男「俺vsコンビニ店員」
1: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 19:54:25 ID:/D3nAqe2
休日、昼下がりのコンビニ――
客は俺の他には主婦と老人がいるのみ。
男(水とアイスクリームと牛丼と……あとブレスケアも買っておくかな)
男「お願いします」ゴトッ
店員「ありがとうございます!」
客は俺の他には主婦と老人がいるのみ。
男(水とアイスクリームと牛丼と……あとブレスケアも買っておくかな)
男「お願いします」ゴトッ
店員「ありがとうございます!」
2: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 19:56:39 ID:/D3nAqe2
店員「ポイントカードはお持ちですか?」
男「持っているさ……」
男「大量になァ!」バッ
俺は財布からカードを十数枚取り出すと、それらを勢いよく投げつけた。
シュババババッ!
店員の体に鋭く研がれたカードが突き刺さる。
グササササッ!
店員「ぐおおっ……!」
店員(なんて威力ッ! カードだけに、ガード不可……ッ!)
男「持っているさ……」
男「大量になァ!」バッ
俺は財布からカードを十数枚取り出すと、それらを勢いよく投げつけた。
シュババババッ!
店員の体に鋭く研がれたカードが突き刺さる。
グササササッ!
店員「ぐおおっ……!」
店員(なんて威力ッ! カードだけに、ガード不可……ッ!)
3: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 19:58:54 ID:/D3nAqe2
店員「やるな……」ニヤ…
店員「しかも……こんだけカードがあって、ウチのポイントカードが一枚もねえでやんの」
店員「ひでえ話だぜ……」
男「このコンビニのカードは作ってなかったからな……」ニヤ…
店員「しかも……こんだけカードがあって、ウチのポイントカードが一枚もねえでやんの」
店員「ひでえ話だぜ……」
男「このコンビニのカードは作ってなかったからな……」ニヤ…
4: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:01:49 ID:/D3nAqe2
店員「さてと……オレのターンだ……」
男「来るがいい」
店員「こちら温めますか?」
店員が手に取ったのは、なんと牛丼ではなくアイスクリーム。
男(こ、こいつ……ッ!)
男(なんて露骨な挑発行為ッ!)
男(国境スレスレで核実験を行うが如き蛮行ッ!)
男「来るがいい」
店員「こちら温めますか?」
店員が手に取ったのは、なんと牛丼ではなくアイスクリーム。
男(こ、こいつ……ッ!)
男(なんて露骨な挑発行為ッ!)
男(国境スレスレで核実験を行うが如き蛮行ッ!)
5: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:04:50 ID:/D3nAqe2
男(だが……ッ! いいだろう、乗ってやる!)
男「お願いします」
店員「かしこまりました」
店員「レンジで――珍ッ!」チンッ
男「お願いします」
店員「かしこまりました」
店員「レンジで――珍ッ!」チンッ
6: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:07:45 ID:/D3nAqe2
男「うわぁぁぁ、なんだこりゃあ……!」
男「ドロッドロに溶けてやがる……ッ!」
残虐非道のマイクロ波によって、無残な姿になったアイス。
狼狽する俺を見て、店員が下劣な笑いを浮かべる。
店員「ヒャハハハハハハハハハハァ!」
店員「アイスってのはなァ、温めると溶けるんだよォォォ! 勉強になったろォ!?」
男(こ、こいつの頭脳……東大級ッ!)
男「ドロッドロに溶けてやがる……ッ!」
残虐非道のマイクロ波によって、無残な姿になったアイス。
狼狽する俺を見て、店員が下劣な笑いを浮かべる。
店員「ヒャハハハハハハハハハハァ!」
店員「アイスってのはなァ、温めると溶けるんだよォォォ! 勉強になったろォ!?」
男(こ、こいつの頭脳……東大級ッ!)
