#03 「にゃんにゃん島」#04 「吉祥寺」:神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
#03 「にゃんにゃん島」
小さな島の社で喫茶店を開く猫神、最高位の神階を持つ猫神が何故こんな所に・・・
#04 「吉祥寺」
代理神として赴任した神社へ神宮で神様とダメ巫女コンビを組むA子が手伝に・・・
328: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:52:05 ID:evd5TeSM
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
ボー
ザバーン ザバーン
神使「いや~ 私フェリーって初めて乗りました」
神様「・・・・・・」バリボリ
神使「風が気持ち良いですね」
神様「・・・・・・」バリボリ
神使「神様? そのえびせんはウミネコの餌用に買った物なんですが・・・」
神様「神使さんよ~ どこ向かってんだよ」
神使「あと15分くらいで島の港に着くと思います」
神様「あん? 島?」
神使「次の立ち寄り先はにゃんにゃん島です」
神様「ねぇ、立ち寄り先って誰がチョイスしてんの? 私そいつシメてくるわ」バリボリ
329: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:53:12 ID:evd5TeSM
~あらすじ~
神様「私は神様! みんな大好きとってもかわゆい理想の女神!」
神使(訳)「神宮が誇る最大の問題児! 減給・左遷を総なめにする絵に描いたようなダメ神です」
神様「悪の手先からの激しい嫌がらせにも負けず、今日も私を待つ者へ神の力を授ける旅をする」
神使(訳)「悪知恵ばかり働く神様に業を煮やした神宮は、無期の長期出向を命じたのでした」
神様「そう、私は強大な神力を持つ心優しき立派な神様だ!」
神使(訳)「神力は使えませんが、心は優しく尊敬できる立派な神様なのです」
330: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:54:33 ID:evd5TeSM
#3
神使「神様、タラップと桟橋の間に段差がありますから気をつけて下さい」
神様「分かっとるわ! 痛てっ」ガクッ
神使「全然分かってないじゃないですか・・・」
神様「お~ 向こうに凄い綺麗な海岸があるな」
神使「真っ白な砂浜で綺麗ですね」
神様「沖縄の海水浴場みたいだ」
神使「神様って沖縄に行ったことあるんですか?」
神様「ない」
神使「・・・そうですか」
神様「イメージだよ、イメージ。 そんな感じだろ?」
331: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:55:50 ID:evd5TeSM
ニャー
神様「?」
ニャー ニャー
神使「猫ですね」
ニャー ニャー
ニャー ニャー
神様「・・・ねぇ、ちょっと多すぎない?」
神使「にゃんにゃん島ですから」
ニャー ゴロゴロ
神様「ワンワンッ!」
シャーッ!
神使「何やってるんですか神様・・・ 行きますよ?」
332: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:57:00 ID:evd5TeSM
テクテク
神様「しかし、あちこちに猫がいるな」
神使「人懐っこくて可愛いですよね」
神様「犬っころでも猫は可愛いと思うのか?」
神使「まぁ・・・」
神様「で、目的地は?」
神使「この山の頂上にある<もふもふ神社>です」
神様「ふ~ん、初めて聞く神社だな」
神使「10年前から神が配属になったようです」
神様「最近じゃん。こんな所に配属なんて何やらかしたんだ?」
神使「転勤希望だそうです」
神様「希望してこんな僻地にくるなんて物好きもいるもんだな。 ん?」
333: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:58:03 ID:evd5TeSM
神使「どうされました?」
神様「いやさぁ、不在神社の管理が私達の仕事じゃないの?」
神使「もふもふ神社には神職と巫女がいません」
神様「神だけいるの?」
神使「そのようです」
神様「ふ~ん」
神使「あっ、見えましたよ」
神様「小さい神社だな」
334: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/28(月) 01:59:04 ID:evd5TeSM
神様・神使「・・・・・・」
神様「ねぇ、神使君?」
神使「なんでしょうか」
神様「なんで神社の敷地内に喫茶店があるの?」
神使「<喫茶ねこまた>って書いてありますね。 あっ、その下に小さく社務所とも書いてあります」
神様「社務所と喫茶店が同じって変じゃね?」
神使「中に女性の方がいますね」
神様「神職とか巫女さんは居ないんだよな?」
神使「資料ではそうなっています。 取りあえず入りましょうか」
338: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:01:09 ID:9d9TqEHE
カランコロン
店員「いらっしゃいませ~」
神使「お邪魔します」
神様「・・・・・・」
店員「お二人ですか? そちらのテーブルへどうぞ~」
神使「ありがとうございます」
店員「は~い、こちらメニューになりま~す」
339: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:03:00 ID:9d9TqEHE
神様「・・・おい」
店員「?」
神様「お前、こんな所で何やってんの?」
店員「ん? あっ! 神ちゃんじゃ~ん!」
神使「神様、お知り合いですか?」
神様「うん、猫」
神使「すいません、雑すぎて全く分からないのですが・・・」
店員「猫神と申しま~す」
神使「猫神様・・・?」
神様「お前って確か、でかでか大神宮の主神だったよな?」
猫神「10年前までね~」
神使「でかでか大神宮の猫神様!? もしかして神の中でも最大級の神力を持つ・・・」
猫神「ふふっ、大げさよ~」
340: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:04:02 ID:9d9TqEHE
神使「初めまして、私神様の使いで狛犬の神使と申します」
猫神「神ちゃんの神使さんなんだぁ~ 初めまして」ニコッ
神使「お目にかかれて光栄です」
猫神「そんな堅くならないで~ 仲良くしましょうね」
神使「恐縮です」
猫神「私も昔は神ちゃんの神使だったのよ~?」
神使「えっ? そうなんですか?」
猫神「平安時代だけどねぇ~」
神使「平安時代!?」
341: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:05:10 ID:9d9TqEHE
神様「申し訳ございませんが、昔話はご遠慮頂けますでしょうか」
猫神「ふふっ、ごめんねぇ~」
神様「なんでお前が喫茶店なんかやってんだよ」
猫神「だって~ 神社だけじゃ生活できないんだも~ん」
神様「境内で関係者が営利事業をするのは禁止!」
猫神「でも土地を寝かせておくのも勿体ないし~」
神様「だーめ!」
神使「なんで神様そんなに厳しいんですか・・・」
神様「自分に優しく、他人にはめっちゃ厳しく! それが私流」
342: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:07:05 ID:9d9TqEHE
猫神「でも、神宮から許可出してもらったも~ん」ペラッ
神使「拝見します。 たしかに神宮の正式な許可証ですね」
神様「誰だよ、そんな許可出したヤツは! 他に示しがつかないだろ!」バンバン
神使「神宮 広域特務課 審査係 神様、とあります」
神様「・・・今の時代は神社運営だけでは厳しいからな。 良い判断だ」ウン
猫神「さっすが神ちゃ~ん、分かる神は違うわ~」
神様「そうだろ? そこら辺の堅物と一緒にするなよ? 私は先見の明を持っているんだ」
神使「・・・・・・」
猫神「で、ご注文は~?」
神様「コーラ、おすすめデザートセットで」
神使「私は、えっと・・・ ブレンドをお願いいたします」
猫神「は~い、少々お待ち下さ~い」
343: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:08:25 ID:9d9TqEHE
神様「で? なんでお前はこんなへんぴな島にいるんだ?」
神使「確か、転勤希望と伺っていますが」
猫神「そう、疲れちゃってさ~」
神様「!?」
神使「疲れたと申しますと?」
猫神「ほら、あそこって神宮に次ぐ大きな神社じゃな~い?」
神使「そのようですね」
猫神「他に周辺500個の社の管理もあってね~」
神使「500!?」
猫神「そうなの~ まぁ他にも色々と大変でさ~」
神使「ご苦労様です」
猫神「いやいや、逃げて来ちゃったし~」テヘッ
神様「・・・・・・」
344: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/29(火) 01:10:11 ID:9d9TqEHE
猫神「は~い、お待たせいたしました~」コトッ
神使「ありがとうございます」
神様「ちょ、このケーキめっちゃウマそうじゃん!」
猫神「ふふふ、分かる~ 自信作なの」
神様「お前が作ってんの?」
猫神「腕に自信ありです。 さぁ召し上がれ~」
神様「んじゃ、いただきま~す」パクッ
猫神「どぉ~?」
神様「やばい! うまいっ!」パクパク
神使「神様、一口頂けますか?」
神様「ふざけんなよ」パクパク
神使「・・・すいません、私もケーキを追加でお願いできますでしょうか」
猫神「ありがとぉ~ 今もってくるね」
346: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:28:55 ID:BVEeudSE
カランコロン
猫娘「すいません店長! 遅くなりました」
猫神「あっ、猫娘ちゃんおはよ~ お客様にこのケーキ持って行って~」
猫娘「お客様?」
神様・神使「・・・・・・」
猫娘「いらっしゃいませ・・・ じゃない。 いらっしゃいませニャ!」
神様「あっ、うん。 えっと・・・ 神使君?」
神使「はい」
神様「どうしよう。 人の姿になった猫が喋ってる」
神使「そうですね」
猫娘「正体がバレてる! ニャ」
猫神「あぁ~ 神宮から来た神様と神使さんよ。 気にしないで~」
347: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:30:35 ID:BVEeudSE
猫娘「初めまして、バイトの猫娘です。 違う、バイトの猫娘ですニャ!」
神様「なんで言い直したの?」
猫娘「お客さんの前では語尾に“ニャ”を付けろと店長から言われてまして・・・ ニャ」
神様「猫神ちゃんさぁ」
猫神「なぁに~」
神様「露骨すぎだろ」
猫神「え~ だってにゃんにゃん島の喫茶店だもん。 その位の露骨さは必要だよ~」
神使「もしかして、神使として籍に入れるというのはこちらの猫娘さんですか?」
猫神「そうそう」
神様「神使だぁ?」
348: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:32:16 ID:BVEeudSE
神使「はい、神使登録の調査依頼が出ております」
神様「へぇー、数日中に神宮から使いの者がくると思うんでそれまで大人しくしていて下さい」
神使「神様・・・ その使いの者が私達なんですが・・・」
神様「はぁ~っ? お前さぁ、なんだよこれ。 どうすんだよこんなの」
猫娘「こんなのだなんて・・・ こんニャにょだニャんて・・・」
神様「だから一々言い直してんじゃねぇよ! しかも噛んでるし」
神使「神使適正を調べて猫娘さんを神使として相応しいか審査して下さい」
神様「審査? 私がすんの?」
神使「はい」
349: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:34:00 ID:BVEeudSE
神様「お前がやれよ猫神! 自分の神使にすんだろ?」
猫神「いや~、私じゃ無理なんだよね~」
神使「主神が自分の神使を登録するには一定の規模の社を持っていることが必要なんです」
神様「はぁ? なんだそれ?」
神使「10年前の神法改正で追加された条項です」
神様「なんでそんな変な規則が追加されてんだよ!」
神使「私にそう言われましても・・・」
猫神「そう言うことなんだな~ この社の規模の主神じゃ何も出来ないの~」
神様「・・・面倒くさい時代だなぁ」
猫神「まぁね~ でも規則には従わないと~」
神様「・・・規則ねぇ~」
350: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:35:47 ID:BVEeudSE
神使「そういう訳ですので神様、審査をよろしくお願いいたします」
神様「審査って言われても何すんだよ。 知らないぞ私はそんなこと」
神使「神様って審査係ですよね? 専門ですよね?」
神様「ぅっ」ギクッ
神使「神使登録審査は筆記と実技です。 この教本通りに―――」
神様「猫娘は神使になりたい?」
猫娘「猫神様のお役に立てるなら! 立てるニャら!」
神様「・・・猫神は、これが神使で良いの?」
猫神「うん、必要~」
神様「んじゃ、採用。 神使よ審査は合格したから登録を」
351: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:37:36 ID:BVEeudSE
神使「えっ? そんな簡単に神使登録など・・・」
神様「こいつが必要だって言ってんだから必要なんだよ。 最低位だったら登録簡単だろ? さっさと登録!」
神使「しかし・・・」
神様「もう人型になってんだから神使にしておいた方が良いだろ」
神使「はぁ・・・ あんなに神使試験大変だったのに、私の立場は・・・」
神様「良いんだよ! 私は私、余所は余所!」
猫神「いや~ すまないねぇ~ 正直試験対策してなかったからどうしようかと思ってたんだ~」
神様「じゃ、そういうことでお前こいつの神使な」
猫娘「ニャニャ! また猫神様の神使でも良いんですか?ニャ」パァッ
神様「?」
神使「登録手続きは後日いたしますが、これからは猫神様の神使・猫娘と名乗って下さい」
猫娘「やったー!! 違う、やったニャー!」
352: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:40:00 ID:BVEeudSE
神使「・・・その代わり!」
猫娘・神様「」ビクッ
神使「神に仕える神使として、最低限の作法は私がみっちりとたたき込ませて頂きます」
猫神「それは助かる~ 是非ともお願いします神使君」
神使「お任せ下さい。 これでも神使の階位は最高位です」
神様「猫娘よ、死ぬ気で耐えるんだ。 私に言えることはそれだけだ・・・」
猫娘「ニャ! よろしくお願いします、神使先生!」
神様「んじゃ、授業料として宿の提供と私のケーキ食べ放題をお願いするぞ猫神」
猫神「おっけ~ そのくらいは持つよ。 2階が住居スペースだから空いてる部屋使ってね~」
353: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 00:41:12 ID:BVEeudSE
神使「ケーキ食べ放題はいらないんじゃないですか?」
神様「うっせんだよ腐れ犬ころ! 毎日ケーキ食べたら破産するわ!」ゲシッ
神使「毎日食べるんですか? すいません猫神様」
猫神「いやいや、この位は安いもんだよ」
神様「じゃぁ早速だけど、ケーキお代わり」
猫神「もう食べちゃったの~?」
神様「神様なもので///」ゲシッ
神使「痛! なんで最近その言葉の後に必ず私を蹴るんですか?」
356: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:35:47 ID:BVEeudSE
神様「それより、店は儲かってんの? 客一人もいねぇじゃん」
猫神「平日だし~ 明日は土曜日だから忙しいよ~」
神様「ふ~ん」
猫神「お手伝いよろしくね~」
神様「はい!? 何言っちゃってんの? 明日は海行くんだよ! 海!」
神使「海はまだ寒くて泳げませんよ?」
神様「だれが泳ぐなんて言ったよ。 砂浜で寝るんですぅ」ベェー
357: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:37:44 ID:BVEeudSE
猫神「え~ バイト代出すわよ~ 時給1500円でどう?」
神様「よろしくお願いいたします猫神店長」
猫神「神使さんも手伝ってもらえると嬉しいなぁ~」
神使「もちろんお手伝いさせて頂きます」
猫神「やった~」
猫娘「明日は外にテラスも出せますね。 ニャ」
神様「猫娘ちゃんさぁ、語尾に“ニャ”を付けるなら徹底した方が良いよ?」
358: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:39:15 ID:BVEeudSE
猫神「あ~、でも神ちゃん達の服がないや・・・ どうしよう」
神様「心配無用。 神使よ、私の正装を用意しておけ」
神使「正装って巫女装束ですか?」
神様「神社の喫茶店だ。 巫女さんの格好をした店員がいた方が面白い」
猫神「なるほど~ さっすが神ちゃん! それ採用~」
神様「私は常に最高のアイディーア~を持ち合わせている。 褒めよ」
神使「猫神様は御装束はお持ちですか?」
猫神「う~ん、昔のならあるかな~」
猫娘「私の服はありますか店長? ニャ」
猫神「古くてもよければ私の装束貸してあげるよ~」
神様「んじゃ、明日は神社らしく装束着て正装で接客だ」
359: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:41:15 ID:BVEeudSE
――― 夜・厨房
神様「まだ仕込みか?」
猫神「う~ん、もう少しかな~」
神様「急に神使を付けるだなんてどうしたんだ?」
猫神「・・・・・・」
神様「後継者か」
猫神「ふふっ、そろそろ準備しておかないとね~」
神様「平安時代からだもんな。 疲れただろ」
猫神「少しね~ でもまだまだ大丈夫だよ?」
360: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:42:39 ID:BVEeudSE
