社畜「ドナドナドーナードーナー、子牛を乗ーせーてー」

2019年05月19日
社畜「ドナドナドーナードーナー、子牛を乗ーせーてー」

1: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:12:54.349 ID:Qb/YY3FO0.net
牧場――

田舎娘「はいはーい、みんなー! ご飯の時間だよー!」



社畜A「やったーっ!」

社畜B「メシだ、メシだーっ!」

社畜C「……」

3: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:15:16.493 ID:Qb/YY3FO0.net
田舎娘「リポビタンDとウィダーinゼリーよー! たーんと食べてね!」



社畜A「うめえ! うめえ!」ゴキュゴキュ…

社畜B「10秒チャージ!」ジュルルルッ

社畜C「……」モグモグ

7: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:18:09.579 ID:Qb/YY3FO0.net
親父「おーい」

田舎娘「なーに、父ちゃん?」

親父「そろそろ出荷する頃合いじゃねえか?」

田舎娘「そうねえ……」

親父「なにしろ、あのバカな社畜どもを社員を消耗品としか思ってねぇ企業に売りつけるのが」

親父「俺らの稼業だからな……」ニヤ…

田舎娘「高く売ってくるよ。任せといて」ニヤ…

9: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:20:16.452 ID:Qb/YY3FO0.net
田舎娘「みんなー! 出かけるよー! 荷馬車に乗ってーっ!」



社畜A「とうとう出荷だな!」

社畜B「よーし、働いて働いて働いて、働きまくるぞ!」

社畜C「いよいよか……」

10: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:23:25.610 ID:Qb/YY3FO0.net
ゴトゴト…… ゴトゴト……


社畜A「どんな会社なんだろうな」

社畜B「さあなー」

社畜C「あーるー晴れたー、ひーるー下がりー、市場へ続く道ー」

社畜A「ん? なにその歌?」

社畜B「いいじゃん、続けて」

社畜C「荷馬車がー、ゴートーゴートー、子牛を乗せてゆくー」

11: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:25:24.884 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「かわいーい子牛ー、売らーれてゆーくーよー」

社畜C「悲しそうな瞳で、見ているよー」

社畜C「ドナドナドーナードーナー、子牛を乗ーせーてー」

社畜C「ドナドナドーナードーナー、荷馬車が揺ーれーるー……」

社畜A「へぇ~、いい歌じゃんか。二次会のカラオケとかで歌ったら盛り上がりそうだ」

社畜B「だけど、なんか寂しい気分にもなるな」

社畜C「……なあ」

14: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:27:29.581 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「俺らって結局、どこに連れてかれるんだ……?」

社畜A「そりゃ決まってんだろ、どこかのブラック企業さ」

社畜A「そこで牛馬のように働いて、よくて十数年、早けりゃ数年で過労死する」

社畜A「それが俺たち“社畜”の定めさ……」

社畜B「そういうこと。そうなるために育てられたんだもんな、俺ら」

社畜C「……」

15: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:30:34.996 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「俺たちみたいな人間が、人として扱ってもらえる、ホワイト企業って本当にないのかな?」

社畜A「いきなり何をいうかと思えば……あるわけないだろ、そんなもん」

社畜A「ホワイト企業なんてのは、ただの伝説さ」

社畜B「俺らみたいな社畜が、自分を慰めるために作った話って説もあるな」

社畜C「だけど俺……絶対この世のどこかにあると思うんだ!」

社畜C「ホワイト企業ってやつが……!」

社畜AB「……」

16: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:33:16.320 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜A「……行っちまいな」

社畜C「!」

社畜A「探したいんだろ? ホワイト企業ってやつを」

社畜B「黙っててやるから、とっとと荷馬車を降りちまいな」

社畜C「……いいのか?」

社畜A「ただし、もしホワイト企業を見つけたら、俺たちも入社させてくれよな!」

社畜B「頼むぞ!」

社畜C「……もちろんだ! 二人とも、ありがとう!」

19: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:35:15.800 ID:Qb/YY3FO0.net
ドサッ!

タタタタタッ!


社畜C「俺は絶対見つけ出すぞ……!」

社畜C「ホワイト企業を……!」


ガサガサッ! ガサガサッ!

