありがたい。みんなもこういうデートをすればいいのに」

女「あ、ここですここ」

104: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:29:45.342 ID:25PqrL1R0.net
男「ほう、川か」

女「はい、水が綺麗でしょ? 河川敷デートです」

男「これはいいな。流れを見ているだけで気持ちが安らぐ」

女「犯罪をする気が消えるでしょ」

男「いや、そこまでじゃないかな」

105: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:31:14.663 ID:25PqrL1R0.net
男「よっと」

女「……おー。水切り上手いんですね」

男「お前もやってみろよ」

女「石さんがかわいそうなのでやりませんー」

男「なんだそのキャラは」

106: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:33:05.275 ID:25PqrL1R0.net
女「えいっ」ポチャン

男「へったくそだなー」

女「うるせえなあー」

男「なんだそりゃ」

女「あなたの真似です」

男「似てねー」

108: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:37:07.821 ID:25PqrL1R0.net
女「こんなに天気がいいと眠くなりますね」

男「そうだな」

女「不思議ですね、誘拐犯と人質がこうして河川敷に来てるのも」

男「ああ、誘拐したのがお前じゃなきゃこうはならなかったさ」

女「結果的によかったじゃないですか」

男「よくねえよ。これからまた別の相手を誘拐しなくちゃいけない」

女「二人目なら慣れたものでしょ」

男「いや、三人目だ」

109: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:41:08.140 ID:25PqrL1R0.net
女「三人……?」

男「お前の前に先月、一人誘拐したことがある」

女「え!?」

男「誘拐したのがお前と同じくらいの年のクソガキでな。家も金持ちで甘やかされて育ったんだ」

女「そんな家から身代金を受け取ったなら、安泰じゃないですか」

男「その一家が気に食わなかったから、貰った金は全部燃やした」

女「バカだなー。実にバカだなー」

111: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:43:27.779 ID:25PqrL1R0.net
男「あまりにむかついたから、しっかりと教育してやった」

女「なにをしたんですか、怖いですね」

男「えいっ」パチン

女「うわ、びっくりした」

男「猫だまし。これひとつで言う事を聞くように教育した」

女「何それこわ!」

113: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:48:09.764 ID:25PqrL1R0.net
女「そろそろお昼ですね」

男「よし、行くぞ」

女「え、まだ誘拐にははやくないですか?」

男「狙っている相手がもうすぐ塾から帰ってくるからそこを襲う」

女「よくこの短い間で調べましたね」

男「お前の持ち物を漁ったらわかった」

女「え? ……いったい誰を誘拐するんですか?」

男「お前の妹だ」

119: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:52:00.920 ID:25PqrL1R0.net
女「えっ、あっ、私が間違えて持ってきていた妹のスケジュール帳か」

男「そうだ。昨日お前が寝てから荷物を漁ったら見つけた」

女「ていうかJKの荷物を勝手に漁らないでくださいよ!」

男「大丈夫だ、変な物は入ってなかった」

女「あたりまえです!」

121: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:54:27.779 ID:25PqrL1R0.net
女「それでなんで妹を?」

男「お前の親は妹になら金を払うんだろ?」

女「……払うでしょうね」

男「なら迷うことはない。巻き上げよう」

女「酷いですね」

男「犯罪者だからな」

122: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:56:05.954 ID:25PqrL1R0.net
女「ちょっと複雑な心境です」

男「いいじゃないか。お前を嫌ってる親が困ることになるんだ」

女「……それは愉快ですね」

男「よし、決まりだ」

女「行きましょう」

124: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 01:57:11.338 ID:25PqrL1R0.net
男「ここからだと15分くらいか」

女「偉い、ちゃんとシートベルトしていますね」

男「うるせえな」

女「安全運転でお願いします」

128: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:00:11.016 ID:25PqrL1R0.net
男「ちっ、赤か」

