女「婚活しよっと! 年収1000万円以上のザコはお断り!」

2019年02月01日
女「婚活しよっと! 年収1000万円以上のザコはお断り!」

1: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:35:06.599 ID:+yVaRhaH0
アドバイサー「では、こちらの書類に相手に求める条件をお書き下さい」

アドバイザー「その条件に見合う男性を、我々がご紹介いたします」

女(条件といったら、やっぱり年収よね)

女(年収……1000万円以上のザコはお断りっと!)カキカキ

アドバイザー「では預からせていただきます」

女「頼んだわよ」



女「……」

女「あーっ!!!」

女「以上と以下間違えちゃった!」

4: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:39:12.085 ID:+yVaRhaH0
――

アドバイザー「条件に合った方をご紹介します」

男「どうも」

女(うわぁ~……パッとしないのが来ちゃった)

女「ちなみに年収は?」

男「10万円です」

女(10万!? 逆にすげえわ! どうやって生活してんのよ!)

6: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:42:20.469 ID:+yVaRhaH0
アドバイザー「とりあえず、一回デートなさってみたらいかがでしょう?」

男「お願いします」

女(う~ん……さすがに年収10万と結婚はないわ……)

女(だけど、以上と以下を間違えたのは、私のミスだし……)

女「分かりました! 一回デートしてみましょう!」

男「ありがとうございます!」

女(もちろん二回目はないけどね!)

7: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:45:09.078 ID:+yVaRhaH0
デート当日――

男「今日はよろしくお願いします」

女「こちらこそ」

男「じゃあ歩きましょう」

女「ええ」

スタスタスタ…

女「あの……」

男「はい?」

女「どこかお店とか入らないんですか?」

男「一切入りません。金がかかりますからね」

スタスタスタ…

9: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:47:18.070 ID:+yVaRhaH0
スタスタスタ…

女「はぁ、はぁ、はぁ……」

女(もう三時間ぐらい歩いてるんだけど)

男「歩くっていいですよね。金はかからないし、健康にもいいし、景色を楽しめるし」

女「……ええ、そうですね」

男「疲れましたか? じゃあそろそろご飯にしましょうか」

女(やった!)

10: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:51:11.851 ID:+yVaRhaH0
―公園―

男「ここの草はおいしいんですよ~」ブチッブチッ

女「……」

男「……」モシャモシャ

男「よかったら、いかがです?」サッ

女「……どうも」モシャモシャ

モシャモシャ… モシャモシャ…

女(これがホントの草食系男子ってやつなのかしら)

14: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:54:44.703 ID:+yVaRhaH0
―図書館―

男「お腹一杯になったら、ここで休みましょう」

女「図書館……」

男「無料で好きなだけ本を読めますからね。暇潰しには最高ですよ」

男「夜8時で閉まっちゃうのが残念ですけどねえ」

女「ええ……」

男「喉が渇いたら、あっちに水飲み場がありますよ」

女「ど、どうも……」

16: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 21:56:49.820 ID:+yVaRhaH0
男「じゃあ、今日はこれで!」

女「ええ、さよなら!」



女(何時間も歩いて、草食って、図書館でずっと本読んで……前代未聞のデートだったわ!)

女(こんな奴、もう二度と会うもんですか!)

19: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:00:43.259 ID:+yVaRhaH0
―自宅―

女「ふぅ……」ゴロン…

女「足いってえ……マメできなきゃいいけど」ズキズキ…

女(あーあ、ひどい目にあったわ……)

女(だけど、つまんなかったっていうと、そんなことないのよね)

女(あの純朴な感じがクセになるというか――)

女(噛めば噛むほど味が出るというか――)

22: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:04:06.108 ID:+yVaRhaH0
男「いやぁ、嬉しいなぁ! また会って頂けるなんて!」

女「アハハ……」

女(なにやってんだろ、私)

男「正直いって信じられないですよ! 絶対二回目はないな、と思ってました!」

女(私も信じられないわ)

男「じゃあ、今日もとっておきのデートコースをご紹介しますよ!」

23: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:06:25.150 ID:+yVaRhaH0
―河原―

男「ここの草もおいしいんですよ~」ブチッブチッ

女「……」

男「……」モシャモシャ

男「よかったら、いかがです?」

女「……どうも」モシャモシャ

モシャモシャ… モシャモシャ…

男「食べたら俺のアパートに案内しますよ」

女(あ、一応住む家はあったんだ。てっきりホームレスかと……)

27: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:09:49.221 ID:+yVaRhaH0
―アパート―

ギシッ… ギシッ…

女(うわぁ、すごいボロアパート。ほとんど廃墟だわ)

女「ここ……家賃はいくら?」

男「1000円です」

女「大きい地震が来たらすぐ崩れちゃいそうね」

男「それが意外と、よく揺れるから逆に安全なんですよ~」

女(なにその理論……)

