父「これより万引きを開始する！」母「了解！」兄「ラジャー！」妹「らじゃー！」ポチ「ワン！」

2019年03月06日

ﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ…

母「スーパー上空に到着したわ、あなた」

父「では、これより万引きを開始する！」

母「了解！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

ポチ「ワン！」

父「スーパーの駐車場めがけ、パラシュートで降下する！」

父「とうっ！」ﾋﾟｮﾝｯ

兄「でやっ！」ﾋﾟｮﾝｯ

妹「えいっ！」ﾋﾟｮﾝｯ

ポチ「ワオン！」ﾋﾟｮﾝｯ

ﾋｭｩｩｩｩｩ…

ｼｭｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｯ

父「全員、着地したか！？」

兄「オッケー！」

妹「だいじょぶー！」

ポチ「ワン！」

父「よし、母さんがヘリを着陸させて合流するまで、ここで待機だ！」

通行人「かっけえ……」

母「お待たせ！」

父「これで全員揃ったな」

父「これよりスーパーに突入する！　各自、作戦通りに動くように！」

母「了解！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

ポチ「ワン！」

父「幸運を祈る！」

― スーパーマーケット ―

万引きGメン「……」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…

店員「Gメンさん！」

万引きGメン「どうした」

店員「例の家族が、スーパー内に侵入しました！」

万引きGメン「来たか……万引き家族。今日こそ叩き潰してくれる！」

店員（万引きGメンさんは、身長220cm、体重155kg……なんでこんなに大きいんだろう）

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Giant（巨人）”のGだからな」

店員（心を読まれた！？）

父「いいシェービングクリームはないかな、と」

店員「あっ、あの親父、シェービングクリームを盗むつもりですよ！」

万引きGメン「いや、ヒゲを剃る時、ヤツがそんな上等なものを使うとは思えん」

万引きGメン「石鹸の泡で済ませてしまうような男だ……つまり、あれはフェイク！」

店員「フェイク？」

万引きGメン「フェイクとは、“万引きをやるフリをしてやらない役”……いわばオトリのことだ」

万引きGメン「オトリに目が向けられてるスキに、本命のブツを万引きするというわけだ」

店員「勉強不足でした……！」

母「週刊誌でも万引きしちゃおうかしら」

店員「そうか！　週刊誌がターゲットなんだ！　このゴシップ大好き主婦め！」

万引きGメン「このスーパーでは、週刊誌の類は立ち読みできる」

万引きGメン「タダで読めてしまうものをあの家族がターゲットにするとは考えにくい」

万引きGメン「よって、あの女もフェイク！」

兄「お、いい鉛筆があるぞ！　勉強のために万引きしよう！」

店員「やっと分かった！　鉛筆がターゲットなんだ！」

万引きGメン「あの小僧は典型的な腕白小僧……勉強などするものか。白々しい」

万引きGメン「よってフェイク！」

店員「ということは……」

妹「おやつたべるぅ～、チョコレート、チョコレート！」

店員「この子が万引きをやるんですね！　可愛いのに恐ろしい子だ……」

万引きGメン「いや、この子は洋菓子より和菓子派だったはず。好物はきんつば！」

万引きGメン「なのに、チョコレートに目を向けているのは明らかに不自然！　フェイクだ！」

店員「Gメンさん、あの家族にお詳しいですね……」

万引きGメン「なにしろ、あの家族が夫婦だけだった頃から、10年以上やり合ってるからな」

店員「でもこれじゃ家族全員、何もやらないってことになりますよ！？」

万引きGメン「――いや！」

万引きGメン「奴らにはペットがいる……」

店員「あっ……」

万引きGメン「本命は犬（ポチ）だ！」

万引きGメン「犬はどこにいる！？」

店員「野菜売り場に侵入しています！　――は、速いッ！」

万引きGメン「すぐに向かわねば！　奴らのターゲットは野菜だ！」ﾀﾞｯ

ポチ「ワン！」ﾊﾟｸｯ

父「ポチが標的（大根）をくわえた。これよりスーパー外に脱出する」

母「了解！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

父（決まった……今夜は大根おろしだ！）

万引きGメン「逃がさん」ｻﾞﾝｯ

ポチ「ワン！？」ﾎﾞﾄｯ

父「万引きGメン……！」

母「私たち四人には引っかからなかったのね……」

万引きGメン「今日という今日は、貴様ら家族に引導を渡してくれる」

兄「だけど、僕たちはまだスーパーを出てない！　万引きは成立してないよ！」

妹「そうだそうだー！」

万引きGメン「そんなことは関係ない。このスーパーでは、私が有罪といったら有罪になる」

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Guilty（有罪）”のGなのだから！」

兄「うぐっ……！」

父「どうやら戦うしかなさそうだ」

強盗「おい、ちょっと待て！」

万引きGメン「？」

強盗「俺は強盗だ！」

万引きGメン「そうか、好きに強盗するといい。万引きGメンである私には関係ない」

強盗「なんだとぉ～？　シカトしてっと、この包丁で刺しちま――」

万引きGメン「邪魔だ」

ドゴォッ！！！

強盗「……」ﾋﾟｸﾋﾟｸ…

万引きGメン「さぁ、来るがいい」

父「みんな、行くぞ！　戦闘開始！」

母「了解！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

ポチ「ワン！」

父「喰らえッ！　上段回し蹴り！」ﾌﾞｵｯ

ガキンッ！

万引きGメン「ふん」ｼｭｩｩｩ…

父「ぐああっ……！」ﾐｼｯ…

父「硬いッ！　蹴ったこちらの足がダメージを……！？」

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Guard（防御）”のGだ」

母「だったら、私が関節技で！」ｶﾞｼｯ

万引きGメン「無駄だ……」ｸﾞｲｯ

母「きゃあっ！」ﾄﾞｻｯ

母「そ、そんな……柔道、レスリング、サンボを極めた私から一本取るなんて……」

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Grapple（つかみ合い）”のGでもある」

父（まずい、万引きGメンは大幅にパワーアップしている！　子供たちでは太刀打ちできない！）

父「息子たち！　ポチ！　撤退しろ！　一家全滅は避けねばならん！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

