女司書「スラム街に図書館を建てれば、みんな本好きになって犯罪が減るはずです!」
1: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 21:53:05.404 ID:gr8O5lja0
<市庁舎>
市長「はぁ……」
女司書「どうなさいました、市長?」
市長「君は図書館の……これを見てくれたまえ。都市別の犯罪件数ランキングだ」
女司書「まぁっ、この都市はだいぶ上位ですね」
市長「そうなんだよ」
市長「この都市の一角にあるスラム、あれが順位を大きく引き上げてしまっている」
市長「何とかしたいとは常々思っているが、あそこは警察もうかつに近寄れない無法地帯……」
市長「まったく困ったものだよ……」
女司書「でしたら、私にいい案があります!」
市長「はぁ……」
女司書「どうなさいました、市長?」
市長「君は図書館の……これを見てくれたまえ。都市別の犯罪件数ランキングだ」
女司書「まぁっ、この都市はだいぶ上位ですね」
市長「そうなんだよ」
市長「この都市の一角にあるスラム、あれが順位を大きく引き上げてしまっている」
市長「何とかしたいとは常々思っているが、あそこは警察もうかつに近寄れない無法地帯……」
市長「まったく困ったものだよ……」
女司書「でしたら、私にいい案があります!」
6: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 21:56:55.984 ID:gr8O5lja0
女司書「スラム街に図書館を建てるんです!」
女司書「そうすれば、みんな本好きになって、犯罪が減るはずです!」
市長「……へ」
市長「いや、そんなことで減るとはとても思えないが……」
女司書「いいえ、絶対減ります! どうかこの私にお任せ下さい!」
女司書「図書館建設の許可をください!」
市長「わ、分かった……やってみてくれたまえ」
女司書「そうすれば、みんな本好きになって、犯罪が減るはずです!」
市長「……へ」
市長「いや、そんなことで減るとはとても思えないが……」
女司書「いいえ、絶対減ります! どうかこの私にお任せ下さい!」
女司書「図書館建設の許可をください!」
市長「わ、分かった……やってみてくれたまえ」
7: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 21:59:16.267 ID:gr8O5lja0
<スラム街>
トンテンカン… ガガガガガ…
女司書(うん、だいぶ出来上がってきた!)
女司書(みんな、この図書館に通ってくれるようになるといいなぁ……)
スラム民A「おい、ありゃなんの工事をしてるんだ?」
スラム民B「さぁ……知らね。カジノだったら嬉しいんだがよ」
スラム民C「んなことより酒飲もうぜ、酒ぇ!」
アッヒャッヒャッヒャッヒャ…
トンテンカン… ガガガガガ…
女司書(うん、だいぶ出来上がってきた!)
女司書(みんな、この図書館に通ってくれるようになるといいなぁ……)
スラム民A「おい、ありゃなんの工事をしてるんだ?」
スラム民B「さぁ……知らね。カジノだったら嬉しいんだがよ」
スラム民C「んなことより酒飲もうぜ、酒ぇ!」
アッヒャッヒャッヒャッヒャ…
10: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:01:35.490 ID:gr8O5lja0
<図書館>
女司書(ついに図書館ができた!)
女司書(スラムの皆さんが本好きになってくれるよう、頑張らなきゃ!)
ガチャッ…
女司書(さっそく人が来てくれた!)
女司書「こんにちは、図書館へようこそ!」
女司書(ついに図書館ができた!)
女司書(スラムの皆さんが本好きになってくれるよう、頑張らなきゃ!)
ガチャッ…
女司書(さっそく人が来てくれた!)
