新入り「悪の組織に入ったけど想像してたのとなんか違う」ボス「アットホームな職場です!」

2019年09月21日
新入り「悪の組織に入ったけど想像してたのとなんか違う」ボス「アットホームな職場です!」

1: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 00:46:01.964 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「ようこそ、悪の組織へ! えー、君が今日から新しく入る人?」

新入り「はいっ! よろしくお願いします!」

ボス「前科はあるのかな?」

新入り「実は……ないんです」

ボス「いいねえ! 我々は君のような人材を求めていたんだよ!」

新入り「ホントですか!?」

ボス「我が組織はアットホームなのがウリでねえ、今日から君も我々のファミリーだ!」

新入り(ファミリー……! いい響きだ……!)

2: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 00:50:12.682 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「さっそく我が組織の≪四天王≫を紹介しよう」

売人「ヒヒヒ……よろしく」

包丁女「よろしくお願いします」

業者「ちわっす!」

大男「ガッハッハ、俺様は厳しいぜぇ?」

新入り「皆さん、よろしくお願いします!」

ボス「しばらくはこの四人に付き従ってもらって、仕事を覚えてもらうよ」

新入り「はいっ!」

新入り(うひゃ~、どの人も凶悪そうだ! こりゃ期待できる!)

3: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 00:52:34.183 ID:/YUvlmOZ0.net
売人「今日はボクについてきてもらおうか」

新入り「はいっ!」

新入り「ところで、売人さんはいったいなにを売るんですか?」

売人「ボクはヤクの売人だ……決まってるだろう?」ニタァ…

新入り「ヤ、ヤク……!」

売人「そう、お薬さ。君にはサポートをしてもらうよ」

新入り(まだ研修なのに、いきなりこんな大仕事に立ち会えるなんて……)

4: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 00:55:07.625 ID:/YUvlmOZ0.net
売人「おばあちゃん、具合はどうだい?」

老婆「神経痛がひどくなってねえ……」

売人「おおっ、そりゃいけないねえ」

売人「だったら……」ゴリゴリ

売人「はい、これ。これを食後に飲めば、だんだん痛みが消えていくよ」

老婆「ありがとうねえ。あんたのお薬飲むとすぐ楽になるんだよ。副作用もないし……」

売人「ヒヒヒ、お体を大事にね。おばあちゃん」

新入り「んん……?」

7: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 00:58:21.084 ID:/YUvlmOZ0.net
中年「医者から血圧が高めだといわれて……」

売人「だったらこれだねえ。ただし、自分でも血圧を管理しないとダメだよ」


会社員「二日酔いになっちまって……」

売人「ヒヒヒ、飲みすぎちまったかい。これを飲みな。すぐ治まるから」


……

……


売人「ふぅ、今日はこんなところかな。君もお疲れ様」

新入り「いえ……」

8: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:00:13.857 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「あ、あのっ……!」

売人「なんだい?」

新入り「なんですかこれ? これじゃまるで、ただの薬局じゃないですか!」

売人「だからいったろう? ボクはヤクの売人なんだって」

新入り「はぁ……」

新入り(ヤクはヤクでも、本当に健全なお薬じゃないか……!)

10: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:03:07.000 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「うーん……」


先輩『俺は悪の組織に入るぜ……そこで裏社会のトップに立ってやるのさ』

新入り『マジかっけえっす!』


新入り(かっこいいワルだった先輩に憧れて、俺も先輩とは違う悪の組織に入ってみたけど……)

新入り(想像してたのと違う……)

新入り(いや、きっと今日は初日だから、危険のない仕事をやらせてもらったんだろう!)

新入り(裏の仕事は、もっと信用してもらわなきゃ任せてもらえないだろうし……)

新入り(うん、そうに違いない!)

