【ぼく勉】あすみ 「来年の夏祭りは」

2019年02月21日
【ぼく勉】あすみ 「来年の夏祭りは」

あすみ 「来年の夏祭りは」

元ネタ:ぼくたちは勉強ができない
938: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:52:36 ID:UudYFwz2
………………小美浪家

小美浪父 「夏祭りのときはすまなかったな」

あすみ 「……いきなりどうした。親父」

あすみ 「家の手伝いをするくらい、浪人させてもらってる身なら当然だろ」

あすみ 「それに、夏祭りの救護係も町医者の大事な仕事だろ」

あすみ 「いつかこの医院を継ぐあたしにとっちゃ予行練習みたいなもんだしな」

小美浪父 「いや、そういうことじゃない」

あすみ 「……?」

小美浪父 「……うちの手伝いをしていたせいで、唯我くんと夏祭りを回れなかっただろう?」

小美浪父 「娘が愛する彼氏と一緒にいられなかったのが、申し訳なくてな……」

あすみ (相変わらずこの親父頭わいてやがる……)

小美浪父 「と、いうことで、秋祭りも救護係の依頼がきているが、」

小美浪父 「お前は手伝わなくていい。その代わり、唯我くんとデートしてきなさい」

あすみ 「手伝いをしなくていい代わりに後輩とデートって……」

939: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:53:15 ID:UudYFwz2
あすみ 「親父ひとりじゃ大変だろ。夏祭りだって後輩に手伝ってもらってようやくだったのに……」

あすみ 「あたしも手伝うよ」

小美浪父 「ふふ、あまり父を甘く見るなよ……」

あすみ 「?」

小美浪父 「祭りのしきり役に頼み込んだ結果、町内会の方から人を借り受けられるようになった」

小美浪父 「せいぜいが軽い体調不良やケガ人しか来ないから、それで十分だろう」

あすみ 「娘のデートのためにそこまでするか、あんたは……」

小美浪父 「……どうしたんだ、あすみ? もう少し喜んでくれるかと思ったが」

小美浪父 「まさかお前……」

あすみ 「!?」 (まずった……! 後輩とのことがウソだってバレ――)

小美浪父 「――唯我くんと喧嘩でもしたんじゃないだろうな?」

あすみ 「………………」 (……鋭いかと思えば鈍いよなぁ、この親父)

あすみ 「してねーよ。わかったよ。秋祭りは後輩と一緒に回ることにするよ」

小美浪父 「そうだな。それがいい。そうしなさい」 ニコニコ

940: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:54:24 ID:UudYFwz2
あすみ 「……っていうか、あんた、大事な大事な娘が心配じゃないのか?」

小美浪父 「む?」

あすみ 「どこの馬の骨とも分からん奴と娘が付き合ってるんだぞ?」

小美浪父 「……? お前は何を言っているんだ?」

小美浪父 「そもそも、唯我くんがお前を泣かせる未来が見えん」

小美浪父 「どちらかというとお前が唯我くんを泣かせないか心配だ」

あすみ (この親父……)

小美浪父 「ほら、これを見ろ、あすみ」

ドサッ

あすみ 「あん? なんだこの紙束。学会で報告する論文か?」

小美浪父 「お前と唯我くんの結婚式での挨拶文だ」

あすみ 「は……?」

小美浪父 「お前の生い立ちから唯我くんとの出会い、唯我くんの素敵なところ、唯我くんとの思い出……」

小美浪父 「そのすべてを書いていたらこんな厚みになってしまったよ」 テレテレ

941: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:55:35 ID:UudYFwz2
あすみ (……ダメだ、この親父)

あすみ (こりゃ、是が非でも来年医学部に入学して、後輩とのことを正直に話さないと)

あすみ (このままじゃ本当に後輩と結婚することになっちまうぞ、あたし)

あすみ 「………………」

あすみ (……まぁ、べつに、あたしとしちゃ、それでも構わないけど)

クスッ

あすみ (なんて後輩に言ってやったら、あいつどんな顔するかな)

あすみ 「……デート、か」

小美浪父 「ん……? おい、あすみ」

あすみ 「ん?」

小美浪父 「口元、ニヤけてるぞ。やっぱりお前も唯我くんと一緒に回りたかったんだな、お祭り」

あすみ 「なっ……」

あすみ 「そ、そんなんじゃねーよ! べつに、あたしは……」

あすみ (……ま、後輩の都合がつくかもまだ分からんしな)