神様「・・・・・・」
猫神「どうしたの?」
神様「10年前の大改革で苦労したようだな」
猫神「う~ん、でも仕方ないよ。 時代の流れだもん」
神様「すまない。 やはり私がもっと反抗しておくべきだった」
猫神「大丈夫だって、神ちゃんが責任を感じることなんてないんだから~」
神様「でかでか大神宮は相当大変だったか?」
猫神「そうね~ 神法改正で参拝者の声を直接聞けなくなったのは寂しかったかな~」
神様「そうか・・・」
361: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:44:53 ID:BVEeudSE
猫神「大きい神社だからね~ 仕方ないよ。 私のワガママで迷惑かけられないし~」
神様「お前は人が好きだもんな」
猫神「うん、大好き。 だって命の恩人だもの」
神様「苦労をかけた」
猫神「神ちゃんも私と同じね」
神様「?」
猫神「神ちゃんが地方神社回りだなんて~」
神様「私も人の願いを直接聞くことが出来ないなんて、そんなのは無理だ」
猫神「相変わらず素性は隠してるの~?」
神様「まぁな、この方が自由で気が楽だ。 誰もこんなのが最高神だなんて思わないしな」
猫神「神ちゃんらしいな~」
362: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:46:07 ID:BVEeudSE
神様「でも、お前はなんでココなんだ?」
猫神「今の私にはこの位がちょうど良いかなぁって。 猫もいっぱいいるし~」
神様「そうか」
猫神「ごめんね~ 神ちゃんからこんなに強い神力もらったのに」
神様「そんなことお前が気にする必要は無い。 勝手に神力を渡したのは私だ」
猫神「でも、これだけの神力があるのにこんな小さな神社に引きこもって・・・」
神様「お前が平安からどれだけの人の願いを叶えてきたかくらい知っている。 十分だ」
猫神「そう言ってもらえるだけでも嬉しいな~」
神様「後はお前の好きなように生きてくれ」
猫神「ありがと~ 神ちゃん」
363: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:47:28 ID:BVEeudSE
――― 寝室
ガチャ
神様「ふぁ~ 寝み~」トテトテ
神使「あっ、神様どこ行ってたんですか?」
神様「ん?」
神使「ずいぶんと長かったですね」
神様「うんこ」
神使「・・・女性の方があまりそのような単語を口にしない方が良いと思いますが」
神様「へいへい、すんませんね~」
神使「あの神様?」
神様「分かってるって、下品なんだろ?」
364: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:49:32 ID:BVEeudSE
神使「いえ、そうではなくて・・・ 猫神様なんですが」
神様「猫神?」
神使「私ごときがお聞きするのは失礼かとは思うのですが・・・」
神様「・・・あいつは平安時代に私が神使に向かえ、そして神にした」
神使「・・・・・・」
神様「あいつは野良猫だったとき、食べ物がなくて餓死しそうだった所を一人の人間に救われたそうだ」
神使「そうなんですか・・・」
神様「人に恩返しがしたい、その一心で神使になってそして私が神力を与え神にした」
神様「神になったあいつは人の願いを聞いて叶えることが生きがいだった。 本当に嬉しそうだったな」
神使「立派な方ですね」
365: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:50:57 ID:BVEeudSE
神様「でも10年前の神法改正で、神が人の願いを直接聞くことが出来なくなった」
神使「それで、でかでか大神宮を出てここに・・・」
神様「神職が不在の神社は特例で神が参拝者の願いを直接聞く裁量が与えられるからな」
神様「あいつは本当に人が大好きなんだ。 だから相当つらかったと思う」
神使「・・・・・・」
神様「平安時代から長いこと神として願いを叶えてきてくれたんだ。 少し休ませてやりたいな」
神使「そうですね」
神様「今度は私があいつの願いを叶えてやる番だ」
神使「お手伝いさせて頂きます」
神様「・・・・・・腐れ神使のくせに。 一生腐ってろ。 寝る」ヌギヌギ
366: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/30(水) 23:52:24 ID:BVEeudSE
神使「あっ、神様の巫女袴がシワシワだったので布団の下に敷いてあります」
神様「は? アイロン掛けくらいしろよ。 なんでそんな原始的なしわ伸ばしなんだよ」
神使「アイロン壊れてしまいまして・・・」
神様「私が史上最悪に寝相が悪いことくらい知ってるだろ? もっとグチャグチャになるぞ?」
神使「では、私の布団の下でも良いですか?」
神様「いいよ」
神使「では、寝る場所を交換しましょう」
神様「ん」モソモソ
神使「それと神様?」
神様「なんだ?」
神使「下着の上に何か着てから寝て下さい」
神様「はい」
368: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:11:14 ID:DlNnkoJw
――― 翌日
神様「・・・・・・」
神使「猫神様、立派な御装束ですね」
猫神「そぉ~? なんか動きづらくてあんまり好きじゃないんだけどね~」
猫娘「とっても綺麗です! ニャ」
猫神「ふふっ、猫娘ちゃんも似合ってるわよ~?」
猫娘「そうかニャ」
神使「はい、とってもお似合いです。 神用の中でも最高位の御装束ですよ?」
369: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:13:21 ID:DlNnkoJw
神様「・・・・・・」ムスッ
神使「神様? どうされました?」
神様「おかしくね?」
神使「?」
神様「いや、なんで私の格好が一番しょぼいの?」
神使「それは神様の着ているものは普通の巫女装束ですので・・・」
猫娘「でも、とっても着慣れてる感じがして一番しっくりきてると思う。 ニャ」
神様「だから無理してニャをつけんじゃねぇよ! 徹底しろ! 徹底!」
神使「神様らしい格好で良いと思いますが・・・」
神様「褒められたのかなぁ? でも、私も綺麗なおべべが着たい!」
神使「神様はそれしか装束がございませんので・・・」
370: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:15:17 ID:DlNnkoJw
神様「犬ころ、お前その上の狩衣脱げ」
神使「え?」
神様「私と同じ白衣と袴だけにしろ」
神使「正装でと言ったのは神様ですよ?」
神様「私が惨めなんだよ! バランス取れよ!」
神使「はぁ・・・ まぁ狩衣は脱いだ方が動きやすいですし」ヌギヌギ
猫神「私達も、上は脱ごうかねぇ~」
猫娘「はいニャ。 ちょっとゴワゴワして接客が難しいニャ」
371: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:16:31 ID:DlNnkoJw
神様「それより、本当に客なんか来るのか?」
猫神「あと30分で港にフェリーが来るからお昼にはお客さんがいっぱい来るよ~」
神様「こんな島に何しに来るんだよ」
猫神「それは猫を見にだよ~」
神様「猫?」
猫娘「みんな人懐っこくて良い子なの。ニャ」
神使「確かにとっても人に馴れてるみたいですね」
猫神「この島には沢山の猫がいるからね~ 住んでいる島民の数よりも多いんだよ~?」
神様「そんなにいるのか・・・」
猫神「それじゃぁ~ 準備しちゃおうか」
372: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:18:59 ID:DlNnkoJw
――― お昼
猫神「猫娘ちゃん、これ3番席ね~」
猫娘「はいニャ! これ追加オーダーですニャ」
神様「はぁ~ すんげー混んでんな」
神使「ここまでお客さんが来るとは思っていませんでした」
すいませ~ん
神使「はい。 神様、テラス席のお客様のご注文お願いしても良いですか?」
神様「あぁ行ってくる」トテトテ
373: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:19:37 ID:DlNnkoJw
キャー 巫女さんだ! かわいい~
そうだろ? かわゆい巫女さんだろ? 本物だぞ?
神使「神様に任せて大丈夫でしょうか・・・」
猫神「大丈夫だって~ 神ちゃん接客上手だも~ん」
神使「まぁ、普段から巫女さんとしてお守り売っていますからね」
こっちも注文良いですか~?
神使「はい、今お伺いいたします」
374: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:20:29 ID:DlNnkoJw
――― 2時間後
客A「うそ~ そんなことある訳ないじゃんよ~」
客B「神ちゃん、話盛りすぎ~」ハハハ
神様「いやいや、そう思うだろ? でもまだ続きがあってさぁ」
神使「ちょっと神様、何やっているんですか?」
神様「うるせー犬ころ。 今良いところなんだよ」
神使「ちゃんと仕事して下さいよ~」
神様「あっ、みんなお代わりとか頼むよね」
客A「もち、私同じヤツ追加で」
客B「私も~」
375: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:21:59 ID:DlNnkoJw
神様「ここのケーキが最高に旨いんだよ。 試してみる価値はあるぞ?」
客A「そうなの?」
客B「神ちゃんが言うなら食べてみようか」
神様「んじゃ、ケーキセット3つ。 私はコーラね」
神使「なんで神様の分も数に入っているんですか・・・」
神様「ケチケチすんなよ。 なぁ皆話の続き聞きたいよな?」
客A「ここでやめられたら困る」
客B「私が神ちゃんの分払ってあげる」
神様「そういうことだ。 さっさと持ってこい犬」
神使「話し終わったら仕事して下さいよ?」
神様「はいはい。 で、続きなんだけどさ~ 私がおまるに跨がった途端―――」
376: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:22:42 ID:DlNnkoJw
神使「テラス席のお客様、ケーキセット追加で3つお願いします」
ハハハッ 神ちゃん面白い!
やばいツボった!!
猫神「神ちゃんまたお客さんと話し込んでるの~?」
神使「もう4組目ですよ? なんの話をしているんだか・・・」ハァ
猫娘「でも、みんな追加注文してくれるから嬉しいです。ニャ」
猫神「さすが神ちゃんよね~ 自分の分までお客さんに払わせるなんて~」
神使「すいません、何のお役にも立てずに・・・」
377: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:23:36 ID:DlNnkoJw
猫神「そんなことないよ~ お客さんも楽しそうだし、セットで追加取るなんてすごいよ~」
猫娘「あの技、盗みたい。 ニャ・・・」
神使「あまりおすすめ出来ませんが」
猫神「ふふ、はい追加のセット~」コトッ
神使「ありがとうございます」
すいません、お会計お願いします
猫娘「はいニャ! 今行きますニャ」スタスタ
378: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:24:40 ID:DlNnkoJw
――― 夕方
神様「いや~ 忙しかった!」
神使「神様ずっとお客さんと話し込んでただけじゃないですか」
猫娘「でも凄い! お客さんみんな楽しそうだった。 ニャ」
猫神「売上もすごいよ~ 客単価とか最高記録かも~」
神様「ほら見ろ」フフン
神使「なんか、納得いかないのですが・・・」
神様「ったく、そんなだからお前はいつまで経っても犬ころなんだよ」
379: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:25:22 ID:DlNnkoJw
猫神「明日は日曜だからもっとお客さんくるよ~ よろしくね~」
神使「はい、よろしくお願いいたします」
神様「任せろ! それよりさぁ」
猫神「な~に?」
神様「猫はここにいないのか?」
猫娘「皆には境内に入っちゃダメって言ってあるの。 ニャ」
猫神「飲食店だからね~ 衛生上マズいんだよ~」
神様「あ~ 結構リアルな事情なのね」
380: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/31(木) 23:27:04 ID:DlNnkoJw
神使「猫娘さん、今日の夜はお時間ございますか?」
神様「なに、デートの誘い? 犬と猫はさすがにダメだろ~」
神使「何を言っているんですか・・・ 神使の実技指導です」
猫娘「もちろん大丈夫です。 ニャ」ビシッ
猫神「本殿使う~?」
神使「お借りしても大丈夫でしょうか?」
猫神「もちろん大丈夫だよ~」
神使「では、後ほど本殿にて」
381: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:00:04 ID:Ipk9nNmI
――― 夜・本殿
神様「なぁ、私は別に付き合わなくても良いんじゃないか?」
神使「神様も一緒に指導をして頂かないと」
神様「今日はテレビにエガちゃんが出るから見たいんだよ」
神使「・・・神様って江頭2:55さん好きですよね」
神様「あのお方は本物だ」ウン
神使「本物って何ですか・・・」
猫神「神ちゃん相変わらず変わった人が好きだよね~」
神様「はぁ~ エガちゃんのお嫁さんになりたいなぁ~ ///」ウットリ
神使「・・・・・・」
382: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:01:33 ID:Ipk9nNmI
猫娘「そんなに好きなんですか? ニャン」
神様「あぁ。だって、ああ見えてエガちゃんはさぁ―――」
神使「はいはい。 さて猫娘さん、まずは神使としての立ち振る舞いからいきましょうか」
猫娘「はい先生。 ニャ」ビシッ
神使「神様、神壇の前にお立ち頂けますか?」
神様「え? 私が相手すんの?」
神使「できれば・・・」
猫神「あ~ 私がするよ~」
神様「だそうだ」
神使「申し訳ございません・・・ よろしくお願いいたします」
猫神「気にしないで~ 一般的な神勅型で良いかな~?」
神使「はい、お願いいたします」
猫神「お~け~」スタスタ
383: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:07:42 ID:Ipk9nNmI
神使「では猫娘さん、まずこの場合の神使の立ち位置ですが―――」
猫娘「神勅は知ってるニャ」スタスタ ストン
神様「ほぉ~」
猫娘「・・・」ペコリ
神使「では猫神様、なにか当たり障りのない神勅をお願いできますでしょうか」
猫神「はいよ~ では」ゴホン
猫娘「・・・・・・」フカブカ
猫神「神勅、明日のねこねこ島の天気を晴天とす~」
猫娘「・・・・・・・・・ありがたき御神勅、しかとお受けいたしました」フカブカ
384: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:09:20 ID:Ipk9nNmI
神様「なんだ完璧じゃん」
神使「はい。 立ち振る舞いと良いタイミングと良い素晴らしいです」
猫神「うんうん、さすが猫娘ちゃ~ん」
猫娘「・・・・・・」フカブカ
神使「あっ猫神様、締めのお言葉を」
猫神「あっ、ごめ~ん。以上、正一位猫神から神勅を申し伝えた~」
猫娘「ニャッ、大丈夫だったかニャ?」パッ
神使「もしかして、猫娘さんはどこかで神使の実技とか習得されたりしました?」
猫神「猫娘ちゃんは、でかでか大神宮からずっと一緒だからね~」
神様「は? 猫娘はこの島出身じゃないのか?」
猫娘「はいニャ、でかでか大神宮から猫神様にくっついて来たんだニャ」
神様「なんだぁ、そんじゃ心配ないじゃん」
385: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:10:15 ID:Ipk9nNmI
神使「でも神使籍には入っていないのですか?」
猫娘「・・・・・・」
猫神「うん10年前までは私の神使だったんだけどね~」
神様「はい?」
神使「猫娘さん神使だったのですか!?」
猫娘「・・・・・・」コクン
猫神「でもね~ でかでか大神宮にいるときに・・・ 除籍されちゃったの」
神様「除籍!?」
386: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:14:22 ID:Ipk9nNmI
神使「除籍とは穏やかではありませんね」
猫神「私のせいなんだけどね~」
猫娘「猫神様のせいじゃありません! 私が・・・ 私が悪いんです。 ニャ」シュン
神様「・・・・・・」
猫神「神法改正の時にちょっとね~」
神様「なるほどな、猫神寄りの神使であるお前が目を付けられたと」
神使「そんなことで除籍だなんて考えられないのですが・・・」
神様「大きい神社だと複雑な事情があるんだよ。 内部の勢力関係とかな」
神使「そんな・・・」
387: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:16:14 ID:Ipk9nNmI
神様「復籍か~ ちょっと面倒だな」
神使「猫娘さんは神使でいらした時の階位は?」
猫神「う~んと・・・ 一位だったよね~?」
猫娘「はいニャ」
神使「高位ではないですか!」
神様「犬ころの一つ下か。 位が高いとさらに面倒だな」
猫神「そうなの~?」
神様「あぁ、神使の復籍の場合は一つ階位を上げないといけないんだよ」
神使「そうですね、猫娘さんを最高位の特位で神使籍に入れる必要があります」
猫娘「私・・・ 猫神様の神使になれないのですか・・・ ニャ」シュン
猫神「・・・・・・」
神使「最高位となりますと・・・」
388: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:17:47 ID:Ipk9nNmI
神様「ふふふ、そんな時こそ! この、かわゆい神様の出番だ!」
神使「え?」
神様「私は神宮でただ一人の審査係の神だ」ニヤッ
神使「まさか神様・・・ また変なことを考えているのでは?」
神様「変な事ってなんだよ!」ゲシッ
猫神「でも、神ちゃんに迷惑かけられないよ~」