女「あの、こんな時に言うのもなんなんですけど」

男「なんだよ」

女「昨日、あの時間にあの場所でなにをしてたと思います?」

男「あー? 知らねえよ。家出でもしてたのか?」

女「そんな感じです」

男「まあ今までの話を聞くとそうかなと」

女「私、誘拐されるのを待ってたんです」

131: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:04:39.458 ID:25PqrL1R0.net
男「……はあ?」

女「ほら、さっき先月も誘拐をしたって言っていたじゃないですか」

男「ああ」

女「それですよ。誘拐事件があった話を聞いて、私も誘拐されないかと思って、何度かあの時間に人通りの少ないところをぶらぶらしてたんです」

132: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:05:11.231 ID:25PqrL1R0.net
男「なんで進んで誘拐されようとしたんだ」

女「先月の誘拐事件は人質が無事だったらしいですし、親を困らせたかったからってのもありますね」

男「結局困らなかったみたいだけどな」

女「それはまあ」

男「だからあんまり驚いてなかったのか」

女「はい。キターって思ってました」

133: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:07:28.875 ID:25PqrL1R0.net
女「でもまさか、本当に同じ人に誘拐されるとは」

男「お前なあ、もっと手荒なやつに襲われてたらどうするつもりだったんだ」

女「どのみちいいと思っていました。親が困って私の心配をしてくれれば」

男「もっと自分を大切にしな」

女「……優しい誘拐犯ですね」

135: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:10:48.677 ID:25PqrL1R0.net
男「ついたぞ。あそこだ」

女「確かにあの塾です」

男「もう出て行ったかな」

女「あ、いました! あのツインテールです!」

男「あれか。……可愛いな」

女「うるさい!」バシッ

男「少し痛い」

137: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:12:40.050 ID:25PqrL1R0.net
男「ツインテールが似合う子は本当に可愛い子だけだ」

女「急になにを言ってるんですか」

男「いや別に」

女「私と妹、どっちが可愛いですか」

男「知らねーよそんなこと」

女「私もツインテールにしましょうか」

男「うるせえな、見失うだろ!」

138: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:14:10.534 ID:25PqrL1R0.net
男「よし、裏路地に入った」

女「チャンスですね、やりましょう」

男「えらく協力的だな」

女「個人的な恨みがありますからね」

男「いくぞ」

140: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:16:04.840 ID:25PqrL1R0.net
女妹「! びっくりした、お姉ちゃんか」 

女「久しぶり」 

女妹「昨日会ってないだけじゃん。家に帰ってこないでなにしてたの?」 

女「お母さんから聞いてない?」 

女妹「なにが?」 

女「誘拐されたんだよ、私」

145: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:18:57.797 ID:25PqrL1R0.net
女妹「誘拐? ふざけてるの?」

女「ふざけてないよ。そしてこれからアンタも誘拐される」

女妹「……私、お姉ちゃんと違って遊んでいるひまないの。どいて」

男「遊びじゃねえんだな、黙ってついてこい」

女妹「誰!?」

146: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:21:33.963 ID:25PqrL1R0.net
男「お前に今あてているのはナイフだ。意味わかるか?」

女妹「わかったわよ。なんなのいったい……」

女「はやく車に乗って」

女妹「お姉ちゃん、私にこんなことしたらタダじゃすまないわよ」

148: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:24:10.766 ID:25PqrL1R0.net
男「よし、乗り込んだな。途中で逃げようとしたら殺すぞ」

女妹「こんなことしていいの? お父さんが黙っていないし、それに私の彼氏も許さないと思うわよ」

女「出発しましょう」

女妹「聞いているの? 私の彼氏は空手の大会で優勝して」

男「うるせえな! シートベルトをしろ!!」

150: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:26:47.700 ID:25PqrL1R0.net
男「よし、とりあえず家までは無事に連れてこれたな」

