合気道娘「私が腕をつかんだらわざと転んで下さいね」男「は、はい……」

2019年02月03日
合気道娘「私が腕をつかんだらわざと転んで下さいね」男「は、はい……」

1: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:20:35.968 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「これより演武を始めます!」

合気道娘「それじゃ、いつもの通り私が腕をつかんだらわざと転んで下さいね」ボソッ

男「は、はい……分かりました」

合気道娘「えいっ」ガシッ

男「うわぁぁぁっ!」ステンッ



オォ~……!

客A「すっごーい!」

客B「女の子が簡単に男を転がしちゃったよ!」

6: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:23:48.229 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「ほいっ」ギュッ

男「あわわぁぁぁっ!」スッテン

合気道娘「よっ」ガシッ

男「うわわぁぁぁっ!」コロリン



ワァ~オ!

外人A「ブラボー!」

外人B「これがジャパニーズ・アイキ! 実にミステリアスデース!」

8: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:26:17.886 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「この通り、合気道は大きい相手でも簡単に投げ飛ばせるんです!」

合気道娘「ていっ」

男「わぁぁぁっ!」ドサッ


ワアァァァァァ……!

パチパチパチパチパチ…


合気道娘「それじゃ、お代をあちらの箱の中に入れてお帰り下さい!」

男「……」

9: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:29:10.984 ID:jz7vp07W0.net
ジャラジャラ…

合気道娘「お~、こんなに入ってます! 万札まで! 儲かりましたね!」

男「……そうですね」

合気道娘「じゃ、報酬はいつものように山分けしましょうか!」

男「……」

合気道娘「ん? 浮かない顔してどうしました?」

男「いえ……なんでもないです」

男(ハァ……どうしてこんなことになっちまったのか……)

11: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:33:57.046 ID:jz7vp07W0.net
~回想~

―自宅―

ペラペラ…

男(漫画の合気道キャラって、かっこいいよなぁ~)

男(自分より何倍もデカイ相手をヒョイヒョイぶん投げるんだもん)

男(俺も合気道習えば、こんなことできるようになるのかなぁ~)

男「よぉ~し、習ってみよう!」

男「家の近くに合気道の道場はあるかな……と。あった! 探せばあるもんだなぁ!」

14: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:36:22.930 ID:jz7vp07W0.net
―道場―

男「こんにちは」

合気道娘「こんにちは!」

男(え、女の子!? いや、でも合気道は力はいらなさそうだしアリなのか)

男「あ、あの~……入門しにきたんですけど……」

合気道娘「ありがとうございます! ちょうどよかった、パートナーの人に逃げられて困ってたんですよ」

男(逃げられた? パートナー? 困ってた?)

男「あの……他にお弟子さんは?」

合気道娘「うちの流派は複数の門下生を取らない主義でして」

男「あ、そうなんですか」

合気道娘「さっそく稽古を始めましょう!」

男「は、はい」

19: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:40:24.016 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「準備はいいですか?」

男「はい」

合気道娘「それじゃ、私が腕をつかんだら、わざと転がって下さい」

男「え……わざと?」

合気道娘「えいっ」ガシッ

男「えと……わわっ!」ドテッ

合気道娘「反応が遅いです! もう一回!」

男「はいっ!」

合気道娘「とうっ」ガシッ

男「ぐあっ!」ゴロン

合気道娘「わざとらしいです! もう一回!」

21: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:43:47.057 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「だいぶよくなってきましたね」

男「ど、どうも」

男(掴まれたり掴んだらわざと転がる練習しかしてねえぞ……)

合気道娘「それじゃ、さっそく行きましょう!」

男「行くって……どこへ?」

合気道娘「外で演武ですよ!」

男「演武!? もう!?」

22: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:46:02.908 ID:jz7vp07W0.net
―公園―

合気道娘「さぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」

合気道娘「今から合気道の妙技をとくとご覧いただきます!」

合気道娘「えいっ」ガシッ

男「わぁぁぁぁっ!」ドサッ


ワアァァァァァ……!