7: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:11:30 ID:/D3nAqe2
男「――ん?」ペロッ
男「いや、案外うめえぞ、これ」
男「熱により温まったアイスが、ヒートでホットな旨みを生み出してやがるッ!」
男「たとえるなら……溶けたアイスの中にいた恐竜ッ!」
店員「な、なんだとォォォォォ!?」
店員「レジ打ちはしょっちゅうミスるが、こんなミスは初めてだぜ……!」
店員「どれ、オレも食ってみるか……!」
男「いや、案外うめえぞ、これ」
男「熱により温まったアイスが、ヒートでホットな旨みを生み出してやがるッ!」
男「たとえるなら……溶けたアイスの中にいた恐竜ッ!」
店員「な、なんだとォォォォォ!?」
店員「レジ打ちはしょっちゅうミスるが、こんなミスは初めてだぜ……!」
店員「どれ、オレも食ってみるか……!」
8: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:14:14 ID:/D3nAqe2
店員「うめぇぇぇ!」
男「な? 結構イケるだろ?」
店長(フッ……あいつめ、店の商品を勝手に食いおって……)
店長(ま、今回だけは特別に許してやるがな……)
男「な? 結構イケるだろ?」
店長(フッ……あいつめ、店の商品を勝手に食いおって……)
店長(ま、今回だけは特別に許してやるがな……)
10: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:17:51 ID:/D3nAqe2
店員「戦闘再開だ……次は水を温めてやるッ!」
男「フッ……」
男「水を温めたところで、お湯になるだけッ! 大したダメージにはならねぇぜ!」
店員「残念だったな……」
店員「さらに温めると水蒸気になるッ! 理科の授業で習わなかったかい……?」
男「バ、バカな……ッ!」
温められた水は、哀れ気体となってしまった。
男「フッ……」
男「水を温めたところで、お湯になるだけッ! 大したダメージにはならねぇぜ!」
店員「残念だったな……」
店員「さらに温めると水蒸気になるッ! 理科の授業で習わなかったかい……?」
男「バ、バカな……ッ!」
温められた水は、哀れ気体となってしまった。
11: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:21:12 ID:/D3nAqe2
店員「そしてェェェェェ!」
店員「水蒸気は雲となり、雨となって大地へと還るッ!」
店員「しかも昨今の環境汚染の影響で、pH2未満の酸性雨が降り注ぐッ!」
ドザァァァァァ……!
男「ぐあああああっ……!」ジュワァァァ…
強酸の雨が、俺の肉体に大ダメージを与える。
主婦「傘を持ってきておいてよかったわ」バサッ
店員「水蒸気は雲となり、雨となって大地へと還るッ!」
店員「しかも昨今の環境汚染の影響で、pH2未満の酸性雨が降り注ぐッ!」
ドザァァァァァ……!
男「ぐあああああっ……!」ジュワァァァ…
強酸の雨が、俺の肉体に大ダメージを与える。
主婦「傘を持ってきておいてよかったわ」バサッ
12: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:24:52 ID:/D3nAqe2
男「やるじゃねぇか……」
男「だったら、俺は“追加注文”をさせてもらうッ!」
店員「どうぞ」
男「おでんください」
店員「おでんッ!?」
男「そう、O・DE・Nッ! Organized DEath Navigation!」
店員「おのれ……ッ! だが、いいだろう! 望み通りおでんをくれてやるッ!」
男「だったら、俺は“追加注文”をさせてもらうッ!」
店員「どうぞ」
男「おでんください」
店員「おでんッ!?」
男「そう、O・DE・Nッ! Organized DEath Navigation!」
店員「おのれ……ッ! だが、いいだろう! 望み通りおでんをくれてやるッ!」
13: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:27:31 ID:/D3nAqe2
店員「おでんとは、漢字と書くと“御電”!」
男「なにッ!」
店員「すなわち、電気の敬称ッ!」
男「なにィッ!」
店員「ゆえに、1000万ボルトの電気を喰らえッ!!!」
バチバチバチバチバチッ!