万引きGメン「そうはさせん」ｷﾞﾛｯ

ｽﾞｼｯ…

兄「うわっ！？」

妹「きゃーっ！」

兄「体が急に重くなって……！」ﾐｼﾐｼ…

妹「うごけないよぅ……」ﾐｼﾐｼ…

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Gravity（重力）”のG……重力をも操れるのだ」

父「うぐぐ……少し会わないうちにここまで強くなっているとは……」

母「ショックだわ……」

兄「あのGメン、強すぎるよ……」

妹「おにいちゃん……」

万引きGメン「ここまでだな、万引き家族」

万引きGメン「貴様らには懲役すら生ぬるい……地獄という名の牢獄に行くがよい！」

ドゴォォォォォン！！！

万引きGメン「ぐおあぁぁぁぁぁっ！？」

父「な、なんだ！？」

母「万引きGメンがいきなり爆発したわ！」

兄「なにが起こったの！？」

妹「みんな……あっちにだれかいるよ！」

テロリスト「ハハハ、私はテロリストだ！」

テロリスト「この国を転覆する第一歩として、このスーパーを制圧することにした！」

テロリスト「今の爆破は挨拶代わりだ！」

ﾜｧｧｧｧ…　ｷｬｰｷｬｰ!

兄「あいつだ！　あいつがやったんだ！」

妹「ど、どうしよう……？」

父「……」

父「万引きを一時中止する！」

父「これよりテロリスト阻止及び、買い物客の避難誘導を開始する！」

母「了解！」

兄「ラジャー！」

妹「らじゃー！」

テロリスト「買い物客は、全員人質にしてくれる！」

父「させるかぁっ！」ﾊﾞｷｯ

母「とりゃあっ！」ﾄﾞｶｯ

テロリスト「ぐおっ！？　邪魔をするなァ！」ｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｯ

ドカッ！　バキッ！　ドゴッ！

ｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｯ…　ｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｯ…

兄「皆さん、こっちに避難して下さい！」

妹「ゆっくりいそいでにげてー！」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…　ｻﾞﾜｻﾞﾜ…

父「さぁ、もう人質になる客はいなくなったぞ！」

母「SATが突入してきたら終わりね！」

テロリスト「ぐっ……！」

テロリスト「かくなる上は……このスーパーを丸ごと爆破――」

万引きGメン「させるか……」ﾌﾟｽﾌﾟｽ…

テロリスト「！？」ｷﾞｮｯ

テロリスト「お前、生きてたのか！？」

万引きGメン「万引きGメンのGは、“Ganjou（頑丈）”のG……あれぐらいで死ぬか」

父（ついに日本語に……！）

万引きGメン「最後はGメンらしく、グーパンチを決めてやろう……」ﾑｷﾑｷｯ…

テロリスト「ま、待ってくれ！　許してくれ！」

万引きGメン「万引きGメンのGは……“Give up（ギブアップ）は許さない”のGだ」

ボグシャッ！！！

万引きGメン「……私としたことがとんだ失態だ」

万引きGメン「貴様らのおかげで回復できたし、客も死人が出なかった……」

万引きGメン「礼をいわねばならんな」

父「ふっ、なにをいっている」

母「私たちはそんな馴れ合うような仲じゃないでしょ？」

兄「僕たち今からヘリで逃げるから、それを阻止してよ！」

妹「おにごっこー！」

万引きGメン「……よかろう！」

ﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ…

母「さぁ、みんなヘリコプターで逃げるわよー！」

万引きGメン「逃がすか！」

万引きGメン「隕石よ、あのヘリめがけて降り注げ！」

ﾋｭﾙﾙﾙﾙﾙ…

ズガァンッ！　ドゴォンッ！　バゴォンッ！

兄「うわーっ！　隕石まで操れるのかよ！」

妹「もうなんでもありじゃない！」

万引きGメン「万引きGメンのGは、“maGic（魔法）”のGだからな！」

万引きGメン「……」

万引きGメン「……逃げられたか。あの隕石の嵐をかいくぐるとは」

店長「ふふふ……だが心なしか嬉しそうだね」

万引きGメン「店長！」

店長「君と彼らの因縁は、まだまだ続きそうだねえ」

万引きGメン「……ええ」

万引きGメン（いつか必ず決着をつけるぞ！　……万引き家族！）

ﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ…

母「ふぅ～、なんとか逃げ切れたわ」

父「ナイス操縦だった」

父「だが、大根を万引きするという作戦は失敗に終わってしまったな」

ポチ「ワン！」ﾋｮｺｯ

兄「ポチ！」

妹「いなくなったとおもったら！」

ポチ「ワオン！」ﾎﾟﾄｯ

父「これは……大根の葉っぱ！」

兄「スーパーの野菜売り場のクズかごとかに入ってるやつだ！」

母「大根の葉っぱも煮ればおいしいわよ！」

妹「これはまんびきできたってことでいいの？」

父「うーん、クズ野菜を拾ってきただけだからなぁ……万引きとはいえんな」

父「しかし、Gメンに一矢報いたことには変わりない」

ポチ「ワン！」

父「おまけして、“一（ワン）引き”ってとこかな！」

ｱｯﾊｯﾊｯﾊｯﾊ…

おわり

なるほどこれが万引き家族か

これはGJのG

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