俺「あれ、犬が捨てられてる……」 犬「……」

俺「かわいそうに。ぐったりしてる」

犬「……」

俺「……どうしよう」

犬「かふっ……」

俺「と、とりあえず動物病院に……」

犬「……」

俺「だっこするけど……暴れないでねー……？｣ｿｰｯ

犬「……」

俺「よいしょっ……。軽いね、君は｣ｽﾀｽﾀ

犬「……」

俺「栄養失調と疲労だって。病気とか怪我がなくてよかったね」

犬「……」

俺「予防接種もしたし、あとは──｣ﾁﾗｯ

犬「……｣ｼﾞｰｯ

俺「……飼い主、見つかるといいね」

犬「……｣ｼﾞｰｯ

俺「そんな目で見られても……」

犬「……｣ｽﾘｽﾘ

俺「……うち、来る？」

犬「わぅ」

俺「ケージ、トイレマット……ご飯も買ってきたし……」

犬「くんくんくん……くんくん……｣ｿﾜｿﾜ

俺「しまった、水の容器がなかった。お茶碗でも平気かな？」

犬「……｣ﾁｮﾛﾛﾛﾛ

俺「うわわわっ！ だ、ダメだよそんなところでおしっこしたら！」

犬「！｣ﾋﾞｸｯ

俺「あっ、ごめんごめん。びっくりしちゃったね。おいでー大丈夫だよー」

犬「……｣ﾄｺﾄｺ

俺「ちゃんと来た！ 君、賢いんだね。あはは」

犬「うっ、わふっ！」

俺「いい？ トイレはこのマットの上に──」

俺「……ふふっ」

犬「くー……くー……」

俺「寝てる。落ち着けてるのかな？」

犬「くー……くー……」

俺「さて、お風呂に入ってこようかな。寝てるし大丈夫だよね｣ｿﾛｰﾘ

犬「くー……すー……」

俺「ふふんふんふーん｣ｼｬﾜﾜｰ

俺「はー、あったまる～。暑くてもやっぱり湯船に浸からないとね｣ﾁｬﾌﾟﾁｬﾌﾟ

犬「くぅーん……きゃうーん……！」

俺「あ、あれ？ 起きちゃったのかな？」

犬「きゃほーん！ きゃおーん！ ふぉーーーん！」

俺「めっちゃ鳴いてる！ やばいやばい……！｣ｻﾞﾊﾞｧ

俺「ごめんね！ お風呂に入ってて！｣ｶﾞﾁｬｯ

犬「！｣ﾄﾀﾀﾀｯ

俺「寂しくなっちゃったのかな？ よしよしごめんね」ナデナデ

犬「くぅん……くぅん……｣ｸﾞﾘｸﾞﾘｸﾞﾘ

俺「あははは、そんなに鼻でグリグリしないでよ。ごめんごめん」

犬「くんくんくん……はすっ！ くんくんくんくん……」

俺「んー？ どしたどしたー」

犬「……！？｣ｽﾘﾝｽﾘﾝｽﾘﾝ

俺「あー、そっか。お風呂入ったから臭いが変わったんだね」

犬「はっ、はっ、はっ」

俺「……うわぁ、擦りつけられたところが何かで黒くなっちゃった」

犬「？」

俺「よしっ！ 一緒にお風呂に入ろうか！ 洗ってあげるぞ～！ よーしよしよしよし」

犬「うぉふっ！ ふすっ！」

俺「ごめんなー。洗ってあげるなんて考え、全然浮かばなかったよ｣ﾜｼｬﾜｼｬ

犬「……」

俺「ほんとに大人しくていい子だねー｣ｱﾜｱﾜｱﾜ

犬「……｣ﾊﾟﾀﾊﾟﾀﾊﾟﾀ

俺「あはは！ 褒められてるのがわかるのかな？ 尻尾ブンブンしてる！｣ﾜｼｬﾜｼｬ

犬「へっ、へっ、へっ｣ﾊﾟﾀﾊﾟﾀﾊﾟﾀ

俺「はいおしまいっ。流すのは……どうしようかな。シャワーで平気かな？ 怖くない？｣ｼｬﾜﾜｰ

犬「ふっ」

俺「大丈夫そうだね。じゃあ流すよｰ｣ｼｬﾜﾜﾜﾜ

犬「わふぅ……｣ｳｯﾄﾘ

俺「リラックスしてるー。お痒いところはありませんかー？ なーんて｣ｼｬﾜﾜﾜﾜｰ

俺「ほーら綺麗になったぞー！」

犬「わふふふふっ！｣ﾌﾟﾙﾌﾟﾙﾌﾟﾙｯ

俺「わぷっ！ あはは、水気飛ばしてる。 こっちにおいで。タオルと……ドライヤーは……うーん？」

犬「うっ。わう」

俺「とりあえずタオルで｣ｺﾞｼｺﾞｼ

犬「……」

俺「ドライヤーも使ってみる？」

犬「？」

俺「試しにちょっとスイッチ入れてみるね｣ﾌﾞｫｫｫｫ

犬「！？｣ﾋﾞｸﾋﾞｸｯ