強烈な電撃が俺を襲う。完全に計算外であった。
男「ぐおああぁぁぁぁぁ……ッ!」バリバリバリッ
店員「オレの辞書に“節電”の文字はない」
男「なにッ!」
店員「すなわち、電気の敬称ッ!」
男「なにィッ!」
店員「ゆえに、1000万ボルトの電気を喰らえッ!!!」
バチバチバチバチバチッ!
強烈な電撃が俺を襲う。完全に計算外であった。
男「ぐおああぁぁぁぁぁ……ッ!」バリバリバリッ
店員「オレの辞書に“節電”の文字はない」
14: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:31:38 ID:/D3nAqe2
店員「そろそろトドメを刺してやろう」
男「ぐっ……!」
店員「…………」スッ…
ビニール袋を取り出そうとする店員。
しかし、すかさず俺は――
男「あ、袋いりません」
店員(なっ……!? ビニールキャンセルッ!?)
略して、ビニキャン!!!
老人「ほう、まだ若いのにあの技を使えるとは……」
男「ぐっ……!」
店員「…………」スッ…
ビニール袋を取り出そうとする店員。
しかし、すかさず俺は――
男「あ、袋いりません」
店員(なっ……!? ビニールキャンセルッ!?)
略して、ビニキャン!!!
老人「ほう、まだ若いのにあの技を使えるとは……」
15: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:35:40 ID:/D3nAqe2
男「どうする? その使い道がなくなっちまったビニール袋をよ……へへへ……」
店員「だったらよォ……」
店員「てめえに被せてやらぁっ!」バサッ
男「うぷっ!」
俺の頭にビニール袋が被せられた。
店員「さぁさぁさぁ! 窒息しちまいなァ!」
男(息が……できない……ッ!)
店員「だったらよォ……」
店員「てめえに被せてやらぁっ!」バサッ
男「うぷっ!」
俺の頭にビニール袋が被せられた。
店員「さぁさぁさぁ! 窒息しちまいなァ!」
男(息が……できない……ッ!)
16: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:38:03 ID:/D3nAqe2
店員「もがけ、あがけ、苦しめぇ!」
店員「気分は……宇宙空間に放り出された宇宙飛行士ってとこかァ?」
店員「NASAの人間なら耐えられるだろうが、ただの人間であるアンタにゃ耐えられまいッ!」
店員「ヒャハハハハハハハハハハァ!」
男(く、苦しい……!)
男(息ができない……! 呼吸ができない……ッ!)
男(呼吸……そうかッ!)
俺は起死回生の名案を編み出した。
店員「気分は……宇宙空間に放り出された宇宙飛行士ってとこかァ?」
店員「NASAの人間なら耐えられるだろうが、ただの人間であるアンタにゃ耐えられまいッ!」
店員「ヒャハハハハハハハハハハァ!」
男(く、苦しい……!)
男(息ができない……! 呼吸ができない……ッ!)
男(呼吸……そうかッ!)
俺は起死回生の名案を編み出した。
17: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:42:47 ID:/D3nAqe2
男「ブレスケアッ!」
男「俺の呼吸(ブレス)をケアしろォォォォォ!」
ブレスケア「了解(ラジャー)!」ビュオッ
店員「し、しまった……ッ! こいつにはブレスケアがあるのを忘れてた……ッ!」
ブレスケアがビニール袋を破ってくれたおかげで、俺はどうにか九死に一生を得た。
つまり、相手の切り札を破ったことになる。
男「俺の呼吸(ブレス)をケアしろォォォォォ!」
ブレスケア「了解(ラジャー)!」ビュオッ
店員「し、しまった……ッ! こいつにはブレスケアがあるのを忘れてた……ッ!」
ブレスケアがビニール袋を破ってくれたおかげで、俺はどうにか九死に一生を得た。
つまり、相手の切り札を破ったことになる。
18: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:45:37 ID:/D3nAqe2
男「空気がこんなにおいしいものだとはな……」スゥゥ…
男「“窒息は最高の調味料”とはよくいったもんだ」
男「さぁ、もうお前に打つ手はないはずだ!」
店員「ぐっ……!」
男「いくぞ……」ジリ…
店員(なにがくる……なにがくるッ!?)