神様「大丈夫! 猫娘よ、お前を神使の最高位として復籍させる」
猫娘「ニャニャ!? 最高位?」
神使「神様、さすがに最高位登録はそんな簡単にできませんよ?」
神様「猫神、お前の神力を少し猫娘に移せ」
猫神「神力を~!?」
389: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:19:30 ID:Ipk9nNmI
神様「そうだ、神登録特例条項を使う」
神使「神登録? そんなのあるんですか?」
神様「あるんだなぁ~ それが」
猫神「でも特例ってなに~?」
神様「神として登録する神使で審査神が未熟と判断した物は神使最高位として待機させるというものだ」
神使「初めて聞きました・・・」
神様「私が前に作ったけど公布していないからな」
神使「え? それって効力あるんですか?」
神様「当たり前だ。 公布していないだけで神登録法には記載されている」
390: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:20:49 ID:Ipk9nNmI
神使「でも異議を唱えられるんじゃ・・・」
神様「神の出生に関するに法律だ、人の審査や異議は受け付けない。 私が法律だ! ババン!!」
猫神「でも~ 勝手に私が神力を移すのは違反な気が~」
神様「ビビってんじゃねーよ、バレねーよ」
神使「その言葉、使わない方が良いと思うんですが・・・ 絶対バレてますよ?」
神様「・・・うん、今の言葉は取り消す」
神使「しかし、多少なり神力を移すと言うことは猫娘さんは神と言うことになるのでは?」
神様「その通り、故にまずは猫娘を神籍に入れる」
猫娘「ニャニャ!? 」
神使「ちょっと待って下さい。 そんないきなり神にだなんて」
391: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:22:12 ID:Ipk9nNmI
神様「猫娘は神使経験がある。猫娘は猫神とどのくらいの期間一緒にいるんだ?」
猫神「う~んと・・・」
猫娘「248年ニャ」
神様「十分だ」
神使「十分といいますと?」
神様「猫神の神力がゆっくり解放されて側近の猫娘に移ってしまったという言い訳が使える」
猫神「へぇ~ そんなことあるんだ~」
神様「いや、まずないな」
神使「は?」
神様「良いんだよ、それっぽい言い訳さえあれば」
神使「神様・・・」
392: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:24:10 ID:Ipk9nNmI
神様「猫神よ、猫娘に神力を移しても良いか?」
猫神「うん、神ちゃんの提案なら異論はないよ~」
神様「よし。 んじゃ猫神、猫娘に神力を与えろ」
猫神「はいよ~ 猫娘ちゃん私の力受け取ってね」ニコッ
猫娘「猫神様の神力を私なんかが・・・」
猫神「猫神ちゃんに受け取ってもらえるなら私はとっても嬉しいな~」
猫娘「猫神様・・・」
神様「神力の量は私が制御するから、猫神は神力をゆっくり与え続けてくれ」
猫神「うん、それじゃぁいくよ~」
ポワポワ
猫娘「あったかい・・・ ニャ」
ポワポワ
神様「よし、その位でいいだろ」
393: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:25:09 ID:Ipk9nNmI
猫神「はぁ・・・ 結構大変なんだね~」ハァハァ
神様「思った以上にしんどいだろ?」
猫娘「大丈夫ですかニャ、猫神様・・・」
猫神「大丈夫だよ~ 猫娘ちゃんはどう?」
猫娘「なんだか、不思議な気分ニャ」
神様「神力が体に馴染むまで数日位は違和感があるかも知れないが問題ない」
神使「・・・・・・」
394: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:26:01 ID:Ipk9nNmI
神様「どうした? 犬ころ」
神使「いえ、初めて見たもので」
神様「そりゃ、神の誕生に立ち会うなんて普通じゃ絶対にないからな」
神使「・・・・・・」
神様「お前もここで神にしてやっても良いんだぞ?」
神使「いいえ、私はまだ神様の神使で良いです」
神様「あっそう」
猫神「ふふっ」
395: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:27:41 ID:Ipk9nNmI
神様「さてと、これで猫娘は神になっちゃった訳なんだけど・・・」ゴソゴソ
ポチッ
神使「神様、その機械は?」
神様「ICレコーダーだ」
猫神「レコーダ~?」
神様「猫娘、私の問いに対し正直に答えよ」
猫娘「はい。ニャ!」ビシッ
神様「嘘偽りは私だけでなく、全ての神に対する侮辱となる。 分かるな?」
猫娘「はい!」
396: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:28:58 ID:Ipk9nNmI
神様「猫娘は本審査に対し誘導尋問を受けているか?」
猫娘「受けていません!」
神様「誓えるか?」
猫娘「猫神様に対しても誓えます!」
神様「よろしい、お前は人が好きか?」
猫娘「はい! 大好きです!」
神様「お前の主神であった猫神を尊敬するか?」
猫娘「もちろん尊敬してます!」
神様「お前は神として長い時を生きる覚悟はあるか?」
猫娘「正直・・・ まだわかりません・・・」
397: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:31:04 ID:Ipk9nNmI
神様「自らを、猫神をも犠牲にし、人の願いを叶えることが出来るか?」
猫娘「それは・・・ 猫神様を犠牲にするなんて・・・ 出来ません・・・」シュン
猫神「・・・・・・」
神様「質問は以上で終了だ。 神宮審査神である私、神様は猫娘を神として相応しくないと判断した」
神使「そんな!」
猫神「・・・・・・」
猫娘「すいません・・・」
神様「よって猫娘は神籍登録を行ったのち神階を保留、特例条項を採用し身分を最高位神使へ置くものとする」
猫娘「ニャ・・・」
398: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:31:59 ID:Ipk9nNmI
神様「猫娘よ、本審査において異議申し立てはあるか?」
猫娘「ないです。 ニャ」
神様「神階の保留期間は、猫神を主神として任命する。 よいか? 猫神」
猫神「はい。 私猫神は審査神・神様の命に従います」
神様「よろしい。 以上を持って、神登録審査を終了する」
ポチッ
399: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:33:03 ID:Ipk9nNmI
神様「よし、これでOK。 犬ころの“そんな!”が迫真の演技で良い感じだった」
神使「神様があまりにも冷たい言い方でしたのでつい・・・」
神様「はぁ? 儀式的と言えよ」
猫娘「神様とっても威厳があったニャ」
猫神「でも、なんで録音なんかするの~?」
神様「証拠を残しておかないと採用されないんだよ」
猫神「へぇ~ 時代も変わったね~」
神様「失礼しちゃうよな。 私が不正なんかするわけないのに」
神使「・・・・・・」
神様「なんだよ犬ころ!」ゲシッ
400: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:34:05 ID:Ipk9nNmI
神使「あんな酷な質問を毎回するのですか?」
神様「は? する訳ねぇ―じゃん」
神使「え?」
神様「特例を使うためにした質問だよ。 あそこで猫娘が猫神を犠牲にするとか言ったらハッ倒してたわ」
神使「あ~ そう言うことでしたか」
猫神「神ちゃんは相変わらずそういう事をするのがうまいね~」
神様「褒めるな褒めるな///」クネクネ
神使「いえ、褒めているわけではないと思うのですが・・・」
401: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:35:36 ID:Ipk9nNmI
猫神「じゃぁ、お祝いを兼ねて夕食は豪勢にいこうかね~」
神様「いいね~」
猫娘「さっき、島の人からいっぱい牡蠣もらったニャ」
神様「くっは! 牡蠣っ!」クラクラ
猫娘「もしかして、苦手だったかニャ・・・」
神使「逆です。 神様の大好物の中でも他の追随を許さないほど最高に好きな食材です」
猫神「神ちゃんて二枚貝大好きだもんね~」
神様「やったーーー!!! 最高だよ! うひょ~ 牡蠣かよ!」
猫娘「バケツいっぱいもらったニャ」
神様「やべー やべーよ」
402: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/06(水) 00:36:28 ID:Ipk9nNmI
神使「でも焼き牡蠣にして食べますよ? 生はダメです」
猫神「そうだね~」
神様「焼き牡蠣も最高だよね。 はぁ」ウットリ
猫神「それじゃ~ 浜焼きの準備しよっかね~」
猫娘「はいニャ。 網焼きセット持ってくるニャ」
神使「お手伝いします」
猫娘「ありがとうございますニャ」
猫神「お~い、神ちゃ~ん」
神様「はぁ」ウットリ
神使「神様はしばらく使い物にならないと思います。 放っておきましょう」
404: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:04:58 ID:dHinQzDg
神様「あちちっ」パクパク
神使「神様、そんなに慌てて食べなくても大丈夫すよ」
猫娘「まだまだいっぱいあるニャ」
神様「ふぉもふぁもふん」モグモグ
神使「何言ってるんです?」
猫神「でも美味しいよね~」
神使「本当に。 しかし凄い量ですね」
猫娘「ここら辺は養殖でいっぱい牡蠣が採れるニャ」
405: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:06:22 ID:dHinQzDg
神様「最高の環境だな、私もここで巫女として住み着こうかな~」モグモグ
神使「神としてではないんですか?」
神様「神は猫神がいるし、神使も猫娘がいる。 巫女としてなら転勤許可がおりそうじゃん」
神使「なんでそこまで本気で考えているんですか・・・」
神様「はぁ~ 美味しいっ!」パクパク
猫娘「まだまだあるニャ」
猫神「保存できないし、全部食べてね~」
神様「こんなに食べてもいいの~ 最高に幸せだよ~」モグモグ
406: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:07:51 ID:dHinQzDg
――― 翌日
チュンチュン
神使「神様? 朝ですよ?」ユサユサ
神様「ん~ あと6時間・・・」モゾモゾ
神使「またそんなことを言って・・・ 朝食は牡蠣ご飯ですよ?」
神様「それを早く言えよ!」バサッ
神使「うわっ、なんで下着姿なんですか!」
神様「着るの忘れた。 それより牡蠣ご飯は?」
神使「下で猫娘さんが用意してくれてます」
神様「よっしゃ! 待ってろ牡蠣娘!!」タッタッタッ
神使「牡蠣娘って・・・ って神様? 服着てから出て下さい!!」
407: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:08:59 ID:dHinQzDg
ダダダ
神様「朝は牡蠣ご飯と聞いた! どこだっ!!」ズサーッ
猫娘「ニャー!! 神様裸ニャ!」
神様「失礼な! 下着は着ているから裸では無い」
神使「神様ー! 服着て下さいよ」タッタッタッ
神様「着ないとダメか?」
神使「当たり前です」
猫神「神ちゃん、可愛い下着だね~」
神様「照れるじゃないか~///」クネクネ
408: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:11:13 ID:dHinQzDg
猫娘「朝ご飯はテーブルに用意してあります。ニャ」
神様「よし! 皆早く席に着け!」サッ
猫神「はいよ~」スタスタ
神様「いいな? では、頂きます!!」
神使「なんで神様が仕切っているんですか・・・」
神様「うるせー犬」
猫神「じゃぁ食べようかね~」
神様「いや~ 朝から牡蠣なんて幸せすぎるぞ」パクッ
猫娘「味はどうですかニャ?」
神様「ひゃーーー!! なんじゃこりゃー!!」
409: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:12:57 ID:dHinQzDg
猫神「あれ? 味、変だった~?」
神様「これを作ったのは誰だ!」
猫娘「わたしです。ニャ・・・」
神様「猫娘よ」
猫娘「はい・・・」
神様「わたしのお嫁さんにならないか?」
猫娘「ニャニャ!?」
神使「くだらないこと言っていないで大人しく食べて下さい」
神様「んだよ、腐れ犬ころ」ゲシッ
410: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:14:12 ID:dHinQzDg
猫神「神ちゃん、相変わらずだね~」
神使「猫娘さん、神様は美味しいものを食べるとテンションが変になるので気にしないで下さい」
神様「いや~ うんめー」パクパク
神使「そうだ、神様?」
神様「ふぉん?」パクパク
神使「今日一日お手伝いをしたら、最終のフェリーでここを出ます」
神様「はぁ~? 冗談だろ?」
神使「冗談を言ってどうするんですか・・・」
411: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:15:39 ID:dHinQzDg
神様「牡蠣は?」
神使「はい? すいません、言っている意味が分からないのですが」
神様「牡蠣食べれないじゃん」
神使「牡蠣を食べるために旅しているわけではございませんので・・・」
猫娘「神様とお別れニャ」
猫神「仕方ないね~ 神ちゃんも仕事だし」
神様「え? なんか皆ずいぶんとあっさりしてない? 引き留めないの?」
猫神「忙しそうだし、引き留めちゃ悪いよ~」
猫娘「ニャ」
神様「・・・・・・そう」モグモグ
412: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:17:13 ID:dHinQzDg
神使「で、次の場所なのですが」
神様「どうせまた田舎なんだろ? 次は無人島か?」ハハッ
神使「吉祥寺です」
神様「!?」
神使「吉祥寺です」
神様「騙されません~ どうせ田舎にある吉祥寺とかいうオチだろ?」
神使「東京にある吉祥寺です。 神様の行きたがっていた」
神様「え? 嘘だろ?」
神使「本当です」
神様「猫神、猫娘。 わたしを皆が待っている。 名残惜しいとは思うがお別れだ」
猫神「うん、がんばってね~」
413: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:19:23 ID:dHinQzDg
神使「ちなみに猫神様からのご依頼で吉祥寺に行くんですよ?」
神様「はい?」
猫神「お友達の神が有給でお休みする間、神社を管理して欲しいって相談受けてて~」
神使「そう言うことです。 神宮からも正式な代理神として委任も受けました」
神様「やったー! 吉・祥・寺! いえぇ~い」
猫娘「凄く嬉しそうニャ」
神様「やっぱ猫神、お前は最高だよ!」
猫神「よかった~ 楽しんできてね~」
414: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:20:52 ID:dHinQzDg
神様「でもさぁ、なんで私に相談の一つもなしにそんなのが決まるわけ?」
猫神「ごめんね~ 驚かせようと思ってさぁ~」
神様「いや、猫神は良い。 問題は神宮が勝手に進めることだ」
神使「私には連絡ありましたよ?」
神様「だから、なんで私をすっ飛ばしてお前に連絡が行くんだよっ!」
神使「神宮に抗議します? 吉祥寺行きは白紙になると思いますが」
神様「やめて! 抗議なし! 従います」
415: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/13(水) 00:23:09 ID:dHinQzDg
猫神「それじゃ~ 神ちゃんよろしくね~」
神様「任せろ! おしゃれでナウくてかわゆい神ちゃんになってくる!」
神使「そんな言葉向こうで使わないで下さいよ? 死語です」
神様「え?」
猫神「さて、それじゃ~ そろそろ開店の準備しますかね~」
猫娘「はいニャ」
神様「バッチグー!」
416: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:42:44 ID:HA2uwBac
――― 夕方
猫神「ありがとうございました~」
猫娘「また来てニャ!」
カランカラン
神様「いや~ ちかれた!」
猫神「お疲れ~ 今日もいっぱい人来たね~」
神使「神様はまたお客さんと喋ってただけですよね?」
神様「うるせー腐れ犬ころ!」ゲシッ
猫神「二人は今日のフェリーで帰るんだっけ~」
神使「はい、バタバタして申し訳ございません」
猫神「いや~ 吉祥寺行きはこっちからのお願いだし~」
417: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:43:43 ID:HA2uwBac
神様「楽しみだな~ 吉祥寺!」
神使「では神様、そろそろ出発しますか」
神様「もう少し休んでから行こうよ~」
神使「最終のフェリーまでそんなに時間もございませんので・・・」
猫神「あっ、じゃぁこれ少ないけど~」スッ
神様「?」
猫神「バイト代~ はい、神ちゃんの分」
神様「そうだった! バイト代もらえるんだ」
猫神「こっちは神使君の分だね~」スッ
神使「私も頂いてよろしいんですか?」
猫神「当たり前だよ~」
猫娘「とっても助かったニャ」
神使「では、お言葉に甘えて。 ありがとうございます」
418: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:44:44 ID:HA2uwBac
猫神「道中は気をつけてね~」
神使「猫神様、猫娘さん、お世話になりました」
猫神「こっちこそお店手伝ってもらって助かったよ~」
猫娘「お世話になりました。ニャン」
神様「まっ、何かあったら連絡ちょ」
猫神「神ちゃんも、本当にありがとう~」フカブカ
猫娘「ありがとうございます」フカブカ
神様「いや仕事だし、ケーキ食べたし、牡蠣食べたし、バイト代ももらったし・・・」
神使「神様? せっかくバイト代入ったのに申し訳ないのですがそのお金下さい」
