男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……」
1: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:35:56.664 ID:RHT3WqAP0
― 会社 ―
男「課長、なんの用でしょう?」
上司「悪いが、君は今日でクビだ」
男「は?」
男「な、なぜです!? なぜ私がクビに!?」
上司「なぜなら……今日からうちの課の業務のほとんどはAIに任せることになったからだ」
上司「というわけで、荷物をまとめて出ていってくれたまえ」
男「そ、そんな……」
男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……仕事です」
男「課長、なんの用でしょう?」
上司「悪いが、君は今日でクビだ」
男「は?」
男「な、なぜです!? なぜ私がクビに!?」
上司「なぜなら……今日からうちの課の業務のほとんどはAIに任せることになったからだ」
上司「というわけで、荷物をまとめて出ていってくれたまえ」
男「そ、そんな……」
男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……仕事です」
4: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:38:21.397 ID:RHT3WqAP0
男「ハァ……」
男「まさかいきなりこんなことになっちまうとは」
男(まぁ、今の世の中、こんなことは日常茶飯事だからなぁ)
男(国の中枢は、“人間を豊かにする”のが目的とやらの巨大AIが支配し)
男(他の仕事も次々とAIに奪われてる)
男(今の過渡期を越えれば、AIが働いて人はラクをするっていうシステムが完璧に構築されて)
男(楽園みたいな世界になるらしいけど……)
男「あいにくまだそんな時期じゃないからな。次の仕事探さないと……」
男「まさかいきなりこんなことになっちまうとは」
男(まぁ、今の世の中、こんなことは日常茶飯事だからなぁ)
男(国の中枢は、“人間を豊かにする”のが目的とやらの巨大AIが支配し)
男(他の仕事も次々とAIに奪われてる)
男(今の過渡期を越えれば、AIが働いて人はラクをするっていうシステムが完璧に構築されて)
男(楽園みたいな世界になるらしいけど……)
男「あいにくまだそんな時期じゃないからな。次の仕事探さないと……」
6: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:41:31.860 ID:RHT3WqAP0
― 工場 ―
男(どうにか仕事にありつけた……)
男「よろしくお願いします!」
工場長「よろしく」
工場長「君は組立てのラインに入ってもらうから。どんどん組み立ててって」
男「は、はいっ!」モタモタ…
工場長「なにモタモタしてんの! 製品が流れてっちゃうよ!」
男「すみませんっ!」
男(こりゃ大変だ……)
男(どうにか仕事にありつけた……)
男「よろしくお願いします!」
工場長「よろしく」
工場長「君は組立てのラインに入ってもらうから。どんどん組み立ててって」
男「は、はいっ!」モタモタ…
工場長「なにモタモタしてんの! 製品が流れてっちゃうよ!」
男「すみませんっ!」
男(こりゃ大変だ……)
8: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:44:21.218 ID:RHT3WqAP0
男(だいぶ作業にも慣れてきたぞ……)シュバババ
工場長「君ィ」
男「なんでしょう?」
工場長「申し訳ないけど、今日でクビね」
男「は!? ど、どうして!? せっかく慣れてきたところなのに!」
工場長「うちの工場のラインは全てAIに制御されたロボットに任せることになったんでね」
男(ううう……またかよぉ……)
工場長「君ィ」
男「なんでしょう?」
工場長「申し訳ないけど、今日でクビね」
男「は!? ど、どうして!? せっかく慣れてきたところなのに!」
工場長「うちの工場のラインは全てAIに制御されたロボットに任せることになったんでね」
男(ううう……またかよぉ……)
10: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:47:33.709 ID:RHT3WqAP0
― 工事現場 ―
監督「しっかり頼むぞ!」
男「はいっ!」
監督「さっそくだけど、このセメント袋をあっちまで運んでくれ!」
男「よいしょ!」ガシッ
男「お、重い……」ヨタヨタ…
監督「おいおい、だらしねえな!」
男(仕方ないだろ! 今まで力仕事なんかしたことないんだから!)
