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【第一 ~ 十章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

2019年01月16日
【第一 ~ 十章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

1: NIPPERがお送りします 2014/11/03(月) 17:45:30.02 ID:vaQlw0BD0
勇者「人間界の侵略を続ける魔王軍に抗うため一人立ち上がり」

勇者「世界中を旅して魔王軍に征服されていた各国を解放し」

勇者「伝説の武具を揃えた上、この世で唯一光の精霊の加護を得て、遂には魔王を打倒した」

勇者「そんな世界の救世主、この世の伝説となった勇者が俺の親父です」

勇者「そんな偉大すぎる勇者を父に持つ俺が、今、旅立ちの報告をするために国王の元へ謁見に向かっています」

勇者「え? どこに旅立つのかって?」

勇者「勇者と名の付く人間が旅に出るっつったら魔王討伐のために決まってんだろこんちくしょう」



【エピローグ】女戦士「死に場所を探している」ぼく「はあ…」

2018年12月25日
【エピローグ】女戦士「死に場所を探している」ぼく「はあ…」

1: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:40:51.18 ID:c9/bqZoV0
ぼく「どっかその辺で死んできたらいいんじゃないですかね」

女戦士「わぁ辛辣ぅ」



【第二十八 ~ 最終章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

2018年12月25日
【第二十八 ~ 最終章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

12: SS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 21:42:50.64 ID:zBP9Ql630
 強くなったつもりだった。
 多くの敵を倒し、沢山の神殿を解放して、出来る限り力をつけたつもりだった。
 実感はある。
 獣王との決着をつけたあの日の時点と比較しても、あの世界樹の森での体験を経て自分の力は跳ね上がっている。
 獣王にも到底敵わないと武の国諸侯の前で嘯いてはみたものの、その実、やりようによっては独力で打倒できるのではと思えるほどには自身に自信をつけていた。

 だけど―――――届かない。

勇者「ぐ…はっ、はぁ……! ぜぇ…ぜぇ…!」

 地面に膝をつき、剣を杖として己の体を支えながら、勇者は必死で呼吸を整える。
 相対する騎士は追撃を加えるでもなくそんな勇者をただ見下ろしていた。

騎士「どうした? もう終わりか?」

勇者「…まだ…まだぁ……!」

 乾いて貼りついた喉にごくりと無理やり唾液を通し、勇者は立ち上がり剣を構える。

騎士「はは! そうこなくっちゃなぁ!!」

 その途端に、騎士は嬉々として勇者に向かって突っ込んだ。
 騎士は精霊剣・湖月を横殴りに振り回す。
 勇者は真打・夜桜をもってそれに応じる。
 騎士は片手。勇者は両手だ。
 なのに押し負けたのは勇者の方だった。
 ギャリン、と音を立てて振り切られた騎士の剣に押された勇者の剣は流れ、勇者は無防備な体を晒してしまう。
 そこを騎士に蹴りこまれた。

勇者「げう…!」

 腹部にめり込んだ騎士の足に押され、勇者の体が後方に吹っ飛ぶ。
 ダン、と木の幹で背中を強打した。

勇者「が、は…!」

 勇者の体はそこで止まったものの、衝撃でへし折れた木はめきめきと音を立てて傾いでいく。
 苦痛をぐっと飲みこみ、勇者は顔を上げる。
 騎士が眼前に迫って来ていた。

勇者「う、お…!!」

騎士「そらそらそらぁ!!」

 防御、防御、防御―――――繰り出される連撃を勇者はひたすらに耐え凌ぐ。
 これまでの経験で培われてきた勇者の防御技術は一級品だ。
 ひとたび防御に徹すれば、どんなに格上を相手にしても打ち破られたことはない。
 かの獣王の猛攻をすら、勇者は凌ぎきってみせた。
 なのに―――!