神様「ぇ?」
神使「まだ借金残っていますので」
神様「・・・・・・」
419: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:45:18 ID:HA2uwBac
猫神「神ちゃん、相変わらずお金には縁が無いね~」
神様「はぁ・・・ 本当だよ」シュン
神使「では、私達はここで」
猫娘「荷物は宅急便で送っておくニャ」
神使「どうぞよろしくお願いいたします」
神様「そうだ、猫娘」ゴソゴソ
猫娘「はいニャ」
420: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:46:42 ID:HA2uwBac
神様「これやる」スッ
猫娘「お守りですかニャ?」
神様「私が作ったヤツだからあんま御利益無いけど」
猫神「お~ 神ちゃんお手製のお守りだねぇ~」
猫娘「ありがとうございます! ニャ」
猫神「大切にしなよ~ 神ちゃんのお守りは凄く貴重なんだから~」
猫娘「はいニャ」
神様「古くて年季が入っているだけだ。 たいしたもんじゃない」
神使「では、向こうに着いたら一度ご連絡いたしますので」
猫神「うん、よろしくね~」
神使「お世話になりました」
神様「じゃーねー」
カランカラン
421: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:47:39 ID:HA2uwBac
猫娘「行っちゃいましたね」
猫神「そうだねぇ~」
猫娘「お守り・・・ 大切にします」
猫神「そのお守り、たぶん神ちゃんがまだ神力使えたときに作った物だね~」
猫娘「そうなんですか?」
猫神「うん。 私達神様の“神様”が作ってくれたお守りだよ~」
猫娘「神様の神様・・・」
猫神「そう、神ちゃんは私達の神様だからね~」
猫娘「・・・・・・」ギュッ
422: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:48:22 ID:HA2uwBac
――― 港
神使「神様、船とタラップの間に段差がありますから気をつけて乗って下さい」
神様「だから分かってるってんだよ! 痛てっ」ガクッ
神使「・・・・・・」
神様「・・・・・・」
神様「アチョ~ッ!」ゲシッ
神使「え? なんで蹴られたんですか?」
神様「ん? なんとなく?」
神使「・・・・・・」
423: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:49:00 ID:HA2uwBac
神様「いや~ でも吉祥寺か~ 楽しみだな~」
神使「明日の夕方までには着きたいですね」
神様「は? 明日?」
神使「結構距離ありますので」
神様「新幹線なら夜には着くんじゃないの?」
神使「金銭的な問題がありまして・・・」
神様「ふ~ん。 でも、どっかで一泊する方が高くない?」
424: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/15(金) 05:52:05 ID:HA2uwBac
神使「各駅で行けるところまで行って夜は駅で泊まります」
神様「各駅? 駅で泊まるって野宿って事です?」
神使「そういう言い方もございますね。 廃神社でも良いですが」
神様「うそ~!! マジで言ってんの?」
神使「はい」
神様「嫌ー! 帰る! 牡蠣娘の所に帰る」ジタバタ
神使「ダメです、ほら出航しますよ?」
神様「牡蠣娘ー! 助けてくれ~」
ボー
ザバーン ザバーン
猫娘「ニャニャ! 神様の雄叫びが聞こえたニャ!」
猫神「ふふっ、本当だ~」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#3 ―END
430: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:02:50 ID:iB.c2IF2
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
プシュー
吉祥寺~ 吉祥寺~
神使「お疲れ様でした神様」
神様「・・・・・・」
神使「あれ? どうされたんですか? 吉祥寺ですよ?」
神様「お尻痛い・・・」
神使「12時間かかりましたからね」
神様「でも・・・ 遂に・・・ 遂に! 我、吉祥寺に降り立つ! ドドン!」
神様「・・・お尻痛い」
431: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:05:31 ID:iB.c2IF2
~あらすじ~
神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」
神使(訳)「神宮が誇る史上最悪の問題児、左遷と減俸を総なめにする神様は神宮から地方神社へ出向を命じられます。
しかし赴任先の神社ではその問題児ぶりを遺憾なく発揮し、ついには無給と無期出向扱いに。
捨てる神あれば拾う神あり、神様のお友達である猫神様から吉祥寺の神社で代理神として赴任することが出来た神様は、
意気揚々と吉祥寺に降り立つのでした」
神様「アチョ~ッ!」ゲシッ
432: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:07:13 ID:iB.c2IF2
【#4】
神様「はぁ~ 駅でっかいな」
神使「人も凄いですね」
神様「おっ?」
神使「どうされました? 神様」
神様「見ろよ! ヨトバシ! でっかいヨトバシカメラがある!!」
神使「本当ですね」
神様「ねぇ、ちょっと寄って良い?」
神使「構いませんが、何か買う物でもあるんですか?」
神様「スマホ見たい」
神使「予定よりも早く着きましたし、見るだけですよ?」
神様「金ないんだから買えないことくらい分かってますー」ベェー
433: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:08:20 ID:iB.c2IF2
――― ヨトバシカメラ
神様「うわ~ いっぱいある」トテトテ
神使「神様はDacomoですから向こうのフロアですね」
神様「ここか」
店員「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
神様「スマホ見て良い?」
店員「どうぞ、今お使いの機種は何ですか?」
神様「ん? これ」スッ
店員「・・・・・・」
434: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:09:34 ID:iB.c2IF2
神様「どったの?」
店員「物持ちがよろしいんですね」
神様「やっぱ古いよね、これ」
神使「神様の携帯っていつ買ったんですか?」
神様「う~んと・・・ 分かんないけど中古」
神使「あ~・・・ それアンテナ伸びるタイプでね」
435: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:10:40 ID:iB.c2IF2
店員「今ですとこちらのアイポンとかがオススメですね」
神様「いいね~ 聞いたことある。 あっ、でもコッチの黄色いちっさいヤツが良いな~」
店員「ソミーの最新機種ですね。 そちらも人気でオススメです」
神様「ふ~ん・・・ ありがと店員さん、行くぞ神使」
神使「もうよろしいんですか?」
神様「うん、やっぱ見てると余計欲しくなる」
神使「・・・・・・」
神様「くそ、神宮の奴ら少しは給料出せっつうの」
436: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/23(土) 10:11:22 ID:iB.c2IF2
テクテク
神使「では、神社の方に行きますか」
神様「いや~ お店多いな~」
神使「小さなお店が結構多いんですね」
神様「神社はここから近いの?」
神使「はい、駅から歩いて10分くらいだそうです」
神様「最高の立地だな」
441: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:02:39 ID:j08XnWvk
――― きちきち神社
テクテク
神使「ここですね」
神様「きちきち神社?」
神使「社務所は・・・ あちらですね、行きましょう」
テクテク
神使「すいませーん」
巫女「は~い」
神使「神宮から参りました」
巫女「ご苦労様です」ペコリ
神使「宮司さんはいらっしゃいますでしょうか」
巫女「呼んで参りますので少々お待ち下さい」スタスタ
442: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:04:46 ID:j08XnWvk
神様「結構大きい神社だな」
神使「そうですね。 かなりご立派なお社です」
宮司「ご苦労様です。 きちきち神社の宮司でございます」
神使「はじめまして、神宮から参りました神使と申します」
宮司「これは、神使様でしたか」
神使「本日からご厄介になります」
宮司「どうぞよろしくお願いいたします。 そちらの方は巫女さんでしょうか?」
神使「いえ、代理神の神様です」
宮司「!? 神様!?」
神様「親しみを込めてかわゆい神ちゃんでも良いぞ?」
宮司「・・・・・・」
443: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:06:33 ID:j08XnWvk
神様「?」
神使「宮司さん?」
宮司「あ・・・ 申し訳ありません。まさか神様が普通にいらっしゃるとは思っていませんでしたので」
神使「神様は訳ありで姿を消すことが出来ませ―――」
神様「私は常に人と接することを信条としている」
神使「・・・とのことです」
宮司「そうでしたか、大変失礼いたしました」
神使「こちらの主神様は?」
宮司「神殿の方にいらっしゃると思います。 ご案内いたします」
444: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:07:39 ID:j08XnWvk
テクテク
神様「ここの主神は長期休暇でどこかに行くのか?」
宮司「はい、何と言いますか・・・ 私たちと一緒に海外旅行へ・・・」
神使「一緒と言いますと?」
宮司「私と、巫女を含めこの神社で奉職している者と一緒に・・・ 社員旅行みたいなものです」
神使「それはそれは、楽しんできて下さい」
神様「いいなぁ~ 私も海外行きたい」
445: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:10:10 ID:j08XnWvk
宮司「こちらが神殿でございます」
ギィー
宮司「主神様? おられますか?」
主神「どうぞ」
神使「神宮から参りました神使と申します」
主神「これはこれは、どうぞお入り下さい」
神使「失礼いたします」
神様「んじゃ、おじゃましまーす」
主神「!? 神様ではございませんか!」
神様「おっ、久しぶり」
主神「ご無沙汰いたしております」フカブカ
446: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:11:21 ID:j08XnWvk
神使「神様、お知り合いですか?」
神様「あぁ、最後にあったのは・・・ 何年前だっけ?」
主神「150年ほど前になります。 そちらの方は?」
神様「犬ころ」
神使「はじめまして、わたくし神様の使いで狛犬の神使と申します」
主神「神様の神使さんでしたか。 ご立派でございますな」
神様「は? 腐った極悪邪道な犬ころだ」
神使「神様、もう少しまともな紹介をして下さい・・・」
447: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:12:57 ID:j08XnWvk
神様「しかし、お前は相変わらずイケメンだな~」
主神「そんな勿体ないお言葉」フカブカ
神様「畏まるな、楽にしろって」
主神「ありがとうございます。 宮司、お茶を用意してくれるか?」
宮司「今お持ちいたします」スタスタ
主神「しかし、わざわざ神様がどうしてこのような場所へ?」
神様「臨時で代理神頼んでただろ?」
主神「はい、まだお見えになっていないようですが・・・」
448: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:14:29 ID:j08XnWvk
神様「いや、目の前にいるじゃん」
主神「!? 神様が・・・ 代理神!?」
神様「うん」
主神「まさか神様ほどのお方が私ごときの代理など・・・ 失礼大変申し訳ありません」
神使「神様は以前から吉祥寺に来たがっておりましたので、こちらとしてもありがたいお話でした」
主神「神様がこの地へ!? なにか問題事でも感じられたのでしょうか」
神様「いや別に?」
主神「不徳の致すところ、気になることがありましたら私もお手伝いいたしますが」
神様「お前旅行へ行くんだろ?」
主神「しかし、この地に何か問題があるのでしたらそれどころでは・・・」
神様「大丈夫だって、何もないよ」
449: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:16:42 ID:j08XnWvk
神使「神様は単純におしゃれな吉祥寺の街を気に入って来たがっていただけですので」
主神「この地をお気に入りに!! ありがとうございます」フカブカ
神様「だから一々大げさだよお前・・・」
主神「私にとっては何よりも嬉しく、そしてありがたいお言葉でございます」
神様「そうなの?」
主神「神様からこの地をお預かりして良い街にしようとがんばって参りました。 幾度もくじけそうになりながらも―――」
神使「神様? なんかもの凄い神様に敬意を払っているようですが・・・」ボソッ
神様「昔からこんな感じだ、こいつは・・・・・・」ボソッ
主神「――― そんな出来損ないの私にねぎらいのお言葉を頂けるなんて・・・ 私は・・・ 私は・・・」グスッ
450: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/24(日) 11:17:38 ID:j08XnWvk
神様「あ~、うん。 お前はよく頑張った。 ここの神職や巫女達と心ゆくまで旅行を満喫するがよい」
主神「神様・・・」
神様「あとの事は私達に任せ存分に楽しんでこい。 私からの褒美だ」
主神「ありがとうございます」フカブカ
神使「(・・・この主神様、いい人過ぎる)」
452: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 06:58:06 ID:IcJGX2uE
スタスタ
宮司「お茶でございます」
神使「ありがとうございます」
神様「コーラが飲みた―――」
神使「神様?」
神様「・・・美味しそうなお茶だ」ズズッ
宮司「事務的なことは後ほど巫女を交えて引き継ぎさせて頂きたく思います」
神使「よろしくお願いいたします」
主神「神様も長旅でお疲れでしょう。 少しお休みになった方がよろしいかと」
宮司「そうでございますね」
神様「確かに、ちょっとお尻痛いし、お前達が出かけるまで横になろうかな」
453: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 06:59:20 ID:IcJGX2uE
主神「どうかなされたのですか!?」
神様「いや~ 電車で12時間も椅子に座ってたからさぁ」
主神「そんなに長く・・・」
宮司「新幹線や飛行機でははかったのですか?」
神様「鈍行なんだよ、この犬ころが金を―――」
神使「神様は無駄なところにお金を使わない主義でして」
主神「さすが神様!」
宮司「素晴らしい」
神様「・・・ほ、褒めよ・・・」
主神「私達も見習わなければなりません」
宮司「はい、主神様」
454: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 07:00:07 ID:IcJGX2uE
神様「もういいや、部屋案内して?」
宮司「はい」
主神「神様、どうぞよろしくお願いいたします」フカブカ
神様「旅行楽しんでこいよ」ニコッ
主神「神様・・・」ウルウル
神様「だから一々大げさな態度取るなよ・・・」
455: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 07:01:23 ID:IcJGX2uE
――― 夕方
ガチャ
神使「神様?」
神様「Zzz」グガー
神使「神様? 起きて下さい」ユサユサ
神様「ん~ なに~」ポー
神使「主人様達が出かけられるそうです。 お見送りを」
神様「あ~ そんな時間か」ヨイショ
神使「・・・・・・」
456: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 07:03:14 ID:IcJGX2uE
神様「? なんだよ」
神使「また下着姿で寝てたんですか?」
神様「あ~ 布団が気持ちよくてさぁ、肌で感じたかったんだよ」
神使「着るもの持ってきますからちょっと待てて下さい」
神様「ん」
神使「下着と、巫女装束で良いですか?」ガサゴソ
神様「そうね」
457: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 07:04:57 ID:IcJGX2uE
スタスタ
神様「ごめんごめん」
神使「お待たせして申し訳ございません」
宮司「とんでもない」
主神「神様に見送りをさせるなど失礼申し訳ございません」
神様「気にすんなって」
宮司「神宮から代理の巫女の方が本日中に到着すると思いますので」
主神「神様よりも後に来るなど、ご無礼お許し下さい。 神宮にはキツく申し伝えておきます」
458: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 07:05:53 ID:IcJGX2uE
神様「気にしないでくれ。 あそこの巫女も結構大変なんだ」
主神「!? 失礼いたしました。 私はまだまだ心が狭いようです。 精進いたします」
神様「あ・・・ うん」
宮司「では、バスの時間も近いので私達はここで」
主神「行って参ります」
神使「どうぞ楽しんできて下さい」
神様「お土産よろぴこ~」
459: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 23:52:50 ID:IcJGX2uE
――― 夜
TV:お前に一言もの申ーす!