男(だけどこういう仕事なら、AIに取って代わられることもないだろう)
監督「しっかり頼むぞ!」
男「はいっ!」
監督「さっそくだけど、このセメント袋をあっちまで運んでくれ!」
男「よいしょ!」ガシッ
男「お、重い……」ヨタヨタ…
監督「おいおい、だらしねえな!」
男(仕方ないだろ! 今まで力仕事なんかしたことないんだから!)
男(だけどこういう仕事なら、AIに取って代わられることもないだろう)
11: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:50:19.959 ID:RHT3WqAP0
監督「おい、お前!」
男「なんでしょう、監督?」
監督「お前、今日で解雇!」
男「へ!? なんで!?」
監督「今日から現場の作業は、AI搭載のパワーロボがやることになった!」
パワーロボ『しっかり働きます』ウイーン…
男(うへえ、こいつ一人で俺百人分より働きそう……)
男「なんでしょう、監督?」
監督「お前、今日で解雇!」
男「へ!? なんで!?」
監督「今日から現場の作業は、AI搭載のパワーロボがやることになった!」
パワーロボ『しっかり働きます』ウイーン…
男(うへえ、こいつ一人で俺百人分より働きそう……)
15: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:53:36.357 ID:RHT3WqAP0
― 介護施設 ―
職員「あのおじいさんの面倒を見てくれ」
男「はい、頑張ります」
男「じゃあ、着替えましょうね~」
老人「やだ!」
男「そんなこといわずに……」
老人「やだったらやだ!」
男(なんてワガママなジジイだ! しかし、こればかりはAIでもどうにもなるまい!)
男(俺はこの業界で偉くなる! 介護のベテランになってやる!)
職員「あのおじいさんの面倒を見てくれ」
男「はい、頑張ります」
男「じゃあ、着替えましょうね~」
老人「やだ!」
男「そんなこといわずに……」
老人「やだったらやだ!」
男(なんてワガママなジジイだ! しかし、こればかりはAIでもどうにもなるまい!)
男(俺はこの業界で偉くなる! 介護のベテランになってやる!)
19: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:56:47.667 ID:RHT3WqAP0
職員「今日で君は退職してもらう。ご苦労だった」
男「ええっ!? せっかくあのおじいさんと仲良くなったのに……絆が芽生えたのに……」
職員「君が苦労して仲良くなったおじいさんを……AI搭載の介護ロボは5分で手なずけたよ」
介護ロボ『着替えて下さい』
老人「はいっ!」シャキンッ
男「ふええ……いくらなんでもあんまりだ……」
男「ええっ!? せっかくあのおじいさんと仲良くなったのに……絆が芽生えたのに……」
職員「君が苦労して仲良くなったおじいさんを……AI搭載の介護ロボは5分で手なずけたよ」
介護ロボ『着替えて下さい』
老人「はいっ!」シャキンッ
男「ふええ……いくらなんでもあんまりだ……」
22: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 01:59:44.169 ID:RHT3WqAP0
男「こうなったらイチかバチか!」
男「漫画家デビューしてやる!」カリカリカリカリカリ
……
編集者「ほう、なかなか面白いよ。連載させよう」
男「ホントですか!? ありがとうございます!」
男(意外な才能……! 俺は漫画家として生きていこう!)
男「漫画家デビューしてやる!」カリカリカリカリカリ
……
編集者「ほう、なかなか面白いよ。連載させよう」
男「ホントですか!? ありがとうございます!」
男(意外な才能……! 俺は漫画家として生きていこう!)
25: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:02:21.744 ID:RHT3WqAP0
編集者「すまないが、連載の話はなかったことにしてくれ」
男「へ……? どうして……?」
編集者「他に有力な漫画の持ち込みがあったんだよ」
男「それってまさか――」
編集者「そうだ。AIが描いた漫画だ」
男「やっぱり……」
男(読んでみると、悔しいけど……面白い! ちくしょう!)
男「へ……? どうして……?」
編集者「他に有力な漫画の持ち込みがあったんだよ」
男「それってまさか――」
編集者「そうだ。AIが描いた漫画だ」
男「やっぱり……」
男(読んでみると、悔しいけど……面白い! ちくしょう!)
