【短編】先輩「やめろよ、本気にするぞ」後輩「してもいいですよ?」ニヤニヤ
1: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:10:48.72 ID:BSGqBZpe0
先輩「……」カリカリ
先輩「……」カリカリ
先輩(……シグマの式はどう展開するんだったか?)ペラペラ
先輩(ああ、この公式だ……ふむふむ)カリカリ
ガチャッ
司書「おっ、また君か……もう七時半だよ?頑張るね」
先輩「あ、すいません」
司書「いや、いいんだけどね。学校の図書室はそういうもんだし。そろそろ受験も怖くなってくる時期でしょ」
司書「じゃあ鍵置いてくからさ、キリがいいところで閉めて帰ってよ。鍵は返却ポストにでもぶち込んどいてくれればいいから」
先輩「すいません、ありがとうございます」
司書「うん、じゃね」
バタン
先輩「んんーっ……」ノビー
先輩(塾行くべきなんかなあ。自習室とかあるらしいし……まあいいや。そろそろ電車の時間だし、帰るか)
2: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:11:30.03 ID:BSGqBZpe0
ガチャッ
先輩「あれ?まだ何か?」
後輩「せーんぱいっ!」ヒョコッ
先輩「……げっ」
後輩「『げっ』て何ですか、『げっ』て。せっかく女の子が会いに来たっていうのに」ムスー
先輩「ああ悪い悪い。今までバスケ部か?」
後輩「えーと、練習っていうよりは、一年坊なんで片付けと……あと自主練、ですかね」
先輩「よくやるなあ、俺は中学の三年で一生分やったよ」
後輩「一生分って、先輩レギュラーどころかベンチにも入れてなかったじゃないですかあ」ニヤニヤ
先輩「に、二年の時に一回入ったよ」
後輩「え、レギュラーにですか?」
先輩「……ベンチだけど」
後輩「えー、先輩の一生それだけですか」クスクス
先輩「うるせえ。俺は帰るぞ」ガタッ
後輩「あっ、じゃあ一緒に帰りましょうよ。先輩の灰色の受験勉強生活に彩りを加えてあげますっ」
先輩「灰色で悪かったな」
3: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:12:11.69 ID:BSGqBZpe0
スタスタ バタンッ ガチャッ
後輩「あれ?鍵預けてもらってるんですか?信用されてますね」
先輩「ああ、平日はいつもここで勉強してるし……あと、あの司書の先生は文芸部の顧問だったからな」
後輩「そういえば先輩文芸部でしたっけ。ほんと、バスケ続ければよかったのに。暗いですよっ」
先輩「暗い言うな。俺の青春だぞ」
後輩「青春を語るなら恋の一つでもしましょうよ?」ニヤニヤ
先輩「うるせえ、だったら相手でも紹介してくれ」
後輩「んー……じゃあ、私とかどうです?」
先輩「……!?や、やめろよ。本気にするぞ」
後輩「してもいいですよ?別に」ニヤニヤ
4: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:12:53.14 ID:BSGqBZpe0
先輩「……そもそも、俺に恋愛を語るなら自分がしてからにしろよな」スタスタ
後輩「え、私付き合ったことありますけど。中二のとき」スタスタ
先輩「……そうかよ。大分早いな……立派なリア充じゃねえか」
後輩「六日で別れましたけど」
先輩「はっやいな!?それ付き合ったって言えんのか?」
後輩「告白されてOKしたのは間違いないですし。いい人そうだなーと思ったので」
先輩「じゃあ何で別れたんだよ?」
後輩「えー、だってライン早すぎてキモいし」
先輩「ええ……そんなことで……」
後輩「あとやたら体触ってくるし、やたら家に呼びたがるんですよね」
先輩「……あ、ああ。それは仕方ないかもな」
後輩「まあでも、変なヒトが寄ってきちゃうのは仕方ないですよね。私可愛いですから」フンス
先輩「本当、見た目だけは良いからな……」
後輩「え?じゃあ……先輩のタイプですか?」ヒョコッ
先輩(!ええい、こいつ、上目遣いで……)ドキッ
先輩「ど、どうだかな……」
後輩「えへへ、今ドキッとしました?」
先輩「してねえし」
5: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:13:20.85 ID:BSGqBZpe0
後輩「隠したって無駄ですよ。先輩の好みなんてわかってるんですから」
先輩「ほーん。言ってみろよ」
後輩「えーと、背は自分より少し低いくらいで、髪は短くて、歳は二つくらい下で……運動部所属。特にバスケ部!」
先輩(そりゃ自分のことじゃないのか……)
先輩「……まあ、近からず遠からずだな」
後輩「そうですか?……じゃあ先輩、今度は私のタイプ当ててみてくださいよ」
先輩「え?……そりゃあお前……年下よりは、年上か?」
後輩「うんうん」
先輩「えーと……で……部活関係で彼氏作ってないってことは、意外と体育会系は好みじゃなかったり……?」
後輩「まあ、そうですね。ついでに言えば、理系よりは文系がいいですねっ」
先輩(……ん?)
先輩「……そうだな。地元が同じほうが気心が知れてていいんじゃないか……いっそ、中学が同じとか」
後輩「そーですねっ!よくわかってますっ!」
先輩(……こりゃ俺のことじゃないのか?またからかわれてるのか……?)
6: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:14:04.20 ID:BSGqBZpe0
後輩「……私、本当に好きな人に会っても、最初は気づけないと思います。優しい人だな、とか、楽しい人だな、とか思うだけで」
先輩「ん?ああ……」
後輩「でもその人と離れて、他の人と付き合う真似事なんかして、やっと気づくんです。私、あの人のことばっかり考えてるって」
後輩「そしたら私、あとは一直線です!勉強だってなんだって死ぬ気でやって、その人のところに辿り着いてみせますっ」
先輩「……」
後輩「……ねえ、先輩」
先輩「……ん?」
後輩「私の恋、うまくいくと思いますか?」
先輩「……」
7: SS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 23:14:40.27 ID:BSGqBZpe0
先輩「……そう、だな。うまくいくと思う。いや、絶対うまくいく」
後輩「……ほんとですか?」
先輩「ああ。自分に近づくためにそこまで頑張ってくれたって知ったら、守ってやりたくなる……と、思うぞ」
先輩「それに、何よりお前……可愛いもんな。あーくそ」ボリボリ
後輩「……そ、そうですかね……えへへ。えへへへへ」ギュッ
先輩「わっ!お、お前、手……!」
後輩「何テンパってるんですか、相手ができたときの練習ですよ、お互い!」
先輩「っ……あ、ああ、そうだな……」ドキドキ
後輩「――ね、先輩!私、待てますから。好きな人が頑張ってるときは、自分のほうを向いてくれなくても、陰ながら応援できるいい女なんですっ」
後輩「なら私の好きな人は、私が追いつくまで他の女の人に目移りしちゃダメ……ですよね、一般的に!」
先輩「そうだな……じゃあさ、もしお前が追いついた時は、相手から告白させてやってくれよな」
後輩「?いいですけど……何で?」
先輩「告白くらい、カッコつけたいだろ……本当に本気だから、さ」