神様「うひゃひゃ、見ろよエガちゃんノリノリだよ」ゲラゲラ
神使「も~ ニュース見せて下さいよ」
神様「うるせー」
神使「それよりピザはもう食べないんですか?」
神様「寝る前に夜食で食べるから取っておいて」
神使「冷めちゃいますよ?」
神様「チンしてフニャフニャになったピザもうまいんだよ」
トントン
すんませ~ん
神使「? どなたか来られたようですね」
神様「御朱印じゃね? 行ってこいや犬」
神使「はい」スタスタ
460: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 23:53:38 ID:IcJGX2uE
TV:ドーン! ドーン!
キャ~ こっち来ないで~ 気持ち悪い~
神様「エガちゃんやべ~ ちょー腹痛い!」バタバタ
ガチャッ
神使「あの神様?」
神様「あ~ 誰だった?」
?「あれ神ちゃんだ」
神様「おわっ、A子ちゃん! どったの?」
461: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 23:54:45 ID:IcJGX2uE
A子「しばらくここの巫女やれって神宮から追い出された」
神様「代理の巫女さんてA子ちゃんだったの!?」
A子「うん、神ちゃんも代理でここに来たの?」
神様「私? 私は・・・ えっと・・・」
神使「神様? A子ちゃんは神様が普通の巫女さんだって思っているんですよね?」ボソッ
神様「あぁ、私は正体を話していない」ボソッ
462: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 23:55:29 ID:IcJGX2uE
神使「神ちゃんさんはこちらの方とお友達でして、個人的に頼まれてここに来たんです」
A子「あ~ そうなんだ~」
神様「そうそう、猫神から頼まれてさぁ」
A子「猫神?」
神使「猫神様のお使いの方とお友達なのです」
神様「そう! 牡蠣娘」
A子「かきむすめ? 凄い名前だね」
神様「・・・うん」
463: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/26(火) 23:59:05 ID:IcJGX2uE
A子「それより、神ちゃん今までどこいたの?」
神様「神宮の嫌がらせで色々な神社を転々としてた」
A子「神宮の皆も色々噂してるよ?」
神様「そうだな、皆心配してるだろうな・・・」
A子「急に静かになったとか」
神様「私の声を聞けないから寂しいんだろうな」ウンウン
神使「(うるさいヤツがいなくなったということでしょうね)」
A子「初穂料の集計時間が減ったとか」
神様「やっぱり私がお守りを納めないと初穂料も減るよな」ウンウン
神使「(勘定ミスが無くなったんでしょうね)」
464: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:00:20 ID:l7l9lUgU
A子「私は神ちゃんがいなくなってから寂しくて寂しくて・・・」ヘナヘナ
神様「A子ちゃん・・・ 私もA子ちゃんと別れてから心にぽっかりと穴があい―――」
A子「あっ! ピザだ! 食べても良い? お腹すいちゃってさぁ」
神様「・・・・・・」
神使「どうぞ食べて下さい」
A子「やったぁ!」
465: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:01:33 ID:l7l9lUgU
A子「しかし、吉祥寺って凄いね~」モグモグ
神様「おしゃれでナウいスポットがいっぱいあるんだよ。 この吉祥寺には!」
A子「神ちゃん相変わらず死語好きだね~ あっ、でも一周まわって逆に新鮮かも!」
神様「・・・・・・」
神使「(さすがA子ちゃん、天然なのかわざとなのか判断が難しいですね)」
神様「そっ、そうだA子ちゃん、明日公園行かない?」
A子「公園?」
神様「そう、近くにでっかい公園があるんだよ」
神使「井の頭公園ですね」
A子「あ! 聞いたことある! 行く!」
466: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:02:37 ID:l7l9lUgU
神使「いきなり遊びに行くんですか?」
神様「朝行って夕方前には戻ってくるから良いだろ?」
神使「まぁ平日は参拝者もそれほど来ないと言ってましたから私だけでも大丈夫ですが・・・」
A子「神使さん優しい~ 戻ってきたらバリバリ働くから!」
神使「本当ですか?」
A子「巫女嘘つかない」
神様「つかない」
神使「仕事はきちんとして下さいよ?」
A子「大丈夫であります!」ビシッ
神様「あります!」ビシッ
467: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:03:39 ID:l7l9lUgU
――― 翌日・早朝
ガサゴソ
神使「・・・ん?」ムニャムニャ
サァー サァー
神使「(まだ朝の5時・・・ 神様?)」
神様「Zzz・・・」グガー
神使「(・・・ではないですね。 というか、また下着姿で寝て・・・)」
サァー サァー
神使「(氏子さんが境内を掃除しているのでしょうか・・・)」チラッ
468: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:05:19 ID:l7l9lUgU
サァー サァー
参拝者「朝早くからご苦労様です」
A子「おはようございます」
参拝者「こちらの巫女さんですか?」
A子「今日からしばらくこちらでお世話になります」ペコリ
参拝者「そうでしたか、私は毎日朝一番でこちらに来るのが日課でして」
A子「神様もお喜びになると思います」ニコッ
参拝者「・・・それは嬉しいです」
神使「(A子ちゃん?)」
469: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:06:18 ID:l7l9lUgU
スタスタ
神様「おい」
神使「神様起きていらしたんですか?」
神様「どこ行くんだ?」
神使「A子ちゃんが境内を掃除しているようで」
神様「知っている」
神使「お手伝いをしようかと・・・」
神様「巫女の仕事だ。 お前はここにいろ」ンショ
神使「しかし・・・」
神様「A子ちゃんに余計な気遣いをさせるな」シュルシュル
470: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:07:22 ID:l7l9lUgU
神使「神様? 巫女装束なんか着てどうされるんです?」
神様「本殿を掃除してくる。 さすがにA子ちゃんだけじゃ広すぎるし」
神使「え? 神様が本殿を掃除するんですか?」
神様「・・・A子ちゃんの前では、まだダメ巫女の神ちゃんでいたいんだよ」
神使「神様・・・」
神様「7時に朝食だ、社務所で待っている」スタスタ
神使「はい」
神様「あっ、私達の後に入ってこいよ? いいな?」
ガチャ
471: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:08:47 ID:l7l9lUgU
――― 朝食
神使「おはようございます」ソロリ
A子「あっ、神使さんおはよ~う」
神様「んじゃ、朝ご飯にしますかね」
神使「あれ? こちらのお弁当は?」
A子「神使さんのお昼ご飯。 私達お出かけするからさぁ」
神使「わざわざありがとうございます」
472: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 00:10:25 ID:l7l9lUgU
神様「ついでだ。 A子ちゃんのご飯は最高だぞ? 何しろ実家は料亭だからな」
A子「厳しい料理修行の毎日・・・ 料理を極めた私はこうして立派な巫女になったのです!」
神使「巫女関係ないですよね? それ」
神様「A子ちゃんは神宮美食クラブ料理長だぞ?」
神使「初めて聞きましたが」
神様「当たり前だ。 神宮美食クラブは地下組織だからな」
A子「神ちゃん! その話はマズい!」シーッ
神様「おっと失言だ」
神使「はいはい、では冷めないうちに美食クラブ料理長が作られたホットドッグを食べましょう」
476: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:07:57 ID:l7l9lUgU
――― 夕方
A子「神使さん、ただいま~」
神様「ただいま~」
神使「お帰りなさいませ。 二人ともすごい量の荷物ですね・・・」
A子「いや~ お金ほとんど無くなっちゃったよ」
神様「私も~」
神使「神様? クレジットカード使いましたね?」
神様「・・・・・・」
神使「天引きですよ?」ハァ
神様「はい」シュン
477: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:08:56 ID:l7l9lUgU
神様「それより、神社の方はどうだ?」
神使「変わったことはございません。 こちら今日の参拝者お願い事リストです」
神様「ん。 特に神力成就が必要なお願いはなさそうだな」ペラペラ
神使「はい。 それと神宮から“月刊神様”が届いてます」
神様「うわ~ いらね~」
神使「もらっても良いですか?」
神様「お前、これ好きだよな」
神使「どうして神様が読まれないのか不思議なくらいです」
神様「ほれ。 読み終わったらちゃんと燃やしておけよ?」
神使「はい」
478: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:10:01 ID:l7l9lUgU
A子「・・・私、着替えて社務所で事務処理してくるね~」タッタッタッ
神様「うん、よろぴこー」
神使「神様はこの後どうされますか?」
神様「う~ん、ご神体の神力使ってお願い事リストの祈願だけ軽くしておこうかな」
神使「お手伝いいたします!」
神様「A子ちゃんは~ しばらく大丈夫だよな」
神使「事務処理で一時間くらいは必要かと思います」
479: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:13:48 ID:l7l9lUgU
神様「んじゃ、バレないようにサクッとやりますかねっと」
神使「はい!」
神様「神使君は何でそんなに力入ってんの?」
神使「神様が祈願する所を見るのは初めてなもので・・・」
神様「あ~」
神使「祭礼用の御装束に着替えられますか?」
神様「いや、私もってないし・・・」
480: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:15:06 ID:l7l9lUgU
神使「主神様からお預かりしております!」
神様「うわっ・・・ 面倒くさいから良い」
神使「そう言わずに」
神様「っていうか、なんで男のアイツが女物の装束持ってんだよ!」
神使「さぁ? でも、綺麗なおべべですよ?」
神様「うるさい! さっさと行くぞ!」
スタスタ
481: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:18:58 ID:l7l9lUgU
――― 30分後・社務所
A子「ふい~ 終わった~」
A子「この位の量、神宮で膨大な事務処理をこなした私にはお茶の子さいさいなのです!」
A子「ん~ 夕飯の準備しちゃおっかなぁ~」
A子「・・・そう言えば神ちゃん達どこ行ったんだろ?」キョロキョロ
A子「本殿に明かりがついてる」
スタスタ
482: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:19:52 ID:l7l9lUgU
――― 本殿
神様「よし、こんなもんで良いか」フゥ
神使「・・・・・・」
神様「なんだよ」
神使「いえ、凄いです神様・・・」
神様「は?」
神使「一回一回祈願文を変えるだなんて」
神様「当たり前だろ。 全部お願い事が違うんだから」
神使「・・・・・・」
神様「あーもう! 行くぞ!」ヨイショ
483: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/27(水) 23:21:16 ID:l7l9lUgU
神使「あっ、神様すそ踏んでます」
神様「ん? うわ~」ビタン
神使「大丈夫ですか?」
神様「痛い・・・ だから装束嫌いなんだよ! それに大げさすぎだろこの衣装」
神使「でも、とってもお似合いです。 さすが神様」
神様「てめぇ犬ころ! バカにしてんじゃねーよ」ゲシッ ゲシッ
神使「痛! すいません、本気で痛いですっ」
神様「ほら、行くぞ! A子ちゃんにこんな格好してるの見つかったら言い訳できない」
ギィー
A子「神ちゃ~ん、いるの~?」
神様「A子ちゃん!!」
A子「・・・・・・」
485: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:05:02 ID:bm0nLWO2
A子「神ちゃん・・・ その格好って・・・」
神様「あ! これは・・・」アタフタ
A子「それ、上級神の御装束・・・」
神様「・・・・・・」
A子「神ちゃん、まさか・・・」
神様「あっ・・・ 違うんだ」オロオロ
486: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:06:03 ID:bm0nLWO2
A子「ご祈願するなら言ってくれれば手伝ったのに~」
神様「ほへ?」
A子「私も神ちゃんのご祈願するとこ見たかった!」
神使「A子ちゃん、もしかして神様のことご存じで・・・?」
A子「え? 神ちゃんが神様って事?」
神使「まぁ・・・ はい」
A子「そんなの知ってるよ~」ケロッ
神様「え?」
487: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:07:17 ID:bm0nLWO2
A子「なんか神ちゃんが隠しているっぽいから聞いたりはしなかったけどさぁ」
神様「A子ちゃん・・・」
神使「でも、どうして分かったんですか?」
A子「え? だって“審査神 神様”って判が押された書類がよく回ってくるし」
神使「あ~」
A子「組織図にも神ちゃんの所に“内宮神籍 神様”って書いてあったし」
神様「あ~」
A子「神様しかもらえない“月刊神様”が神ちゃんの所に毎月届いてたし」
神様・神使「あ~」
488: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:08:30 ID:bm0nLWO2
A子「それに巫女には神使さんなんて付かないもん」
神様・神使「・・・・・・」
神使「神様? もう隠す必要はなさそうですね」
神様「・・・・・・」
A子「それより、神ちゃん御装束姿すごく綺麗だね~」
神様「ぅ///」
489: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:09:22 ID:bm0nLWO2
――― 夕食
A子「さぁ、召し上がれ!」
神使「あの・・・ A子ちゃん?」
A子「ん?」
神使「これは・・・」
A子「ピッツァ」
神使「良い発音ですね。 もしかして出前ですか?」
A子「いや~ ご飯炊き忘れちゃってさぁ」
490: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:10:49 ID:bm0nLWO2
神使「二日連続ピザになってしまうのですが・・・」
神様「私はピッツツアで良い」
神使「言えないならピザで良いと思いますよ? 神様は」
神様「アチョ~ッ!」ゲシッ
神使「痛!」
A子「熱々のうちに食べちゃおうよ」
神使「そうですね。 では頂きましょうか」
神様「うん」
491: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:11:30 ID:bm0nLWO2
A子「うまうま」ハフハフ
神様「・・・A子ちゃん」
A子「なに?」
神様「その・・・ ごめんなさい!」ドゲザ
A子「え? 急にどしたの神ちゃん」
神様「いや、私が神だって事を隠していて・・・」
A子「あ~ 全然隠れてなかったけどね」
492: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:12:50 ID:bm0nLWO2
神様「A子ちゃんとは神だとか人だとかそういうの抜きで、その・・・ 友達でいたかったから・・・」
A子「そんなの気にする必要ないのに~」
神様「でも・・・」
A子「やっぱり神と人は一線を置かないといけないの?」
神様「そんなことない!」
A子「じゃぁ良いじゃん。 私バカで礼儀知らないから誰とでもフレンドリーだし」
神様「うん・・・ 知ってる」
A子「それに、他の神様なんて見たことないし接し方とかあんま知らないからね~」
神使「それは巫女としてどうかと思いますが・・・」
A子「じゃぁ神ちゃんのこと、敬い奉ったほうが良い?」
神様「やめて! そういうのだけは絶対やめて!」
A子「そう言うと思った」
493: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:14:16 ID:bm0nLWO2
神様「でも、本当にごめん!」
A子「だから気にしてないって~」
神様「いや、それじゃ私の気が済まない。 どうしよう」
A子「う~ん・・・ じゃぁ今から私が気になっていたことを質問するから正直に答えること」
神様「質問?」
A子「うん、それで帳消しって事で」
神様「お安いご用だ! 私が知っていることなら包み隠さず話す!」
神使「ちょっと神様、大丈夫ですか?」ボソッ
神様「心配いらない。 A子ちゃんの質問だ、難しいことなんか質問してこないだろう」ボソッ
494: ◆8YCWQhLlF2 2016/04/29(金) 11:15:09 ID:bm0nLWO2
A子「じゃ~最初の質問!」
神様「バッチこーい!」
A子「神ちゃんて生まれはいつ?」
神様「・・・・・・」
神使「(いきなりストレートパンチですね)」
497: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 22:59:15 ID:Q2TQZ4Wc
神様「あー、生まれのことか~」
A子「神ちゃんの由来だけ神様図鑑に載ってないんだよね~」
神様「えっ? そんな図鑑あるの?」
A子「うん」