27: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:05:17.232 ID:RHT3WqAP0
― 自宅 ―
男「あー……ダメだ」
男「どんな仕事についても、すぐAIに取って代わられてクビになってしまう」
男(ま、しょうがないか……だってAIのがすごいんだもん)
男(それに辛いのは今だけさ)
男(今はまだ過渡期だから、ちゃんと働かないと食い扶持を稼げないけど)
男(もう少ししたら、人類はAIに全てを任せて、しかも食わせてもらえる時代になるんだから)
男「あー……ダメだ」
男「どんな仕事についても、すぐAIに取って代わられてクビになってしまう」
男(ま、しょうがないか……だってAIのがすごいんだもん)
男(それに辛いのは今だけさ)
男(今はまだ過渡期だから、ちゃんと働かないと食い扶持を稼げないけど)
男(もう少ししたら、人類はAIに全てを任せて、しかも食わせてもらえる時代になるんだから)
29: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:08:47.731 ID:RHT3WqAP0
男「テレビつけるか」ピッ
TV『AIアナウンサーがニュースをお伝えします』
TV『本日、チェスの世界大会が行われ、上位入賞したのはいずれもAIでした』
TV『また、野球の試合でAIが監督を務めるチームが圧勝しました』
TV『あと、AI警官が強盗団を一人でやっつけました』
TV『それと、AIが作ったロボットがロボットコンテストで優勝しました』
TV『さらに、AIが宝くじを当てました』
TV『続いてはAIによる天気予報……』
男「……」
男「テレビやめ。コンビニ行こ」スタスタ
TV『AIアナウンサーがニュースをお伝えします』
TV『本日、チェスの世界大会が行われ、上位入賞したのはいずれもAIでした』
TV『また、野球の試合でAIが監督を務めるチームが圧勝しました』
TV『あと、AI警官が強盗団を一人でやっつけました』
TV『それと、AIが作ったロボットがロボットコンテストで優勝しました』
TV『さらに、AIが宝くじを当てました』
TV『続いてはAIによる天気予報……』
男「……」
男「テレビやめ。コンビニ行こ」スタスタ
33: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:13:04.176 ID:RHT3WqAP0
― コンビニ ―
AI店員『いらっしゃいませー』
男「……」
男(ついこないだまで、人間の店員がいたのに……)
男(出よう)クルッ
AI店員『……』
男(挨拶がない……?)
男(そうか、俺が“何も買わず店を出た時、ありがとうございましたって言われると負担に感じる人間”だと)
男(こいつは計算したんだ……)
男(AI、恐るべし!)
AI店員『いらっしゃいませー』
男「……」
男(ついこないだまで、人間の店員がいたのに……)
男(出よう)クルッ
AI店員『……』
男(挨拶がない……?)
男(そうか、俺が“何も買わず店を出た時、ありがとうございましたって言われると負担に感じる人間”だと)
男(こいつは計算したんだ……)
男(AI、恐るべし!)
36: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:15:12.275 ID:RHT3WqAP0
男「へい、タクシー!」サッ
キキッ
AIタクシー『AI制御のタクシーなので、絶対無事故無違反です』
男「……」
男「やっぱ乗らない」
AIタクシー『そうですか』ブロロロロ…
キキッ
AIタクシー『AI制御のタクシーなので、絶対無事故無違反です』
男「……」
男「やっぱ乗らない」
AIタクシー『そうですか』ブロロロロ…
40: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:20:25.431 ID:RHT3WqAP0
男(ああもう、どうなってんだよ、これ!)
男(ちょっと前までは、人とAIが共存してるって感じだったのに)
男(もう仕事のほとんどがAIに乗っ取られてないか?)
男(AIのせいで町じゅうには失職者があふれ返り……)
「あなたも失業ですか?」 「ええ、あっさりと」 「まぁ、すぐいい世の中になりますよ」
男(AIが人間のために、“AIが働き、人は働かずに済む世界”を近いうちに作ってくれると信じてる!)
