父「おいっ! サケ買ってこいや、クソガキ!」少女「ううっ……」

2019年01月22日
父「おいっ! サケ買ってこいや、クソガキ!」少女「ううっ……」

1: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:36:31.087 ID:nE5N1gpj0
父「ウイ~……ヒック」

父「おいっ!」

少女「!」ビクッ

少女「な……なに? お父さん……」

父「サケ買ってこいや、クソガキ!」

少女「うううっ……」

父「早く行けやっ!」バリィンッ

少女「分かったよぉ……」

9: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:39:32.085 ID:nE5N1gpj0
少女「……」トボトボ…

少年「どうしたの?」

少女「実は、お父さんにサケ買ってこいって怒鳴られたの」

少女「でも、あたしこういうのはじめてで……サケってどこに売ってるのかな?」

少年「うーん……やっぱり魚屋じゃないかな?」

少女「どうもありがとう!」スタタタッ

少年「……」

12: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:42:15.541 ID:nE5N1gpj0
魚屋――

主人「へい、らっしゃい!」

少女「サケください!」

主人「サケかぁ~、今あいにく売り切れなんだよねえ」

少女「そんなぁ……」

主人「なにしろ今は空前のサーモンブーム」

主人「あのニンテンドースイッチより、遥かに入手困難なんだから」

少女「そんなに品薄なんだ……」

主人「だけど、オイラのいう条件を呑んでくれたら、サケを売ってあげてもいいよ」

少女「ホント!? 呑む呑む!」

主人「その条件はね……お嬢ちゃん、君の体さぁぁぁぁぁっ!」グワッ

14: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:46:08.173 ID:nE5N1gpj0
主人「ぐひゃひゃひゃひゃ!」ババッ

少女「ひっ!」サッ

主人「なぜ逃げる!? サケが欲しくないのか!?」

少女「うぅ……」

主人「さぁ、キスさせろ! 抱きつかせろ! 脱がさせろ! ヤらせろォ!」ガシッ

少女「やーっ!」バシッ

主人「このメスガキィ……! 魚の支配者たるこのオイラを殴りやがったな!」

主人「だったら、しょうがねえ」

16: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:48:12.775 ID:nE5N1gpj0
主人「右手に……タイッ!」ジャキッ

主人「左手に……ヒラメッ!」ジャキッ

主人「この二魚流で君を気絶させてから、じっくり体を味わうとしよう!」

主人「ほらほらほらほらほら!」ブンブンブンブンブン

ベチベチベチベチベチッ

少女「きゃーっ! 生臭いーっ!」

19: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:51:37.642 ID:nE5N1gpj0
少年「落ち着いて、少女ちゃん!」

少女「少年くん!?」

少年「昔話の“浦島太郎”を思い出すんだ!」

少女「あっ、そうか!」

少女「よぉし、だったら……」

少女「手を前に伸ばして! 背中を反って! 足は正座させる!」シャキンッ

主人「あっ! こっ、これは!?」

23: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:55:14.755 ID:nE5N1gpj0



バーンッ!


主人「あの女の子の体が……“乙”の字を描いているッ!」

少女「そう、私は乙姫……」

主人「!?」ギクッ

少女「タイやヒラメなど、乙姫からすれば一山いくらのバックダンサーに過ぎないわ」

少女「さぁ、跪きなさい! 魚屋ッ!」

主人「ぐ……ぐぬぬぅ……」

主人「参りましたーっ!」ガバッ

26: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 00:57:21.481 ID:nE5N1gpj0
主人「フッ……オイラの負けだ。乙姫で来られちゃ、さすがの魚屋も手も足も出ねぇや」

少女「魚屋さん……」

主人「オイラに勝った証として、このあさりの貝殻を持っていくといい!」サッ

少女「わぁっ、きれい!」

少女「ありがとう、魚屋のおじさん!」

29: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:02:08.761 ID:nE5N1gpj0
少女「よかったぁ~……」

少女「あやうく、魚屋さんで“男”を知っちゃうとこだったよ」

少年「勘弁してよ。君のはじめてはボクが奪う予定なんだから。中古はやだよ」

少女「えへへへ……」

少年「笑ってる場合じゃないよ。まだサケを手に入れたわけじゃないんだから」

少女「そうだね。でも、どこに行けばサケはあるんだろ?」

少年「この町で、あとサケがありそうな場所といえば……水族館しかないね」

少女「水族館か……行ってみよう!」

31: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:05:25.004 ID:nE5N1gpj0
水族館――

館長「サケが欲しい?」

少女「はいっ!」

館長「じゃあこっちに来なさい」

少女「ありがとうございます!」

少女「どうやら手に入れられそうだね!」

少年「うん……」

34: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:07:36.921 ID:nE5N1gpj0
チャプン…