神使「私も以前に調べたのですが、何の情報も記載されていませんでしたね」
神様「ふ~ん・・・」
A子「きっと裏に何かある! 私はそう思ったのです!」
神様「いや、書き様がないんだよね~」
A子「へ?」
498: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:01:02 ID:Q2TQZ4Wc
神様「実はさぁ、自分でもよく分からないんだ。 気がついたらいた」
A子「なにそれ~」
神様「ん~ 弥生時代とか呼ばれている時の記憶は少し残ってる。その前は・・・ よく覚えてないな~」
A子・神使「・・・・・・(思っていたよりも古い)」
A子「そんなに昔からいるの?」
神様「あぁ、素っ裸で走り回っていた記憶もかすかにある」
神使「(神様が裸でウロウロする理由はこれですか・・・)」フム
神様「犬ころ、お前なに一人で納得してんだよ」
神使「・・・いえ、別になんでもないです」
499: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:02:18 ID:Q2TQZ4Wc
A子「そんな昔から神ちゃん何してたの?」
神様「何って仕事さね」
A子「仕事? 神ちゃんのお仕事って何?」
神様「ん~ 突き詰めれば皆が幸せに過ごせるように願いを叶えるための神を作ることかな?」
A子「神を作る!?」
神様「そう」
A子「・・・・・・(思っていたよりも凄い)」
神使「・・・・・・(それが仕事だったのですか)」
A子「神ちゃんてもしかして凄い神様?」
神様「それも質問? 別に凄くは無いけど。 それに厳密に言えば私は神じゃないし」
神使「はい!?」
A子「どういうこと?」
500: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:05:05 ID:Q2TQZ4Wc
神様「私が神力を与えた者が神と呼ばれるわけで。 だから私は本当は神じゃ無い」
A子「そうですか・・・ よく分かりませんでした」
神様「まぁ深く考えたことないし、呼び名なんてどうでもいいと思う。 引き続きかわゆい神ちゃんと呼んで欲しいな」
A子「え~ そんな風に呼んだことないけど~」
神様「・・・・・・」
神使「もしかして天照大神様も神様が?」
神様「なんでお前まで便乗して質問してくるんだよ! 犬!!」
501: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:06:21 ID:Q2TQZ4Wc
神使「A子ちゃん、是非この質問も」
A子「興味なーい」
神使「・・・・・・」
神様「うむ。 知らない方が良いこともある」ウンウン
神使「まさかとは思いますが、神様が天照大神様ということは・・・」
神様「はぁ? 天照だぁ? 神話と現実を一緒にすんなよ。 だからお前は犬ころなんだよ」
神使「・・・・・・(本当に聞かない方がよかったかも知れません・・・)」
502: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:07:58 ID:Q2TQZ4Wc
A子「でも、神様っていっぱいいるんだよね? そんなに必要なの?」
神様「実は神の数は年々少なくなっているんだ」
A子「そうなの?」
神様「あぁ、今は一番多かったときの半分以下になっているだろうな」
神使「どうしてそんなに・・・」
神様「一つは神の在籍する神社への参拝者が減ったこと」
神使「どこの神社も頭を抱えてますよね」
神様「神は参拝者がいなくなると・・・ 力が減ってくるんだ」
A子「力が?」
神様「はっきりと言ってしまうと、神力がなくなって最後は消えてしまう」
A子「死んじゃうって事?」
神様「人で例えるならそう言うことかなぁ」
503: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:08:46 ID:Q2TQZ4Wc
神使「参拝者の多い神社に集めるというのじゃダメなんですか?」
神様「神は勝手に神社を移れない。 いや移る方法もあるんだけどワンランク下の神社にしか移れない」
神使「猫神様ですか・・・」
神様「そうだ。 あいつは大きいところから小さいところへ移ったから異動許可が出たんだ」
神使「なるほど・・・」
504: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:09:48 ID:Q2TQZ4Wc
神様「で、もう一つは私が神に任命する者を減らしていること」
A子「なんで?」
神様「例えばさぁ、A子ちゃんが神になったとするじゃん?」
A子「うん」
神様「そしたら、まずは神宮に配属されるんだよ」
A子「人多いもんね~」
神様「そう。 で、一通り仕事を覚えたら地方の神社に異動になるわけ」
A子「独り立ちだ~」
505: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:10:55 ID:Q2TQZ4Wc
神様「でも、神が不在で参拝者の多い神社って今はほとんど無い訳よ」
神使「一つ目の問題と関係してるわけですね?」
神様「最初から参拝者の少ない神社に配属させるわけにもいかないしさぁ」
A子「参拝者増やせば良いじゃん」
神様「ナイスアイディーア! でも、そう簡単にいかないんだよね~」
神使「何か解決法はないんでしょうか」
神様「神宮が出した答えが十年前の神法改正」
A子「神法改正?」
506: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:11:42 ID:Q2TQZ4Wc
神様「まぁ簡単に言うと神社の運営なんかを神から人に移譲するってこと」
A子「なんかメリットあるの?」
神様「徹底的な効率化を図って、少ない神で多くの神社を管理できることかな」
神使「それってこの先、神が減るっていうことが前提の話ですよね?」
神様「そうも取れるな」
神使「他にも訳が?」
神様「・・・・・・」
507: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/05(木) 23:13:30 ID:Q2TQZ4Wc
A子「神様が存在してるってバラしちゃえば?」
神様「う~ん、昔はそうだったんだけどね」
A子「なんで今は隠してるの?」
神様「存在がバレるとちょっと面倒事が多いんよ」
A子「そうなの?」
神様「いやさ、面倒なお願いを強要してくるヤツがいるんだよ」
A子「面倒なお願い?」
神様「その・・・ 戦争とかさ? そういう政治的なお願い?」
A子「断れば良いじゃん」
神様「でもさぁ、国の頭とかに国民を守るためだ! とか、このままじゃ大勢の国民が死ぬ! とか言われちゃうと・・・ ねぇ」
神使「なるほど・・・」
神様「神も基本良いやつだからな。 お願いされたら断れないんだよ」
A子「もっと気楽に考えれば良いのに~」
神様「ほんとだよ」ハァ
509: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:53:00 ID:xhwN41h2
――― 翌日・早朝
ゴソゴソ
神使「ん・・・ 神様・・・?」
神様「悪い起こしたか」
神使「早いですね」
神様「巫女さんの朝は早いんだよ」
サァー サァー
神使「A子ちゃん、もうお掃除してますね」
神様「あぁ、神宮にいたときからA子ちゃんは誰よりも早く掃除を始めるんだ」
神使「立派な心がけですね」
510: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:54:12 ID:xhwN41h2
おはようございます
おやまたお会いしましたね ハハッ
神使「あの方、昨日も朝早くにいらしてましたね」
神様「ん?」ソォー
神使「よほどこちらの主神様をお慕いしているのでしょうね」
神様「う~ん・・・」
神使「どうかされましたか?」
神様「いや・・・ 本殿掃除してくる」タッタッタッ
511: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:55:16 ID:xhwN41h2
――― 朝食
神使「おはようございます」
A子「おは~」
神様「今日の朝ご飯も最高だぞ」
神使「サンドイッチとお味噌汁という組み合わせは凄いですね・・・」
神様「あ? 味噌汁じゃねーよ。 コンソメスープだよ」
神使「・・・コンソメスープって濁りませんよね?」
神様「私の特製スープだ。 心して飲め」
神使「はぁ・・・」
A子「私はわかめスープ」
神様「あっ、私もそれにしよー」
神使「・・・・・・」
512: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:56:19 ID:xhwN41h2
神使「神様、今日はどうされるんですか?」
神様「土曜で人来そうだからな~」
A子「授与所と社務所にはだれかいないとね~」
神様「じゃぁ私とA子ちゃんは授与所」
神使「私は社務所でよろしいですか?」
神様「あぁ。 御朱印と祈祷があったらまわしてくれ」
神使「承知しました」
513: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:57:38 ID:xhwN41h2
A子「あっ! 神使さん、神ちゃんの特製スープ残してる!」
神使「・・・・・・」
神様「うまいから飲んでみ?」
神使「(このスープ何で出来ているんでしょうか・・・)」
A子「神ちゃんが神使さんのために昨日の夜から作ってたんだよ?」
神様「うむ、私の愛情がギュッと詰まっている」
神使「・・・はい」ズズッ
神様「どうだ?」
神使「!? 美味しい・・・」
神様「見た目は悪いがうまいだろ」フフン
514: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 20:59:20 ID:xhwN41h2
――― 午後
ガヤガヤ
参拝者「このお守り下さい」
A子「はい。 五百円お納め下さい」
参拝者「このお守りって大きいヤツの方が御利益あるんですか?」
神様「実は同じなんだよ、違うのは大きさだけ。 素材費の違い?」
参拝者「じゃぁ、こっちの安いヤツで」
神様「はい、三百円ね。 ついでにおみくじもやってかない? 百円だし今日は小吉以下って入ってないから」
515: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 21:00:43 ID:xhwN41h2
参拝者「オレおみくじ一回やるわ」
A子「はいどうぞ」
参拝者「可愛い巫女さんじゃん、写真撮っても良い?」
A子「ははは・・・」モジモジ
神様「私なら良いよん♪」クネクネ
参拝者「いいっす」
神様「・・・・・・」ムカッ
参拝者「うわ大凶かよ・・・」
神様「二百円」
参拝者「え? 百円じゃないの?」
神様「そちらは二百円のとっても良く当たるおみくじですので」ニコッ
参拝者「・・・・・・」
ガヤガヤ
516: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 21:02:06 ID:xhwN41h2
――― 夕方
神使「お疲れ様でした」
神様「本当だよ」ハァ
A子「人多かったねぇ」
神使「神様、こちら今日のお願い事リストです」ドサッ
神様「・・・・・・多いね」ペラペラ
神使「夕飯食べたらご祈願いたしましょう」
神様「ん? これで全部か?」
神使「えぇ」
517: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 21:02:59 ID:xhwN41h2
神様「A子ちゃん」
A子「なにー?」
神様「朝早くお参りに来る男の人知ってる?」
A子「あ~、いるねぇ。 毎朝来てるんだって」
神様「なにか気になったことない?」
A子「気になること? 特に無いけど・・・ お参りして帰るだけだよ?」
神様「お参り? 毎朝来てるって言ってた?」
A子「うん」
518: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/07(土) 21:04:08 ID:xhwN41h2
神様「・・・・・・ おい、極悪邪道腐れ犬ころ」
神使「私の事でしょうか?」
神様「私達が来る前のこの神社のお願い事リストってあるか?」
神使「えぇ、念のため宮司さんから預かっております」
神様「ちょっと男の人のお願い事が何か調べておいてくれる?」
神使「分かりました」
A子「どったの?」
神様「う~ん、なんか気になるんだよね~」
519: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:08:49 ID:oDizP/ys
――― 夜
神使「神様?」
神様「なに?」ペロペロ
神使「・・・そのアイスどうしたんですか?」
神様「あ~ 冷たくておいちい~」
神使「勝手に冷蔵庫を漁っちゃダメじゃないですか」
神様「さっきA子ちゃんが買ってきてくれたんです~」ベー
神使「そうですか」
神様「お前の分もあるぞ “アイスな実”、メロン味だけ私にくれ」
神使「はぁ」
520: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:09:40 ID:oDizP/ys
神様「で、何か用か?」
神使「過去1週間分ですが私達が来る前のお願い事リストを調べてみました」
神様「あ~ どうだった?」ペロペロ
神使「実は、リストには朝に来る男性と思われる記載が見当たらなく・・・」
神様「ふ~ん・・・ やっぱりか」ペロペロ
神使「?」
521: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:11:15 ID:oDizP/ys
ガチャ
A子「あっ、神ちゃんここにいた。 お風呂沸いたから先入っちゃってよ」
神様「A子ちゃん先に入って良いよ。 私もうちょっとダラダラしたい」
A子「んじゃ、先もらうね~」
A子「あっ、神使さん」
神使「はい」
A子「冷蔵庫に“アイスな実”あるから。 巨峰味だけ私にちょうだいね~」
スタスタ
神使「・・・・・・」
522: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:12:24 ID:oDizP/ys
神様「おい、犬ころ」
神使「これ以上“アイスな実”を取られたら私の分無くなってしまうのですが・・・」
神様「違うわ。 お前、今日寝るのか?」
神使「すいません、仰っている意味がよく分からないのですが・・・」
神様「お前、今日徹夜したいだろ」
神使「いいえ、寝たいです」
神様「徹夜したいだろ?」ニコッ
神使「・・・はい」
523: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:13:54 ID:oDizP/ys
神様「拝殿に身を潜めて気配を殺して見張ってろ」
神使「拝殿にですか?」
神様「このお守りを持ってジッとしてろ」スッ
神使「・・・すごく嫌なのですが」
神様「このお守りを持っていれば大丈夫だ。 たぶん」
神使「大丈夫と言い切って頂けないでしょうか?」
神様「うん、大丈夫。 これでいいか?」
神使「・・・・・・ 何かあるんですか?」
神様「分かんない」
神使「・・・・・・」
神様「何かあったら私の携帯に電話してくれ。 絶対に外に出るなよ?」
神使「はぁ・・・」
524: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:15:01 ID:oDizP/ys
――― 夜中
神使「はぁ~ 三時ですか・・・ 神様は一体何を考えているのでしょう・・・」
ガサッ ガサッ
神使「(? こんな時間に参拝者・・・)」
参拝者「・・・・・・」キョロキョロ
神使「(本殿を覗いて何しているのでしょうか・・・)」
参拝者「・・・・・・」ガサゴソ
神使「(まさか・・・ 賽銭泥棒!? 神様に電話を!)」ピッピッ
525: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:16:13 ID:oDizP/ys
prrr prrr
神様『ん゛・・・』
神使「あっ、神様ですか? 賽銭泥―――」
神様『何時だと思ってんだよ』ガチャ
p- p- p-
神使「・・・・・・」
526: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:17:44 ID:oDizP/ys
―――翌日・早朝
サァー サァー
神様「んぁ・・・ A子ちゃん・・・」ポー
神様「もう五時か・・・ フワ~ァ」ムニャムニャ
神様「ん? 犬ころがいないな」キョロキョロ
神様「こんな朝早くから散歩か?」
527: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:18:51 ID:oDizP/ys
スタスタ
神様「A子ちゃんおはよ~」
A子「おはよ~」
神様「犬ころ見なかった?」
A子「神使さん? 見てないよ」
神様「あの腐れ犬ころ勝手にどこ行ったんだ?」
神使「ここに居ますが・・・」
A子「?」
神様「お前、拝殿の中で何やってんだよ」
神使「・・・・・・」
528: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:20:27 ID:oDizP/ys
――― 朝食
神様「だからゴメンって言ってんじゃんよ。 な? 私のタコさんウインナーあげるから」ホレ
神使「今日は神様も一緒に起きていて下さいよ?」
神様「わーったよ」
A子「でも本当に賽銭泥棒なの?」
神使「暗くてよく見えなかったのですが本殿の周りをウロウロしていましたね」
神様「でも賽銭は無くなってなかったんだろ?」
A子「開けられた形跡も無かったね」
神使「しかし参拝にしては不自然だったのですが・・・ 私が吠えたら居なくなってしまいまして」
A子「下見とか?」
神様「どうかな~」
529: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:23:02 ID:oDizP/ys
――― 夜・社務所
神様「さてと、んじゃ今日は三人で見張りって事で」
神使「順番で交代制にしますか?」
神様「いや、全員で朝まで見張る」
A子「どこで見張るの?」