11: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:05:25.980 ID:/YUvlmOZ0.net
業者「今日はオレの仕事を手伝ってもらうよ」

新入り「はいっ!」

新入り「ところで、業者さんはいったいなにを……?」

業者「輸入さ。いわゆるミツ輸ってやつ?」

新入り「み、密輸!?」

新入り(なにを密輸するんだろ? やっぱり武器や兵器か? それとも希少な保護動物とか?)

新入り(俺、ワクワクしてきたぞ!)

12: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:07:25.901 ID:/YUvlmOZ0.net
業者「お、積み荷が来た」

新入り「ずいぶん堂々と輸入するんですね。もっとコソコソやるのかと……」

業者「コソコソやってたら、作業がはかどらないからね」

新入り「あー、なるほど。堂々とやった方がかえってバレないといいますしね」

新入り「で、商品はなんです?」

業者「これを輸入したんだ」

新入り「なんですかこれ?」

業者「ハチミツだよ」

新入り「は?」

13: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:10:04.977 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「あの……密輸じゃないんですか?」

業者「だからミツ輸だよ。ハチミツを輸入したんだからミツ輸」

新入り「はぁ……」

業者「このハチミツは海外のごく一部の地域でしか採れないから、ものすごく貴重なんだ」

新入り(なんだこのしょうもないオチは……)

新入り(いや、もしかして、ヤバイ作用のハチミツだったり? 舐めると幻覚が見えるとか……)

14: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:12:36.055 ID:/YUvlmOZ0.net
業者「ちょっと舐めてみるかい?」

新入り「え、いいんですか?」

業者「自分が扱う商品の味を知っておくのも仕事のうちさ」

新入り「……」ペロッ

新入り「あまぁーい! うんまぁ~~~~~い!」

業者「だろ?」

新入り「はいっ! 濃厚な甘さと程よい酸味、それでいて後味はスッキリしてて……」

新入り「これをパンに塗ったら最高の朝食になりますよ!」

新入り(ってなに食レポしてんだ俺は)

16: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:16:19.728 ID:/YUvlmOZ0.net
包丁女「今日は私の仕事を手伝ってもらいます」

新入り「いったいどんな仕事ですか?」

包丁女「死体を切ったり売ったりするお仕事です」

新入り「えええっ!?」

新入り「そんなの俺にできるかなぁ……」

包丁女「練習すればすぐできるようになりますよ」

新入り「頑張ります!」

17: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:18:24.954 ID:/YUvlmOZ0.net
ザクッ! ザクッ! ザクッ!

包丁女「うん、引き締まったいい身ですね」

新入り「あの……これは?」

包丁女「ご覧の通り、マグロですけど」

新入り「たしかにすごい包丁さばきですけど……」

包丁女「さあ、お客が来ます。売りますよ。あなたも元気よく声を出して下さい」

新入り「は、はいっ」

18: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:20:26.411 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「いらっしゃい、いらっしゃーい!」

新入り「マグロおいしいよー! 今日のは特に身が引き締まってますよー!」

新入り「そこの奥さん、ちょっと食べてってー!」

包丁女「よく声が出ていますし、ずいぶん手慣れてますね」

新入り「実は魚屋でバイトしてたことがあって……」

包丁女「まぁっ、頼もしい。そのうち、あなたにも包丁を握ってもらうことになるでしょう」

新入り「……楽しみにしてます」

19: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:23:15.082 ID:/YUvlmOZ0.net
大男「今日は俺様についてこいやァ!」

新入り「はい……」

新入り「大男さんは何をやるんです? 引越しの手伝い? それとも畑仕事ですか?」

大男「バカいっちゃいけねえ! 土地をいただくのよォ!」

新入り(おおっ、地上げ!? ついにそれっぽいの来た!)