あすみ (とりあえず、誘ってみっか)

942: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:56:22 ID:UudYFwz2
………………数日後 予備校

あすみ 「……ってことで、秋祭りの日、予定あいてるか?」

成幸 「先輩、相変わらず大変そうですね……」

成幸 「協力してあげたいのはやまやまなんですけど、実は……」


―――― 花枝 『秋祭りの日、どうしても仕事が抜けられないのよ』

―――― 花枝 『水希も部活で遅くなるみたいだし……』

―――― 花枝 『申し訳ないんだけど、葉月と和樹を連れていってあげてくれない?』


成幸 「……って母さんに頼まれちゃって」

あすみ 「ああ、この前家にお邪魔したときにいたチビちゃんたちか」

あすみ 「そのふたりがいてもあたしは構わないぞ」

あすみ 「むしろ、幼児ふたりを高校生がひとりで引率って大変だろ」

あすみ 「後輩にはいつも世話になってるしな、あたしも一緒に行ってやるよ」

成幸 「本当ですか? 葉月もいるから女手があると助かりますけど……」

成幸 「……でも、先輩の勉強時間を取ってしまうのは忍びないです」

943: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:56:53 ID:UudYFwz2
あすみ 「構わねーよ。どうせお前と祭りを回れないなら親父の手伝いをするだけだ」

あすみ 「じゃあ、秋祭りの日、会場で待ち合わせだな」

成幸 「はい! ありがとうございます、先輩!」

あすみ 「べつに礼を言われるようなことじゃねーけどさ」


―――― 『次はさ…… 2人で一緒にまわりたいな 縁日』


あすみ (……べつに、意識したわけじゃねーけど)

あすみ (結果的に、前に後輩をからかったとおりになってしまったな)

成幸 「……はー、でも本当に助かるな。混み合う場所にあいつら連れてくと大変だから」

あすみ (……こいつはあのときのことなんて、全然覚えてないみたいだけど)

944: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:57:24 ID:UudYFwz2
………………

吉田 「唯我、あの野郎……!!」

高橋 「武元さんたちのみならず、小美浪先輩までも……!!」

吉田 「しかも秋祭りデートだと!? 受験を舐めてるのか!?」

高橋 「俺だって武元さんとデートしてぇよ!」

吉田 「俺だって古橋さんとお祭り回りてーよ!!」

坂本 「………………」

吉田 「む? どうした、坂本。お前も共に怨嗟を叫ぼう」

高橋 「一緒に怒りを力に変えよう」

坂本 「……いや、ほら、俺ハコ推しだから」

坂本 「最近は、唯我も含めて “ハコ” な気がするからさ」

坂本 「どっちかっていうと、今のやり取りで萌えてた」

吉田 「お、お前……リアルの知り合いのカプに萌えるって……」

高橋 「とうとう来るところまで来たって感じだな……」

945: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:58:03 ID:UudYFwz2
………………秋祭り当日 夕方

あすみ 「………………」

あすみ (……ったく。今日はチビちゃんたちもいるから、いつも通りの格好でいいって言ったのに)


―――― 小美浪父 『何!? 浴衣を着ない!? 彼氏とのデートで浴衣を着ない!?』

―――― 小美浪父 『着ていきなさい! 唯我くんだってきっとお前の浴衣姿を見たいはずだ!』


あすみ (前に救護テントの手伝いをしてもらったときに散々見られたっつーの)

あすみ (……まぁ、あのときは、一言も “似合ってる” とも “かわいい” とも言ってくれなかったけどな)

ムカムカ

あすみ (……って、アタシは何イラついてんだ)

成幸 「あっ……先輩!」

あすみ 「んあ……? おお、後輩。早かったな」

成幸 「こいつらが早く行きたいって聞かなくて……」

和樹 「メイドのねーちゃん!」  葉月 「こんばんは!」

あすみ 「おう、こんばんは。おチビちゃんたち」

946: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:58:53 ID:UudYFwz2
成幸 「先輩も随分早いですね。約束の時間までまだ三十分くらいありますよ」

