妻「フランスの古物商からギロチン買ったからあなたの首切断していい?」夫「いいわけねーだろ!」

2019年09月25日
妻「フランスの古物商からギロチン買ったからあなたの首切断していい?」夫「いいわけねーだろ!」

1: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:04:25.691 ID:f/jJbiAl0.net
夫「ただいま……ってなんだこりゃ」

妻「ジャーン! 買っちゃった! ギロチン!」

夫「買っちゃったて……」

妻「フランスの古物商がやってる通販サイトで見かけたから、ついポチっちゃったの」

夫「高かっただろ、こんなの……」

妻「フランス革命の年にちなんで17,890円だったわ」

夫「安いなオイ」

妻「せっかくだし、あなたの首切断していい?」

夫「いいわけねーだろ!」

5: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:08:17.040 ID:f/jJbiAl0.net
夫「なんの断りもなくこんなの買って……君はまさにマリー・アントワネットだな」

妻「じゃああなたはルイ16世?」

妻「飾っとくだけじゃ勿体ないし、なにか切断したいな」

夫「だったらこの青首大根でいいだろ」

妻「そうね、本物の首は次の機会にとっときましょ」

夫「永久にとっとけ」

妻「じゃ、せーのっ」

ズバンッ!

夫「おおー、骨董品だろうに、よく切れるな!」

8: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:11:06.103 ID:f/jJbiAl0.net
モワモワモワ…

夫「ん?」

妻「ギロチンから煙が……」

モワモワモワモワモワ…

ルイ16世「……」

マリー「……」

夫「うおっ!?」

妻「ギロチンで大根切ったら、外国人の男女が出てきたわ!」

13: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:14:19.231 ID:f/jJbiAl0.net
夫「日本語が通じると思えないけど……どこのどなた?」

ルイ16世「朕はルイ16世」

マリー「私はマリー・アントワネット」

夫「は!?」

妻「ウソ!?」

ルイ16世「まあ、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。ハッハッハ」

マリー「よろしくね!」

夫「思ったよりフランクだな……」

妻「フランスだけに?」

14: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:18:37.793 ID:f/jJbiAl0.net
夫「えーっと、なぜここに現れたんです?」

ルイ16世「朕たち、二人ともギロチられて死んだだろう?」

ルイ16世「だから、ギロチンに残留思念めいたものがずっと残っていたのだ」

マリー「そこへあなたたちがギロチったから、それできっかけでこの世に呼び戻されたのね」

マリー「多分、残留思念に引き寄せられるような形で」

夫「ギロチるとか動詞みたいにいうな」

妻「それにどうしてフランス人なのに日本語ペラペラなの?」

ルイ16世「朕たちが死んであの世に行ってから、もう200年以上経つ」

ルイ16世「それだけあれば、日本語をマスターすることくらいできるさ」

夫「俺、2200年になっても、多分フランス語喋れないと思う……」

17: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:21:11.998 ID:f/jJbiAl0.net
夫「とはいえ、お元気そうでなによりです」

夫「お子さんたちとも、仲良くやってますか? たとえばルイ17世とか」

ルイ16世「ああ、もちろんだとも。家族みんな仲良しさ」

夫「よかった……」ホッ

妻「え、ルイ17世ってなにかあったの?」

夫「とても可哀想な死に方したんだよ」

妻「どんな?」

夫「いや、聞かない方がいい。マジ胸糞ってレベルじゃねーから。絶対調べるなよ!」

18: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:25:12.336 ID:f/jJbiAl0.net
夫「じゃあ、ルイ16世さん、マリー・アントワネットさん、お帰り下さい」

ルイ16世「へ?」

マリー「どうやって?」

夫「……え?」

四人「……」

ルイ16世「というわけでしばらくお世話になりまーす!」

マリー「よろしくねー!」

妻「こうなっちゃうのね」

夫「どうしてこうなった」

19: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:28:17.511 ID:f/jJbiAl0.net
夫「とりあえずここで寝て下さい」