20: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:25:15.139 ID:/YUvlmOZ0.net
大男「んじゃ、爺さん、ここにハンコ押してくんな」

老人「こんな土地をこれほどの高値で買い取ってくれるなんて、ありがとう」ポンッ

大男「いいってことよ!」

新入り「……」

大男「どした?」

新入り「なんていうか、えらく平和的ですね」

大男「あぁん? どんなの想像してたんだよ」

新入り「たとえば、嫌がらせして立ち退かせるとか……」

大男「んなやり方、まどろっこしすぎるぜえ! とっとと金払った方がよっぽどラクだ!」

新入り「そんなもんですかね」

21: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:27:27.566 ID:/YUvlmOZ0.net
大男「それに、ここは立地条件がとてもいいんだ! この土地を買えば大儲けできる!」

新入り「おおっ、いったいなにを建てるんです?」

新入り「カジノ? それともキャバ? 闇の格闘技場なんてのも面白いかも……」

大男「決まってんだろ? ……スポーツジムよ」ニヤッ

新入り「超健全~!」

22: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:30:05.082 ID:/YUvlmOZ0.net
アハハハハ… ワイワイ… ワイワイ…

ボス「じゃあ今日は、新入り君を歓迎して乾杯っ!」

売人「ヒヒヒ、乾杯……」

包丁女「乾杯」

業者「カンパーイ!」

大男「うおっしゃあ!」

新入り「えーと、乾杯!」

23: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:31:39.284 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「仕事には慣れてきたかね?」

新入り「ええ、まあ」

売人「キミには才能がある。ボクの仕事をどんどん覚えてくれるよ」

業者「うん、将来有望! いい新人が入ってくれたよねえ」

包丁女「手先が器用なのか、包丁さばきもだいぶ手慣れてきました」

大男「そのうち、ジムの経営も任せてやるからな!」

ボス「こりゃ、数年も経てば、四天王が五人になっているかもしれんな」

新入り「アハハ……」

25: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:34:28.803 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「ハァ……」

新入り(たしかに今の仕事は面白い。みんないい人だし、やりがいもある)

新入り(悪の組織どころか、悪い点が見当たらないくらいホワイトな職場だ)

新入り(だけど……)

新入り(先輩みたいなカッコイイ悪になるという夢も未だに忘れられない……)

新入り(俺みたいな奴が、本当にあんないい人達と仕事をしてていいんだろうか?)

新入り(こんな中途半端な気持ちじゃ、きっとそのうち迷惑をかけてしまう!)

新入り「……決めた!」

26: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:37:19.318 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「……ボス。折り入って話があります」

ボス「なんだね?」

新入り「これを受け取って下さい」スッ

ボス「これは……退職届!?」

新入り「はい……」

ボス「な、なぜ……!? 給料安かった!? それとも人間関係!? 仕事がつまらない!?」

新入り「いえ、どれも違うんです」

ボス「じゃあなぜ!?」

新入り「それは……いえません」

新入り「短い間でしたが、お世話になりました。どうもありがとうございました」

ボス「ああっ……!」

27: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:39:23.374 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り(これでよかったんだ……)

新入り(俺はこれから初心に帰って……先輩のような悪を目指す!)

新入り(さっそく先輩に連絡を取って――)


「おーい!」


新入り「!」

新入り(この声は――)

28: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:41:50.178 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「せ、先輩!?」

先輩「ちょうどいいところにいた……。まさに運命の再会ってやつだな」

新入り「先輩こそ、ちょうどいいところに……」

先輩「あのさ、お前……たしか俺みたいな悪になりたいっていってたよな?」

新入り「ええ、いいました! 今でもなりたいです!」

先輩「だったらさ、これから俺の仕事手伝ってくれねえか?」

新入り「それってもしかして、先輩が所属してる……?」

先輩「ああ、俺が所属してる悪の組織の仕事だ」

新入り「やります! やらせて下さい!」

先輩「マジ助かるぜ……ついてきてくれ!」

30: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:46:43.168 ID:/YUvlmOZ0.net
先輩「着いたぞ」

新入り「ここは……どこかの倉庫ですか?」

先輩「ああ、そうだ。あれが見えるか?」

新入り「……?」

新入り「うわっ!?」

31: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:49:22.767 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り(人がいっぱい寝てる……いや、死んでるのか? まさか……)

新入り「この人たちは……?」

先輩「商品だよ」

新入り「商品……!」

先輩「臓器を抜き取って売るために、冷凍状態にして保存してあるんだ」

新入り「え……ッ! そんなことできるんですか……?」

先輩「ああ……闇の最新科学ってやつだ」

新入り(俺はなにビビってんだ。こういうのを求めてたんじゃないのか!)