あすみ 「ああ。救護テントの設営だけ手伝ってから来たからな」

あすみ 「……あの親父は色んなセンスが壊滅的だから、ひとりにすると心配なんだよ」

あすみ 「まぁあの親父の話はいいだろ。ちょっと早いけど、もう行こうぜ」

葉月 「メイドのおねーちゃん、手つないでー!」

あすみ 「おう、いいぞー」

ギュッ

和樹 「で、おれと葉月が手をつないで、兄ちゃんとおれが手をつないで……」

葉月 「あらふしぎ! 仲良し一家の完成だわ!」

和樹&葉月 「「ってことで、メイドのねーちゃん、嫁に来て?」」

成幸 「お前ら……」

あすみ 「式の日取りはいつにする、ダーリン?」

成幸 「先輩も乗らないでください! こいつら本気にしますよ!」

947: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 00:59:46 ID:UudYFwz2
………………

葉月 「兄ちゃーん、わたしりんご飴食べたーい!」

和樹 「兄ちゃん、おれ広島焼き!」

成幸 「わかったわかった……」

成幸 (うぅ……問題集に使うはずだったバイト代よ、さらば……)

あすみ 「………………」

あすみ 「葉月ー? りんご飴結構大きいけど、ひとりで食べきれるか?」

葉月 「? あれくらいの大きさならペロリだわ」

あすみ 「でも、他にも食べたいものあるだろ? 食べられなくなっちゃうぞ~?」

葉月 「! 他の物も食べたい……!」

948: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:00:26 ID:UudYFwz2
あすみ 「よーし。じゃああすみ姉ちゃんもりんご飴食べたいから、半分こしよう」

あすみ 「……ってことで、アタシは葉月とりんご飴買ってくるから」

あすみ 「後輩、お前は和樹と広島焼き買ってこい。またここ集合な」

成幸 「あ、でも先輩、お金……」

あすみ 「アタシが食べたいからりんご飴を買うんだ。お前に出させる謂われはねーよ」

あすみ 「ほら、行くぞ葉月! りんご飴にダッシュだ!」

葉月 「りんご飴ー!」

ピューン

成幸 「行ってしまった……。先輩、パワフルだなぁ……」

成幸 (葉月たちに合わせてくれてるんだよな、きっと……)

和樹 「……かっこいいなー、あすみねーちゃん」

成幸 「ん? ああ、まぁ、そうだな」

和樹 「嫁に来てくれないかな」

成幸 「それは俺じゃなくて先輩に聞いてくれ。ほら、俺たちも行くぞ、和樹」

949: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:01:06 ID:UudYFwz2
………………

葉月 「りんご飴~、甘くてさわやかで~、とろける~」

和樹 「広島焼き、あつあつでうめー!」

葉月 「はい、あすみおねーちゃんも食べて!」

あすみ 「おう、ありがと。葉月」 ハムッ

あすみ 「……うん。美味しいな、葉月」

葉月 「うん!」 スッ 「兄ちゃんも、どうぞ!」

成幸 「えっ? 俺も食べていいのか? じゃあ……」 ハムッ

成幸 (りんご飴なんて食べたのいつ振りだ……? 結構イケるな……)

葉月&和樹 「「………………」」 ニヤニヤニヤ

成幸 「ん? 何だよ、お前ら?」

葉月 「兄ちゃんとあすみおねーちゃん……」  和樹 「かんせつチューだな!」

成幸 「!?」 ボフッ 「な、何をバカなこと言ってんだ……!」

成幸 「まったく……」

950: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:01:50 ID:UudYFwz2
あすみ 「………………」 ニヤニヤニヤ

成幸 「……なんですか、先輩?」

あすみ 「いやー、アタシのファーストキス、奪われちゃったなー、って思ってさ」

成幸 「ぶっ……こ、このふたりよりアホなこと言い出さないでください!!」

あすみ 「ひどい! アタシとのこと、遊びだったのね!」

成幸 「まだ続けるんすかその茶番!」

葉月 「あー……」  和樹 「兄ちゃん最低だな……」

成幸 「お前らもノらなくていいよ!」

成幸 「まったくもう……!」 プンスカプン

和樹 「機嫌直せよ兄ちゃん。ほら、広島焼きあげる」

成幸 「……おう」 パクッ 「……おう。結構美味しいな」

あすみ 「和樹ー、アタシにもくれー」

和樹 「はい、あすみねーちゃん」

あすみ 「うんうん。祭りって言ったらやっぱりこの味だよなー」

951: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:03:05 ID:UudYFwz2
………………射的

真冬 「………………」

真冬 (今日も学園長から祭りの巡回を仰せつかってしまったけれど)