女司書「こんにちは、図書館へようこそ!」
16: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:04:22.881 ID:gr8O5lja0
チンピラ「おうおう、ネエちゃん」
女司書「はい」
チンピラ「俺と遊んでくれや」
女司書「今勤務中ですので、遊ぶのはちょっと……」
女司書「よろしければ、『道具がなくてもできるゲーム集』という本もございますよ?」
チンピラ「本なんざどうでもいいんだよ! 俺と遊べっつってんだよォ!」
女司書「もしかして口説かれているのですか? でしたら言葉づかいを改めた方が……」
女司書「あ、そうだ! 『モテ男が教える女性を落とすテクニック』という本もございますよ?」
チンピラ「…………」ビキッ
女司書「はい」
チンピラ「俺と遊んでくれや」
女司書「今勤務中ですので、遊ぶのはちょっと……」
女司書「よろしければ、『道具がなくてもできるゲーム集』という本もございますよ?」
チンピラ「本なんざどうでもいいんだよ! 俺と遊べっつってんだよォ!」
女司書「もしかして口説かれているのですか? でしたら言葉づかいを改めた方が……」
女司書「あ、そうだ! 『モテ男が教える女性を落とすテクニック』という本もございますよ?」
チンピラ「…………」ビキッ
21: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:07:18.207 ID:gr8O5lja0
チンピラ「ナメてんじゃねえぞ、このクソアマがァ!」
チンピラ「とっととヤラせ……」ガシッ
フワッ
チンピラ「えっ?」
ズダァンッ!
チンピラ(え、俺、今なにされたんだ? 体がふわっと浮いて……)
女司書「ふんっ」グイッ
チンピラ「あだだだだだだだだだ……!」ミシミシ…
チンピラ「とっととヤラせ……」ガシッ
フワッ
チンピラ「えっ?」
ズダァンッ!
チンピラ(え、俺、今なにされたんだ? 体がふわっと浮いて……)
女司書「ふんっ」グイッ
チンピラ「あだだだだだだだだだ……!」ミシミシ…
25: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:11:17.009 ID:gr8O5lja0
チンピラ「折れる! あだだだだ! 折れる! 折れぢゃうぅぅぅぅぅ!」メキメキメキ…
パッ
チンピラ「ハァ、ハァ、ハァ……」
女司書「今、受け身が取れてませんでしたね。当館には『正しい受け身』という本も……」
チンピラ「ひいっ! なんなんだよ、てめえ!」
女司書「司書です」ニコッ
チンピラ「てめえ、このままじゃ済まさねえからな!」タタタッ
女司書「はいっ、またお越し下さいませ!」
パッ
チンピラ「ハァ、ハァ、ハァ……」
女司書「今、受け身が取れてませんでしたね。当館には『正しい受け身』という本も……」
チンピラ「ひいっ! なんなんだよ、てめえ!」
女司書「司書です」ニコッ
チンピラ「てめえ、このままじゃ済まさねえからな!」タタタッ
女司書「はいっ、またお越し下さいませ!」
26: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:14:32.860 ID:gr8O5lja0
……
グラサン「へへへ……」
女司書「こんにちは!」
グラサン「ここ、図書館なんだって?」
女司書「はい、そうです!」
グラサン「どの本も好きに読んだりしていいわけだ?」
女司書「はい!」
グラサン「だったらよォ……ペッ!」ビチャッ
女司書「あっ」
グラサン「好きに“ツバぶっかけて”やったぜェ! ギャハハハハハハッ!」
グラサン「へへへ……」
女司書「こんにちは!」
グラサン「ここ、図書館なんだって?」
女司書「はい、そうです!」
グラサン「どの本も好きに読んだりしていいわけだ?」
女司書「はい!」
グラサン「だったらよォ……ペッ!」ビチャッ
女司書「あっ」
グラサン「好きに“ツバぶっかけて”やったぜェ! ギャハハハハハハッ!」
28: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:17:25.072 ID:gr8O5lja0
女司書「当館では、『本を汚損した場合は弁償する』という決まりになっております」
グラサン「へ? 弁償? 誰が?」
女司書「もちろん、あなたです」
グラサン「は? ギャハハッ! 俺が? するわけねえ――」
女司書「ていっ!」
ボゴォッ!
グラサン「あがぁっ!?」ガクッ
グラサン(息、できねえ……!)
女司書「おっ、ポケットに財布が入ってますね。ここから本の代金だけ抜かせていただきます」スッ
グラサン(なんなんだこいつはぁ……!)