館長「それじゃ、この水槽の中に入って」

少女「? ……はい」

ザブッ…

館長「つーかまえたっと!」ガション

少女(あれ!? 水槽に蓋されちゃった!)ブクブク…

少年「なんてことするんです!?」

館長「ククク……私は一度飼ってみたかったのさ、人間の女の子をね!」

35: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:10:56.083 ID:nE5N1gpj0
ブクブクブクブクブク…

少女(開けて! 開けて!)ドンドンドンドン

少女(息が……できないっ!)ドンドンドンドン



館長「ほっほぉ~、水の中で溺れる少女! なんという芸術(アート)だ!」

館長「そらもっともがけ! 苦しめぇっ! 私を満足させるのだぁっ!」

36: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:13:17.682 ID:nE5N1gpj0
館長「ご来館の皆さま、あちらをご覧ください!」


少女「ガボッ! ゴボォッ!」ブクブク…


客A「うひょ~、女の子じゃん!」

客B「苦しそうにもがいてやがるぜ!」

客C「こりゃたまんねぇや!」


少年(ボクもいけない性癖に目覚めちゃいそうだけど……なんとか理性を保たないと!)

少年(少女ちゃんを助けなきゃ!)

38: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:17:53.950 ID:nE5N1gpj0
少年「この水槽のガラスを壊せば……!」ガンガンッ

館長「無駄だッ! この水槽のガラスは強化ガラスなんだ!」

館長「もっとも刃物には弱く、傷をつければ水圧も手伝って、ガラスを破ることは可能かもしれん」

館長「しかし、君たちのような子供が刃物を持ってるわけないからね……」ニヤ…

少年「ご丁寧にどうも」

少年(少女ちゃん、あさりの貝殻を使うんだ!)サッサッ



少女(うん、分かった!)ボコボコ…

39: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:20:21.695 ID:nE5N1gpj0
少女(貝殻で……ガラスに傷をつける!)ガッガッ

ピシッ

館長「――ん?」

少女(もっともっともっと!)ガッガッガッガッガッ

ピシピシッ

館長「い、いかんっ! ガラスにヒビがッ!」

少女(トドメよっ!)ガッ

館長「や、やめろぉぉぉぉぉっ!!!」

41: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:22:24.370 ID:nE5N1gpj0
バリィィィンッ!!!


ザバァァァァァッ!!!


館長「中の水がっ……! うっ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」

客A「ぎゃああああっ!」

客B「ひいいいっ!」

客C「助けてぇぇぇぇぇっ!」

45: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:27:04.483 ID:nE5N1gpj0
少女「あたしの勝ちね!」

館長「ぐ……私の負けだ……」

少女「ご褒美になにかちょうだい!」

館長「この水族館を半分やろう」

少女「いらない」

館長「即答かよ。だったらうーむ……そうだな」

館長「私は装飾品のデザイナーでもあってね……その貝殻を貸しなさい」

少女「いいけど」

サササッ

館長「できた! 純白の貝のイヤリングの完成だ!」

少女「わぁっ、ステキ!」

少年「よかったね、少女ちゃん!」

47: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:30:45.833 ID:nE5N1gpj0
少女「魚屋も水族館もダメなら、次はどこへ行けばいいんだろう?」

少年「こうなったら、自力でサケを獲るしかないね」

少女「サケってどこにいるの?」

少年「サケといえば北海道だ……北海道しかない」

少年「北海道へ行こう!」

少女「北海道はでっかいどー!」



北海道編、開幕っ・・・!

50: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:34:09.289 ID:nE5N1gpj0
北海道――

マタギ「お前たち、どこへ行く?」

少女「森へ入って、川に行くの!」

少年「彼女のお父さんがサケを欲しがってるんです」

マタギ「やめとけ……ヒグマに食われて死ぬのがオチだ」

少女「そんなことないもん!」

マタギ「ならば、ここで射殺するのがせめてもの情けッ!」

52: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:37:23.545 ID:nE5N1gpj0
ズドォン!

少女「!」シャッ

マタギ「避けた!?」

ズドォン! ズドォン!