20: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:39:30.840 ID:Qb/YY3FO0.net
田舎娘「ぬわにぃ!? 社畜が一匹逃げ出したですって!?」

田舎娘「あれ一匹育てるのに、どれだけ金と手間がかかってると思ってるの!」

田舎娘「草の根分けても捜し出すのよ! いいわね!」

田舎娘「殺しさえしなきゃ、何してもかまわないわ!」

農夫A「はっ!」

農夫B「かしこまりました、お嬢様!」



社畜A(荷馬車の重さが変わったから、すぐバレちまったか……)

社畜B(逃げきれよ……)

22: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:42:07.237 ID:Qb/YY3FO0.net
ワァァァ…… ワァァァ……

「社畜を捕えろーっ!」 「絶対見つけ出せ!」 「半殺しにして連れ戻すんだ!」



社畜C「くっ……!」

社畜C「ものすごい数の捜索隊が出されている!」

社畜C「だけど、捕まってたまるものか! 俺は絶対ホワイト企業を見つけ出すんだ!」

23: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:45:35.286 ID:Qb/YY3FO0.net
ガサガサ…… ガサガサ……


社畜C「ハッ、ハッ、ハッ……」

社畜C(あれからろくに眠らず、一週間は走り続けたが……)

社畜C(逃げ回ってるうちに、どこを走ってるのか分からなくなっちまった……)

社畜C(もう……走れない……)

社畜C(ここまで……か……)

社畜C(ありもしないホワイト企業を探して、過労死するなんて……俺らしい……や……)ドサッ

24: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:49:41.660 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「……」



女「あら!?」

女「大変! 誰か倒れてるわ!」

女「しっかりして! しっかり!」

25: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:53:21.840 ID:Qb/YY3FO0.net
――

――――

社畜C「……う」

女「よかった……目を覚ましたのね!」

社畜C(白い衣をまとった、なんと美しい人だ……。そうか、ここが天国か……)

社畜C「俺なんかの魂を救済して下さって、ありがとうございます」

女「魂? 救済? 何いってるの? あなたはまだ生きてるわよ」

社畜C「へ……? それじゃここはどこですか?」

女「ここはホワイト企業よ」

社畜C「ここが――!」

26: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:56:14.949 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C(やった! やっと見つけた!)

社畜C「あのっ!」

女「は、はいっ!?」

社畜C「俺、ホワイト企業に入社したいんです!」

社畜C「ぜひ入社させて下さい!」

女「わ、分かったわ! それじゃ私の父である社長に会ってみて下さい!」

社畜C「よろしくお願いします!」

27: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 21:59:42.815 ID:Qb/YY3FO0.net
白社長「君のような元気な若者は大歓迎じゃよ。ぜひ入社してくれたまえ」

社畜C「あ……ありがとうございますっ!」

社畜C「じゃあさっそく今日から働かせていただきます!」

社畜C「全身全霊、昼夜ぶっ通しで働いてみせます!」

白社長「いやいや」

白社長「君はまだ病み上がり。働くのは体が全快してからで結構じゃよ」

社畜C(これが……ホワイト企業か!)

29: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:03:00.964 ID:Qb/YY3FO0.net
一週間後……

社畜C「皆さん、今日からよろしくお願いします!」


「よろしく!」 「よろしくな!」 「期待してるよ!」


女「やっと退院できたのね。一緒に働きましょ!」

社畜C「うん!」

女「だけど無理しないでね。うちの社のモットーは無理はしない、なんだから」

社畜C「大丈夫、体力だけには自信あるんだ!」

30: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:06:24.280 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「うおおおおおおおおおおおおおお!」バリバリバリ

女「すっごーい! こんなに早く仕事を覚えちゃうなんて!」

社畜C「仕事が楽しくて楽しくて!」

女「だけど、ちゃんと休憩もしなきゃダメよ」

社畜C「大丈夫だよ。休憩なんて――」

女「ダーメ、あなたを無理させたら、私がお父さんに叱られちゃう」

女「休息だって、立派な仕事なんですからね」

社畜C「う、うん」

社畜C(これが……ホワイト企業……)

32: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:09:40.434 ID:Qb/YY3FO0.net
上司「5時だ、みんな仕事は終わりにしよう!」

上司「後は酒を飲むのも、休むのも、趣味を満喫するのも自由だ! 無理強いはしない!」

上司「束縛のないアフターファイブこそが、いい仕事を生むのだから!」


ワァァッ!