女妹「……私を誘拐してどうしようっていうのよ」

男「殺したりはしないから安心するんだな」

女妹「目的は身代金? それとも私を襲うつもり?」

男「お前のカラダにはまったく興味がない」

154: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:34:37.471 ID:25PqrL1R0.net
男「さて、二度目の電話だ」

プルルルル……

女母「もっ、もしもし」

男「昨晩ぶりだな」

女母「……あなた、本当に誘拐犯だったのね」

男「そうだ。もう一人の娘さんも誘拐させてもらった」

女母「お金ならいくらでも出すわ。娘を返してちょうだい」

男「2時間以内に1億用意しろ」

女母「1億!?」

155: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:35:07.339 ID:25PqrL1R0.net
男「払えないのなら娘は殺す」

女母「待って! そんな大金、一度会社に行かないといけないわ」

男「父親のほうに連絡しろ。金は会社の方に俺が取りに行ってやる」

女母「……わかったわ」

男「しっかりと用意しておけ」

ガチャ

男「……1億とかマジかよ」

女「もはやネタですね」

158: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:40:16.011 ID:25PqrL1R0.net
女妹「あたりまえよ。うちはそのくらい金を稼いでいるんだから」

女「私の時は10万も払わなかったのに」

男「いいじゃねえか。金でしか価値を表せないような人間はろくなやつじゃねえ」

女「ところで会社まで取りに行って大丈夫なんですか?」

男「確かにそこで捕まる可能性はあるが、少し考えがある」

女妹「今に見てなさいよ……」

159: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:40:32.848 ID:25PqrL1R0.net
男「あ、そういえばお前んちの会社、なんて名前なんだ」

女「ああ、○○産業よ」

男「なんだと……なるほど」

女「どうしたんですか?」

男「ちょっとな」

160: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:43:49.126 ID:25PqrL1R0.net
時間が経ち、○○産業ビル

女「よし、行きましょう」

男「絶対に俺から離れるな。離れたら殺すぞ」

女妹「わかってるわよ……!」

男「しかし小さな会社の社長でも1億払えるんだな」

女「親は妹を溺愛していますからね」

161: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:46:08.762 ID:25PqrL1R0.net
男「突入」

女父「……! お前か、誘拐犯は」

男「マジかよ、社長が入り口のところにいるなんて」

女父「はやく娘を解放してくれ」

男「とりあえず一人」

女「わっ」

女父「……そっちじゃない。もう一人の方だ」

165: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:52:24.224 ID:25PqrL1R0.net
男「金をよこせよ」

女父「ほら!」バッ

男「おっと」キャッチ

女父「そのトランクの中に一億入っている」

男「よく現金ですぐに用意したな。うわ、たくさんあっていくらかわかんねーや」

女父「はやく娘を返せ」

男「はいはい、ほら」

女妹「お父さん!」

女父「無事か、よかった」

168: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:55:01.019 ID:25PqrL1R0.net
女父「よし、これでもう安心だ」

妹彼氏「僕の出番ですね」

男「どっから出てきたんだコイツは」

女父「ふふふ、警察がくるまでの足止めをよろしく頼むよ」

妹彼氏「大丈夫です、ナイフ一本持っているくらいじゃ負けません」

169: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:56:21.498 ID:25PqrL1R0.net
女妹「きゃー、やっちゃって!」

男「なんだあいつ」

女「ほら、れいの空手の大会で優勝したとかいう妹の彼氏じゃないですか」

男「ふーん…………ん? ……ん??」

170: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 02:57:53.433 ID:25PqrL1R0.net
妹彼氏「手加減しませんよ」

男「おー、こい」

妹彼氏「うおおおおおお!」

女「危ない、避けて!」

174: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:00:06.472 ID:25PqrL1R0.net
男「おら!」パチン

妹彼氏「なっ!?」ビクッ

女「猫だまし……?」

男「あっち行け」

妹彼氏「……は、はい」

180: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:03:13.422 ID:25PqrL1R0.net
女父「なっ、なにをやってるんだ」