少女「なんの!」シャシャッ

マタギ「また避けた!?」

少女「サケを獲るなら、ピストルの弾ぐらい“避け”られなきゃね」

マタギ「ワッハッハ! こりゃ一本取られたわい!」

少年「行こう」

少女「うん!」



マタギ「なるほど……あの二人ならサケを獲ることも夢ではないかもしれん……」

56: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:40:01.015 ID:nE5N1gpj0
森の中――

少年「ここらへんでイヤリングを落とすんだ」

少女「うん、分かった」

ボトッ



すると――

58: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:43:52.208 ID:nE5N1gpj0
ガサガサ…

ヒグマ「お嬢さん、お待ちなさい」

少女「出たっ!」

ヒグマ「白い貝殻の小さなイヤリングを落としましたよ」

少女「ありがとう!」

ヒグマ「さぁ、お嬢さん、お逃げなさい」

少女「やだっ!」

ヒグマ「なに……?」ピクッ

60: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:47:28.089 ID:nE5N1gpj0
少女「お願いがあります!」

ヒグマ「お願いですって?」

少女「あたしにサケの獲り方を……伝授して下さいませ!」

少年「ボクからもお願いします!」

ヒグマ「……」

ヒグマ「一つ質問をしましょう」

少女「なんなりと」

ヒグマ「旅は道連れ、世はな?」

少女「サケ!」

ヒグマ「おみごと、この問いを正解できた人間はあなたたちがはじめてです」

ヒグマ「あなた方を弟子にしてあげましょう」

少年「あ、ボクは結構です」

64: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:52:40.113 ID:nE5N1gpj0
ヒグマ「いいですか、サケの捕獲は一日にしてならずです」

少女「オス!」

ヒグマ「サケを獲るには、サケを弾き飛ばす“腕力”、チャンスを待つ“持久力”」

ヒグマ「そして一瞬のチャンスを逃さない“反射神経”が必要なのです」

少女「オスッ!」

ヒグマ「いい返事です。さっそくトレーニングを始めましょうか」

65: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:55:05.478 ID:nE5N1gpj0
ヒグマ「この岩を持ち上げるのです!」

少女「オス!」ググッ…


ヒグマ「滝浴び開始!」

少女「オス!」ザババババ…


ヒグマ「この石を避けるのです!」

少女「オス!」シャシャッ

69: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 01:58:32.216 ID:nE5N1gpj0
半年後――

少女「どう?」

少年「う、美しい……!」

少年「まるでミロのヴィーナスのような、完璧に整った裸体……!」

少年「しなやかで、艶やかで、それでいてまったりとしてコクがある……!」ゴクッ…

少女「やだ~、褒めすぎだってば!」

ヒグマ「今のあなたなら、サケにも通用するでしょう。さぁ、ゆくのです!」

少女「オス!」

72: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:02:40.121 ID:nE5N1gpj0
川――

ザババ…

少年「サケが来たよ!」

ヒグマ「焦ってはなりません。狩りにおいて焦りは百害あって一利なし、頭を冷やすのです」

ヒグマ「そして、北海道の大自然と自身を一体化するのです」

ヒグマ「目で見るのではなく感じるのです……北海道の愛を! 北海道の絶望を! 北海道の全てを!」

少女「師匠、ちょっとうるさい」

ヒグマ「あ……」


ザバババババ…


少女(一瞬のチャンスを逃さない!)クワッ



ザバァッ!!!

73: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:06:28.413 ID:nE5N1gpj0
少女「獲ったどーっ!」ビチビチッ

ヒグマ「みごとです。もう私から教えることはなにもありませんよ」

少女「ありがとうございました……師匠!」


少年「帰ろう……君のお父さんのもとへ!」

少女「うん!」ビチビチッ



ヒグマ(北海道の神よ……あの二人に幸運をもたらさんことを……アーメン、味噌ラーメン)

76: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:09:51.583 ID:nE5N1gpj0
少女「ただいまー!」

父「おお、お帰り」

父「半年もどこ行ってたんだ? 心配したんだぞ?」

少女「ごめんなさい……」

少女「でもね、ちゃんと獲ってきたよ……サケ!」ビチビチッ

父「おおっ! ありがとう!」

父「じゃあさっそくサケ料理を振る舞うとしようか! この“クッキングファザー”がね!」

二人「わーいっ!」

77: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:12:44.041 ID:nE5N1gpj0
父「ほらっ、サーモンの刺身だ!」

少女「おいしいっ!」モグモグ


父「鮭のムニエルだ!」

少年「素材の味を生かしつつ、それを絶妙に昇華させた一品だ……!」ムシャムシャ


父「メインディッシュ、石狩鍋だっ!」グツグツ…

二人「おいしそーっ!!!」

81: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:16:23.624 ID:nE5N1gpj0
グツグツ… グツグツ…

少女「お鍋、おいしいね!」ハフハフ

少年「うん、ダシがよくきいてて、骨から温まるようだよ」ハフハフ

父「喜んでもらえて嬉しいよ、ハッハッハ」

少年「北海道まで行ったかいがあったね」

少女「うんっ! はじめてのおつかい、大成功!」





おわり

80: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:14:34.496 ID:zxZk1LQZ0
ええw

79: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:14:17.868 ID:9K1cWJ0t0
合ってたのか

84: VIPがお送りします 2017/10/05(木) 02:26:17.999 ID:XtplcI0Xr

長く険しいおつかいだったな…

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