女「じゃあ、今夜はちょっと飲みに行かない?」

社畜C「喜んで!」

社畜C(これが……ホワイト企業ッ!)

33: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:12:57.770 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「あー……今日も楽しかった……」ドサッ…



社畜C(高給、完全週休二日制、福利厚生も抜群、体調を崩したらいくらでも休める)

社畜C(社員食堂は安くておいしいし、みんな優しいし、仕事は楽しくてやりがいがある)

社畜C(家に帰ればこうして、ふかふかのベッドが待っている……)

社畜C(そして……愛しのガールフレンドもできた……)

社畜C(これが……これがホワイト企業か……!)

社畜C(決めた! 俺はもうここを出ない! 一生ここで暮らす!)

34: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:17:34.677 ID:Qb/YY3FO0.net
やがて――

白社長「これは……我がホワイト企業に伝わる“三種の神器”じゃ」

社畜C「これが……!」


白きバズーカ砲『労働基準砲』

純白の鎧『労働組アーマー』

戦うシロサイ『労サイ』


白社長「今我が社はすっかり平和だから、これらを使える者はおらんがね。わしも無理じゃ」

白社長「もっとも、使う必要もないんじゃが」

社畜C「その通りですね!」

35: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:22:03.855 ID:Qb/YY3FO0.net
白社長「三種の神器は、ホワイト企業の社長に代々伝えられる」

社畜C「そうなのですか」

白社長「そして……わしはいずれ三種の神器を君に託したいと考えている」

社畜C「!」

白社長「この意味が分かるかね?」

社畜C「は……はい……」

白社長「期待しておるよ」

白社長「今、世の中はブラック企業だらけじゃが、その中で我がホワイト企業を成長させることができるのは」

白社長「君しかおらんと思っておる」

社畜C「必ずや期待にこたえてみせます!」

社畜C(俺が次期社長だなんて……夢みたいだ!)

37: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:25:31.212 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「女さん、今日は出張(デート)に行かないか?」

女「喜んで!」

社畜C(よし……今日こそ女さんにプロポーズするぞ!)

社畜C(この給料三ヶ月分の指輪を渡して……!)

38: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:27:29.209 ID:Qb/YY3FO0.net
出張先――

社畜C「たまには普段来ないような地方に出張ってのも、いいもんだね」

女「ホント、食べ物もおいしいし」

社畜C「ところで……」

女「なあに?」


ビシィッ! バシッ! バチンッ!


社畜C「?」

女「なにかしら、この音?」

39: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:31:00.748 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「あっちの方角から聞こえたね」

女「あれは……」


黒社員A「コラァ、手が止まってンぞ!」バシッバシッ

黒社員B「働け! 血ヘド吐いて、過労死するまでな!」ビシッビシッ


社畜C「なんてむごい……」

女「あれは……ブラック企業だわ。ああやって位の低い社員をムチで叩いて働かせてるのよ」

女「できれば助けてあげたいけど……」

社畜C「俺たちにブラック企業と戦う力はないし」

社畜C「彼らを助けたところで、世の中が変わるわけじゃない。見捨てるしかないよ」

社畜C(俺もホワイト企業に入れなきゃ、ああやって鞭打たれてたんだろうなぁ……)

社畜C(あの時、荷馬車から逃げ出して本当によかった……)

社畜C「――ん?」

40: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:34:24.936 ID:Qb/YY3FO0.net
ビシッ! バシィッ! ベチッ! バシィッ!

社畜A「ぐっ、がはっ……!」

社畜B「う、ぐぅ……」ガクッ

黒社員A「あ、こいつ失神しやがった! 水ぶっかけろ!」

黒社員B「おう! 沸騰した熱湯をぶっかけてやるぜ!」

黒社員A「ウヒャヒャ、そりゃいいや!」



社畜C「あの二人は……!」

女「どうしたの?」

社畜C「いや……なんでもないよ。行こう!」クルッ

42: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:38:17.625 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C(まさか、あいつら……あんな過酷な扱いされてるなんて……)

社畜C(きっと俺が逃げ出したこととも無関係じゃないだろう)

社畜C(いやだけど、どうしようもないじゃないか!)