女妹「えっ」

女「……まさか」

男「久しぶりだな、また誘拐してやろうか」

女「もしかして妹の彼氏って一ヵ月前の誘拐事件の被害者……?」

182: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:05:57.701 ID:25PqrL1R0.net
女「猫だましで言う事を聞くようにしたって本当だったんですね」

男「まあな」

女父「何をしている、はやくやれ!」

妹彼氏「すいません、あいつに猫だましをされるとトラウマが、うああああ」

女「本当になにをしたんですか……」

男「教育」

189: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:10:26.101 ID:25PqrL1R0.net
男「あれれ? そっちの戦力はそれだけですか」

女「そうみたいですね」

男「警察来る前に帰らないと。あ、えっと、ついてくる?」

女「……はい!」

女父「んぐぐぐ」

男「それじゃ、娘さんは誘拐させてもらう。10万だろうが1億だろうが、いくら金を払っても返さないからよろしく」

女「だそうです」

191: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:13:31.401 ID:25PqrL1R0.net
男の家

男「なんとか帰ってこれた」

女「それはそうなんですけど、なにをやっているんですか?」

男「灯油をまいてる」

女「ですよね。なにをするんですか」

男「これからこの家を燃やす」

194: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:17:03.408 ID:25PqrL1R0.net
男「お前の妹には場所がばれているし、これからは逃亡生活だな」

女「それで家を燃やすんですか?」

男「ああ。それでもついてくる?」

女「もちろんです。愉快じゃないですか」

男「あ、そうだ。電話をかけよう」

女「誰にですか?」

男「一番上のお兄様」

195: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:20:21.951 ID:25PqrL1R0.net
男「もしもし」

男兄「なんだ、久しぶりだな」

男「今日は会社お休みですか?」

男兄「ああ。無職のお前と違って一流企業で働く俺には貴重な休日なんだ」

男「無職じゃなくてフリーターね。俺は俺で忙しいの」

男兄「なにが忙しいってんだ」

男「今は家を焼いてる」

197: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:23:02.991 ID:25PqrL1R0.net
男兄「なんじゃそりゃ。お前もいい加減しっかりと働けよ」

男「今日兄さんの会社に行ってきたんだよ」

男兄「ん、え!?」

男「なーにが一流企業だよ。○○産業って小さな会社じゃないか」

男兄「……」

男「今まで全然調べなかったからわからなかったけど、それでよく俺を見下していたもんだ」

199: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:26:21.769 ID:25PqrL1R0.net
男「ま、実際俺はフリーターだから、小さな会社にでも就職してる兄さんのほうが凄いんだけどさ」

男兄「……」

男「あ、社長の娘さん可愛いよな」

男兄「お前はなんでそんなことまで知っているんだ」

男「どっちのほうが好み?」

男兄「ああ? なんとなく妹さんの方かな」

男「やっぱり兄さんとは馬が合わないな」

201: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:28:13.161 ID:25PqrL1R0.net
ガチャ

女「すっきりしましたか?」

男「うーん、微妙」

女「あー、もうとっととここから逃げた方がいいですよね」

男「そうだな」

女「トランクだけ車につんでおきますね」

男「中身は捨てていこう」

女「えー、1億円を!?」

202: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:29:48.330 ID:25PqrL1R0.net
男「こんなにたくさんあっても使いきれないだろ?」

女「まあそうですけど」

男「さよなら」ポイポイ

女「ああ、1億円が」

男「これでいいんだ」

204: VIPがお送りします 2015/05/03(日) 03:34:10.505 ID:25PqrL1R0.net
俺はあっさりと1億円を燃やした
たしかにこれじゃなんのために誘拐したのかわからん
だが、あの父親から巻き上げた金を使うのがなんだか癪だったんだ

まあなんとかなるだろう
金がなくても、どうにかなる
また今度河川敷デートでもするさ

いつか終わりがくるときまで
車を、走らせる

~おしまい~

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