真冬 (前回の失敗は、お面で変に顔を隠して悪目立ちしたのがいけなかったんだわ)

真冬 (そもそも、これだけ人がいるお祭り会場で、生徒と出くわすとは思えないわ)

真冬 (変に目立たなければ、誰とも出くわさずお祭りを楽しめ――じゃなくて、巡回できるわね)

真冬 (だから今回は普通に。顔を隠さずに。射的を楽しみま――巡回しましょう)

パシュッ……パシュパシュッ……

「うおー! すごいぞ、あの美人!」  「百発百中どころじゃないぞ!」

「まさか、あの伝説の射的荒らしが素顔を見せているだと!?」

「俺も撃たれたい!」  「踏まれたい!」 

真冬 「……?」 (なぜかしら。以前よりギャラリーが多い気が……――)

「――まふゆセンセ、何やってんです?」

真冬 「!? こ、小美浪さん!?」

952: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:03:53 ID:UudYFwz2
あすみ 「高そうな浴衣着て、射的にはしゃいじゃって……。お祭り楽しんでますね」 ニヤニヤ

真冬 「ご、誤解! 私はただ、生徒が羽目を外しすぎないか巡回しているだけで……!」

真冬 (僥倖。見つかったのが元生徒である小美浪さんで、まだ良かったと考えるべきね……)

成幸 「あれ? 桐須先生……」 ジトッ 「……また景品もらいまくってるんですか」

真冬 (何で毎度毎度私の前に現れるのあなたは!?)

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーーッ

真冬 「……? この子たちは?」

成幸 「ああ、俺の弟妹です。今日はお祭りに一緒に来たんです、けど……」

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーッ

成幸 「こ、こら! 人の物を物欲しそうに見るんじゃない」

真冬 「………………」

スッ

真冬 「……口止め料。どれでも好きな物を持って行きなさい」

成幸 「えっ!? いいんですか?」

真冬 「小さな子どもの純粋な目には勝てないわ」

953: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:04:30 ID:UudYFwz2
成幸 「ありがとうございます、桐須先生。ほら、お前たちも」

葉月 「ありがとー!」  和樹 「美人の姉ちゃん!」

真冬 「………………」 テレテレ 「……悪い気はしないわね」

あすみ 「マジすか。悪いなぁ。じゃあアタシもひとつ……」

真冬 「あなたにあげるとは一言も言っていないのだけれど?」

あすみ 「ちぇーっ、まふゆセンセのケチんぼー」

真冬 「……聞き捨てならないわね。小美浪さん」

真冬 「というか、今日は救護テントは手伝わなくていいのかしら?」

あすみ 「まぁ、今日は親父からお祭りを回れって指令が出てるもんで」

真冬 「? それでどうして唯我くんと一緒に……?」

あすみ 「ああ、まぁアタシと後輩付き合ってますし」

真冬 「そう」

ハッ

真冬 「……えっ?」

あすみ 「? どうかしました、センセ?」

954: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:05:14 ID:UudYFwz2
真冬 「付き合ってるって……あなたと唯我くんが!?」

真冬 「そ、そうだったの……」

真冬 (……まずいわ。もし唯我くんが私の家に来てしょっちゅう掃除をしていることがバレたりしたら……)


―――― あすみ 『へぇー。まふゆセンセ、人の彼氏をそういう風に使うのが趣味なんですねー』

―――― あすみ 『しかも自分の生徒。教師が聞いて呆れますね』


真冬 (教師としての威厳が地に落ちるどころの話じゃないわ!? ヘタしたら訴訟物よ!)

アセアセアセ

あすみ 「……?」 (あれ……? 冗談だって言おうと思ったのに……この人なんでこんなに焦ってるんだ?)