新入り「それで……俺に手伝って欲しいことって?」

先輩「いや……お前の仕事はもう終わってるんだ」

新入り「へ?」

32: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:52:28.630 ID:/YUvlmOZ0.net
首領「その通り」ザッ

先輩「首領!」

首領「君の役割は、この倉庫まで来てくれることだったのだよ」

新入り(こいつが先輩の組織のボスか……!)

新入り「どういうことです?」

首領「つまり、健康な若者の肉体を一つ確保できたということさ」

新入り「は!? せ、先輩っ! これは……!」

先輩「すまねえ……。俺、組織でヘマしちゃってさ……」

先輩「損失埋めるためには死んで臓器売るしかねえぞっていわれて、それで……」

新入り「俺を身代わりにしようとしたのか!」

34: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:55:32.263 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「冗談じゃない! 誰が臓器なんか渡すか!」

首領「残念ながら、君はもう逃げられんよ」パチンッ

ズラッ…

新入り「うっ……!」

首領「この通り、私の手下が大勢いるからね。ネズミ一匹逃げ出せはしないさ」

先輩「ごめんな……恨まないでくれよ」

新入り「先輩っ……!」

首領「これで、健康な若者の肉体を“二体”確保できたというわけだ」

先輩「え……?」

35: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 01:58:32.840 ID:/YUvlmOZ0.net
先輩「あの首領、“二体”ってのはどういう……?」

首領「決まってるだろう。お前も今から商品になるんだよ」

先輩「な、なんでぇ!? ちゃんと代わりに後輩を連れてきたじゃないですか!」

首領「あんなヘマをやらかした奴を許すわけなかろう。それが“我々の世界”だ」

先輩「ひぃぃっ! そ、そんなぁ……」

新入り(憧れの先輩も……この世界じゃ下っ端に過ぎなかったってことか……)

先輩「死にたくない……助けてぇ……」ガタガタ…

新入り「……」

新入り(俺はバカだった……生半可な覚悟で、こんな世界に入ろうとして……)

新入り(こんな目にあうのも当然の報いだ……)

新入り(だけど、ただじゃ死なない! せめて最後まで足掻いてやる!)

36: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:00:49.596 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「来い! 俺の臓器……取れるもんなら取ってみろ!」サッ

先輩「お前、なにしてんだよ!? こんな人数相手に勝てるわけねえだろぉ!」

新入り「どうせ負けるなら、参ったするより最後まで抵抗して負けたいですから」

首領「ほう、カタギだろうに、隣で泣きべそかいてるバカよりもよっぽど肝が据わっている」

首領「少々惜しい気もするが……お前たち、まずはあの青年を始末しろ」

手下A「はっ!」





「……惜しいのなら、それは待ってもらおうか」

39: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:03:36.805 ID:/YUvlmOZ0.net
首領「なんだ、お前は?」

新入り「ボ、ボス……!?」

ザワザワ…

ボス「その新入り君は、我がファミリーの一員でね。死なせるわけにはいかない」

ボス「大人しく返してもらえないか?」

首領「ファミリー? お前もどこかの組織の者か……」

首領「あいにく、それはできんな。彼の体はバラバラにして、闇ルートに流通させてもらう」

ボス「返さないのなら、我が≪四天王≫が相手をすることになるが……」

首領「四天王?」

40: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:06:14.910 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「彼らだ」

売人「ヒヒヒ……はじめまして」

包丁女「新入り君を返して下さい」

業者「ハチミツ舐めて、元気満タン!」ペロリ

大男「ガハハ、俺らのファミリーに手ぇ出すとはいい度胸だな!」

首領「なんだこいつらは……。同業者と思いきや、ただのごっこ遊びの集団か」

首領「おい、せっかく商品が増えたんだ。全員、丁重に葬ってやれ」

手下A「はい」

新入り「ボス、みんな! 逃げて下さいっ! こいつらはマジな犯罪組織なんですっ!」

41: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:08:31.935 ID:/YUvlmOZ0.net
手下A「たっぷり可愛がってやるよ!」ダッ

包丁女「いきなり私ですか。あわよくば押し倒して――という下心が見え見えですね」

包丁女「ですが」

ザシュッ!