パチパチパチパチパチ…


………………

…………

……

26: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:50:46.157 ID:jz7vp07W0.net
男(道場ではいつも技にかかるふりの稽古をして――)

男(公園や体育館で演武をやって、お金を稼ぐ毎日……)

男(しかもうちの演武はなんの技にもかかってないのに、俺が勝手に転がってるだけだもん)

男(ぶっちゃけ詐欺みたいなもんだろ、これ……)

男(きっと前のパートナーの人も、こんな生活が嫌で逃げちゃったんだろうな)

男(このままでいいのだろうか……)

27: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:53:16.868 ID:jz7vp07W0.net
ある日――

―道場―

男「うわぁぁぁっ!」ドテッ

合気道娘「今日の稽古はここまで! お疲れ様でした!」

男「は、はい」

男(今日こそハッキリいおう。辞めようって)

男「あの……途中まで一緒に帰りませんか?」

合気道娘「いいですよ!」

29: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:56:36.092 ID:jz7vp07W0.net
スタスタ…

男「あの……折り入って話があるんですが」

合気道娘「なんでしょう?」

男(うう……いざとなると言いにくいな)

男(だけど言わなきゃ! いつまでもこんな生活してられない!)

男「実は――」

30: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:01:56.492 ID:jz7vp07W0.net
不良「お? なんだこいつら!?」

DQN「袴なんか着てやがるぜ!」

男(うわっ、なんでこんな時に……!)

不良「もしかして、合気道か? ゴシンジュツってやつ」

DQN「合気道? 知ってる知ってる! あれってインチキなんだろ!?」

ギャハハハハ……!

男(その通りだよ……!)

不良「おいお嬢ちゃん、オレに技かけてみろよ!」ガシッ

合気道娘「……!」

男(ああっ、まずい!)

DQN「おいおい、やめてやれよ~、泣いちゃうだろ」

不良「へへへ、合気道なんてインチキです、って謝ったら許してやるよ!」

32: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:07:07.404 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「うりゃあああああああッ!!!」

ブオンッ!

不良「え?」グルンッ


男(不良が宙に舞った!?)


合気道娘「ほらほらほらぁぁぁぁぁっ!!!」

不良「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」グルグルグル


男「えええええ!?」

男(不良を空中で回転させてる!? どうなってんだこれ!?)

37: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:10:04.926 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「おや?」

合気道娘「あんなところに尖った石がありますね……あそこに後頭部から叩きつけてあげましょう!」

不良「ひいいっ!」

合気道娘「地獄へ堕ちろ!!!」

不良「や、やめてぇぇぇぇぇっ!!!」



ブオンッ!!!

40: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:14:56.309 ID:jz7vp07W0.net
男「ダ、ダメですよ! 殺しちゃいますよ!」ガシッ

合気道娘「!」ハッ

不良「うわっ!」ドサッ

不良「ひ、ひえぇぇぇ……!」タタタタタッ

DQN「助けてぇぇぇ……!」タタタタタッ



合気道娘「……」

合気道娘「止めて下さって、ありがとうございます」

合気道娘「危うく殺生してしまうところでした」

男「いえ……」

男(この子、こんなに強かったのか……)

合気道娘「色々私に質問したいことがありますよね」

男「ええ、まあ……」

合気道娘「全てお話しいたします。道場へ戻りましょうか」

42: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:19:45.934 ID:jz7vp07W0.net
―道場―

合気道娘「元々この道場は殺人術としての合気道を極めんとする道場でした」

合気道娘「弟子を一人しか取らない風習も、技を必要以上に広めないためです」

合気道娘「私も幼少の頃より、殺傷のための合気道を父から叩き込まれてまいりました」

合気道娘「そのため、少しでも本気で技をかけようとすると、私はああなってしまうのです」


合気道娘『地獄へ堕ちろ!!!』


合気道娘「あれが私の“本性”なのです」

男(本性……)ゴクッ

合気道娘「こんな状態で、人に技を教えるなどできるわけありません。大怪我させてしまいます」

合気道娘「かといって、生活するためにお金は稼がねばなりません」

合気道娘「そこで思いついたのが、あの“演武”だったのです」

合気道娘「腕をつかむぐらいであれば、私も本性を出さずに済みますから……」

男(殺傷力を極めすぎたがゆえに、インチキ演武で金を稼ぐしかできなかったのか)

男(まさに哀しき鬼の道……“哀鬼道”!!!)