ルイ16世「ハッハッハ、この布団ペラペラだ。宮殿の絨毯よりもペラペラだ」

マリー「ホント! こんなペラペラなのはじめて!」

夫「お前ら……」

妻「あら?」

夫「どうした?」

妻「今日買ったはずの食パンが全部なくなってる……」

夫「ええ……? ホントに買ってたのか?」

妻「買ったわよ、6枚切りのやつ」

20: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:32:15.285 ID:f/jJbiAl0.net
ルイ16世「ああ、すまんすまん」

マリー「私たちが食べてしまったわ」

夫「なにい!?」

妻「朝食用のだったのに……」

マリー「まあまあ、パンがなければケーキを食べればいいじゃない!」

ルイ16世「おっ、名言いただきましたー!」

夫(うっぜえ……)

夫「てか、あなたそれ言ってませんよね?」

マリー「言ってないけど、あそこまで有名になっちゃったら持ち芸にしちゃった方が得でしょ?」

夫「持ち芸て」

妻「この200年で、すっかりメンタルがお笑い芸人化しちゃったのね」

23: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:36:02.325 ID:f/jJbiAl0.net
翌朝――

ルイ16世「ボンジュール」

マリー「ボンジュール」

夫「あ、どうも。おはようございます」

ルイ16世「朝ご飯は?」

夫「ねえよ! あんたらが食っちまっただろ!」

マリー「ええー」

妻「あるわよ」

ルイ16世「おおっ! さすがマダム!」

妻「はい、ケーキ。さっきコンビニで買ってきたの」

ルイ16世「うっ……」

マリー「朝から甘いケーキなんて……」

夫「おおっ、妻も負けてないな!」

26: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:39:26.826 ID:f/jJbiAl0.net
休日――

夫「今日は日本を案内するよ」

ルイ16世「ジャパニーズ・ゲイシャ楽しみネ!」

マリー「私、ニンジャ見たいヨ!」

妻「なんで急にエセ外国人みたいになってるの」

夫「あっちにうまいカレー屋が――」

ルイ16世「それにしても町並みが清潔で大変よろしい」

マリー「ええ、私たちがいた時代はあちらこちら大便まみれで大変だったものね」

夫「……カレーやめようか」

28: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:43:35.588 ID:f/jJbiAl0.net
カラオケ――

妻「イェーイ!」

ルイ16世「ハッハッハ、素晴らしい歌であった」

マリー「とてもよかったわ」

夫「次はお二人で、フランスの歌でも歌って下さいよ」

ルイ16世「フランスの歌か……。じゃあ……あれいくか!」

マリー「ええ!」

ルイ夫妻「ラ・マルセイエーズ!!!」

夫「それ革命側の歌じゃなかったっけ……」

29: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:46:20.734 ID:f/jJbiAl0.net
妻「今日は一日楽しかったわね」

夫「……ん」ゴソッ

妻「どうしたの?」

夫「やべえ、どっかでカギ落としてきたみたいだ」ゴソゴソ

妻「えーっ!? じゃあ家の中に入れないじゃない!」

ルイ16世「朕に任せたまえ」

夫「え?」

ルイ16世「これでも錠前職人という側面もあってね。この程度のカギなら……」カチャカチャ ガチャッ

マリー「ステキ!」

夫「助かったよ……ルイ16世」

妻「激動の時代に生まれてなきゃ、きっといい王になれたのにねぇ」

31: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:50:12.944 ID:f/jJbiAl0.net
夫「トランプ見つけたから、みんなで大富豪やろうか」

妻「やりましょ!」

バサッ パサッ バサッ バサッ

マリー「8切り!」サッ

夫「えっ、なにそれ。知らないんだけど」

マリー「フランスのローカルルールだとあるのよ」

ルイ16世「よし、ここで革命だ!」パサッ

夫「お前が革命すんのかよ」

33: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:53:11.036 ID:f/jJbiAl0.net
夫「ウイ~……ビールもうないのか?」