グラサン「へ? 弁償? 誰が?」
女司書「もちろん、あなたです」
グラサン「は? ギャハハッ! 俺が? するわけねえ――」
女司書「ていっ!」
ボゴォッ!
グラサン「あがぁっ!?」ガクッ
グラサン(息、できねえ……!)
女司書「おっ、ポケットに財布が入ってますね。ここから本の代金だけ抜かせていただきます」スッ
グラサン(なんなんだこいつはぁ……!)
30: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:21:13.454 ID:gr8O5lja0
……
大男「最初はついに市長もトチ狂ったかと思ったが、スラムに図書館ってのも悪くねーなァ!」
大男「空調きいてるし、溜まり場にするにゃもってこいだぜェ!」
手下「まったくですね!」
ギャハハハハ… ワハハハハハ…
女司書「…………」
女司書「あの、図書館では基本的に私語は禁止です」
女司書「全く口をきくなとは申しませんが、もう少しお静かになさって下さい」
大男「あぁ!?」
大男「てめえ、誰に向かって口きいてんだコラァ!」
女司書「あなたです」
大男「ちっと腕が立つようだが、あんまナメたクチきいてっと……」
大男「最初はついに市長もトチ狂ったかと思ったが、スラムに図書館ってのも悪くねーなァ!」
大男「空調きいてるし、溜まり場にするにゃもってこいだぜェ!」
手下「まったくですね!」
ギャハハハハ… ワハハハハハ…
女司書「…………」
女司書「あの、図書館では基本的に私語は禁止です」
女司書「全く口をきくなとは申しませんが、もう少しお静かになさって下さい」
大男「あぁ!?」
大男「てめえ、誰に向かって口きいてんだコラァ!」
女司書「あなたです」
大男「ちっと腕が立つようだが、あんまナメたクチきいてっと……」
33: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:23:35.876 ID:gr8O5lja0
ズダァンッ!
大男「はうっ!?」ミシミシ…
大男(完全に腕を極められてる……! 動けない……!)
手下「大男さん!」
女司書「騒がないで。騒ぐと折りますよ」
女司書「お静かにならないと、永久に静かになってもらいますが、どうしますか?」
大男「し、静かにします……」
女司書「では、ごゆっくりどうぞ」ニコッ
大男「はうっ!?」ミシミシ…
大男(完全に腕を極められてる……! 動けない……!)
手下「大男さん!」
女司書「騒がないで。騒ぐと折りますよ」
女司書「お静かにならないと、永久に静かになってもらいますが、どうしますか?」
大男「し、静かにします……」
女司書「では、ごゆっくりどうぞ」ニコッ
35: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:27:49.897 ID:gr8O5lja0
……
殺人鬼「…………」ザッ
女司書「こんにちは」
女司書「どうぞ、本を楽しんでいって下さい!」
殺人鬼「本を楽しむつもりはなイ……」
女司書「とおっしゃいますと?」
殺人鬼「オマエを……殺ス……殺してやル……」
殺人鬼「腹かっさばいテ、内蔵ひきずりだしテ、グチャグチャにしてやルゥゥゥゥゥ!!!」
女司書「…………」
殺人鬼「…………」ザッ
女司書「こんにちは」
女司書「どうぞ、本を楽しんでいって下さい!」
殺人鬼「本を楽しむつもりはなイ……」
女司書「とおっしゃいますと?」
殺人鬼「オマエを……殺ス……殺してやル……」
殺人鬼「腹かっさばいテ、内蔵ひきずりだしテ、グチャグチャにしてやルゥゥゥゥゥ!!!」
女司書「…………」
37: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:30:23.812 ID:gr8O5lja0
殺人鬼「!? なぜダ!? オマエ、なぜビビらなイ!」
女司書「だって、小説の中の殺人者の方がよっぽど残酷な殺し方をしていますから」
女司書「たとえば、このサスペンス小説の犯人はすごいですよ」
女司書「なんと、巨大ミキサーを自作して、人をジュースにしちゃうんです!」
女司書「しかもそのジュースに砂糖とミルクを混ぜて、路上で売ってしまうんですよ!」
殺人鬼「エエエ……なんて残酷なんダ……!」