あすみ 「あ、あの、先生? 冗談ですからね?」

真冬 「えっ……?」

ホッ

真冬 「そ、そうなの。良かったわ……」

あすみ (何が良かったんだろう……? 聞くのも怖いしこのまま聞かなかったことにしよう……)

955: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:05:50 ID:UudYFwz2
葉月 「わたしこれにするー!」 和樹 「おれ、これ!」

成幸 「うん。じゃあ、改めて桐須先生にお礼を言おうな」

和樹&葉月 「「ありがとう、きりす先生!」」

真冬 「どういたしまして」

真冬 「……じゃあ、唯我くん、小美浪さん。遊ぶのもいいけど、門限までには家に帰ること。いいわね?」

真冬 「特に小美浪さんは年上なのだから、唯我くんの見本となるような行動を心がけなくてはいけないわよ」

あすみ 「はーい」

真冬 「では、私は巡回に戻るわ。さようなら、唯我くん、小美浪さん。それから、唯我くんの弟妹さんたち」

和樹&葉月 「「ばいばーい!!」」

あすみ (……うーん、まふゆセンセのさっきの動揺は一体なんだったんだろう)

あすみ (アタシと後輩が付き合ってるのがそんなに焦るようなことなのか?)

あすみ (……まさか、まふゆセンセ、後輩に気があったり……) チラッ

葉月 「すごく美人の先生ね、兄ちゃん」

成幸 「ん? ああ、まぁ、そうだな……」

成幸 (中身は色々残念だけどな……)

956: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:06:50 ID:UudYFwz2
和樹 「浴衣も似合ってたなー」

成幸 「そうだな。あの人は基本的に何でも似合うよ。綺麗な人だからな」

成幸 (ジャージもスーツも……スクール水着もメイド服も制服もチャイナドレスも修道服もフルピュアも……)

あすみ 「………………」

成幸 「? どうかしました、先輩?」

あすみ 「……何でもねーよ」

成幸 「?」

あすみ 「………………」 (……あんだよ。“あの人は何でも似合う” ねぇ)

あすみ (……ふーん。そうかい)

あすみ (……べつに、アタシには関係ないか)

あすみ (そもそも、後輩はアタシと親父に巻き込まれているだけなんだから)

あすみ (……アタシみたいなちんちくりんじゃなくて、きっと……)

あすみ (まふゆセンセみたいな、スタイルの良いおとなっぽい人が、好みなんだろうな)

あすみ (……けっ)

957: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:07:25 ID:UudYFwz2
………………帰路

和樹&葉月 「「………………」」 zzz……

成幸 「……散々はしゃぎ回って、遊んで食べて、とうとう寝たか」

あすみ 「まぁ、楽しそうだったからな。疲れたんだろ」

成幸 「すみません、先輩。葉月をおぶってもらっちゃって……」

成幸 「しかも、うちまで来てもらうことになってしまって……」

あすみ 「気にすんなよ。お前ひとりじゃふたりも連れて帰るの大変だろ」

成幸 「ありがとうございます」

成幸 「……あ、あと、今日、葉月と和樹に色々買ってくれましたよね」

成幸 「お金、返すんで、いくらだったか言ってください」

あすみ 「うん? どうしてお前が金を出すことになるんだ?」

あすみ 「アタシは自分で買ったものを、ちょっと葉月と和樹に分けてやっただけだぜ?」

あすみ 「ヨーヨー釣りだって、くじ引きだって、アタシがやりたかったからやって、景品を葉月と和樹にあげただけだ」

あすみ 「お前が金を払う道理はねーよ」

成幸 「先輩……」

958: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:08:02 ID:UudYFwz2
成幸 「……すみません。今日は葉月たちの世話をしてくれるだけでありがたかったのに、」

成幸 「お金まで出させてしまって……」

あすみ 「だーかーらー、アタシはべつに金を出したつもりはねえよ」

あすみ 「……そもそも、アタシはお前の先輩だからな」

あすみ 「後輩に奢ってやるくらい、当然だろ?」

成幸 「……わかりました。ありがとうございます」

成幸 「お礼に、明日からも気合い入れて勉強教えますからね!」

あすみ 「頼もしい限りだな。頼りにしてるぞ、後輩」

成幸 「はい!」

あすみ 「………………」 (……こいつは本当に良い奴だ)

あすみ (いつまでも、こんな風にアタシの事情に巻き込んでおくわけにはいかない)

あすみ (いつまでもこいつに甘え続けるのは、アタシの矜持が許さないし、何より、こいつに申し訳ない)

あすみ (なんとしても、今年中に国立医学部に入学して、親父に本当のことを話す……)

あすみ (……そして、後輩を開放してあげよう)

あすみ (もし受験に失敗しても、とにかく、親父にウソを謝ろう。そして、後輩を自由に……)

959: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:08:36 ID:UudYFwz2
成幸 「……あ、先輩、そういえば」