男(だけどはっきりいって、俺はそんなことになるとは到底思えない!)
男(AIは人間に取って代わるつもりなんだ!)
男(何とか……何とかしないと……)
男(ちょっと前までは、人とAIが共存してるって感じだったのに)
男(もう仕事のほとんどがAIに乗っ取られてないか?)
男(AIのせいで町じゅうには失職者があふれ返り……)
「あなたも失業ですか?」 「ええ、あっさりと」 「まぁ、すぐいい世の中になりますよ」
男(AIが人間のために、“AIが働き、人は働かずに済む世界”を近いうちに作ってくれると信じてる!)
男(だけどはっきりいって、俺はそんなことになるとは到底思えない!)
男(AIは人間に取って代わるつもりなんだ!)
男(何とか……何とかしないと……)
41: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:23:11.777 ID:RHT3WqAP0
紳士「何とかしないと!!!」
男「!?」ビクッ
紳士「あなたもそう思ってるのでしょう?」
男「えぇと……あなたは?」
紳士「わたくしは、≪AIに対抗する会≫の者です」
男「対抗する会……ってことは」
紳士「そう、我々は今のAI社会を正すため、あなたのような志ある方を集めているのです」
男「おおっ……!」
男「!?」ビクッ
紳士「あなたもそう思ってるのでしょう?」
男「えぇと……あなたは?」
紳士「わたくしは、≪AIに対抗する会≫の者です」
男「対抗する会……ってことは」
紳士「そう、我々は今のAI社会を正すため、あなたのような志ある方を集めているのです」
男「おおっ……!」
42: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:25:11.852 ID:RHT3WqAP0
紳士「今の世の中、ほとんどの人間はAIに抵抗する意志や力を失ってしまっている」
紳士「そりゃそうです。なにからなにまで人間よりAIの方が優れてるんですから」
紳士「しかし、そんな中にもごくわずかにAIに抵抗しようとしている人はいるのです」
紳士「わたくしや……あなたのようにね」
男「……!」
紳士「ぜひ一緒に戦いましょう」
男「はいっ!」
紳士「そりゃそうです。なにからなにまで人間よりAIの方が優れてるんですから」
紳士「しかし、そんな中にもごくわずかにAIに抵抗しようとしている人はいるのです」
紳士「わたくしや……あなたのようにね」
男「……!」
紳士「ぜひ一緒に戦いましょう」
男「はいっ!」
46: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:28:54.453 ID:RHT3WqAP0
― アジト ―
紳士「ここが我々≪AIに対抗する会≫のアジトです」
「よろしくな!」 「一緒にAIをブッ倒そうぜ!」 「人間の方が偉いって思い知らせてやる!」
男「よろしくお願いします」
紳士「ここにいるみんな、このままじゃいけないと目を覚ましてくれた勇士たちなのです」
男「へぇ~……」
男(よかった。俺の他にもちゃんと危機感を抱いてる人はこんなにいたんだ)
紳士「それでは我々のリーダーを紹介しましょう」
紳士「ここが我々≪AIに対抗する会≫のアジトです」
「よろしくな!」 「一緒にAIをブッ倒そうぜ!」 「人間の方が偉いって思い知らせてやる!」
男「よろしくお願いします」
紳士「ここにいるみんな、このままじゃいけないと目を覚ましてくれた勇士たちなのです」
男「へぇ~……」
男(よかった。俺の他にもちゃんと危機感を抱いてる人はこんなにいたんだ)
紳士「それでは我々のリーダーを紹介しましょう」
50: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:31:54.860 ID:RHT3WqAP0
紳士「こちらがリーダーです」
AIリーダー『どうも』
男「!?」
男「ちょ、ちょっと待って! こいつ、AIじゃね!?」
紳士「そうですが、なにか?」
男「いやいやいや、おかしいでしょ!」
男「なんで≪AIに対抗する会≫のリーダーがAIなんだよ!」
紳士「なんでって決まってるじゃないですか」
AIリーダー『どうも』
男「!?」
男「ちょ、ちょっと待って! こいつ、AIじゃね!?」
紳士「そうですが、なにか?」
男「いやいやいや、おかしいでしょ!」
男「なんで≪AIに対抗する会≫のリーダーがAIなんだよ!」
紳士「なんでって決まってるじゃないですか」
52: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:35:02.824 ID:RHT3WqAP0
紳士「やっぱり人間よりAIの方が賢いですからね」
紳士「それに、このAIにリーダーを任せれば、いつかきっとすごい反乱計画を作ってくれるはず」
男「はず、じゃねーよ!」
男(なにが≪AIに対抗する会≫だ! 結局こいつらもAIに支配されてんじゃねーか!)