女司書「だって、小説の中の殺人者の方がよっぽど残酷な殺し方をしていますから」
女司書「たとえば、このサスペンス小説の犯人はすごいですよ」
女司書「なんと、巨大ミキサーを自作して、人をジュースにしちゃうんです!」
女司書「しかもそのジュースに砂糖とミルクを混ぜて、路上で売ってしまうんですよ!」
殺人鬼「エエエ……なんて残酷なんダ……!」
40: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:33:18.544 ID:gr8O5lja0
女司書「フィクションでは物足りないというのなら、ノンフィクションもございますよ」
女司書「これは『世にもおぞましいシリアルキラー』という本でして」
女司書「世界中の猟奇的な殺人事件が紹介されています」
殺人鬼「ふうン、面白そうダ……」
殺人鬼「借りてもいいカ?」
女司書「もちろんです!」
女司書「返却期限は二週間ですので、お忘れのないよう……」
殺人鬼「うン、分かっタ!」
女司書「これは『世にもおぞましいシリアルキラー』という本でして」
女司書「世界中の猟奇的な殺人事件が紹介されています」
殺人鬼「ふうン、面白そうダ……」
殺人鬼「借りてもいいカ?」
女司書「もちろんです!」
女司書「返却期限は二週間ですので、お忘れのないよう……」
殺人鬼「うン、分かっタ!」
44: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:37:27.609 ID:gr8O5lja0
やがて――
シーン…
チンピラ「へえ~、相対性理論ってこういうことだったのか!」
グラサン「歴史の本読んでると止まらなくなっちまう!」
大男「新聞読んでると暗いニュースばかりで嫌になるぜ!」バサッ
殺人鬼「このホラー小説、面白イ! だけど怖すぎて眠れなくなりそウ!」
女司書(よかった……みんなだいぶ本を好きになってくれたみたい!)
シーン…
チンピラ「へえ~、相対性理論ってこういうことだったのか!」
グラサン「歴史の本読んでると止まらなくなっちまう!」
大男「新聞読んでると暗いニュースばかりで嫌になるぜ!」バサッ
殺人鬼「このホラー小説、面白イ! だけど怖すぎて眠れなくなりそウ!」
女司書(よかった……みんなだいぶ本を好きになってくれたみたい!)
48: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:40:41.774 ID:gr8O5lja0
<市庁舎>
市長「うーむ……」
女司書「市長、どうなさいました?」
女司書「スラム街の皆さんは、みんな本を好きになってくれたというのに……」
市長「うむ、君は本当によくやってくれた……」
市長「だが……」
女司書「だが?」
市長「思わぬ副作用が出てきてしまったんだよ」
女司書「副作用?」
市長「うーむ……」
女司書「市長、どうなさいました?」
女司書「スラム街の皆さんは、みんな本を好きになってくれたというのに……」
市長「うむ、君は本当によくやってくれた……」
市長「だが……」
女司書「だが?」
市長「思わぬ副作用が出てきてしまったんだよ」
女司書「副作用?」
50: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:43:49.693 ID:gr8O5lja0
市長「これを見てくれ」
女司書「犯罪件数が……減ってない!? なぜです!?」
市長「どうやら、よその都市から我が都市に犯罪組織が入り込んだようなのだ」
市長「今まではあのスラム街を恐れて、我が都市に手を出してこなかったのだが」
市長「スラムの連中が大人しくなったのをいいことに、ターゲットにしてきたようだ」
市長「我が都市の一般市民は全く犯罪慣れしていないから、まさに絶好のカモだという」
市長「あのスラム街が抑止力にもなっていたとは、まったく皮肉なものだ……」
女司書「……でしたら、私にお任せ下さい!」
女司書「犯罪件数が……減ってない!? なぜです!?」
市長「どうやら、よその都市から我が都市に犯罪組織が入り込んだようなのだ」
市長「今まではあのスラム街を恐れて、我が都市に手を出してこなかったのだが」
市長「スラムの連中が大人しくなったのをいいことに、ターゲットにしてきたようだ」
