「妖精職人の朝は早い。」
1: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:50:11.45 ID:BVi+wJrN0
多くの妖精に共通する特徴として
・猫を好む
・無性生殖であり、扁形動物のように分裂して増殖する
・人間とは異なる言語体系をもっている
・背中に2対の透明な翅がある
・100匹程度の群れを作る
等が挙げられる。
どの種類の妖精であっても、共通の言語を使用しているようだ。
食性は明らかになっていない。
2: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:51:09.45 ID:pVq7z91i0
ヤマト妖精
日本列島に広く生息する妖精。体長10~15cm、体重100~120g。翅の長さは7cm程度。
男性の人間をそのまま小さくしたような外見。
稀に、両手を前に突き出して奇妙な鳴き声を発している姿が見られる。これは、人間のラッパーの真似をしているらしい。
3: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:53:21.77 ID:pVq7z91i0
ヨーロッパ妖精
ヨーロッパに生息する妖精。ヤマト妖精より一回り小さい。
人間に対する警戒心が強く、すぐ逃げる。
稀に、猫の背中に跨っている姿を見ることができる。
4: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:55:28.98 ID:smGuEfmR0
アメリカ妖精
南アメリカの熱帯雨林に生息する妖精。妖精の中で最も獰猛で、顎の力も強い。
最近、関東でも見つかった。木材の輸送船から日本に侵入したとみられる。
ヤマト妖精を駆逐して生息範囲を広げており、一般人が噛みつかれる被害も出ているため、問題視されている。
5: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:57:19.61 ID:smGuEfmR0
アフリカ妖精
アフリカ大陸に生息する妖精。妖精の中で最も大きい。
人間に対する警戒心が薄いが、現地特有の寄生虫の卵が体に付着している場合があるので、決して触ってはいけない。
6: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:58:36.93 ID:oiBENUwi0
ホッキョク妖精
なんか白い。
7: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 21:59:30.43 ID:oiBENUwi0
エイ妖精
太平洋全域に生息。他の妖精とは異なる特徴が多い。
翅は茶色で厚く、透き通っておらず、ヒレのようになっている。
上側の翅は横に、下側の翅は足元にまで発達し、エイに擬態する効果があるようだ。
下側の翅の先はエイの毒針のように見えるが、柔らかいので刺すことはできない。毒もない。
個体数が少なく、群れを為さない。海中を時速60kmで泳ぎ回る。
えら呼吸はできないようで、数分おきに海面へ顔を出して呼吸する。
素揚げにして軽く塩を振ったり、煮付けにしたりすると美味しい。
かわいい。
8: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 22:01:26.95 ID:oiBENUwi0
妖精職人の朝は早い。
現在、日本全国どこでも取り寄せることができ、鑑賞・労働・食用・愛玩など、様々なニーズに対応する妖精。
それらは全て、ここ広島、たった1人の職人によって集められ、出荷されているのだ。
「まあ、好きで始めた仕事ですから」
自動車を運転しながら、職人は笑顔でそう言った。
「昔から妖精を手懐けるのは得意だったんですよ」
1日の始まりの仕事は、まず妖精が集まりそうな場所を探して車を走らせることだ。
9: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 22:03:26.57 ID:AIfgIqZF0
「ここ、良さそうですね」
職人は、とあるアパートの正面に車を停めた。子猫が数匹、アパートの駐輪場でじゃれ合っている。
「妖精は猫、特に子猫がいる場所に集まってくるんですよ」
早くも職人の豊富な知識を垣間見ることができた。
車から降りた職人はトランクを開けて空の段ボール箱を取り出し、両手で抱えて駐輪場へ入って行く。
「普通、妖精を集める時は何に入れます?」
ーー頑丈な籠じゃないですか?
「そうですよね。でも、僕は段ボールに入れるんです」
妖精は顎の力が強く、通常、段ボール程度の入れ物では噛み破って逃げてしまう。
しかし、職人は、妖精が逃げ出す心配は無いと言う。
「無理矢理閉じ込めるから逃げ出すんですよ。ま、見てて下さい(笑)」
職人は目を瞑り、口笛を吹き始めた。
…なんと、妖精が四方八方から飛んで来て、自ら段ボール箱に入っていくではないか!
十分に妖精が集まったところで、職人は口笛をやめて段ボール箱の蓋を閉めた。
10: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 22:05:26.30 ID:AIfgIqZF0
職場に戻った職人は小声で妖精に囁きかけながら、妖精を12匹ずつまとめて小さな紙箱へ詰めていく。
ーーなぜ、妖精がこんなにおとなしいのですか?
「おとなしくしてくれるよう、頼んでいるからです。お客様の命令に逆らわないようにも言い含めています。妖精の言語が理解できるんですよ、僕は」
職人の表情は誇らしげだ。
その時、職場の電話が鳴り響いた。
職人は電話を取り、メモを書きながら対応する。どうやら注文のようだ。
職人は電話を終え、住所を書いたメモを妖精に見せながら何事かを話し始めた。
「dssuckvonpjfgshayriuhdbjcjcgtfskgfkggsjlyhlblnjtzrcystg」
職人の発する言葉の意味は我々には全く理解できなかったが、妖精には伝わったようだ。
1匹の妖精が頷き、紙箱を1つ抱えて窓から飛んで行った。
「妖精に住所を伝えるだけで良いので、注文を受けた当日に宅配できます。発送費ももちろん無料です。」
妖精は1ダース180円。お買い得だ。これほどリーズナブルでありながら、職人の年収は1000万円を超えるという。
11: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 22:07:23.51 ID:KbRXMOxD0
ーーなぜ、妖精職人になろうと思ったのですか?
「朝も言いましたけど、元々妖精を手懐けるのが得意で、好きだったんですよ。」
ーーあなたがなぜ妖精を自由に操れるのか、考えたことがありますか?
「多分…僕の顔が妖精に似ているからだと思います。親近感があるんでしょうね、僕に対しては。
サングラスをかけたり、マスクを着けたりしたら、妖精を操れなくなるんですよ」
そう語る職人の顔は、確かに妖精にそっくりだった。
おわり
12: ◆ERH4IkRlmI 2015/09/26(土) 22:09:34.63 ID:KbRXMOxD0
駄文、失礼致しました。転載自由です。
補足
妖精はどれも似たような顔をしています。服は着ておらず全裸ですが、生殖器と乳首はないのでご心配なく。