あすみ 「ん? なんだー?」


成幸 「浴衣、似合ってますね」


あすみ 「………………」

あすみ 「……へ?」

成幸 「本当は会ってすぐ言いたかったんですけど、葉月と和樹がいて恥ずかしくて……」

成幸 「前の縞模様だけの浴衣もシンプルでカッコ良かったですけど、」

成幸 「今日の花柄の入った浴衣、先輩によく似合っててきれいです」

あすみ 「………………」 プイッ 「……お、おう、そうか」

成幸 「……? 先輩?」

あすみ (ま、まじか、こいつ……)

あすみ (超越的なくらい鈍いくせに、何で、こんな……)

あすみ (……的確に、ほしい言葉をくれるんだ。バカ)

960: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:09:23 ID:UudYFwz2
あすみ (今回の浴衣だけじゃなくて、夏祭りのときの浴衣まで……)

あすみ 「………………」

成幸 「あの、先輩?」

あすみ (……やめろよ。そんな優しい言葉をかけるなよ)

あすみ (せっかく、来年の春で開放してやろうと思ってたのに……)

あすみ (……お前を、手放したくなくなるじゃねーか。バカ)

あすみ (バカ……)

あすみ 「……ありがとう。嬉しい」

成幸 「大丈夫ですか? 顔赤いですけど……」

あすみ 「大丈夫だよ。気にすんな」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「はい?」

あすみ 「……来年の夏祭りは、ふたりで回りたいな」

成幸 「へ……?」

961: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:12:22 ID:UudYFwz2
成幸 「……ま、またからかうようなこと言って」

あすみ 「………………」 ジッ 「……ダメか?」

成幸 「えっ? いや、そんな……ダメとかでは、ないですけど」

あすみ 「……そうか。よかった」

ニコッ

あすみ 「じゃあ、約束な。来年の夏祭りは、ふたりきりで回ろう」

成幸 「は、はい……」 ドキッ

成幸 (なんだよ……。不意打ちすぎだろ)

成幸 (……先輩、笑うとめっちゃかわいいんだから)

成幸 (急に無防備な笑顔を見せないでほしいよ……) ドキドキ……

あすみ 「………………」

あすみ (親父にウソを話して、その上で。お前は……アタシの隣にいてくれるかな)

あすみ (……願わくは、来年の夏は、“ニセモノ” じゃなく、本物として)

あすみ (お前の隣にいられたら、いいな)

おわり

962: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:12:56 ID:UudYFwz2
………………幕間1 「鈍い彼がなぜ浴衣を褒めることができたのか」

成幸 「!?」 (先輩、今日の浴衣も綺麗だな……)

成幸 (前回のシンプルなデザインの浴衣も良かったけど、今回の浴衣……)

成幸 (これは絶対上等な生地だ。あの浴衣、安物じゃないぞ……)

成幸 (うーむ。織り方も秀逸だ。染めも一級品だな、これは……)

成幸 (……いつか、絶対!!)

成幸 (安物の生地でも、これに負けないような浴衣を水希に作ってあげるぞ……!!)


おわり

963: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:13:28 ID:UudYFwz2
………………幕間2 「かわいそう」

紗和子 「ほらほら、緒方理珠! 何から食べる!? 私はとりあえずたこ焼きが食べたいわ!」

理珠 「ちょっと待ってください、関城さん。あんまりはしゃぐとはぐれますよ」

うるか 「さわちんご機嫌だねぇ」

文乃 (……よっぽど夏祭りに誘われなかったのが悲しかったんだろうな)

紗和子 「友達とお祭りに来るのってこんなに楽しいのね! 初めて知ったわ!」

文乃 (……発言のひとつひとつが笑えないよ)

文乃 (今日は紗和子ちゃんに優しくしてあげよう……)


おわり

964: 深夜にお送りします 2018/10/30(火) 01:16:15 ID:UudYFwz2


毎度思いますが、あすみさんはこんなにチョロくないです。
というか、原作で心情描写が圧倒的に少ないので、なかなかどうして彼女の本心は把握しづらいです。
そのあたりがあすみさんの魅力だと思うのですが、わたしは単純なのでどうしてもチョロくしてしまいます。
申し訳ないことです。


そろそろスレも終わりに近づいてきて、次くらいでラストかなと思います。
また思い立ったらスレを立てるつもりですが、どうするかは全く決めていません。

また折を見て投下します。

ぼくたちは勉強ができないSS ▶

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