29: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:16:17.722 ID:+yVaRhaH0
男「雨水を貯めて、砂糖を混ぜたジュースです。おいしいですよ」

女「ありがとう」ゴクッ

女「あら、おいしい!」

男「でしょう!」

男「こっちは色んな草や葉っぱを混ぜて作ったサラダです」

女「あら、これもおいしい!」ムシャムシャ

男「でしょう!」

女(おかしい……。あれよあれよとこいつのペースに……)

31: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:19:44.401 ID:+yVaRhaH0
男「女さん!」

女「は、はい!」

男「俺、この通り、貧乏で甲斐性なんて全くないけど……」

男「こんな俺でよかったら……結婚して下さい!」

女「……はい」

女(あーあ、OKしちゃった)

32: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:22:43.603 ID:+yVaRhaH0
……

男「今日も草を食べよう」

女「うん!」

モシャモシャ… モシャモシャ…

女「おいしいね!」

男「そうだね」

男「……」

男(こんな俺に、よくついてきてくれている……)

男(俺もいつまでもこんな生活してられない……)

男(彼女のためにも、なんとか浮かび上がらなきゃ……!)

33: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:25:22.873 ID:+yVaRhaH0
男「俺には貧乏生活しながら考えてたビジネスプランがあってね!」

男「やっと形になってきたから、ベンチャー企業を立ち上げたよ!」

男「必ず大金持ちになってみせる!」

女「まあ、まったく期待してないけど……頑張ってね」

女「失敗しても今までの暮らしに戻るだけと思うと気楽だしね」

男「いや……絶対成功させるよ!」

36: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:29:30.034 ID:+yVaRhaH0
―会社―

男「やったぁ、一億の商談が成立した!」

女「おめでとう!」

男「よぉーし、俺の目に狂いはなかった! やっぱりこのビジネスは需要がある!」

男「今はまさに商機! どんどん会社をでかくしてやるッ!」

女「頑張って!」

男「ああ、任せとけ! このまま貧乏脱出どころかセレブになってやるさ!」

39: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:32:44.594 ID:+yVaRhaH0
男「ふぅ~、人を雇って、会社がますます軌道に乗ってきた……」

女「ねえ、たまには公園に草食べに行かない?」

男「草ぁ? ハハッ、なにいってんだい! 俺たちはもうそんなもん食う身分じゃないだろ!」

男「草どころか、森や山だって買い占められるほど貯金もできたんだしさ!」

男「さ、二人で高級レストランに行こう! 今夜は北京ダックなんかどうだい?」

女「うん……」

41: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:34:42.878 ID:+yVaRhaH0
部下「も、申し訳ありませんっ……!」

男「なにやってんだテメェ! まんまと競合に出し抜かれやがってぇ!」

男「だからお前はボンクラだってんだよ! この役立たずがぁ!」

男「いいか、お前の代わりなんざこの世にいくらでもいるんだぞ! 死ぬ気で働けぇ!」

部下「はっ、はいぃ……!」



女「……」

44: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:38:32.728 ID:+yVaRhaH0
女「ねえ」

男「なんだよ?」

女「このところ、あなた……性格すさんできてない?」

女「よく怒鳴るようになったし、目つきも前より吊りあがって……」

男「そりゃなぁ、この世界で生きてりゃどうしてもそうなる」

女「たまには息抜きした方が……」

男「息抜きィ? そんなことしてるヒマなんかあるかよッ!」

男「お前だって俺のおかげでいい暮らしできてんだろがッ! 俺のやることに口出しすんな!」

女「……ごめんなさい」

46: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:41:02.842 ID:+yVaRhaH0
―公園―

女「ふぅ……」

イケメン「あの……このところ毎日ここに来られてますよね」

女「えっ……」ドキッ

イケメン「よろしかったら、一緒に草を食べませんか?」

イケメン「この公園の草は、とてもおいしいんですよ」

女「は、はいっ……」

50: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:43:07.702 ID:+yVaRhaH0
イケメン「おいしいでしょう?」モシャモシャ

女「ええ、懐かしい味……」モシャモシャ

女(この人……まるでかつてのあの人を見ているみたい)



イケメン「また……会えますか」

女「ええ……またこの公園で……」

53: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:46:18.759 ID:+yVaRhaH0
―会社―

部下「社長」

男「なんだ?」

部下「実は奥様が……」ゴニョゴニョ…

男「なにィ~!?」

部下「いかがいたしましょう?」

男「……知るか! ほっとけあんな女!」

男「最近やかましくなったしちょうどいい! 本当に不倫してるなら別れるいい口実になる!」

56: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:49:32.790 ID:+yVaRhaH0
―図書館―

イケメン「おや、今日は絵本ですか」

女「ええ、たまには童心にかえって、と思って」

イケメン「これは……欲張りな金持ちがどんどん荒んでいく、という話ですね」

女(まるであの人みたい……)