手下A「え……?」ブシュゥゥゥゥゥ…

ドサッ…

包丁女「私も、そう簡単に体を許すつもりはございませんので」



首領「な……!?」

新入り「え……!?」

42: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:10:44.587 ID:/YUvlmOZ0.net
大男「俺様のパンチを受けてみやがれぇ!!!」

グシャアッ!

手下B「ぐばっ!」

大男「あーあ、顔面がスイカみたいに砕けちまったよ」



売人「ど、れ、に、し、よ、う、か、な。うん、決めた」

売人「ヒヒヒ、なるべく苦しんで死ねる毒薬をプレゼント」チクッ

手下C「うぐ!?」

手下C「あがっ! ぐおおおっ! ぐぼおおおおおおおっ! あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」

43: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:13:03.745 ID:/YUvlmOZ0.net
ギャァァァ… グェェェ… ヒィィィ… タスケテェェェ…


首領「なんだとぉ……!?」

新入り(あの人たち、こんなに強かったのか……!)

首領「くそっ、あんなふざけた連中相手になにをやっている!」

首領「撃てっ! 撃ち殺せぇっ!」

手下D「はいっ!」チャッ



ボス「……業者」

業者「オッケーでーす!」

44: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:16:35.717 ID:/YUvlmOZ0.net
業者「俺ら倒すんならさぁ……」ジャキッ

業者「せめてロケランぐらい用意してくれよなぁ~」

首領「わっ!?」

業者「発射オーライ! なーんてね」バシュッ!

首領「に、逃げっ――」





ドゴォォォォォォォンッ!!!

45: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:18:37.222 ID:/YUvlmOZ0.net
シュゥゥゥゥゥ… プスプスプス…

首領「あ、あぐぅぅぅ……」

ボス「ほう、まだ生きていたか」

首領「なん……なんだ……? なん、なんだ……お前、ら……?」

ボス「冥土の土産に教えてやろう」

ボス「悪の組織だよ」

首領「……」ガクッ



新入り(たった四人で……あんな大所帯を壊滅させてしまった……)

47: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:22:11.300 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「売買されるはずだった遺体は丁重に弔ってやるとして……残るはお前か」

先輩「ひっ!」

ボス「お前のやったことも万死に値する。とても許せるものではない。が……」

ボス「新入り君に免じて、助けてやろう」

先輩「あ、ありがとうございます!」

ボス「だが、次はない」

ボス「次我々と出会ったら、七日七晩たっぷり苦しめた後、殺してやる」

ボス「そうなりたくなければ、せいぜい平身低頭、ひっそりと生きていくことだ」

先輩「……は、はい」

48: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:24:54.967 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「まずはお礼を言わせて下さい……ありがとうございました」

売人「ヒヒヒ、どういたしまして」

包丁女「ご無事でなによりです」

業者「ロケランぶっ放すの久々だったから、ちょっと手元が怪しかったよ」

大男「久々に暴れられて楽しかったぜ!」

ボス「……」

新入り「ボス……これは一体どういうことです?」

ボス「すまん、実はもう一度君を説得しようと、こっそり後を尾けてて――」

新入り「そうじゃなくて! この人たちの異常な強さはいったいなんなんです!?」

新入り「眉一つ動かさず組織一つ壊滅させた、あなたの冷酷さはなんなんです!?」

ボス「……」

49: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:27:38.544 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「私は……かつてあらゆる悪事を重ねてきた極悪人だ」