46: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:22:51.526 ID:jz7vp07W0.net
男「もしかして、前逃げたパートナーの人はもしかして……」

合気道娘「はい、ふざけ半分で道場破りに来た格闘家集団がいまして――」

合気道娘「私ったら、つい“本性”を出してしまって……」

男(インチキが嫌になったんじゃなく、この子を恐れて逃げちゃったのか……)

合気道娘「このように、うちの道場はまともに合気道を習える場所ではありません」

合気道娘「教えようとすれば、私の本性が出てしまいケガをさせてしまいますし」

合気道娘「かといって、いつもやってる転がる練習では何も身に付きません」

合気道娘「なので、辞めるならば……引き止めはしません」

男「……」

53: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:27:31.283 ID:jz7vp07W0.net
男「やめません」

合気道娘「え……? ということは、演武を続けるのですか?」

男「いえ、あれをいつまでも続けるのもゴメンです」

合気道娘「では、どうしろと?」

男「俺を本格的に鍛えて下さい」

男「俺は……あなたの“本性”を受け止められるほど強くなってみせます!」

合気道娘「……!」

合気道娘「ありがとう……ございます」

55: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:30:36.677 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「ならばさっそく――」

合気道娘「ぬりゃあああああっ!!!」

ズドォンッ!

男「が、は……っ」メキメキ…

男(い、いでえ……!)

合気道娘「未熟者がッ!!!」

合気道娘「……あっ! 大丈夫ですか!?」

男「な、なんとか……」ゲボッ…

男(甘かった……)

男(今のままじゃ、とてもこの道場の稽古には耐えられない……)

男(この子の合気道に耐えられる体を作るために、トレーニングしなきゃ!)

57: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:33:45.057 ID:jz7vp07W0.net
―ジム―

男「ふんっ! ふんっ!」グッグッ…

マッチョ「おお若いの、頑張ってるじゃねえか!」

男「はい、丈夫な体を作らなければなりませんので」



―ボクシングジム―

トレーナー「ボクサーじゃなくサンドバッグになりたいだと!?」

男「ええ、俺は打たれ強くならねばならないんです」

トレーナー「気に入った! おめえにはオレの全てを伝授してやらぁ!」

58: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:35:46.138 ID:jz7vp07W0.net
―道場―

男「でりゃあああっ!」ガシッ

合気道娘「私の袖を掴むとは愚かな……」

合気道娘(後頭部から受け身を取れぬよう、床に叩きつける!)

合気道娘「地獄へ堕ちろ!!!」グルンッ

ドゴォ!!!

合気道娘「あっ、大丈夫ですか! 私ったらつい……!」

男「まだまだこれからです!」

合気道娘「よかった……」ホッ

男(よし……鍛えたおかげで、この子の投げに耐えられるようになってきた!)

59: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:39:35.812 ID:jz7vp07W0.net
……

―道場―

合気道娘「だいぶ強くなられましたね」

男「いえ……まだまだですよ」ムキッ

男(たしかに筋力や耐久力ではこの子を上回ったろうが、技術的にはまだまだ及ばない)

合気道娘「あの……本当にありがとうございます」

男「え?」

合気道娘「あなたのおかげで私、思う存分稽古ができるんですから」

男「こちらこそ、あなたと出会ってなきゃ、ここまで強くはなれませんでしたよ」

61: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:43:45.249 ID:jz7vp07W0.net
男「そういえば、あなたは年はいくつなんです?」

合気道娘「もうすぐ18になります」

男(もうすぐ……ってことは誕生日が近いのか)

男「あのよかったら、誕生日を教えていただけませんか?」

男(なにかプレゼントしたいし……)

合気道娘「誕生日は一週間後――」

合気道娘「あ」

男「どうしました?」

合気道娘「すっかり忘れてた……」

合気道娘「父が……父が帰ってくる……」ガタガタ…

男(父親!? 勝手に亡くなったとばかり思ってたけど、まだ生きてたのか!)

62: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:46:37.043 ID:jz7vp07W0.net
男「お父さんはどういう人なんです?」

合気道娘「恐ろしい人です」

合気道娘「なにしろ、殺戮合気道を発揮できる場所を求めて、戦場へ行ってしまったのですから」

男「戦場!?」

合気道娘「先日、紛争地帯でミサイルが次々撃墜される事件が報道されたでしょう?」

男「ええ、まるで投げ飛ばされたように撃墜されたとか」

合気道娘「あれは父の仕業といわれています」

男(ミサイルを投げるだと!? ――人間じゃねえ!)