社畜C(俺にブラック企業と戦う力はないし、あいつらを助ける力もない!)

社畜C(それにこのままいけば、俺は女さんと結婚して、ホワイト企業の社長になれるんだぞ!?)

社畜C(悪いのはあくまでブラック企業なんだし、放っておけばいいんだよ!)

社畜C(だけど――……)

43: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:42:30.908 ID:Qb/YY3FO0.net
ホワイト企業――

白社長「彼は……どうしたんじゃ?」

白社長「あの出張以来、仕事こそこなすが、すっかり口数が少なくなってしまったが……」

女「それが……原因が分からないの」

女「いくら聞いても教えてくれないし……」

白社長「うーむ、もしやうつ病か?」

白社長「だったら休職を勧めてみるか……」

女「そうよ、お父さん、そうしてよ!」



白社員A「社長、大変です!!!」

44: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:46:16.157 ID:Qb/YY3FO0.net
白社長「なんじゃと!? 彼が退職届を残して、いなくなってしまった!?」

女「そんな……!」

白社員A「は、はい……」

白社員B「それに、我がホワイト企業に伝わる三種の神器も消えてしまいました!」

白社長「……そうか、そういうことか」

女「お父さん、何か心当たりがあるの?」

白社長「彼の正体は薄々感づいておった……彼はおそらく牧場で育てられた“社畜”じゃ」

女「社畜……!」

白社長「そして、出張の時、自分の同胞が傷つけられてるのを見て――」

45: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:49:41.552 ID:Qb/YY3FO0.net
ブラック企業――

黒社員A「さあ、今日こそ過労死させてやるぜ!」

黒社員B「てめえらは全国の牧場で育てられてる社畜どもの見せしめになるんだよ!」

黒社員B「仲間の逃亡を見逃したら、こうなるってなァ!」

黒社員A「覚悟しやがれ!」

社畜A「過労死か……へ、へへへ……」

黒社員A「何がおかしい!」

社畜A「これでやっとお前らみたいなクズどもとおさらばできると思うと、せいせいするぜ……」

社畜B「まったくだ……」

黒社員A「底辺のくせに、口が減らない奴らだ!」

黒社員B「よぉし、まずは爪の間に針を――」



ドゴォォォォォンッ!!!

46: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:52:39.757 ID:Qb/YY3FO0.net
モクモク…… モクモク……


黒社員A「な、なんだァ!?」

黒社員B「サイに乗った野郎が、襲撃をかけてきやがった!」


社畜C「さすが『労働基準砲』……すごい威力だ」

社畜C「『労サイ』! あの黒スーツの社員どもをハネ飛ばしてやれ!」

労サイ「ブモオオオオオオッ!!!」ドドドドドッ


黒社員AB「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」



ズガァンッ!!!

49: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:56:11.419 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「おーい、無事か!?」

社畜A「あっ、お前! どうしてここに!?」

社畜B「よかった……生きてたのか!」

社畜C「お前たち、あっちの方角に逃げろ! あっちにずっと走ればホワイト企業がある!」

社畜A「お前……せっかくホワイト企業に入れたのに、俺たちを助けに来たのかよ!」

社畜B「なにやってんだよ! ブラック企業に歯向かったら、過労死しちまうぞ!」

社畜C「なにしろ俺、社畜だから……」

社畜C「ホワイト企業でまったりするより、仲間のために死に物狂いで働く方が性に合ってるのさ!」

社畜A「バカヤロウが……!」

51: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 22:59:38.239 ID:Qb/YY3FO0.net
ザッザッザッ……!

黒重役「ブラック企業に歯向かうテロリストが! この私が成敗してくれる!」



社畜C「大軍がやってきたか……!」

社畜C「早く逃げろ! 俺にはこの鎧『労働組アーマー』があるから、そう簡単にくたばらない!」


社畜A「すまねえ……!」タタタッ

社畜B「ありがとう……! 死ぬなよ……!」タタタッ


社畜C「行くぞ、労サイ! ひと暴れしてやろうぜ!」

労サイ「ブモォォォォォッ!!!」

社畜C「労働基準砲を喰らえッ!」バシュッ

黒重役「ぐぎゃああああああっ!」ズガァァァァァン!!!

52: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:04:07.494 ID:Qb/YY3FO0.net
――

――――

ドゴォォォォォンッ! ズガァァァァァンッ! バゴォォォォォンッ!