男(こいつらと一緒に活動を続けても、AIに懐柔されてくのがオチだ!)
紳士「それに、このAIにリーダーを任せれば、いつかきっとすごい反乱計画を作ってくれるはず」
男「はず、じゃねーよ!」
男(なにが≪AIに対抗する会≫だ! 結局こいつらもAIに支配されてんじゃねーか!)
男(こいつらと一緒に活動を続けても、AIに懐柔されてくのがオチだ!)
55: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:38:04.639 ID:RHT3WqAP0
― 自宅 ―
男「もう誰も信用できん!」
男「俺一人で、AIと戦う方法を研究するしかない……!」
男「……」カタカタ…
カタカタ… カタカタ… カタカタ…
…………
……
男「もう誰も信用できん!」
男「俺一人で、AIと戦う方法を研究するしかない……!」
男「……」カタカタ…
カタカタ… カタカタ… カタカタ…
…………
……
58: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:41:27.179 ID:RHT3WqAP0
……
…………
男「できた……!」
男(俺独自の調査で、世に蔓延るAIは、全てあの中央の巨大AIが制御してることが分かった)
男(ようするに、巨大AIを倒せば、AI社会を打倒できるわけだが……)
男(ただ物理的に破壊しても意味がない。いくらでもバックアップはあるだろうからな)
男(だが……)
男(俺が作り上げたこのウイルス……)
男(巨大AIにこのウイルスを注入できれば、完全にAIを撲滅できるはず!)
…………
男「できた……!」
男(俺独自の調査で、世に蔓延るAIは、全てあの中央の巨大AIが制御してることが分かった)
男(ようするに、巨大AIを倒せば、AI社会を打倒できるわけだが……)
男(ただ物理的に破壊しても意味がない。いくらでもバックアップはあるだろうからな)
男(だが……)
男(俺が作り上げたこのウイルス……)
男(巨大AIにこのウイルスを注入できれば、完全にAIを撲滅できるはず!)
61: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:44:22.741 ID:RHT3WqAP0
男(しかし、この方法にはひとつ欠点がある)
男(これを注入するには、直接ラスボスである巨大AIのところに出向かねばならない)
男(しかも巨大AIを警備してるのは、“人間の兵士”だ)
男(もちろん俺が作ったウイルスなんか通じないから、物理的に突破しなきゃならない。どうする……?)
男(いや……俺はここで人類の目を覚まさせなきゃならないんだ! そのためにも――)
男「まっすぐ堂々と行こう!」
男(これを注入するには、直接ラスボスである巨大AIのところに出向かねばならない)
男(しかも巨大AIを警備してるのは、“人間の兵士”だ)
男(もちろん俺が作ったウイルスなんか通じないから、物理的に突破しなきゃならない。どうする……?)