イケメン「お金は人の心を汚します。手元にあればあるだけ、精神を濁らせる」

イケメン「頭に浮かべて下さい。世の中のいわゆる富豪と呼ばれる人物たちを」

イケメン「みんな……欲望に歪んだ醜い顔をしている。実際に不祥事を起こすこともある」

イケメン「それに比べて、日々を精一杯生きる貧しい人達はみんな顔も心も清らかだ」

女「ええ、その通り……」

イケメン「さ、また公園に草を食べに行きましょうか」

女「……はい」

60: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:53:25.179 ID:+yVaRhaH0
―公園―

モシャモシャ… モシャモシャ…

イケメン「誰もいない夜の公園で食べる草は格別ですね」

女「ええ、ホント」

イケメン「女さん」

女「はい?」

イケメン「ボクと……結婚して下さいませんか」

女「えっ……。あの実は、私には夫が……」

イケメン「知ってます。そして、あなたのような清らかな方には、ボクの方が相応しいことも」

イケメン「どうか、ボクと一緒になって下さい」

女「……」

65: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:56:14.003 ID:+yVaRhaH0
女「……」

女「やっぱりダメです!」

イケメン「!」

女「私……まだ心の中では、あの人が好き!」

女「あなたに惹かれたのも、かつてのあの人を見てるようだったからなの」

女「だから……あなたと結婚できません! ごめんなさい……」

イケメン「……そうですか」

68: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:59:55.463 ID:+yVaRhaH0
イケメン「――ふざけてんじゃねぇぞォ!!!」

女「え!?」

イケメン「せっかく金持ちの妻たらし込んで、金も体もがっぽがっぽだと思ったらよォ……」

イケメン「直前で冷めることいってくれちゃってよォ……」

女「あ、あなた……騙してたの!?」

女「あなたは貧乏だから、心が清いはずじゃ……」

イケメン「ギャハハハハハハッ! 貧乏人は心が清い? バーッカじゃねえの?」

イケメン「『貧すれば鈍する』ってことわざ知らねえのかァ!?」

イケメン「『衣食足りて礼節を知る』って言葉知らねぇのかァァァ!?」

イケメン「貧乏なら心が清いとか、どんだけ頭お花畑なんだヴァァァァァカ!!!」

女「あ……あああ……」

71: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:03:49.522 ID:+yVaRhaH0
イケメン「オレ、貧乏だからさぁ~、娯楽なんてほとんどねェのよ」

イケメン「だから今晩は……あんたに“娯楽”になってもらうッ!」

イケメン「漫画ゴラクにも掲載できないような目に合わせてやるぜッ!」

女「ひっ!」

イケメン「いくらオレがイケメンでも貧乏だと女も寄ってこねえから、女は久しぶりだァ……!」ジュルリ…

女「だ、誰かっ……!」

イケメン「叫んだって無駄だ、さっき誰もいねェっていったろ!」

イケメン「朝まで生で楽しもうぜェェェェェ!!!!!」

74: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:06:15.401 ID:+yVaRhaH0
男「やめろッ!!!」


女「えっ……」

イケメン「なんだァ~?」

女「どうしてここに……」


男「俺はもう、君のことなんかどうでもいいと思ってた……はずだった」

男「だが、やはり、心の奥底では君のことを忘れることはできなかった……」

男「……戻ってきてくれ」

77: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:09:19.206 ID:+yVaRhaH0
イケメン「オレを無視してんじゃねーぞッ!」

イケメン「いっとくが、オレはテメェのような青ビョウタンにやられるほどヤワじゃねえ」

イケメン「一人でのこのこやってきたこと後悔させてやんぜェ!」

男「一人? なにいってんだ?」

イケメン「え?」

男「俺は金持ちだぞ? ……人を雇ってるに決まってんだろ」

怪力「社長の奥さんに手を出すとは……クズ野郎が」

マッチョ「たっぷりおしおきしてやんなきゃな」パキポキ

豪傑「覚悟してもらおう」

イケメン「あ……」

78: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:12:36.390 ID:+yVaRhaH0
男「……無事でよかった」

女「ごめんなさい……」

男「いや……俺の方こそ悪かった……」

男「ただし俺はもう、貧乏に戻るつもりはない。会社や部下を抱える身だからな……」

男「あいつらを路頭に迷わせるわけにはいかない」

女「うん、分かってる……」

女「私の無い物ねだりだってことは分かってたの……」

80: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:14:13.570 ID:+yVaRhaH0
男「だけど、君と出会った頃のあの気持ちだけは……取り戻したいと思う」

男「だから……一緒に草を食べよう!」

女「うんっ!」

モシャモシャ… モシャモシャ…

男「あ、久しぶりに食うとうまいな」

女「でしょ~」





おわり

85: VIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:17:39.494 ID:WujaDO510
ちょっと草食べに行ってくるわ

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