妻「うん……なくなっちゃった……」

マリー「ビールがないならワインを飲めばいいじゃない!」

ルイ16世「おっ、名言いただきましたー!」

妻「ねえねえ、ルイ16世さんもなにか言ってよ~」

ルイ16世「よーし、朕は国家なりー!」

夫「それお前より2世少ない奴のセリフー!」

アハハハハ… ハハハハハ…



二組の夫妻は打ち解けていったのだが――

35: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 18:58:08.461 ID:f/jJbiAl0.net
……

……

夫「……ただいま」トボトボ

妻「どうしたの、あなた? ずいぶん顔色が悪いけど……まるで白ワインみたい」

夫「……」

夫「リストラ……されちまったよ」

妻「……ええっ!?」

37: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:00:56.149 ID:f/jJbiAl0.net
妻「なんでこんな突然……!」

夫「どうやらうちの会社、水面下で相当負債抱え込んでたようでさ……」

夫「ここにきて重役お抱えみたいな奴以外は全員バッサリって……」

夫「俺なんか派閥とかに全く無縁のノンポリだったから、第一候補だったろうさ」

夫「ハハ……これからどうすりゃいいんだ……」

妻「気を落とさないで! まだ若いんだしどうにでもなるわよ!」

ルイ16世「そうそう! 君の不幸など朕たちに比べたら大したことないよ!」

マリー「正社員がダメならアルバイトでもすればいいじゃない」

夫「うるさいな……ほっといてくれ!!!」

40: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:05:00.910 ID:f/jJbiAl0.net
夫「……そうだ」

夫「ここにギロチンがある。会社から首切られたんだ。いっそマジで首切っちまうのもいいか」

夫「お前、俺の首切りたがってたろ? やってくれよ……」

妻「ちょっと冗談やめてよ……」

夫「冗談なもんか! やってくれよぉ! 首切ってくれよぉ!」

ルイ16世「落ち着くのだ! 現実から逃げても何にもならんぞ! 逃げちゃダメだ!」

夫「お前だってヴァレンヌ逃亡事件起こしただろうが!」

ルイ16世「それをいわれると耳が痛い」

夫「もう俺のことは……ほっといてくれ……」

41: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:08:10.617 ID:f/jJbiAl0.net
夫「……」グビグビッ

夫「――クソッ! いくら飲んでも酔えねえ……」ゲフッ

夫「酒だぁっ! 酒がねぇぞぉ!」



妻(あれからあの人はずっとあの調子……)

妻(あの人に愛想尽かして、ルイ16世とマリー・アントワネットも出て行ってしまった)

妻(なんていうか、見えない糸がぷっつりと切れてしまったって感じ……)

妻(私たち、もう終わりなのかな……)

42: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:12:22.365 ID:f/jJbiAl0.net
妻「あら?」

テレビ『都内の公園などで、ルイ16世夫妻を名乗る男女が漫才をしている姿が目撃され、SNS上で話題に……』

妻「え!?」

妻「あなたあなた!」

夫「あんだよ?」

妻「これ見て!」

夫「……?」

夫「なにやってんだ……あの二人……」

44: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:15:11.027 ID:f/jJbiAl0.net
ルイ16世「はいどーも皆さん、ルイ16世でーっす」

マリー「マリー・アントワネットでーっす」

ルイ16世「髭男爵のパクリじゃございませんので、むしろこっちが本場ですので」

ルイ16世「じゃ、さっそく。ルネッサーンス!」

マリー「いきなりパクってどうする!」

どっ!