66: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:49:43.873 ID:jz7vp07W0.net
合気道娘「父は私が15の時、この道場を任せて戦場へ旅立ちました」

合気道娘「“お前が18になったら戻ってくる”と言い残して」

合気道娘「父は戻ってくるでしょう。そして戻ってきたら、私も戦場に連れていくに違いありません」

合気道娘「いやっ! 私、もう殺傷のために合気道を使いたくありません!」

合気道娘「自己を研鑽するために、合気道を続けたい……!」

男「……だったら」

男「俺があなたの父を説得します!」

男「あなたを戦場になんか連れて行かせない! 絶対説得してみせます!」

合気道娘「男さん……っ!」

68: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:51:53.206 ID:jz7vp07W0.net
―自宅―

男(……とはいったものの、話を聞いた限りじゃまともに説得できるような人種には思えない)

男(おそらく俺が説得しようとしたら“貴様がワシを投げ飛ばせたら認めてやろう”ってなるに違いない)

男(だが、今の俺がミサイルを投げるような奴を投げられるか……!?)

男(う~む……)

男(とにかく、一週間でできる限り技と体を鍛えるしかない!)

70: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:54:16.333 ID:jz7vp07W0.net
―ジム―

マッチョ「一週間後、強敵と戦う?」

男「はい」

マッチョ「だったら、このスーパープロテインをやろう」サッ

マッチョ「これを飲めば、筋肉のハリが違うからな!」

男「マッチョさん、ありがとう!」



―ボクシングジム―

トレーナー「これがオレのミサイルパンチだ!」ドゴォォォッ!!!

男「す、すごい威力だ……!」

トレーナー「こいつを喰らって倒れない奴はいねえ! ぜひ使ってくれや!」

男「絶対役立ててみせます!」

男(とはいえ、本物のミサイルを投げ飛ばす相手に通じるかどうか……)

74: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:57:08.578 ID:jz7vp07W0.net
―道場―

男「うおおっ!」ガシッ

合気道娘「だりゃっ!」ガシッ

男(重心を崩して……!)グイッ

男「地獄へ堕ち――」

合気道娘「甘いッ! 地獄へ堕ちろ!!!」

ズダァンッ!!!

男「ぐ、ぐふっ……!」

男「もう一回お願いします!」ババッ

合気道娘「来なさい!」

76: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:00:25.617 ID:jz7vp07W0.net
そして――

―道場―

男「いよいよ今日ですね。まずはお誕生日おめでとうございます」

合気道娘「ありがとうございます……」

男「大丈夫、あなたのお父さんは俺が必ず説得してみせます!」

合気道娘「くれぐれも無理はしないで……」ピクッ

ゾワワッ…

合気道娘「……来た!」





ガララッ!!!

78: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:04:21.241 ID:jz7vp07W0.net
父「戻ったぞ! 三年ぶりだなぁ、娘よ!」ズンッ

合気道娘「お、お父さん……」

男「……!」ゾクッ

男(なんだこのオヤジは……!?)

男(甘かった……! 実物を見るまではイマイチ危機感なかったけど、とんでもない化け物じゃないか!)

男(こんな化け物を説得する!? できるわけない! だけど――)

男(俺がやらなきゃ!)

父「さっそくだが娘よ、お前も戦場に連れていくぞ! 父娘で殺戮合気道を極めるのだ!」グワシッ

合気道娘「わ、私は……」

男「やめろ!!!」

80: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:07:54.286 ID:jz7vp07W0.net
父「なんだ、貴様は?」ギロッ

合気道娘「この人は……」

男「娘さんの門下生です」

父「ほう、娘の門下生如きがワシになにを言おうというのだ?」

男「娘さんはもう、殺戮のための合気道はやりたくないといっています」

男「娘さんを連れていくのはやめて下さい!」

父「なるほどなるほど、フハハハハハハハハッ!!!」

父「ふざけるなッ!!!」

男「!」ビクッ

父「そんなワガママを認めるわけにはいかん。しかし……」

82: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:11:04.586 ID:jz7vp07W0.net
父「貴様がワシを投げ飛ばせたら認めてやろう」ザッ

男(うおお……! 完璧に予想通りじゃねえか!)