市長「我が都市の一般市民は全く犯罪慣れしていないから、まさに絶好のカモだという」
市長「あのスラム街が抑止力にもなっていたとは、まったく皮肉なものだ……」
女司書「……でしたら、私にお任せ下さい!」
56: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:46:42.174 ID:gr8O5lja0
<図書館>
女司書「利用者の皆さん!」
チンピラ「ん?」
女司書「今、私たちの都市に、よその地域の犯罪組織が入り込んでいることが分かりました!」
女司書「市や警察も敵わない相手で、もはや対抗できる人間は私たちしかいません!」
女司書「皆さん、街を守るために戦いましょう!」
チンピラ「…………」
女司書「利用者の皆さん!」
チンピラ「ん?」
女司書「今、私たちの都市に、よその地域の犯罪組織が入り込んでいることが分かりました!」
女司書「市や警察も敵わない相手で、もはや対抗できる人間は私たちしかいません!」
女司書「皆さん、街を守るために戦いましょう!」
チンピラ「…………」
58: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:49:23.270 ID:gr8O5lja0
チンピラ「アネさん……」
女司書「なんでしょう?」
チンピラ「今の俺らには無理だよ。犯罪組織と戦うなんて……」
グラサン「ああ、すっかり読書家になって、戦い方なんか忘れちまった」
大男「俺もこのところ、殴る蹴るなんてしてねえしなぁ」
殺人鬼「なんとカ、話し合いで解決できないのかナ?」
女司書「なにを甘ったるいことをいってるんです!」
女司書「話し合いなんか通用しない相手もいるんです! 戦うしかないんです!」
女司書「街の厄介者といわれ続けたあなた方が、街のヒーローになるチャンスなんですよ!」
女司書「なんでしょう?」
チンピラ「今の俺らには無理だよ。犯罪組織と戦うなんて……」
グラサン「ああ、すっかり読書家になって、戦い方なんか忘れちまった」
大男「俺もこのところ、殴る蹴るなんてしてねえしなぁ」
殺人鬼「なんとカ、話し合いで解決できないのかナ?」
女司書「なにを甘ったるいことをいってるんです!」
女司書「話し合いなんか通用しない相手もいるんです! 戦うしかないんです!」
女司書「街の厄介者といわれ続けたあなた方が、街のヒーローになるチャンスなんですよ!」
60: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:53:06.228 ID:gr8O5lja0
チンピラ「しかしよぉ……勝てなきゃ意味が……」
女司書「大丈夫です! 皆さんにはこれをお配りします!」
チンピラ「これは……!?」
グラサン「『アリでもゾウに勝てる喧嘩殺法』……!?」
大男「著者の名前は……あんたじゃねえか!」
女司書「はい、これは私が書いた本です」
女司書「内容が危険すぎるということで、すぐ出版差し止めになり、世に出ることはありませんでしたが……」
女司書「ついに解禁する時が来たようです!」
チンピラ「アネさん……あんたいったい何者なんだ?」
女司書「司書です」ニコッ
女司書「大丈夫です! 皆さんにはこれをお配りします!」
チンピラ「これは……!?」
グラサン「『アリでもゾウに勝てる喧嘩殺法』……!?」
大男「著者の名前は……あんたじゃねえか!」
女司書「はい、これは私が書いた本です」
女司書「内容が危険すぎるということで、すぐ出版差し止めになり、世に出ることはありませんでしたが……」
女司書「ついに解禁する時が来たようです!」
チンピラ「アネさん……あんたいったい何者なんだ?」
女司書「司書です」ニコッ
63: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:56:36.204 ID:gr8O5lja0
殺人鬼「うむム……これはすごイ!」
殺人鬼「分かりやすク、色んな技や戦略の解説が載っていル!」
殺人鬼「出版されなかったのも無理はなイ……」
グラサン「これがありゃ、すぐ昔の勘を取り戻せるぜ!」
大男「いや、昔以上に強くなれる!」
女司書「さあ、熟読して下さい」
女司書「そして、私たちの都市を脅かす悪の組織を倒すんです!」
オーッ!!!
