女店員「箸はお付けいたしますか?」客「手で食えってのかよ?」

2019年02月22日
女店員「箸はお付けいたしますか?」客「手で食えってのかよ?」

1: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:05:56.069 ID:uOt084l+0
<コンビニ>

客「お願いします」ドサッ

女店員「かしこまりました」

ピッ ピッ ピッ

女店員「箸はお付けいたしますか?」

客「当たり前だろ」

客「俺が買ったのは、牛丼とポテトサラダ、それと漬け物……」

客「これらを手で食えってのかよ?」

女店員「……」

10: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:07:35.495 ID:uOt084l+0
女店員「手で食べるのも……」

客「?」

女店員「なかなかオツなものだと思いますよ」

客「!!!」

客(こうきたか……!)

19: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:09:21.525 ID:uOt084l+0
<アパート>

客「……」ガサガサ


女店員『手で食べるのも……なかなかオツなものだと思いますよ』


客(箸ぐらい家にあるけど……)

客(手で食べるってこと自体は、未だに行われてる国もあるし……)

客「ちょっとやってみるか……」

25: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:11:25.947 ID:uOt084l+0
客「まず、牛丼……」ベチョッ

客(うわっ、肉とタレが手にべっとりついた……)

客(やっぱり手で食うなんてやるもんじゃねえな。やらなきゃよかった)

客「いただきます」モゾ…モグ…

客「うん……?」

客「ほう、これは……」

客(なんか……いつもよりおいしく感じる!)

28: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:12:47.759 ID:uOt084l+0
客「次はポテトサラダ……」モグモグッ

客(おおっ、こちらもうまい!)

客「漬物……」ポリッ

客(これも……!)

客(なんで味がよくなってるんだ……?)

客(手で食事をすることによって引き起こされる、ある種の“非日常感”が)

客(食品の味を高めているのか……!)

31: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:15:51.108 ID:uOt084l+0
<コンビニ>

女店員「いらっしゃいませー!」

客「どうも」

女店員「あ、この前の……」

客「よかった、またお会いしたかったんだ。ぜひお礼をいいたくて」

女店員「お礼……?」

客「このたびは……誠にありがとうございました!」

女店員「え!?」

32: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:17:10.669 ID:uOt084l+0
客「あなたのおかげで、俺は手で食べる楽しさに目覚めました!」

女店員「そ、そうですか」

客「これからも俺……食事は手で食べます!」

客「というわけで、今日は納豆を買っていきます!」

女店員「は、はぁ……」

客「納豆を手で混ぜたら楽しいだろうなぁ~」ルンルン

34: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:18:56.602 ID:rSVrBIOy0
昔なんかのアニメで

男「しまった!フォークとナイフを忘れてきてしまった」
女1「フォークとナイフなしでどうやって食べるのよ!」
女2「それじゃあ手で食べればいいのよ!」
男「そういうと思って実はわざと持って来なかったのさ」

ってやりとりがあったのを思い出した

35: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:19:35.201 ID:uOt084l+0
<アパート>

客「よーし、今日も手で食べるぞ~!」

客「納豆をよく混ぜて……」グルグル…

ネバー…

客「おお~、すごいすごい!」

パクパク…

客「うーん、手で食べるの最高!」

客「指についた、納豆のヌメヌメはもちろん舐める!」チュパチュパ

37: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:21:26.573 ID:uOt084l+0
<コンビニ>

ウイーン…

客(今日はシリアルでも買って、手で食べようかな……)

客「ん?」



ヒソヒソ… ヒソヒソ…

39: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:23:32.471 ID:uOt084l+0
バイト男「えー、マジで?」

バイト女「その客、ご飯を手で食べてるのー?」

女店員「うん、そうみたい!」

バイト男「マジかよー、ゴールキーパーじゃん! 猿じゃん!」

バイト女「モンキーじゃーん!」

アハハハハ…



客「……!」

40: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:24:54.481 ID:FdvqGvFw0
女店員「箸はお付けいたしますか?」

客「あ・・ぁ・・」

客「俺が…買ったの・・ポテ・・」

女店員「お次のお客さまドウゾー」

客「・・・」

41: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:25:29.705 ID:uOt084l+0
客「あの……」

女店員「あ……っ!」

客「君は……本当に心から、俺に手で食べることを教えてくれたんだと思ってた」

客「だけど、君は……俺を笑い物にしてたんだね!」

客「笑い物にするために、あんなこといったんだね!」

女店員「違うの! これは!」

客「うわぁぁぁぁん!」タタタタタッ

44: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:28:44.352 ID:uOt084l+0
タタタタタ…

客(俺は猿だと? モンキーだと?)

客(上等だよ……!)

客(手で食うのが猿なら、俺は猿でいい! 人間なんてクソ喰らえ!)