合気道娘「……やっぱりやめて! 殺されるわ!」

男「やめるわけにはいかないよ」

男「俺はこの人を投げて、ワガママを認めてもらう!」

男「俺だって、あなた……いや君ともっと一緒にいたいんだから」

合気道娘「……男さん」

父「娘をたぶらかしおって……この下郎が」

父「貴様は投げ飛ばすだけでは済まさん! ひと投げで全身を粉砕してくれるわ!」

男(……来る!)

84: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:14:41.505 ID:jz7vp07W0.net
父「ぬおおおおおおおおおおっ!!!!!」ズドドドドドッ



男(ド迫力! 体を掴まれて、次の瞬間にはもうブン投げられてるだろう!)

男(どうすりゃいい!? どうすりゃこのオヤジに一矢報いられる!?)

男(筋力、体格、技術、スタミナ、経験、全て負けてる! 俺の勝ってる要素はない!)

男(……っ!)

男(いや、一つだけある! この人にあって、俺にないもの!)

男(これしかないッ!!!)

86: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:17:03.924 ID:jz7vp07W0.net
父「むんっ!」ガシッ


男「うわぁぁぁぁぁっ!!!」ドテッ


父「え……?」

90: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:21:26.437 ID:jz7vp07W0.net
父「ワシはまだなんの技もかけてないのに、勝手にこけたぞ……!?」

父「やだ……ワシの技、ついに神の域にまで達しちゃった……!?」ドキッ…

男(……なわけねーだろ。散々やらされた“わざと転がる練習”が役に立った!)

男(このスキを逃す手はない!)

男(スーパープロテインでかつてないハリを手に入れたこの右腕で――)

男「ミサイルパンチ!!!」

ドゴォンッ!!!

父「おぐっ!?」

男「そしてぇ……!」ガシッ

男「娘さん直伝、地獄へ堕ちろ!!!」グルンッ



ズガァァァァァン!!!

93: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:25:02.366 ID:jz7vp07W0.net
男「や、やった……!」

合気道娘「父が誰かに投げられるところなんて……初めて見た……」

父「……ふむ」ムックリ

男「ゲ!?(全然ダメージ受けてねえ!?)」

父「見事だ……」

父「若き門下生よ、どうやら貴様には娘を任せられるようだ」

男「……あ、ありがとうございます!」

95: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:27:15.517 ID:jz7vp07W0.net
父「今、頭をしたたかに打ったおかげでワシは悟ったよ」

父「“敵と仲良くなること”こそが合気道の極意なのだと!」

父「これからは世界平和のためにこの技を使おう!」キラキラ…



男「……こんな簡単に悟っちゃったけどいいの?」

合気道娘「はい、戦場に行くって決めた時もこういうノリでしたから」

男「そうなんだ……」

97: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:32:03.554 ID:jz7vp07W0.net
父「ではさらばだ! 今度来た時は孫の顔でも見せてくれよ!」シュタタタタッ



男「孫の顔……」

合気道娘「お父さんたら……! でもいずれ作りましょうね!」

男「はいっ!(え!?)」

男「ところでごめん。誕生日プレゼント、用意してなかった……」

合気道娘「いえ……もう私はいただきましたよ」

合気道娘「最高のプレゼントを」

男「……?」

合気道娘(私を、そして父を、“哀鬼道”から解き放ってくれてありがとう……)

103: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:35:56.683 ID:jz7vp07W0.net
……

……

―道場―

合気道娘「じゃあ私のやるように型をこなして下さいね」

門下生A「はいっ!」

門下生B「はいっ!」

門下生C「はいっ!」



男(あれ以来、彼女は自分の鬼を克服したのか、“本性”を出さずに稽古できるようになった)

男(おかげで道場は、今では一般的な合気道を教える道場として繁盛している)

男(もちろん、俺も道場の一員として彼女を助けている)

107: VIPがお送りします 2017/08/14(月) 23:38:28.578 ID:jz7vp07W0.net
男(だけど、時折二人だけでこっそり稽古して――)


合気道娘「地獄へ堕ちろォ!!!」ブンッ

男「ぐはぁぁぁぁぁっ!」ズダァンッ

合気道娘「あっ、すみません! 頭から首が折れるような角度で落としちゃいました!」

男「だ、大丈夫……」ヨロッ…


男(未だに俺は彼女に勝てていない)







おわり

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