殺人鬼「分かりやすク、色んな技や戦略の解説が載っていル!」
殺人鬼「出版されなかったのも無理はなイ……」
グラサン「これがありゃ、すぐ昔の勘を取り戻せるぜ!」
大男「いや、昔以上に強くなれる!」
女司書「さあ、熟読して下さい」
女司書「そして、私たちの都市を脅かす悪の組織を倒すんです!」
オーッ!!!
66: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 22:59:26.746 ID:gr8O5lja0
<犯罪組織アジト>
ボス「クックック……」
ボス「今まではあのスラムを万一にも敵に回したくなかったから、なかなか手を出せなかったが」
ボス「近頃はすっかり腑抜けになったようだし、もはやこの都市は我らの手中だ!」
ボス「あらゆる犯罪で街を汚染し、この都市を世界最大の犯罪都市に生まれ変わらせてやる!」
ボス「さて、今夜も猫を撫でながら、ブランデーでも飲むとしようか」ナデナデ
猫「ニャーン」
ボス「クックック……」
ボス「今まではあのスラムを万一にも敵に回したくなかったから、なかなか手を出せなかったが」
ボス「近頃はすっかり腑抜けになったようだし、もはやこの都市は我らの手中だ!」
ボス「あらゆる犯罪で街を汚染し、この都市を世界最大の犯罪都市に生まれ変わらせてやる!」
ボス「さて、今夜も猫を撫でながら、ブランデーでも飲むとしようか」ナデナデ
猫「ニャーン」
69: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:02:42.698 ID:gr8O5lja0
ワァァァ… ワァァァ…
ボス「なんだ? アジト内が騒がしいようだが……」
黒服「ボ、ボス!」
ボス「どうした?」
黒服「スラムの連中が……攻めてきました!」
ボス「なんだとぉ!? 奴らはもう、牙をぬかれた野良犬も同然と聞いたが……」
黒服「いえ、それがひとりひとりが恐ろしい強さで……」
黒服「特にあの女……げぶぅぅぅぅぅ!」ドサッ
ボス「な、なんだ!?」
ボス「なんだ? アジト内が騒がしいようだが……」
黒服「ボ、ボス!」
ボス「どうした?」
黒服「スラムの連中が……攻めてきました!」
ボス「なんだとぉ!? 奴らはもう、牙をぬかれた野良犬も同然と聞いたが……」
黒服「いえ、それがひとりひとりが恐ろしい強さで……」
黒服「特にあの女……げぶぅぅぅぅぅ!」ドサッ
ボス「な、なんだ!?」
72: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:05:35.445 ID:gr8O5lja0
女司書「あなたがボスですね」
ボス「だ、誰だお前は!?」
女司書「私は図書館の司書です。あなたを成敗しに来ました!」
ボス「なんだとぉ~!?」
女司書「もう組織の構成員のほとんどは、スラムの皆さんに倒されました」
女司書「大人しく降参するなら、捕まえるだけで許してあげます!」
ボス「ふざけるな……!」
ボス「誰が貴様のような小娘に降参などするかァ!」チャッ
女司書(銃!)
ボス「だ、誰だお前は!?」
女司書「私は図書館の司書です。あなたを成敗しに来ました!」
ボス「なんだとぉ~!?」
女司書「もう組織の構成員のほとんどは、スラムの皆さんに倒されました」
女司書「大人しく降参するなら、捕まえるだけで許してあげます!」
ボス「ふざけるな……!」
ボス「誰が貴様のような小娘に降参などするかァ!」チャッ
女司書(銃!)