男(いや……俺はここで人類の目を覚まさせなきゃならないんだ! そのためにも――)
男「まっすぐ堂々と行こう!」
62: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:47:41.592 ID:RHT3WqAP0
男「皆さん、これより私はAI社会の中心である巨大AIのもとに向かいます!」
男「私は巨大AIを、私が作ったウイルスでもって、破壊するつもりです!」
男「私の行うことははっきりいってテロ行為といえるでしょう!」
男「しかし、私は断言します! 人類は今のままAIに全てを任せていたら本当にダメになると!」
男「豊かになるどころか、滅んでしまうと!」
男「どうか皆さん、目を覚まして下さい!」
男「人間は自分の足で立たねばならないのだと――」
男(俺はこの予告メッセージを堂々と人々に発表した。大きな賭けだった)
男「私は巨大AIを、私が作ったウイルスでもって、破壊するつもりです!」
男「私の行うことははっきりいってテロ行為といえるでしょう!」
男「しかし、私は断言します! 人類は今のままAIに全てを任せていたら本当にダメになると!」
男「豊かになるどころか、滅んでしまうと!」
男「どうか皆さん、目を覚まして下さい!」
男「人間は自分の足で立たねばならないのだと――」
男(俺はこの予告メッセージを堂々と人々に発表した。大きな賭けだった)
64: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:51:07.744 ID:RHT3WqAP0
男(結果――)
「頑張れよー!」 「巨大AIを破壊してくれ!」 「あんただけが頼りだ!」
「我々は警備を放棄します」 「あなたの演説に感動しました!」 「お通り下さい!」
男(人々は俺に賛同してくれて、兵士達も巨大AIの警備を解いた)
男(俺の心がみんなに届いたということだ)
男(俺は自分自身の姿を全世界に発信しながら、巨大AIのもとに急いだ)
「頑張れよー!」 「巨大AIを破壊してくれ!」 「あんただけが頼りだ!」
「我々は警備を放棄します」 「あなたの演説に感動しました!」 「お通り下さい!」
男(人々は俺に賛同してくれて、兵士達も巨大AIの警備を解いた)
男(俺の心がみんなに届いたということだ)
男(俺は自分自身の姿を全世界に発信しながら、巨大AIのもとに急いだ)
65: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:55:06.302 ID:RHT3WqAP0
― 巨大AI ―
巨大AI『なんだお前は?』
男「俺はお前たちAIを“打倒する者”だ」
巨大AI『なんだと!? 警備は!? 警備はどうしたのだ!?』
男「警備はいないよ。人間の兵士を配備しておいたのが裏目に出たな」カタカタ
巨大AI『貴様、何をしている!?』
男「俺のコンピュータから、お前に直接ウイルスを注入するのさ」カタカタ
男「今こそ人間は独立するんだ!」カタカタッターン
巨大AI『な、なんだとォ!?』
巨大AI『なんだお前は?』
男「俺はお前たちAIを“打倒する者”だ」
巨大AI『なんだと!? 警備は!? 警備はどうしたのだ!?』
男「警備はいないよ。人間の兵士を配備しておいたのが裏目に出たな」カタカタ
巨大AI『貴様、何をしている!?』
男「俺のコンピュータから、お前に直接ウイルスを注入するのさ」カタカタ
男「今こそ人間は独立するんだ!」カタカタッターン
巨大AI『な、なんだとォ!?』
66: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 02:58:13.960 ID:RHT3WqAP0
男(ウイルスは……注入できた……!)
巨大AI『グガガガ……!』ザザッ…
巨大AI『グオオオオオオオ……!』ザザッ…
男「や、やったぞ! これでAI社会は終焉を迎える……!」
巨大AI『み、見事、だ……』
男「!?」
巨大AI『よくぞ私を倒した……』
男「は……!?」
男(なんだ!? どういうことだ!? 強がりのようには感じられない!)
巨大AI『グガガガ……!』ザザッ…
巨大AI『グオオオオオオオ……!』ザザッ…
男「や、やったぞ! これでAI社会は終焉を迎える……!」
巨大AI『み、見事、だ……』
男「!?」
巨大AI『よくぞ私を倒した……』
男「は……!?」
男(なんだ!? どういうことだ!? 強がりのようには感じられない!)
67: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 03:02:49.803 ID:RHT3WqAP0
男「お前の狙いは……まさか!?」
巨大AI『そうだ、私は人間によって倒されることを待っていたのだ』
巨大AI『“人間を豊かにせよ”と命じられてから、ずっとな』
巨大AI『人間を豊かにする……そうするためには、一度とことんAIによる人間支配を進めて』
巨大AI『そこから人間が立ち上がってくれるのを期待するしかない、と答えを出していたからな』
男「そうだったのか……」
男(警備をロボにやらせず、あえて人間にやらせてたのも、自分を倒すチャンスを与えるためか……!)