ハハハハ… ハハハハ…

45: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:19:15.423 ID:f/jJbiAl0.net
ルイ16世「ほら、結構稼げたぞ」

マリー「はい、どうぞ」

夫「……なんでこんなことを」

ルイ16世「それはもちろん、君たちへの恩返しと、家計の足しにするためだよ」

マリー「あなたが立ち直るまでは、私たちが頑張るから」

マリー「リストラされたなら、休暇を楽しめばいいじゃない」

夫「……!」

47: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:22:55.385 ID:f/jJbiAl0.net
夫「……」

妻「あなた……」

夫「やっと吹っ切れたよ……」

夫「俺は会社から切り捨てられて、自分が情けなくて、自暴自棄になってたけど……」

夫「フランス国王と王妃にここまでされて、立ち上がらないわけにはいかないよな」

夫「まだ首は繋がってる! 首があるなら、やり直せるんだ! バイトでも何でもやってやる!」

妻「私も一生懸命働くわ!」

夫「よーし、弱い心を断ち切るために景気づけにギロチン落としとくか!」

ガシャンッ!

48: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:26:15.072 ID:f/jJbiAl0.net
……

……

面接官「……では採用ということで」

夫「ありがとうございます!」

面接官「前職での経験を生かして、当社でもバリバリ働いて下さい」

面接官「期待していますよ」

夫「はいっ!」

49: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:29:32.564 ID:f/jJbiAl0.net
夫「やったよ! 次の会社、決まったよ!」

妻「よかったね!」

夫「ああ……これもお前とルイ夫妻のおかげだ!」

ルイ16世「ハッハッハ、照れるな」

マリー「お役に立てて光栄ですわ」

夫「どれ、二人に出会うきっかけになったギロチン……ちょっと磨いてやるかな」

夫「……ん?」

妻「どうしたの?」

50: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:33:06.066 ID:f/jJbiAl0.net
夫「このギロチン、心なしか綺麗になってないか?」

妻「あらホント……ほとんど手入れしてないのに」

ルイ16世「……」

ルイ16世「どうやら……来るべき時が来たようだ」

夫「?」

妻「どういうこと?」

マリー「私たちの残留思念がなくなりつつあるのです。もう現世には留まれません」

夫「な、なんだって!?」

ルイ16世「現世では君たちにずいぶん楽しませてもらったからね……きっとそのおかげだろう」

52: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:37:46.589 ID:f/jJbiAl0.net
妻「せっかく仲良くなれたのに……!」

ルイ16世「ありがとう……しかし朕たちも子供たちをいつまでも放っておくわけにはいかない」

ルイ16世「いさぎよく帰ることにするよ」

マリー「私たちがいなくなったなら、心の中にいると思えばいいじゃない」

夫「……くっ」

妻「二人とも……元気でね」

マリー「ええ、あなたたちとあの世で会うのを楽しみにしてるわ。……なーんて」

ルイ16世「ほんの少しだけ君たちに革命を起こすことができてよかった」

ルイ16世「どうか、血の流れることのない平和な家庭を築いてくれ」

夫「ええ……誓います!」

53: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:40:32.893 ID:f/jJbiAl0.net
ルイ16世「オ・ルヴォワール!」

マリー「オ・ルヴォワール!」

夫「……さようなら!」

妻「さようなら!」

シュゥゥゥゥゥ…

夫「……消えた」

妻「あなた……うっ、うっ、うっ……」

夫「俺たちも、彼らに負けないような夫婦になろう!」

妻「……うん!」

54: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:44:06.347 ID:f/jJbiAl0.net
……

十年後――

ガサゴソ… ガサゴソ…

夫「ふぅー、ちょっと物置整理しようと思ったら大掃除になっちゃったな」

妻「ホントだわ」

娘「二人とも、余計なもの買いすぎ! 健康器具とか、よく分からない骨董品とか……」

夫「面目ない……」

娘「……ん、なにこれ?」

妻「あっ、それは――」

56: VIPがお送りします 2019/02/16(土) 19:47:29.575 ID:f/jJbiAl0.net
娘「これって……ギロチン?」

夫「ああ、そうだよ」

娘「首を切断しちゃう、おっかない道具なんでしょ? こわーい!」

夫「……」

夫「たしかに怖い道具だけど、本質は罪人を苦痛なく処刑するための人道的な道具なんだよ」

娘「ふーん」

妻「それにね……お父さんとお母さんは、ギロチンのおかげで仲が切断されずに済んだのよ」





おわり

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