俺「怖い？ あったかいよ。ほら｣ﾌﾞｫｫｫｫ

犬「わんわんわんわんっ！」

俺「はいやめようねー。こわいもんねー」

犬「……｣ｼﾞｰｯ

俺「もうやらないよー｣ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「おふ」

俺「じゃ、ご飯にしよっか。獣医さんのアドバイス通りに買ってきたんだよー」

犬「ごわんっ！」

俺「うおっ！？ 喋った！ 今喋ったよ絶対！」

犬「？」

俺「ご飯だよー。ご飯。言ってごらん？ ごーはーんー」

犬「わふっ」

俺「あははー、ダメかー。はい、カリカリだよー」

犬「……｣ｼﾞｰｯ

俺「あれ？ 食べない。食べていいんだよ？ ほら｣ﾋｮｲ

犬「くんくんくんくん……くんくんくんくん……」

俺「美味しいぞー？ 食べてごらんー？」

犬「はぐっ」

俺「おっ、食べた」

犬「……｣ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ

俺「このお皿のは全部食べていいんだよ。君のご飯だからね｣ｽｯ

犬「はぐはぐはぐはぐ……！」

俺「すごい勢いで食べてる！」

犬「げふっ」

俺「ごちそうさまー。おいしかったかな？ 明日からはカリカリ半分と缶半分にしようね」

犬「う」

俺「……少し待っててね。トイレ行ってくるから」

犬「……｣ｼﾞｰｯ

俺「すぐ戻ってくるよ｣ｽﾀｽﾀ

犬「……｣ﾃｹﾃｹﾃｹ

俺「ついてきてもいいけど、トイレには入れてあげないからね｣ｶﾞﾁｬｯﾊﾞﾀﾝ

俺「ふぅ……」

犬「……｣ｶﾘｶﾘｶﾘｶﾘ

俺「ドアの下掘ってる」

犬「くんくんくんくんくん……くしゅしゅっ！」

俺「待っててねー。もう出るからねー」

犬「……｣ﾃｹﾃｹﾃｹｯ ﾃｹﾃｹｯ

俺「お待たせー」

犬「はっ、はっ、はっ、はっ！｣ｸﾙｸﾙｸﾙ

俺「お水も飲んだし、おしっこもうんちもしたし……。うん、そろそろ寝よっか。君の寝床はここだよ。ここがハウス」

犬「？」

俺「ハウス、だよ。ハウス。俺がいるときは出してあげるけど、お留守番はハウスでするんだ」

犬「わうわうっ」

俺「さ、入って。寝るときもここだよ」

犬「くんくんくん……｣ｺﾞｿｺﾞｿ

俺「えらいえらい。おやすみねｰ｣ｽﾀｽﾀ

犬「くぅん……」

俺「……｣ﾁﾗｯ

犬「ぴゅー……｣ｳﾙｳﾙ

俺「おやすみー……」

犬「ひぃん……きゅーん……」

俺「……寝るときは一緒でいいか｣ｶﾁｬｯ

犬「ぺろぺろぺろぺろぺろ｣ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

犬「すー……くー……」

俺「ちゃんとベッドでも寝るんだなぁ。犬はお利口だって言うけど、きっとこの子は特別お利口に違いない」

犬「くー……きゃんきゃんっ……きゃんっ……」

俺「寝言言ってる……。かわいい……」

犬「うぉふっ……うぉっ……うぉほっ……くー……くー……」

俺「今日から俺と君は家族だよ。これからはずっと一緒だ｣ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「くー……くー……｣ｺﾞﾛﾘﾝ

俺「……そうだ、名前を決めてなかったね」

犬「くー……くー……」

俺「明日、起きたら君に名前をあげるね。どんなのがいいかな？」

犬「くー……くかー……」

俺「……よし、決めた。ふふ、気に入ってくれるといいな」

俺「おやすみ♪」


おしまい

犬飼いたいけどコミュ力のある個体ばかりじゃなく陰キャ個体もいるんだよな

うちの犬はまあ陰キャだった
他の犬とか近付いてきてもガン無視だし他人には全く懐かない
取り柄と言えば可愛くて賢くて飼い主思いなだけだったな