73: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:08:31.892 ID:gr8O5lja0
ボス「今でこそ組織のボスだが、元は殺し屋として名を上げてたんだ!」パンッパンッ
女司書「うぐっ!」
ボス「や、やった!」
女司書「なーんて。胸にはぶ厚い辞書を入れておいたんです」サッ
ボス「え!?」
ボス「くっ、今度こそ……」
女司書「てやっ!」ヒュバババッ
グサササッ
ボス「あぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ボス「手になんか刺さったぁぁぁ!!!」
女司書「図書カードです」
女司書「うぐっ!」
ボス「や、やった!」
女司書「なーんて。胸にはぶ厚い辞書を入れておいたんです」サッ
ボス「え!?」
ボス「くっ、今度こそ……」
女司書「てやっ!」ヒュバババッ
グサササッ
ボス「あぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ボス「手になんか刺さったぁぁぁ!!!」
女司書「図書カードです」
77: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:11:54.803 ID:gr8O5lja0
女司書「本の中には当然あまり面白くないものもありますが……」
女司書「この戦いは、今までに読んだどんなつまらない本よりもつまらないですね」
女司書「だって……私たちが勝つって分かり切ってましたから」ザッ
ボス「ひっ! よ、寄るんじゃない!」
猫「ニャ~ン」トコトコ
女司書「いい子ですね」
ボス「コラ、お前! 主人を見捨てるなァ!」
女司書「それじゃあなたが今までやってきた罪を……“返却”させてもらいますよ」
ボス「い、いや……」
ぎゃあぁぁぁぁぁ……!!!
女司書「この戦いは、今までに読んだどんなつまらない本よりもつまらないですね」
女司書「だって……私たちが勝つって分かり切ってましたから」ザッ
ボス「ひっ! よ、寄るんじゃない!」
猫「ニャ~ン」トコトコ
女司書「いい子ですね」
ボス「コラ、お前! 主人を見捨てるなァ!」
女司書「それじゃあなたが今までやってきた罪を……“返却”させてもらいますよ」
ボス「い、いや……」
ぎゃあぁぁぁぁぁ……!!!
81: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:15:10.868 ID:gr8O5lja0
……
……
<図書館>
子供「ねえおじさん、絵本のコーナーってどこー?」
殺人鬼「絵本ならあっちにあるゾ」
子供「ありがとー!」
殺人鬼「子供は可愛いナ……」
猫「ニャ~ン」
アハハハハ… ワイワイ…
女司書(この図書館に、スラムの皆さんだけじゃなく大勢の市民が来てくれるようになった……)
……
<図書館>
子供「ねえおじさん、絵本のコーナーってどこー?」
殺人鬼「絵本ならあっちにあるゾ」
子供「ありがとー!」
殺人鬼「子供は可愛いナ……」
猫「ニャ~ン」
アハハハハ… ワイワイ…
女司書(この図書館に、スラムの皆さんだけじゃなく大勢の市民が来てくれるようになった……)
85: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:18:36.699 ID:gr8O5lja0
チンピラ「よっ、アネさん!」
女司書「こんにちは」
チンピラ「今日はこんだけ本借りるぜ」ドサッ
女司書「まあすごい! どれも高等数学の難しい本じゃないですか!」
チンピラ「すっかり勉強に目覚めちまってよ……今は論文も書いてるんだぜ!」
女司書「初めてこの図書館に来たころとは、まるで別人ですね!」
チンピラ「あん時は本当に失礼しました……」
女司書「こんにちは」
チンピラ「今日はこんだけ本借りるぜ」ドサッ
女司書「まあすごい! どれも高等数学の難しい本じゃないですか!」
チンピラ「すっかり勉強に目覚めちまってよ……今は論文も書いてるんだぜ!」
女司書「初めてこの図書館に来たころとは、まるで別人ですね!」
チンピラ「あん時は本当に失礼しました……」
86: VIPがお送りします 2018/11/21(水) 23:21:22.012 ID:gr8O5lja0
チンピラ「ところでアネさんっていったい……」
チンピラ「いや、アネさんは司書だよな。今までも……そしてこれからも!」
女司書「…………」ニコッ
女司書「皆さまも、スラム街にお立ち寄りの際はぜひ当図書館にいらして下さい!」
― 完 ―
チンピラ「いや、アネさんは司書だよな。今までも……そしてこれからも!」
女司書「…………」ニコッ
女司書「皆さまも、スラム街にお立ち寄りの際はぜひ当図書館にいらして下さい!」
― 完 ―