就活生「さっき助けたジジイが面接受ける会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!」

2019年09月16日
就活生「さっき助けたジジイが面接受ける会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!」

1: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:39:40.468 ID:gQRL8cO40.net
就活生「……ん?」

老人「う、ううっ……!」

就活生「大丈夫ですか、おじいさん!」

老人「薬を……。懐に入ってる薬を……」

就活生「これを飲ませればいいんですね? はい、どうぞ!」

老人「……」ゴクンッ

老人「おかげで助かったわい……。本当にありがとう……」

就活生「いえいえ、お年寄りを助けるのは当然のことですから!」

5: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:43:41.543 ID:gQRL8cO40.net
その日の午後――

とある会社

就活生(今日は社長と一対一の面接だっけ……絶対モノにしてやる!)

就活生「……よし」

コンコン

就活生「失礼します」

ガチャッ

6: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:45:30.020 ID:gQRL8cO40.net
就活生「あっ!」

老人「あっ!」

就活生「あなたはさっきの……!」

老人「君は……!」

就活生「よかった、ご無事だったんですね!」

老人「ああ……君のおかげじゃよ」

就活生「……」

就活生(さっき助けたジジイがこの会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!)

就活生(俺はなんてツイてるんだ!)

7: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:48:16.896 ID:gQRL8cO40.net
老人「えー、お名前は?」

就活生「○×大学の△△と申します」

老人「よろしい」

老人「では本日の面接はここまでです。お引き取り下さい」

就活生「は?」

就活生「え、ちょっと待って下さいよ! もう終わり? 合否はどうなるんですか!?」

老人「もちろん不採用、とっととお帰り下さい」

就活生「なんだって!?」

8: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:51:27.962 ID:gQRL8cO40.net
就活生「ふざけるな! こんな面接あるか! もっとちゃんとやってくれよ!」

老人「ちゃんとやりました。お帰り下さい」

老人「あなたは弊社とはなんの縁もゆかりもありません」

就活生「……!」

就活生「さっき……俺あんたのこと助けたじゃないか! あんたは俺に恩があるだろ!」

老人「はて? なんのことやら……」

就活生「とぼけやがってぇぇぇ……! ジジイがぁぁぁ……!」

14: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:55:50.602 ID:gQRL8cO40.net
就活生「世の中ギブアンドテイク! 助けられたなら助けるのがスジだろう!」

老人「知らんよそんなことは」

就活生「俺は未だに無い内定で、今日の面接には全てをかけてきたんだ!」

老人「だからなに? 帰れっていってんだからとっとと帰らんかい」

就活生「いや、帰らない! 絶対帰るもんか! 俺を採用してくれぇぇぇ!」ガシッ

老人「コ、コラッ! はなれんか、バカモン!」

就活生「絶対離さないぞ! 内定くれるまで!」

ガタンッ!

就活生(あ、しまった! 机倒しちまった!)

15: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 00:57:29.225 ID:gQRL8cO40.net
迷彩男「……」





就活生「……え?」

17: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:00:33.590 ID:gQRL8cO40.net
迷彩男「……」

就活生「あの、あなたは? 面接官さん? ……じゃないですよね」

迷彩男「見られてしまったか。これでこの小僧も逃がすわけにはいかなくなったな」ジャキッ

就活生「じゅ、銃!?」

老人「くっ……!」

就活生「ど、どういうこと!? これはどういうことだ、ジイさん!?」

老人「実は今このビルは……テロリストに占拠されておるのじゃよ……」

就活生「なんだってえええええ!?」

就活生(だから俺を巻き込むまいと、さっさと帰らそうとしてたのか……!)

就活生(しかも、“俺はこの会社と縁がない”って強調してくれて……!)

就活生(ジイさんはちゃんと、俺に必死で恩を返そうとしてたんだ……!)

18: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:03:32.015 ID:gQRL8cO40.net
老人「頼む!」

迷彩男「ん?」

老人「彼はなんの罪もない就活生じゃ! ここを出ても警察に駆け込んだりはせん!」

老人「どうか今すぐ帰してあげてくれ!」

就活生(ジイさん……)

迷彩男「……まあ、いいだろう。命拾いしたな、小僧。とっととビルから出ていけ」

迷彩男「名前は覚えたし、もし警察に駆け込んだら、命はないからな」

就活生「は、はい……」

老人「……」ホッ

就活生(ジイさんのおかげで助かった……)

21: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:06:40.895 ID:gQRL8cO40.net
就活生「……」

就活生(だけど、このままでいいのか? このまま助けられたままで――)

就活生(――いや!)

就活生「就活七つ道具の一つ、四季報!」ジャキッ

迷彩男「む?」

就活生「てやぁぁぁっ!!!」ブンッ

ガンッ!