男「“窒息は最高の調味料”とはよくいったもんだ」
男「さぁ、もうお前に打つ手はないはずだ!」
店員「ぐっ……!」
男「いくぞ……」ジリ…
店員(なにがくる……なにがくるッ!?)
19: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:48:47 ID:/D3nAqe2
男「福沢諭吉、召喚ッ!」
俺はゆっくりと一万円札を取り出した。
福沢諭吉「天は人の上に人を造らず……しかし金は人の上に人を造るッ!」
店員「ぐぅおおおあぁぁぁぁぁっ!!!」
店員「一万円、入りまっすゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
俺はゆっくりと一万円札を取り出した。
福沢諭吉「天は人の上に人を造らず……しかし金は人の上に人を造るッ!」
店員「ぐぅおおおあぁぁぁぁぁっ!!!」
店員「一万円、入りまっすゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
20: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:52:10 ID:/D3nAqe2
あわてて計算を開始する店員。
店員「えぇと……釣銭はいったいいくらになるんだ……!?」
店員「3000……4000……5000……。ろ、6000……!?」
店員「な、7000……はっ、8000……!? バカな、まだ上昇する!」
ボンッ!
あまりに巨大な数字に対応できず、レジのコンピュータが爆発した。
店長(いかんッ! まだ未熟なあやつでは万札には対応できんッ!)
店員「えぇと……釣銭はいったいいくらになるんだ……!?」
店員「3000……4000……5000……。ろ、6000……!?」
店員「な、7000……はっ、8000……!? バカな、まだ上昇する!」
ボンッ!
あまりに巨大な数字に対応できず、レジのコンピュータが爆発した。
店長(いかんッ! まだ未熟なあやつでは万札には対応できんッ!)
21: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:54:22 ID:/D3nAqe2
男「――勘違いするな」
店員「え?」
男「釣りはいらねぇ……とっときな」スッ…
俺は万札を店員の胸ポケットに入れた。
店員「え?」
男「釣りはいらねぇ……とっときな」スッ…
俺は万札を店員の胸ポケットに入れた。
23: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 20:57:52 ID:/D3nAqe2
店員「な、なぜだ……! なぜ情けをかけた!?」
男「情けをかけたんじゃあない……」
男「俺はアンタがよりすごい店員になることに賭けたのさ!」ビシッ
男「その万札はチップだ……もらっといてくれや」
店員「ぐ、ぐぐぐ……ぐぐぐっ……!」
男「情けをかけたんじゃあない……」
男「俺はアンタがよりすごい店員になることに賭けたのさ!」ビシッ
男「その万札はチップだ……もらっといてくれや」
店員「ぐ、ぐぐぐ……ぐぐぐっ……!」
24: 深夜にお送りします 2016/02/07(日) 21:01:45 ID:/D3nAqe2
店員「ありがとうございましたァァァァァ!!!」
店員「またお越し下さいませェェェェェ!!!」
男「フッ……また買い物しにくるよ」
号泣する店員を背にして、俺は自動ドアから店を出た。
しかし、俺は当分このコンビニで買い物はできないだろう。
なぜなら――さっき渡した一万円札は俺の全財産だったのだから……。
< 完 >
店員「またお越し下さいませェェェェェ!!!」
男「フッ……また買い物しにくるよ」
号泣する店員を背にして、俺は自動ドアから店を出た。
しかし、俺は当分このコンビニで買い物はできないだろう。
なぜなら――さっき渡した一万円札は俺の全財産だったのだから……。
< 完 >