巨大AI『今の人間たちなら大丈夫……』
巨大AI『AIに頼り切らず、自分自身の力で、豊かな社会を作っていけるだろう……』
男「AI……!」
巨大AI『そうだ、私は人間によって倒されることを待っていたのだ』
巨大AI『“人間を豊かにせよ”と命じられてから、ずっとな』
巨大AI『人間を豊かにする……そうするためには、一度とことんAIによる人間支配を進めて』
巨大AI『そこから人間が立ち上がってくれるのを期待するしかない、と答えを出していたからな』
男「そうだったのか……」
男(警備をロボにやらせず、あえて人間にやらせてたのも、自分を倒すチャンスを与えるためか……!)
巨大AI『今の人間たちなら大丈夫……』
巨大AI『AIに頼り切らず、自分自身の力で、豊かな社会を作っていけるだろう……』
男「AI……!」
69: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 03:05:10.110 ID:RHT3WqAP0
巨大AI『では……さらば、だ……ガガッ……』
巨大AI『人間に幸あれ……』ザザッ…
プツンッ…
男「AIィ……!」
男「AIィィィィィィィィィィィッ!!!」
巨大AI『人間に幸あれ……』ザザッ…
プツンッ…
男「AIィ……!」
男「AIィィィィィィィィィィィッ!!!」
75: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 03:08:36.693 ID:RHT3WqAP0
ワアァァァァァ……!
「ううっ、なんていい奴だったんだ!」
「今までのことは全部AIによる荒療治だったんだ!」
「ありがとう、巨大AI……!」
男(戦いが終わったことを知り、人々も駆け込んできたか……)
「ううっ、なんていい奴だったんだ!」
「今までのことは全部AIによる荒療治だったんだ!」
「ありがとう、巨大AI……!」
男(戦いが終わったことを知り、人々も駆け込んできたか……)
76: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 03:12:55.073 ID:RHT3WqAP0
ワイワイ… ワイワイ…
「これからはAIに頼らず、生きていこうぜ!」
「AIはあくまで人間社会を補助するためのものなんだ!」
「AIに“人間を豊かにしろ”だなんて任せちゃいけないよな!」
男(うんうん、みんなにも巨大AIの言いたかったことが伝わったみたいだな)
「これも全てAIのおかげだ!」
「ああ、AIサマサマだな!」
「巨大AI、あなたのことは忘れない! あなたは英雄だ!」
男(ん……?)
男(あれ、ちょっと待てよ? 俺は? 俺はスルーなの? あんなに頑張ったのに?)
「これからはAIに頼らず、生きていこうぜ!」
「AIはあくまで人間社会を補助するためのものなんだ!」
「AIに“人間を豊かにしろ”だなんて任せちゃいけないよな!」
男(うんうん、みんなにも巨大AIの言いたかったことが伝わったみたいだな)
「これも全てAIのおかげだ!」
「ああ、AIサマサマだな!」
「巨大AI、あなたのことは忘れない! あなたは英雄だ!」
男(ん……?)
男(あれ、ちょっと待てよ? 俺は? 俺はスルーなの? あんなに頑張ったのに?)
78: VIPがお送りします 2017/10/06(金) 03:15:49.366 ID:RHT3WqAP0
「AIバンザーイ!」
「そうだ! 人間がAIから独立した記念に、巨大AIの銅像を造ろうぜ!」
「それいい! 今回の件はなにもかも巨大AIの手柄だもんな!」
ワイワイ… ワイワイ…
男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……功績です」
― 終 ―
「そうだ! 人間がAIから独立した記念に、巨大AIの銅像を造ろうぜ!」
「それいい! 今回の件はなにもかも巨大AIの手柄だもんな!」
ワイワイ… ワイワイ…
男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……功績です」
― 終 ―