迷彩男「ぐっ!?」

ドサッ…

就活生「はぁ、はぁ、はぁ……」

24: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:09:05.536 ID:gQRL8cO40.net
老人「なにをやっとる! こんなことしたらただでは済まんぞ!」

就活生「さっきもいったろ? 年寄りを助けるのは当然のことだって」

就活生「それに、ジイさん見捨てて一人帰るなんて俺の性分じゃないんでね!」

就活生「戦おう、ジイさん!」

老人「……うむ!」

老人「にしても、今時の学生は四季報なんて洒落たもんを持っとるのう」

就活生「色んな会社のデータが載ってるからね、まあぶっちゃけほとんど読んでないけど」

老人「買って満足しちゃうタイプね」

就活生「とりあえず、懐にしまっとくか」スッ

27: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:12:40.839 ID:gQRL8cO40.net
タタタタタッ… タタタタタッ…

「派手な音がしたぞ!」 「なにかあったのか!?」 「どうした?」

老人「まずい、仲間が来よったぞ!」

就活生「あわてないあわてない」

就活生「就活七つ道具、潤滑油!」バシャーッ

「うおあっ!?」 「す、滑る!」 「うわぁぁぁ!」

ツルツルッ スッテーンッ ドザァッ

老人「す、すごい! しかし、なぜ潤滑油なんて持っとるんじゃ?」

就活生「就活本に書いてあったから」

老人「多分それ違う意味だと思うよ」

28: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:15:10.587 ID:gQRL8cO40.net
就活生「そういや、他の社員の人はどこにいるの?」

老人「他の社員は全員、最上階の大会議室に閉じ込められているはずじゃ」

就活生「じゃあ、俺たちで助けに行こう!」

タタタッ…

就活生「……ゲ!」


テロリストA「あ~、腹減った。見張りなんてつまらんぜ」


老人「どうする?」

就活生「回り道はできないし、こうなったら――」

30: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:17:20.725 ID:gQRL8cO40.net
就活生「就活七つ道具の一つ、スルメ!」サッ

就活生「ねーねー、テロリストさん」

テロリストA「ん?」

就活生「スルメあげるからここ通してくんない?」

テロリストA「いいよ!」

就活生「サンキュー!」

テロリストA「おほっ、噛めば噛むほど味が出る!」クチャクチャ

就活生「行こう、ジイさん!」クチャクチャ

老人「おう!」クチャクチャ

31: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:19:24.606 ID:gQRL8cO40.net
テロリストB「そこまでだ!」ジャキッ

就活生「ぐっ!」

老人「しまった!」

テロリストB「二人まとめて射殺してやる!」

就活生「……ま、待て!」

テロリストB「?」

就活生「この手帳……見てみないか?」

就活生「俺が100以上の会社説明会で収集した、色んな会社のデータが記してある」

テロリストB「ほう? どれどれ……」

32: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:21:30.899 ID:gQRL8cO40.net
テロリストB「なんだこれ!? きったない字だな……!」

就活生(ダメか……?)

テロリストB「これは解読しがいがある……」

テロリストB「ふむ……ふむ……読める、読めるぞ!」

就活生「どうやら暗号マニアかパズルマニアだったようだな」

老人「おかげで助かったわい」

34: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:24:22.303 ID:gQRL8cO40.net
女テロリスト「あなたたちは何者!?」ジャキッ

就活生「ゲ!」

老人「女性のテロリストもおったんか!」

女テロリスト「当然でしょ? うちの組織は男女平等なの」

女テロリスト「可哀想だけど死んでもらうわ」

就活生「こうなったら……」

就活生「就活七つ道具、証明写真!」サッ

35: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:27:25.607 ID:gQRL8cO40.net
就活生「これ、どうぞ」

女テロリスト「やだ、なにこのイケメン! 誰なの、紹介してよ!」

就活生「俺です」

女テロリスト「うわ、全然別人じゃない!」

女テロリスト「うーん……」ドサッ

老人「ショックで失神した!」

就活生「写真屋に頼んで、ちょっと修正しすぎたか……」

老人「ていうか、履歴書に貼る写真を美化しすぎたらいかんじゃろ」

37: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:30:43.806 ID:gQRL8cO40.net
テロリストC「ここからは通さんぞ!」

就活生「就活七つ道具、自己分析シート!」サッ

テロリストC「なんだこれ……」

就活生「俺の長所短所やアピールポイントをまとめたものだ」

テロリストC「……」

テロリストC「なんて……ろくな取り柄も思い出もない、哀れな人生を送ってる奴なんだ……」

テロリストC「行け……」

就活生「ども」

老人「だんだんおぬしが気の毒になってきたわい」

38: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:33:42.334 ID:gQRL8cO40.net
タタタタタッ…