社畜C「ハァ、ハァ、ハァ……」

労サイ「ブモォォォ……」


黒社長「ここまでだな」

黒社長「貴様のおかげで、我が社も大打撃をこうむってしまった」

黒社長「だが、しょせんは無駄な努力だ」

黒社長「我が社には、会社のためなら死ねるというソルジャーが腐るほどいるし――」

黒社長「私を倒せたとしても、すぐ誰かが次の社長になるだろう」

黒社長「仮に我が社が倒産したとしても、ブラック企業はガン細胞のように増殖する……」

黒社長「貴様の戦いは全くの無駄だったのだ」

社畜C「そんなこと最初から分かってるさ……」

社畜C「だけど……それでも俺は……お前たちに一矢報いたかったのさ……」

黒社長「愚かな……」

54: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:07:57.581 ID:Qb/YY3FO0.net
黒社長「全社員、構え!」

ザザザッ!


社畜C「ドナドナドーナー……ドーナー……」

社畜C「もしも翼があーったならば……楽しい牧場に帰れるものをー……」

労サイ「ブモォ~……!」

社畜C「この状況……翼でもなきゃ、逃げるのはムリだな……」

社畜C「労サイ……ありがとう……。もう働かなくていい……。座ろう……」


黒社長「ハチの巣にしてやれェッ!!!」





ガガガガガガッ……!

55: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:15:05.534 ID:Qb/YY3FO0.net
――

――――



ホワイト企業――

社畜A「日経新聞によると、俺らがいたブラック企業は倒産したそうだ」

社畜A「あいつの攻撃で、大打撃を受けたのが響いたらしい」

社畜A「俺らを育ててた牧場も、連鎖で倒産して、大勢の社畜が解放・救出されたらしい」

社畜B「あいつはやったんだ! 社畜みんながやりたかったことを、やってくれたんだ!」

社畜B「だけど、あいつは……!」

女「ううう……!」

白社長「……」

57: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:18:21.798 ID:Qb/YY3FO0.net
白社長「よし、わしは決めたぞ!」

白社長「今までわしは世に蔓延るブラック企業に対し、消極的であったが……」

白社長「これからは大々的にブラック企業のやり方を糾弾してやる!」

白社長「そして……一人でも多くの社畜を救うのじゃ!」

白社長「それが唯一わしにできる、彼への弔いじゃ……」

白社長「わしの決断が遅かったばかりに……惜しい男を亡くしてしまった……」

女「お父さん……」



「おーい!!!」

58: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:20:51.033 ID:Qb/YY3FO0.net
バッサバッサ……


社畜C「おーい!」



社畜A「あ、あれは!?」

社畜B「うおおおお! 間違いない! あいつだ!」

白社長「おお……翼が生えたサイに乗っておる!」

女「……生きてたのね! よかった……!」

59: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:24:38.666 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜A「あんだけの敵軍相手に、よく生きて戻ってこれたな!」

社畜B「どうしてサイに翼が生えたんだ?」

社畜C「実はな、この『労サイ』に“座ろう”って語りかけたら、なんと!」

社畜C「『労サイ』が『スワロー・サイ』に進化したんだよ!!!」

スワロー・サイ「ブモッ!」

社畜AB「な、なんだってー!!!」

白社長「三種の神器の一つ『労サイ』にそんな力が眠っていたとは……」

白社長「やはり、我が社の次期社長は君しかおらん! 退職届は破り捨てる!」ビリビリッ



社畜C(ドナドナの歌で、子牛は空を飛び交うツバメを見て、翼があれば……と羨ましがったが)

社畜C(どうやら俺は……翼を味方につけることができたようだ)

61: VIPがお送りします 2017/02/15(水) 23:28:22.838 ID:Qb/YY3FO0.net
社畜C「女さん……」

女「は、はいっ!」

社畜C「俺はこれからもホワイト企業のために働くし、ブラック企業とも戦い続ける」

社畜C「いつ過労死するかも分からない。それでもよかったら――」

社畜C「結婚してくれないか?」

女「……はいっ!」

女「だけど安心して。私は妻として、絶対あなたを過労死なんかさせないわ!」





― 終 ―

オリジナルSS 特集ページへ ▶

このページのトップヘ