ボス「もし、その罪状を並べたら、死刑に100回なったって到底足りぬだろう」

ボス「他の四人も似たようなもの、と思ってくれていい」

新入り「……!」

ボス「しかしある時、我々は悪事を行うのがまっぴらになってしまった」

ボス「罪悪感からか、単に悪事に飽いたからなのか、それはなんともいえん」

50: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:30:17.098 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「法で裁いてもらうことも考えた……」

ボス「ところが、もはや法も我々を裁くことはできない」

ボス「我々を公に裁こうとすれば、この国を揺るがすスキャンダルがごまんと出てくるからな」

ボス「刺客が送られてきたこともあったが、全て返り討ちにしてしまった」

新入り「……」

ボス「死ぬことも考えた……が、我々も元は悪で生計を立てていた人間だ。生への執着心は人一倍あった」

ボス「結局、死ぬこともできなかったのだ」

新入り「それで……今のような組織を?」

ボス「そうだ」

51: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:33:22.161 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「100回死んでも足りないほどの極悪人たちが、裁かれもせず死ぬこともせず」

ボス「のうのうと生を満喫して、健全な商売をして、どこか罪を償ってる気にすらなっている」

ボス「これほどの“悪の組織”は……他になかろう」

ボス「我らに比べれば、さっき壊滅させた奴らの方が、よっぽど潔く健全だ」

新入り「……」

ボス「君と過ごした日々は楽しかった。先ほどの退職届は受理させてもらうよ」

ボス「では達者で――」

新入り「待って下さい!」

52: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:35:53.629 ID:/YUvlmOZ0.net
新入り「俺……やっぱり辞めません!」

ボス「え」

新入り「命を助けられて、このままじゃどうにも収まりが悪いですし……」

新入り「それに、あなたたちの生き方は間違ってるのかもしれませんけど……」

新入り「それでも、今やってることは立派だと思いますから……」

ボス「立派といっても、我々は極悪人だぞ?」

新入り「いいんです。俺、元々悪を目指してた人間ですから……」

新入り「それにせっかく入れたホワイトな職場、簡単に辞めたらもったいないじゃないですか!」

ボス「フッ、そっちが本音か? 君にも悪の才能はあるようだな」

54: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:38:03.764 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「分かった、君の復帰を認めよう」

ボス「それでは、今夜は新入り君の復帰を祝って、パーッとやろう!」

新入り「ありがとうございます!」

売人「ヒヒヒ……めでたしめでたし」

包丁女「あなたほどの逸材を手放したくはなかったですからね」

業者「これからもミツ輸しような!」

大男「ガハハ、新入り、今夜はとことん飲もうぜ!」

55: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:41:23.313 ID:/YUvlmOZ0.net
――

――――

新入り「売人さん、例の薬草、採取してきました!」

売人「おお、助かるよ。あれはなかなか手に入らなくて」


新入り「包丁女さん、俺の包丁さばき、どうですか?」ザクッザクッ

包丁女「ええ、だいぶよくなってきましたね」


新入り「業者さん、ハチミツの大手ケーキメーカーへの売り込み、成功しました!」

業者「おっ、やるねえ!」


新入り「大男さん、老人会の団体さんがジムに入会してくれました!」

大男「あの爺さんたち、きっと長生きしてくれるぜ!」

56: VIPがお送りします 2019/02/07(木) 02:44:06.719 ID:/YUvlmOZ0.net
ボス「新入り君、よくやってくれているね。おかげで我が組織はさらに潤ってるよ」

新入り「ありがとうございます、ボス」

ボス「君が四天王を越え、組織のボスに君臨する日もそう遠くはないかもしれないな」

新入り「またまた~! おだてすぎですって!」

ボス「その時こそ、この組織は真の“善の組織”に――」

新入り「?」

新入り「今何かおっしゃいましたか?」

ボス「いや……何でもない」





― 完 ―

このページのトップヘ