老人「あと少しで大会議室じゃ」

就活生「ここらで就活七つ道具のラスト、ビールでも飲もうか」

老人「へ? なんでビールが七つ道具なんじゃ?」

就活生「酔っ払って面接受けると案外受かるって聞いたことあって」

老人「ずいぶんリスキーな手段じゃのう。酒の匂いがしたら一発アウトじゃろうし」

就活生「ほら、ジャックダニエルもあるぞ」

老人「おぬしが未だに無い内定の理由、なんとなく分かったような気がする……」

40: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:37:47.482 ID:gQRL8cO40.net
就活生「すっかり酔っ払っちまったなぁ~」

老人「うんうん」

就活生「いくぞぉ~、ジイさーん!」

老人「おーう!」

就活生「酔拳だぁ~!」

ドカッ! バキッ! ガッ! ベキッ! ガツッ!

「うぎゃ!」 「ぐえ!」 「ふぐ!」 「ぐはっ!」 「ごふっ!」

老人「ほっほっほ、敵が全滅したわい」

就活生「よっしゃ、一気に大会議室になだれ込むぞ~!」

41: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:40:21.214 ID:gQRL8cO40.net
リーダー「おっと」ジャキッ

就活生「うわっ!」

老人「なっ!?」

リーダー「もう敵はいないと思い、不用意に飛び込んできたんだろうが、詰めが甘かったな」

就活生「くっ……! 酔いが覚めちまった……」

老人「ま、待て! 彼はただの就活生で……」

リーダー「ただの就活生? ハッ、ただの就活生がここまでたどり着けるか!」

リーダー「就活の続きはあの世でするんだな……地獄の閻魔様相手にな」

就活生「ううっ……」

42: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:42:18.643 ID:gQRL8cO40.net
リーダー「死ねっ!」ズドンッ!

就活生「ぐ、は……っ!」

ドサッ…



老人「就活生くううううんっ!!!」

44: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:45:15.134 ID:gQRL8cO40.net
リーダー「次はお前だ、ジジイ」

老人「おのれっ……!」

リーダー「あばよ……」

ムクッ

リーダー「?」

就活生「詰めが甘いのは……」

リーダー「な、なんで!? たしかに胸に――」

就活生「お前だぁぁぁぁぁっ!!!」

ガツンッ!

46: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:48:06.895 ID:gQRL8cO40.net
リーダー「……」ピクピク


ワァァァァ……!


「助かった……!」 「社長たちが助けてくれたんだ!」 「すぐ警察に連絡を!」



老人「よかった……。しかし、たしかに胸を撃たれてたのにどうして助かったんじゃ?」

就活生「今武器に使ったこれさ」サッ

就活生「懐に四季報を入れてなきゃアウトだった」

老人「おお……! さすがのぶ厚さ!」

49: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:51:17.798 ID:gQRL8cO40.net
老人「一度ならず二度までも助けてもらえるとは……本当にありがとう」

就活生「なんのなんの、俺が勝手にやったことだし」

老人「この恩はきっちり返さねばなるまいな」

就活生「ってことは、もしかして? ……もしかして!?」

老人「うむ……」

老人「もちろん、不採用じゃ!」

就活生「!!!」ガーン

51: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:54:16.458 ID:gQRL8cO40.net
就活生「そんなぁ……」ガックリ

老人「いや……勘違いしないで欲しい」

老人「おぬしにはぜひある企業を紹介したい。うちよりもずっと待遇はよく、高給じゃ」

老人「そしてなにより、絶対おぬしに向いておる!」

就活生「どういうこと?」

老人「おぬしには背広着たサラリーマンなどもったいない……ということじゃよ!」

就活生「……へ?」

53: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 01:57:09.605 ID:gQRL8cO40.net
……

……

コソコソ…

ビル荒らし「へっへっへ……おお、お宝がいっぱいだ!」

ビル荒らし「こういう小さなビルはセキュリティ甘いからなぁ~」

ビル荒らし「思う存分、荒らしまくってやるぜ!」

「おーっと、そうはいかないな」

ビル荒らし「!?」ビクッ

54: VIPがお送りします 2019/02/19(火) 02:00:28.681 ID:gQRL8cO40.net
ビル荒らし「お、お前は!?」

警備員「お前、最近ここらのオフィスを荒らしてるビル荒らしだな?」

警備員「だが、お前の悪行もここまでだ。なにしろ俺の賊撃退率は100%を誇る!」

ビル荒らし「くっ……!」

警備員「さあ、警備七つ道具を見せてやるぜ!!!」







― 完 ―

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