神様「私は万が一の時に神力が使えるよう本殿にいる。 A子ちゃんは社務所で待機」
A子「ほい」
神使「私はいかがすればよろしいでしょうか」
神様「昨日と同じく拝殿にいろ。 もし不審者が来たら本殿に誘導してくれ」
神使「大丈夫ですか?」
神様「代理とはいえ一応はこの社の神だぞ? ご神体経由だけど神力が使える私は無敵なのだよ」フフン
神使「はぁ、でも無茶はしないで下さいね」
神様「へいへい。 じゃぁ、昨日は三時頃に来たようだしその時間は要注意で」
530: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:24:08 ID:oDizP/ys
――― 深夜
コソコソ
神使「(来ましたね)」
バンッ
参拝者「!?」
神使「こんな時間に当社にご用でしょうか?」
参拝者「あ・・・ いえ本殿をちょっと見たくて・・・」
神使「そうでしたか。 ではどうぞ本殿にお入り下さい」
参拝者「え? いいのですか?」
神使「今お開けいたします」
531: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:26:14 ID:oDizP/ys
ギィッ
神使「さぁ、お入り下さい」
参拝者「・・・・・・」
ギィッ バタンッ
参拝者「!?」
神様「ふふふ、盗人め! 我が社に忍び込むとは良い度胸! だが相手が悪かったよう・・・ ん?」
参拝者「神様・・・」
神様「・・・・・・」
532: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/08(日) 00:28:36 ID:oDizP/ys
神使「? 神様どうされました?」
神様「犬ころ! そいつは敵だ! ガブッっと噛みつけっ!!」
神使「え?」
参拝者「そんな敵だなんて・・・」
神様「てめぇは何でこんな所に来てんだよ!」
参拝者「いえ・・・ その・・・」
神使「もしかして神様お知り合いですか?」
神様「しらねー」
参拝者「そんな殺生な・・・」
神使「あの、失礼ですが・・・」
参拝者「あっ、私は神様の夫です」
神使「・・・・・・」
535: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:47:06 ID:zUO5Zbd6
神使「え? 神様の旦那様!?」
参拝者「はい」
神様「結婚なんかしてないだろ! 嘘つくんじゃねーよ!」
参拝者「許婚ですから結婚しているも同じです」
神様「お前が勝手に言っているだけだろうが!」
神使「あの・・・ どう言う事でしょうか?」
536: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:48:19 ID:zUO5Zbd6
――― 社務所
A子「お茶です」コトッ
参拝者「ありがとうございます」
神様「こんなやつにお茶なんか出す必要ないぞ」
A子「いや~ 神ちゃんに旦那さんがいたなんてびっくりしたよ」
神様「A子ちゃん? 私は結婚してないから、ね?」
神使「失礼ですがお名前は・・・」
参拝者「申し遅れました。 私、神様の夫である昭和神宮の主神で昭宮神と申します」
神様「さりげなく夫とか付けてんじゃねーよ」
537: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:50:40 ID:zUO5Zbd6
神使「昭和神宮の主神様ですか!?」
A子「昭和神宮?」
神使「東京で最高位のお社です。 まさか昭宮神様が神様の旦那様だったなんて・・・」
神様「神使君? 私は結婚してないから、ね?」
A子「神ちゃんの旦那さんて凄い神様だったんだね~」
昭宮神「いえ、私など神様の足下にも及びません」
神様「あーもうっ! 結婚してないって言ってんじゃん! 私の旦那さんはエガちゃんって決まってんの!!」
神使「神様? 昭宮神様は大変素晴らしい神と伺っております」
神様「だからなんだよ」
神使「これほど素晴らしいお話など、今後神様には縁遠いかと思―――」
神様「・・・・・・」ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ
神使「痛い! 痛いです神様、ちょ・・・ 本気で痛いです」
538: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:52:14 ID:zUO5Zbd6
A子「昭宮神さんって、すごく格好いいですね~」
昭宮神「ありがとう、お世辞でも嬉しいですね。 神様、是非皆さんを紹介して下さい」
神様「あ~ この子は神宮の巫女でA子ちゃん。 私の大親友であり神宮では常に私と一緒にコンビを組んでる」
昭宮神「神様のご親友で側近の巫女さんですか! 今後ともよろしくお願いいたします」
A子「神ちゃんと私は見えない深いところで繋がっている最強コンビなんです!」
昭宮神「素晴らしい! なんて頼もしい関係なのでしょう」
神様「んで、こっちは犬」
神使「・・・・・・神様の使いを務めております狛犬の神使と申します」
539: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:53:27 ID:zUO5Zbd6
昭宮神「ほぉ、もしかして最高位の神使さんですか? 今月の月刊神様にインタビューが載っていましたね」
神様「え? おまえ取材なんか受けたの?」
神使「はい、ダメ神との付き合い方というコーナーで」
神様「なにそれ! 超気になるんだけど!」
昭宮神「大変興味深い記事でした。 こうして神様とお目にかかれたのも神使さんの記事のおかげです」
神様「あ?」
昭宮神「今週からこちらの神社で神様が代理神を勤められると紹介がございましたので」
神様「・・・・・・」
神使「・・・・・・」
神様「犬ころ、お前明日からドッグフードな」
540: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:54:40 ID:zUO5Zbd6
A子「神ちゃんは何で結婚しないの?」
神様「私はエガちゃんと・・・」
A子「茶化さないの」
神様「・・・いやさぁ、私は人じゃないし結婚とかそういう概念が無いからさぁ」
A子「神様って結婚できないの?」
神様「そんな決まりは無いけど・・・ 人と恋に落ちて神の職を捨てるヤツもいるし」
A子「じゃぁ良いじゃん」
神様「ちょっと待って? なんで私を結婚させようとしてんの?」
昭宮神「私が神様と結婚したいからです」
神様「てめぇは黙ってろや」
541: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:55:42 ID:zUO5Zbd6
神使「許婚と仰ってましたが」
神様「あ~ 昔こいつに私の名前を教えたんだよ」
A子「うん」
神様「それだけ」
A子「はい?」
神様「いや、昔はさぁ女が男に名前を教えるって結婚前提の行為だったんだよ」
神使「それっていつの時代ですか?」
神様「すんげー昔」
昭宮神「奈良時代です」
神使・A子「・・・・・・(古すぎる)」
542: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:56:56 ID:zUO5Zbd6
神使「と言うことは、昭宮神様は奈良時代から神様のことを・・・」
昭宮神「はい、お慕い申し上げております」
神様「・・・・・・」
A子「神ちゃん、これは腹くくるしかないよ」
神様「い・や・だ!」
A子「こんなに長く想ってくれる人なんていないよ?」
神様「人じゃないから、こいつ神だから」
A子「も~ そんな減らず口叩いて~ 人も神も恋愛は同じです!」
神様「ぅぐ」
543: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 00:58:43 ID:zUO5Zbd6
A子「でも神様同士の結婚って結婚届とかあるの?」
神様「さぁ? そんなの聞いたことないけど」
A子「じゃぁ、結婚してるも同じじゃん」
神様「違うから。 同じじゃないよ?」
A子「でも昔、神ちゃんは昭宮神さんに名前を教えたんでしょ?」
神様「そうね・・・」
A子「事実婚じゃん」
昭宮神「話が分かる巫女さんです。 その通りなのです」
神様「お前は黙ってろや!!!!」
A子「う~ん、神ちゃんの負け!」
神様「いやいや、勝負じゃないから。 私は同意してないから、ね?」
A子「も~ 諦めた方が良いよ?」
神様「嫌だ!」ブーブー
544: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:00:45 ID:zUO5Zbd6
神使「でもなんでこんな時間にこちらへ・・・」
昭宮神「この時間しか私の自由にならないもので」
神使「お忙しいのですね」
昭宮神「神様からお預かりした職務ですので苦ではございません」
神様「・・・・・・」
神使「しかし、こんな遅くでは神様もご就寝されているので会えない可能性が高いと思うのですが」
昭和神「一目だけでもお姿を拝見したく、本殿でご就寝されているものと思っておりましたので・・・」
神使「確かに神は普通本殿から出ませんからね」
神様「あんな何も無いところで寝られないっつーの」
545: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:01:29 ID:zUO5Zbd6
昭宮神「相変わらず寂しがり屋なところは変わらないんですね」
神様「てめぇ! それ以上戯れ言を抜かすと蹴り飛ばすぞ!」
昭宮神「ははっ、失礼しました」
A子「もう、神ちゃんたら照れ屋さんなんだから」
神様「照れてないよ? 全然照れてないよ? むしろ怒ってるからね?」
昭宮神「・・・どうやら、今は私の出る幕はなさそうですね」ニコッ
神使「?」
546: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:02:33 ID:zUO5Zbd6
昭宮神「では、私はこれで失礼いたします」
A子「もう帰っちゃうの?」
昭宮神「もうじき朝のお勤めが始まりますので。 神様とお話しできただけでも、あと300年はがんばれます」
神様「そうかい、んじゃはよ帰れ」ヒラヒラ
神使「神様? せっかく来て下さったのに失礼ですよ?」
昭宮神「いえ、私の方がこんな時間に申し訳ありませんでした」
神使「お気を付けて」
昭宮神「失礼いたします」
547: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:03:39 ID:zUO5Zbd6
神様「おい」
昭宮神「?」
神様「まぁ、がんばれよ。 お前のことは信頼している。 これからも頼んだぞ」
昭宮神「神様・・・ 神様が伴侶となって下されば私はもっと―――」
神様「調子に乗ってんじゃねーよ! 帰れっ!」
昭宮神「ふふっ、神様が元気になられたようで安心いたしました」
神様「・・・・・・」
昭宮神「では、またお目にかかれる日を楽しみにしております」スゥ
A子「わっ! 消えた!」
548: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:04:56 ID:zUO5Zbd6
神様「ったく、不愉快だ。 寝る」
神使「そろそろ私達も朝のお勤めが始まる時間ですが・・・」
神様「・・・昼まで寝かしてくれ」スタスタ
ガチャッ
A子「神ちゃん嬉しそうだったね」
神使「そうですか? 私には不機嫌全開のように見えましたが」
A子「照れ隠しだよ~ 神使さんは乙女心が分からないんだね~」
神使「すいません、乙女ではないもので・・・ 乙女?」
549: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:05:49 ID:zUO5Zbd6
A子「私もお昼まで寝るー」
神使「えっ?」
A子「神使さんはお昼から寝て良いよ?」
神使「私、二日連続で起きているのですが・・・」
A子「大丈夫だって、神使さん! ここは男を見せるところです!」
神使「ハァ・・・ お昼にちゃんと起きて下さいよ?」
A子「巫女嘘つかない」
神使「では後ほど」
A子「じゃぁお休み」スタスタ
ガチャッ
神使「私の知らないことばかりですね・・・」
神使「さて、もう一踏ん張り。 リホビタンD飲んでおきましょう」スタスタ
550: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/09(月) 01:06:38 ID:zUO5Zbd6
テクテク
神様「・・・・・・」ハァ
神様「・・・///」
552: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:25:03 ID:p9FDXyvs
――― 数日後
神様「ふぁ~ぁ」ゴロゴロ
神使「神様、だらしないですよ? 神の品格に関わります」
神様「うるせー 誰もいないじゃねーかよ」グダグダ
神使「そう言えば、A子ちゃんはどちらに?」
神様「ん? 駅で帰りの切符予約してくるんだって」
神使「そう言えば、今日の夕方に主神様達がお戻りになるんですよね」
神様「あ~あ、吉祥寺ともお別れか~ もう少し居たかったな~」
553: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:26:23 ID:p9FDXyvs
ガラガラ
ただいまー
神使「A子ちゃん帰ってきましたね。 では、最後のご祈願を致しましょうか」
神様「そうだな、主神達が帰ってくる前に終わらしておくか」
神使「では」ゴソゴソ
神様「何やってんの?」
神使「最後ですから、祭儀用の御装束でご祈願を」
神様「え~ それ裾がちょっと長いんだよ」
神使「全て着用せずとも簡易型で結構ですので」
神様「それでも面倒くさいって」
554: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:29:42 ID:p9FDXyvs
ガチャ
A子「いや~ 新幹線最後の一席だったよ。 あぶねーあぶねー」
神使「お帰りなさい」
A子「あれ? ご祈願するの?」
神使「はい、主神様達が帰ってくる前にと思いまして」
A子「あっ、神ちゃん今日は御装束着るんだ」
神様「面倒くさいから着替えなくても良いと思うんだよね」
神使「最後なんですから・・・ A子ちゃんからも言ってやって下さいよ」
555: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:31:25 ID:p9FDXyvs
神様「!? A子ちゃん・・・」ワナワナ
A子「?」
神様「その服・・・ すごく、かわゆい・・・」ゴクリ
A子「あ~これ? いいでしょー」フリフリ
神様「どこで買ったの? 教えて!」
A子「去年買ったヤツだからもうないと思うなー」
神様「そうかー・・・ 残念」
A子「あげようか? 私こっちで新しいの買ったし」
神様「うそ! いいの!」
A子「その代わり、神ちゃんはご祈願で御装束を着ること」
神様「神使! 祭儀装束を用意しろ! 手を抜くなよ!」
神使「(さすがA子ちゃん、神様の扱いは完璧ですね)」
556: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:33:02 ID:p9FDXyvs
――― 夕方
神様「よし、祈願の方はこれで全部か?」
神使「はい。 お疲れ様でした」
神様「いや~ ちかれた」フー
A子「ねぇ、神ちゃん?」
神様「なに?」
A子「・・・私もご祈願してもらいたいんだけど良い?」
神様「A子ちゃんも何かお願い事あるの?」
A子「うん」
557: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:34:21 ID:p9FDXyvs
神様「私なんかより神宮で祭儀神にやってもらった方が良くない?」
A子「神ちゃんにやってもらいたいなって」
神様「ん~・・・ でも私じゃ御利益薄いよ? 階位最低のダメ神だし」
A子「そんなことないよ。 神ちゃんとっても立派な神様だよ」
神様「・・・・・・」
A子「それに、今の神ちゃんとっても綺麗で威厳があるもん」
神様「・・・分かった。 全身全霊を込めて神力成就でやってあげる」
558: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:35:47 ID:p9FDXyvs
神使「A子ちゃん、ご祈願の種類は?」
A子「はい、これ」スッ
神使「お預かりします」
スタスタ
神使「神様どうぞ」スッ
神様「はい」ペラペラ
神様「・・・・・・神恩感謝?」
A子「うん」
神様「・・・・・・」
A子「これからもよろしくね、神ちゃん!」ニコッ
神様「A子ちゃん・・・」フッ
559: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:37:13 ID:p9FDXyvs
神様「よっしゃ、それじゃぁ本日最後のご祈願を執り行いますか」
ギィ
主神「私もご祈願のお手伝いをさせて頂いてもよろしいでしょうか」
宮司「私もご一緒いたします」
神使「主神様に宮司様、お戻りでしたか。 気付かず申し訳ございません」
宮司「本殿に明かりが付いていたもので、もしやと思いまして」
主神「神様のご祈願を拝見するのは初めてでしたので外から拝聴しておりました」
神様「すげー恥ずかしいんだけど・・・」
主神「神様のご祈願、心が洗われました。 私など足下にも及ばず恥ずかしい限りでございます」
神様「お世辞言っても何も無いぞ?」
主神「尊敬する神様に対してお世辞などとんでもございません、本心でございます」
神様「あっそ」
560: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 01:38:45 ID:p9FDXyvs
主神「もしよろしければ神様の副神を務めさせて頂いてもよろしいでしょうか」
神様「お好きにどうぞ」
宮司「私は神使様の補佐をさせて頂きます」
神使「ありがとうございます」
神様「じゃぁ神恩感謝と・・・ A子ちゃんの諸願成就を願って祈願を執り行う」
神使「二神でのご祈願なんて相当な御利益ですね」
神様「A子よ」
A子「はい」
神様「其方の願い、我が神力成就で叶えて進ぜよう」ニコッ