客「俺は人間をやめる! こうなったら身も心も猿になってやる!」

客「ウッキー!」

47: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:31:18.145 ID:uOt084l+0
<山>

客「ウッキー!」

猿「ウキキ?」

客「ウキキ、ウッキー!」

猿「ウキキ、ウキキ」

客「ウキキ、ウキウキ、ウッキッキー! ウキウキウッキー!」

猿「ウキ……」

50: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:33:10.440 ID:uOt084l+0
猿「キキ……」

客「ウッキッキー!」

客「ウキッ、ウキキッ、ウキウキーッ!」

猿「ウキキ、ウキ」

客「キキーッ!」

猿「ウキキ、ウキキキキ、ウッキー、ウキウキ、ウッキッキー!」

客「ウキ、キキッ、ウッキー!」

猿「ウキ」

52: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:34:29.147 ID:uOt084l+0
ボス猿「ウキ……」ジリ…

客「ウキキキ……」ジリジリ…

ボス猿「ウキキッ!」バッ

客「ウッキーッ!」バッ



バリバリッ ドカバキッ ドガシャァァァァン

55: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:36:01.983 ID:uOt084l+0
ボス猿「ウキ……」ドサッ…

ボス猿「ウキキ……」

客「ウキキ! ウッキーッ!」ピョンピョン

客「ウッキッキーッ!」

ボス猿「ウキウキ、キキ」

客「ウッキー!」

57: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:38:06.281 ID:uOt084l+0
その頃――

<コンビニ>

女店員(最近あの人、来なくなっちゃったな……)

女店員(今どこで何をしてるんだろ……)

バイト男「ふあぁ……ヒマだな~」

バイト女「ねー」

バイト男「店長もいないし、客もいないし、テレビでも見ようぜ~」

バイト女「見よう見よう~!」

59: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:41:20.181 ID:uOt084l+0
ニュース『昨日、山で猿になりきっている人間が捕獲されました』

バイト男「ん……?」

バイト男「これってあいつじゃね? 手でメシ食うってやつ!」

バイト女「ホントだ!」

女店員「え……」

バイト男「まさか本当に猿になってるとはな! ギャハハハッ!」

バイト女「退化してるじゃん! ダーウィンもビックリ~! 退化論~!」

女店員「……!」

61: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:44:28.756 ID:uOt084l+0
ニュース『なお、保護した警察署では、引き取り手がなく困っている模様……』

ニュース『猿の飼育に心得のある方はぜひ、引き取ってあげて下さい……』

女店員「私が……行かなきゃ!」ガタッ

バイト男「え!?」

女店員「私が引き取ってあげなきゃ!」

バイト男「お、おい!?」

バイト女「どこ行くの~!?」

女店員「ごめんなさい、早退するわ!」

63: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:46:10.052 ID:uOt084l+0
<警察署>

客「ウッキッキー!」ピョンピョン

警官「君が引き取ってくれるのかい?」

女店員「はい」

警官「ありがとう、助かるよ。こちらとしてもどう扱っていいか困ってたところなんだ」

女店員「私が責任を持って、面倒見ます!」

客「ウッキー!」

64: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:48:11.667 ID:uOt084l+0
客「ウキキ……」

女店員「お久しぶりね。そして……」

客「ウキ?」

女店員「ごめんなさい!」

客「ウキキ?」

女店員「私のせいで、猿になってしまって……」

女店員「私が手で食べるのもオツだなんていわなきゃ、こんなことには……」

客「……」

65: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:50:21.511 ID:uOt084l+0
客「いや……いいんだよ」

女店員「え!?」

女店員「あなた、猿になったはずじゃ……」

客「猿が人になれないように……人が猿になりきるのもまた難しいってことさ」

客「警察に捕まり、君に再会したことで、すっかり人間成分が復活してしまった」

女店員「そうだったの……」

女店員「じゃあ、人間社会に戻りましょう!」

客「いや……そのつもりはないんだ」

69: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:53:12.040 ID:uOt084l+0
客「俺はもう山での暮らしに慣れきってしまった……今さら文明社会には戻れない……」

客「これからも山で暮らすよ……」

客「それじゃ……」クルッ

女店員「待って!」

女店員「私も……私も山で暮らす!」

客「しかし……」

女店員「実は私、昔から手で食べるのに憧れてたの」

女店員「バイト仲間にあなたのことを話したのも、笑い物にするためなんかじゃなく」

女店員「むしろ自慢話をするようなニュアンスだったのよ!」

客「え」

女店員「ずっとワイルドな暮らしに憧れてたのよぉぉぉぉぉっ!」

71: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:54:42.094 ID:uOt084l+0
客「だったら、二人で一緒に暮らそう!」

女店員「いいの?」

客「もちろんさ」

客「今度は人間たちに捕獲されないよう、もっと山奥でひっそりとね」

女店員「うんっ!」

73: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:56:15.128 ID:uOt084l+0
<山>

ボス猿「ウッキー!」ドササッ

客「お、果物の差し入れか! どうもありがとう!」

女店員「だけど、もうちょっとお肉が欲しいわね」

客「だったら今日はちょっと遠くまで狩りに行こうか」

女店員「イノシシなんかがいるといいね!」

74: VIPがお送りします 2018/07/10(火) 20:59:26.284 ID:uOt084l+0
ザザザ…

客「こんなところに川があったのか……渡らないといい食料が手に入りそうもないな」

女店員「どうする? 橋を付ける?」

客「当たり前だろ」

客「俺に泳いで川を渡れってのかよ」

女店員「だって、あなたならできそうなんだもん!」

客「こいつぅ~!」







~END~

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