騎士「ほらまた隙が空いたぁ!!」

 勇者の剣をすり抜け、騎士の剣の切っ先が勇者の体に触れる。
 獣王以上の威力で、獣王以上の速度で、確かな技術を持って繰り出される連撃は、勇者の防御を容易く潜り抜けた。

勇者「うおああああああ!!!!」

 無我夢中で身を捩り、勇者は騎士の剣を躱す。
 浅く裂かれた勇者の胸元からどろりと血が零れた。

勇者「ぐ……ちっくしょお!!」

 勇者は地面を蹴ってその場を離れ、騎士から大きく距離を取る。
 追撃に移らんと身を屈める騎士に向かって勇者は指をさした。

勇者「呪文・大烈風!!!!」

 勇者の指先から生まれた風の塊が騎士に向かって突っ込んでいく。
 木々を薙ぎ倒し、まともに当たれば竜の尾撃すら打ち逸らすその威力。

騎士「うざってえ!!!!」

 騎士が剣を振る。
 その余りの速度に生まれた衝撃が、迫る風の塊と激突した。
 相殺し、霧散する勇者の風の呪文。
 ――――剣のたった一振りで、勇者の呪文は無効化されてしまった。

勇者「くっ…」

 わかってはいた。
 わかっていたつもりだった。

 だけど――――こんなにも遠いのか

【第十一 ~ 十八章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

2018年12月25日
【第十一 ~ 十八章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

313: SS速報VIPがお送りします 2015/03/15(日) 19:13:31.42 ID:K5Qr6RMl0
善王「約束していた翼竜の羽だ。受け取ってくれ」

勇者「ありがたく頂戴します」

善王「時に勇者よ。これから先、行く当てはあるのか?」

勇者「特には。とりあえず、かつての父の旅路を追って行こうかと思っています」

善王「ならば『武の国』を訪ねてみるのはどうだ?」

勇者「武の国…?」

善王「我が国より遥か北に位置する、『武王』の治める強国だ。魔王城に近いこともあって、近年兵力の増強に力を注いでいる」

善王「その国では、定期的に一般の者まで広く参加者を募った武闘会が開催されている。聞くところによれば、今度の大会の優勝者には何やら『特別な武器』が贈呈されるらしいのだ」

勇者(特別な武器…? 親父が手に入れたという、『伝説の武器』の類のものか…?)

善王「今日の午後に『翼竜の羽』を使った交易便が武の国に向けて出る。よければ君たちも同伴したまえ」

【第十九 ~ 二十七章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

2018年12月25日
【第十九 ~ 二十七章】勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

588: SS速報VIPがお送りします 2015/08/23(日) 21:40:26.95 ID:IhxMPPaB0
 倭の国。
 勇者たちの故郷・始まりの国や善の国などが属する大陸から東の海に浮かぶ島国だ。
 その交易は主に勇者たちも訪れた港町・ポルトを介して行われており、その船旅は実に七日の時を要する。
 倭の国の大きな特徴は何といってもそこに住まう人々の独特な出で立ちだ。
 男子は裾に行くほど広がる構造になっている袴と呼ばれる物を穿き、長布を羽織って帯で締める。女子は下着を身に着けた後、肩から足まである長衣を纏い、男性のそれと比べて大きな帯を締める。これが所謂『和服』の一般的な形である。
 町を行き交う大部分の人々は麻や綿で拵えられた和服を身に着けているが、時には艶やかに輝く絹製のものを身に纏った人もいる。聞くところによると上質な絹は主に輸入によって賄われているので、希少価値が高く高級品として扱われているのだそうだ。
 住居は木造を良しとしており、レンガや石造りの建物は住宅街の中には見られない。石造りの建築物が見られるのは精々商人宅の倉庫か、町を治める主の住まう城くらいのものだった。

勇者「もっちゃもっちゃ。さて、んぐ、これからどうすっかな」

 団子屋の縁側に腰掛け、団子を頬張りながら勇者達一行はそんな町の様子を眺めていた。
 倭の国中心街―――『央都(おうと)』にて。

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