561: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:48:42 ID:p9FDXyvs
――― 翌日
神使「神様? 忘れ物は無いですか?」
神様「んー、大丈夫」
神使「主神様からもらったお土産が床に転がっているんですが・・・」
神様「これさぁ、何?」
神使「マーライオンの置物ですね・・・ 見た感じ結構高そうな物だと思うのですが」
神様「A子ちゃん欲しい?」
A子「いらなーい」
神様「犬ころ、これ私からのプレゼント。 同類だろ?」ホイ
神使「何ですか同類って・・・ 神様の鞄に入れておきますよ?」ゴソゴソ
神様「ちょ、入れるなやー」
562: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:49:21 ID:p9FDXyvs
A子「神ちゃん達は次どこ行くの?」
神様「知らない。 次どこ?」
神使「着いてからのお楽しみです」
神様「たぶん、人もいないようなド田舎だと思う」
A子「そっか~ またしばらくお別れだね」
神様「でもA子ちゃん、必ず近いうちに会える。 別れは辛―――」
A子「がんばってねー」
神様「・・・・・・うん」
神使「主神様と宮司様が、外でお待ちですから行きますよ」
563: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:50:32 ID:p9FDXyvs
テクテク
神使「お待たせして申し訳ございません」
宮司「いいえ、こちらこそ駅までお見送りできず申し訳ございません」
主神「この度は本当にありがとうございました」フカブカ
神使「こちらこそ、貴重な経験をさせて頂き感謝いたします」
主神「宮司、神様達にお礼を」
宮司「はい、こちら少ないですがお納め下さい」
神使「ありがとうございます」
宮司「こちらは巫女さんの分です」
A子「私ももらって良いんですか?」
宮司「こんなに綺麗に掃除までして頂いたのですから、そのお礼と思って受け取って下さい」
A子「ありがとうございます」
564: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:51:24 ID:p9FDXyvs
宮司「そして、こちらは神様の分でございます」
神様「うそ! 私も良いの!?」
宮司「どうぞお納め下さい」
神様「やったー」ビリビリ
神使「ちょっと神様! はしたないからやめて下さいよ・・・」
神様「すげー こんなに入ってるよ!!」
神使「こちらでお預かりします」
神様「ぇ・・・」
神使「先日は豪快にクレジットカード使いましたよね? 借金もまだ残っています」
神様「・・・・・・」
565: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:52:16 ID:p9FDXyvs
神使「はい、神様の分です」チャリン
神様「500円・・・」
A子「うわ~ 神ちゃん可哀想・・・」
神様「私は子供かよ!!」
神使「クレジットカードは魔法の財布では無いんですよ?」
神様「はい・・・」シュン
神使「では、主神様、宮司様、大変お世話になりました」
宮司「こちらこそ、無理なお願いを聞いて頂きありがとうございます」
神使「では、失礼いたします」
A子「お世話になりました」
神様「ハイバーイ」
566: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:52:53 ID:p9FDXyvs
――― 駅前
テクテク
神使「そうだ、神様?」
神様「あん?」
神使「ちょっとヨトバシ寄って良いですか?」
A子「買い物?」
神使「えぇ、受け取りなのですが」
神様「んだよ、お前だけ買い物しやがってずりーな~」
567: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:54:45 ID:p9FDXyvs
――― ヨトバシカメラ
神使「店員さん、神使と申しますが」
店員「お待ちしておりました。 こちらが新しいスマホです」スッ
神様「うわっ、この腐れ犬ころ私の欲しいスマホにしやがった」
神使「神様のスマホですよ? 受け取って下さい」
神様「ほへ?」
神使「この黄色い小さいヤツで良いんですよね?」
神様「えっ? 私の?」
神使「さすがに神様の携帯は古すぎますから」
A子「うわ~ 最新型じゃん! いいな~」
神様「いや、でもわたし金ないし・・・」
神使「この位は大丈夫です。 新幹線を使ったと思えばトントンですから」
568: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:55:30 ID:p9FDXyvs
神様「でも・・・」
神使「なに遠慮してるんですか? 神様らしくない」
神様「本当に大丈夫?」
神使「その代わり、弄って良いのは1日1時間までですよ? あと課金は一切NGです。 約束できます?」
神様「約束する!」
店員「では、付属品などはこちらになります」
A子「神使さん優しい~」
神使「さすがにあそこまで古い物をもたれると神様の品格に関わりますので」
神様「ありがとうな、大切にする」
569: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:56:23 ID:p9FDXyvs
――― 電車内
ガタンガタン
A子「これでやっと神ちゃんとLINEがリアルタイムで出来るね」
神様「前のヤツは面倒くさかったからな~」
A子「ガラケーってリアルタイムじゃ出来ないもんねー」
神使「あっ、神宮アプリは入れておいて下さいね」
神様「嫌だよ、そんなの」
A子「あれ重いからね~、私は削除したー」
570: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:57:00 ID:p9FDXyvs
神使「A子ちゃんは東京から新幹線ですよね」
A子「うん」
神様「っていうか私達は次どこだよ」
神使「まぁ隠す必要もございませんし・・・ 京都です」
神様「え~ 京都なの~?」
A子「あれ? じゃぁ名古屋まで新幹線一緒じゃん」
神様「そうだね」
571: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:57:40 ID:p9FDXyvs
神使「私達は各駅ですので」
神様「・・・・・・えっ?」クルッ
神使「鈍行です」
神様「ねぇ、巫女さんが新幹線で神と神使が鈍行ってその差は何?」
神使「A子ちゃんは神宮の職員ですから経費で落ちますが、私達は違いますので」
神様「いやいや、そこは経費で落とそうよ」
神使「ですから、私達には経費という概念がございませんので」
神様「A子ちゃんも鈍行で行かない?」
A子「新幹線で帰る」
神様「まぁ・・・ そうだよね」
572: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:58:42 ID:p9FDXyvs
A子「でも鈍行で京都って、今日中に着くの?」
神使「うまくいけば日付が変わる直前には着きます」
神様「ねぇ、まだ14時だよ?」
A子「うわ~ お尻割れちゃうね」
神様「吉祥寺に来るときも鈍行で12時間も揺られてきたんだよ? もうお尻粉々だよ」
神使「はしたない会話をこんな場所でしないで下さい・・・」
神様「へいへい」
ご乗車ありがとうございました
まもなく東京です
神使「そろそろ着きますね」
573: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 18:59:55 ID:p9FDXyvs
――― 東京駅
A子「じゃ、わたし新幹線ホームだから」
神使「お気を付けてお帰り下さいね」
神様「そうだ、A子ちゃん?」
A子「なに?」
神様「これ、もう少し後に渡すつもりだったんだけど」スッ
A子「お守り?」
神様「私が作ったやつだから御利益は無いんだけどね」
A子「神ちゃんが作ったの?」
神様「うん」
A子「結構年期はいってるね」
神様「昔に作ったヤツだから古くさくてゴメンね」
A子「そんなことないよ。 ありがとう! 大事にするね」
574: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:00:29 ID:p9FDXyvs
神様「じゃぁ、気をつけて。 皆によろしく」
A子「うん、またね~」バイバーイ
神様「元気でねー」フリフリ
神使「さて、私達もいきましょうか」
神様「あぁ」
テクテク
神様「京都か・・・ 久しぶりだな~」
神使「どのくらい前に行かれたんですか?」
神様「ん? 去年」
神使「結構最近じゃないですか・・・」
575: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:01:24 ID:p9FDXyvs
神様! 神様~
神様「?」キョロキョロ
神使「あっ、あれ昭宮神様じゃないですか?」
神様「げっ、なんでアイツがいるんだよ」
神使「なんか、凄い量のバラの花束を持っていますけど・・・」
神様「神使! 逃げるぞ!」タッ タッ タッ
神使「え? 神様?」
待って下さいよ~ お見送りさせて下さい~
神様「お前、仕事抜けられないんじゃないのかよー!」
あと十分しかないんです~
神様「じゃぁ帰れよっ!」
576: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:02:26 ID:p9FDXyvs
神使「神様、待ってあげた方が良いんじゃないですか?」
神様「ふざけんなよ」
神様~ 神様~
わっ、ちょっと何ですか?
神使「神様! 昭宮神様が警備の人に捕まってます!」
神様「よし、今のうちに全速力で逃げるぞ!」ダダダダ
神様~~!! お元気で~
神様「・・・・・・」ピタッ クルッ
神使「?」
神様「お前もなーー!」フリフリ
神使「神様・・・」
577: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:03:16 ID:p9FDXyvs
神様「神使よ」
神使「はい」
神様「良い街だったな」
神使「そうですね」
神様「また来たいな」
神使「はい、また来ましょう」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#4 ―END
578: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:05:48 ID:p9FDXyvs
【おまけ】
ガタンガタン
次は浜松~
神様「んぁ・・・」ポー
神使「Zzz」スースー
神様「まだ浜松かよ・・・ なぁ犬ころ~」ユサユサ
神使「Zzz」スースー
ストン
神様「ん? 月刊神様・・・ そう言えばアイツ取材受けたって言ってたな」
579: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:07:34 ID:p9FDXyvs
月刊神様 962号
集中連載 ~ダメ神との付き合い方~
神宮所属 狛犬 神使さま
――今日はお忙しい中ありがとうございます。
神使:いいえ、こちらこそ。どうぞよろしくお願いいたします。
――まず神使さんの経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか
神使:はい。 神使として登録されたのは8年ほど前でして、奈良の『ならなら神社』で奉職しておりました。
―――神宮にいらしたのは?
神使:3年前です。 神様という方にお仕えするよう辞令を受け赴任いたしました。
―――神使になられて8年で最高位の階位とはご立派ですね。
神使:そんなことはございません。 私などまだまだひよっこですので日々勉強の毎日です。
580: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:08:32 ID:p9FDXyvs
――さて、神使さんの主神様についてお聞かせ頂けますでしょうか。
神使:はい。 私の主神様は神宮所属で内宮神籍の女神で神様と申します。
――内宮神籍と言うことはかなりご立派な神なのでしょうね。
神使:階位は最低位、しかもランク外、左遷と減給を繰り返す絵に描いたような問題児です。 ちなみに現在は無給です。
――それは…… 凄いですね(汗)
神使:月刊神様を読まれている神の皆さまは、きっと『あ~あの方か』とお分かりになると思いますが(笑)
――まさにこのコーナーにピッタリの主神様ということですね
神使:そうかも知れませんね。
581: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:09:12 ID:p9FDXyvs
――初めてお目にかかったときのご印象は?
神使:びっくりした、の一言です。
――びっくり?
神使:はい、巫女の格好をして授与所でお守りを参拝者の方々に授けておられました。
――神様がですか?
神使:えぇ、普通じゃ考えられませんよね? しかも夕方には箒を持って境内のお掃除までして。
――それは興味深いですね。 どのような意味があるのでしょうか。
神使:巫女の仕事をしないと給料が低すぎて暮らしていけないようです。
――あぁ……
神使:自身の神力も使えないので祭儀にも出られませんし、業務の90%以上は巫女さんでしたね(笑)
582: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:10:20 ID:p9FDXyvs
――えーと…… 話題を変えますがその神様との付き合い方に関してエピソードなどございましたら是非。
神使:夜ご就寝されるときに下着のまま寝る癖があるので、そこは一番注意しております。
――下着のままですか? 女神様ですよね?
神使:えぇ。 寝相も最悪ですので、酷いときは布団を抜け出し下着姿で廊下で寝ていることもございます。
――えーと…… 神様のことは普段なんとお呼びしているのですか?
神使:周りには『かわゆい神ちゃん』と呼ばせたがっているようですが、私は『神様』とお呼びしております。
――『かわゆい神ちゃん』ですか?
神使:自身以外で、そのように呼んでいる方は見たことありませんけどね。
583: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:11:28 ID:p9FDXyvs
――……話題を変えます。 今は全国のお社をまわっておられるとお伺いしておりますが。
神使:はい。 主に全国の神職不在神社を中心にまわっております。
――今までのお話をお伺いした限りだらしなさそうな神様でしたが、やはりご立派なのですね。
神使:神宮で2000円のお守りを300円で売っていることがバレまして、その罰なんですよ(笑)
――あぁ……
神使:本当は一社のみの予定だったんですが、赴任先で賄賂疑惑や過去の職務怠慢が発覚しまして無期出向となりました。
――……
神使:?
584: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:12:42 ID:p9FDXyvs
――失礼しました。 私も色々な神様や神使様をインタビューさせて頂いているのですが、ここまでのダメ神は初めてです。
神使:ありがとうございます。でも、勘違いはなさらないで頂きたいのですが私は主神である神様を尊敬しております。
――尊敬ですか?
神使:神様は他の神とは異なる位置におられ、私も素性は詳しく知らないのですが、とても人に近い神なのです。
――人に近い神?
神使:『私は神力が使えない分、どんな手を使ってでも願いを叶える』 神様からこの言葉を伺ったとき感銘いたしました。
――なるほど。 他の神とは異なるお言葉ですね。
神使:神力が使えないのに願いを叶えるって凄く難しいと思うんです。 でも神様は叶えてくれるんです。
――それがどんな手を使ってでも、という事ですね?
神使:はい。 神力を使って願いを叶えるだけが神ではないということを教えて頂いたんです。
585: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:13:29 ID:p9FDXyvs
――興味深いお話です。
神使:今度、是非神様にもインタビューして下さい。 美味しいご飯を用意して頂ければ大抵ついてきますから(笑)
――はい、是非近いうちに『かわいいい神ちゃん』に取材させて頂きます。 この後、神使さんはどちらのお社へ行かれるのですか?
神使:来週から吉祥寺の『きちきち神社』で神様が代理神を務められますので同行いたします。
――本日はありがとうございました。
神使:こちらこそありがとうございました。
586: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:14:22 ID:p9FDXyvs
神様「・・・・・・」ハァ
神使「Zzz」
神様「まぁこの位は許してやるか・・・」
神様「・・・・・・」
神様「な~んて、許すわけないじゃん! 犬ころ!!」
神使「はい!」ビクッ
神様「寝起きはどうだ?」
神使「急に大声出してどうされたんですか?」
587: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:15:25 ID:p9FDXyvs
神様「これ」パンパン
神使「月刊神様?」
神様「てめぇ、私の事を変にベラベラ喋ってんじゃねぇよ!」
神使「え? 全部本当のことではないですか・・・」
神様「これじゃぁ、私がすげぇダメ神じゃんよ」
神使「そういうコーナーですので」
神様「もっと褒めろよ! 嘘でも奉っとけよ」
神使「神使嘘つかないです」
神様「・・・・・・」
588: ◆8YCWQhLlF2 2016/05/10(火) 19:16:29 ID:p9FDXyvs
神様「神罰!」
ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ
神使「痛い、痛いですよ神様。 それは神罰でなく体罰ですから」
神様「うるせー、京都までずっと折檻してやる!」
神使「やっぱり体罰じゃないですか~」
神様「うひゃひゃ、もっと泣き叫べ~」
ドタバタ
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」―END